JP2013067847A - 防食剤、端子付き被覆電線及びワイヤーハーネス - Google Patents
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Abstract
【課題】絶縁電線の電線導体と端子金具との電線接続部の防食性能が優れている、防食剤、端子付き被覆電線、及びワイヤーハーネスを提供する。
【解決手段】被覆電線2の端末の絶縁体4が皮剥ぎされて露出した電線導体3と端子金具5が電気的に接続されている電気接続部6を、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含む防食剤の硬化物7により被覆して端子付き被覆電線1とし、該端子付き被覆電線1を用いてワイヤーハーネスを構成した。
【選択図】図1
【解決手段】被覆電線2の端末の絶縁体4が皮剥ぎされて露出した電線導体3と端子金具5が電気的に接続されている電気接続部6を、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含む防食剤の硬化物7により被覆して端子付き被覆電線1とし、該端子付き被覆電線1を用いてワイヤーハーネスを構成した。
【選択図】図1
Description
本発明は、防食剤、端子付き被覆電線及びワイヤーハーネスに関し、さらに詳しくは、電線導体と端子金具との電気接続部の防食性に優れた防食剤、端子付き被覆電線及びワイヤーハーネスに関するものである。
従来、自動車等の車両に配索される電線として、タフピッチ銅の軟質材などからなる導体の外周に絶縁体を被覆してなる被覆電線が広く用いられている。この種の被覆電線の端末では、絶縁体を皮剥ぎして露出させた導体に端子金具が接続されている。被覆電線の端末に電気接続された端子金具は、コネクタに挿入係止される。
このような端子付き被覆電線が複数本束ねられ、ワイヤーハーネスが形成される。自動車等の車両では、通常、ワイヤーハーネスの形態で配索がなされる。エンジンルームや一部の室内環境などに、上記ワイヤーハーネスが配索される場合、熱および水の影響を受けて、電線導体と端子金具とが接触する電気接続部に錆が発生しやすくなる。そのため、このような環境下にワイヤーハーネスを配索する場合には、上記電気接続部における腐食を防止する必要がある。
上記電気接続部における腐食を防止するため、例えば、特許文献1には、電線導体に接続された端子金具が挿入係止されているコネクタ内にグリースを注入する技術が開示されている。
近年、自動車等の車両の軽量化により燃費効率を向上させようとする動きが加速しており、ワイヤーハーネスを構成する電線材料についても軽量化が求められている。そのため、電線導体にアルミニウムを用いることが検討されるようになってきている。
しかしながら、端子金具は、電気特性に優れた銅または銅合金が一般に用いられる。それ故、アルミ電線−銅端子金具の組み合わせ等で使用されることが多くなる。電線導体と端子金具との材質が異なると、その電気接続部で異種金属接触による腐食が発生する。この種の腐食は、電線導体と端子金具との材質が同じである場合よりも起こりやすい。そのため、電気接続部を確実に防食できる防食剤が必要となる。
ところが、従来の防食剤としてグリースを用いる手段は、コネクタ内に密に注入しないと水の浸入を十分に防止することができない。また防食効果を高めようとしてグリースの充填量を上げようとすると、本来、防食の必要がない部分にまでグリースが塗布されてしまうことになる。
さらに、グリースを過度に充填することは、コネクタや電線のベタつきを招き、取り扱い性を低下させる。それ故、このような問題のあるグリースの代替品として、高い防食性能を発揮可能な防食剤が求められている。
また、端子付き被覆電線に用いられる端子金具は、銅又は銅合金等の表面に錫めっきが施される場合が多い。防食剤は、銅又は銅合金に対する密着性に加えて、錫めっき等との密着性が優れていることが望ましい。
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、被覆電線と端子金具との電線接続部の防食性能が優れている、防食剤、端子付き被覆電線、及びワイヤーハーネスを提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の防食剤は、被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部を有する端子付き被覆電線の防食に用いられる防食剤において、前記防食剤が、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含むものであることを要旨とするものである。
上記防食剤において、前記防食剤の硬化物のガラス転移温度が40℃以下であることが好ましい。
本発明の端子付き被覆電線は、被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部が防食剤により被覆されている端子付き被覆電線において、前記電気接続部が、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含む防食剤の硬化物により被覆されていることを要旨とするものである。
上記端子付き被覆電線において、前記防食剤の硬化物のガラス転移温度が40℃以下であることが好ましい。
上記端子付き被覆電線において、前記端子金具が、表面に錫めっきを有するものであることが好ましい。
上記端子付き被覆電線において、前記電線導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる素線を含有していることが好ましい。
本発明のワイヤーハーネスは、上記の端子付き被覆電線を有することを要旨とするものである。
本発明の防食剤は、被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部を有する端子付き被覆電線の防食に用いられる防食剤において、エポキシ樹脂を主成分とするものであるから、従来のグリース等の防食剤と比較して、塗布性に優れ、硬化後に高い防食性能を発揮することができる。またエポキシ樹脂を主成分としているので、熱可塑性樹脂を主成分とする場合に比べ、硬化後の耐熱性にも優れ、電気接続部を確実に防食できる。
更に本発明の防食剤は、チオール系の硬化剤を含むエポキシ樹脂を用いたことにより、アミン系の硬化剤を用いたエポキシ樹脂と比較して、錫めっきとの接着性が良好である。更に防食剤の硬化後のガラス転移点を低く抑制することができるので、防食剤の硬化物は、サーマルショック後の耐性が向上する。アミン硬化のエポキシ樹脂を防食剤として用いると、サーマルショック後に割れなどが発生し易いのに対し、本発明のチオール系硬化剤を用いた防食剤は、そのような恐れがなくサーマルショック後の防錆性能を向上させることができる。
本発明の端子付き被覆電線は、被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部が防食剤により被覆されている端子付き被覆電線において、前記電気接続部が、エポキシ樹脂を主成分とする防食剤の硬化物により被覆されているものであるから、従来のグリース等の防食剤を用いた端子付き被覆電線と比較して、電線接続部における防食性能が優れている。またエポキシ樹脂を主成分としているので、熱可塑性樹脂を主成分とする場合に比べ、硬化後の耐熱性にも優れている。
更に本発明の端子付き被覆電線は、電気接続部がチオール系硬化剤を含むエポキシ樹脂の硬化物により被覆されているので、防食剤の硬化物は錫めっき等との接着性が良好である。更に防食剤の硬化物のガラス転移点を低く抑制できるので、電気接続部を被覆している防食剤の硬化物のサーマルショック後の耐性が向上し、サーマルショック後の防錆性能が優れた端子付き被覆電線が得られる。
本発明のワイヤーハーネスは、上記の端子付き被覆電線を有するものであるから、電線導体と端子金具との電気接続部の防食性能に優れた、信頼性の高いワイヤーハーネスが得られる。そのため、本発明のワイヤーハーネスは、例えば、自動車等の被水領域であるエンジンルームや一部の室内環境等に好適に利用することができる。
以下、図面を用いて本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の端子付き被覆電線の一例を示す外観斜視図であり、図2は図1におけるA−A線縦断面図である。図1及び図2に示すように、本発明の端子付き被覆電線1は、電線導体3が絶縁体4により被覆された被覆電線2の電線導体3と、端子金具5が電気接続部6により電気的に接続されている。
端子金具5は、相手側端子と接続される細長い平板からなるタブ状の接続部51と、接続部51の端部に延設形成されているワイヤバレル52とインシュレーションバレル53からなる電線固定部54を有する。
電気接続部6では、被覆電線2の端末の絶縁体4を皮剥ぎして、電線導体3を露出させ、この露出させた電線導体3が端子金具5の片面側に圧着されて、被覆電線2と端子金具5が接続されている。端子金具5のワイヤバレル52を被覆電線2の電線導体3の上から加締め、電線導体3と端子金具5が電気的に接続されている。又、端子金具5のインシュレーションバレル53を、被覆電線2の絶縁体4の上から加締めている。
更に電気接続部6は、図1において一点鎖線で示した範囲が、防食剤の硬化物7により被覆されている。尚、図1の電気接続部6は、防食剤の硬化物7を透視した状態で示している。防食剤の硬化物7は、電線導体3、電線導体3と端子金具5との接触部分等に外部から水分等が侵入して金属部分が腐食するのを防止している。
具体的な防食剤の硬化物7が被覆している部分は、以下の部分である。被覆電線2の先端側は、電線導体3の先端から端子金具5の接続部51側に少しはみ出すように被覆している。端子金具5の先端側は、インシュレーションバレル53の端部から被覆電線2の絶縁体4側に少しはみ出すように被覆している。被覆電線2の端末が皮剥ぎされて電線導体3が露出した部分は、防食剤の硬化物7によって完全に覆われていて、外部に露出しないようになっている。
図2に示すように端子金具5の側面も、防食剤の硬化物7で被覆されている。防食剤の硬化物7は、端子金具5と被覆電線2の外側周囲の形状に沿って、所定の厚さで被覆している。尚、図2中下方となる端子金具5の裏面側(便宜的に端子金具の電線圧着面を表面とし、反対面を裏面とした)は、防食剤の硬化物7で被覆されていない。
なお、電気接続に影響を与えないのであれば、端子金具5の電線固定部54の裏面側(ワイヤバレル52及びインシュレーションバレル53の裏面側も含む)を、防食剤の硬化物7により被覆してもよい。
本発明は、電気接続部6を被覆する防食剤として、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含む防食剤を用いた点に大きな特徴を有する。以下、防食剤について説明する。
防食剤のエポキシ樹脂は、各種の液状エポキシ樹脂を主剤として、硬化剤としてチオール系硬化剤とを少なくとも含んでいる。主剤として用いられる液状エポキシ樹脂は、フェノール類を原料としたビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、アルコール類等の脂肪族型エポキシ樹脂、アミン類を原料とするエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラック樹脂を原料とするクレゾールノボラックエポキシ樹脂等が用いられ、特に種類は限定されない。
硬化剤として用いられるチオール系硬化剤としては、脂肪族ポリチオエーテル、脂肪族ポリチオエステル、芳香環含有ポリチオエーテルなど、分子内に2個以上のチオール基を持つものであれば、特に限定されない。チオール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂を防食剤として用いる事により、錫めっきとの接着が向上する。
また本発明の防食剤は、チオール系硬化剤を用いることで、アミン系硬化剤を用いた場合と比較して、硬化物のガラス転移点を下げることができる。防食剤の硬化物のガラス転移点を下げることができると、硬化物の柔軟性が改良されて、サーマルショックに対する耐性が向上する。その結果、端子付き電線の接続部分のサーマルショック後の防食性能を向上させることができる。
防食剤の硬化物は、端子付き電線のサーマルショック後の防食性能を更に良好にするという観点から、ガラス転移温度が40℃以下であることが好ましい。防食剤の硬化物のガラス転移温度を40℃以下にするには、チオール系硬化剤、エポキシ樹脂の主剤等の原材料の種類や配合量等を適宜、選択すればよい。
防食剤には、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、上記チオール系硬化剤以外に、アミン系、フェノール系、酸無水物系などのその他のエポキシ樹脂硬化剤を併用しても良い。また防食剤には、イミダゾール類や3級アミンなどの硬化促進剤を併用しても良い。
防食剤の主成分は、1種類のエポキシ樹脂を単独で用いても良いし、2種以上のエポキシ樹脂が混合されたエポキシ樹脂を用いてもよい。更に防食剤には、必要に応じて、物性を損なわない範囲で、他のポリマー等が混合されていても良い。
また防食剤には、その他、着色用顔料、粘度調整剤、老化防止剤、無機充填材、保存安定剤、分散剤など、添加剤が加えられていても良い。
防食剤は、未硬化の状態で電気接続部7の所定の箇所に塗布された後、硬化せしめられ硬化物7となる。防食剤の硬化物7は、エポキシ樹脂の硬化物であるから、完全に固化した状態となっている。防食剤の硬化物7は、グリース等のようなべたつきことがない。またエポキシ樹脂の硬化物は、長期間使用した後でも、流動して、べたつきが発生する恐れはなく、防食性を長期間維持できる。
防食剤の硬化条件は、硬化剤の種類等に応じて適宜選択することができる。一般に、主剤と硬化剤を混合し、所定の箇所に塗布した後、所定の硬化条件で硬化させる。チオール系硬化剤を用いたエポキシ樹脂は、例えば、主剤と硬化剤を混合後、常温で放置して硬化させることができる。また硬化促進のために、加熱してもよい。
防食剤は、塗布の際に、25℃の粘度が1000〜30000mPa・sの範囲であるのが、所定の量を確実に塗布できる点から好ましい。尚、粘度はJISZ8803に準拠して回転粘度計で測定される値である。
防食剤の粘度が高すぎると塗布時に材料の流動性が不十分となって、所定の箇所に十分な量の防食剤を充填することが困難になってしまう。また防食剤の粘度が低すぎると、塗布時に防食剤が流出して、所定の箇所に十分な防食剤を確保することが困難になってしまう。
防食剤は、塗布後の硬化物7の厚みが0.01〜0.1mmの範囲となるように塗布するのが好ましい。防食剤の硬化物7の厚みが厚くなりすぎると、端子金具をコネクタへ挿入し難くなる恐れがある。また防食剤の硬化物の厚みが薄くなりすぎると防食性能が不十分となる恐れがある。
防食剤の塗布は、滴下法、塗布法、押し出し法等の公知の手段を用いることができる。また防食剤の塗布の際、防食剤を加熱、冷却等により温度調節してもよい。
以下、端子付き被覆電線1の各部について説明する。
被覆電線2の電線導体3は、複数の素線3aが撚り合わされてなる撚線よりなる。この場合、撚線は、1種の金属素線より構成されていても良いし、2種以上の金属素線より構成されていても良い。また、撚線は、金属素線以外に、有機繊維よりなる素線などを含んでいても良い。なお、1種の金属素線より構成されるとは、撚線を構成する全ての金属素線が同じ金属材料よりなることをいい、2種以上の金属素線より構成されるとは、撚線中に互いに異なる金属材料よりなる金属素線を含んでいることをいう。撚線中には、被覆電線を補強するための補強線(テンションメンバ)等が含まれていても良い。
上記電線導体3を構成する金属素線の材料としては、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金、もしくはこれらの材料に各種めっきが施された材料などを例示することができる。また、補強線としての金属素線の材料としては、銅合金、チタン、タングステン、ステンレスなどを例示することができる。また、補強線としての有機繊維としては、ケブラーなどを挙げることができる。
絶縁体4の材料としては、例えば、ゴム、ポリオレフィン、PVC、熱可塑性エラストマーなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上混合して用いても良い。絶縁体4の材料中には、適宜、各種添加剤が添加されていても良い。添加剤としては、難燃剤、充填剤、着色剤等を挙げることができる。
端子金具5の材料(母材の材料)としては、一般的に用いられる黄銅の他、各種銅合金、銅などを挙げることができる。端子金具5の表面の一部(例えば接点)もしくは全体には、錫、ニッケル、金などの各種金属によりめっきが施されていても良い。本発明の防食剤は、特に錫めっきに対する接着力が優れている。
端子付き被覆電線1を製造するには、先ず先端を皮剥ぎして電線導体3を所定の長さだけ露出させた被覆電線2の端末に、端子金具5の電線固定部54を加締めて、電線導体3と端子金具5を接続する。次いで、電線導体3と端子金具5との接続部分の表面に防食剤を塗布する。次いで、防食剤を所定の条件で硬化せしめることで、端子付き被覆電線1が得られる。
以下、本発明のワイヤーハーネスについて説明する。本発明のワイヤーハーネスは、上記端子付き被覆電線1を含む複数本の被覆電線を束ねたものからなる。ワイヤーハーネスにおいては、被覆電線のうちの一部が本発明の端子付き被覆電線1であっても良いし、全てが本発明の端子付き被覆電線1であっても良い。
ワイヤーハーネスにおいて、複数本の被覆電線は、テープ巻きにより結束されていても良いし、あるいは、丸チューブ、コルゲートチューブ、プロテクタ等の外装部品により外装されていても良い。
本発明のワイヤーハーネスは、自動車等の車両に配索されるものとして好適であり、特に、被水領域のエンジンルームや車内に配索されるものとして好適である。このような場所では、熱および水の影響を受けやすいため、ワイヤーハーネスがこのような場所に配索されると、電線導体3と端子金具5との電気接続部に錆が発生しやすくなる。本発明のワイヤーハーネスによれば、端子付き被覆電線1における電線導体3と端子金具5との電気接続部6における錆の発生を効果的に抑えることができる。
以下に本発明の実施例、比較例を示す。なお、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。
(1)被覆電線の作製
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100質量部に対して、可塑剤としてジイソノニルフタレート40質量部、充填剤として重炭酸カルシウム20質量部、安定剤としてカルシウム亜鉛系安定剤5質量部をオープンロールにより180℃で混合し、ペレタイザーにてペレット状に成形することにより、ポリ塩化ビニル組成物を調製した。
ポリ塩化ビニル(重合度1300)100質量部に対して、可塑剤としてジイソノニルフタレート40質量部、充填剤として重炭酸カルシウム20質量部、安定剤としてカルシウム亜鉛系安定剤5質量部をオープンロールにより180℃で混合し、ペレタイザーにてペレット状に成形することにより、ポリ塩化ビニル組成物を調製した。
次いで、50mm押出機を用いて、上記のポリ塩化ビニル組成物を、アルミ合金線を7本撚り合わせたアルミニウム合金撚線よりなる電線導体(断面積0.75mm)の周囲に0.28mm厚で押出被覆した。これにより被覆電線(PVC電線)を作製した。
(2)端子付き被覆電線の作製
上記の被覆電線の端末を皮剥して電線導体を露出させた後、自動車用として汎用されている黄銅製のオス形状の圧着端子金具(タブ幅0.64mm)を被覆電線の端末に加締め圧着した。
上記の被覆電線の端末を皮剥して電線導体を露出させた後、自動車用として汎用されている黄銅製のオス形状の圧着端子金具(タブ幅0.64mm)を被覆電線の端末に加締め圧着した。
次いで、電線導体と端子金具との電気接続部に、表1に示す成分組成の防食剤を塗布して、露出している電線導体および端子金具のバレルを各種の防食剤により被覆した。その後、各硬化条件で所定時間の硬化処理を行い、防食剤を硬化させ端子付き被覆電線を作製した。なお、各防食剤は、厚さ0.05mmで塗布した。
表1の成分組成の詳細は下記の通りである。
(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:三菱化学社製「EP828」
(B)チオール系硬化剤1:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学社「TMMP」
(C)チオール系硬化剤2:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学社「PEMP」
(D)硬化促進剤:3級アミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)
(E)ジシアンアミド、三菱化学社製「DICY7」
(A)ビスフェノールA型エポキシ樹脂:三菱化学社製「EP828」
(B)チオール系硬化剤1:トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学社「TMMP」
(C)チオール系硬化剤2:ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、SC有機化学社「PEMP」
(D)硬化促進剤:3級アミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)
(E)ジシアンアミド、三菱化学社製「DICY7」
表1に示すように、実施例1と実施例2は、防食剤としてチオール系硬化剤のエポキシ樹脂を用いたものである。実施例1、2の硬化条件は室温で24時間放置した。また比較例1は、防食剤としてジシアンアミド硬化剤を用いたエポキシ樹脂を用いたものである。比較例1の硬化条件は、120℃3時間加熱した。
〔評価方法〕
実施例1、2、比較例1の防食剤について、錫めっきに対する接着強度とガラス転移温度を測定した。また実施例1、2、比較例1の端子付き被覆電線を用いて防食性能を評価した。試験方法は以下の通りである。
実施例1、2、比較例1の防食剤について、錫めっきに対する接着強度とガラス転移温度を測定した。また実施例1、2、比較例1の端子付き被覆電線を用いて防食性能を評価した。試験方法は以下の通りである。
〔錫めっきとの接着強度〕
錫めっきが施された銅板の表面に防食剤を塗布し上記条件で硬化させ、JIS K6850で規定される方法で、錫めっき表面と防食剤の硬化物との接着強度を測定した。接着強度は、硬化後の初期と、サーマルショック後で測定した。サーマルショックは、マイナス40℃で30分保持した後プラス85℃で30分間保持するのを1サイクルとした熱衝撃を加え、これを500サイクル繰り返した。
錫めっきが施された銅板の表面に防食剤を塗布し上記条件で硬化させ、JIS K6850で規定される方法で、錫めっき表面と防食剤の硬化物との接着強度を測定した。接着強度は、硬化後の初期と、サーマルショック後で測定した。サーマルショックは、マイナス40℃で30分保持した後プラス85℃で30分間保持するのを1サイクルとした熱衝撃を加え、これを500サイクル繰り返した。
〔ガラス転移温度〕
防食剤の硬化物を試験体として、DSC(示差走査熱量計)を用いてガラス転移温度を測定した。
防食剤の硬化物を試験体として、DSC(示差走査熱量計)を用いてガラス転移温度を測定した。
〔防食性能〕
図3に示すように、端子付き被覆電線1を12V電源10の+極につなぐとともに、純銅板20(幅1cm×長さ2cm×厚み1mm)を12V電源10の−極につなぎ、端子付き被覆電線1の電線導体と端子金具との電気接続部および純銅板20を300ccのNaCl5%水溶液30に浸漬し、12Vで2分間通電した。通電後、NaCl5%水溶液30のICP発光分析を行ない、端子付き被覆電線1の電線導体からのアルミニウムイオンの溶出量を測定した。溶出量が0.1ppm未満であった場合を「○」とし、溶出量が0.1ppm以上であった場合を「×」とした。防食性能の試験は、防食剤を硬化させた後の初期と、サーマルショック後の両方で評価した。サーマルショックの条件は上記した通りである。
図3に示すように、端子付き被覆電線1を12V電源10の+極につなぐとともに、純銅板20(幅1cm×長さ2cm×厚み1mm)を12V電源10の−極につなぎ、端子付き被覆電線1の電線導体と端子金具との電気接続部および純銅板20を300ccのNaCl5%水溶液30に浸漬し、12Vで2分間通電した。通電後、NaCl5%水溶液30のICP発光分析を行ない、端子付き被覆電線1の電線導体からのアルミニウムイオンの溶出量を測定した。溶出量が0.1ppm未満であった場合を「○」とし、溶出量が0.1ppm以上であった場合を「×」とした。防食性能の試験は、防食剤を硬化させた後の初期と、サーマルショック後の両方で評価した。サーマルショックの条件は上記した通りである。
表1に示すように、実施例1及び実施例2の防食剤は、錫めっきに対する接着強度が良好である。実施例1及び実施例2の防食剤は、ガラス転移温度も低く、サーマルショック後の接着強度の低下が小さく、温度変化の大きな環境であっても、優れた接着力を確保できることを示している。また実施例1及び実施例2の、端子付き被覆電線は、防食性能が、初期、サーマルショック後のいずれも良好である。
また比較例1の防食剤は、ガラス転移温度が100℃以上と高く、錫めっきに対する接着性も低いものであった。特にサーマルショック後の接着性が大きく低下していた。そのため比較例1の端子付き被覆電線は、防食性能に劣る。これは、防食剤がガラス転移温度が高く、硬いため、サーマルショック後に防食剤が接触部分から剥離してしまい、十分な防食性能を発揮できなくなると考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば上記実施例の端子付き被覆電線1は、端子金具5として、タブ状の接続部を有するオス端子を用いたものであるが、これに限定されるものではない。例えば端子金具はオス端子と嵌合可能なメス端子を用いても良いし、音叉端子などであっても良い。また、端子金具5は、インシュレーションバレル53を有しないで、ワイヤバレル52のみで圧着されるものであっても良い。また、電線導体3と端子金具5との接続方法としては、バレルによる圧着に限られず、圧接抵抗溶接、超音波溶接、ハンダ付け等の方法であっても良い。また、上記実施例では、撚線よりなる電線導体3を用いたが、電線導体3は単芯線を用いてもよい。
1 端子付き被覆電線
2 被覆電線
3 電線導体
4 絶縁体
5 端子金具
6 電気接続部
7 防食剤の硬化物
2 被覆電線
3 電線導体
4 絶縁体
5 端子金具
6 電気接続部
7 防食剤の硬化物
Claims (7)
- 被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部を有する端子付き被覆電線の防食に用いられる防食剤において、
前記防食剤が、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含むものであることを特徴とする防食剤。 - 前記防食剤の硬化物のガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする請求項1記載の防食剤。
- 被覆電線の電線導体と端子金具が電気的に接続される電気接続部が防食剤により被覆されている端子付き被覆電線において、
前記電気接続部が、エポキシ樹脂を主成分としチオール系硬化剤を含む防食剤の硬化物により被覆されていることを特徴とする端子付き被覆電線。 - 前記防食剤の硬化物のガラス転移温度が40℃以下であることを特徴とする請求項3記載の端子付き被覆電線。
- 前記端子金具が、表面に錫めっきを有するものであることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の端子付き被覆電線。
- 前記電線導体が、アルミニウム又はアルミニウム合金よりなる素線を含有していることを特徴とする請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の端子付き被覆電線。
- 前記請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の端子付き被覆電線を有することを特徴とするワイヤーハーネス。
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