JP2013064289A - 建物の防音構造及び建物 - Google Patents

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Abstract

【課題】構造的観点や意匠的観点に問題がなく、防音性能を高めることができる建物の防音構造を提供する。
【解決手段】建物1における下階の空間としての1階の空間11と上階の空間としての2階の空間12との間を繋ぐ階段室2を伝って伝播する音を防ぐ建物の防音構造であって、階段室2の天井面3に、この天井面3に沿って面状の吸音手段4が設けられており、面状の吸音手段4には、吸音板としてのグラスウール板41が用いられているとともに、階段室2の階段は、回り階段20とされた構成とされている。
【選択図】図1

Description

本発明は、建物の防音構造、及びこの防音構造を備えた建物に関するものである。
従来から、建物の居住性を良好にするために、建物の防音性能を高めることが求められている。
特に、建物の階段室の部分は、建物の下階の空間と上階の空間とが連通する開口部となっているため、騒音が伝わる経路となってしまう。
こうしたことから、例えば、特許文献1に開示された建物の防音構造では、階段室の回り階段の回り部の壁に吸音材を取り付けることにより、建物の防音性能を高めている。
さらに、この特許文献1に開示された建物の防音構造では、階段室の階段を上り終わる位置の天井に反射板からなる垂らし壁を設けることで、天井に反射される騒音についても極力防音できるようにしている。
特開平10−227082号公報
確かに、特許文献1に開示された建物の防音構造は、天井に反射される騒音にまで着眼し、対策を行っている数少ない従来技術である。
しかしながら、特許文献1に開示された建物の防音構造では、反射板からなる垂らし壁で対策しているため、防音性能を高めるには、この垂らし壁の長さを長くする必要があるが、構造的観点や意匠的観点からこの長さを長くするにも限度がある。
そこで、本発明は、構造的観点や意匠的観点に問題がなく、防音性能を高めることができる建物の防音構造、及びこの防音構造を備えた建物を提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の建物の防音構造は、建物における下階の空間と上階の空間との間を繋ぐ階段室を伝って伝播する音を防ぐ建物の防音構造であって、前記階段室の天井面又は踊り場の天井面に、該天井面に沿って面状の吸音手段が設けられていることを特徴とする。
ここで、前記面状の吸音手段には、吸音板が用いられているとよい。
また、前記面状の吸音手段は、内部に空気層が設けられているとよい。
さらに、前記面状の吸音手段には、少なくも2枚の吸音材が用いられているとともに、前記吸音材間に空気層が設けられているとよい。
また、前記階段室の階段は、回り階段であるとよい。
本発明の建物は、上記した本発明の建物の防音構造を備えていることを特徴する。
このような本発明の建物の防音構造は、建物における下階の空間と上階の空間との間を繋ぐ階段室を伝って伝播する音を防ぐ建物の防音構造である。
そして、階段室の天井面又は踊り場の天井面に、この天井面に沿って面状の吸音手段が設けられた構成とされている。
こうした構成なので、下階の空間と上階の空間との間を伝播し階段室の天井面又は踊り場の天井面に反射する音は天井面に沿って設けられた吸音手段で防がれるため、構造的観点や意匠的観点に問題がなく、防音性能を高めることができる。
ここで、面状の吸音手段には、吸音板が用いられている場合は、中間の周波数帯から高い周波数帯までの音を防ぐことができる。
また、面状の吸音手段は、内部に空気層が設けられている場合は、比較的低い周波数帯の音も防ぐことができる。
さらに、面状の吸音手段には、少なくも2枚の吸音材が用いられているとともに、吸音材間に空気層が設けられている場合は、比較的低い周波数帯から高い周波数帯までの音を防ぐことができるうえに、その防音性能をより高めることができる。
また、階段室の階段は、回り階段である場合は、特に、下階の空間から上階の空間へ音が伝播する際に、階段室の壁や階段の表面に反射した音が階段室の天井面又は踊り場の天井面に反射する音は天井面に沿って設けられた吸音手段に集まるので、さらにより防音性能を高めることができる。
このような本発明の建物は、上記した本発明の建物の防音構造を備えた構成とされている。
こうした構成なので、上記した本発明の建物の防音構造の効果を奏する建物とすることができる。
実施例1の建物の防音構造を備えた建物の概略構成を示す説明図である。 実施例1の吸音手段の詳細な構成を示す説明図である。 実施例2の吸音手段の詳細な構成を示す説明図である。 実施例3の吸音手段の詳細な構成を示す説明図である。 実証試験における各仕様の遮音性能を示す表である。 実証試験における各仕様のオクターブバンド別の遮音性能を示すグラフである。 実証試験における各仕様のオクターブバンド別の遮音性能を示すグラフである。 実証試験における各仕様のオクターブバンド別の遮音性能を示すグラフである。
以下、本発明を実施するための形態を、図面に示す実施例1〜3に基づいて説明する。
先ず、実施例1の構成について説明する。
図1は、実施例1の建物の防音構造を備えた建物1の概略構成を示している。
まず、この建物1は、下階の空間としての1階の空間11と上階の空間としての2階の空間12との間を繋ぐ階段室2を備えている。
ここで、階段室2の階段は、回り階段(折り返し階段)20とされている。
そして、この実施例1の建物の防音構造では、階段室2の天井面3に、この天井面3に沿って吸音手段4が設けられている。
また、この吸音手段4には、図2に詳細な構造を示したように、吸音板としてのグラスウール板41が用いられている。
ここで、分かり易いように具体例を以下に示す。
例えば、深夜において、1階の空間11にある図示省略のリビングルームでかなり大きな音量でテレビを見ている人がいる一方で、2階の空間12にある図示省略の寝室で寝ている人がいるとする。
この場合でも、図1の矢印R1で示したように、1階の空間11から2階の空間12へ伝播してくる騒音は、吸音手段4で吸収され、十分に減衰されるので、1階の空間11のリビングルームにいる人は、2階の空間12の寝室にいる人の睡眠を妨げることなく、テレビを楽しむことができる。
或いは、深夜において、2階の空間12にある図示省略の書斎でかなり大きな音量で音楽を聴いている人がいる一方で、1階の空間11にある図示省略のリビングルームでソファーに座ってくつろいでいる人がいるとする。
この場合でも、図1の矢印R2で示したように、2階の空間12から1階の空間11へ伝播してくる騒音は、吸音手段4で吸収され、十分に減衰されるので、2階の空間12の書斎にいる人は、1階の空間11のリビングルームにいる人のくつろぎを妨げることなく、音楽を楽しむことができる。
次に、実施例1の作用効果について説明する。
このような実施例1の建物の防音構造は、建物1における下階の空間としての1階の空間11と上階の空間としての2階の空間12との間を繋ぐ階段室2を伝って伝播する音を防ぐ建物の防音構造である。
そして、階段室2の天井面3に、この天井面3に沿って面状の吸音手段4が設けられた構成とされている。
こうした構成なので、1階の空間11と2階の空間12との間を伝播し階段室2の天井面3に反射する音は天井面3に沿って設けられた吸音手段4で防がれるため、構造的観点や意匠的観点に問題がなく、防音性能を高めることができる。
ここで、面状の吸音手段4には、吸音板としてのグラスウール板41が用いられている。
このため、詳細については後述する実証試験の結果で説明するが、中間の周波数帯から高い周波数帯までの音を防ぐことができる。
また、階段室2の階段は、回り階段(折り返し階段)20とされている。
このため、特に、1階の空間11から2階の空間12へ音が伝播する際に、階段室2の壁や階段としての回り階段(折り返し階段)20の表面に反射した音が階段室2の天井面3に反射する音は天井面3に設けられた吸音手段4に集まるので、さらにより防音性能を高めることができる。
このような実施例1の建物1は、上記した実施例1の建物の防音構造を備えた構成とされている。
こうした構成なので、上記した実施例1の建物の防音構造の作用効果を奏する建物とすることができる。
次に、実施例2について説明する。
なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
図3は、実施例2の建物の防音構造における吸音手段4の詳細な構成を示している。
この実施例2の建物の防音構造における吸音手段4は、階段室2の天井面3のコーナー部分を略水平な吸音板としてのグラスウール板41と略垂直な吸音板としてのグラスウール板43とで囲い、その内部に空気層42が設けられた構成とされている。
これにより、詳細については後述する実証試験の結果で説明するが、比較的低い周波数帯の音も防ぐことができることが実施例1の建物の防音構造と主に異なる。
なお、他の構成及び作用効果については、実施例1と略同様であるので説明を省略する。
次に、実施例3について説明する。
なお、実施例1で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
図4は、実施例3の建物の防音構造における吸音手段4の詳細な構成を示している。
この実施例3の建物の防音構造における吸音手段4は、階段室2の天井面3のコーナー部分に略水平な吸音板としてのグラスウール板41を貼設し、間隔をあけて略水平なもう1枚の吸音板としてのグラスウール板41を設け、周囲を略垂直な吸音板としてのグラスウール板43で囲い、その内部に空気層42が設けられた構成とされている。
これにより、詳細については後述する実証試験の結果で説明するが、比較的低い周波数帯から高い周波数帯までの音を防ぐことができるうえに、その防音性能をより高めることができることが実施例1,2の建物の防音構造と主に異なる。
なお、他の構成及び作用効果については、実施例1と略同様であるので説明を省略する。
[実証試験]
次に、上記した実施例1〜3の建物の防音構造の実証試験を行ったところ、以下のような試験結果が得られた。
1階のホールで試験用のノイズを発生し、1階の階段上り口における音圧レベルと2階の階段降り口における音圧レベルとを測定して比較した。
ここで、階段室2の天井面3は、約1.8m×2.25mの矩形であり、吸音手段4は、天井面3の略全面に沿って設けた。
さらに、吸音手段4を構成する吸音板としてのグラスウール板41,43には、密度が約64kg/mで、周囲を不織布で被覆したものを用いて実施した。
この試験結果を図5の表で示す。
なお、遮音性能Dmは、1階の階段上り口における平均音圧レベルと2階の階段降り口における平均音圧レベルとの差である。
ここで、吸音手段4のない通常の天井(石膏ボード、クロス仕上げ)のみで天井面3を形成した(0)BM対策無しではDm=10.0dBであった。
また、実施例1の吸音手段4として用いられるグラスウール板41の厚さを25mmとした(1−1)GW25mmでは、Dm=12.4dBとなり、基準となる(0)よりも遮音性能が高いことが分かった。
さらに、実施例1の吸音手段4として用いられるグラスウール板41の厚さを50mmとした(1−2)GW50mmでは、Dm=13.6dBとなり、(1−1)よりも遮音性能が高いことが分かった。
また、実施例1の吸音手段4として用いられるグラスウール板41の厚さを75mmとした(1−3)GW75mmでは、Dm=14.0dBとなり、(1−2)よりも遮音性能が高いことが分かった。
さらに、実施例1の吸音手段4として用いられるグラスウール板41の厚さを100mmとした(1−4)GW100mmでは、Dm=14.6dBとなり、(1−3)よりも遮音性能が高いことが分かった。
また、実施例2の吸音手段4を構成するグラスウール板41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを75mmとした(2−1)GW25mm+空気層75mmでは、Dm=13.0dBとなり、(1−1)よりも遮音性能が高いことが分かった。
さらに、実施例2の吸音手段4を構成するグラスウール板41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを175mmとした(2−2)GW25mm+空気層175mmでは、Dm=13.8dBとなり、(1−2)よりも遮音性能が高いことが分かった。
また、実施例2の吸音手段4を構成するグラスウール板41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを250mmとした(2−3)GW25mm+空気層250mmでは、Dm=14.4dBとなり、(1−3)よりも遮音性能が高いことが分かった。
さらに、実施例3の吸音手段4を構成する上下のグラスウール板41,41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを50mmとした(3−1)GW25mm+空気層50mm+GW25mmでは、Dm=14.2dBとなり、(1−3)よりも遮音性能が高いことが分かった。
また、実施例3の吸音手段4を構成する上下のグラスウール板41,41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを150mmとした(3−2)GW25mm+空気層150mm+GW25mmでは、Dm=14.2dBとなり、(3−1)と略同じ遮音性能があることが分かった。
さらに、実施例3の吸音手段4を構成する上下のグラスウール板41,41の厚さを25mmとし、空気層42の厚さを225mmとした(3−3)GW25mm+空気層225mm+GW25mmでは、Dm=14.4dBとなり、(3−1)及び(3−2)よりは若干遮音性能が高いことが分かった。
オクターブバンド別の遮音性能(音圧レベル差)を図6〜図8に示す。
図6では、グラスウール板41の有無や厚さの違いによる遮音性能の変化を確認するために、条件(0)、(1−1)、(1−2)、(1−3)、(1−4)の各遮音性能を表示している。
この図6からは、天井面3に沿ってグラスウール板41を設けると、500Hz以上の周波数帯で性能が向上し、グラスウール板41の厚さを増すと、250Hz以下の周波数帯も含め、全体的に性能が向上することが分かった。
図7では、空気層42の厚さの違いによる遮音性能の変化を確認するために、条件(0)、(1−1)、(2−1)、(2−2)、(2−3)の各遮音性能を表示している。
この図7からは、500Hz以上では空気層42の厚さの影響は殆どないといえるが、500Hz未満、特に250Hz以下の比較的低い周波数帯では、空気層42の厚さが厚いほど、遮音性能が高いことが分かった。
なお、この比較的低い周波数帯の音は、個人差はあるものの、不快感を覚える人がかなりいることから、一概に無視できないものである。
さらに、図8では、全体の厚さ(グラスウール板41の厚さ+空気層42の厚さ)を同一にした場合の、各層の厚さの違いによる遮音性能の変化を確認するために、条件(1−4)、(2−1)、(3−1)の各遮音性能を表示している。
この図8からは、オクターブバンド別の遮音性能を比較しても、グラスウール板41の厚さが厚いほど、遮音性能が高い傾向にあることが分かった。
以上の実証試験の範囲において、遮音性能を最大で約5dB向上させ、Dm=約15dBとすることができた。
更に、各室の建具の遮音性能を加えれば、1階のリビングと2階の寝室間の遮音性能としてDm=30dB以上とすることができることを確認した。
なお、図示は省略したが、グラスウール板41,43は、密度が高いものを用いるほど遮音性能が高いことを確認している。
以上、図面を参照して、本発明を実施するための形態を実施例1〜3に基づいて詳述してきたが、具体的な構成は、これら実施例1〜3に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、上記した実施例1〜3では、吸音手段4を構成する吸音板として、グラスウール板41,43を用いて実施したが、これに限定されず、例えば、ロックウール板などを用いて実施してもよい。
また、上記した実施例1〜3では、階段室2の天井面3に面状の吸音手段4を設けて実施したが、これに限定されず、例えば、階段の踊り場に天井面がある場合には、この踊り場の天井面に面状の吸音手段4を設けて実施してもよい。
さらに、上記した実施例1〜3では、階段室2の階段として、回り階段(折り返し階段)20を採用して実施したが、これに限定されず、例えば、直線階段などで実施してもよい。
また、上記した実施例1〜3では、階段室2の天井面3に面状の吸音手段4を設けるだけで実施したが、これに限定されず、特許文献1をはじめとした他の技術と複合して実施することで、より防音効果を高めることができる。
さらに、上記した実施例1〜3では、階段室2の略水平な天井面3に、この天井面3に沿って面状の吸音手段4を設けて実施したので、面状の吸音手段4も略水平となっているが、これに限定されない。
すなわち、例えば、天井面3が傾斜している場合は、吸音手段4をこの傾斜に合わせて設けて実施してもよいし、異なる角度で設けて実施してもよい。
1 建物
11 1階の空間(下階の空間)
12 2階の空間(上階の空間)
2 階段室
20 回り階段(折り返し階段)
3 天井面
4 吸音手段
41 グラスウール板(吸音板)
42 空気層
43 グラスウール板(吸音板)

Claims (6)

  1. 建物における下階の空間と上階の空間との間を繋ぐ階段室を伝って伝播する音を防ぐ建物の防音構造であって、
    前記階段室の天井面又は踊り場の天井面に、該天井面に沿って面状の吸音手段が設けられていることを特徴とする建物の防音構造。
  2. 前記面状の吸音手段には、吸音板が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の防音構造。
  3. 前記面状の吸音手段は、内部に空気層が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の防音構造。
  4. 前記面状の吸音手段には、少なくも2枚の吸音材が用いられているとともに、前記吸音材間に空気層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建物の防音構造。
  5. 前記階段室の階段は、回り階段であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の建物の防音構造。
  6. 請求項1乃至5のいずれか1項に記載の建物の防音構造を備えていることを特徴する建物。
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