JP2007162253A - 残響音低減装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】住宅のリビングルーム等の居室における残響時間を短縮することで、クリヤーかつ聞き取り易い音環境を容易に実現することができる実用的な残響音低減装置を提供する。
【解決手段】住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板11、蹴込み板12及び側桁3からなる階段1において、蹴込み板12に板厚方向に貫通する多数の微細孔12a,…を形成した。微細孔12a,…が形成された蹴込み板12,…と有効利用されていない階段下空間とにより階段1に吸音性能を付加することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができる。
【選択図】図4
【解決手段】住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板11、蹴込み板12及び側桁3からなる階段1において、蹴込み板12に板厚方向に貫通する多数の微細孔12a,…を形成した。微細孔12a,…が形成された蹴込み板12,…と有効利用されていない階段下空間とにより階段1に吸音性能を付加することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができる。
【選択図】図4
Description
本発明は、住宅のリビングルーム等の居室に用いられる残響音低減装置に関するものである。
最近の住宅環境に対する高品質化の要求に伴って外来騒音に対する住宅の遮音性能が向上した結果、住宅内部の暗騒音レベルを低下することはできたものの、内部騒音の外部への漏れが少なくなったことから住宅内部に音が篭もって残響時間が長くなっている。したがって、内部騒音のレベルが変わらなくても居住者にとっては騒音が大きく感じられ、却って住宅の音環境が悪くなってしまうという問題が発生してきている。ここで、室内の音源から音を出した場合において、音源が停止した後に室内に音が残る現象である残響、該残響を量的に表した残響時間及び残響式等については、公知となっている(非特許文献1参照)。
また、残響時間を短縮する構成を開示するものではないが、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を備えた1枚以上の微細孔板を、音源と音響的に剛な壁体との中間に所定距離を隔てて配置してなる構成が吸音装置として利用できることが知られている(非特許文献2参照。)。
さらに、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の円形微細孔を設けた2層以上の音響パネルを所定間隙を介して相対して配置し、これら音響パネルを音源に対して所定距離を隔てて配置して構成させ、前記微細孔からの微量な空気漏れに基づく有効な音響レジスタンスの存在により、低周波域を含む広い周波数域にわたって吸音効果を発揮させることができる吸音装置が開示されている(特許文献1参照。)。
さらにまた、本願の発明者により、微細孔明き板において、板厚方向に貫通する円形断面を入口側と出口側の間で拡大又は縮小させることにより、従来の同一断面微細孔明き板よりも大きな音響インピーダンスを実現できて、これにより微細孔と空気層で構成される振動系の共振周波数即ち吸音率ピーク周波数を低周波側に移行させ、さらに吸音帯域幅を従来装置よりも拡大することができる音響パネル及び吸音・遮音装置が開示されている(特許文献2参照。)。
また、本願の発明者により、微細孔明き板の音源側表面に、所要の厚さの無孔板を配置することによって、微細孔明き板の音響インピーダンスに無孔板が持つ音響リアクタンスを付加することにより、従来の微細孔明き板よりも大きな音響インピーダンスを実現できて、これにより共振周波数即ち吸音率ピーク周波数を低周波側に移行させることができる音響パネル及び吸音・遮音装置に係る発明がなされている(特許文献3参照。)。
さらに、本願の発明者により、微細孔明き板を母材と多数の嵌め込み部材とで構成させ、嵌め込み部材には所要の音響インピーダンスを持つ微細孔を嵌め込み操作に先立って予め貫通加工させることによって、微細孔を直接に孔明け加工が困難な材質、あるいは大きな板厚を有する母材を用いた音響パネルが開示されている(特許文献4参照。)。
さらにまた、本願の発明者により、板厚方向に貫通する多数の微細孔を設けた微細孔明き板において、該微細孔明き板の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔形状を非円形とし、アスペクト比を調整することによって、微細孔明き板の音響インピーダンスを構成する音響レジスタンスと音響リアクタンスの比率を制御することにより、従来の同一断面積を有する円形微細孔明き板よりも大きな音響インピーダンスを実現できて、これにより微細孔と空気層で構成される振動系の共振周波数即ち吸音率ピーク周波数を低周波側に移行させ、さらに吸音帯域幅を従来装置よりも拡大することができる音響パネル及び吸音・遮音装置に係る発明がなされている(特願2005−079251号。以下において「先願」という。)。
前川純一,森本政之,阪上公博著,「建築・環境音響学」,第2版,共立出版 株式会社,2000年9月25日,p.13-14,p.51-52
Maa Dah-You, "Potential of microperforated panel absorber", Journal of the Acoustical Society of America,(U.S.A.), Nov. 1998, Vol.104, No .5, p.2861-2866
特開2005−173398号公報(図1−46)
特開2005−31240号公報(図1−14)
特開2005−273273号公報(図1−33)
特開2005−23619号公報(図1−7)
前記のとおり、住宅の遮音性能が向上した結果、却って住宅の音環境が悪くなるという問題が発生している。また、リビングルームの大面積化、吹き抜け天井の採用、室内の開放感を高めるための窓開口の拡大化、及び、フローリング床の使用率の上昇等の傾向が顕著になってきている。さらに、リビングルーム内に階段と2階廊下が取り込まれる設計が採用されることも多くなってきた。
したがって、リビングルームの室容積が拡大し、壁間の対面距離が大きくなる傾向が強まり、リビングルーム表面積に含まれる窓ガラスやフローリング床等音響的に剛な部分の表面積の割合が高くなっている。
その結果、リビングルーム内の吸音性能が低下し、リビングルームの持つ残響時間が特に低周波帯域において長くなった結果として、会話が聞き取りにくくなること、及び、音楽再生時の音響品質が劣化すること等の問題点も発生している。
一方では、大型テレビのコストダウンが進み、5.1サラウンド音響システムに代表される全周囲音響装置も普及してきたので、映像と音楽を鑑賞する場合には、複数の音源(スピーカ)ら音響が発射される結果、リビングルーム内の音圧レベルも高まり、複数の音源からの音響が、音響的に剛性の高まった壁面同士で反射し、相互に干渉し合って複雑で長い時間継続する不快な残響現象が発生し、視聴者にとって大変に聞きづらい音環境となる事例が報告されるようになってきた。
さらに、音源から発射され、壁面から反射された音響は、階段を通じて天井に向かって誘導され、2階においては天井面と床面との間隔が狭くなっているので、1階から2階に伝播した音の音圧は1階空間における音圧よりもさらに高められた結果、2階の個室(それらは寝室、書斎、勉強部屋等プライバシー環境を必要とされることが多い)の静粛性が損なわれるという音環境の悪化も報告されている。
以上のような最近の住宅における音環境の悪化という問題を実用的な構成により解決することが急務であるといえる。よって、本発明は、住宅のリビングルーム等の居室における残響時間を短縮することで、クリヤーかつ聞き取り易い音環境を容易に実現することができる実用的な残響音低減装置を提供することを目的とする。
本発明に係る残響音低減装置は、前記課題解決のために、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板、蹴込み板及び側桁からなる階段において、前記蹴込み板に板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなるものである。
ここで、前記踏板下面に、前記蹴込み板と所定距離を隔てて、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなると好ましい。
また、本発明に係る残響音低減装置は、前記課題解決のために、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板及び側桁からなり、蹴込み板がない階段において、前記踏板下面に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなるものである。
さらに、本発明に係る残響音低減装置は、前記課題解決のために、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた階段下収納室又は収納家具等の扉パネルに、板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなるものである。
さらにまた、本発明に係る残響音低減装置は、前記課題解決のために、住宅のリビングルーム等の居室に設けられたひな壇階段の手摺の支柱に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板及び無孔板複数枚を取り付けて側面パネルとしてなるものである。
本発明に係る残響音低減装置によれば、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板、蹴込み板及び側桁からなる階段において、前記蹴込み板に板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなるので、前記微細孔が形成された蹴込み板と有効利用されていない階段下空間とにより前記階段に吸音性能を付加することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができるという顕著な効果を奏する。
また、前記踏板下面に、前記蹴込み板と所定距離を隔てて、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなると、さらに残響音低減効果が増大する。
さらに、本発明に係る残響音低減装置によれば、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板及び側桁からなり、蹴込み板がない階段において、前記踏板下面に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなるので、前記微細孔明き板と有効利用されていない階段下空間とにより前記階段に吸音性能を付加することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができるという顕著な効果を奏する。
さらにまた、本発明に係る残響音低減装置によれば、住宅のリビングルーム等の居室に設けられた階段下収納室又は収納家具等の扉パネルに、板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなるので、前記多数の微細孔と階段下収納室又は収納家具等内の空間とにより振動系が形成され、低周波域において有効に機能する吸音装置を構成することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができるという顕著な効果を奏する。
また、本発明に係る残響音低減装置によれば、住宅のリビングルーム等の居室に設けられたひな壇階段の手摺の支柱に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板及び無孔板複数枚を取り付けて側面パネルとしてなるので、前記微細孔と側面パネルと壁面との間の空間とによる振動系等が形成され、、低周波域において有効に機能する吸音装置を構成することができるため、居室空間の残響時間を大幅に低減することができるという顕著な効果を奏する。
さらに、以上のような本発明に係る残響音低減装置によれば、階段でつながる上下階において、静粛であるべき上階の個室への下階からの音響伝播が抑制されるため、上階の個室の静粛性を保つことができるという効果も奏する。
残響の少ない快適な音環境とは、音響学で定義される残響時間の短い環境ということができるが、拡散音場での残響時間の理論的な導出は既に完成されており、例えばSabineの残響式として、次式が知られている。
ここに、Tは残響時間、Vは室空間の容積、αは使用材料の吸音率、Aは使用吸音材料の表面積であり、(数1)の分母は吸音率の異なる材料ごとに吸音率と使用面積の積、即ち吸音力の累計を表している(非特許文献1参照。)。
通常の室空間における残響時間は、低周波域においては長く、周波数が高くなるほど短くなる傾向を持っているが、これは、室の壁面、天井面及び床面並びに室内に配置される家具等が持つ吸音率が、低周波域においては小さく、高周波域においては大きくなる一般的傾向を持っているので、室内に存在する音波が前記壁面、天井面及び床面並びに家具等の表面で反射を繰り返すうちに吸収されて減衰する程度が、低周波域の音波ほど小さく、高周波域の音波ほど大きいことに起因しているからであると考えられる。
それ故、本願の発明者は、低周波域において高い吸音率を持つ音響パネルを室内に所要の面積だけ配置すれば、残響時間の周波数特性を大幅に改善できることに着眼したものであり、以下において、そのような作用効果について数値例に基づいて説明する。例えば、孔径0.6mm、孔ピッチ9.0mmの円形微細孔を、板厚0.6mmの鉄板に孔明けした微細孔明き板を音響的に剛な壁面の前面に距離300mmを隔てて配設した場合の音場入射吸音率(非特許文献1、77頁)の周波数特性計算値、及び、面積8平方メートルの微細孔明き板の吸音力は表1に示すとおりであり、これをグラフ化したものが図1である。図1より、200Hzから250Hz付近で吸音率が最も高い値を示し、周波数が高くなるにつれて、吸音率が次第に低くなる傾向を持つことがわかる。
また、室容積110立方メートル(室内壁表面積150平方メートル)の残響時間の実例、および残響時間値から(数1)を用いて逆算した室固有の吸音力(単位Sabine)を表2に示す。さらに、前記微細孔明き板による吸音構造の効果を検証するために、表1及び表2記載の吸音力と室容積の値から、(数1)を用いて算出した、周波数ごとの残響時間値(残響時間の周波数特性)を表3に示す。
表2及び表3の残響時間を併せてグラフ化したものが図2であり、吸音材料として、微細孔明き板を室内壁表面積の約5%に相当する8平方メートルを使用しただけで、周波数帯域の殆ど全域での残響時間が1.5秒以下となり、音楽鑑賞に適した、快適な音響空間を形成することが可能となることがわかる。
また、本願発明は、最近の住宅環境を精査した結果、後述する階段等に着目して、優れた吸音性能と残響音低減性能を持つ微細孔明き板構造からなる音響装置を、主として階段付近に配設したものである。階段周辺は室内に発生した音波が集中してくる領域であるので、吸音及び残響音低減に対して極めて有効に機能するものである。
また、共鳴原理を利用した吸音装置を低周波域において共鳴機能を発揮させるためには、共鳴要素部分即ち空気層の寸法が極めて大きくなるので、寸法上の制約を受ける場合が多いが、本願発明では、後述するように、階段下空間、収納室内部空間又は階段通路部分等を利用して共鳴要素部分を構成するので、寸法上の制約を受けることなく、空間を有効に利用し、吸音及び残響音低減に極めて有効に機能する特徴を持っている。
実施の形態1.
図3及び図4は、本発明の実施の形態1に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図3は階段まわりの縦断側面図、図4は階段部分の拡大図であり、図4(a)は縦断側面図、図4(b)は正面図である。1階床面FL1と2階床面FL2との間に架設される階段1の下側には階段下空間2が存在する。この階段下空間2は、図3のように一部分が階段下収納室21として区切られて利用されるか、あるいは全く利用されずに放置される場合もある。なお、図3の階段1において、図示しない騒音源は、階段1の通路側に位置する。
図3及び図4は、本発明の実施の形態1に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図3は階段まわりの縦断側面図、図4は階段部分の拡大図であり、図4(a)は縦断側面図、図4(b)は正面図である。1階床面FL1と2階床面FL2との間に架設される階段1の下側には階段下空間2が存在する。この階段下空間2は、図3のように一部分が階段下収納室21として区切られて利用されるか、あるいは全く利用されずに放置される場合もある。なお、図3の階段1において、図示しない騒音源は、階段1の通路側に位置する。
図3及び図4において、階段1の踏板11は通行者の体重を支える部分であり、その側端部が、階下から階上にわたって設けられた左右の側桁3,3に形成された凹部に嵌合して支持される。階段1の蹴込み板12には、階段下空間2への、通行者の足先の突出防止及び物体の転落防止等の機能がある。
本願の実施の形態1に係る発明は、従来は殆ど有効利用されていなかった階段下空間2を活用し、蹴込み板12のみに加工を施すことで、階段1に吸音性能を付加し、居室空間の残響時間を大幅に低減しようとするものである。即ち、蹴込み板12に所要寸法の微細孔12aを所要ピッチで貫通させることで、蹴込み板12は、非特許文献2、特許文献1〜3並びに先願に記載されるところの微細孔明き板と同等の機能を有する吸音パネルとなる。ここで、微細孔12aの直径及び微細孔列12a,…のピッチ等は、要求性能に応じて適宜設定されるが、該直径は1mm以下、該ピッチは0.8mm以上10mm以下がより好ましい。なお、蹴込み板12の板厚方向に直交する切断面において、周壁により囲まれる微細孔12aの形状は、該微細孔の形成しやすさを考慮すると円形が望ましいといえるが、非円形としてもよい。
また、蹴込み板12は木材を使用される場合が多いが、図5(a)に示すように、金属製薄板を折り曲げ、微細孔13a,…を明けられた蹴込み板13を用いてもよい。また、図5(b)に示すように、比較的厚い板材に円錐状の微細孔14a,…を明けてなる蹴込み板14を用いてもよい。さらに、図5(c)に示すように、特許文献4に従って蹴込み板15の通孔15a,…に微細孔16aが形成された微細孔部材16,…を嵌めこんでもよい。
一方、階段下空間2は非特許文献2、特許文献2及び3並びに先願に記載されるところの、「微細孔明き板と剛壁との中間に介在する空気層」として機能し、微細孔12a,…等との間で振動系を形成して、共振周波数の近傍では高い吸音率を得ることができる。
ところで、160Hzあるいはそれ以下の低周波域で高い吸音率を得るためには、円形微細孔等が明けられた通常の微細孔明き音響パネルでは、背後の空気層厚さが300mm以上となることが望ましく、この空気層厚さを確保することが難しい事例が多いが、本願発明では背後の空気層として、階段下空間2を利用するので、背後の空気層厚さの確保には全く問題は無く、超低周波域の吸音までを容易に実現することができる。このように、本発明は、利用度のあまり高くない空間を有効活用して、残響音低減の効果を高めるという一石二鳥の効果を奏するものである。
実施の形態2.
近年、空間に広がりを持たせる等の目的で、踏板11と側桁3のみで構成され、蹴込み板12が存在しない露出型階段も採用されている。図6は本発明の実施の形態2に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図6(a)は露出型階段の踏板下面に2枚の微細孔明き板を所定距離を隔てて平行配置する構成を示す縦断側面図、図6(b)は同じく2枚の微細孔明き板を所定距離を隔てて傾斜させて配置する構成を示す縦断側面図である。
近年、空間に広がりを持たせる等の目的で、踏板11と側桁3のみで構成され、蹴込み板12が存在しない露出型階段も採用されている。図6は本発明の実施の形態2に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図6(a)は露出型階段の踏板下面に2枚の微細孔明き板を所定距離を隔てて平行配置する構成を示す縦断側面図、図6(b)は同じく2枚の微細孔明き板を所定距離を隔てて傾斜させて配置する構成を示す縦断側面図である。
本願の実施の形態2に係る発明も、従来は殆ど有効利用されていなかった階段下空間2を活用し、踏板11のみに微細孔明き板を付設することで、階段1に吸音性能を付加し、居室空間の残響時間を大幅に低減しようとするものである。即ち、図6(a)のように、多数の微細孔17a,…が明けられた2枚の微細孔明き板17,17を、踏板の裏側(下面)に所定距離を隔てて対向させ平行に垂設することにより、特許文献1の原理に基づいて、低周波域での吸音効果を実現することができる。踏板11の下には、多数の微細孔17a,…が明けられた2層の微細孔明き板17,17が所要間隔を隔てて取り付けられているので、外部から到達する騒音に対して有効な吸音と残響低減を実現できる。ここで、微細孔17aの直径及び微細孔列17a,…のピッチ等は、要求性能に応じて適宜設定されるが、該直径は1mm以下、該ピッチは0.8mm以上10mm以下がより好ましい。
また、図6(b)のように、多数の微細孔17a,…,18a,…が明けられた2枚の微細孔明き板17,18を所定距離を隔てて傾斜させて相対配置する構成としてもよい。さらに、3枚以上の微細孔明き板を踏板11下面に付設してもよい。さらにまた、低周波域における所要の音響インピーダンスを得るために、特許文献2に示す不等断面微細孔、又は、先願に示す非円形断面微細孔を明けて前記微細孔明き板としてもよい。また、前記微細孔明き板17,18をアクリル又はポリカーボネート等の透明樹脂製とすれば、前記露出型階段により残響音低減装置を構成しながら、見通しを確保し採光性を維持することができる。
なお、実施の形態1のような微細孔が明けられた蹴込み板がある階段の踏板下面に、図6(a)若しくは(b)のような2枚の微細孔明き板を垂設又は斜設してもよいし、該踏板下面に蹴込み板と所定距離を隔てて1枚の微細孔明き板を垂設又は斜設しても、該踏板下面に各微細孔明き板間に所定距離を隔てて3枚以上の微細孔明き板を垂設又は斜設してもよい。
実施の形態3.
図3、図7及び図8は、本発明の実施の形態3に係る残響音低減装置を構成する階段下収納室の構造説明図であり、図3は階段下収納室の正面図、図7は縦断側面図、図8は扉の構成説明図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は縦断側面図である。なお、図7の階段収納室21において、図示しない騒音源は、扉24の左側に位置する。
図3、図7及び図8は、本発明の実施の形態3に係る残響音低減装置を構成する階段下収納室の構造説明図であり、図3は階段下収納室の正面図、図7は縦断側面図、図8は扉の構成説明図であり、図8(a)は正面図、図8(b)は縦断側面図である。なお、図7の階段収納室21において、図示しない騒音源は、扉24の左側に位置する。
階段下収納室21は、壁22と天井23で階段下空間2と区切られ、前面に設けられた扉24が階段下収納室21の内外を区切っており、把手25,25により開閉される。そして、扉24は、扉枠26及び扉パネル27等により構成される。この扉パネル27の板厚方向に、所要寸法の微細孔27a,…を所要ピッチで貫通させることで、音響パネルとして使用可能な音響インピーダンスを付与することができる。ここで、微細孔27aの直径及び微細孔列27a,…のピッチ等は、要求性能に応じて適宜設定されるが、該直径は1mm以下、該ピッチは0.8mm以上10mm以下がより好ましい。
階段下収納室21の内部には、ある程度の収納物が収納されてはいるものの、該収納室内の天井の下や扉側部分等には相当の空間が残っている可能性があり、これら残余空間を扉パネル27に形成された多数の微細孔27a,…が持っている音響インピーダンスに対応する空気層として振動系を形成させ、低周波域において有効に機能する吸音装置を構成することができる。
また、居室内に造り付けの収納家具が配設されている場合、該収納家具の扉パネルに、階段下収納室21の扉24の扉パネル27と同様に、多数の微細孔を形成すれば、階段下収納室21と同様に、低周波域において有効に機能する吸音装置を構成することができる。
実施の形態4.
図9〜図11は本発明の実施の形態4に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図9はひな壇階段の斜視図、図10は自立型手摺の横断平面図、図11は同じく縦断正面図である。なお、図9のひな段階段4において、図示しない騒音源は、図11における自立型手摺5の右側に位置する。
図9〜図11は本発明の実施の形態4に係る残響音低減装置を構成する階段の構造説明図であり、図9はひな壇階段の斜視図、図10は自立型手摺の横断平面図、図11は同じく縦断正面図である。なお、図9のひな段階段4において、図示しない騒音源は、図11における自立型手摺5の右側に位置する。
支柱6の前後にブラケット7,7を添設し、ボルト・ナット又はリベット等の締結要素8,…にて、支柱6,…により側面パネル9,10を支持する。側面パネル9及び10の板厚方向に、所要寸法の微細孔9a,…,10a,…を所要ピッチで貫通させることで、音響パネルとして使用可能な音響インピーダンスを付与することができる。ここで、微細孔9a,10aの直径及び微細孔列9a,…,10a,…のピッチ等は、要求性能に応じて適宜設定されるが、該直径は1mm以下、該ピッチは0.8mm以上10mm以下がより好ましい。
側面パネル9及び10がいずれも微細孔明き板である場合、側面パネル9と側面パネル10の間の空間S1、側面パネル10と反対側壁面Wとの間の空間S2、側面パネル9及び側面パネル10が、図12の電気的等価回路に示す如き、振動系を形成する。即ち、側面パネル9(音源側)の基準化音響レジスタンスをr1、基準化音響リアクタンスをm1、側面パネル10(通路側)の基準化音響レジスタンスをr2、基準化音響リアクタンスをm2、側面パネル9と側面パネル10の間隔をD1、側面パネル10と壁面Wの間隔をD2、音の角周波数をω、音速をc、虚数単位をjで表す時、側面パネル9と側面パネル10及び2層の空気層から成る音響系の基準化音響インピーダンスzは、次式となる。
この回路において、低周波側では側面パネル9から壁面Wまでの間隔D1+D2と側面パネル10とで形成する振動系の共振周波数に近い周波数で共鳴が起こり、高周波側では側面パネル9と側面パネル10の間隔D1で形成する振動系の共振周波数に近い周波数で共鳴が起こり、2箇所に共鳴周波数を持つ故に、全体的に吸音帯域を拡張することができるという特徴を持っている。
本願の実施の形態4に係る発明においては、間隔D2に相当する空間は側面パネル10と壁面Wとの間に介在する通路空間S2を有効に活用したものであり、間隔D2が大きいことから、共振周波数が極めて低くなり、超低周波域での優れた吸音性能を、特別な空気層を準備することなく経済的に実現することができる。
本実施の形態の吸音性能を数値例で説明する。表4は微細孔及び空気層の諸元を示す数値例であり、数値例#1は、孔径0.6mm、孔ピッチ10.0mmの円形断面微細孔を、板厚0.6mmの鉄板に孔明けした微細孔明き板を音響的に剛な壁面の前面に距離900mmを隔てて配設した場合を、数値例#2は、孔径0.6mm、孔ピッチ10.0mmの円形断面微細孔を、板厚0.6mmの鉄板に孔明けした2層の微細孔明き板同士を距離100mmを隔てて配設し、更に音響的に剛な壁面の前面に距離900mmを隔てて配設した場合を示している。
表5は、前記数値例#1及び数値例#2に対する音場入射吸音率の周波数特性計算値を示しており、これら数値をグラフ化したものが図13である。図13より、400Hzにおいて高い吸音率のピークを持つ一方で、100Hz以下の超低周波域においても高い吸音性能を実現できること、それ故に超低周波域においても高い残響音低減性能が実現できることが明らかに認められる。
図9に示すような通路部分の片側のみに自立型手摺5が立設されて、その反対側に壁面Wが存在するひな壇階段4の他に、通路部分の両側に自立型手摺5,5が立設されひな壇階段があるが、このように通路両側に自立型手摺5,5が立設された場合も、両側の手摺のパネルと中間の空気層とで振動系を形成し、特許文献1の原理に基づいて、特別の空気層を準備することなく、両側の手摺に取り付けられたパネルの空気層を活用して優れた吸音性能を経済的に実現することができる。
また、側面パネル9,10をアクリル又はポリカーボネート等の透明樹脂製とすれば、前記ひな壇階段により残響音低減装置を構成しながら、見通しを確保し採光性を維持することができる。さらに、適切な厚さとカラーパターンを持った、薄いフィルムを側面パネル9,10の表面に貼り付けることで、吸音性能を損なうことなく(特許文献4参照)、室環境の色彩効果を高めることができる。さらにまた、また、コスト節減のために、側面パネル9,10のうち、どちらか一方を省略しても良いし、どちらか一方を無孔板としても良い。
以上のような本発明の実施の形態1〜4に係る残響音低減装置によれば、階段でつながる上下階において、静粛であるべき上階の個室への下階からの音響伝播が抑制されるため、上階の個室の静粛性を保つことができるという効果も奏する。
W 壁面
1 階段
2 階段下空間
3 側桁
4 ひな壇階段
5 自立型手摺
6 支柱
7 ブラケット
8 締結要素
9,10 側面パネル
9a,10a 微細孔
11 踏板
12,13,14,15 蹴込み板
15a 通孔
12a,13a
16 微細孔部材
16a 微細孔
17,18 微細孔明き板
17a,18a 微細孔
21 階段下収納室
22 壁
23 天井
24 扉
25 把手
26 扉枠
27 扉パネル
27a 微細孔
1 階段
2 階段下空間
3 側桁
4 ひな壇階段
5 自立型手摺
6 支柱
7 ブラケット
8 締結要素
9,10 側面パネル
9a,10a 微細孔
11 踏板
12,13,14,15 蹴込み板
15a 通孔
12a,13a
16 微細孔部材
16a 微細孔
17,18 微細孔明き板
17a,18a 微細孔
21 階段下収納室
22 壁
23 天井
24 扉
25 把手
26 扉枠
27 扉パネル
27a 微細孔
Claims (5)
- 住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板、蹴込み板及び側桁からなる階段において、
前記蹴込み板に板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなる残響音低減装置。 - 前記踏板下面に、前記蹴込み板と所定距離を隔てて、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなる請求項1記載の残響音低減装置。
- 住宅のリビングルーム等の居室に設けられた、階段下空間が存在する、踏板及び側桁からなり、蹴込み板がない階段において、
前記踏板下面に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚を垂設又は斜設してなる残響音低減装置。 - 住宅のリビングルーム等の居室に設けられた階段下収納室又は収納家具等の扉パネルに、板厚方向に貫通する多数の微細孔を形成してなる残響音低減装置。
- 住宅のリビングルーム等の居室に設けられたひな壇階段の手摺の支柱に、板厚方向に貫通する多数の微細孔が形成された微細孔明き板1枚、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板複数枚、又は、所定距離を隔てて相対してなる前記微細孔明き板及び無孔板複数枚を取り付けて側面パネルとしてなる残響音低減装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005357319A JP2007162253A (ja) | 2005-12-12 | 2005-12-12 | 残響音低減装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005357319A JP2007162253A (ja) | 2005-12-12 | 2005-12-12 | 残響音低減装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2007162253A true JP2007162253A (ja) | 2007-06-28 |
Family
ID=38245483
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005357319A Pending JP2007162253A (ja) | 2005-12-12 | 2005-12-12 | 残響音低減装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2007162253A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2009013677A (ja) * | 2007-07-05 | 2009-01-22 | Daiwa House Ind Co Ltd | 階段の吸音構造 |
JP2009062718A (ja) * | 2007-09-06 | 2009-03-26 | Toyota Motor Corp | 建物の吸音構造、それを備えた建物及び吸音構造の製造方法 |
WO2019044589A1 (ja) | 2017-08-28 | 2019-03-07 | 富士フイルム株式会社 | 防音構造、及び防音構造体 |
CN110725471A (zh) * | 2019-10-22 | 2020-01-24 | 哈尔滨工程大学 | 一种具有双自由度局域共振单元的变截面声学超材料梁 |
-
2005
- 2005-12-12 JP JP2005357319A patent/JP2007162253A/ja active Pending
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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CN110725471B (zh) * | 2019-10-22 | 2021-04-20 | 哈尔滨工程大学 | 一种具有双自由度局域共振单元的变截面声学超材料梁 |
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