本発明の実施形態の三次元座標検知装置の構成について説明する。本実施形態の三次元座標検知装置1は、大型ディスプレイやホワイトボード等に搭載される三次元座標検知装置である。
図1に示されるように、本実施形態の三次元座標検知装置1は、5つの二次元座標検知装置11〜15から構成されている。これらの各二次元座標検知装置11〜15はそれぞれが同じ構造である。以下、図2〜図3を参照して、複数の二次元座標検知装置11〜15を代表して二次元座標検知装置11の構造について説明する。
二次元座標検知装置11は、外枠2と、平面状の領域である二次元座標領域D2内の物体の座標を検知するために、光を出射すると共に受光する左右一対の光学装置3,4とを備える。
外枠2は、二次元座標領域D2の周縁上に配置され、図2において上側の上辺21と、下側の下辺22と、右側の右辺23と、左側の左辺24とで構成される。上辺21と下辺22は互いに平行で且つ水平な辺として構成され、右辺23と左辺24は互いに平行で且つ上下辺21,22に垂直な辺として構成される。
外枠2は、大画面の枠として必要な剛性を持つ部材であればよく、例えば、熱可塑性樹脂を用いて射出成形等の製法で製造された軽量安価な樹脂枠が好ましい。下辺22,右辺23及び左辺24は、入射した光に平行で且つ入射方向とは反対方向に出射する再帰反射となるような反射特性を持つように表面が加工されている。下辺22,右辺23及び左辺24が、本発明における再帰反射部に相当する。
右側の光学装置3は、上辺21と右辺23の交点上、すなわち図2の右上の角の外枠2の周縁上に配置され、左側の光学装置4は、上辺21と左辺24の交点上、すなわち図2の左上の角の外枠2の周縁上に配置される。一対の光学装置3,4は、外枠2の配置する位置に応じて左右対称に同じ構成を有するものであるので、以下の説明では、主に右側の光学装置3について説明し、左側の光学装置4の詳細な説明は省略する。
図3に示されるように、右側の光学装置3は、光源31と、走査部32と、受光部33とを備える。光源31は、狭指向性の光となるように半導体レーザ光を出射するように構成されている。このため、光が進んだ距離による光の減衰は無いものとして扱うことができる。これによって、本実施形態の各光学装置3,4は、大型ディスプレイに適した構成となっている。また、光源31には、振幅が0と0でない値(例えば5[V])とを交互に繰り返すパルス波形が駆動波形として供給されるものであり、パルス波の振幅が0のときに光源31が消灯し、パルス波の振幅が0でない値のときに光源31が点灯する。
走査部32は、光偏向器40を有している。走査部32は、光偏向器40が有するミラーを回転駆動することで、光源31が出射したレーザ光を様々な角度に偏向して、外枠2で形成された二次元座標領域D2内を走査する。ここで、光源31と走査部32とが本発明における「照射部」に相当する。
本実施形態では、光偏向器40を、電圧信号が供給されることでミラーを回転駆動する圧電アクチュエータを備えるMEMS(Micro Electro Mechanical System)デバイスで構成している。このように、圧電アクチュエータを用いることで、光偏向器40の駆動部を非常に小型化できる。なお、光偏向器40は、本実施形態の構成に限らず、モータ(電動機)等の駆動力により回転駆動するものであってもよい。
受光部33は、走査部32によって二次元座標領域D2内に出射された光が、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24のいずれかに入射し、再帰反射して戻って来た反射光を受光できるように配置される。受光部33は、受光したエネルギーに応じて電気信号を出す光電変換素子であり、コスト等を考慮するとフォトダイオードが好ましいが、これに限らず、イメージセンサー等を使用しても良い。
光源31は、外枠2の上辺21から走査部32の光偏向器40のミラーの中央部に向けてレーザ光を出射できる位置に配置される。本実施形態では、光源31は、半導体レーザの出力にビーム整形用のレンズを装着してレーザ光を出力できるように構成しているがこれに限らない。例えば、任意の位置に配置された光源の光を、光ファイバによって本実施形態の光源31の位置に伝達させて、光偏向器40のミラーに向けてレーザ光を出射できるように構成したものであってもよい。
走査部32は、周期性を有する電圧波形(例えば、正弦波や三角波等)を光偏向器40に供給することで、光偏向器40のミラーを±22.5°(計45°)以上の角度で回転駆動(振動)し、二次元座標領域D2の全領域に対して光源31からのレーザ光で走査可能に構成される。このとき、走査部32は、光源31からのレーザ光を偏向した光が、二次元座標領域D2の面に対して水平に出射されるように光偏向器40のミラーを回転駆動する。以下、この光偏向器40に偏向されたレーザ光の光路で形成される平面を「走査平面」という。
光偏向器40のミラーの偏向角が22.5°の時には、二次元座標領域D2の垂直方向に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射される。すなわち、右側の光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から下辺22と右辺23の交点に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射され、左側の光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から下辺22と左辺24の交点に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射される。
光偏向器40のミラーの偏向角が−22.5°の時には、二次元座標領域D2の水平方向に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射される。すなわち、右側の光学装置3の場合には、上辺21と右辺23の交点から上辺21と左辺24の交点に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射され、左側の光学装置4の場合には、上辺21と左辺24の交点から上辺21と右辺23の交点に向かって光偏向器40のミラーからレーザ光が出射される。
次に、外枠2の下辺22,右辺23及び左辺24の再帰反射となるように加工された表面の詳細について説明する。
下辺22,右辺23及び左辺24は、入射角が0°の光を、反射角が0°で最大光度となり所定の半値角の広がりを持つ光として反射する反射特性を持つ。これによって、例えば二次元座標領域D2の大きさ、例えば、二次元座標領域D2の対角線の長さが50インチ程度とすると、光学装置3,4から出射した光が再び光学装置3,4に戻ってきた時点で、30〜40mmφ程度のビーム幅を持つことになる。従って、この場合には、各光学装置3,4の受光部33は、光偏向器40のミラーから30〜40mm以内の場所に配置されれば、再起反射した光を受光できる。
本実施形態では、受光部33を外枠2の右上(上辺21と右辺23の交点)及び左上(上辺21と左辺24の交点)の二次元座標領域D2側の側壁に配置している。このとき、各光学装置3,4の光偏向器のミラーと受光部33は、二次元座標領域D2の面に対して法線方向に30〜40mm程度ずらした位置に配置される。
このように、各光学装置3,4の光偏向器40のミラーから受光部33までの距離を、再帰反射部としての下辺22,右辺23及び左辺24の反射特性と、二次元座標領域D2の大きさとに応じて決定することで、ビーム分割器のような光束を分割する装置を設けることなく、光偏向器40のミラーと受光部33とを互いに干渉しないように配置できる。
また、各光学装置3,4の光偏向器40のミラーから出射する光が互いに影響を与えないようにするため、互いの走査平面が同一平面にならないように構成している。すなわち、互いの走査平面を、平行となるように法線方向にずらしている。このように、二次元座標領域D2内には2つの走査平面が存在している。また、二次元座標領域D2は、上記のように2つの走査平面が存在しているので、厳密に言えば、当該二次元座標領域D2の法線方向にWの厚さを持つ領域となる。この厚さWは、外枠2の厚さと同じである。
また、光源31には、光が出射される部位に光学フィルタ41が貼設されている。また、受光部33には、光を受光する部位に光学フィルタ41と同じ特性の光学フィルタ42が貼設されている。これらの光学フィルタ41,42は、所定の波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタである。これにより、光源31から出射される光は、光学フィルタ41により所定の波長のみの光となり、走査平面に出射される。また、受光部33が受光する光は、光学フィルタ42により所定の波長のみの光となる。
以上が二次元座標検知装置11の構成である。
次に、このように構成された二次元座標検知装置11の座標(二次元座標)の検知方法について説明する。走査部32が二次元座標領域D2内を走査しているとき、走査部32からの光(レーザ光)が、二次元座標領域D2内の物体に遮られた場合と遮られなかった場合とでは、受光部33が受光する光のレベル(例えば、光エネルギー等)が異なる。すなわち、遮られた場合には、遮られなかった場合に比べ、極端に低くなる(0又は0に同等)。
二次元座標検知装置11は、受光部33が受光した光のレベルが低くなったときに、走査部32が光を出射していた角度を検知する。走査部32の光偏向器40に供給していた電圧波形に応じてミラーの偏向角が一意に決定される。このため、二次元座標検知装置11は、ミラーの偏向角より光を出射していた角度を検知している。このときの角度は、光学装置(3又は4)と物体とを結ぶ直線(詳細には、ミラーの反射中心と物体とを結ぶ直線)と、上辺21の中心線(詳細には、上辺21の中心線に平行で、且つミラーの光源31からレーザ光の反射中心を通る直線)との2つの直線のなす角度(鋭角側の角度)である。以下、この角度を「検知角」という。
このようにして、二次元座標検知装置11は、一対の光学装置3,4のそれぞれの受光部33が受光した光のレベルが低くなったときのそれぞれの検知角を検知する。また、一対の光学装置3,4間の距離、(詳細には各光学装置3,4のミラーの光源31からのレーザ光の反射中心間の距離)は、規定の値である。
右側の光学装置3の検知角と、左側の光学装置4の検知角と、右側の光学装置3と左側の光学装置4間の距離とが既知となる、すなわち、一辺とその両端の角が既知となるので、右側の光学装置3、左側の光学装置4、及び物体の3点を頂点とする三角形が一意に決定される。そして、二次元座標検知装置11は、三角測量法により、二次元座標領域D2内の物体の座標P(x,y)を検知できる。このとき、座標P(x,y)の、第1成分xは右辺23及び左辺24の長手方向(図2の左右方向)の位置を示し、第2成分yは上辺21及び下辺22の長手方向(図2の上下方向)の位置を示す。以下、上辺21及び下辺22の長手方向をX軸方向といい、右辺23及び左辺24の長手方向をY軸方向という場合がある。
図1に示されるように、複数の二次元座標検知装置11〜15は、各々が検知する座標を含む二次元座標領域D2が互いに平行となるように、各二次元座標領域D2の面に対して法線方向に並設される。このとき、互いの二次元座標検知装置は、間隔が設けられずに並設されている。なお、互いの二次元座標検知装置は、所定の間隔を設けて並設されてもよい。また、三次元座標検知装置1は、大型ディスプレイやホワイトボードに搭載されるときには、複数の二次元座標検知装置11〜15の各々が検知する座標を含む二次元座標領域D2が、大型ディスプレイの表示面(画面)やホワイトボードの描画面に平行となるように配置される。
以下、大型ディスプレイの表示面(画面)又はホワイトボードの描画面を「目標領域T」という。
また、複数の二次元座標検知装置11〜15のそれぞれを明確に区別する場合には、当該複数の二次元座標検知装置11〜15の並設された並び順で、第1二次元座標検知装置11、第2二次元座標検知装置12、第3二次元座標検知装置13、第4二次元座標検知装置14、及び第5二次元座標検知装置15という。このとき、大型ディスプレイの表示面(画面)又はホワイトボードの描画面に最も近い側に配設された二次元座標検知装置を第1二次元座標検知装置11という。
また、各二次元座標検知装置11〜15が座標を検知する対象となる各二次元座標領域D2のそれぞれを明確に区別する場合には、第1二次元座標検知装置11が座標を検知する対象となる二次元座標領域を第1二次元座標領域D21といい、第2二次元座標検知装置12が座標を検知する対象となる二次元座標領域を第2二次元座標領域D22といい、第3二次元座標検知装置13が座標を検知する対象となる二次元座標領域を第3二次元座標領域D23といい、第4二次元座標検知装置14が座標を検知する対象となる二次元座標領域を第4二次元座標領域D24といい、第5二次元座標検知装置15が座標を検知する対象となる二次元座標領域を第5二次元座標領域D25という。また、各二次元座標検知装置11〜15が検知した座標P(x,y)をそれぞれ明確に区別する場合には、第1二次元座標検知装置11が検知した物体の座標を第1座標P1(x1,y1)といい、第2二次元座標検知装置12が検知した物体の座標を第2座標P2(x2,y2)といい、第3二次元座標検知装置13が検知した物体の座標を第3座標P3(x3,y3)といい、第4二次元座標検知装置14が検知した物体の座標を第4座標P4(x4,y4)といい、第5二次元座標検知装置15が検知した物体の座標を第5座標P5(x5,y5)という。
図4は、三次元座標領域D3の説明のために図1の複数の二次元座標検知装置11〜15を省略して、複数の二次元座標領域D21〜D25を示した模式図である。各二次元座標領域D21〜D25は、各二次元座標検知装置11〜15の並設された並び順で並ぶ。すなわち、目標領域Tに最も近い位置に第1二次元座標領域D21が配置され、目標領域Tに最も遠い位置に第5二次元座標領域D25が配置される。また、第1二次元座標検知装置11は、大型ディスプレイの表面又はホワイトボードの描画面に接触した状態で設置される。このため、第1二次元座標領域D21は、目標領域Tに接触した領域となる。
ここで、第1二次元座標領域D21側が、本発明における「前記二次元座標領域の並設方向において前記指示部が指し示す側の端にある二次元座標領域」に相当する。また、目標領域Tが、本発明における「所定の領域」に相当する。また、第1二次元座標領域D21と目標領域Tとが接触していることが、本発明における「前記所定の領域は、前記二次元座標領域の並設方向において前記指示部が指し示す側の端にある二次元座標領域上に位置」することに相当する。
三次元座標領域D3は、平面状の二次元座標領域(D21〜D25)に対して、当該領域の面の法線方向に大きさを持つ直方体状の領域である。このため、三次元座標領域D3内の座標(三次元座標)は、二次元座標領域(D21〜D25)内の座標P(x,y)に、第3成分として当該領域の面の法線方向の位置を加えた座標P(x,y,z)となる。また、三次元座標領域D3内の座標P(x,y,z)の第1成分xと第2成分yは、二次元座標領域D2内の座標P(x,y)の第1成分xと第2成分yと同様に、それぞれがX軸方向、Y軸方向の位置を示す。以下、二次元座標領域(D21〜D25)の面の法線方向をZ軸方向という場合がある。
三次元座標領域D3のZ軸方向の大きさは、各二次元座標領域D21〜D25の厚さ(Z軸方向の長さ)Wが5つ分で「5×W」となる。
図5は、三次元座標検知装置1の利用者の腕(物体)101が挿入されたときの三次元座標領域D3を示す模式図である。なお、図5は、図1及び図4の下側(各二次元座標検知装置11〜15の下辺22側)から上側(各二次元座標検知装置11〜15の上辺21側)に向かって見たときの図である。腕101は、第5二次元座標領域D25から目標領域Tに向かって挿入されている。このとき、腕101は、図5の手前から奥に向かって且つ図5の右側から左側に向かって斜めに挿入されている。また、腕101の先端(すなわち、指先)は、第2二次元座標領域D22に位置している。このため、第1二次元座標領域D21内には腕101は位置していない。従って、第1二次元座標検知装置11は腕101の座標を検知せず、第2二次元座標検知装置12〜第5二次元座標検知装置15は、各二次元座標領域D22〜D25内に位置する腕101の座標をそれぞれ検知する。
腕101は、各二次元座標領域D21〜D25と交差する面において広さがあるため、各二次元座標領域D21〜D25内のある程度の範囲に(複数の座標に跨って)位置している。このため、各二次元座標検知装置11〜15の走査部32から出射したレーザ光は、腕101に遮られている範囲において、受光部33が受光する光のレベルが低下する。
図6は、図5の状態において、各二次元座標検知装置11〜15の受光部33が受光した光のレベルが低下した座標を示す模式図である。なお、図6(a)〜(f)のそれぞれは、二次元座標領域D2を目標領域Tに向かって見たとき(図5の上方向から下方向へ見たとき)の図である。図6(a)は第5二次元座標領域D25を示し、図6(b)は第4二次元座標領域D24を示し、図6(c)は第3二次元座標領域D23を示し、図6(d)は第2二次元座標領域D22を示し、図6(e)は第1二次元座標領域D21を示す。また、図6(f)は、第2二次元座標検知装置12〜第5二次元座標検知装置15の光のレベルが低下した座標を重ね合わせた概念図である。なお、図6では分かりやすくするために、座標を升目状で示している。また、一つの升目の各辺は、X軸方向及びY軸方向の大きさを1としている。
第5二次元座標検知装置15は、図6(a)に示されるように、座標P(8,0),座標P(8,2),座標P(10,0),及び座標P(10,2)の4つの点(座標)を頂点とする四角形の領域で、受光部33が受光した光のレベルが低下する。以降、受光部33が受光した光のレベルが低下した領域の形を「物体イメージ」という。この物体イメージ(四角形の領域)の重心座標(中心となる座標)は、P(9,1)となる。なお、この重心座標にZ軸方向の位置を加えた三次元座標で表現する場合には、P(9,1,4.5W)となる。ここで、Z軸成分の4.5Wとは、第1二次元座標領域D21〜第4二次元座標領域D24の4つの厚さWに(4W)、第5二次元座標領域D25の厚さWの半分(0.5W)を足したものである。以下、このように、第5二次元座標領域D25内の物体イメージの重心座標を三次元座標で表現したものを「第5重心座標」という。
ここで、第5重心座標のZ軸方向の位置を4.5Wのように決定するように、「各二次元座標領域D21〜D25の厚さWに応じてZ軸方向の位置を決定する」ことが、本発明における「前記複数の二次元座標検知装置間の間隔に基づいて、前記三次元座標領域内の物体の前記二次元座標領域の面に対する法線方向の位置を決定する」ことに相当する。
第4二次元座標検知装置14は、図6(b)に示されるように、座標P(7,1),座標P(7,3),座標P(9,1),及び座標P(9,3)の4つの点(座標)を頂点とする四角形の領域で、受光部33が受光した光のレベルが低下する。この物体イメージ(四角形の領域)の重心座標(中心となる座標)は、P(8,2)となる。なお、この重心座標にZ軸方向の位置を加えた三次元座標で表現する場合には、P(8,2,3.5W)となる。以下、第4二次元座標領域D24内の物体イメージの重心座標を三次元座標で表現したものを「第4重心座標」という。
第3二次元座標検知装置13は、図6(c)に示されるように、座標P(6,3),座標P(6,4),座標P(8,3),及び座標P(8,4)の4つの点(座標)を頂点とする四角形の領域で、受光部33が受光した光のレベルが低下する。この物体イメージ(四角形の領域)の重心座標(中心となる座標)は、P(7,3.5)となる。なお、この重心座標にZ軸方向の位置を加えた三次元座標で表現する場合には、P(7,3.5,2.5W)となる。以下、第3二次元座標領域D23内の物体イメージの重心座標を三次元座標で表現したものを「第3重心座標」という。
第2二次元座標検知装置12は、図6(d)に示されるように、座標P(6,3)で、受光部33が受光した光のレベルが低下する(重心座標も同じ)。なお、Z軸の位置を加えた三次元座標で表現する場合には、P(6,3,1.5W)となる。以下、第2二次元座標領域D22内の物体イメージの重心座標を三次元座標で表現したものを「第2重心座標」という。
第1二次元座標検知装置11は、腕101が第1二次元座標領域D21内に位置していないため、図6(e)に示されるように、受光部33が受光した光のレベルが低下する領域が存在しない。図6の例では第1二次元座標領域D21内に物体イメージが存在しないが、第1二次元座標領域D21内に物体イメージがある場合には、この物体イメージの重心座標を三次元座標で表現したものを「第1重心座標」という。
上記のように、各二次元座標領域D21〜D25内の物体イメージは、各二次元座標領域D21〜D25の面による、物体(腕101)の断面形状を表わすこととなる。
例えば、第5二次元座標検知装置15においては、「座標P(8,0),座標P(8,2),座標P(10,0),及び座標P(10,2)の4つの点(座標)を頂点とする四角形」は、腕101が第5二次元座標領域D25と交差する面の断面形状を表わしている。このように、物体イメージは、本発明における「当該二次元座標検知装置の二次元座標領域と交差する前記三次元座標領域内の物体の断面の外形を示す1又は複数の座標の集合」に相当する。
また、各二次元座標領域D22〜D25内の物体イメージを当該領域の並び順に従って並べることで、三次元座標領域D3内の物体の外形を検知することができる。
第5二次元座標領域D25及び第4二次元座標領域D24の物体イメージが同じ大きさ(3×3の正方形領域)であり、第5二次元座標領域D25から第4二次元座標領域D24に向かって物体イメージが図6の右下方向から左上方向に移動している。また、第3二次元座標領域D23の物体イメージの大きさ(3×2の長方形領域)が第4二次元座標領域D24の物体イメージの大きさに比べて小さくなり、第4二次元座標領域D24から第3二次元座標領域D23に向かって物体イメージが図6の右下方向から左上方向に移動している。また、第2二次元座標領域D22の物体イメージの大きさ(1×1の領域)が第3二次元座標領域D23の物体イメージの大きさに比べて小さくなっている。第1二次元座標領域D21は物体イメージが存在しない。
このことより、三次元座標検知装置1は、三次元座標領域D3内の物体(腕101)の外形がその先端に向かうにつれ次第に細くなっていき、且つ、図6の右下方向から左上方向に向かって斜めになっていると検知できる。この検知結果は、上述したように、腕101が図5の手前から奥に向かって且つ図5の右側から左側に向かって斜めに挿入されている、すなわち、図6の右下方向から左上方向に向かって挿入されていることに一致することより、正しく物体の外形を検知できていることが分かる。
このように、「各二次元座標領域D21〜D25内の物体イメージから物体の外形を検知する」ことが、本発明における「前記複数の二次元座標検知装置のそれぞれが検知した1又は複数の座標の集合から前記三次元座標領域内にある物体の外形を検知する」ことに相当する。
また、三次元座標領域D3内の物体の方向、例えば図5であれば腕101の方向が、当該三次元座標検知装置1の利用者にとって意味を持つ場合がある。例えば、利用者は、所定の位置(目標領域T内の所定の二次元座標。以下、「目標点TP」という)を腕101の先端、すなわち指先で指すような場合がある。このような場合には、必ずしも指先が目標領域Tに接触しているとは限らず、指先が空中に浮いている状態である場合も充分に考えられる。このような場合であっても、指先が指している目標領域T内の目標点TPを三次元座標検知装置1が検知できると、利用者によって、三次元座標検知装置1の利便性が向上する。ここで、目標点TPが、本発明における「所定の領域内の所定の座標」に相当する。
このとき、指先が第1二次元座標領域D21内に位置しているときのみ目標点TPを検知できるようにするよりは、例えば、第2二次元座標領域D22内に位置しているときであっても目標領域T内の目標点TPを検知できた方が、三次元座標検知装置1の利便性が向上する。すなわち、指先が三次元座標領域D3内に位置している場合には、可能な限り指先が指している目標領域T内の目標点TPを検知できるようにすると、三次元座標検知装置1の利便性が向上する。
このため、三次元座標検知装置1は、まず三次元座標領域D3内の物体の先端(腕101の先端、すなわち指先)を検知する。このとき、三次元座標検知装置1は、各二次元座標領域D21〜D25のうち物体イメージが存在している二次元座標領域の中で、最も目標領域Tに近い二次元座標領域(図6の例では第2二次元座標領域D22)内の物体イメージが物体の先端であると検知している。
このように「物体の先端を検知する」ことが、本発明における「前記三次元座標領域内にある物体の1又は複数の座標の集合を検知した各二次元座標検知装置のうち、前記所定の領域に最も近い二次元座標領域に対応した二次元座標検知装置が検知した1又は複数の座標の集合を前記物体の指示部として検知する」ことに相当する。また、物体の先端(腕101の先端、すなわち指先)が、本発明における「物体の指示部」に相当する。
そして、三次元座標検知装置1は、この物体の先端がある二次元座標領域内の物体イメージの重心座標を検知する(図6の例では、第2重心座標P(6,3,1.5W))。続いて、三次元座標検知装置1は、最も目標領域Tに近い二次元座標領域の目標領域Tとは反対側に隣接した二次元座標領域(図6の例では、第3二次元座標領域D23)内の物体イメージの重心座標を検知する(図6の例では、第3重心座標P(7,3.5,2.5W))。
このようにして得られた2つの重心座標から方向ベクトルLを決定する。図6の例では、方向ベクトルは、次のように決定される。
方向ベクトルL=(6,3,1.5W)−(7,3.5,2.5W)
=(−1,−0.5,−W)
このようにして決定された方向ベクトルLと、物体の先端の重心座標(図6の例では、第2重心座標P(6,3,1.5W))とから、目標領域T内の目標点TPを検知できる。図7(a)に示されるように、一般的に、方向ベクトルLを(l,m,n)、物体の先端の座標を(x,y,z)、物体の先端と目標点TPとのZ軸方向の距離をvとすると、目標点TPの座標(p,q,r)の各成分は、それぞれ、
p=x−v・l/n、
q=y−v・m/n、
r=z−v、
となる。
図6の例では、方向ベクトルLが(l,m,n)=(−1,−0.5,−W)、物体の先端の座標が(x,y,z)=(6,3,1.5W)、物体の先端と目標点とのZ軸方向の距離v=1.5Wである。これより、目標点TPの座標は、
p=6−1.5W・(−1)/(−W)=4.5、
q=3−1.5W・(−0.5)/(−W)=2.25、
r=1.5W−1.5W=0
から、(4.5,2.25,0)となる。
三次元座標検知装置1は、以上のようにして、物体(腕101)の先端が指し示す目標領域T内の目標点TPを各二次元座標領域D21〜D25内の物体イメージの重心座標から検知している。このように、目標点TPを検知することが、本発明における「前記検知した物体の指示部と前記検知した物体の方向から、前記所定の領域内の前記所定の座標を検知する」ことに相当する。また、上記のように方向ベクトルLを決定することが、本発明における「前記所定の領域に最も近い二次元座標領域と、当該二次元座標領域の前記所定の領域とは反対側に隣り合う二次元座標領域とのそれぞれに応じた二次元座標検知装置が検知したそれぞれの1又は複数の座標の集合の重心座標から前記三次元座標領域内にある物体の方向を検知する」ことに相当する。
なお、最も目標領域Tに近い二次元座標領域の目標領域Tとは反対側に隣接した二次元座標領域は、1つだけである必要はなく、2つ以上であってもよい。例えば、図6の例であれば、第2二次元座標領域D22に隣接する二次元座標領域として、第3二次元座標領域D23だけでなく、第4二次元座標領域D24も含めてよい。更には、第5二次元座標領域D25を第2二次元座標領域D22に隣接する二次元座標領域として、含めてもよい。このように、最も目標領域Tに近い二次元座標領域の目標領域Tとは反対側に隣接した二次元座標領域は、二次元座標領域のZ軸方向の厚さや、物体の方向を検知する精度に応じて変更すればよい。また、方向を指示する物体が予め規定されている場合(例えば、指、ペン、指示棒、ゲームコントローラ等)には、当該規定された物体に応じて適宜決定すればよい。
なお、物体の方向や指している目標点TPを検知する方法として、別の方法を用いてもよい。例えば、図7(b)に示されるように、各二次元座標領域D22〜D25の物体イメージの外形を、第5二次元座標領域D25から第1二次元座標領域D21に向かって線で結び、その線を目標領域Tまで延長した際に、目標領域Tに投影される領域の重心座標を目標点TPとしてもよい。また、図6の例では、図6(f)に示されるように、各物体イメージの外形は、図6の右下方向から左上方向に移動していると検知できる(方向の検知)。ここで、第5二次元座標領域D25から第1二次元座標領域D21に向かって各物体イメージの外形から方向を検知することが、本発明における「前記所定の領域に最も近い二次元座標領域と、当該二次元座標領域の前記所定の領域とは反対側に隣り合う二次元座標領域とのそれぞれに応じた二次元座標検知装置が検知したそれぞれの1又は複数の座標の集合から前記三次元座標領域内にある物体の方向を検知する」ことに相当する。
また、本実施形態では、上述したように、互いに同じ特性、詳細には所定の波長の光のみを通過させるバンドパスフィルタからなる光学フィルタ41,42が光源31の光が出射される部位と受光部33の光を受光する部位とにそれぞれ貼設されている。三次元座標検知装置1は、一つの二次元座標検知装置内では、光学フィルタ41,42が通過させる波長は同じ波長となるように構成しており、隣り合う二次元座標検知装置では、互いに備える光学フィルタ41,42が通過させる波長が異なるように構成している。
このように構成することで、所定の二次元座標検知装置の走査部32から出射された光が、下辺22等で再帰反射した光が拡散する等により、隣りの二次元座標検知装置の受光部33が受光する光に混入した場合であっても、この混入の影響を光学フィルタ41,42により低減又は除去できる。
例えば、第1二次元座標検知装置11、第3二次元座標検知装置13、第5二次元座標検知装置15は、それぞれが、610〜780[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備え、第2二次元座標検知装置12、第4二次元座標検知装置14は、それぞれが、460〜500[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備える。このように構成した場合には、第3二次元座標検知装置13の走査部32から出射された光は、その波長が610〜780[nm]である。
このため、第3二次元座標検知装置13の走査部32から出射された光が、第3二次元座標検知装置13に隣り合う第2二次元座標検知装置12又は第4二次元座標検知装置14の二次元座標領域D2(詳細には、走査平面)に混入した場合であっても、460〜500[nm]の波長のみを通過させる光学フィルタ42が貼設されているので、第2二次元座標検知装置12及び第4二次元座標検知装置14の受光部33には、第3二次元座標検知装置13の走査部32からの光は入射されない。
このようにして、三次元座標検知装置1は、光学フィルタ41,42の効果により、隣り合う二次元座標検知装置の走査部32から出射された光が混入した場合であっても、混入した光の影響を低減又は除去することができる。これによって、三次元座標検知装置1は、三次元座標領域D3内の物体の座標の検知を高精度にできる。
このように、「第1二次元座標検知装置11、第3二次元座標検知装置13、第5二次元座標検知装置15が610〜780[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備え、第2二次元座標検知装置12、第4二次元座標検知装置14が460〜500[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備える」ことが、本発明における「前記光学装置の照射部及び受光部は、当該光学装置を備える二次元座標検知装置と隣り合う二次元座標検知装置の照射部から出射した光を区別するための光学フィルタを備える」ことに相当する。
また、「各二次元座標検知装置11〜15の光源31に、それぞれの二次元座標検知装置に応じた光学フィルタ41を貼設し、各二次元座標検知装置11〜15の受光部33に、それぞれの二次元座標検知装置に応じた光学フィルタ42を貼設している」ことが、本発明における「前記照射部は前記光学フィルタを介して前記再帰反射部に光を出射し、前記受光部は前記再帰反射部に再帰反射された光を前記光学フィルタを介して受光する」ことに相当する。
更に、三次元座標検知装置1は、隣り合う二次元座標検知装置の光源31に供給する互いのパルス波(駆動波形)の振幅が、同時に0でない値とはならないように位相をずらして供給される。
図8(a)は、第1二次元座標検知装置11,第3二次元座標検知装置13,第5二次元座標検知装置15のそれぞれの光源31に供給されるパルス波の時間変化を示し、図8(b)は、これらの二次元座標検知装置11,13,15のそれぞれの走査部32から出射される光のレベル(例えば光エネルギー)の時間変化を示す。図8(c)は、第1二次元座標検知装置11,第3二次元座標検知装置13,第5二次元座標検知装置15のそれぞれの受光部33が受信する光の信号(光の時間変化)を示し、図8(d)は、図8(a)と図8(c)とを乗算した結果を示す。
また、図8(e)は、第2二次元座標検知装置12,第4二次元座標検知装置14のそれぞれの光源31に供給されるパルス波の時間変化を示し、図8(f)は、これらの二次元座標検知装置12,14のそれぞれの走査部32から出射される光のレベル(例えば光エネルギー)を示す。図8(g)は、第2二次元座標検知装置12,第4二次元座標検知装置14のそれぞれの受光部33が受信する光の信号(光の時間変化)を示し、図8(h)は、図8(e)と図8(g)とを乗算した結果を示す。
図8(a)〜(h)の横軸は時間を示す。また、図8(a),(e)の縦軸は光源31に供給される電圧を示す。図8(b),(c),(d),(f),(g),(h)の縦軸は受光した光のレベルを示し、0のときは光がない状態(例えば、光エネルギーが0)である。
図8(a),(b)に示されるように、第1二次元座標検知装置11,第3二次元座標検知装置13,第5二次元座標検知装置15の走査部32からは、時刻t2から時刻t3の間(以下、このような時刻と時刻の間を「時間t2−t3」と表す)時間t4−t5,時間t6−t7,時間t8−t9,時間t10−t11,時間t12−t13のときに光が出射され、これ以外の時間では光は出射されない。以下、時間t2−t3,時間t4−t5,時間t6−t7,時間t8−t9,時間t10−t11,時間t12−t13のように、第1二次元座標検知装置11,第3二次元座標検知装置13,第5二次元座標検知装置15の走査部32(若しくは光源31)から光が出射されている時間をまとめて、「第1出射時間」という。
同様に、図8(e),(f)に示されるように、第2二次元座標検知装置12,第4二次元座標検知装置14の走査部32からは、時間t1−t2,時間t3−t4,時間t5−t6,時間t7−t8,時間t9−t10,時間t11−t12のときに光が出射され、これ以外の時間では光は出射されない。以下、時間t1−t2,時間t3−t4,時間t5−t6,時間t7−t8,時間t9−t10,時間t11−t12のように、第2二次元座標検知装置12,第4二次元座標検知装置14の走査部32(若しくは光源31)から光が出射されている時間をまとめて、「第2出射時間」という。
このように、第1出射時間と第2出射時間は、排他的に設定されている。これより、隣り合う二次元座標検知装置の走査部32からは同時に光が出射されない。詳細には、第1二次元座標検知装置11,第3二次元座標検知装置13,第5二次元座標検知装置15の走査部32からは、第2出射時間では光が出射されず、第2二次元座標検知装置12,第4二次元座標検知装置14の走査部32からは、第1出射時間では光が出射されない。また、パルス波の周期は、光速に比べ非常に遅いため、走査部32から出射した後、ほぼ瞬時に、下辺22等の再帰反射部によって再帰反射された光を受光部33が受光する。
このため、例えば、図8(c)の時間t7−t8や、図8(g)の時間t4−t5に例示したように、迷光(他の二次元座標検知装置の走査部32からの光)が混入した場合であっても、当該時間(t7−t8又はt4−t5)は、それぞれの二次元座標検知装置の走査部32から光が出射されていないため、迷光が混入したとみなすことができる。
従って、各二次元座標検知装置11〜15は、走査部32から光が出射していない時間に受光部33が受光した光を除去するために、受光した光の信号の各瞬時値に、当該二次元座標検知装置(11〜15)の光源31に供給したパルス波の振幅の各瞬時値を乗算することで、走査部32から光を出射していないときの信号を0にして(迷光を除去して)、走査部32から光を出射しているときの信号のみを物体の座標を検知する信号としている。
このような場合であっても、走査部32からの光が物体に遮られたときは、図8(d)の時間t10−t11,時間t12−t13や図8(h)の時間t5−t6に示されるように、光のレベルが低くなっているので、このときのミラーの偏向角より物体の座標を検知することができる。
このように、光学フィルタ41,42による波長の変更に加え、光源31に供給するパルス波によって、隣り合う二次元座標検知装置の走査部32から光が出射される時間を排他的にすることで、他の二次元座標検知装置からの光の混入の影響を更に効果的に低減することができる。
上記のように、第1出射時間と第2出射時間とが排他的に設定されていることが、本発明における「隣り合う二次元座標検知装置の光源には、互いのパルス波の振幅が同時に0でない値とはならないように」していることに相当する。
また、図8(d)及び図8(h)の信号が、本発明における「前記受光部が受光した光の信号の各瞬時値に、当該受光部を備える二次元座標検知装置が有する照射部に供給されたパルス波の振幅の各瞬時値を乗算して得た信号」に相当する。
また、「各二次元座標検知装置11〜15が、図8(a)と図8(c)とを乗算することで図8(d)の信号を得るか、又は図8(e)と図8(g)とを乗算することで図8(h)の信号を得て、これらの信号から物体の座標を検知する」ことが、本発明における「前記隣り合う二次元座標検知装置のそれぞれは、前記受光部が受光した光の信号の各瞬時値に、当該受光部を備える二次元座標検知装置が有する照射部に供給されたパルス波の振幅の各瞬時値を乗算して得た信号により、当該二次元座標検知装置の二次元座標領域内にある物体の座標を検知する」ことに相当する。
以上のように、三次元座標検知装置1は、上述のように、物体の先端(腕101の先端、すなわち指先)を検知しているので、物体の先端が、第1二次元座標領域D21内にある場合には、物体の先端が目標領域Tに接触していると判定できる。また、物体の先端が、第2二次元座標領域D22〜第5二次元座標領域D25内のいずれかにある場合には、物体の先端が空中にあると判定できる。このとき、物体の先端がある二次元座標領域に応じて物体のZ軸方向の位置を検知できる。例えば、第2二次元座標領域D22にある場合には、目標領域Tにより近い距離の空中にあることを検知でき、第5二次元座標領域D25にある場合には、目標領域Tからは遠い距離の空中にあることを検知できる。
三次元空間の座標を検知できることにより、物体の動きを検知することができる。例えば、物体の先端が第5二次元座標領域D25から第1二次元座標領域D21に向かって移動したときは、目標領域Tに近づいていると検知できる。更に、物体の先端が第1二次元座標領域D21から第5二次元座標領域D25に向かって移動したときは、目標領域Tから遠ざかっていると検知できる。また、物体の先端が同じ二次元座標領域内に留まったまま、二次元座標のみが変化したときは、その二次元座標領域内で物体が移動していると検知できる。
このように物体の動きを検知したとき、当該動きにそれぞれ所定の意味を持たせることで、三次元座標検知装置1を搭載した機器の作動を、利用者がコントロールすることもできる。例えば、「目標領域Tに接触しているときは、目標点TPを選択する」、「目標領域Tに近づいているときは、目標点TP付近を強調表示する」、「同じ二次元座標領域内で物体が移動しているときは、線を描画する」等のようなものが考えられる。
更に、三次元座標検知装置1を搭載する大型ディスプレイやホワイトボードの表示面、すなわち目標領域Tに圧電センサ等を備えれば、目標領域Tが押圧されたことを検知できる。これにより、更に様々な機器のコントロールを可能にできる。
なお、本実施形態では、三次元座標検知装置1を、5つの二次元座標検知装置11〜15を備えるように構成したがこれに限らない。例えば、2つであってもよいし、7つ以上であってもよい。二次元座標検知装置の数は、三次元座標検知装置として、検知したい目標領域Tの面に対する法線方向の範囲に応じて決定すればよい。
また、本実施形態では、各二次元座標領域D21〜D25のそれぞれの厚さWが同じであったが、それぞれの厚さを異なるように設定してもよい。例えば、目標領域Tに近づくにつれ、厚さWが小さくなるように設定してもよい。
また、本実施形態では、第1二次元座標領域D21と目標領域Tとは接触しているが接触していなくてもよい。この場合には、物体の座標を検知するときには、第1二次元座標領域D21と目標領域Tとの間の距離を加味してZ軸方向の位置を検知すればよい。このように、第1二次元座標領域D21と目標領域Tとが接触していない場合が、本発明における「前記所定の領域は、前記端にある二次元座標領域より外側に位置」することに相当する。
また、本実施形態では、第1二次元座標検知装置11、第3二次元座標検知装置13、第5二次元座標検知装置15が610〜780[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備え、第2二次元座標検知装置12、第4二次元座標検知装置14が460〜500[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備えている。すなわち、二次元座標検知装置が並設する並び順で隣り合う二次元座標検知装置の光学フィルタの特性を変えているがこれに限らない。
例えば、下辺22等の再帰反射部の反射特性により反射光の広がりが大きくなるような場合には、第3二次元座標検知装置13の走査部32からの光が、第2二次元座標検知装置12及び第4二次元座標検知装置14のみならず、第1二次元座標検知装置11や第5二次元座標検知装置15にまで混入する可能性がある。このような場合には、例えば、第1二次元座標検知装置11及び第5二次元座標検知装置15が610〜780[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備え、第2二次元座標検知装置12及び第4二次元座標検知装置14が460〜500[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備え、第3二次元座標検知装置13が570〜590[nm]の波長を通過させる光学フィルタ41,42を備えるようにすればよい。また、各二次元座標検知装置11〜15のそれぞれが、互いに異なる波長を通過させる光学フィルタ41,42を備えるようにしてもよい。
また、本実施形態では、第1出射時間と第2出射時間とを排他的に設定しているがこれに限らない。例えば、光学フィルタ41,42のときと同様に、第3二次元座標検知装置13の走査部32からの光が、第2二次元座標検知装置12及び第4二次元座標検知装置14のみならず、第1二次元座標検知装置11や第5二次元座標検知装置15にまで混入する可能性がある場合においては、第1二次元座標検知装置11及び第5二次元座標検知装置15の走査部32(若しくは光源31)から光が出射される時間と、第2二次元座標検知装置12及び第4二次元座標検知装置14の走査部32(若しくは光源31)から光が出射される時間と、第3二次元座標検知装置13の走査部32(若しくは光源31)から光が出射される時間とを排他的に設定してもよい。更に言えば、各二次元座標検知装置11〜15のそれぞれの走査部32(若しくは光源31)から光が出射される時間を排他的に設定してもよい。
このように、本発明において、隣り合う二次元座標検知装置とは、一つ隣の二次元座標検知装置のみだけではなく、出射した光が混入する可能性のある範囲に配設された二次元座標検知装置(すなわち、近傍に配設された二次元座標検知装置)を含むものとする。
また、本実施形態の三次元座標検知装置1では、隣り合う二次元座標検知装置からの光の混入の影響を、光学フィルタ41,42による低減に加え、光源31に供給するパルス波による低減を行っているが、いずれか片方のみによる低減であってもよい。
また、本実施形態では、三次元座標検知装置1を、大型ディスプレイやホワイトボードに搭載する装置としたが、これに限らない。小型ディスプレイであってもよいし、電子看板、アーケードゲーム端末、テーブルの上面に画面を表示するテーブル型PC等のように、平面状の領域(二次元座標領域)を有するものに搭載する場合であってもよい。この場合であっても、平面状の領域(二次元座標領域)の座標に、この二次元座標領域の面に対して法線方向の位置を加えた三次元座標領域内の物体の座標を検知することができる。更に、所定の領域内にいる人や物体等を検知できるエリアセンサとして使用することもできる。