JP2013059960A - 被覆金属板 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、防汚性が高く、且つ防藻性も高い被覆金属板を得ることを目的とする。
【解決手段】本発明に係る被覆金属板は、金属板と、この金属板を被覆する被覆層とを備える。前記被覆層がサルファ剤、及びケイ素化合物を含有する。前記被覆層中の前記サルファ剤の割合が、0.7〜2.5質量%の範囲である。
【選択図】なし

Description

本発明は、被覆層と金属板とを備える被覆金属板に関する。
被覆層と金属板とを備える被覆金属板は、広く建材に使用されている。被覆金属板が特に外装材として使用される場合には、その表面には防汚性が求められている。
被覆金属板防汚性を向上するための手法として、例えば特許文献1には、ケイ酸を含む無機化合物及び/又は加水分解性シリル基を有する化合物を有機クリヤー塗料又は有機エナメル塗料に配合し、次いでこの塗料を金属板に塗布して乾燥させることによって塗膜を形成し、その後、この塗膜に加熱処理を行うことが、開示されている。この方法では、塗膜の親水性を向上することで耐雨垂れ汚染性を向上することができる。
特開2006−102671号公報
近年、被覆金属板の使用が拡大するに伴い、被膜の親水性を向上するだけでは防止し得ない汚染が注目されるようになってきている。たとえば被覆金属板に緑色系の汚れが付着することが指摘されている。本発明者らが確認したところ、この緑色系の汚れは、被覆層に藻類が付着することによって生じる。これにより、本発明者らは、藻類が付着しにくい性質(防藻性)を備える被覆金属板の必要性を認識するに至った。
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、防汚性が高く、且つ防藻性も高い被覆金属板を得ることを目的とする。
本発明に係る被覆金属板は、金属板と、この金属板を被覆する被覆層とを備え、前記被覆層がサルファ剤、及びケイ素化合物を含有し、前記被覆層中の前記サルファ剤の割合が、0.7〜2.5質量%の範囲である。
本発明において、前記サルファ剤が、ジメチルスルファミドを含むことが好ましい。
本発明において、前記被覆層中のケイ素化合物の含有量が、2.0質量%以上であることが好ましい。
本発明において、前記被覆層が、ポリエステル系樹脂又はその硬化物を更に含有することが好ましい。
本発明において、前記被覆層が、フッ素系樹脂又はその硬化物を更に含有することも好ましい。
本発明において、前記ケイ素化合物が、シリケート系化合物又はその硬化物を含有することも好ましい。
本発明において、前記被覆層が、ハイドロタルサイト類を更に含有することも好ましい。
本発明によれば、防汚性が高く、且つ防藻性の高い被覆金属板が得られる。
以下、本発明の一実施形態について説明する。
金属板としては、その材質は特に制限されないが、ステンレス鋼などの適宜の鋼材からなる鋼板が挙げられる。金属板が、溶融亜鉛めっき鋼板、溶融アルミニウム−亜鉛めっき鋼板などの、めっき処理が施された鋼板であることも好ましい。
金属板上には化成処理層が形成されることも好ましい。化成処理層は公知の化成処理によって形成される層である。化成処理層を形成するための処理剤(化成処理剤)としては、例えばクロメート処理剤、3価クロム酸処理剤、樹脂を含有するクロメート処理剤、3価クロム酸処理剤などのクロムを含有する処理剤;リン酸亜鉛処理剤、リン酸鉄処理剤などのリン酸系の処理剤;コバルト、ニッケル、タングステン、ジルコニウムなどの金属酸化物を単独であるいは複合して含有する酸化物処理剤;腐食を防止するインヒビター成分を含有する処理剤;バインダー成分(有機、無機、有機―無機複合など)とインヒビター成分を複合した処理剤;インヒビター成分と金属酸化物とを複合した処理剤;バインダー成分とシリカやチタニア、ジルコニアなどのゾルとを複合した処理剤;前記例示した処理剤の成分をさらに複合した処理剤などが、挙げられる。
クロムを含有する処理剤の例として、水及び水分散性アクリル樹脂と、アミノ基を有するシランカップリング剤と、クロム酸アンモニウムや重クロム酸アンモニウム等のクロムイオンの供給源とを配合して調製される処理剤が挙げられる。水分散性アクリル樹脂は、例えばアクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーとアクリル酸グリシジルなどのグリシジル基含有モノマーとを共重合させることで得られる。この化成処理剤から形成される化成処理層は耐水性、耐食性、及び耐アルカリ性が高く、またこの化成処理層により溶融めっき金属板の白錆や黒錆発生が抑制されて耐食性が向上する。耐食性の向上と化成処理層の着色の防止のためには、この化成処理層におけるクロム含有量が5〜50mg/mの範囲であることが好ましい。
ジルコニウムの酸化物を含有する酸化物処理剤の例としては、水及び水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂と、水分散性アクリル樹脂と、炭酸ジルコニウムナトリウムなどのジルコニウム化合物と、ヒンダードアミン類とを配合して調製される処理剤が挙げられる。水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂は、例えばポリエステルポリオールと水添型イソシアネートとを反応させると共にジメチロールアルキル酸を共重合させることで自己乳化させることで合成される。このような水分散性のポリエステル系ウレタン樹脂によって、乳化剤を使用することなく化成処理層に高い耐水性が付与され、溶融めっき金属板の耐食性や耐アルカリ性の向上に繋がる。
化成処理層の下に、或いは化成処理に代えて、ニッケルめっき処理やコバルトめっき処理などが施されてもよい。
化成処理層は、化成処理剤を用い、ロールコート法、スプレー法、浸漬法、電解処理法、エアーナイフ法など公知の方法で形成され得る。化成処理剤の塗布後、必要に応じ、更に常温放置や、熱風炉や電気炉、誘導加熱炉などの加熱装置による乾燥や焼付けなどの工程が追加されてもよい。赤外線類、紫外線類や電子線類などエネルギー線による硬化方法が適用されてもよい。乾燥時の温度や乾燥時間は、使用した化成処理剤の種類や、求められる生産性などに応じて適宜決定される。このようにして形成される化成処理層は、めっき層上で、連続状もしくは非連続状の皮膜となる。化成処理層の厚みは、処理の種類、求められる性能などに応じて、適宜決定される。
被覆層は、金属板を覆うように形成される。金属板上に化成処理層が形成される場合には、被覆層は化成処理層を覆うように形成される。被覆層は、サルファ剤、及びケイ素化合物を含有する。この被覆層は、サルファ剤、及びケイ素化合物を含有する塗料組成物から形成される。
サルファ剤は、スルファミド基を有する化合物である。サルファ剤としては、ジメチルスルファミド、スルファモノメトキシン、スルファジアジン、スルファジメトキシン、スルファセタミド、スルファドキシン、スルファニルアミド、スルフィソミジン、スルフィソキサゾール、スルファメトキサゾール等が挙げられる。特にジメチルスルファミドを使用することが効果的である。
このサルファ剤が使用されることで、被覆層の防藻性が著しく向上する。被覆層中のサルファ剤の含有量(すなわち塗料組成物中の固形分量に対するサルファ剤の含有量)は、0.7〜2.5質量%の範囲である。この含有量が0.7質量%以上であることで、被覆層における藻類の付着が著しく抑制される。またこの含有量が2.5質量%以下であることで、被覆層の良好な防汚性、良好な外観、並びに良好な加工性が維持される。被覆層中のサルファ剤の含有量が過剰であると、被覆層とその下地である金属板等との密着性が低下してしまって被覆層が剥離しやすくなったり、被覆層の表面が荒れてその表面外観が悪化したり、被覆層の防汚性が悪化したりしてしまう。
被覆層は、ケイ素化合物を含有する。これにより、被覆層の親水性が高くなり、このため被覆層の防汚性が向上する。被覆層がサルファ剤を含有すると防汚性が低下する傾向があるが、被覆層が更にケイ素化合物を含有すると、被覆層の高い防汚性が維持される。
被覆層中のケイ素化合物の含有量は特に制限されないが、2.0質量%以上であることが好ましく、この場合、被覆層が特に高い防汚性を発揮する。被覆層がケイ素化合物を少量の添加剤として含有する場合には、ケイ素化合物の含有量が2.0質量%以上2.5質量%以下であることも好ましい。ケイ素化合物の含有量が2.5質量%より多くなると防汚性の向上効果は飽和してしまう。
ケイ素系化合物は、シリケート系化合物又はその硬化物を含有することが好ましい。シリケート系化合物又はその硬化物は、被覆層の母相の少なくとも一部を構成することができる。
シリケート系化合物としては、加水分解性のシリル基を有する適宜の化合物が挙げられるが、特に下記一般式(1)に示されるオルガノシリケート、このオルガノシリケートの加水分解縮合物などが挙げられる。
(R−Si−(OR4−m …(1)
(式中のRおよびRはそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1〜10のアルキル基若しくはアリール基である。mは0又は1である。)
シリケート系化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、ジメチルシクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルビニルトリエトキシシラン及びこれらをフッ素変性した化合物又はその縮合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びそのフッ素変性した化合物等のシランカップリング剤、これらの縮合物等が挙げられる。これらの化合物は一種単独で用いられ、或いは複数種が併用される。
シリケート系化合物は、塗料組成物中及び被覆層中で有機樹脂の骨格に組み込まれていてもよい。すなわち、塗料組成物がシリケート系化合物により変性された有機樹脂を含有してもよく、また被覆層がシリケート系化合物により変性された有機樹脂又はその硬化物を含有してもよい。
シリケート系化合物により変性された有機樹脂としては、シリケート変性されたポリエステル樹脂(シリケート変性ポリエステル樹脂)が挙げられる。シリケート変性ポリエステル樹脂は、例えばカルボキシル基を含有するポリエステル樹脂、水酸基を有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂、及びシリケート系化合物等が適正量反応することで生成する。このとき、ポリエステル樹脂のカルボキシル基と、水酸基を有するエポキシ基含有ポリエステル樹脂のエポキシ基とが反応することによりエステル結合が形成される。シリケート系化合物は、エポキシ基含有ポリエステル樹脂の水酸基と反応することにより樹脂骨格中に取り込まれる。これにより、シリケート変性ポリエステル樹脂が得られる。
上記のエポキシ基含有ビニル系重合体は、エポキシ基を有するビニル系単量体の重合体、又はエポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体との重合体である。エポキシ基を有するビニル系単量体の具体例としては、グリシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、グリジル(メタ)アリルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アリルエーテル等を挙げることができる。このうちラジカル重合及びエポキシ基/カルボキシル基間の反応性がより高い、(メタ)アクリル酸エステル体であるグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートがより好ましい例として挙げられる。エポキシ基を有するビニル系単量体は1種類のみを用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
上記のエポキシ基含有ビニル系重合体は、エポキシ基を有するビニル系単量体と他のビニル系単量体とを共重合させることによって得られた共重合体であることが好ましい。エポキシ基含有ビニル系単量体と共重合させる他のビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。その有機基としては、飽和炭化水素基のほか、水酸基、アセタール基、シクロカーボネート基、又はブロック化カルボキシル基のような反応性官能基を有する有機基等を挙げることができるが、このような反応性官能基を選択する際には、エポキシ基を有するビニル系単量体との共重合条件下において、エポキシ基と強い反応性を示さないものを選択する必要がある。
上記の(メタ)アクリル酸エステル類の具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル等を挙げることができる。その他のビニル系単量体で好ましいものとしては、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエステル類、スチレン、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、エチルスチレン等の核置換スチレン、アクリロニトリル、酢酸ビニル、塩化ビニル等を挙げることができる。これらは1種類のみを用いても2種類以上を混合して用いても良い。
シリケート変性ポリエステル樹脂以外に、シリケート変性アクリル樹脂など、種々のシリケート変性された樹脂が使用されてもよい。
塗料組成物がシリケート系化合物、或いはシリケート変性された有機樹脂を含有する場合には、塗料組成物は、更に水と共に塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸等の酸性触媒を含有することが好ましい。この場合、塗料組成物が塗布成膜される際にシリケート系化合物等の加水分解反応が促進される。
ケイ素化合物がシリカ粒子を含有することも好ましい。すなわち、被覆層及び塗料組成物がシリカ粒子を含有することも好ましい。塗料組成物にシリカ粒子を配合する場合には、コロイダルシリカを配合することが好ましい。コロイダルシリカの具体例としては、日産化学工業株式会社製の商品名スノーテックスが挙げられる。コロイダルシリカとしては、一般に粒子径が2〜100nmであるものが市販されている。このようなコロイダルシリカは必要に応じて粒子径を選んで使用することができるが、表面被覆の観点からは微粒のコロイダルシリカを選ぶことが望ましい。また、粒子径の異なるコロイダルシリカを混合して用いることもできる。
被覆層は、ケイ素化合物として、オルソケイ酸、メタケイ酸、シリカゲル等のケイ素、酸素、水素からなる化合物;アルミニウム、マグネシウム、鉄等と化合したケイ酸塩化合物、例えば長石類、雲母等の天然に存在する化合物、セメント、ガラス、ホウロウなど人為的に造られる化合物等を含有してもよい。ケイ酸塩化合物として最も一般的な化合物がケイ酸塩ガラスであり、微細粉末状、繊維状などの形状のケイ酸塩ガラスが用いられ得る。
被覆層及び塗料組成物がハイドロタルサイト類を含有することも好ましい。この場合、被覆層の親水性が更に向上し、このため被覆層の防汚性が更に向上する。ハイドロタルサイト類は、下記一般式(2)で示される化合物である。
[M2+ 1−X3+ (OH)X+[An− X/n・mHO]X− …(2)
一般式(2)において、M2+は、Mg2+、Mn2+、Fe2+、Co2+、Ni2+、Cu2+、Zn2+などの2価の金属イオンを示す。M3+は、Al3+、Fe3+、Cr3+、Co3+、In3+などの3価の金属イオンを示す。An−は、OH、F、Cl、Br、NO2−、CO 2−、SO 2−、Fe(CN) 3−、CHCOO、シュウ酸イオン、サリチル酸イオンなどのn価のアニオンを示す。また、Xは0より大きく0.33以下の値を示す。ハイドロタルサイト類の中でも安定した物質として、化学名がマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(MgAl(OH)16CO・4HO)があり、これを用いるのが好ましい。また、ハイドロタルサイト類としては、脱水処理がされていないものを用いるのが好ましく、これにより、脱水処理がされているハイドロタルサイト類を用いる場合よりも被覆層の親水性を向上させることができる。
ハイドロタルサイト類の具体例としては、パウダー状の製品として平均粒径が3μm程度のDHT−6(協和化学工業社製)、平均粒径20〜300μm程度で多結晶構造の粒子状のキョーワード100、キョーワード200、キョーワード300、キョーワード400、キョーワード500PL、キョーワード500SH、キョーワード500SN、キョーワード1000、キョーワード2000(いずれも協和化学工業社製)、平均粒径20〜300μm程度で非晶質構造のキョーワード600、キョーワード700などがある。これらの中でも、脱水処理をしていないキョーワード200やキョーワード300を用いるのが好ましい。このようなハイドロタルサイトAはアニオン置換性を有し、炭酸基が他のアニオンによって置換される。ハイドロタルサイト類とバインダとの混合は中性若しくは酸性、好ましくは酸性下において行われる。アルカリ性のもとに混合が行われると、ハイドロタルサイト類の特性に起因して凝集が起こってコーティング剤としての取り扱いが困難になる。酸性下に制御するにはバインダーを含む酸性を呈する液体を用いることもでき、或いは、酸性を維持するために混合時に別途、酸を添加してもよい。
被覆層は、この被覆層の母相を構成する成分として、シリケート系化合物以外の樹脂成分又はその硬化物を含有してもよく、この場合、塗料組成物は、適宜の樹脂成分を含有してもよい。例えば被覆層の母相が、シリケート系化合物又はその硬化物と、適宜の樹脂成分又はその硬化物とで構成されてもよい。また、被覆層の母相が適宜の樹脂成分又はその硬化物のみで構成されてもよい。尚、被覆層の母相がシリケート系化合物又はその硬化物のみで構成されてもよい。
樹脂成分は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の適宜の樹脂を含み得る。特に樹脂成分が、汎用性の高いポリエステル樹脂又は耐蝕性及び耐候性に優れるフッ素樹脂を含有することが好ましい。
ポリエステル樹脂は、一般にはジカルボン酸とジオールが反応することで生成する。
ポリエステル樹脂を得るために用いられるジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸等の炭素数2〜22の脂肪酸ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸等が挙げられる。これらの化合物のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。ジカルボン酸のエステル形成性誘導体(ジカルボン酸のエステルであってエステル交換反応によりポリエステル樹脂を生成する化合物、酸無水物等など)が用いられてもよい。
ポリエステル樹脂を得るために用いられるジオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ペンタンジオール等の炭素数2〜22の脂肪酸ジオール等が挙げられる。これらの化合物のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。ジオールのエステル形成性誘導体(ジオールのエステルなどであってエステル交換反応によりポリエステル樹脂を生成する化合物)が用いられてもよい。
ポリエステル樹脂は、その結晶性を落とす目的や、カルボキシル基を導入する等の目的で、3官能基以上のカルボキシル基を有する化合物、ヒドロキシル基を有する化合物等から誘導される構成成分を含んでいてもよい。このようなポリエステル樹脂の具体例としては、末端に水酸基を有する線状ポリエステル樹脂にトリメリット酸を付加反応させることによってカルボキシル基が導入された線状ポリエステル樹脂、分子鎖内にトリメチロールプロパン、1,2,3−ヘキサントリオール、トリメリット酸、ピロメリット酸等から誘導される構成単位を若干含有することで分岐させた線状ポリエステル樹脂、結晶性を落とすために分子骨格中にトリメリット酸やトリメチロールプロパン等の3官能の構造を有する化合物から誘導される構成単位が若干導入されているポリエステル樹脂などが挙げられる。3官能基以上のカルボキシル基を有する化合物、ヒドロキシル基を有する化合物は、1種類のみを用いても2種類以上を組み合わせて用いても良い。
樹脂成分は、ポリエステル樹脂と共に、ポリエステル樹脂と熱硬化反応する硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、一分子中にカルボキシル基、カルボン酸無水物基及びアルキルビニルエーテル化合物でブロック化されたカルボキシル基の反応性官能基から選ばれる少なくとも1種の基を有する化合物であることが好ましい。このような硬化剤のうち一分子中にカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ダイマー酸、フタル酸、マレイン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。
フッ素樹脂としては、親水性の基を有する樹脂が使用されることが好ましい。親水性の基を有する樹脂と親水性の基を有さない樹脂とが併用されてもよい。
フッ素樹脂としては、フッ素化オレフィン系重合体が用いられることが好ましい。フッ素化オレフィン系重合体とは、フッ素化オレフィンモノマーを含む重合体である。フッ素化オレフィンモノマーは有機溶剤に分散又は溶解することが好ましい。
フッ素化オレフィンモノマーの具体例として、ポリテトラフロロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、(エチレン・テトラフロロエチレン)共重合体、(フッ化ビニリデン・テトラフロロエチレン)共重合体、(テトラフロロエチレン・ヘキサフロロプロピレン)共重合体、ポリフッ化ビニルエーテル、ポリクロロトリフルオロエチレン、(エチレン・クロロトリフルオロエチレン)共重合体、(フッ化ビニルエーテル・テトラフロロエチレン)共重合体等が挙げられる。これらは、旭ガラス株式会社製「ルミフロン」、DIC株式会社製「フルオネート」、東亜合成株式会社製「ザフロン」、ダイキン工業株式会社製「ゼッフル」等の塗料用樹脂として販売されている。これらの樹脂のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。アクリル系成分との相溶性が良好な点、溶剤に対する溶解性が良好な点、並びに親水性が高い点から、フッ素樹脂が少なくともフッ化ビニリデン系重合体を含むことが好ましい。
フッ素樹脂は、フッ素化(メタ)アクリレートと、親水性構造単位含有エチレン性不飽和単量体とを含むエチレン性不飽和単量体が重合することで得られる共重合体(以下、親水性構造含有共重合体という)を含むことも好ましい。フッ素樹脂がこの親水性構造含有共重合体と上記フッ素化オレフィン系重合体とを含むことも好ましい。
この親水性構造含有共重合体は、疎水性セグメントと親水性セグメントが同一鎖内に存在する重合体である。このような共重合体が用いられることで、被覆層の親水性が向上する。親水性セグメントとは、分子中にポリアルキレンオキシド、ヒドロキシル基、カルボキシル基、スルホニル基、燐酸塩、アミノ基、イソシアネート基、グリシジル基、アンモニウム塩、各種金属塩等の親水性の基を有するセグメントである。
親水性構造含有共重合体を得るために用いられるフッ素化(メタ)アクリレートは、アクリルエステル基及びその類縁基を有することが好ましい。具体例としては、次のような化合物が挙げられる。
CH=CHCOOCHCH17
CH=CHCOOCHCH1225
CH=CHCOOCHCH1021
CH=CHCOOCHCH13
CH=CHCOOCHCH
CH=CFCOOCHCH13
CH=CHCOOCHCF
CH=CHCOOCH17
CH=CHCOOCH0F41
CH=CFCOOCH
CH=CHCOOCH(CHCF(CF
CH=CHCOOCH(CF
CH=CHCOOCH(CF
CH=CHCOOCHCF
CH=CHCOOCHCH(OH)CH17
CH=CHCOOCHCHN(C17
CH=CHCOOCHCHN(C)COC15
CH=CHCOO(CHN(CH)COC1225
CH=CHCOO(CHN(CFCF(CF
CH=C(CH)COOCHCH17
CH=C(CH)COOCHCH1225
CH=C(CH)COOCHCH1021
CH=C(CH)COOCHCH13
CH=C(CH)COOCHCH0F41
CH=C(CH)COOCHCH
CH=C(CH)COO(CH1021
CH=C(CH)COOCHCF
CH=C(CH)COOCH17
CH=C(CH)COOCH2041
CH=C(CH)COOCHCF(CF
CH=C(CH)COOCHCFHCF
CH=C(CH)COOCHCFCFHCF
CH=C(CH)COOCH(CF
CH=C(CH)COO(CF
CH=C(CH)COO(CF
CH=C(CH)COOCHCH(OH)(CH1837
CH=C(CH)COOCHCHN(CH3)SO13
CH=C(Cl)COO(CHNHSO1225
これらの化合物のうち、一種のみが用いられても、二種以上が併用されてもよい。
親水性構造含有共重合体を得るために用いられる親水性構造単位含有エチレン性不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の一価ないし二価のカルボン酸などの、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸;2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、4−ヒドロキシブチルエステルなどの、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のヒドロキシルアルキルエステル;グリシジル(メタ)クリレートなどの(メタ)アクリル酸のグリシジルエステル;側鎖にエチレンオキシド、プロピレンオキシド等の繰り返し単位などのポリアルキレンオキシドを含有するモノマー等が、挙げられる。
親水性構造含有共重合体を得るために用いられるエチレン性不飽和単量体は、更にスチレン、核置換スチレン、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ビニルピリジン、酢酸ビニル等の脂肪酸ビニル、アルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アルキルエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸の炭素数1〜18のエーテル酸素含有アルキルエステル、アルキル炭素数が1〜18のアルキルビニルエーテル等の、種々の単量体を含んでいてもよい。
上述したエチレン性不飽和単量体を重合させて、親水性構造含有共重合体を得るにあたって、その合成方法は特に制限されない。合成にあたっては、公知の方法、すなわち、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合等の重合機構に基づき、溶液重合法、塊状重合法、エマルジョン重合法等の、公知の方法が適用され得る。特に簡便であるラジカル重合法が好ましい。
樹脂成分が、フッ素樹脂と共にアクリル樹脂を含むことも好ましい。アクリル樹脂は、フッ素化オレフィン系重合体との相溶性が高く、またこのアクリル樹脂により被覆層と金属板等との密着性が向上するという点で好ましい。アクリル樹脂としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、オクテル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アクリルニトリル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジブチルフマル酸エステル、ジメチルフマル酸エステル、(メタ)アクリル酸等の、(メタ)アクリロイル基を有する単量体の単独重合体又は共重合体が挙げられる。
塗料組成物及び被覆層は、更に種々の添加物を含有してもよい。添加物としては、酸化チタン、カーボンブラック、酸化鉄、クロム酸塩、カルシウムカーボネート等の無機顔料;シアニングリーン、シアニンブルー等の有機顔料;アルミニウム粉、銅粉、ニッケル粉等の金属粉末;消臭剤;帯電防止剤;シリコンオイル;フッ素樹脂パウダー;シリコンパウダー;タルク等の体質顔料;消泡剤;防錆剤;レヴェリング剤;ワックス;紫外線吸収剤;カップリング剤;界面活性剤;可塑剤;乾燥促進剤;硬化触媒;キシレン、シロキサン等の有機溶剤等が挙げられる。
金属板に適宜の手法により塗料組成物が塗布、成膜されることで、被覆層が形成される。金属板への塗料組成物の塗装法としては、ロールコート法、カーテンコート法、スプレー法、浸漬法、電解処理法、エアーナイフ法など公知の方法が採用され得る。塗料組成物は、金属板上、或いは化成処理層等が形成されている場合には化成処理層等の上に、塗布される。塗料組成物の塗布後、この塗料組成物に必要に応じて、常温乾燥、熱風炉や電気炉、誘導加熱炉などの加熱装置による乾燥や焼付けなどが施されることで、被覆層が形成される。エネルギー線硬化性の塗料が使用される場合には、塗装後の塗料組成物に、赤外線類、紫外線類や電子線類などエネルギー線の照射により塗料組成物が硬化されることで、被覆層が形成されてもよい。塗料組成物の乾燥時の温度や乾燥時間は、使用される塗料組成物の種類や、求められる生産性などに応じて適宜決定される。被覆層は連続状もしくは非連続状の皮膜となる。
特に塗料組成物がシリケート系化合物を含有する場合には、塗料組成物が硬化成膜する過程において、塗料組成物の塗膜の表層付近でシリケート系化合物の濃度が高くなり、更にシリケート系化合物が空気中の水分によって加水分解されることによって、被覆層の表面に多数の親水性の基(水酸基)が生成する。これにより、被覆層の親水性が高くなり、このため被覆層が特に高い防汚性を発揮する。
被覆層の厚みは、塗料組成物の種類、求められる性能などに応じて適宜決定される。例えば被覆金属板がプレコート金属板製品(塗装後に機械的な加工が施される製品)として使用される場合には、厚み5〜200μm程度の被覆層が形成されることが好ましい。金属板に機械的な加工が施された後、或いは更に加工後の金属板を建材として用いて施工した後に、塗装が施される場合には、被覆層の厚みが更に厚いこと、例えば数mmの厚みであることが好ましい。
[比較例1]
シリケート系化合物を含有しないポリエステル樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番HCT1230N)を、そのまま塗料組成物とした。
[比較例2〜4]
シリケート系化合物を含有しないポリエステル樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番HCT1230N)に、ジメチルスルファミドを含有する粉体(インナーミル303、株式会社エプロ製)を、ジメチルスルファミドが表1に示す割合(固形分比率)となるように配合することで、塗料組成物を調製した。
[比較例5]
メチルメトキシシリケートを2.5質量%含有するポリエステル樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番HCT1230SK)を、そのまま塗料組成物とした。
[比較例6,実施例1,2]
メチルメトキシシリケートを2.5質量%含有するポリエステル樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番HCT1230SK)に、ジメチルスルファミドを含有する粉体(インナーミル303、株式会社エプロ製)を、ジメチルスルファミドが表1に示す割合(固形分比率)となるように配合することで、塗料組成物を調製した。
[比較例7]
メチルメトキシシリケートを含有するフッ素樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番No.8900)を、そのまま塗料組成物とした。
[比較例8,実施例3]
メチルメトキシシリケートを含有するフッ素樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番No.8900)に、ジメチルスルファミドを含有する粉体(インナーミル303、株式会社エプロ製)を、ジメチルスルファミドが表1に示す割合(固形分比率)となるように配合することで、塗料組成物を調製した。
[比較例9〜12]
シリケート系化合物を含有しないポリエステル樹脂塗料(BASFコーティングジャパン社製、品番HCT1230N)に、表1に示す添加剤を表1に示す割合(固形分比率)で配合することで、塗料組成物を調製した。
[比較例13,14、実施例4]
水とアルコールの混合溶媒(混合体積比70:30)に、平均粒経200nmのハイドロタルサイト類と、メチルジエトキシシランとを配合し、更に比較例14及び実施例4の場合はジメチルスルファミドを含有する粉体(インナーミル303、株式会社エプロ製)を、ジメチルスルファミドが表1に示す割合(固形分比率)となるように配合することで、塗料組成物を調製した。ハイドロタルサイト類としては、脱水処理が施されていないマグネシウム・アルミニウム・ハイドロオキサイド・カーボネート・ハイドレート(MgAl(OH)16CO・4HO)(協和化学工業社製のキョーワード1000)を用いた。
[塗装金属板の作製]
各実施例及び比較例において、金属板として、板厚0.3mm、板幅250mmの溶融55%アルミニウム−亜鉛めっき鋼板(ガルバリウム鋼板(登録商標))を用意した。この金属板を脱脂後、塗布型クロメート処理を施した。続いて、金属板上に塗料組成物を塗布し、実施例5、比較例5、6では250℃、比較例13,14、実施例4では95℃、これら以外では230℃の温度で、焼付時間30秒の条件で成膜することで、厚み15μmの被覆層を形成した。
[加工性試験]
20℃の雰囲気下で塗装金属板にTベンド曲げ加工を施し評価した。ジメチルスルファミドを含まない塗膜にクラックが発生しない最小のT数と、ジメチルスルファミドを含む塗膜にクラックが発生しない最小のT数とを比較し、加工性が変化しないものを○、1ランクT数が悪化する場合を△、2ランク以上T数が悪化する場合を×とした。
[防藻性試験]
各実施例及び比較例において、塗装金属板を20mm×20mmの寸法に切断することで試験サンプルを得た。この試験サンプルをポテト・デキストローズ・アガー培地に配置し、さらに試験サンプル上に25種類の藻類と、建築物内で検出される頻度の高い51種類の真菌とを配合した懸濁液をまきかけた。続いてこの試験サンプルを温度30℃±5℃、湿度90%以上の雰囲気中に28日間曝露した。この間、試験サンプルに1500Luxの光を1日あたり8時間照射し、更に0.1Luxの光を1日あたり16時間照射した。続いて、試験サンプルを目視で観察し、試験サンプル上に藻類及び真菌の発育が全く認められない場合を○(良)、藻類又は真菌の発育が僅かでも認められた場合を×(不良)と評価した。
[防汚性試験]
降雨時に模擬屋根面(樹脂波板)から試験サンプルへ雨水が滴下する構造を有する雨筋汚染付着試験曝露架台を用意した。これを用いて、各実施例及び比較例で得られた塗装金属板の実曝露試験を実施した。曝露は3ヶ月間行い、曝露試験後の塗装金属板の表面の水接触角を、水接触角計(株式会社マツボー製、接触角計PG−X)を用いて測定した。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2013059960

Claims (7)

  1. 金属板と、この金属板を被覆する被覆層とを備え、前記被覆層がサルファ剤、及びケイ素化合物を含有し、前記被覆層中の前記サルファ剤の割合が、0.7〜2.5質量%の範囲である被覆金属板。
  2. 前記サルファ剤が、ジメチルスルファミドを含む請求項1に記載の被覆金属板。
  3. 前記被覆層中のケイ素化合物の含有量が、2.0質量%以上である請求項1又は2に記載の被覆金属板。
  4. 前記被覆層が、ポリエステル系樹脂又はその硬化物を更に含有する請求項1乃至3のいずれか一項に記載の被覆金属板。
  5. 前記被覆層が、フッ素系樹脂又はその硬化物を更に含有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の被覆金属板。
  6. 前記ケイ素化合物が、シリケート系化合物又はその硬化物を含有する請求項1乃至5のいずれか一項に記載の被覆金属板。
  7. 前記被覆層が、ハイドロキシタルサイト類を更に含有する請求項1乃至6のいずれか一項に記載の被覆金属板。
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