以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態の担架は、図1に示すように大きくは長手方向に沿って設けられた一対の支柱3、3とこれらの間に架け渡されたシート2と、支柱3、3を所定の間隔で平行に保持する一対の接続パイプ6、6より構成されている。支柱3、3の両端部には樹脂またはゴム製のグリップ81〜81が各々嵌め込まれ、作業者の持ち手部分として形成されている。
なお、同図は担架1の底面、すなわち積載面を表としたときの裏面側より見た時を示すものである。以下、本実施形態の担架1が延在する方向すなわち同図における左右方向を長手方向と称し、一対の支柱3、3を離間させる方向すなわち同図における上下方向を幅方向と称す。さらには、山折りおよび谷折りの方向は、担架1の積載面を上側に向けた時を基準として称す。
各支柱3、3は、2本の支柱部材4a、4bを折曲げ部3aを介して長手方向に接続することによって1本の連続した棒状体を構成している。シート2は厚地布によって概ね長方形状に構成しており、各支柱3、3に対応した位置すなわち図中の上辺と下辺に相当する位置は折り返したループ(図示せず)を長手方向に連続して形成している。このループに各支柱3、3を挿通させることによって、支柱3に対するシート2の幅方向への位置決めを行わせている。
また、各接続パイプ6、6は、接続パイプ部材6a、6bを折曲げ部6cを介して幅方向に接続することによって1本の連続した棒状体を構成している。そして、各接続パイプ6、6の端部は支持部51〜51を介して支柱3、3の下部に取り付けている。そのため、各支持部51〜51に対応する位置にシート2に開口孔(図示せず)を設けておき、当該開口孔を通じて支持部51〜51を支柱3、3に取り付け可能に構成している。こうすることで、接続パイプ6,6の取付けと同時に支柱3、3に対するシート2の長手方向への位置規制を行うことができるようにしている。
シート2には、上記支柱3、3に設けられた折曲げ部3a、3aを露出させるための、矩形状の開口部2a、2aを設けている。このような形状とすることで、後述する支柱3、3の折曲げを行った際に、シート2が抵抗として作用することがなく、さらにはシート2自身にも過大な張力が作用することを抑制できるようになっている。
このような基本構成とした担架1は、まず図2のように幅方向に縮めるための構成を備えている。すなわち、上述したように各接続パイプ6、6は接続パイプ部材6a、6bを折曲げ部6cを介して接続した形態とされているとともに、折曲げ部6cに設けられた連結ピン52を基点に接続パイプ部材6a、6bが相対回転可能にされており、各接続パイプ部材6a、6bは支柱3、3に固定された支持部51によって回転可能に支持されている。こうすることで、接続パイプ部材6a、6bは協働して長手方向内側に折り畳まれつつ、支柱3、3同士を近接させることができるようになっている。
また、折曲げ部6cは後に詳述するように、支柱3、3を離間させるように接続パイプ部材6a、6bがほぼ一直線になった状態でロックを掛けることと、そのロック状態を解除することが可能な固定手段7を備えている。
さらに、この実施形態の担架1は、図3のように長手方向に折り曲げるための構成を備えている。同図は図2の状態より、支柱部材4b、4bによって支持される図中の右側部分を中央の部分を基点にして、紙面手前方向に半回転させて支柱部材4a、4aによって支持される図中左側の部分に重ね合わせた状態を示している。
上述したように各支柱部材3、3は支柱部材4a、4bを折曲げ部3aを介して接続した形態として構成するとともに、折曲げ部3aに設けられた連結具としての連結ピン23を基点に支柱部材4a、4bが相対回転可能にしている。こうすることで、連結ピン23を基点にして回転することで、一直線状にあった支柱部材4a、4bを重ね合わせるようにして山折り方向に折り畳むことができるようになっている。
また、支柱部材4a、4a側に設ける接続パイプ6と支柱部材4b、4b側に設ける接続パイプ6とは、連結ピン23からの距離を異ならせて設けている。そのため、図3のように連結ピン23を中心にして支柱3、3を折り曲げたときに、接続パイプ6、6同士は重なる位置になることがなく互いに干渉することがない。
図3の状態を、側面から見た図を図4に示す。連結ピン23は、支柱3すなわち双方の支柱部材4a、4bの軸心よりシート2(図1参照)の裏面方向に離間した位置に設けられているために、折曲げに際し支柱部材4a、4bは互いに、離間した位置を保つことができるようになっている。そのため、支柱3の折曲げによって支柱部材4a、4bの間に周囲の物品を挟み込むことを防止することができるようになっている。
なお、同図から分かるように、各接続パイプ6、6は、支柱3に対してシート2(図1参照)の裏面方向にずらした位置にあって支持部51、51によって支持するようにしている。こうすることで、担架1上に積載した際にシート2(図1参照)が裏面方向にたわんだとしても、接続パイプ6、6に当接することを避けることができる。また、支持部51は、支柱3よりシート2(図1参照)の裏面方向に張り出した形態としており、支柱3、3を展開した状態で床面等に置く際の脚部としても機能する。
以下、上述した支柱3の折曲げ部3aについて、その構成を詳しく説明する。図5は、図1のように展開した状態の支柱3における折曲げ部3aの周辺を拡大して示したものである。また、図6は当該部分を分解して示した分解斜視図であり、図5を参照しつつ図6を用いて構成の説明を行っていく。
支柱3の構成要素である一方の支柱部材4aは、金属製のパイプ部12と、これに接続される継手部14とから構成されている。パイプ部12は、小径パイプ12aを基本として、その継手部14側の端部の外周に短い大径パイプ12bを嵌めこむことで構成している。大径パイプの軸方向中心には軸心と直交するように連結孔12dを設けており、連結ボルト22の挿通が可能となっている。なお、大径パイプ12bは端部における補強を目的として設けているものであり、こうした形態が構成できる限りパイプ部12は、小径パイプ12a、大径パイプ12bに分けることなく削り出し等の手段により一体として構成してもよい。
継手部14は、金属プレートの折曲げを主体として構成しており、主として逆U字型に折曲げることで平行な二面を形成した重合部14bと、この重合部14bより一方に張り出すように形成した部分パイプ状のパイプ連結部14aとから構成されている。このパイプ連結部14aは、パイプ部12の内径とほぼ等しい曲率の外周面を有しており、重合部14bとパイプ連結部14aの境界となる段差部14eに当接するまでパイプ部12をその外周に嵌め込むことができるようになっている。また、継手部14の上部14iはパイプ部12の外径とほぼ等しい曲率のパイプ状の外部領域として形成しており、パイプ連結部14aにパイプ部12を嵌め込んだ際に、パイプ部12の外周から継手部14の表面までが滑らかに連続するようにしている。
また、パイプ連結部14aにはその軸心と直交するように連結孔14cを設けている。当該連結孔14cは、パイプ連結部14aの外周にパイプ部12を嵌め込んだ状態としたときに、パイプ部12に設けてある連結孔12dと対応した位置になるように設定している。そのため、双方の連結孔14c、12dが重なり合う位置で連結ボルト22を挿通させて反対側よりナット(図示せず)を螺着することによって、継手部14とパイプ部12とを一体化させるようにしている。なお、本図においてはナットの他に、通常はボルトやナットを使用する際に同時に用いる座金や、バネ座金についても省略して記載しているが、適宜使用することが好ましい。この点については、以下においても同様である。
パイプ連結部14aは、重合部14bの平行面と平行になる向きに形成するとともに、重合部14bにはパイプ連結部14aに取り付けられるパイプ部12から下方向に持ち出した位置に、折り畳みや展開の際の支点となる連結孔14dを上記平行面に対して直交する方向に設けている。このように支点(連結孔14d)を設定することで、パイプ部12は重合部14bが形成する平行面に平行となる方向を維持しつつ回転を行うことが可能となっている。
また、支柱3の構成要素である他方の支柱部材4bも、上記の支柱部材4aと同様に金属製のパイプ部13と、これに接続される継手部15とから構成されている。パイプ部13aはパイプ部12と左右を逆に形成されているものであり、同じように小径パイプ13aを基本として、その継手部15側の端部の外周に短い大径パイプ13bを嵌め込んで構成している。
継手部15も継手部14と同様に、金属プレートの折曲げを主体として構成しており、主として逆U字型に折曲げることで平行な二面を形成した重合部15bと、この重合部15bより一方に張り出すように形成した部分パイプ状のパイプ連結部15aとから構成されている。このパイプ連結部15aの外周にはパイプ部13を嵌め込んだ上で、双方に設けた連結孔15c、13dを挿通させるようにして連結ボルト22とナット(図示せず)を用いて締結して一体化させることが可能となっている。
継手部15における重合部15bは、上述した継手部14における重合部14bの内部に入れ子状態で収めることができるように、全体形状を一回り小さく形成している。そして、側面から見てほぼ重なった状態となった場合に継手部14における上記連結孔14dと対応した位置になるように、継手部15にも回転を行う支点としての連結孔15dを設けている。双方の連結孔14d、15dが重なった位置で連結具としての連結ピン23を挿通させて、その先端をナット(図示せず)により固定することによって、当該連結ピン23を回転中心として継手部14、15を回転可能に連結している。
この回転中心となる支点(連結孔14d、15d)は、上述したようにパイプ部12、13の軸心から持ち出されて離間した位置にあるために、継手部14、15をふくむ両支柱部材4a、4bは折り曲げた状態とした場合であっても相互に離間した位置を保つことが可能となっている。
また、上記回転により支柱部材4a、4bを一直線状に展開していく際に、継手部15は継手部14の内部に進入していくように動作して重なり合うことになる。そのため継手部14の内面と引っ掛かりを生じることなく円滑に進入させることができるように、継手部15におけるパイプ連結部15aと反対側の上部は軸方向に沿って丸みを帯びる形態の丸み部15fを形成している。
さらに、支柱部材4a、4bを一直線状に展開した際には、支柱部材15の端面の一部を構成するパイプ部13の端面13cと、支柱部材14の端面の一部を構成する継手部14の端面14hとが当接するようにしている。
また、上記のように構成した折曲げ部3aは、双方の支柱部材4a、4bが一直線状になり、パイプ部12、13が、継手部14に形成された部分パイプ状の外部領域14iを介して見かけ上1本のパイプ状に連続した状態で回転動作にロックを掛けるとともにそのロック状態を解除可能な固定手段5をさらに備えている。当該固定手段5は支柱部材4b側の継手部15に付帯して設けた第1ロック部としての切り欠き部15gと、支柱部材4a側の継手部14に付帯して設けた第2ロック部としての軸部であるロックピン21を主な要素として備えるものである。
第1ロック部としての切り欠き部15gは、上述した継手部14における重合部15bの支柱部材4aと対向する縁部の上側近傍には、パイプ連結部15aの軸心方向に延びる長孔の一部を形成するようにして設けられている。そして、当該切り欠き部15gよりさらに上側の縁部には斜めに切り落とされた傾斜面15eが形成されている。さらに、切り欠き部15gより下側の縁部には僅かにR形状に切り欠き、ロックピン21の導入を容易にするための導入部15hが形成されている。
第2ロック部としての軸部であるロックピン21は、上記切り欠き部15gの延在する方向に対して直交する方向に配置され、切り欠き部15gの内部に係脱することが可能なものである。こうした動作を可能とするために、固定手段5の一部として支柱部材4a側の継手部14には次のような機構を設けている。
継手部14の内部には、パイプ連結部14aの内部より重合部14bの内部に向かって延在するように配置した可動体24を設けている。可動体24は金属プレートの折曲げによって形成してパイプ連結部14aの内面と同じ幅になるようにしており、この幅は継手部15における重合部15bの二面が形成する内側の幅よりも小さい。そのため、可動体24は継手部14の内側に設けられているものの、継手部14の内部に進入してくる継手部15と干渉することはなくその動作を妨げることはない。
可動体24のパイプ部12側の端部は幅の小さな突出部としてバネガイド部14gを形成している。この外側に一端側の内面を支持させるようにしてコイルバネ25を取り付ける。コイルバネ25の他端側は継手部14におけるパイプ連結部14gの端部に設けたバネ当接部14gによって支持される。バネ当接部14gは、パイプ連結部14gを構成する金属プレートの一部をパイプ連結部14gの内側に折り返すようにして形成しており、その外側でコイルバネ25の内面を支持することができるようにしている。
このように構成した可動体24は、継手部14の内部に、具体的にはパイプ連結部14aの内部より重合部14bの内部に向かって存するようにして組み込まれ、さらにコイルバネ25によって支柱部材4b側に弾性付勢される。
さらに、可動体24はパイプ連結部14aの軸心と直交する方向にピン挿入孔24aが設けられている。このピン挿入孔24a内に上述のロックピン21を挿入して支持させることによって可動体24の動作とともにロックピン21を動作させることができる。
ロックピン21は、継手部14における重合部14bの両側面に設けられ、パイプ連結部14aの軸心方向に延在する長孔形状のピン摺動孔14fよりその両端部が突出するようにしている。そのため、可動体24を組み込む際には、ピン摺動孔14fと可動体24のピン挿入孔24aとを合致させた位置した上で継手部14の外側よりロックピン21を挿入する。ロックピン21は一般のボルトと同様の形状をしており、一端側が頭部として大径に形成されており他端側にネジが形成されている。ロックピン21はピン摺動孔21より挿入して、突出した先端部よりナット等で固定する。
このように構成することで可動体24並びに軸部であるロックピン21はコイルバネ25により弾性付勢されつつ、ピン摺動孔14fに沿ってパイプ部12の軸心と直交した状態を保ちながら当該軸心と同一方向に進退することが可能となる。支柱部材4a、4bが一直線状になる使用時においては、上記ロックピン21が上述の切り欠き部15gの内部に進出するようにして係合してロック状態が形成されることになる。ロックピン21の係脱は軸心と同じ直線方向であるのに対して、支柱部材4a、4bは相対的な回転運動を行おうとするものであるために、両者の作用方向が異なり有効にロック状態を維持することができる。
さらに、固定手段5は、上記ロック状態を解除するための機構も備えている。具体的には、継手部15の内部にはロック解除操作を行う対象となる操作部としての操作レバー26を設け、基端部の下側における側面に設けた連結孔26aを上述の連結ピン23によって継手部14、15と同時に挿通させて固定することによって回転自在に接続するようにしている。
操作レバー26の基端部の上側に細幅に形成されて上方に向かって突出した形態の押圧部26bが形成されており、この部分が上述の可動体24の先端部の内部に入り込み、ロックピン21を弾性付勢力に抗して軸心方向に押し込むことができるようになっている。こうした弾性付勢力に抗する解除力を与えるために、上記操作レバー26には基端部より張り出した持ち手部分としての把持部26cが形成されており、この把持部26cを持って端部26dがパイプ部13に近接するようにして回転力を付与することで、上記押圧部26bがロックピン21に当接して解除力を付与することができるようになっている。
把持部26は、図5のように組込んだ際に回転中心側の基端部より端部26d側が継手部15より引き出された形態となっており、把持部26cは端部26dに行くに従って、パイプ部13より離間していくように傾斜して設けられている。ロックの解除操作を行う際には、端部26dがパイプ部13側に近接するように回動させる。
上記のように構成した支柱部材4a、4bの各部は、通常使用時においては図5のような位置関係になる。このとき、支柱部材4a、4bを左右に一直線状に展開され、継手部14に形成した部分パイプ状の外部領域4iとともに、見かけ上パイプ部12、13が1本のパイプ状に連続した形態となる。このように構成することで美観を損なわないような配慮も行っている。
こうした状態で、支柱部材4b側に形成される第1ロック部としての切り欠き部15gに対して、支柱部材4a側で可動体24によって支持される第2ロック部としての軸部であるロックピン21が係合することで、ロック状態が形成されることになる。このように、各継手部14、15を重ね合わせるように配置した上で、両者の間でロックを掛ける構成としているために、パイプ同士を直接ロックする場合に比べて使用状態への組立てや折り畳みに係る作業性が向上するとともに、ロックに掛かる係合部が外部に露出することがないために見栄えを良くすることもできる。
また、このような使用状態においては上述したように支柱部材15の端面の一部を構成するパイプ部13の端面13cと、支柱部材14の端面の一部を構成する継手部14の端面14hとが当接するようにしている。こうすることで、積載時に発生する谷折り方向、すなわち図中M方向のモーメントにより発生する荷重を端面13c、14hが受けて上記モーメントに抗う反力を発生させることになる。端面13c、14hが受ける上記の荷重は、これらの端面13c、14hにとって垂直方向に作用して、パイプ部13および継手部14に対して軸方向の単なる圧縮応力として各々作用することになる。すなわち、従来のように薄板状に形成した部材に対して強度の小さな曲げ方向に荷重を作用させることがなく、薄板であっても強度の大きな圧縮方向にのみ荷重を作用させることができる。さらには、荷重を受ける部分が従来とは異なり、点接触ではなく面接触となっているために、接触面において生じる局所的な応力の低減も図ることができ、より部材の変形や損傷の抑制を行うことができるようになっている。
図5の状態より、支柱3を折り曲げた収納状態を図7に示す。
連結ピン23を中心に支柱部材4aと支柱部材4bとが山折り方向に相対的に回転を行い、パイプ部12、13が互いに並行になるようにすることができる。なお、このような収納状態においては、ロックを掛けてはいないためにパイプ部12、13は平行になるとは限らず、さらには各部の寸法調整によっては使用時より180°以上に、もしくは180°以下に折り曲げるようにすることも可能である。
上述したように、各支柱部材4a、4bが回転を行う支点となるロックピン23の位置は、各支柱部材4a、4bの軸心より離間した位置にあるため、このような収納状態としたときにもパイプ部12、13との間に隙間を保つことができる。
図7の状態より、支柱部材4a、4bを展開していく途中を図8に示す。この図は、支柱部材4bの継手部15が支柱部材4aの継手部14に重なり合うように徐々に進入していく様子を示したものであり、継手部15に形成されている切り欠き部15gまでが継手部14の内面に進入している。
継手部15は先端上部に傾斜部15eおよび丸み部15fが形成されており、これらの部分は継手部15が継手部14内部への進入する際の干渉を避けるための逃げとして機能するために、容易に継手部14の内部に進入していくことができるようになっている。
また、こうした支柱部材4bの回転運動に伴って、操作レバー26も回転していく。
図8は、図7よりさらに支柱部材4a、4bを展開していった状態を示すものである。
継手部15が継手部14の内部に進入していくにつれて、継手部15の縁部に形成された導入部15hによってロックピン21を可動体24とともにピン摺動孔14fに沿って押し込んでいく。このとき同時に弾性付勢力を与えるコイルバネ25は縮められていく。
さらに、支柱部材4a、4bを展開していき一直線状にすると、図5の状態になる。この状態ではロックピン21が支持されるピン摺動孔14f、切り欠き部15g位置が合致することで、コイルバネ25の作用によって自動的にロックピン21が切り欠き部15gに押し込まれて係合してロック状態が生じる。
このロック状態においては、支柱部材4a、4bの回転方向とロックピン21の係脱方向とが異なるために、次のような解除動作を行わない限りロック状態は解かれることがない。
図10は、操作レバー26を操作してロック状態を解除した時を示している。操作レバー端部26dが支柱部材4bに近接するように回動させることによって、連結ピン23を支点に回動して操作レバー26の上端部分に形成された押圧部26bがロックピン21をピン摺動孔14fに沿って支柱部材4a側に押し込むようになる。こうすることで、ロックピン21と切り欠き部15gとの間の係合が解かれ、図7〜9のように自在に支柱部材を4a、4bを回動させることができるようになる。
また、本実施形態における担架1は図3のように幅方向に縮めるための機能を有している。以下、そのための構成について図12をもとに具体的な説明を行う。
上述したように支柱部材4b、4b(4a、4a)間は、接続パイプ6、6を両端に設けた支持部51、51を介して設けることによって、所定の間隔を維持しつつ並行になるように構成されている。また、接続パイプ6は接続パイプ部材6a、6bを折曲げ部6cを介して接続した形態とされているとともに、折曲げ部6cに設けられた連結ピン52を基点に接続パイプ部材6a、6bが相対回転可能に構成されている。さらに、各接続パイプ部材6a、6bは支柱3、3に固定された支持部51に対して連結ピン54、54によってその回りに回転可能に接続されている。さらに、上記の折曲げ部6cは、接続パイプ部材6a、6bがほぼ一直線になった状態でロックを掛けることと、そのロック状態を解除することが可能な固定手段7を備えている。
固定手段7の詳細な構成を、図12を参照しつつ図11に示す部分断面図を基にして以下に説明する。
固定手段7は、まず金属プレートの折曲げにより断面をコ字状に形成したロック収納部61を備えている。このロック収納部61に対して、一方の接続パイプ部6aは2本の固定ピン55によって固定され一体化されている。また、ロック収納部61に対して、他方の接続パイプ部6bは1本の連結ピン52によって、その連結ピン52を支点として回転可能に接続されている。
さらに、ロック収納部61の内部には接続パイプ部6aの軸心方向に摺動可能なロック部材63を備えている。ロック部材63は、ロック収納部61に設けられた壁状のバネ当接面61aとの間にコイルバネ64を設けることによって、接続パイプ部6aの軸心方向に対して弾性付勢力を与えられている。また、ロック収納部61には、バネ当接面61aと対向するように壁状のロック部材当接面61bが設けられており、当該ロック部材当接面61はロック部材63の移動を規制するストッパとして機能するものであり、ロック部材63はロック部材当接面61からバネ当接面61aまでの間でコイルバネ64によって接続パイプ部6aの先端方向に向かって弾性付勢されつつ移動することができる。
また、ロック部材63には、段差部63aおよび傾斜面63bが形成されている。段差部63aは、接続パイプ部6aの軸心方向に対して垂直となる面を形成するように切り欠かれた形態となっている。傾斜面63bは段差部63aとつながり、接続パイプ6aの軸心方向よりも傾いた平面として形成している。
このように形成した段差部63aは接続パイプ6bの端面71と当接することができるようになっている。そして、傾斜面63bは接続パイプ部6bにおける外周の一部であるロック部材63側の当接部72に当接するようになっている。
そのため、接続パイプ部6a、6bを折り畳む方向にすなわち図中の矢印方向に回転させた際に、上記当接部72が傾斜面63dによって回転運動を規制されることで接続パイプ部6a、6bの間にロックがかかるようになっている。
また、接続パイプ部6bの端面71は、軸心に対して垂直な面よりも傾斜し、かつ、上記当接部72の側が長くなるように形成されている。このようにすることで、接続パイプ部6a、6bを折り畳んだ状態より展開した状態になるまで回動させるとき、その回動につれて端面71がロック部材63の端面63cに当接するようにして、ロック部材63をコイルバネ64の弾性付勢力に抗して徐々に押し込んでいき、やがて接続パイプ部6a、6b一直線状になったときに、端面71は端面63cより離れて段差部63aに当接してロック状態が自動的に形成される。
また、こうしたロック状態を解除するためにロック部材63の一部をロック収納部61の外部に張り出すようにしており、当該部分に操作レバー62を固定して一体化している。操作レバー62を外部より操作することで、コイルバネ64による弾性付勢力に反してロック部材63を移動させることができる。こうすることで、ロック部材63の傾斜面63bは大きく接続パイプ部6bにおける当接部72より離間して、接続パイプ部6bを連結ピン52に回りに回動させることができるようになり、ロック状態の解除を行うことができる。
上記のようにロック状態を解除することによって、図13のように接続パイプ部6a、6bを折曲げ部6cによって内側に折り畳んだ状態とすることができる。このとき、各接続パイプ部6a、6bは支持部51、51により各々連結ピン54を支点に回転可能に支持されているため、支柱部材4b、4b(4a、4a)を平行にした状態を維持しつつ、両者を近接させることができるようになっている。
以上のように構成された担架1は、次のようにして使用される。
通常、担架1は図3および図4のような最もコンパクトに折り畳んだ形態として収納を行う。このとき、担架1は、接続パイプ6a、6bが内側に向けて折り畳まれることで幅方向に縮められて状態であるとともに、一方の支柱部材4a、4aに対して他方の支柱部材4b、4bを並行させるように長手方向に折り畳んだ状態となっている。
こうした状態より作業者は、まず一方の支柱部材4a、4aに対して他方の支柱部材4b、4bを、支点23を中心にして回動させて展開していく。図3のように、支柱部材4a、4aに対して支柱部材4b、4bが一直線状になることで、図5のように支柱部材4b側に設けられた切り欠き部15gの内部に支柱部材4a側に設けられたロックピン21が自動的に入り込むことで係合してロック状態が形成され、折り畳むことが不能となる。
また、この状態より作業者は支柱3、3の間の接続する接続パイプ6、6を折り曲げた状態より伸展させて、図1のように支柱3、3が離間して幅方向に開いた状態とする。このとき、各接続パイプ6、6を構成する接側パイプ6a、6bは一直線状になることで、自動的に固定手段7によるロック状態が形成され、折り畳むことが不能となる。
このように作業者が支柱3、3、接続パイプ6、6を展開するのみで長手方向にも幅方向にも自動的にロック状態が形成でき、迅速に担架1を折り畳んだ収納状態より使用状態に変化させることができる。
また、担架1への積載時に生じる谷折り方向のモーメントに対して、支柱部材4a、4bの各端面が当接することで端面に対して垂直な荷重として作用するために、各部材にとり強度の大きな方向にのみ荷重が作用させることができるとともに、面接触として局所的な応力も軽減できるために、積載による部材の変形や損傷を抑制することもできる。そのため、長期に亘り良好に使用することが可能となる。
以上のように、本発明の担架1は、一対の支柱3、3にシート2を架け渡してなる担架1において、前記各支柱3、3が、2本の支柱部材4a、4bと、両支柱部材4a、4bを折曲げ可能に連結する連結具23と、支柱部材4a、4bの軸線がほぼ一直線状になる状態において支柱部材4a、4b同士を固定する固定手段5とを具備してなり、前記連結具23は、両支柱部材4a、4bの端面14h、13c同士が密接ないし近接して対向する使用位置と当該端面14h、13c同士が離れて両支柱部材4a、4bが山折りに折れ曲がった折り畳み位置との間で両支柱部材4a、4bの軸心から離間した位置に設定した支点回りにこれらを相対回転可能に連結するものであり、前記固定手段5は、両支柱部材4a、4bの間に設けられて、当該両支柱部材4a、4bが使用位置まで回転したときに逆回転を規制するロック状態に移行し、当該固定手段5の一部に加えられる操作によってそのロック状態を解除するように構成したものである。
このように構成しているため、支柱部材4a、4bを山折り状態から直線状態にするだけで端面14h、13c同士が対向してロック状態に移行し、解除操作によってロックを解除して再び山折り状態にすることができるので操作性が向上する。さらに、支柱部材4a、4bの回転する支点23が軸心から離間した位置にあるので、山折りにした支柱部材4a、4b間に一定の距離が確保され、周辺の物品を挟み込むおそれも低減できる。
さらに、使用位置にある前記両支柱部材4a、4bに谷折り方向のモーメントが作用した際にそれらの端面14h、13c同士が当接して前記モーメント2より生じる荷重を支持するように構成しているため、使用時に生じる荷重を支柱部材4a、4bの端面14h、13cで受けることができ、支柱部材4a、4bの変形や損傷を抑えることができる。
さらに、前記固定手段5が、一方の支柱部材4bに付帯して設けられ両支柱部材4a、4bが使用位置に近づくにつれて他方の支柱部材4aの内部に進入する第1ロック部15gと、他方の支柱部材4aに付帯して設けられ両支柱部材4a、4bの使用位置で進入した前記第1ロック部15gに係合して両支柱部材4a、4bを使用位置に保持する第2ロック部21とを備えるように構成しているため、支柱部材4a、4bの内部で両ロック部15g、21が係脱するので、これらの間に周辺の物品を挟み込むおそれが低減できる。
また、各支柱部材4a、4bは、パイプ部12、13と、このパイプ部12、13の端部に一体的に設けられてパイプ部12、13から持ち出した位置に支点14d、15dが設定された継手部14、15とを有し、両継手部14、15同士が前記支点14d、15dにおいて連結具23によって回転可能に連結され、一方の継手部15が他方の継手部14内に進入して、一方の継手部15に設けた第1ロック部15gが他方に設けた第2ロック部21に係合するように構成しているため、一方の継手部15が他方の継手部14の内部に入れ子状態で入り込んだ位置で第1ロック部15gと第2ロック部21とが係合するようにロック機構5を構成すればよいので、パイプ部12、13同士を直接ロックする場合に比べて使用状態への組立てや折り畳みに係る作業性が向上するとともに、外観にも現れないため見栄えが良好となる。
また、使用位置において、一方の支柱部材4bを構成するパイプ部13の端面13cと、他方の支柱部材4aを構成する継手部14の端面14hとが対向するように構成するとともに、継手部14の一部に部分パイプ状の外部領域14iを設け、その外部領域14iにおいて一方の支柱部材4bのパイプ部13と他方の支柱部材4aのパイプ部12とが見掛け上1本のパイプ状に連続するように構成しているために、端面13c、14h同士が当接する部分を有効に確保するとともに、外観を有効に整えることができる。
また、第1ロック部および第2ロック部の一方は継手部15の縁部に切り欠き部15gを有し、他方は支柱部材4aの軸心と直交する方向に延び当該軸心方向の一方に弾性付勢された軸部21を有し、支柱部材4a、4b同士の使用位置に向かう回転に伴って、切り欠き部15g周辺の縁部15hが弾性力に抗して軸部21を押し込み、使用位置に到来した際に弾性力によって軸部21が両支柱部材4a、4bの回転方向と異なる方向に沿って切り欠き部15gに係合するとともに、ロック解除操作によって軸部21を切り欠き部15gから離脱させ得るように構成しているため、一旦係合したら、切り欠き部15gに対する軸部21の離脱方向と両支柱部材4a、4bの回転方向とが異なるので、操作部26を操作しない限り、ロック状態が解除されることがない。
さらに、ロック解除操作を行う対象となる操作部26は、基端26aを前記継手部15の内部において前記支点15d回りに回転可能に取りつけられ、端部26dを継手部15から引き出して一方の支柱部材4bのパイプ部13に対し傾斜する方向に延出させた操作レバー26であり、操作レバー26を前記端部26dが前記パイプ部13に近接する方向に操作することによって、基端の一部26bで第2ロック部21を係合を解除する方向に付勢するように構成しているため、固定手段5の内部にロック解除に掛かる機構をコンパクトに組み込むことができるとともに、ロック解除に係る操作性も良好となる。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
例えば、上述の実施形態においては、支柱部材4a、4bの端部に互いに重なり合う継手部14、15を設け、これらの継手部14、15のうち、内側の継手部15の側に第1ロック部としての切り欠き部15gを設け、外側の継手部14の側に第2ロック部としてのロックピン21を設けるようにしていたが、両者の係合が可能である限り切り欠き部15gとロックピン21をいずれの側に設けるよう構成することも可能である。なお、この時、ロックピン21の付勢方向に抗う方向に当該ロックピンを移動させることができる限り、操作レバー26もいずれの側の支柱部材4a、4bに設けてもよい。
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。