JP2013050119A - 軸受用密封装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】軌道輪に対するスリンガの嵌合(圧入)力を高めることで、クリープ耐性と密封性を同時に向上させることを可能にする軸受用密封装置を提供する。
【解決手段】スリンガ20(スリンガ基部20b)には、他の部位よりも薄肉化された薄肉部20cが周方向に沿って構成されていると共に、軌道輪には、スリンガの薄肉部が当接する段部28が周方向に沿って連続して構成されており、段部には、軸受の回転軸に対して同心円状に、軸受外部から軸受内部に向う方向に沿って先細り円錐状の勾配を成すテーパ面28sが構成され、軌道輪にスリンガを嵌合させた際、薄肉部が、段部に当接すると共に、テーパ面に沿って弾性変形することで、スリンガが他方の軌道輪に位置決め固定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、軸受内部を軸受外部から密封する軸受用密封装置に関する。
従来、例えば自動車や鉄道などの車両には、その車軸を回転自在に支持する軸受が用いられており(例えば、特許文献1参照)、当該軸受には、相対回転可能に対向配置された軌道輪間に区画された軸受内部(具体的には、軸受内部空間)を軸受外部から密封する種々の軸受用密封装置が設けられている。
一例として図5(a)には、駆動輪用の軸受ユニットが示されており、当該軸受ユニットは、車体側構成品に固定されて常時非回転状態に維持される一方の軌道輪(例えば、静止輪(外輪)2)と、静止輪(外輪)2の内側に対向して配置され、かつ、車輪側構成品に接続されて車輪と共に回転する他方の軌道輪(例えば、回転輪(内輪)4)と、相対回転する静止輪2と回転輪4との間に複列(例えば、2列)で転動自在に組み込まれた複数の転動体6,8とを備えている。なお、転動体6,8として、図面では「玉」を例示しているが、軸受ユニットの使用目的や使用環境に応じて「ころ」が適用される場合もある。
静止輪(外輪)2は中空円筒状を成しており、回転輪(内輪)4の外周を覆うように配置されている。この場合、静止輪2と回転輪4との間には、軸受ユニットの軸受内部(即ち、静止輪2と回転輪4との間で区画された環状の軸受内部空間)を、その軸方向両側から密封するための軸受用密封装置(車輪側のリップシール10a、車体側のパックシール10b)が設けられている。
また、静止輪(外輪)2には、その外周側から外方に向って放射状に突出した固定フランジ2aが一体成形されている。この場合、固定フランジ2aの固定孔2bに固定用ボルト(図示しない)を挿入し、これを車体側構成品に締結することで、静止輪2を例えばナックル(図示しない)に固定することができる。
一方、回転輪(内輪)4には、車輪側構成品を支持しつつ共に回転し、かつ、中空の円筒形状を成すハブ12が設けられており、ハブ12には、例えばディスクホイール(図示しない)が固定されるハブフランジ12aが突設されている。ハブフランジ12aは、静止輪(外輪)2を越えて外方(ハブ12の径方向外側)に向って放射状に延出しており、その延出縁付近には、周方向に沿って所定間隔で配置された複数のハブボルト14が設けられている。
ここで、複数のハブボルト14を例えばディスクホイールに形成された各ボルト孔(図示しない)に差し込んで、ハブナット(図示しない)で締付けることにより、当該ディスクホイールをハブフランジ12aに対して位置決めして固定することができる。なお、このとき、ハブ12の車輪側に突設されたパイロット部12dによって車輪側構成品の径方向の位置決めが成される。
また、ハブ12には、その外周面4mにおいて車体側端部に嵌合面4nが構成されており、当該嵌合面4nに環状の回転輪構成体16(ハブ12と共に回転輪(内輪)4を構成する部材)を嵌合(圧入)させることができるようになっている。この場合、例えば、静止輪2と回転輪4との間に各転動体6,8を保持器18で保持した状態で、回転輪構成体16を嵌合面4nに形成された段部12bまで嵌合した後、ハブ12の車体側端部の加締め領域12cを塑性変形させて、当該加締め領域12cを回転輪構成体16の周端部16sに沿って加締める(密着させる)ことで、当該回転輪構成体16をハブ12に固定することができる。
このとき、軸受ユニットには所定の予圧が付与された状態となり、この状態において、各転動体6,8は、互いに所定の接触角を成して静止輪2と回転輪4の各軌道溝(静止軌道溝2s、回転軌道溝4s)にそれぞれ接触して回転可能に組み込まれる。この場合、2つの接触点を結んだ作用線(図示しない)は、各軌道溝2s,4sに直交し、かつ、各転動体6,8の中心を通り、軸受ユニットの中心線上の1点(作用点)で交わる。これにより背面組合せ形(DB)軸受が構成される。
このような軸受構成において、車両走行中に車輪に作用した力は、全てディスクホイールから軸受ユニットを通じてナックルに伝達されることになり、その際、軸受ユニットには、各種の荷重(ラジアル荷重、アキシアル荷重、モーメント荷重など)が作用する。しかし、軸受ユニットは、上述したような背面組合せ形(DB)軸受となっているため、各種の荷重に対して高い剛性が維持される。
また、上記した軸受ユニットに設けられた軸受用密封装置において、リップシール10aは、静止輪(外輪)2の車輪側の固定面2n-1に固定され、回転輪4(ハブ12)の摺動面4n-1に対して摺動自在に位置決めされている。一方、パックシール10bは、静止輪(外輪)2の車体側の固定面2n-2と回転輪構成体16との間に摺動自在に位置決めされている。具体的には、回転輪構成体16には、静止輪(外輪)2の固定面2n-2に対向して嵌合面16mが形成されており、パックシール10bは、当該嵌合面16mと上記固定面2n-2との間に圧入されて嵌合された状態で位置決めされている。
ここで、パックシール10bについて説明する。
図5(b)に示すように、パックシール10bは、一方の軌道輪(静止輪(外輪)2)の車体側の固定面2n-2に嵌合(圧入)され、軌道輪間(静止輪2と回転輪4との間)に区画された軸受内部(空間)を覆うように延出したシール本体19と、他方の軌道輪(回転輪構成体16)の嵌合面16mに嵌合(圧入)され、軌道輪間(静止輪2と回転輪4との間)に区画された軸受内部(空間)を覆うように延出したスリンガ20とから構成されている。
シール本体19は、心金22の内周面(スリンガ20に対向する面)にシール材24を加硫して構成されており、シール材24には、例えば3つのシールリップ24a,24b,24cが一体成形されている。なお、心金22は、固定面2n-2に圧入されて嵌合される中空円筒部22aと、中空円筒部22aから回転輪構成体16(嵌合面16m)に向けて折り返され、軸受内部(空間)を覆うように延出した環状折返部22bとを備えて構成されている。
一方、スリンガ20は、軸受外部寄りに位置付けられ、軸受内部(空間)を覆うように延出した中空円板状を成すスリンガ壁部20aと、スリンガ壁部から軸受内部(空間)に向けて延出し、回転輪構成体16の嵌合面16mに圧入されて嵌合される中空円筒状を成すスリンガ基部20bとを備えて構成されている。なお、上記した3つのシールリップ24a,24b,24cにおいて、そのうちの1つのシールリップ24aはスリンガ壁部20aに摺接し、残りのシールリップ24b,24cはスリンガ基部20bに摺接する。
このようなパックシール10bによれば、軸受回転中(静止輪2と回転輪4とが相対回転する間)或いは、軸受非回転中において、上記した3つのシールリップ24a,24b,24cがスリンガ20に対して常に摺接状態となる。これにより、軸受内部(空間)を軸受外部から密封することができるため、軸受内部(空間)への異物(例えば、水、塵埃)の浸入防止、及び、軸受外部への潤滑剤の漏洩防止を図ることができる。なお、シール材24としては、例えばゴムやエラストマーなどの弾性材を適用することができると共に、当該シール材24を心金22の内周面に付加する方法としては、例えば焼き付けや加硫接着が挙げられる。
特開2005−256897号公報
ところで、パックシール10bは、回転輪構成体16の嵌合面16mと静止輪(外輪)2の固定面2n-2との間に嵌合(圧入)される。スリンガ20及び心金22は、いずれも断面形状が略L字状で、略均一な肉厚で環状にプレス成形されており、嵌合によりフープストレスが生じた場合、フープストレスに対する剛性は、心金22にあっては中空円筒部22aより環状折返部22bが高く、スリンガ20にあってはスリンガ基部20bよりスリンガ壁部20aが高い。このため、嵌合後において、中空円筒部22aの軸受外部先端部分が縮径、或いは、スリンガ基部20bの軸受内部寄り先端部分が拡径して、固定面2n-2或いは嵌合面16mから浮き上がるような変形を起こすことがある。また、嵌合(圧入)力によっては、心金22(中空円筒部22a)と固定面2n-2との嵌合面同士や、スリンガ20(スリンガ基部20b)と嵌合面16mとの間の嵌合面同士が損傷してしまう虞がある。そうなると、損傷の程度によっては、軸受内部(空間)の密封状態が低下してしまう。
そこで、密封対策として例えば図5(b)に示すように、心金22(中空円筒部22a)の車体側端部22c(環状折返部22bとは反対側の端部)に、シール材24でノーズカスケット26を形成する方法が知られている。ノーズカスケット26は、心金22の車体側端部22cを覆うようにシール材24を回し込んで形成されており、その一部を静止輪(外輪)2側に膨出させて構成されている。これにより、軸受内部(空間)に対する密封性の維持向上が図られている。
これに対して、スリンガ20については、スリンガ基部20bが回転輪構成体16の嵌合面16mに圧入されて嵌合された状態にあるだけの構成が一般的であるため、軸受外部の泥水が嵌合面16mを通過して軸受内部に浸入したり、軸受内部のグリース(基油等の液体成分)が嵌合面16mを通過して軸受外部に漏れ出したり、嵌合力が不足して軸受回転中にクリープが発生する虞があった。軸受回転中(静止輪2と回転輪4とが相対回転する間)にクリープ現象が発生した場合、スリンガ基部20bと回転輪構成体16の嵌合面16mとの間の嵌合(圧入)力が劣化し、これにより、スリンガ20が回転輪構成体16(広く捉えると、軌道輪、即ち、回転輪(内輪)4)から抜け出して(脱落して)しまう虞がある。そうなると、軸受内部(空間)に対する密封性を維持することができなくなってしまう。
本発明は、このような問題を解決するためになされており、その目的は、軌道輪に対するスリンガの嵌合力(保持力)を高めることで、クリープ耐性と密封性を同時に向上させることを可能にする軸受用密封装置を提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明は、相対回転可能に対向配置された軌道輪間に区画された軸受内部を密封する軸受用密封装置であって、一方の軌道輪に嵌合され、軌道輪間に区画された軸受内部を覆うように延出したシール本体と、他方の軌道輪に嵌合され、軌道輪間に区画された軸受内部を覆うように延出し、シール本体に形成された複数のシールリップが摺接するスリンガとを備え、スリンガは、軸受外部寄りに位置付けられ、軸受内部を覆うように延出した中空円板状を成すスリンガ壁部と、スリンガ壁部から軸受内部に向けて延出し、他方の軌道輪に嵌合される中空円筒状を成すスリンガ基部とを備えて構成され、スリンガ基部には、その延出端に、他の部位よりも薄肉化された薄肉部が周方向に沿って構成されていると共に、他方の軌道輪には、当該軌道輪に嵌合されたスリンガ基部の延出端が当接する段部が、他の部位よりも突出して周方向に沿って連続して構成されており、段部には、軸受の回転軸に対して同心円状に、軸受外部から軸受内部に向う方向に沿って先細り円錐状の勾配を成すテーパ面が構成され、他方の軌道輪にスリンガを嵌合させた際、スリンガ基部の延出端の薄肉部が、段部に当接すると共に、テーパ面に沿って弾性変形することで、スリンガが他方の軌道輪に位置決め固定される。
本発明において、段部には、テーパ面から連続して形成され、他方の軌道輪を一部窪ませた逃げ部が設けられている。
本発明において、段部と、スリンガの薄肉部との間には、周方向に沿って連続した弾性材が介在されている。
本発明によれば、軌道輪に対するスリンガの嵌合(圧入)力を高めることで、クリープ耐性と密封性を同時に向上させることを可能にする軸受用密封装置を実現することができる。
(a)は、本発明の一実施形態に係る軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図、(b)は、段部周りの構成を一部拡大して示す断面図。 (a)は、本発明の変形例に係る軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図、(b)は、本発明の変形例に係る軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図。 (a)は、本発明の変形例に係る軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図、(b)は、本発明の変形例に係る軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図。 (a)は、逃げ部を有する段部周りの構成に対する研削方法を示す図、(b)は、逃げ部を無くした段部周りの構成に対する研削方法を示す図。 (a)は、軸受用密封装置が設けられた軸受ユニットの構成を示す断面図、(b)は、既存の軸受用密封装置の構成を一部拡大して示す断面図。
以下、本発明の一実施形態に係る軸受用密封装置について、添付図面を参照して説明する。なお、本実施形態は、図5に示された軸受用密封装置の改良であるため、以下、改良部分の説明にとどめる。この場合、上記した軸受用密封装置(図5)と同一の構成については、その構成に付された参照符号と同一の符号を本実施形態に用いた図面上に付すことで、その説明を省略する。
図1(a),(b)に示すように、本実施形態の軸受用密封装置において、スリンガ20のスリンガ基部20bには、その延出端に、他の部位よりも薄肉化された薄肉部20cが周方向に沿って構成されている。この場合、薄肉部20cは、スリンガ基部20bの延出端の内径側を一部除肉して形成してもよいし、外径側を一部除肉して形成してもよい。或いは、内径側と外径側の双方を一部除肉して薄肉部20cを形成してもよい。また、薄肉部20cは、周方向に沿って連続的に構成してもよいし、所定間隔で切り欠いて(例えば、スリットを入れて)断続的に構成してもよい。
なお、薄肉部20cの肉厚や、長さ(軸受の回転軸Ax(図5(a)参照)に沿った方向における長さ)、或いは所定間隔で切り欠きを設ける場合の切り欠きの長さについては、当該薄肉部20cを後述する段部28に当接させた際、一定の剛性を維持しつつ、かつ、弾性変形可能な程度に設定され、これは例えばスリンガ20の材質や板厚、大きさ等に応じて増減変更されるため、ここでは特に数値限定しない。
また、本実施形態の軸受用密封装置において、他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)には、当該回転輪構成体16の嵌合面16mに嵌合(圧入)されたスリンガ基部20bの延出端(即ち、薄肉部20c)が当接する段部28が、他の部位よりも突出して周方向に沿って連続して構成されている。
段部28には、軸受の回転軸Axに対して同心円状に、軸受外部から軸受内部に向う方向に沿って先細り円錐状の勾配を成すテーパ面28sが構成されている。この場合、テーパ面28sの勾配(傾斜角度)θについては、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mとテーパ面28sとの成す角度として、或いは、軸受の回転軸Axとテーパ面28sとの成す角度として規定することができる。テーパ面28sの勾配θは、小さいほど薄肉部20cの縮径効果は高くなる一方、加工が難しくなると共に、テーパ面28sの軸方向寸法が大きくなり(軸方向の深さが深くなり)、回転輪構成体16を幅広にする必要を生じるといった弊害が生まれるので、具体的には、55°<θ<67.5°の範囲に設定することが好ましい。下限を55°とした理由は、菱形切削チップの先端角は55°であり、θを55°以下とすると特注チップが必要となり割高となるからである。また、上限を67.5°とした理由は、本実施形態ではテーパ面28sに当接する薄肉部20cの先端外径側の形状について特に規定しておらず、各図面では丸面取りとしているが、現実的な形状はC面取りであり、そのC面取りの内径側の稜がテーパ面28sに当接したとき、θを67.5°以下にすれば、反力は軸方向成分より径方向成分が強くなり、テーパ面28sの縮径効果が高くなるからである。
以上、本実施形態によれば、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mに、スリンガ20(スリンガ基部20b)を嵌合(圧入)させた際、スリンガ基部20bの延出端の薄肉部20cが、段部28に当接すると共に、テーパ面28sに沿って弾性変形することで、スリンガ20を他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mに堅牢に位置決め固定させることができる。
具体的に説明すると、スリンガ20(スリンガ基部20b)の薄肉部20cを段部28に当接させただけでは、スリンガ20は、スリンガ基部20bと回転輪構成体16の嵌合面16mとの間の嵌合(保持)力のみで、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)に固定された状態にあり、スリンガ基部20bの軸受内部寄り部分が拡径して、嵌合面16mから浮き上がった状態、或いは、嵌合力が十分でない状態になっている虞がある。かかる状態においては、軸受外部の泥水が嵌合面16mを通過して軸受内部に浸入したり、軸受内部のグリース(基油等の液体成分)が嵌合面16mを通過して軸受外部に漏れ出したり、嵌合力が不足して軸受回転中にクリープが発生する虞があった。クリープ現象が発生した場合、スリンガ基部20bと嵌合面16mとの間が面荒れし、摩耗し、嵌合面16mの防水性が低下すると共に、嵌合(支持)力が低下し、これにより、スリンガ20が他方の軌道輪4(回転輪構成体16)から抜け出して(脱落して)しまう虞がある。そうなると、軸受内部(空間)に対する密封性を維持することができなくなってしまう。
これに対して、本実施形態では、スリンガ20(スリンガ基部20b)の薄肉部20cを、段部28に当接させると共に、テーパ面28sに沿って弾性変形させている。この場合、テーパ面28sは、軸受の回転軸Axに対して同心円状に、軸受外部から軸受内部に向う方向に沿って先細り円錐状の勾配を成しているため、当該テーパ面28sに沿って弾性変形した薄肉部20cは、軸受の回転軸Axに向けて同心円状に屈曲した状態(姿勢)に維持される。別の捉え方をすると、当該テーパ面28sに沿って弾性変形した薄肉部20cは、軸受の回転軸Axに向けて同心円状に縮径化(小径化)した状態(姿勢)に維持される。
これによれば、スリンガ基部20bの軸受内部寄り部分が縮径して、嵌合面16mから浮き上がった状態が解消され、嵌合面16mに押し付けられる状態となるので、嵌合力が増加し、軸受外部の泥水が嵌合面16mを通過して軸受内部に侵入したり、軸受内部のグリース(基油等の液体成分)が嵌合面16mを通過して軸受外部に漏れ出したり、嵌合力が不足して軸受回転中にクリープが発生することを防止できる。また、クリープ現象が発生し、スリンガ基部20bと嵌合面16mとの間の嵌合(支持)力が劣化しても、上記した薄肉部20cの屈曲(縮径化)した状態(姿勢)が維持されているため、かかる状態(姿勢)が、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)から抜け出る(脱落する)方向へのスリンガ20の移動を抑止する抑止力となって働くことになり、これにより、スリンガ20が他方の軌道輪4(回転輪構成体16)から抜け出して(脱落して)しまうことを未然に防止することができる。その結果、軸受内部(空間)に対する密封性(気密性、液密性)を維持することができる。
また、段部28には、テーパ面28sから連続して形成され、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mを一部窪ませて形成された逃げ部28gを設けることが好ましい。ここで、逃げ部28gを形成すると、嵌合面16mの軸受内部(空間)寄りの起点Pが設定されるため、この場合、上記した薄肉部20cの起点を嵌合面16mの軸受内部(空間)寄りの起点Pと同一か、或いは、それよりも軸受外部寄りに設定することが好ましい。
そうすると、上記した薄肉部20cの屈曲(縮径化)した状態(姿勢)が、嵌合面16mの軸受内部(空間)寄りの起点Pの直近から始まるようになると共に、当該薄肉部20cが逃げ部28gに向けてさらに屈曲し、薄肉部20c及びスリンガ基部20bの軸受内部寄り部分が縮径し、嵌合面16mより小径となる。これにより、クリープ発生時において、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)から抜け出る(脱落する)方向へのスリンガ20の移動を抑止する抑止力を飛躍的に向上させることができる。
更に、例えば図4(a)に示すように、回転軌道溝4sと共に一体研削する研削用砥石30によって他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)の嵌合面16mに研削処理を施す際に、上記したように段部28に逃げ部28gを設けたことで、他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)の嵌合面16mを斑無く全て研削することができる。これにより、当該嵌合面16mに対してスリンガ20(スリンガ基部20b)を円滑かつ高精度に嵌合(圧入)させることができ、その結果、スリンガ20を他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)の嵌合面16mに堅牢にかつ正確に位置決めして固定させることができる。
そうなると、例えば当該スリンガ20(スリンガ壁部20a)にエンコーダ(図示しない)を取り付けた場合、他方の軌道輪(回転輪(内輪)4)の回転状態は、スリンガ20を介してエンコーダにブレ無く高精度に伝達され、このとき、当該スリンガ20と共に回転するエンコーダの回転状態をセンサ(図示しない)でセンシングすることで、軸受の回転状態(例えば、回転速度、回転方向など)を高精度に測定することができる。
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、以下の変形例も技術的範囲に含まれる。
第1の変形例として図2(a),(b)に示すように、段部28と、スリンガ20の薄肉部20cとの間に、周方向に沿って連続した弾性材を介在させてもよい。これにより、軸受内部(空間)に対する密封性(気密性、液密性)を向上させることができる。
図2(a)には、薄肉部20cの表面全体に亘り周方向に沿って連続的に弾性材32(例えば、合成樹脂)を設け、当該弾性材32をテーパ面28sに当接させる構成が示されている。この場合、弾性材32は、加硫によって薄肉部20c表面に構成すればよい。
図2(b)には、弾性材として、例えば合成樹脂製のOリング34を逃げ部28gに装着し、これに薄肉部20cを当接させる構成が示されている。この場合、薄肉部20cは、周方向に沿って連続的に構成することが好ましい。
第2の変形例として図3(a),(b)に示すように、逃げ部28gを無くして段部28を構成してもよい。ここで、例えば図4(b)に示すように、回転軌道溝4sと共に一体研削する研削用砥石30によって他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)の嵌合面16mに研削処理を施す際に、段部28から逃げ部28gを無くすると、他方の軌道輪4(具体的には、回転輪構成体16)の嵌合面16mを斑無く全て研削することができなくなり、段部28寄りの領域に削り残り、即ち、非研削部Hが残留する。この場合、非研削部Hに対向する側面を除肉して薄肉部20cを形成することが好ましい。
逃げ部28gを無くした場合でも、上記した実施形態と同様に、他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mに、スリンガ20(スリンガ基部20b)を嵌合(圧入)させた際、スリンガ基部20bの延出端の薄肉部20cが、段部28に当接すると共に、テーパ面28sに沿って弾性変形することで、スリンガ20を他方の軌道輪4(回転輪構成体16)の嵌合面16mに堅牢に位置決め固定させることができる。なお、その他の効果は、上記した実施形態と同様であるため、その説明は省略する。
この場合、図3(b)に示すように、薄肉部20cと段部28(テーパ面28c)と嵌合面16mとの間に弾性材36(例えば、合成樹脂)を充填し介在させることで、軸受内部(空間)に対する密封性(気密性、液密性)を向上させることができる。
2 静止輪
4 回転輪
20 スリンガ
20a スリンガ壁部
20b スリンガ基部
20c 薄肉部
28 段部
28s テーパ面

Claims (3)

  1. 相対回転可能に対向配置された軌道輪間に区画された軸受内部を密封する軸受用密封装置であって、
    一方の軌道輪に嵌合され、軌道輪間に区画された軸受内部を覆うように延出したシール本体と、他方の軌道輪に嵌合され、軌道輪間に区画された軸受内部を覆うように延出し、シール本体に形成された複数のシールリップが摺接するスリンガとを備え、
    スリンガは、軸受外部寄りに位置付けられ、軸受内部を覆うように延出した中空円板状を成すスリンガ壁部と、スリンガ壁部から軸受内部に向けて延出し、他方の軌道輪に嵌合される中空円筒状を成すスリンガ基部とを備えて構成され、
    スリンガ基部には、その延出端に、他の部位よりも薄肉化された薄肉部が周方向に沿って構成されていると共に、
    他方の軌道輪には、当該軌道輪に嵌合されたスリンガ基部の延出端が当接する段部が、他の部位よりも突出して周方向に沿って連続して構成されており、
    段部には、軸受の回転軸に対して同心円状に、軸受外部から軸受内部に向う方向に沿って先細り円錐状の勾配を成すテーパ面が構成され、
    他方の軌道輪にスリンガを嵌合させた際、スリンガ基部の延出端の薄肉部が、段部に当接すると共に、テーパ面に沿って弾性変形することで、スリンガが他方の軌道輪に位置決め固定されることを特徴とする軸受用密封装置。
  2. 段部には、テーパ面から連続して形成され、他方の軌道輪を一部窪ませた逃げ部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軸受用密封装置。
  3. 段部と、スリンガの薄肉部との間には、周方向に沿って連続した弾性材が介在されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受用密封装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN112963865A (zh) * 2021-03-31 2021-06-15 西北工业大学 一种可控制喷油速度的甩油盘

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