(第1の実施形態)
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図5に従って説明する。なお、以下における本明細書中の説明においては、車両の進行方向(前進方向)を前方(車両前方)として説明する。
図1に示すように、本実施形態の車両は、複数(本実施形態では4つ)ある車輪(右前輪FR、左前輪FL、右後輪RR及び左後輪RL)のうち、前輪FR,FLが駆動輪として機能する車両(いわゆる前輪駆動車)である。こうした車両は、該車両を走行させるための駆動力発生装置11と、前輪FR,FLを転舵輪(操舵輪)として転舵させるための操舵装置12と、各車輪FL,FR,RL,RRに制動力を付与するための制動装置13とを備えている。また、この車両には、上記各装置11〜13を制御するための制御装置15が設けられている。
駆動力発生装置11には、運転手によるアクセルペダル20の操作量、即ちアクセル開度(アクセル操作量)に基づいた駆動力を発生するエンジン21と、該エンジン21の出力軸に接続された自動変速機22とが設けられている。また、駆動力発生装置11には、アクセル開度に応じた検出信号を制御装置15に出力するアクセル開度センサSE1が設けられている。そして、エンジン21が駆動する場合には、自動変速機22から出力された駆動力がディファレンシャルギヤ23を介して前輪FR,FLに配分されることにより、車両が前方又は後方に移動する。
操舵装置12には、運転手によって操舵(操作)されるステアリング30が固定されたステアリングシャフト31と、ステアリングシャフト31に連結された転舵アクチュエータ32とが設けられている。また、操舵装置12には、転舵アクチュエータ32により車両の左右方向に移動自在なタイロッドと、該タイロッドの移動により前輪FL,FRを転舵させるリンクとを含んだリンク機構部33が設けられている。また、操舵装置12には、ステアリング30の操舵角に応じた検出信号を制御装置15に出力する操舵角センサSE2が設けられている。
制動装置13には、運転手によるブレーキペダル40の操作力に応じたブレーキ液圧を発生する液圧発生装置41と、車輪FR,FL,RR,RL毎に個別に設けられた複数(本実施形態では4つ)のホイールシリンダ42a,42b,42c,42dに連結されたブレーキアクチュエータ43とが設けられている。また、制動装置13には、運転手によるブレーキペダル40の操作状況(オンかオフか)に応じた検出信号を制御装置15に出力するブレーキスイッチSW1が設けられている。
ブレーキアクチュエータ43は、運転手がブレーキペダル40を操作しない場合であっても各車輪FR,FL,RR,RLに対して制動力を付与できるように構成されている。例えば、ブレーキアクチュエータ43は、液圧発生装置41側のブレーキ液圧と、ホイールシリンダ42a,42b,42c,42d内のブレーキ液圧との間に差圧を発生させるための差圧調整弁(図示略)と、ホイールシリンダ42a,42b,42c,42d内にブレーキ液圧を供給するための電動ポンプ(図示略)とを備えている。また、ブレーキアクチュエータ43には、各ホイールシリンダ42a,42b,42c,42d内のブレーキ液圧を個別に調整するための各種弁が設けられている。つまり、本実施形態のブレーキアクチュエータ43は、各車輪FR,FL,RR,RLに対する制動力を個別に調整可能である。
制御装置15には、アクセル開度センサSE1、操舵角センサSE2及びブレーキスイッチSW1に加え、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を検出するための車輪速度センサSE3,SE4,SE5,SE6と、車両の前後方向における加速度を検出するための加速度センサ(「Gセンサ」ともいう。)SE7とが電気的に接続されている。こうした制御装置15は、CPU、ROM及びRAMなどで構成される複数のECU(「電子制御装置」ともいう。)を備えている。例えば、制御装置15は、駆動力発生装置11を制御するためのエンジン用ECU50、及び制動装置13を制御するための制動制御装置としてのブレーキ用ECU51を備えている。そして、これら各ECU50,51は、各種情報を送受信可能となっている。
本実施形態のブレーキ用ECU51は、車両の旋回時に当該車両の旋回半径を小さくするための小回り制御(旋回時制動制御)を行う。具体的には、ブレーキ用ECU51は、小回り制御の実行を許可・禁止するために運転手に操作される操作部としての作動ボタン55がオン状態である場合において、ステアリング30の操舵角の絶対値が操舵角判定値以上であると共に車両の車体速度が車速判定値(例えば、10km/h)未満であるときに、小回り制御を行う。このとき、ブレーキ用ECU51は、車両の旋回方向内側の後輪(右方向に旋回している場合には右後輪)に対して制動力が付与されるようにブレーキアクチュエータ43を制御する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、制御手段としても機能する。
すると、小回り制御が行われる車両は、車両の旋回方向内側の後輪を中心に回転する運動を伴いつつ旋回する。その結果、小回り制御が行われない場合と比較して、車両の旋回半径が小さくなる。
その後、小回り制御の終了条件が成立すると、車両の旋回方向内側の後輪に対する制動力を減少させるために、旋回方向内側の後輪に対応するホイールシリンダのホイールシリンダ圧を減圧させる減少制御が行われる。ここで、車両の旋回時においては、旋回方向外側への力(「遠心力」ともいう。)が車両に作用している。小回り制御の実行中では、旋回方向内側の後輪に付与される制動力が、車両に加わる旋回方向外側への力に対向する力となる。そのため、車両の乗員は、旋回方向内側の後輪に対して制動力が付与されている分、旋回方向外側への飛び出し感を感じにくい。
しかし、減少制御が開始されると、車両の旋回方向内側の後輪に対する制動力が減少される。つまり、車両に加わる旋回方向外側への力に対向する力が小さくなる。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きい状態で旋回方向内側の後輪に対する制動力が急激に減少されると、車両が急にアンダーステア傾向を示すようになり、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感が急激に大きくなる。その結果、車両の乗員に不快感を与えるおそれがある。こうした課題を解決するためには、減少制御中における旋回方向内側の後輪に対する制動力の減少態様を工夫する必要がある。
そこで、本実施形態のブレーキ用ECU51では、旋回方向内側の後輪に対する制動力の減少速度を、ステアリング30の操舵角、車両の車体速度及びアクセル開度に基づき設定し、該設定した減少速度に基づいた減少制御を行うための小回り制御終了処理ルーチンが実行される。なお、減少速度を上記3つのパラメータに基づき設定する理由は、ステアリング30の操舵角の絶対値が大きいほど車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなると共に、車両の車体速度が高速度であるほど車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなるためである。
次に、本実施形態の小回り制御終了処理ルーチンについて、図2に示すフローチャートを参照して説明する。なお、本実施形態において「小回り制御中」とは、小回り制御の開始条件の成立を契機に旋回方向内側の後輪に対する制動力の増大が開始されてから、小回り制御の終了条件の成立を契機に開始される減少制御が終了するまでのことをいう。
さて、小回り制御終了処理ルーチンは、作動ボタン55がオン状態である間、予め設定された所定周期毎に実行される。そして、小回り制御終了処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU51は、小回り制御フラグFLGがオンであるか否かを判定する(ステップS10)。この小回り制御フラグFLGは、小回り制御の開始条件が成立したタイミングでオンに設定されるフラグであって、小回り制御中ではオンで維持される。小回り制御フラグFLGがオフである場合(ステップS10:NO)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御中ではないため、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。
一方、小回り制御フラグFLGがオンである場合(ステップS10:YES)、ブレーキ用ECU51は、操舵角センサSE2からの検出信号に基づき、ステアリング30の操舵角Aを操舵角関連情報として取得する(ステップS11)。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、ステアリング30の操舵角の変化に伴い変動する操舵角関連情報として操舵角Aを取得する操舵角関連情報取得手段としても機能する。
続いて、ブレーキ用ECU51は、各車輪速度センサSE3〜SE6を用いて車両の車体速度VSを車速関連情報として取得する(ステップS12)。すなわち、ブレーキ用ECU51は、各車輪速度センサSE3〜SE6からの検出信号に基づき各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度を演算する。そして、ブレーキ用ECU51は、演算した各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度のうち少なくとも一つの車輪の車輪速度に基づき車体速度VSを取得する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、車両の車体速度に関連する車速関連情報として車体速度VSを取得する車速関連情報取得手段としても機能する。
そして、ブレーキ用ECU51は、小回り制御の終了条件が成立したか否かを判定する(ステップS13)。本実施形態では、以下に示す2つの条件のうち少なくとも一方が成立した場合に、小回り制御の終了条件が成立したと判定される。なお、舵角判定値Ath1及び車速判定値VSth1は、小回り制御の終了条件が成立したか否かの判断基準として設定された判定値である。
(第1の条件)ステップS11で取得したステアリング30の操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1未満であること。
(第2の条件)ステップS12で取得した車両の車体速度VSが車速判定値VSth1(例えば、10km/h)を超えたこと。
第1及び第2の各条件が共に非成立である場合(ステップS13:NO)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御の終了条件が成立していないため、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。一方、第1及び第2の各条件のうち少なくとも一方が成立した場合(ステップS13:YES)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御の終了条件が成立したため、ステップS11で取得したステアリング30の操舵角Aの絶対値が大きいほど、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと推定する。そして、ブレーキ用ECU51は、取得した操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1よりも小さい値に予め設定された基準操舵角Ath2以上であるか否かを判定する(ステップS14)。この基準操舵角Ath2は、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かの判断基準として設定された値である。本実施形態では、基準操舵角Ath2は、旋回方向外側への力が大きいか否かの判断基準としてだけではなく、運転手に車両を直進させる意志が有るか否かの判断基準としても用いられる。
操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2未満である場合(ステップS14:NO)、ブレーキ用ECU51は、車両に加わる旋回方向外側への力が小さく且つ運転手に車両を直進させる意志が有ると判断し、その処理を後述するステップS20に移行する。一方、操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2以上である場合(ステップS14:YES)、車両に加わる旋回方向外側への力が大きく且つ運転手に車両を直進させる意志がないと判断し、その処理を次のステップS15に移行する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、小回り制御の終了条件が成立した場合に取得されたステアリング30の操舵角Aに基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かを判定する操舵角関連情報判定手段としても機能する。
ステップS15において、ブレーキ用ECU51は、アクセル開度センサSE1からの検出信号に基づきアクセル開度(アクセル操作量)Acを取得する。このアクセル開度Acが大きいほど、車両の車体速度VSは高速度になりやすい。つまり、アクセル開度Acは、車両の車体速度に関連する車速関連情報の一例である。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、車速関連情報取得手段としても機能する。
続いて、ブレーキ用ECU51は、取得したアクセル開度Acが大きいほど、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなると推定する。そして、ブレーキ用ECU51は、アクセル開度Acが、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かの判断基準として設定された基準開度(基準操作量)Acth以上であるか否かを判定する(ステップS16)。本実施形態の基準開度Acthは、運転手がアクセルペダル20を操作しているか否か、即ちアクセルオンか否かを判断するための判断基準でもある。そして、アクセル開度Acが基準開度Acth未満である場合(ステップS16:NO)、ブレーキ用ECU51は、アクセルオンではなく且つ車両に加わる旋回方向外側への力が小さいと判断し、その処理を後述するステップS20に移行する。一方、アクセル開度Acが基準開度Acth以上である場合(ステップS16:YES)、ブレーキ用ECU51は、アクセルオンであり且つ車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと判断し、その処理を次のステップS17に移行する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、旋回時制動制御の終了条件が成立した場合に取得されたアクセル開度Acに基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かを判定する車速関連情報判定手段としても機能する。
ブレーキ用ECU51は、ステップS12で取得した車体速度VSが高速度であるほど、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなると推定する。そして、ステップS17において、ブレーキ用ECU51は、取得した車体速度VSが、車体速度が高速度であるか否かの判断基準として設定された基準車速VSth2以上であるか否かを判定する。車体速度VSが基準車速VSth2以上である場合(ステップS17:YES)、ブレーキ用ECU51は、車体速度VSが基準車速VSth2未満である場合と比較して車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと判断し、その処理を次のステップS18に移行する。一方、車体速度VSが基準車速VSth2未満である場合(ステップS17:NO)、ブレーキ用ECU51は、車体速度VSが基準車速VSth2以上である場合と比較して車両に加わる旋回方向外側への力が小さいと判断し、その処理を後述するステップS19に移行する。したがって、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、旋回時制動制御の終了条件が成立した場合に取得された車体速度VSに基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かを判定する車速関連情報判定手段としても機能する。
ステップS18において、ブレーキ用ECU51は、旋回方向内側の後輪に対する制動力の減少速度Vbを第1速度PV1に設定する。その後、ブレーキ用ECU51は、その処理を後述するステップS21に移行する。
ステップS19において、ブレーキ用ECU51は、旋回方向内側の後輪に対する制動力の減少速度Vbを第1速度PV1よりも高速度の第2速度PV2に設定する。その後、ブレーキ用ECU51は、その処理を後述するステップS21に移行する。
ステップS20において、ブレーキ用ECU51は、旋回方向内側の後輪に対する制動力の減少速度Vbを第2速度PV2よりも高速度の第3速度PV3に設定する。その後、ブレーキ用ECU51は、その処理を次のステップS21に移行する。なお、第3速度PV3は、従来の減少制御での制動力BPの減少速度又は該減少速度に近い速度である。
ステップS21において、ブレーキ用ECU51は、ステップS18〜S20の何れかのステップで設定した減少速度Vbで旋回方向内側の後輪に対する制動力が減少されるように、旋回方向内側の後輪に対応するホイールシリンダのホイールシリンダ圧を減圧させる減少制御を行う。続いて、ブレーキ用ECU51は、減少制御が終了したか否かを判定する(ステップS22)。この判定方法としては、旋回方向内側の後輪に対して制動力を付与すべく作動していた各弁(リニア電磁弁)に供給される電流値が「0(零)」になったか否かを判定する方法などが挙げられる。
そして、減少制御が未だ終了していない場合(ステップS22:NO)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。一方、減少制御が終了した場合(ステップS22:YES)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御フラグFLGをオフにセットし(ステップS23)、その後、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。
次に、小回り制御の終了条件成立後における車両の作用について、図3、図4及び図5に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、前提として、作動ボタン55はオン状態で維持されるものとする。
まず始めに、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御が行われる状況での車両の加速によって、旋回方向内側の後輪(以下、「制御対象車輪」ともいう。)に対する制動力BPの減少速度Vbが変更される場合について、図3に示すタイミングチャートを参照して説明する。
さて、図3に示すように、第1のタイミングt11では、アクセルペダル20がオンであっても、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1以上であると共に、車両の車体速度VSが車速判定値VSth1以下であるため、小回り制御の終了条件は成立しない。つまり、制御対象車輪に対する制動力BPが保持される。その後の第2のタイミングt12でステアリング30の操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1未満になると、小回り制御の終了条件が成立する。すると、減少速度Vbは、その時点の操舵角A、車体速度VS及びアクセル開度Acに基づいた値に設定される。
この場合、ステアリング30の操舵角Aの絶対値は基準操舵角Ath2以上であると共に、アクセルペダル20がオンであり、さらには車両の車体速度VSが基準車速VSth2未満であるため、車両に加わる旋回方向外側への力は中程度である。そのため、制動力BPの減少速度Vbは、第2速度PV2に設定される。すると、第2のタイミングt12以降においては、制御対象車輪に対する制動力BPは、中程度の速度で減少される。
車両に加わる旋回方向外側への力に対向する力(即ち、制御対象車輪に対する制動力BP)は、減少速度Vbが第3速度PV3に設定される場合と比較して緩やかに減少される。その結果、減少速度Vbが低速度に設定される分、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。そのため、減少制御の実行を伴う車両旋回時においては、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感が小さくなる。
そして、第3のタイミングt13で車両の車体速度VSが基準車速VSth2以上になると、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなるため、制動力BPの減少速度Vbは、第2速度PV2から第1速度PV1に変更される。すると、減少速度Vbが第2速度PV2で維持される場合と比較して、制御対象車輪に対する制動力BPがより緩やかに減少されるようになる。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなっても、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。その結果、車両の乗員は、旋回方向外側への飛び出し感を感じにくい。その後、第4のタイミングt14で対象車輪に対する制動力BPが「0(零)」になると、減少制御、即ち小回り制御が終了する。
次に、小回り制御の終了条件が成立した時点ではアクセルペダル20がオフであり、その後に減少制御が開始されてからアクセルペダル20がオンとなって車体速度VSが基準車速VSth2以上になる場合について、図4に示すタイミングチャートを参照して説明する。
さて、図4に示すように、第1のタイミングt21でステアリング30の操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1未満になると、小回り制御の終了条件が成立するため、減少制御が開始される。第1のタイミングt21では、アクセルペダル20がオフであると共に、車体速度VSが基準車速VSth2未満であり、操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2以上である。そのため、この時点では車両に加わる旋回方向外側への力が小さいと判断され、減少速度Vbは、各速度PV1,PV2,PV3のうち最も高速度である第3速度PV3に設定される。すると、制御対象車輪に対する制動力BPは、急激に減少される。
減少制御中の第2のタイミングt22で、アクセルペダル20がオンになると、車両に加わる旋回方向外側への力がこれから大きくなると判断され、減少速度Vbが変更される。この第2のタイミングt22では、車体速度VSが基準車速VSth2未満であるため、減少速度Vbは、第3速度PV3から第2速度PV2に変更される。そのため、アクセルペダル20がオンになっても減少速度Vbが第3速度PV3で維持される場合と比較して、減少速度Vbが低速度に設定される分、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。つまり、車両の乗員は、旋回方向外側への飛び出し感を感じにくい。
その後の第3のタイミングt23で車体速度VSが基準車速VSth2以上になると、車両に加わる旋回方向外側への力がさらに大きくなったと判断され、減少速度Vbは、第2速度PV2から第1速度PV1に変更される。そのため、車体速度VSが基準車速VSth2以上になっても減少速度Vbが第2速度PV2で維持される場合と比較して、制御対象車輪に対する制動力BPが緩やかに減少される分、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。つまり、車両の車体速度VSが高速度になって旋回方向外側への力が大きくなっても、車両の乗員は、旋回方向外側への飛び出し感を感じにくい。その後、第4のタイミングt24で対象車輪に対する制動力BPが「0(零)」になると、減少制御、即ち小回り制御が終了する。
次に、小回り制御の終了条件の成立前にアクセルペダル20がオンとなり、その後に減少制御が開始されてから車両の車体速度VSが基準速度VSth2以上となり、更なるその後にステアリング30の操舵角Aが基準操舵角Ath2未満になる場合について、図5に示すタイミングチャートを参照して説明する。なお、ここでは、車速判定値VSth1は、基準車速VSth2と同一値であるものとする。
さて、図5に示すように、第1のタイミングt31では、アクセルペダル20がオンになっても、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が舵角判定値Ath1以上であると共に、車両の車体速度VSが車速判定値VSth1以下である。つまり、第1のタイミングt31では、小回り制御の終了条件が成立しないため、減少制御は開始されない。その後の第2のタイミングt32では、車両の車体速度VSが車速判定値VSth1を超えるため、小回り制御の終了条件が成立し、減少制御が開始される。
第2のタイミングt32では、アクセルペダル20がオンであると共に、車体速度VSが基準車速VSth2(=VSth1)を超え、さらに、操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2以上である。その結果、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと判断されるため、減少速度Vbは、各速度PV1,PV2,PV3のうち最も低速度である第1速度PV1に設定される。すると、制御対象車輪に対する制動力BPは緩やかに減少される。このように制動力BPの減少速度Vbが低速度に設定されると、減少速度Vbが第2速度PV2や第3速度PV3に設定される場合と比較して、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。
その後の第3のタイミングt33では、運転手によるステアリング30の操舵によって、操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2未満になる。この場合、制御対象車輪に対する制動力BPは、車両を直進させようとする運転手が感じる引きずり感の原因になり得る。そのため、制御対象車輪に対する制動力BPを速やかに解消させる必要があり、減少速度Vbは第1速度PV1から第3速度PV3に変更される。すると、制御対象車輪に対する制動力BPは急激に減少される。
その結果、減少速度Vbが第1速度PV1で維持される場合と比較して早い第4のタイミングt34で、対象車輪に対する制動力BPが「0(零)」になる。すなわち、減少制御、即ち小回り制御が速やかに終了される。
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)小回り制御の終了条件が成立して減少制御を行う場合には、車両の走行状態に基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かが判定される。そして、車両に加わる旋回方向外側への力が大きい場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも減少速度Vbが低速度となるように減少制御が行われる。つまり、車両に加わる旋回方向外側への力に対向する力(即ち、制御対象車輪に対する制動力BP)は、緩やかに減少される。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かに関係なく一定値(例えば、第3速度PV3)に減少速度Vbが設定される従来の場合と比較して、減少制御の実行を伴う車両旋回時において車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(2)ステアリング30の操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2以上である場合には、操舵角Aの絶対値が基準操舵角Ath2未満である場合と比較して、車両に加わる旋回方向外側への力が大きい。そのため、本実施形態では、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が大きい場合には、操舵角Aの絶対値が小さい場合と比較して、制御対象車輪に対する制動力BPの減少速度Vbが低速度に設定される。その結果、ステアリング30の操舵角Aに応じて制御対象車輪に対する制動力BPが緩やかに減少される分、車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(3)また、本実施形態では、ステアリング30の操舵角Aだけではなく、アクセルペダル20がオンか否かによっても、減少速度Vbが変更される。具体的には、アクセルペダル20がオンである場合には、アクセルペダル20がオフである場合よりも、車両の車体速度VSが高速度になりやすい。車体速度VSが高速度になると、車体速度VSが低速度である場合よりも、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる。そのため、アクセルペダル20がオンである場合には、アクセルペダル20がオフである場合よりも、減少速度Vbが低速度に設定される。したがって、旋回方向外側への力が大きくなる可能性が高い場合には減少速度Vbを低速度に設定でき、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(4)制御対象車輪に対する制動力BPは、制御対象車輪に対応するホイールシリンダのホイールシリンダ圧に基づいた大きさとなる。ブレーキアクチュエータ43が駆動し始めてからホイールシリンダ圧が変更し始めるまでの間には、多少のタイムラグが生じる。また、運転手によるアクセルペダル20の操作によってアクセル開度Acが大きくなり始めてから車両が実際に加速し始めるまでの間にも、多少のタイムラグが生じる。そのため、車両の車体速度VSが実際に高速度になってから減少速度Vbを変更したのでは、車体速度VSが高速度になっても制動力BPの実際の減少速度が低速度になっていない可能性が生じる。この点、本実施形態では、アクセル開度Acによって、減少速度Vbが設定される。つまり、車両の車体速度VSが実際に高速度となる前に、減少速度Vbは、前もって低速度に設定される。そのため、制動力BPの実際の減少速度を、その時点の車体速度VSに近づけることができる分、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(5)本実施形態では、車両の車体速度VSによっても、減少速度Vbが変更される。具体的には、車両の車体速度VSが高速度である場合には、車体速度VSが低速度である場合よりも、車両に加わる旋回方向外側への力が大きい。そのため、車両の車体速度VSが高速度である場合には、車体速度VSが低速度である場合よりも、減少速度Vbが低速度に設定される。したがって、旋回方向外側への力が大きい場合には旋回方向外側への力が小さい場合よりも減少速度Vbを低速度に設定できる。つまり、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(6)本実施形態では、減少制御の実行中でも、ステアリング30の操舵角A、アクセルペダル20がオンであるか否か、及び車両の車体速度VSに応じて減少速度Vbが調整される。そのため、減少制御の開始後には減少速度Vbが変更できない場合と比較して、減少速度Vbを、その時点での車両の走行状態に応じた値に設定できる分、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(7)また、本実施形態では、ステアリング30の操舵角Aに基づき、運転手が車両を直進させる意志を有しているか否かが判断される。そして、運転手が車両を直進させる意志を有すると判断された場合には、アクセルペダル20のオン・オフや車体速度VSに関係なく、減少速度Vbが第3速度PV3に設定される。つまり、制御対象車輪に対する制動力BPが速やかに減少される。そのため、引きずり感を運転手に極力感じさせることなく車両を直進させることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態を図6に従って説明する。なお、第2の実施形態は、減少速度Vbの設定方法が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一又は相当する部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
本実施形態の小回り制御終了処理ルーチンについて、図6に示すフローチャートを参照して説明する。
さて、小回り制御終了処理ルーチンにおいて、ブレーキ用ECU51は、小回り制御フラグFLGがオフである場合(ステップS30:NO)、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。一方、小回り制御フラグFLGがオンである場合(ステップS30:YES)、ブレーキ用ECU51は、ステアリング30の操舵角Aを取得し(ステップS31)、車両の車体速度VSを取得する(ステップS32)。この点で、本実施形態では、ブレーキ用ECU51が、操舵角関連情報取得手段及び車速関連情報取得手段としても機能する。
そして、ブレーキ用ECU51は、第1及び第2の各条件が共に非成立である場合(ステップS33:NO)、小回り制御の終了条件が成立していないため、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。一方、第1及び第2の各条件のうち少なくとも一方が成立した場合(ステップS33:YES)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御の終了条件が成立したため、減少速度Vbを設定する(ステップS34)。本実施形態では、減少速度Vbは、マップを用いて設定される。
このマップは、ステアリング30の操舵角A及び車両の車体速度VSに基づき減少速度Vbを設定するためのマップである。例えば、ステアリング30の操舵角Aが一定である場合、減少速度Vbは、車体速度VSが高速度である場合には低速度である場合よりも小さな値に設定される。これは、車体速度VSが高速度であるほど、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと推定されるためである。また、車両の車体速度VSが一定である場合、減少速度Vbは、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が小さい場合には操舵角Aの絶対値が大きい場合よりも大きな値に設定される。これは、操舵角Aの絶対値が大きいほど、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいと推定されるためである。つまり、本実施形態のステップS34では、マップを用いて減少速度Vbを設定している。
そして、ブレーキ用ECU51は、ステップS34で設定した減少速度Vbで旋回方向内側の後輪に対する制動力が減少されるように、旋回方向内側の後輪に対応するホイールシリンダのホイールシリンダ圧を減圧させる減少制御を行う(ステップS35)。続いて、ブレーキ用ECU51は、減少制御が終了したか否かを判定する(ステップS36)。減少制御が未だ終了していない場合(ステップS36:NO)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。一方、減少制御が終了した場合(ステップS36:YES)、ブレーキ用ECU51は、小回り制御フラグFLGをオフにセットし(ステップS37)、その後、小回り制御終了処理ルーチンを一旦終了する。
以上説明したように、本実施形態では、第1の実施形態における効果(6)(7)と同等の効果に加え、以下に示す効果をさらに得ることができる。
(8)小回り制御の終了条件が成立して減少制御を行う際においては、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいほど、減少速度Vbが低速度となるように減少制御が行われる。つまり、車両に加わる旋回方向外側への力に対向する力(即ち、制御対象車輪に対する制動力BP)は、緩やかに減少される。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいか否かに関係なく一定値(例えば、第3速度PV3)に減少速度Vbが設定される従来の場合と比較して、減少制御の実行を伴う車両旋回時において車両はアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(9)本実施形態では、減少速度Vbは、ステアリング30の操舵角Aの変化に追随するように変更される。そのため、減少速度Vbを、その時点のステアリング30の操舵角Aに応じた適切な値に設定できる。その結果、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が大きいために車両に加わる旋回方向外側への力が大きい場合には、制御対象車輪に対する制動力BPが緩やかに減少される分、車両はアンダーステア傾向を示しにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
(10)本実施形態では、減少速度Vbは、車両の車体速度VSの変化に追随するように変更される。そのため、減少速度Vbを、その時点の車体速度VSに応じた適切な値に設定できる。その結果、車両の車体速度VSが高速度であるために車両に加わる旋回方向外側への力が大きい場合には、制御対象車輪に対する制動力BPが緩やかに減少される分、車両はアンダーステア傾向を示しにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、小回り制御の終了条件の成立に伴って減少制御を行う際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。
なお、各実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第2の実施形態において、減少速度Vbを、ステアリング30の操舵角A及び車両の車体速度VSを変数とする関数を用いて算出してもよい。
・第1の実施形態において、ステップS17の処理を省略してもよい。この場合においても、減少速度Vbを、車速関連情報の一例であるアクセル開度Acに応じて設定することができる。
・第1の実施形態において、基準操作量の一例である基準開度を複数(例えば、2つ)設けてもよい。そして、アクセル開度Acが第1の基準開度未満である場合には、減少速度Vbを、アクセル開度Acが第1の基準開度以上である場合よりも大きな値に設定してもよい。また、アクセル開度Acが第1の基準開度以上であって且つ第2の基準開度未満である場合には、減少速度Vbを、アクセル開度Acが第1の基準開度未満である場合よりも小さく且つアクセル開度Acが第2の基準開度以上である場合よりも大きな値に設定してもよい。このように構成しても、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。
・第1の実施形態において、ステップS16の処理を省略してもよい。この場合においても、減少速度Vbを、車速関連情報の一例である車体速度VSに応じて設定することができる。
・第1の実施形態において、基準車速を複数(例えば、2つ)設けてもよい。そして、車体速度VSが第1の基準速度未満である場合には、減少速度Vbを、車体速度VSが第1の基準速度以上である場合よりも大きな値に設定してもよい。また、車体速度VSが第1の基準速度以上であって且つ第2の基準速度未満である場合には、減少速度Vbを、車体速度VSが第1の基準速度未満である場合よりも小さく且つ車体速度VSが第2の基準速度以上である場合よりも大きな値に設定してもよい。このように構成しても、車両に加わる旋回方向外側への力が大きい場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。
・車両が坂路を走行する場合においては、降坂路を車両が走行するときのほうが登坂路を車両が走行するときよりも、車両の車体速度VSが大きな値になりやすい、即ち旋回方向外側への力が大きくなりやすい。そこで、減少速度Vbを、車両の走行する路面が降坂路である場合には登坂路である場合よりも小さな値に設定してもよい。このように構成しても、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。この場合、路面が登坂路であるか否かという情報が、車速関連情報に該当する。
また、車両の走行する路面が降坂路である場合において、路面の勾配が急勾配であるときには路面の勾配が緩勾配であるときよりも、減少速度Vbを小さな値に設定してもよい。この場合、路面の勾配が、車速関連情報に該当する。
なお、路面の勾配の取得方法としては、以下に示す2つの方法が挙げられる。第1の方法は、各車輪速度センサSE3〜SE6からの検出信号に基づいて演算された車体速度VSを時間微分した値(「車体速度微分値」ともいう。)と、加速度センサSE7からの検出信号に基づき演算された加速度(「Gセンサ値」ともいう。)との差分を求め、該差分に基づき勾配を推定する方法である。また、第2の方法は、車両に搭載される情報処理装置(例えば、ナビゲーション装置)から勾配情報を取得する方法である。
・第1の実施形態において、ステップS17では、車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度が基準車輪速度以上であるか否かを判定してもよい。この判定で用いられる車輪速度は、各車輪FR,FL,RR,RLの車輪速度の平均値であってもよいし、駆動輪である前輪FR,FLの車輪速度の平均値であってもよい。この場合、車輪速度が、車速関連情報に該当する。なお、第2の実施形態でも、車体速度VSの代わりに、車輪の車輪速度を用いて減少速度Vbを設定してもよい。
・車両の前後方向における加速度が大きい場合には、加速度が小さい場合よりも、車両の車体速度VSが大きな値になりやすい、即ち旋回方向外側への力が大きくなりやすい。そこで、減少速度Vbを、前後方向における加速度が大きな値である場合には加速度が小さな値である場合よりも小さな値に設定してもよい。このように構成しても、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。この場合、車両の前後方向における加速度が、車速関連情報に該当する。
・各実施形態において、エンジン21の図示しないクランクシャフトの回転数、即ちエンジン回転数を車速関連情報として取得し、該エンジン回転数に基づき減少速度Vbを設定してもよい。
・第1の実施形態において、ステップS16,S17の各判定処理を省略してもよい。このように構成しても、減少速度Vbは、操舵角関連情報の一例であるステアリング30の操舵角Aに基づき設定される。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。
・第1の実施形態において、基準操舵角を複数(例えば、2つ)設けてもよい。そして、ステアリング30の操舵角Aの絶対値が第1の基準操舵角以上である場合には、減少速度Vbを、操舵角Aの絶対値が第1の基準操舵角未満である場合よりも小さな値に設定してもよい。また、操舵角Aの絶対値が第1の基準操舵角未満であって且つ第2の基準操舵角以上である場合には、減少速度Vbを、操舵角Aの絶対値が第1の基準操舵角以上である場合よりも大きく且つ操舵角Aの絶対値が第2の基準操舵角未満である場合よりも小さな値に設定してもよい。このように構成しても、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。
・車両には、車両の幅方向への加速度(以下、「横G」ともいう。)を検出するためのセンサ、即ち横Gセンサを搭載するものがある。こうした車両においては、横Gセンサを用いて横Gを操舵角関連情報として取得し、該横Gに基づき減少速度Vbを設定してもよい。この場合、横Gが大きい場合には小さい場合よりも、減少速度Vbは小さな値に設定される。
・車両には、車両のヨーレートを検出するためのセンサ、即ちヨーレートセンサを搭載するものがある。こうした車両においては、ヨーレートセンサを用いてヨーレートを操舵角関連情報として取得し、該ヨーレートに基づき減少速度Vbを設定してもよい。この場合、ヨーレートが大きい場合には小さい場合よりも、減少速度Vbは小さな値に設定される。
・操舵装置の中には、操舵角センサSE2の代わりに操舵トルクを検出するためのトルクセンサを搭載したものもある。こうした車両においては、トルクセンサからの検出信号に基づき検出された操舵トルクに基づき操舵角の推定値を操舵角関連情報として演算し、操舵角の推定値に基づき減少速度Vbを設定してもよい。
・第1の実施形態において、ステップS14の判定処理を省略してもよい。このように構成しても、減少速度Vbは、車速関連情報(車体速度VS、アクセル開度Ac)に基づき設定される。そのため、車両に加わる旋回方向外側への力が大きくなる場合には、旋回方向外側への力が小さい場合よりも、減少速度Vbを低速度に設定できる。
・各実施形態において、減少制御中においては、減少速度Vbを、小回り制御の終了条件が成立した時点のステアリング30の操舵角A、アクセル開度Ac及び車体速度VSに基づいた値で保持させてもよい。この場合、減少制御の実行中では、減少速度Vbが一定速度である。
・各実施形態において、小回り制御中に作動ボタン55がオフ状態になったことを契機に減少制御が行われる場合であっても、減少速度Vbを、ステアリング30の操舵角A、アクセル開度Ac及び車体速度VSに基づいた値に設定してもよい。
・各実施形態において、小回り制御の実行時には、車両の旋回方向内側の前輪(右方向に旋回している場合には右前輪)に対して制動力を付与してもよい。
次に、上記各実施形態及び別の実施形態から把握できる技術的思想を以下に追記する。
(イ)車両の旋回時に旋回方向内側の車輪に制動力(BP)を付与させる旋回時制動制御を行い、その後に前記旋回時制動制御の終了条件が成立した場合には前記旋回方向内側の車輪に対する制動力(BP)を減少させる減少制御を行う車両の制動制御装置において、
車両の車体速度に関連する車速関連情報(VS,Ac)を取得する車速関連情報取得手段(51、S12,S15、S32)と、
前記減少制御を行うに際し、前記車速関連情報取得手段(51、S12,S15、S32)によって取得された車速関連情報(VS、Ac)に基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいほど、前記旋回方向内側の車輪に対する制動力(BP)の減少速度(Vb)を遅くする制御手段(51、S21、S35)と、を備えることを特徴とする車両の制動制御装置。
上記構成によれば、旋回時制動制御の終了条件が成立して減少制御を行う場合には、取得された車速関連情報に基づき、車両に加わる旋回方向外側への力が推定される。そして、車両に加わる旋回方向外側への力が大きいほど、旋回方向内側の車輪に対する制動力の減少速度が低速度となるように減少制御が行われる。つまり、旋回方向外側への力が大きいほど、旋回方向外側への力に対向する旋回方向内側の車輪に対する制動力が緩やかに減少される。そのため、旋回方向外側への力が大きいか否かに関係なく減少速度を一定値に設定する従来の場合と比較して、減少制御の実行を伴う車両旋回時では車両がアンダーステア傾向になりにくい、又は車両は緩やかにアンダーステア傾向になる。したがって、旋回時制動制御の終了条件の成立に伴って旋回方向内側の車輪に対する制動力を減少させる際に、車両の乗員が感じる旋回方向外側への飛び出し感を小さくすることができる。