JP2013049206A - 多機能プレコート鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】バリアコートを形成しなくても長期にわたり良好な光触媒機能、加工性、硬度等PCMとして必要とされる性能を具備し、コイルコーティングラインで製造することが可能な光触媒塗膜付PCM鋼板とその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】鋼板基材10の表面に、有機塗膜層(下塗塗膜層(プライマー)20、中塗塗膜層(着色塗膜層)30)、光触媒塗膜層40を順次形成する。光触媒塗膜塗膜層40は光触媒粒子401とバインダ成分402を含有する。バインダ成分402は、ポリエステル樹脂ディスパージョン及びフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーを含有する。光触媒粒子401は前記フッ素アイオノマーに内包させ、コイルコーティングラインにて前記有機塗膜を熱硬化反応、前記光触媒塗膜層40を熱可塑性反応で形成する。
【選択図】図1

Description

本発明は生産性、加工性、耐久性に優れる、多機能プレコート鋼板に関する。
プレコート鋼板(「プレコートメタル」、「PCM」、「塗装鋼板」等とも称する。以下、単に「PCM」と称する。)は、基材である鋼板の表面に、予めポリエステル樹脂材料等の有機塗膜層(着色塗膜層)が焼付塗装で形成される。
PCMは通常、コイルコーティングラインにおいて連続高速生産されるため、ポストコートと比較して塗料ロスが少なく、塗料回収率も高く、良好な生産性を期待できる。塗膜厚のバラツキが少なく塗膜物性が均一であり、安定的品質が確保できる。鋼板の表面には、着色塗膜層ごとエンボスや梨地等の表面加工が施される場合もある。ユーザーは購入したPCMをそのままの形態で利用できるほか、工業用用途としての利用度も高範囲にわたる。主な用途としては、屋根や金属成形板、パーティション等の外装・内装を含む各種建材、冷蔵庫や洗濯機、エアコン等の家電製品等が挙げられる。
ところで近年において、建築物外装には埃、雨筋、カビ、藻が付着・発生しにくい性能(防汚染性)及びNOxなど有機物を分解する空気浄化機能が望まれている。また、室内環境下においては、シックハウス症候群の原因であるVOC除去、抗ウイルス性、抗菌性及び防臭等が要請されている。
一般的にこれらの機能を要する内装仕上げ材、外装仕上げ材には、これらの機能を有した光触媒塗料をスプレー、刷毛、ローラーなどの塗装器具でポストコート(加工、施工後に塗装)しているが、スプレー塗装の場合、塗着率が悪く使用塗料の約半数しか付着しないためコストUPになること及び乾燥までに時間が掛かるのなど作業性とコストに問題があることから、内・外装に施工した時点で、機能が発揮されるプレコート鋼板(PCM)の開発が望まれている。
PCMに上記した多機能を付与する手段として、PCM表面への光触媒効果の付与が考えられている(特許文献1、2等)。光触媒は酸化チタンなどの金属酸化物からなり、励起状態では酸化還元反応を生じて汚染物質の有機物を分解するため、耐汚染性や抗菌性、消臭等に優れた機能を発揮する。
しかしながら光触媒により酸化還元反応が生じ、PCM表面に有機塗膜層が形成されている場合塗膜が分解されて劣化するため、耐久性の問題がある。このため、光触媒を含む塗膜に有機樹脂成分を入れることは一般に非常に困難である(特許文献1、2を参照)。
この問題に対し、例えば特許文献3に示すように、光触媒反応に対して耐久性を持つバインダとして、シリカゾルやシロキサン等の無機高分子を用いてなる光触媒塗料が開発されている。
特開2009−131987号公報 特開2009−131960号公報 特許第3930591号公報
PCMに光触媒塗料を適用する場合において、未だ以下の課題がある。
第一に、PCMには加工性が要求される。PCMには曲げ加工等の加工を行う事が多く、鋼板と一体化された塗膜にも加工性を有することが必要である。しかしながら特許文献3のように無機高分子を用いた光触媒層を形成すると、十分な加工性が得られない。このため光触媒層に曲げ加工の応力が及んだり、運搬時に外部と擦れると、光触媒層が容易に剥離や損傷を生じる恐れがある。これは特に、過酷な曲げ加工を伴う建材にPCMを適用する場合において考慮すべき課題である。
第二に、バリアコートの課題である。特許文献1、2に記載されるように、一般に光触媒塗膜を形成する場合には、光触媒が下地を劣化させる、いわゆる裏反応を生じる可能性があるため、バリアコートの形成が不可欠である。バリアコートの塗装に伴い塗装工程が煩雑になり、歩留まりが低下するほか、生産コストも上昇を来たす。
第三に、コイルコーティングライン塗装適性の課題である。無機高分子を用いた塗料は不揮発分が少なく粘度が非常に低い。このため連続生産における塗料の塗布量の管理が難しく、厳格な塗布量の制御を必要とし、コイルコーティングラインでの連続生産を行うのは難しい。また、無機高分子は最終硬化するまでに長時間を有するため、塗膜品質が安定せず、製品完成後の品質管理や即出荷時の出荷検査に不利である。
本発明は上記した各課題に鑑みてなされたものであって、バリアコートを形成しなくても長期にわたり良好な光触媒機能を発揮し、コイルコーティングラインで製造することが可能な多機能PCMとその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明は、鋼板と、前記鋼板表面に形成された有機塗膜層と、前記有機塗膜層表面に形成された光触媒塗膜層とを有し、前記光触媒塗膜層は、光触媒成分とバインダ成分を含んでなり、前記バインダ成分は、ポリエステル樹脂ディスパージョン及びフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーを含有し、前記光触媒成分は前記フッ素アイオノマーに内包されており、前記有機塗膜層及び前記光触媒塗膜層が、ともに熱可塑性を利用して形成される光触媒塗膜付PCM鋼板とした。
本願発明者らがPCMに適した光触媒塗料について鋭意検討した結果、バインダ成分として、フッ化度40%以上のフッ素アイオノマー、及びポリエステル樹脂ディスパージョンを用いれば、優れた光触媒機能の発揮とともに、良好な加工性、並びに耐久性を持つ光触媒塗膜付PCMが得られることを見出した。本発明はこれの知見に基づくものである。
すなわち本発明の光触媒塗膜付PCMでは、フッ素アイオノマーの効果により、使用時に光触媒塗膜(層)の表面に雨滴等の水が付着すると、当該層の表面全体に薄い平坦な水膜が形成される。光触媒層の表面に付着していた汚染物質はこの水膜により浮き上がり、水と共に除去される。また、光触媒塗膜層が太陽等により光照射されると、光触媒が励起して光触媒反応を生じ、汚染物質が分解除去される。また、可視光応答型光触媒を使用した場合、室内において、蛍光灯の光源の下、光触媒反応により、抗菌性及びウィルス不活性化の機能を有する。
一方、光触媒層はバインダ成分にポリエステル樹脂を含んでおり、高度な加工性を呈する。このため、曲げプレス加工等の強い応力が及んでも、鋼板の変形に追従して光触媒塗膜層も柔軟に伸縮・変形し、容易に剥離や損傷を生じることがない。従って、従来と同様、PCMの加工性や色相・形状の制約を受けることがない。
また、本発明の有機塗膜層は熱硬化反応、光触媒層は熱可塑性によって形成できるため、焼き付け塗装が可能であるほか、有機材料で構成されているため、無機材料に比べて塗料粘度調整も容易である。
よって、本発明は高速生産性に優れ、焼付塗装工程を経るコイルコーティングライン等に適用可能である。さらにバインダ成分に添加するポリエステル樹脂ディスパージョンは、フッ素アイオノマーとの相溶性が良好であり、光触媒塗膜層において良好な塗膜を構成することが可能である。
また、本発明ではC−C結合に比べて化学安定性に優れるC−F結合を豊富に有する、40%以上のフッ化度を持つフッ素アイオノマーを所定の添加量にてバインダ成分に利用し、当該フッ素アイオノマーで光触媒を内包させている。これにより光触媒反応を生じても光触媒塗膜層が容易に自己分解しないほか、光触媒が下地に直接触れるのがフッ素アイオノマーにより防止されるため、バリアコートを用いる必要がない。これにより光触媒塗膜層を長期にわたり維持でき、美観に優れるPCMを低コストで効率よく実現できる。
本発明の光触媒塗膜付PCMの構成と効果を示す、模式的な断面図である。 本発明のPCM(曲げ加工済PCM)の構成を示す図である。 PCM鋼板の製造工程を説明するためのフロー図である。 PCM鋼板の製造工程を説明するためのフロー図である。 フルリバース塗装装置の構成を示す模式図である。 PCM鋼板の実施例及び比較例の暴露試験後の様子を示す写真である。
<発明の各態様>
本発明の一態様は、鋼板と、前記鋼板表面に形成された有機層と、前記有機層表面に形成された光触媒層とを有し、前記光触媒層は、光触媒成分とバインダ成分を含んでなり、前記バインダ成分は、ポリエステル樹脂ディスパージョン及びフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーを含有し、前記光触媒成分は前記フッ素アイオノマーに内包されており、前記光触媒層が、熱可塑性で形成されている光触媒塗膜付PCM鋼板とする。
ここで本発明の別の態様として、前記バインダ成分は、樹脂不揮発成分換算において、前記ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素アイオノマーとの重量比率が20:80〜70:30の範囲であり、且つ、前記フッ素アイオノマーと前記光触媒との重量比率が30:70〜60:40の範囲である構成とすることもできる。
また本発明の別の態様として、前記フッ素アイオノマーは、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にスルホン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にカルボン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にアミノ基を有するグラフト重合体、末端にリン酸エステルを有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にスルホン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にカルボン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にアミノ酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、パーフルオロアルキルエチレン付加物の中から選択される、1種または2種以上の混合物とすることもできる。
また、本発明の別の態様として、前記ポリエステル樹脂ディスパージョンは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの中から選んだ1種または2種以上の混合物とすることもできる。
また、本発明の別の態様として、前記光触媒層の膜厚を0.5μm以上5μm以下とすることもできる。
次に本発明の一態様である光触媒塗膜付PCM鋼板の製造方法は、鋼板の表面に有機塗料を塗布する第一塗布工程と、前記塗布した有機塗料を焼付して有機層を形成する第一焼付工程と、前記有機層の上に、光触媒塗料を塗布する第二塗布工程と、前記塗布した光触媒塗料を焼付して光触媒層を形成する第二焼付工程と、を順次経るものとし、前記第二塗布工程では、前記有機塗料として、ポリエステル樹脂ディスパージョンとフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーをバインダ成分として含有する塗料を用いるものとする。
ここで本発明の別の態様として、前記第二塗布工程及び前記第二焼付工程では、光触媒を前記フッ素アイオノマーで内包することもできる。
また本発明の別の態様として、前記光触媒塗布工程では、前記光触媒層中の樹脂不揮発成分換算として、前記ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素アイオノマーとの重量比率が20:80〜70:30の範囲であり、且つ、前記フッ素アイオノマーと前記光触媒との重量比率が30:70〜60:40の範囲となるように調整された前記バインダ成分を用いることもできる。
また、本発明の別の態様として、前記フッ素アイオノマーは、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にスルホン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にカルボン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にアミノ基を有するグラフト重合体、末端にリン酸エステルを有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にスルホン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にカルボン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にアミノ酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、パーフルオロアルキルエチレン付加物の中から選択される、1種または2種以上の混合物とすることもできる。
以下に、本発明の各実施の形態を説明するが、当然ながら本発明はこれらの形式に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
<実施の形態1>
[光触媒塗膜付PCM鋼板の構成]
図1(a)は本発明の実施の形態1に係る、光触媒塗膜付PCM鋼板1(以下、「PCM1」と称する。)の構成を示す、模式断面図である。
PCM1は、鋼板10の片面に対し、下塗層20、中塗層30、光触媒層(光触媒塗膜)40を順次形成してなる。
鋼板10は厚みが1mm以下(例えば0.27mm)の鋼板であり、PCM1の主たる構成要素である。好適な素材として、亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板を例示できる。この場合、市販品としては、亜鉛−55%アルミニウム合金めっき鋼板である、「ガルバリウム鋼板」を利用できる。その他の好ましい例として、アルミニウムめっき鋼板、亜鉛めっき鋼板、ステンレス、アルミ合金等のいずれかを挙げることができる。鋼板10の素材はこれらに限定されない。また、異種金属の積層板として鋼板10を構成することもできる。
なお、本発明で言及する「鋼板」とは、各種金属材料及び合金材料を含む、広く金属板一般を指すものとする。
下塗り塗膜層20及び中塗り塗膜層30は、ともに有機塗料を焼付塗装してなる有機塗膜層である。
下塗塗膜層20は、着色塗膜層の一層目に相当し、熱硬化性樹脂を主成分とする厚み数μm程度(例えば約2μm)のプライマー層である。主にPCM1における中塗塗膜層30の塗膜耐久性を向上させる目的で設けられる。また、中塗塗膜層30の発色性確保や、防錆機能、或いは遮熱機能を付与する目的で設けられる場合もある。この場合、熱硬化性樹脂に発色剤や防錆材等の機能付与剤を添加する。また、消泡剤、レベリング材、顔料等を添加できる。
熱硬化性樹脂には公知材料を利用でき、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、及びこれらを含む樹脂等を例示できる。また、硬化剤も公知材料を利用でき、アミノ系材料、ポリイソシアネート系材料を例示できる。
中塗塗膜層30はPCM1の主たる着色塗膜層であり、所定の顔料成分と、前記下塗り塗膜層20と良好に密着する樹脂材料を含んでなる。中塗塗膜層30の厚みは、十分な発色が得られ、且つ、加工時に剥離等を生じない範囲で調節する。具体的には一例として数μm〜数十μmに設定できる。成分としてはその他、光沢調整剤、艶消し剤、消泡剤等を含むこともできる。
この中塗塗膜層30の樹脂についても公知の原料を利用できる。例えば着色性、耐久性の向上を期待できる樹脂として、ポリエステル系樹脂、フッ素系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等を利用できる。これらの樹脂を選ぶ目安として、鋼板に対して連続的に塗布し、焼き付け塗装する、いわゆるコイルコーティングラインへ良好に適用できるものを選ぶ。ここで、ポリエステル系樹脂はPCM塗料としては、一般的かつ公知に使用されており、これらの要求を良好に満足するため特に望ましい。
光触媒塗膜層40は、PCM1の主たる特徴部分であって、光触媒粒子401とバインダ成分402を含み、膜厚が0.5μm以上5μm以下の塗膜である。前記バインダ成分402は、本発明の特徴として、ポリエステル樹脂ディスパージョン及びフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーを含有して構成される。これにより光触媒塗膜層40は熱可塑性の塗膜として成膜されている。
前記バインダ成分402においては、樹脂不揮発成分換算において、前記ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素アイオノマーとの重量比率が20:80〜70:30の範囲であり、且つ、前記フッ素アイオノマーと前記光触媒(光触媒粒子401)との重量比率が30:70〜60:40の範囲となるように設定されている。
フッ素アイオノマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の側鎖にスルホン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にカルボン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にアミノ基を有するグラフト重合体、末端にリン酸エステルを有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にスルホン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にカルボン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にアミノ酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、パーフルオロアルキルエチレン付加物の中から選択される、1種または2種以上の混合物を挙げることができる。
光触媒反応は根源的には水の分解反応であるため、反応種である水が光触媒粒子401近傍に集中し易いように、光触媒塗膜層40ではこのようなフッ素アイオノマーをバインダ成分402に用いている。
なお、フッ素アイオノマーが上記重量比率で含まれていれば、その他のフッ素樹脂、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体の内の1種乃至2種以上の混合物が光触媒塗膜層40中に含まれていても良い。
本発明で利用可能なフッ素樹脂は多岐にわたるが、本願発明者らが厳密に検討した結果、上記重量比率に基づいて光触媒塗膜層40中に所定のフッ素樹脂を適量添加することで、光触媒反応に対して十分な耐久性を発揮するだけでなく、光触媒機能を維持しつつ、バインダ成分402として共存するポリエステル樹脂ディスパージョンや、中塗塗膜層40の劣化を効果的に抑制することが可能となっている。
フッ素樹脂は豊富なC−F結合を有しており、化学的に安定である。具体的には、C−F結合の結合エネルギーは、C−H結合(415kJ/mol)やC−C結合(347kJ/mol)のいずれの結合エネルギーに対しても十分大きい(約500kJ/mol)。従って、フッ素樹脂を用いることで化学的に安定性の高い分子鎖を形成できる。この化学安定性により、本発明では長期にわたり、光触媒粒子401による分解反応を受けずに安定に光触媒塗膜層40を保持できる。また、フッ素樹脂は優れた耐薬品性、耐候性をも示し、電気化学反応に対しても高度に安定である。これに加え、低表面張力、低摩擦係数という性質をも示すが、これはF原子が小さな原子半径と低い分極性を持つことから、分子間凝集力が低く、優れた柔軟性を有するためと考えられる(プラスチック・機能性高分子材料事典:産業調査会事典出版センター発行(2004年)の306頁参照)。
ポリエステル樹脂ディスパージョンは、高度な加工性を付与するために用いられ、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)の中から選んだ1種または2種以上の混合物等を例示できる。ポリエステル樹脂ディスパージョンの化学構造としては直鎖、分岐、環状のいずれでもよい。
ここでバインダ成分402の前記フッ素アイオノマーは、スルホン酸基やカルボン酸基において親水性を呈する一方、それ以外の部位において疎水性を呈する両極性樹脂である。このため、前記親水性フッ素樹脂とともに配合する樹脂成分には、親水性フッ素樹脂との相溶性が求められる。この点を本願発明者らが鋭意検討した結果、ポリエステル樹脂ディスパージョンであればフッ素アイオノマーに対して良好な相溶性を発揮し、当該ポリエステル樹脂ディスパージョンを所定量用いれば、良好なバインダ成分を構成できることを見出した。これにより、光触媒塗料を構成でき、塗膜形成後において優れた光触媒塗膜層40を実現している。
次に、光触媒粒子401の種類は特に限定されない。例えばTiO、ZnO、WO、SnO、SrTiO、Bi、Feから選択される1種または2種以上の金属酸化物を挙げることができる。このうち、酸化チタン(TiO)は光触媒機能が安定であり、容易に入手可能で市販品も多いため好適である。光触媒塗膜層40に添加する際の光触媒の形態は限定されないが、粒径が揃った光触媒粒子401を用いると、光触媒塗膜層40全体で均一な光触媒機能を期待できる。具体的には、平均粒径が約7nmの一次粒子が、平均粒径200〜300nm程度に凝集してなる二次及び三次粒子として、光触媒粒子401を光触媒塗膜層40中に分散させるようにするとよい。なお、光触媒塗膜層40への光触媒粒子401の添加量は、発揮させたい光触媒効果等に合わせて適宜調整可能であるが、例えば光触媒塗膜層40において10wt%〜50wt%の割合で添加することができる。
ここで光触媒塗膜層40の特徴として、光触媒粒子401は、バインダ成分402におけるフッ素アイオノマーに内包されている。これは前記した水を反応種とする光触媒反応を起こしやすくするとともに、フッ素アイオノマーの強固なC−F結合を利用して、前記光触媒反応により不要な自己分解反応を適切に防止するためである。
なお、このような光触媒効果を良好に得るためには、PCM1において、光触媒塗膜層40を最上層として設けることが好適である。
なお、特に図示しないが、PCM1の裏面には下塗り層20、中塗り層30の各塗料の少なくともいずれかを用い、サービス塗膜を形成してもよい。
(PCM1の効果について)
以上構成を持つPCM1では、使用時に光触媒塗膜層40の表面に水が付着すると、フッ素アイオノマーの効果により光触媒塗膜層40の表面全体に平坦な水膜が形成される。この時の様子を、図1(b)に示す。当図は、図1(a)の光触媒塗膜層40表面付近における領域Aの拡大断面図である。
このような状態で光触媒塗膜層40に親油性の汚染物質が付着する。ここで図1(b)のように、光触媒塗膜層40の表面に水分が付着すると、フッ素アイオノマーの効果により、速やかに水膜が形成される。これにより汚染物質は水膜に浮き上がり、水と共に流れて除かれる。これと同様の原理で、汚染物質が付着した後に光触媒塗膜層40の表面に雨水滴が付着すれば、水膜が形成されて汚染物質を除去することができる。
一方、光触媒塗膜層40中に分散配置された光触媒粒子401は、外部からの光照射により励起される。この励起により、大気に近接する光触媒塗膜層40の表面付近では、大気中の酸素が光触媒からエネルギーを受けて活性酸素に変化する。活性酸素は、光触媒塗膜層40の表面またはその近傍において、親油性の汚染物質を分解し、付着力を弱め、容易に除去されるように作用する。これにより、雨等が光触媒塗膜層40に当たっても、汚染物質は容易に洗い流される。
また、光触媒塗膜層40はバインダ成分402にポリエステル樹脂ディスパージョンを含んでいるため、高度な加工性を呈する。これにより、PCM1を曲げ及びプレス加工等で変形させる場合でも、鋼板10の変形に追従して光触媒塗膜層40も柔軟に曲がり、容易に割れや剥がれを生じることがない。このような追従性・加工性は特許文献1、2のような無機材料のみを用いてなる光触媒塗膜層には見られない優位性であり、PCM1の加工性や外観の制約をほとんど受けることなく、優れた生産性を発揮できる。
なお特許文献1、2では、光触媒反応により光触媒塗膜に有機バインダ成分を添加できない旨が記載されているが、本発明はきわめて化学的安定性に優れる40%以上のフッ化度を持つフッ素アイオノマーをバインダ成分402に利用している。これにより、激烈な光触媒反応にも耐えうる光触媒塗膜層40を実現したものであり、この点において従来技術よりも画期的な優位性を有している。
さらに光触媒層40には、前記フッ素アイオノマーの存在により摩擦係数が非常に小さく、良好な耐摩耗性が付与されており、外部接触時の表面摩擦を極めて小さく抑制できる。その結果、多少の外部接触があっても光触媒塗膜層40の割れや剥がれを回避でき、長期にわたる光触媒機能を期待できる。これはPCM1を家電製品の外板等に利用する場合に特に有効である。
以下、本発明のその他の実施の形態について、実施の形態1との差異を中心に説明する。
<実施の形態2>
図1(c)は実施の形態2に係る、PCM1Aの構成を示す模式的な断面図である。
PCM1Aでは、鋼板10Aを鋼板本体11及び化成処理層12の積層体で構成している。着色層20、30、光触媒塗膜層40は、化成処理層12の表面上に同順に形成される。
化成処理層12は、ここでは鋼板本体11の表面をクロメート処理して形成された被膜であり、クロム微粒子が有機バインダで分散されてなる。当該化成処理層12は鋼板10Aに防錆効果を付与し、下塗塗膜層20の密着性向上を目的として形成している。前記有機バインダは、下塗塗膜層20の焼き付け塗装時の高温に耐えられる耐熱性を有する材料、例えばエポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂等を用いる。
このような構成を持つPCM1Aにおいても、実施の形態1のPCM1とほぼ同様の諸効果を期待できる。
なお、クロメート処理の代わりにクロムを含有しない防錆剤(クロメートフリー系防錆剤)を用いて被膜形成することもできる。例えばモリブデン酸化合物、バナジン酸化物等を利用できる。
なお、化成処理層12はクロメート処理で形成された被膜に限定されない。例えば、リン酸亜鉛処理、粗面処理等、公知の各種表面処理で形成された被膜であっても良い。
<実施の形態3>
次に示す図1(d)は実施の形態3に係る、PCM1Bの構成に係る模式的な断面図である。
PCM1BはPCM1を基本構造とし、下塗塗膜層20を省略した構成である。基材10に対して中塗塗膜層30が直接良好に塗膜形成できる場合等には、このような構成としてもよい。PCM1Bにおいても、PCM1とほぼ同様の効果を期待することができる。
<実施の形態4>
次に示す図2(a)は、実施の形態4に係る、加工済PCM1Cの外観図である。図2(b)は、PCM1Cの加工部(プレス部)を厚み方向から見た部分拡大図である。
PCM1Cは、PCM1を基本構造とし、複数個所において厚み(Z)方向に凹凸処理を行い、ストライプ状の加工部(プレス部)50を有する波型鋼板としたものである。この凹凸加工を行うため、光触媒塗膜層40の表面から厚み方向に所定の金型でプレス加工を施しているが、前述のように光触媒塗膜層40がポリエステル樹脂ディスパージョンを含んで構成されているため、前記凹凸処理においても何ら損傷することなく柔軟に変形し、良好な密着状態を保っている。これにより、加工後も光触媒塗膜層40の割れや剥がれの恐れがなく安定した形態を保ち、長期にわたり光触媒機能の発揮を期待できる。
なお、加工部50は角型断面形状としているが、当然ながらこれ以外の形状でもよく、例えば丸波型、リブ波型としてもよい。
<光触媒塗膜付PCMの製造方法>
図3は、本発明の光触媒塗膜付PCMの製造方法の流れを示すフロー図である。ここでは実施の形態1のPCM1の製造方法を例示するが、基本的にその他の実施の形態のPCMの製造方法とも共通する。
当図に示す例では、鋼板の表面を前処理する前処理工程(S1)、オプションとして鋼板表面に化成処理層を形成する後処理工程(S2)、中塗塗膜層形成のためのプライマー層である下塗塗膜層形成工程(S3)を順次経る。
その後、中塗塗膜層を形成し(S4)、その表面に光触媒塗膜層を形成する(S5)。ここで本発明の特徴として、中塗塗膜層の上に直接光触媒塗膜層を形成でき、従来のようにバリアコートを形成する工程は不要である。その後、出荷前に各工程を経る(S6)。
ここでS1〜S5の工程は、例えばコイルコーティングラインにおいて連続的に実施できる。コイルコーティングラインでは、下塗塗膜層、中塗塗膜層、光触媒塗膜層をそれぞれ形成する場合、3コート3ベーク方式を採用する。下塗塗膜層が不要の場合は、2コート2ベーク方式を実施することもできる。
以下、各工程を順に説明する。
前処理工程及び後処理工程について、図4のフロー図を用いて説明する。
(前処理工程S1)
まず、鋼板の表面に付着している埃、汚れ、油分等を除去する(脱脂(アルカリ脱脂)工程S11)。
次に、脱脂液の付着した鋼板を水で洗浄する(水洗工程S12)。この後、鋼板の表面を酸処理して粗面化し、塗料との密着性を向上させる(表面処理S13)。次に鋼板を温め、後処理をし易い状態にする(湯洗処理S14)。以上で前処理工程を終了する。
(後処理工程S2)
表面処理S13、湯洗処理S14を経る代わりに、S12を実施後、鋼板の表面に防錆処理や塗料との密着性向上を図るための処理を行い、化成処理層を形成することもできる。一例として塗布型クロメート処理S15を実施し、塗膜に乾燥処理S16を実施し、冷却処理(空冷/ミスト噴霧)S17を経ることで、化成処理層を形成する。
S14またはS17の処理を終了したら、図3に戻り、下塗層形成工程S3に移行する。
(下塗塗膜層形成工程S3)
まず、下塗塗料を調整する。粘度をフォードカップNo.4で、70〜120秒に調整する。
続いて表面塗膜の一層目として、下塗塗料を塗装する。組その後、塗膜を焼き付け乾燥させる。乾燥後はエアー及びミスト噴霧により冷却処理する。これにより下塗塗膜層を形成する。
(中塗塗膜層形成工程S4)
中塗塗料を調整する。粘度をフォードカップN0.4で、70〜120秒に調整する。表面塗膜の二層目として、中塗塗料を塗装する。その後、塗膜を焼き付け乾燥させる。乾燥後はエアー及びミスト噴霧により冷却処理する。これにより中塗塗膜層を形成する。
(光触媒塗膜層形成工程S5)
光触媒、バインダ成分(フッ素アイオノマー及びポリエステル樹脂ディスパージョン)、溶媒を用いて光触媒塗料を調整する。ここで本発明では、樹脂不揮発成分換算において、ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素アイオノマーとの重量比率を20:80〜70:30の範囲とする。また前記フッ素アイオノマーと前記光触媒との重量比率を30:70〜60:40の範囲とする。
光触媒としては、平均粒径(1.0μm以下)に分散したTiO粒子を最終塗膜換算で10wt%程度になるように添加する。また溶媒の量の調整により、塗料粘度を20〜50mPa・s程度に調整する。
ここで、TiO粒子を親水性フッ素樹脂に内包させるため、予めTiO粒子とフッ素アイオノマーを混合しておくとよい。
光触媒塗料を中塗り層の表面に所定の方法で塗布し、続いてこれを焼き付ける。焼き付け条件は適宜調整が可能であるが、例えば乾燥炉雰囲気中において、140℃以上300℃以下の温度範囲で焼付時間30〜90秒、好ましくは30秒程度の焼付時間とすることができる。この設定条件とすることで、コイルコーティングラインの乾燥炉にて十分な焼き付けが可能となる。
以下、表1に市販製品の鋼板材料を用いた場合のコイルコーティングラインにおける操業条件を例示する。表中、「種類」は(塗料名)、「トップオーブン」は(中塗乾燥炉)、プライムオーブンは(下塗乾燥炉)、「PMT」は(最高到達板表面温度)を示す。また「No.2」、「No.3」、「No.4」はそれぞれ(乾燥炉中の雰囲気温度)を示す。

(各塗料の塗装方法について)
本発明における下塗塗料、中塗塗料、光触媒塗料の塗装方法に関しては、コイルコーティングラインの場合、基本的には塗装ロール(アプリケーターロール)、鉄ロール(ピックアップロール)、ミータリングロール(塗布量制御を測るドクターロール)等を用いた、公知のロール塗装法を採用できる。
この場合、各ロールの回転方向には特に限定されず、フルリバース塗装、リバース塗装(ピックアップフィード及びトップフィードのいずれも可能)、ナチュラル塗装、のいずれの方法であってもよい。
このうち、フルリバース塗装は、塗装方向性(ロール目)が無くなり塗装面が平滑に仕上り、厚膜形成に適している。ここで図4は、フルリバース塗装装置FRの構成を模式的に示す図である。図中、Dbはドクターブレード、Meはミータリングロール、Piはピックアップロール、APはアプリケーターロール、Cvは搬送ロール、矢印は各ロールの回転方向、Bは塗料トレイをそれぞれ示す。当図ではコイルコーティングラインを想定し、塗装対象として帯状鋼板を図示しているが、搬送ベルトを用いて切り出した鋼板を連続的に搬送することも可能である。
このような構成のフルリバース塗装装置FRでは、予め塗料トレイB中に塗料を入れておき、鋼板を搬送ロールCvとアプリケーターロールAPの間に挿通させる。塗料トレイB中の塗料はピックアップローラPiにより掬い上げられ、ミータリングローラーMe及びドクターブレードDbにより量を調節された後、アプリケーターロールAPの表面に載せられる。そして当該アプリケーターロールAPの回転により、適量の塗料が鋼板の片面に連続的に塗布されることとなる。
フルリバース塗装は、塗装面を比較的平滑に仕上げることができる。ナチュラル塗装は塗装の方向性は残るものの、薄膜形成、プライマー、サービスコート(裏面塗装)等の塗装に適している。
なお、コイルコーティングライン以外でPCMを製造する場合、例えば切断した鋼板を用いてPCMを製造する場合等には、下塗塗料、中塗塗料、光触媒塗料の塗装方法をロール塗装法に限定しない。例えばスプレー塗装、粉体塗装、電着塗装、カーテンコート等、いずれの塗装法も採用できる。
以上でPCM1が完成する。
(外観検査・梱包・出荷検査S6)
完成したPCM1を必要に合わせて所定サイズに切断する。製品の塗膜面の品質確認を行い、梱包紙で包む。出荷検査として、顧客要求の諸性能と所定の品質をクリアできているかを確認する。
<性能評価試験>
以下の表2に示す各サンプル光触媒塗料(内装用)、光触媒塗料(外装用)、現行品を作製した。表中、光触媒塗料(内装用)は(可視光応答型光触媒)、光触媒塗料(外装用)は(紫外光応答型光触媒)の成分からなる。

上記作製した各サンプル光触媒塗料(内装用)、光触媒塗料(外装用)、現行品について、表3に示す各実験を実施した。

表3に示すように、いずれのサンプル光触媒塗料(内装用)、光触媒塗料(外装用)も、光触媒層を形成していない現行品とほぼ同様の耐久性を有し、安定した塗膜を構成していることが分かった。
鉛筆硬度試験、コインスクラッチ試験、デュポン衝撃試験、折曲げ試験、溶剤耐性、碁盤目エリクセン試験については、いずれのサンプルの光触媒塗料(内装用)、光触媒塗料(外装用)も、現行品と同レベルの評価となった。このように上記試験の範囲では、いずれのサンプルも塗膜に引っかき傷や割れ、剥れがほとんど生じないことが分かった。
なお表3には表示しないが、サンプル光触媒塗料(内装用)、光触媒塗料(外装用)と現行品について塩水噴霧試験、複合サイクル試験、SUV試験を実施したところ、これらの各実験結果もサンプル光触媒塗料(内装用)、光触媒(外装用)は現行品と同レベルの評価となった。
次に、本発明の光触媒塗膜層を形成したPCMと、比較例のPCM(光触媒塗膜層なしの現行品)を屋外(東邦シートフレーム株式会社八千代工場 本事務所東側の壁面に約189日間暴露した(平成22年7月15日〜平成23年1月20日)。その後の各鋼板の様子を図6に示す。
当図6(b)に示すように、試験後の比較例では汚染物質を含む雨筋が確認できる。これに対し、図6(a)に示すように、試験後の実施例では雨筋は確認されず、清浄な表面を保っている。また、光触媒塗膜層の表面に亀裂や損傷も存在していない。この結果から、実施例では長期の屋外使用にも関わらず、良好な光触媒機能が安定して発揮されていることが分かる。
以上の各試験結果より、本発明の優位性が確認された。
<その他の事項>
上記実施の形態では、着色塗膜層を有機塗膜層として形成したが、加工性がそれほど問題にならない場合等には、無機塗膜層、または有機塗膜層と無機塗膜層の積層、あるいは有機成分と無機成分の両方を含む層として、着色塗膜層を形成してもよい。
また、光触媒塗膜層40のバインダ成分402はフッ素アイオノマーやポリエステル樹脂ディスパージョン等の有機材料を利用したが、PCMの加工性がそれほど問題にならない場合には、無機材料をバインダ成分402に用いても良い。
光触媒塗料には、さらに別途、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸系、ベンゾフェノン系等の有機紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系等の光安定化剤から選択される化合物を添加してもよい。これにより、光触媒塗膜層40に紫外線防止機能が付与される。但し、添加物質や添加量によっては、光触媒層40の透明性が低下する場合があるので留意する。
下塗塗膜層及び中塗塗膜層の少なくとも一方には、公知の骨材を添加し、表面粗度を向上させてアンカー効果を発揮させ、上方に設ける層との密着性を向上させてもよい。その他、各層には公知の各種機能性添加剤(紫外線吸収剤、防錆剤等)を添加してもよい。
本発明の光触媒塗膜付PCMは、たとえばサイディング、住宅用ドア、パーティション、ロッカー等の建築材料や配電盤、スチール机、ベンチの他、クーラー、冷蔵庫等の電化製品の外装材などに利用でき、その産業上の利用可能性は極めて幅広いと言える。
1、1A、1B、1C 光触媒塗膜付PCM
10、10A 鋼板
11 鋼板本体
12 化成処理層
20 着色塗膜層(下塗塗膜層)
30 着色塗膜層(中塗塗膜層)
40 光触媒塗膜層
50 加工部(プレス部)
401 光触媒粒子
402 バインダ成分

Claims (7)

  1. 鋼板と、前記鋼板表面に形成された有機塗膜層と、前記有機塗膜層表面に形成された光触媒塗膜層とを有し、
    前記光触媒塗膜層は、光触媒成分とバインダ成分を含んでなり、
    前記バインダ成分は、ポリエステル樹脂及びフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーを含有し、前記光触媒成分は前記フッ素アイオノマーに内包されており、
    前記光触媒塗膜層が、熱可塑性により形成されている
    ことを特徴とする、光触媒塗膜付PCM鋼板。
  2. 前記バインダ成分は、樹脂不揮発成分換算において、
    前記ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素とのアイオノマー重量比率が20:80〜70:30の範囲であり、且つ、
    前記フッ素アイオノマーと前記光触媒との重量比率が30:70〜60:40の範囲である
    ことを特徴とする、請求項1に記載の光触媒塗膜付PCM鋼板。
  3. 前記フッ素アイオノマーは、
    ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にスルホン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にカルボン酸を有するグラフト重合体、ポリテトラフルオロエチレンの側鎖にアミノ基を有するグラフト重合体、末端にリン酸エステルを有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にスルホン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にカルボン酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、末端にアミノ酸基を有するパーフルオロアルキルオリゴマー、パーフルオロアルキルエチレン付加物の中から選択される、1種または2種以上の混合物である
    ことを特徴とする、請求項1または2に記載の光触媒塗膜付PCM鋼板。
  4. 前記ポリエステル樹脂ディスパージョンは、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートの中から選んだ1種または2種以上の混合物である
    ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光触媒塗膜付PCM鋼板。
  5. 前記光触媒層の膜厚が、0.5μm以上5μm以下である
    ことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の光触媒塗膜付PCM鋼板。
  6. 鋼板の表面に有機塗料を塗布する第一塗装工程と、
    前記塗布した有機塗料を焼付して有機層を形成する第一焼付工程と、
    前記有機層の上に、光触媒塗料を塗布する第二塗装工程と、
    前記塗布した光触媒塗料を焼付して光触媒層を形成する第二焼付工程と、
    を順次経るものとし、
    前記第二塗装工程では、前記有機塗料として、ポリエステル樹脂ディスパージョンとフッ化度40%以上のフッ素アイオノマーをバインダ成分として含有する塗料を用いる
    ことを特徴とする、光触媒塗膜付PCM鋼板の製造方法。
  7. 前記光触媒塗装工程では、前記光触媒塗膜層中の樹脂不揮発成分換算として、前記ポリエステル樹脂ディスパージョンと前記フッ素アイオノマーとの重量比率が20:80〜70:30の範囲であり、且つ、前記フッ素アイオノマーと前記光触媒との重量比率が30:70〜60:40の範囲となるように調整された前記バインダ成分を用いる
    ことを特徴とする、請求項6に記載の光触媒塗膜付PCM鋼板の製造方法。
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