以下、本発明の好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、図1を参照して、防振ユニット1の概略構成について説明する。図1は、本発明の第1実施の形態における防振ユニット1の斜視図である。
図1に示すように、防振ユニット1は、エンジンやモータなどの振動源と車体との間に介設される装置であり、防振装置100と、ストッパ部材200と、ブラケット300とを備える。防振装置100は、振動源側に取り付けられる内筒部材110と、車体側に取り付けられる外筒部材120と、それら内筒部材110と外筒部材120との間を連結すると共にゴム状弾性材から構成される防振基体130とを備える。
ブラケット300は、防振基体100の外筒部材120が内嵌圧入される筒状の圧入基体301と、その圧入基体301の外周面に溶接固定されると共に車体側に締結固定される一対の脚部材302とを備える。なお、圧入基体301の外周面には、脚部材302と反対側となる位置にウェイトとして機能するウェイト部材303が溶接固定される。図2以降においては、ウェイト部材303の図示を省略する。
ストッパ部材200は、内筒部材110に締結固定された振動源側の部材(相手部材)が外筒部材120及び圧入基体301の軸方向端面に直接当接して、異音が発生することを防止するための部材であり、一対のストッパ部材200が内筒部材110の軸方向両端にそれぞれ装着される。
次いで、図2を参照して、ストッパ部材200の詳細構成について説明する。図2(a)は、ストッパ部材200の正面図であり、図2(b)は、ストッパ部材200の背面図であり、図2(c)は、図2(a)のIIc−IIc線におけるストッパ部材200の断面図である。
図2に示すように、ストッパ部材200は、内筒部材110(図1参照)に外嵌される本体部210と、その本体部210から径方向外方へ張り出して形成される左右一対の張出部220と、本体部210の背面側から軸方向へ突出して形成される上下一対の突起部230とを備え、これら各部210,220,230がゴム状弾性材から一体に形成される。
ストッパ部材200は、一対の突起部230を挿入穴132にそれぞれ挿入しつつ、本体部210(挿通孔211)を内筒部材110の軸方向端部に外嵌させることで、防振装置100に装着される(図1及び図8参照)。この場合、内筒部材110に外嵌するだけでなく、突起部230を挿入穴132に挿入するので、ストッパ部材200の保持強度が確保される。
本体部210には、その中央部に内筒部材110の外形に対応する長円形の挿通孔211が板厚方向(図2(c)左右方向)に穿設され、これにより、本体部210が円環板状に形成される。張出部220は、左右(図2(a)左右)対称に形成され、防振装置100への装着状態において、外筒部材120及び圧入基体301の軸方向端面を部分的に覆設可能な位置まで延設される(図1参照)。
突起部230は、防振装置100に形成される挿入穴132に挿入される部位であり(図8参照)、本体部210の背面(図2(b)紙面手前側)において、挿通孔211を挟んで上下(図2(b)上下)対称に一対が形成される。即ち、突起部230は、一対の張出部220を結ぶ方向と直交する方向(図2(b)上下方向)であって挿通孔211の中心を通る直線上に配設される。
突起部230は、断面矩形状の突起であって、突出方向先端側ほど断面積が小さな先細形状の突起として形成される。本実施の形態では、突起部230の互いに対向する面(対向面)が平行に形成される一方、その対向面の反対側の面(図2(c)上側面または下側面)が、突出方向先端(図2(c)左側)へ向かうに従って対向面に近接するように(即ち、対向面とその対向面の反対側の面との間の対向間隔(図2(c)上下方向寸法)が狭くなるように)、傾斜して形成される。これにより、突起部230の挿入穴132への挿入性を高めつつ、挿入後は抜け難くして、ストッパ部材200の保持強度を確保することができる。
なお、張出部220は、本体部210の長円形の内の半円形状の部分(図2(a)左右部分)に接続され、本体部210の長円形の内の直線状の部分(図2(a)上側および下側)には非接続とされる。この場合、突起部230は、張出部220が非接続とされる本体部210の長円形の内の直線状の部分に配設されるので、搬送中に張出部220が変位(揺動運動)しても、その変位を突起部230に伝達し難くできるので、搬送中に突起部230が挿入穴132(図8参照)から抜け出ることを抑制できる。
次いで、図3及び図4を参照して、防振装置100について説明する。図3(a)は、防振装置100の正面図であり、図3(b)は、図3(a)のIIIb−IIIb線における防振装置100の断面図である。また、図4は、図3(a)のIV−IV線における防振装置100の断面図である。
図3及び図4に示すように、筒状の内筒部材110と、その内筒部材110の外側を取り囲む筒状の外筒部材120と、内筒部材110の突出部112を含む外周面を外筒部材120の内周面に連結すると共にゴム状弾性材から構成される防振基体130とを備える。
内筒部材110は、断面長円形の筒部本体111と、その筒部本体111の外周面から径方向外方へ突出する突出部112とを備える。筒部本体111には、その外形と相似形状となる長円形状の挿通孔111aが軸Oに沿って貫通形成される。突出部112は、筒部本体111の軸方向両端部を残して形成される。ここで、図5から図7を参照して、内筒部材110の詳細構成について説明する。
図5(a)は、内筒部材110の正面図であり、図5(b)は、図5(a)の矢印Vb方向から視た内筒部材110の側面図である。図6は、図5(b)のVI−VI線における内筒部材110の断面図である。また、図7(a)は、図5(b)の矢印VIIa方向から視た内筒部材110の側面図であり、図7(b)は、図7(a)のVIIb−VIIb線における内筒部材110の断面図である。
図5から図7に示すように、内筒部材110は、軸Oに沿って略一定の断面形状(長円形状)を有して形成される筒状本体111と、その筒状本体111の外周面から突出する突出部112とが、金属材料から一体に形成される。
突出部112は、筒状本体111の長円形状における平行線が位置する側(図5(a)上側および下側)の外周面から突出する一対の第1突出部113と、筒状本体111の長円形状における半円形が位置する側(図5(a)左側および右側)の外周面から突出する一対の第2突出部114とを備える。
即ち、内筒部材110の筒状本体111には、軸直角方向となる第1の方向(図5(a)上下方向)に沿って一対の第1突出部113が径方向外方へ向けて突出されると共に、第1の方向に直交し且つ軸直角方向となる第2の方向(図5(a)左右方向)に沿って一対の第2突出部114が径方向外方へ向けて突出される。
第1突出部113及び第2突出部114は、図5(a)に示すように、軸方向視形状が、軸O側に中心を有する円弧状に湾曲して形成され、第1突出部113の円弧半径が筒状本体111の長円における半円形状の円弧半径よりも大きくされ、第2突出部114の円弧半径が第1突出部113の円弧半径よりも大きくされる。
第1突出部113及び第2突出部114は、軸方向(図5(b)左右方向)中央において、筒状本体111の外周面からの突出高さ(即ち、軸Oからの距離)を最大とし、軸方向両端へ向かうに従ってその突出高さを徐々に低くする。本実施の形態では、第1突出部113及び第2突出部114の突出先端面(外周面)の傾斜角度が略5度とされる。但し、この傾斜角度の値は適宜選択可能であって、例えば、0度であっても良い。
なお、第1突出部113と第2突出部114との周方向における接続部分は、軸方向視において部分的に凹設されつつ(即ち、筒状本体111からの突出高さが低くされつつ)滑らかに連設される。また、第1の方向における軸心Oから第1突出部113の外周面までの距離は、第2の方向における軸心Oから第2の突出部114の外周面までの距離と略同一とされる。
ここで、内筒部材110は、第1凹部115及び第2凹部116を備える。第1凹部115は、第1突出部113の軸方向一端(図7(a)右側)から軸方向他端(図7(a)左側)へ向けて軸方向(図7左右方向)に沿って所定幅で延設され、第1突出部113の外周面を部分的に凹設して形成され、第2凹部116は、第1突出部113の軸方向他端から軸方向一端へ向けて軸方向に沿って所定幅で延設され、第1突出部113の外周面を部分的に凹設して形成される。
なお、第1凹部115及び第2凹部116の所定幅(図7(a)上下方向寸法)は、図7(a)に示す側面視において、少なくとも筒部本体111の幅寸法(軸直角方向、図7(a)上下方向寸法)よりも小さくされ、本実施の形態では、第1突出部113の幅寸法(図5(a)左右方向寸法)よりも小さくされる。よって、第1凹部115及び第2凹部116の両側(図5(a)左側および右側)には、第1突出部113の最大突出高さが残存される。
第1凹部115及び第2凹部116は、互いに同じ形状に形成され、それら第1凹部115及び第2凹部116の合計の軸方向長さ(図7(a)左右方向長さ)は、第1突出部113の軸方向長さよりも短くされる。よって、第1凹部115と第2凹部116との軸方向における対向間には、第1突出部113(以下、この領域を「中央部113a」と称す)が残存する。
また、第1凹部115及び第2凹部116の両側(図7(a)上側および下側)の側壁は軸方向に平行とされる。この場合、図7(a)に示す第1突出部113の上面視において、第1凹部115及び第2凹部116は第1突出部113の幅方向(軸直角方向、図7(a)上下方向)中央に位置し、また、第1凹部115及び第2凹部116の幅寸法(図7(a)上下方向寸法)は、第1突出部113の幅寸法よりも小さくされる。よって、第1凹部115及び第2凹部116の幅方向(軸直角方向)における両側には、第1突出部113(以下、この領域を「対向部113b」と称す)が残存する。
よって、第1突出部113は、図7(a)に示す上面視において、その外周面形状が、中央部113aと一対の対向部113bとによって、略H型状に形成される。
なお、本実施の形態では、第1凹部115及び第2凹部116の外周面は、筒状本体111の外周面と同じ高さとされ、これら各凹部115,116の外周面と筒状本体111の外周面とが面一とされる。また、内筒部材110は、一対一組の第1凹部115及び第2凹部116を二組備え、それら二組の第1凹部115及び第2凹部116を一対の第1突出部113にそれぞれ配設する。これにより、二組の第1凹部115及び第2凹部116が内筒部材(軸O)を挟む位置に対称に配設される。
図3及び図4に戻って説明する。外筒部材120は、軸Oを有する断面円形の筒状体であり、内筒部材110と同軸に配置される。なお、外筒部材120は、断面楕円形または断面長円形であっても良い。
防振基体130は、内筒部材110の突出部112全体を含む外周面を外筒部材120の内周面に連結する。即ち、突出部112(第1突出部113及び第2突出部114)は、防振基体130の内部に埋設される。また、防振基体130は、軸方向に貫通する一対のすぐり部131と、凹部として形成される複数の挿入穴132とを備える。
一対のすぐり部131は、内筒部材110を挟む位置に配設される。具体的には、一対のすぐり部131は、軸直角方向となる第1の方向(図3(a)上下方向)に沿って配設される。この第1の方向は、内筒部材110の一対の第1突出部113を結ぶ方向(図5(a)上下方向)に対応する。よって、すぐり部131は、第1突出部113(図5から図7参照)に対向する位置に配設される。即ち、第1突出部113の外周面と外筒部材120の内周面との対向間にはすぐり部131が介設される。
挿入穴132は、ストッパ部材200の突起部230(図2参照)が挿入される凹部であり、内筒部材110の第1凹部115及び第2凹部116に沿って延設され軸方向一端または軸方向他端(図3(b)右側または左側)が開口する空間(凹部)として形成される。なお、本実施の形態では、内筒部材110の第1凹部115及び第2凹部116のそれぞれに(即ち、合計4個の)挿入穴132が形成される。
この挿入穴132は、軸方向に直交する平面での断面形状が断面矩形状となる空間であって、凹設方向先端側(底部側)ほど断面積が小さな先細形状の空間として形成される。本実施の形態では、挿入穴132の凹設深さ(軸方向寸法、図3(b)左右方向寸法)が、突起部230の突出寸法(図2(c)左右方向寸法)よりも長くされる(図8参照)。なお、挿入穴132は、開口側が、ストッパ部材200の突起部230と同一の断面形状または若干小さな相似形の断面形状を有する空間として形成される(図8参照)。
よって、挿入穴132の内筒部材110側の面(対向面)が平行に形成される一方、その対向面の反対側の面(外筒部材120側の面)が、凹設方向先端側(底部側)へ向かうに従って対向面に近接するように(即ち、反対側の面の間の対向間隔(図3(b)上下方向寸法)が狭くなるように)、傾斜して形成される。これにより、突起部230の挿入穴132への挿入性を高めつつ、挿入後は抜け難くして、ストッパ部材200の保持強度を確保することができる。
この場合、本実施の形態では、挿入穴132の対向面の対向間隔(図3(b)上下方向寸法)は、ストッパ部材200の突起部230の対向面における対向間隔(図2(c)上下方向寸法)よりも若干大きくされる。これにより、挿入穴132への突起部230の挿入後は、ストッパ部材200の弾性力により、一対の突起部230間に内筒部材110が挟圧される。よって、ストッパ部材200の保持強度を確保することができる。
なお、挿入穴132はその内周面(側面および底面)がゴム膜により形成される。即ち、第1凹部115又は第2凹部116の底面(筒状本体111の外周面)、第1凹部115又は第2凹部116の側面(第1突出部113の対向部113bの側面)、及び、第1凹部115又は第2凹部116の側面(第1突出部113の中央部113aの側面)には、防振基体130によるゴム膜が覆設され、そのゴム膜により挿入穴132の内周面(側面および底面)が形成される。また、残りの側面は、第1突出部113全体を覆う防振基体130により形成される。
以上のように構成された防振ユニット1の全体構成について、図8を参照して説明する。図8は、防振ユニット1の断面図であり、軸Oを含む鉛直面により切断した防振ユニット1の縦断面図に対応する。即ち、図8に図示する断面は、内筒部材110については図7(b)に示す断面が、ストッパ部材200については図2(c)に示す断面が、それぞれ対応する。
図8に示すように、防振ユニット1は、内筒部材110の突出部112(第1突出部113)に第1凹部115及び第2凹部116が形成されると共に(図5から図7参照)、その第1凹部115及び第2凹部116に沿って挿入穴132が防振基体130に形成される。よって、ストッパ部材200は、本体部210が内筒部材110の軸方向端部に外嵌されるだけでなく、突起部230が挿入穴132に挿入される。よって、その分、ストッパ部材200の保持強度を確保できる。
特に、挿入穴132は、第1凹部115及び第2凹部116に沿って延設されるので、挿入された突起部230を、防振基体130による剛性だけでなく、両側の第1凹部115及び第2凹部116の剛性(即ち、第1突出部113の対向部113bの剛性)を利用して、挟圧することができる。よって、ストッパ部材200の保持強度の向上を図ることができる。
この場合、第1凹部115及び第2凹部116は、第1突出部113の外周面を部分的に凹設することで形成されるので(図5から図7参照)、化成処理時に溶剤が内筒部材110に残留することを抑制できる。よって、残留した溶剤が加硫時に流出することを抑制して、内筒部材110と防振基体130との間の接着性の向上を図ることができる。
また、防振ユニット1によれば、第1凹部115及び第2凹部116が第1突出部113の外周面を部分的に凹設して形成されることで、第1突出部113に薄肉部が形成されないので、内筒部材110(第1突出部113)の強度を確保できる。よって、加硫成形時の圧力や、大変位入力時のストッパ作用時に、内筒部材110(第1突出部113)が破損することを抑制できる。
ここで、第1凹部115及び第2凹部116は、軸方向一端または軸方向他端から軸方向に沿って所定位置まで所定幅で延設されることで、第1突出部113には、第1凹部115及び第2凹部116の両側に対向部113bが、第1凹部115及び第2凹部116の間に中央部113aが、それぞれ残存される。これにより、第1突出部113の上面視形状(外周面形状)を略H型状とすることができる(図7(a)参照)。
これにより、内筒部材110の第1突出部113の外周面が、第1凹部115及び第2凹部116により部分的に凹設される場合でも、残存する略H型の外周面部分(即ち、中央部113a及び対向部113b)によって、かかる第1突出部113の機能(大変位入力により外筒部材120の内周面に当接した際に、受圧面積を確保して、ばね定数を高くする機能)を効果的に発揮させることができる。即ち、特性と耐久性とを確保することができる。
次いで、図9及び図10を参照して、第2実施の形態における防振ユニット2001について説明する。第1実施の形態では、挿入穴132が軸方向一端または軸方向他端のみに開口を有する空間として形成される場合を説明したが、第2実施の形態における挿入穴2132は、すぐり部131を臨む側の側面も開口して形成される。なお、上述した第1実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図9(a)は、第2実施の形態における防振装置2100の正面図であり、図9(b)は、図9(a)のIXb−IXb線における防振装置2100の断面図である。また、図10は、防振ユニット2001の断面図であり、軸Oを含む鉛直面により切断した防振ユニット2001の縦断面図に対応する。即ち、図10に図示する断面は、内筒部材110については図7(b)に示す断面が、ストッパ部材200については図2(c)に示す断面が、それぞれ対応する。
図9及び図10に示すように、第2実施の形態における防振装置2100では、一対一組の第1凹部115及び第2凹部116の内、一組の第1凹部115及び第2凹部116に対しては、第1実施の形態における場合と同様の構成の挿入穴132が形成される一方、残りの一組の第1凹部115及び第2凹部116に対しては、挿入穴2132が形成される。
なお、挿入穴132と挿入穴2132とは、外筒部材120側の側面が開口するか否かの点が異なるのみであり、他の構成(形状や寸法など)や配置(軸Oに対する配設位置など)は互いに同じであるので、その説明は省略する。
防振ユニット2001によれば、挿入穴132は、第1実施の形態の場合と同様に、軸方向一端側または軸方向他端側(図9(b)右側または左側)のみが開口する空間として形成されるので、挿入された突起部230との接触面積を大きくして、突起部230を抜け難くできる。その結果、ストッパ部材200の保持強度を確保することができる。
一方で、挿入穴2132は、軸方向一端側または軸方向他端側(図9(b)右側または左側)と外筒部材120に対向する側の側面(図9(a)及び図9(b)下側面)とが開口する空間として形成されるので、外筒部材120に対向する側の側面(開口)を利用して、挿入穴2132に突起部230を挿入し易くすることができる。よって、突起部230を挿入穴132,2132に挿入して、ストッパ部材200を防振装置2100に装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
ここで、防振ユニット2001は、二組の第1凹部115及び第2凹部116が、軸方向視においてそれぞれすぐり部131に対向する位置に配設され、挿入穴2132は、すぐり穴131に連通されることで、外筒部材120に対向する側の側面(図9(a)及び図9(b)下側面)が開口する空間として形成されるので、防振基体2130の脚部に開口を設けることを不要とすることができる。即ち、防振基体130の脚部(内筒部材110(第2突出部114側)と外筒部材120とを連結する部分)に挿入穴2132を設ける場合と比較して、防振基体2130の形状設計の自由度を高めて、ばね特性を確保できると共に、耐久性の向上を図ることができる。
次いで、図11から図16を参照して、第3実施の形態における防振ユニット3001について説明する。第1実施の形態では、挿入穴132が軸方向視においてすぐり部131に対向する位置に配設される場合を説明したが、第3実施の形態における挿入穴3132は、一対のすぐり穴131を結ぶ方向と直交する方向に沿って配設される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図11(a)は、第3実施の形態における防振装置3100の正面図であり、図11(b)は、図11(a)のXIb−XIb線における防振装置3100の断面図である。
図11に示すように、第3実施の形態における防振装置3100は、筒状の内筒部材3110と、その内筒部材3110の外側を取り囲む筒状の外筒部材120と、内筒部材3110の突出部3112を含む外周面を外筒部材120の内周面に連結すると共にゴム状弾性材から構成される防振基体3130とを備える。
内筒部材3110は、断面長円形の筒部本体111と、その筒部本体111の外周面から径方向外方へ突出する突出部3112とを備える。突出部3112は、筒部本体111の軸方向両端部を残して、形成される。ここで、図12から図14を参照して、内筒部材3110の詳細構成について説明する。
図12(a)は、内筒部材3110の正面図であり、図12(b)は、図12(a)の矢印XIIb方向から視た内筒部材3110の側面図である。図13は、図12(b)のXIII−XIII線における内筒部材3110の断面図である。また、図14(a)は、図12(b)の矢印XIVa方向から視た内筒部材3110の側面図であり、図14(b)は、図14(a)のXIVb−XIVb線における内筒部材3110の断面図である。
図12から図14に示すように、内筒部材3110は、軸Oに沿って略一定の断面形状(長円形状)を有して形成される筒状本体111と、その筒状本体111の外周面から突出する突出部3112とが、金属材料から一体に形成される。
突出部3112は、筒状本体111の長円形状における平行線が位置する側(図12(a)上側および下側)の外周面から突出する一対の第1突出部3113と、筒状本体111の長円形状における半円形が位置する側(図12(a)左側および右側)の外周面から突出する一対の第2突出部3114とを備える。
即ち、内筒部材3110の筒状本体111には、軸直角方向となる第1の方向(図12(a)上下方向)に一対の第1突出部3113が径方向外方へ向けて突出されると共に、第1の方向に直交し且つ軸直角方向となる第2の方向(図12(a)左右方向)に一対の第2突出部3114が径方向外方へ向けて突出される。
なお、突出部3112(第1突出部3113及び第2突出部3114)は、第1実施の形態における突出部112(第1突出部113及び第2突出部114)に対し、第1凹部3115及び第2凹部3116の形成位置が異なるのみであり(第1実施の形態では第1突出部113に第1凹部115等が設けられたのに対し、第3実施の形態では第2突出部3114に第1凹部3115等が設けられる)、他の構成(形状や寸法など)や配置(軸Oに対する配設位置など)は互いに同じであるので、その説明は省略する。
第1凹部3115は、第2突出部3114の軸方向一端(図12(b)右側)から軸方向他端(図12(b)左側)へ向けて軸方向(図12(b)左右方向)に沿って所定幅で延設され、第2突出部3114の外周面を部分的に凹設して形成され、第2凹部3116は、第2突出部3114の軸方向他端から軸方向一端へ向けて軸方向に沿って所定幅で延設され、第2突出部3114の外周面を部分的に凹設して形成される。
第1凹部3115及び第2凹部3116は、互いに同じ形状に形成され、それら第1凹部3115及び第2凹部3116の合計の軸方向長さ(図12(b)左右方向長さ)は、第2突出部3114の軸方向長さよりも短くされる。よって、第1凹部3115と第2凹部3116との軸方向における対向間には、第2突出部3114(以下、この領域を「中央部3114a」と称す)が残存する。
また、第1凹部3115及び第2凹部3116の両側(図12(b)上側および下側)の側壁は軸方向に平行とされる。この場合、図12(b)に示す第2突出部3114の上面視において、第1凹部3115及び第2凹部3116は第2突出部3114の幅方向(軸直角方向、図12(b)上下方向)中央に位置し、また、第1凹部3115及び第2凹部3116の幅寸法(図12(b)上下方向寸法)は、第2突出部3114の幅寸法よりも小さくされる。よって、第1凹部3115及び第2凹部3116の幅方向(軸直角方向)における両側には、第2突出部3114(以下、この領域を「対向部3114b」と称す)が残存する。
よって、第2突出部3114は、図12(b)に示す上面視において、その外周面形状が、中央部3114aと一対の対向部3114bとによって、略H型状に形成される。
なお、本実施の形態では、第1凹部3115及び第2凹部3116の外周面は、筒状本体111の外周面と同じ高さとされ、これら各凹部3115,3116の外周面と筒状本体111の外周面とが面一とされる。また、内筒部材3110は、一対一組の第1凹部3115及び第2凹部3116を二組備え、それら二組の第1凹部3115及び第2凹部3116を一対の第2突出部3114にそれぞれ配設する。これにより、二組の第1凹部3115及び第2凹部3116が内筒部材(軸O)を挟む位置に対称に配設される。
図11に戻って説明する。防振基体3130は、内筒部材3110の突出部3112全体を含む外周面を外筒部材120の内周面に連結する。よって、突出部3112(第1突出部3113及び第2突出部3114)は、防振基体3130の内部に埋設される。防振基体3130は、軸方向に貫通する一対のすぐり部131と、凹部として形成される複数の挿入穴3132とを備える。
一対のすぐり部131は、軸直角方向となる第1の方向(図11(a)上下方向)に沿って配設される。この第1の方向は、内筒部材3110の一対の第1突出部3113を結ぶ方向(図12(a)上下方向)に対応する。よって、すぐり部131は、第1突出部3113(図12から図14参照)に対向する位置に配設される。即ち、第1突出部3113の外周面と外筒部材120の内周面との対向間にはすぐり部131が介設される。
挿入穴3132は、ストッパ部材3200の突起部3230(図15参照)が挿入される凹部であり、内筒部材3110の第1凹部3115及び第2凹部3116に沿って延設され軸方向一端または軸方向他端(図11(b)上側または下側)が開口する空間(凹部)として形成される。なお、本実施の形態では、内筒部材3110の第1凹部3115及び第2凹部3116のそれぞれに(即ち、合計4個の)挿入穴3132が形成される。
本実施の形態では、挿入穴3132の凹設深さ(軸方向寸法、図11(b)上下方向寸法)が、突起部3230の突出寸法(図15(c)上下方向寸法)と同一とされる(図16参照)。よって、挿入穴3132に突起部3230が挿入されると、両者は、それらの間に隙間が形成されず、密着される(図16参照)。
ここで、図15を参照して、ストッパ部材3230について説明する。図15(a)は、ストッパ部材3200の正面図であり、図15(b)は、ストッパ部材3200の背面図であり、図15(c)は、図15(a)のXVc−XVc線におけるストッパ部材3200の断面図である。
図15に示すように、ストッパ部材3200は、本体部210と、張出部220と、突起部3230とを備え、これら各部210,220,3230がゴム状弾性材から一体に形成される。なお、第3実施の形態におけるストッパ部材3200は、第1実施の形態におけるストッパ部材200に対し、一対の突起部3230の配設位置が異なるのみであり、他の構成(形状や寸法など)は互いに同じであるので、その説明は省略する。
突起部3230は、本体部210の背面(図15(b))において、挿通孔211を挟んで左右(図15(b)左右)対称に一対が形成される。即ち、突起部3230は、一対の張出部220を結ぶ方向(図15(b)左右方向)であって挿通孔211の中心を通る直線上に配設される。
図11に戻って説明する。挿入穴3132は、軸方向に直交する平面での断面形状が断面矩形状となる空間であって、凹設方向先端側(底部側)ほど断面積が小さな先細形状の空間として形成される。即ち、挿入穴3132の内形形状は、ストッパ部材3200の突起部3230の外形形状と同一または若干小さな相似形として形成される。よって、挿入穴3132には、突起部3230が隙間を有さず密着した状態で挿入される(図16参照)。
なお、第1実施の形態の場合と同様に、挿入穴3132の内筒部材3110側の面(対向面)が平行に形成される一方、その対向面の反対側の面(外筒部材120側の面)が、凹設方向先端側(底部側)へ向かうに従って対向面に近接するように(即ち、反対側の面の間の対向間隔(図11(b)左右方向寸法)が狭くなるように)、傾斜して形成される。これにより、突起部3230の挿入穴3132への挿入性を高めつつ、挿入後は抜け難くして、ストッパ部材3200の保持強度を確保することができる。
また、挿入穴3132の対向面の対向間隔(図11(b)左右方向寸法)は、ストッパ部材3200の突起部3230の対向面における対向間隔(図15(c)左右方向寸法)よりも若干大きくされる。これにより、挿入穴3132への突起部3230の挿入後は、ストッパ部材3200の弾性力により、一対の突起部3230間に内筒部材3110が挟圧される。よって、ストッパ部材3200の保持強度を確保することができる。
なお、挿入穴3132は、第1実施の形態の場合と同様に、その内周面(側面および底面)がゴム膜により形成される。即ち、第1凹部3115又は第2凹部3116の底面(筒状本体111の外周面)、第1凹部3115又は第2凹部3116の側面(第2突出部3114の対向部3114bの側面)、及び、第1凹部3115又は第2凹部3116の側面(第2突出部3114の中央部3114aの側面)には、防振基体3130によるゴム膜が覆設され、そのゴム膜により挿入穴3132の内周面(側面および底面)が形成される。また、残りの側面は、第2突出部3114全体を覆う防振基体3130により形成される。
以上のように構成された防振ユニット3001の全体構成について、図16を参照して説明する。図16は、防振ユニット3001の断面図であり、軸Oを含む水平面により切断した防振ユニット3001の水平断面図に対応する。即ち、図16に図示する断面は、内筒部材3110については図13に示す断面が、ストッパ部材3200については図15(c)に示す断面が、それぞれ対応する。
図16に示すように、防振ユニット3001は、内筒部材3110の突出部3112(第2突出部3114)に第1凹部3115及び第2凹部3116が形成されると共に(図12から図14参照)、その第1凹部3115及び第2凹部3116に沿って挿入穴3132が防振基体3130に形成される。よって、ストッパ部材3200は、本体部210が内筒部材3110の軸方向端部に外嵌されるだけでなく、突起部3230が挿入穴3132に挿入される。よって、その分、ストッパ部材3200の保持強度を確保できる。
特に、挿入穴3132は、第1凹部3115及び第2凹部3116に沿って延設されるので、挿入された突起部3230を、防振基体3130による剛性だけでなく、両側の第1凹部3115及び第2凹部3116の剛性(即ち、第2突出部3114の対向部3114bの剛性)を利用して、挟圧することができる。よって、ストッパ部材3200の保持強度の向上を図ることができる。
この場合、第1凹部3115及び第2凹部3116は、第2突出部3114の外周面を部分的に凹設することで形成されるので(図12から図14参照)、第1実施の形態における場合と同様に、化成処理時に溶剤が内筒部材3110に残留することを抑制できる。よって、残留した溶剤が加硫時に流出することを抑制して、内筒部材3110と防振基体3130との間の接着性の向上を図ることができる。
また、防振ユニット3001によれば、第1凹部3115及び第2凹部3116が第2突出部3114の外周面を部分的に凹設して形成されることで、第2突出部3114に薄肉部が形成されないので、第1実施の形態における場合と同様に、内筒部材3110(第2突出部3114)の強度を確保できる。よって、加硫成形時の圧力や、大変位入力時の荷重入力に伴って、内筒部材3110(第2突出部3114)が破損することを抑制できる。
ここで、第1凹部3115及び第2凹部3116は、軸方向一端または軸方向他端から軸方向に沿って所定位置まで所定幅で延設されることで、第2突出部3114には、第1凹部3115及び第2凹部3116の両側に対向部3114bが、第1凹部3115及び第2凹部3116の間に中央部3114aが、それぞれ残存される。これにより、第2突出部3114の上面視形状(外周面形状)を略H型状とすることができる(図12(b)参照)。
これにより、内筒部材3110の第2突出部3114の外周面が、第1凹部3115及び第2凹部3116により部分的に凹設される場合でも、残存する略H型の外周面部分(即ち、中央部3114a及び対向部3114b)によって、かかる第2突出部3114の機能(内筒部材3110と外筒部材120との間の予め定められた対向面間隔(設計可能範囲)内において、防振基体3130の受圧面積を調整して、所望のばね特性を確保する機能)を効果的に発揮させることができる。
さらに、二組の第1凹部3115及び第2凹部3116が、軸方向視において一対のすぐり部131を結ぶ方向と直交する方向(図11(a)左右方向)に沿って配設されるので、すぐり部131に対向する側に配設される第1突出部3113(即ち、一対のすぐり部131を結ぶ方向への変位入力時に外筒部材120に当接して、ストッパ機能を発揮する突出部)に部分的な凹部(第1凹部3115及び第2凹部3116)を凹設する必要がない。よって、内筒部材3110の耐久性を確保することができる。
一方で、この場合には、挿入穴3132を防振基体3130の脚部に設ける必要があり、その防振基体3130の耐久性の低下を招くおそれがあるところ、本実施の形態では、挿入穴3132は、軸方向一端側または軸方向他端側(図11(b)上側または下側)のみが開口する空間として形成され、かつ、ストッパ部材3200の突起部3230は、挿入穴3132に隙間なく密着された状態で挿入されるので、挿入穴3132に挿入された突起部3230を防振基体3130の脚部の一部として機能させることができる。よって、挿入穴3132を防振基体3130の脚部に設けても、その防振基体3130の耐久性の低下を抑制できる。
次いで、図17及び図18を参照して、第4実施の形態における防振ユニット4001について説明する。第1実施の形態では、挿入穴132が軸方向一端または軸方向他端のみに開口を有する空間として形成される場合を説明したが、第4実施の形態における挿入穴4132は、外筒部材120を臨む側の側面も開口して形成される。なお、上述した各実施の形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
図17(a)は、第4実施の形態における防振装置4100の正面図であり、図17(b)は、図17(a)のXVIIb−XVIIb線における防振装置4100の断面図である。また、図18は、防振ユニット4001の断面図であり、軸Oを含む水平面により切断した防振ユニット4001の水平断面図に対応する。即ち、図18は、図16に示す断面図に対応する。
図17及び図18に示すように、第4実施の形態における防振装置4100では、一対一組の第1凹部3115及び第2凹部3116の内、一組の第1凹部3115及び第2凹部3116に対しては、第3実施の形態における場合と同様の構成の挿入穴3132が形成される一方、残りの一組の第1凹部3115及び第2凹部3116に対しては、挿入穴4132が形成される。
なお、挿入穴3132と挿入穴4132とは、外筒部材120側の側面が開口するか否かの点が異なるのみであり、他の構成(形状や寸法など)や配置(軸Oに対する配設位置など)は互いに同じであるので、その説明は省略する。
防振ユニット4001によれば、挿入穴3132は、第3実施の形態の場合と同様に、軸方向一端側または軸方向他端側(図17(b)上側または下側)のみが開口する空間として形成されるので、挿入された突起部3230との接触面積を大きくして、突起部3230を抜け難くできる。その結果、ストッパ部材3200の保持強度を確保することができる。
一方で、挿入穴4132は、軸方向一端側または軸方向他端側(図17(b)上側または下側)と外筒部材120に対向する側の側面(図17(a)及び図17(b)左側面)とが開口する空間として形成されるので、外筒部材120に対向する側の側面(開口)を利用して、挿入穴4132に突起部3230を挿入し易くすることができる。よって、突起部3230を挿入穴3132,4132に挿入して、ストッパ部材3200を防振装置4100に装着する作業の作業性の向上を図ることができる。
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
上記各実施の形態で挙げた数値は一例であり、他の数値を採用することは当然可能である。
上記各実施の形態では、軸方向一端側と軸方向他端側とのそれぞれに挿入穴132,2132,3132,4132を設ける場合(即ち、2個のストッパ部材200,3200が装着可能とされる場合)説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸方向一端側または軸方向他端側のいずれか一方のみに挿入穴132,2132,3132,4132を設ける(即ち、1個のストッパ部材200,3200を装着可能とする)ように構成しても良い。なお、この場合、第1凹部115,3115及び第2凹部116,3116は、上記各実施の形態の場合(即ち、合計4箇所)と同様に形成されていても良く、或いは、挿入穴132,2132,3132,4132に対応する箇所(即ち、合計2ヶ所)のみに形成されていても良い。
上記各実施の形態では、軸方向一端側の2ヶ所(上記各実施の形態では軸Oを挟んだ2ヶ所)に挿入穴132,2132,3132,4132を設ける場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、軸方向の一端側において3以上の挿入穴132,2132,3132,4132を周方向に分散した形態で設けてもよい。なお、軸方向他端側についても軸方向一端側と同様である。即ち、上記各実施の形態では、一対一組の第1凹部115,3115及び第2凹部116,3116を二組設ける場合を説明したが、3組以上を周方向に分散させて設けてもよい。
上記各実施の形態では、第1凹部115,3115及び第2凹部116,3116の外周面が筒状本体111の外周面と同じ高さとされる(即ち、第1凹部115,3115及び第2凹部116,3116の外周面と筒状本体111の外周面とが面一とされる)場合を説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、第1凹部115,3115及び第2凹部116,3116の外周面を筒状本体111の外周面と異なる高さとすることは当然可能である。
上記各実施の形態では、挿入穴132,2132,3132,4132の内周面(側面および底面)がゴム膜(防振基体130,2130,3130,4130の一部)により形成される場合を説明したが、必ずしもこれに限れるものではなく、かかるゴム膜の一部または全部を省略し、第1突出部113、第2突出部3114又は筒状本体111が露出されていても良い。