JP2013047201A - 破骨細胞が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリアミンが破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対して阻害作用を有することが見出され、かかる知見に基づき、ポリアミンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤が完成することにより、上記課題が解決された。本発明はまた、ポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害剤にも関する。
【選択図】図3
Description
近年高齢化に伴い、関節炎や骨粗鬆症等の骨疾患が注目されており、QOL向上のために骨疾患の予防や治療に大きな関心が寄せられている。
1.ポリアミンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤。
2.ポリアミンが、第一級アミノ基を5つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物である、前項1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
3.ポリアミンが、スペルミンまたはスペルミジンから選択される少なくとも1種以上の化合物である、前項1又は2に記載の予防剤及び/又は治療剤。
4.ポリアミンが破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、前項1〜3のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
5.ポリアミンによる破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用が、ポリアミンが、Receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)によるNuclear factor-κB(NF-κB)の活性化を抑制することによるものである、前項4に記載の予防剤及び/又は治療剤。
6.破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患が、骨粗鬆症又は関節炎である前項1〜5のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
7.骨量減少の予防及び/又は治療のために用いる、前項1〜6のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
8.ポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害剤。
9.前項8に記載の阻害剤を含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、経口投与用製剤。
内投与、患部への局所投与、皮膚投与等)のいずれの投与経路により投与してもよい。好ましくは本発明の予防剤及び/又は治療剤は、経口投与されることが好ましく、経口投与用製剤として調製される。本発明の経口投与用製剤は、医薬品としてだけではなく、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に関与する疾患の予防及び/又は治療を目的とした医薬部外品として提供することもでき、例えば、容器詰ドリンク飲料等の飲用形態、或いはタブレット、カプセル、顆粒等の形態とし、できるだけ摂取し易い形態として提供するのが好ましい。
(卵巣摘出(OVX)手術と骨の組織形態学的解析)
ddYマウスを、標準的な12:12明暗周期でケージ内において、飼料と飲水は自由に摂取できるようにして、飼育した。 8週齢のマウスを、 ペントバルビタール(50 mg/kg)の腹腔内注射により麻酔した。Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って、無菌下でOVX手術と、シャム手術(卵巣摘出疑似手術)を行った。OVXマウスに0.3 mMもしくは3 mMの濃度で飲水に溶解したSPDもしくはSPMを、毎日、経口投与した。マウスを、手術28日後に骨頭摘出により屠殺し、その後大腿骨、脛骨、脊椎骨に解剖して、10%ホルマリンもしくは70%エタノールにより固定した。骨の組織形態学的解析を、Kajimura et al., J Exp Med 208: 841-851 (2011)に記載の方法に従って、脱灰されていない脊椎骨について行った。 簡単に説明すると、脊椎骨を10%ホルマリンで固定し、種々の濃度のエタノールにより脱水し、標準的なプロトコールに従って、メチルメタクリレート樹脂に包埋した。組織体積に対する骨体積の割合(BV/TV)は、Von Kossa染色により測定した。骨形成速度(Bone formation rate:BFR)は、カルセイン二重標識法により解析した。カルセインは3日間の間隔を開けて2度マウスに注射され、その後最後の注射から2日後にマウスを屠殺した。骨芽細胞と破骨細胞のパラメーターはそれぞれ、トルイジンブルーもしくは酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)により染色し解析した。解析は、Osteomeasure Analysis System (Osteometrics, Atlanta, GA) を用いて、Parfitt et al., J Bone Miner Res 2: 595-610 (1987)に記載の方法に従って行った。
初代培養破骨細胞を、Hinoi et al., Am J Pathol 170: 1277-1290 (2007)の方法に従って、骨髄から調製した。かかる初代培養骨芽細胞(マウス骨髄単球から破骨細胞へ分化させた細胞)を、20 ng/mlのマクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)と、20 ng/mlのReceptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)の存在下で、5日間連続して培養した。前駆破骨細胞 RAW264.7細胞を、20 ng/ml RANKL存在下で、4日間連続して培養した。TRAP染色については、培養した細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の10%ホルマリンと、エタノール-アセトン(50:50; v/v)により固定した。その後、細胞を50 mmol/Lの酒石酸ナトリウムの存在下で、基質としてのリン酸ナフトールAS-MXと、色素としてのfast red violet LB saltを含む酢酸緩衝液(pH5.0)中でインキュベートした。5個以上の核を有するTRAP陽性細胞を、TRAP陽性多核細胞(MNCs)として評価した。
培養した細胞をPBSで洗浄し、0.5 mg/mlの3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide(MTT)でインキュベートし、その後ウェルにイソプロピルアルコール中の0.04 M HClを添加し、ホルマザンを溶解するため混合物を懸濁した。懸濁物を酵素免疫定量法のリーダーで、波長550 nmにおける吸光度を測定した。
トータルRNAを細胞から抽出し、逆転写酵素と、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成した。cDNA試料を、各遺伝子に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR解析(MX3005P instrument:Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)の鋳型として使用した。 遺伝子の発現量は、内部標準として36b4遺伝子の発現量を用いて、各試料について補正した。
初代培養骨芽細胞(マウス頭蓋骨から調製した細胞)を、Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って、連続的に酵素によって消化する方法により、1日齢もしくは2日齢のマウスの頭蓋冠から調製した。前駆骨芽細胞 MC3T3-E1細胞を、分化用カクテル(50 μg/ml アスコルビン酸および5 mM β-グリセロフォスフェート)の存在下で培養した。ALP活性およびCa2+蓄積量はUno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従って測定した。簡単に説明すると、骨芽細胞を0.1% Triton X-100により可溶化し、可溶化物中のALP活性を基質としてp-ニトロフェノールリン酸を用いて測定した。可溶化物を、16.24時間塩酸により処理し、20,000 × gで遠心し、市販のキットを用いて上清のCa2+蓄積量を測定した。
細胞をレポーターベクターにより形質転換した。その後細胞の可溶化物を調製し、ルミノメーター(ATTO, Tokyo, Japan)により特定の基質を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。形質転換効率は、Renilla luciferaseの活性を測定することにより補正した。
培養した細胞を、1% Nonidet P-40を含む溶解バッファー中に可溶化した。試料をドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動に供し、ニトロセルロース膜に転写し、Uno et al., J Pharmacol Sci 115: 309-319 (2011)に記載の方法に従ってイムノブロッティングアッセイを行った。定量は、ImageJを用いてデンシトメトリーにより行った。
結果は全て平均±S.E.で示し、統計学的有意差はtwo-tailedおよびunpairedのStudentのt検定、またはBonferroni/Dunnettのpost hoc検定による一元配置分散分析(one-way analysis of variance ANOVA)により検定した。
PUT、SPD、SPM、カルセイン、ナフトールAS-MXリン酸、fast red violet Lurina-Bertani saltは、Sigma(St. Louis, MO, USA)より購入した。組み換えマウスM-CSF、組み換えマウスRANKLはR&D Systems International(Minneapolis, MN, USA)から購入した。以下の抗体はすべて Cell Signaling Technology (Danvers, MA, USA)から購入した:抗グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH))抗体、抗リン酸化p65抗体、抗p65抗体、抗リン酸化κB阻害因子(IκB)抗体、抗IκB抗体。二重ルシフェラーゼアッセイシステムおよびRNase不含DNaseはPromega(Madison, WI, USA)から購入した。pNF-κB-LucはStratagene(La Jolla, CA, USA)より得た。M-MLV逆転写酵素はInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)より得た。THUNDERBIRD SYBR qPCR Mixは東洋紡績株式会社(TOYOBO)(Osaka, Japan)より得た。ISOGENおよびcalcium C-testキットは、和光純薬工業株式会社(WAKO)(Osaka, Japan)より得た。他の化合物は、高純度の市販品を用いた。
SPDもしくはSPMのいずれかを、卵巣摘出マウス(閉経後モデルマウス)に、経口投与した。その後、組織形態学的パラメータに加えて、組織体積に対する骨体積の割合(BV/TV)を測定した。
SPDもしくはSPMの骨吸収をする破骨細胞の細胞分化および成熟に対する影響を確認した。前駆破骨細胞のRAW264.7細胞を、RANKLの存在下で、1 nMから1μMのSPD、SPM、またはPUTとともに、4日間培養し、その後TRAP染色および、TRAP陽性の多核細胞(MNC)の数を計数した。
天然ポリアミンの骨芽細胞への機能を確認するために、前駆骨芽細胞のMC3T3-E1細胞を、10 nMから1μMのSPD、SPMまたはPUTと共に、分化カクテルの存在下で、28日までの種々の期間、培養をした。その後、MTT活性により細胞生存率を確認し、ALP活性により細胞分化度を確認し、Ca2+の蓄積量により細胞成熟度を確認した。
RANKLは、NF-κBの活性化を介した細胞内シグナル伝達経路を刺激することにより、破骨細胞の分化を促進することが知られている。SPDもしくはSPMによる破骨細胞分化阻害のメカニズムの検討のため、前駆破骨細胞のRAW264.7細胞をpNF-κB-Luc(5個のNF-κB結合配列を含むルシフェラーゼレポータープラスミド)により、一過的形質転換をした。RANKLの存在下で、SPDもしくはSPMにより処理を行い、ルシフェラーゼ活性を測定した。
CIA動物モデルにSPDまたはSPMを経口投与し、体重、足の容積、軟骨または関節滑液におけるRANKL等の発現量を測定した。
ルイス(Lewis)ラット(雌)を、標準的な12:12明暗周期でケージ内において、飼料と飲水は自由に摂取できるようにして、飼育した。 図6に示すように、8週齢のラットに、実験開始0日目、7日目、14日目に、Type IIコラーゲンと、完全フロイントアジュバントの混合物であるエマルジョンを、ラットの背中あるいは尾部付近に皮内投与した(コラーゲン1mg/mL(最終濃度)を0.5mL投与)。また、実験開始0日目から28日目まで、3 mMの濃度で飲水に溶解したSPDもしくはSPMを、毎日、同じラットに経口投与した(各々CIA+SPDラット、もしくはCIA+SPMラットと称する)。コントロールとして、SPDおよびSPMを溶解していない飲水を与えたラットを、関節炎を呈しているCIA動物モデル(CIAラット)とした。また、コラーゲンを皮内投与していないラットを正常(Normal)ラットとした。正常ラットには、SPDおよびSPMを溶解していない飲み水を与えた。実験開始0日目から28日目まで、7日間ごとに各ラットの体重を測定した。実験開始28日目に、CIAラットから軟骨または関節滑液を採取した。
トータルRNAを細胞から抽出し、逆転写酵素と、オリゴdTプライマーを用いてcDNAを合成した。cDNA試料を、各遺伝子(TNF-α、IL-1β、RNAKL、MMP13、Col II、Col X)に特異的なプライマーを用いたリアルタイムPCR解析(MX3005P instrument:Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)の鋳型として使用した。 遺伝子の発現量は、内部標準として36b4遺伝子の発現量を用いて、各試料について補正した。
各種ラットの足(後肢)の容積を、足容積測定試験装置を用いて測定した。関節炎発症の基準を用いて4段階で評価(0:変化なし、1:足指の腫脹、2:足指および足裏の腫脹、3:足全体の腫脹、4:重度の腫脹)することにより、足の容積のスコア化を行った。
結果は全て平均±S.E.で示し、統計学的有意差はtwo-tailedおよびunpairedのStudentのt検定、またはBonferroni/Dunnettのpost hoc検定による一元配置分散分析(one-way analysis of variance ANOVA)により検定した。
SPD、SPMは、Sigma(St. Louis, MO, USA)より購入した。ルイス(Lewis)ラットは
Charles Riverから購入した。M-MLV逆転写酵素はInvitrogen(Carlsbad, CA, USA)より得た。THUNDERBIRD SYBR qPCR Mixは東洋紡績株式会社(TOYOBO)(Osaka, Japan)より得た。他の化合物は、高純度の市販品を用いた。
関節炎では、SPDまたはSPMがRANKL発現量の増大を抑制することにより、破骨細胞の分化及び/又は増殖を抑制し、関節の骨・軟骨破壊の進行を抑制し得ると考えられた。
Claims (9)
- ポリアミンを有効成分として含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患の予防剤及び/又は治療剤。
- ポリアミンが、第一級アミノ基を5つ以上有する脂肪族炭化水素からなる群より選択される少なくとも1種以上の化合物である、請求項1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- ポリアミンが、スペルミンまたはスペルミジンから選択される少なくとも1種以上の化合物である、請求項1又は2に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- ポリアミンが破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、請求項1〜3のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- ポリアミンによる破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用が、ポリアミンが、Receptor activator of nuclear factor-κB ligand(RANKL)によるNuclear factor-κB(NF-κB)の活性化を抑制することによるものである、請求項4に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- 破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖が関与する疾患が、骨粗鬆症又は関節炎である請求項1〜5のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- 骨量減少の予防及び/又は治療のために用いる、請求項1〜6のいずれか1に記載の予防剤及び/又は治療剤。
- ポリアミンを有効成分とする、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害剤。
- 請求項8に記載の阻害剤を含む、破骨細胞への分化及び/又は破骨細胞の増殖に対する阻害作用を有する、経口投与用製剤。
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