JP2013040411A - マルチレイヤ編地の編成方法とそれに用いる横編機及びヤーンキャリア - Google Patents

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Abstract


【課題】
マルチレイヤ編地を編成する際に、経糸とヤーンキャリアの給糸口との干渉を防止する。
【構成】
横編機の歯口に経糸を供給し、インレイ糸と編糸をヤーンキャリア先端の給糸口から供給し、マルチレイヤ編地を編成する。ヤーンキャリアは給糸口よりも基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出すガイド部材を備え、ガイド部材により経糸を歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へガイドする。
【選択図】 図6

Description

この発明は、マルチレイヤ編地の編成方法とそれに用いる横編機及びヤーンキャリアに関し、特に経糸とヤーンキャリアとの干渉を防止することに関する。
WO97/21860は、横編機により、経糸の層と横糸の層を編糸で結合したマルチレイヤ編地を編成することを開示している。WO97/21860では、経糸は横編機上方の供給手段から横編機の歯口へ供給し、横糸と編糸はヤーンキャリアから歯口に供給する。
発明者はここで、ヤーンキャリアを移動させると、ヤーンキャリア先端の給糸口が経糸と干渉することに着目した。経糸がヤーンキャリア先端の給糸口と干渉すると、経糸が歯口に沿ってシフトし、針床の針と接触しやすくなり、その結果編成が難しくなる。また仮に針と接触しないとしても、経糸の位置がシフトし編地が乱れる。
特表2000-501792A(WO97/21860)
この発明の課題は、経糸とヤーンキャリアとの干渉無しに、マルチレイヤ編地を編成することにある。
この発明の追加の課題は、干渉を防止するためガイド部材で経糸をガイドする際に、経糸が傷つかないようにすることにある。
この発明の追加の課題はまた、ガイド部材に妨げられずに、向かい合うヤーンキャリアがクロスできるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、ヤーンキャリアのガイド部材で反らせた経糸が針と干渉しないようにすることにある。
この発明の追加の課題はまた、ヤーンキャリアのガイド部材で反らせた経糸が他のヤーンキャリアの裏面に回り込まないようにすることにある。
この発明のマルチレイヤ編地の編成方法では、針床先端から針床とは反対側へ続くスペースからなる歯口に供給手段により経糸を供給し、歯口に沿って移動するインレイ糸用のヤーンキャリアの先端の給糸口からインレイ糸を歯口に供給し、歯口に沿って移動する編糸用のヤーンキャリアの先端の給糸口から編糸を歯口に供給し、針床の針により編糸から編目を形成して経糸の層とインレイ糸の層を結合する編成する。この発明では、少なくとも1個のヤーンキャリアが、給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出すガイド部材を備え、歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へ、経糸をガイド部材によりガイドすることを特徴とする。
この発明の横編機は、少なくとも1枚の針床を備えて、針床先端から針床とは反対側へ続くスペースを針床から出没する針により編目を形成する歯口とし、歯口に沿って移動し先端の給糸口から編糸もしくはインレイ糸を歯口に供給する複数のヤーンキャリアと、歯口に経糸を供給する供給手段とを備えた、マルチレイヤ編地を編成自在である。この発明の横編機は、少なくとも1個のヤーンキャリアが、給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出し、かつ歯口を通過する経糸を歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へガイドするガイド部材を備えていることを特徴とする。なおこの発明のヤーンキャリアと横編機は、経糸と編糸のみを供給し、インレイ糸を供給しない編成にも使用できる。その場合はマルチレイヤ編地ではなく、経糸と編糸とからなる編地が得られる。
この発明の横編機用のヤーンキャリアは、先端の給糸口から横編機の歯口に編糸もしくはインレイ糸(横糸)を供給するヤーンキャリアである。この発明のヤーンキャリアは、給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出し、かつ歯口を通過する経糸を歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へガイドするガイド部材を備えていることを特徴とする。
この発明では、ヤーンキャリアのガイド部材により経糸を歯口の反対側へ反らせるので、ヤーンキャリア先端の給糸口が経糸と干渉しない。従ってマルチレイヤ編地の編成が容易になる。ガイド部材は好ましくは各ヤーンキャリアに設けるか、歯口の左右方向一方のヤーンキャリアにのみ設け他方のヤーンキャリアには設けない。
好ましくは、鉛直面内で揺動自在に横編機に支持され、かつ経糸を通すパイプを設けて、ガイド部材によりヤーンキャリアを避ける方向へパイプを揺動させる。このようにすると経糸を傷つけずに反らせることができる。
より好ましくは、パイプが鉛直下向きとなるように、パイプを付勢する部材を設ける。このようにすると、ヤーンキャリアが通過し終わると、パイプは鉛直下向きに自動的に復帰する。
好ましくは、横編機の側面視で、歯口の左右双方にヤーンキャリアを配置し、左右のヤーンキャリアでガイド部材の高さを異ならせる。このようにすると向き合ったヤーンキャリア間でガイド部材が干渉しないので、これらのヤーンキャリアがクロスするように移動させることができる。従って、例えばインレイ糸供給用のヤーンキャリアを先行、編糸供給用のヤーンキャリアを後行として、ヤーンキャリアを移動させることができ、編成効率を向上させることができる。仮にガイド部材が互いに干渉すると、インレイ糸供給用のヤーンキャリアを先行、編糸供給用のヤーンキャリアを後行として1コース編成した後、次のコースでは編糸供給用のヤーンキャリアが先行、インレイ糸供給用のヤーンキャリアが後行となる。また引き返し編みを行うためには、インレイ糸供給用のヤーンキャリアとクロスするように、編糸供給用のヤーンキャリアを移動させることが必要になる。このためインレイ糸用と編糸用のヤーンキャリアをクロスできると、引き返しにより立体的な編地を編成することが容易になる。
インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアとが、歯口の左右に互いに向き合うように配置され、インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアの一方にのみ前記ガイド部材が設けられ、ガイド部材が設けられたヤーンキャリアの側へ歯口の中心から偏らせて経糸を供給するように前記供給手段が構成されている。経糸を歯口の中心から左右一方に偏らせて供給すると、左右方向反対側のヤーンキャリアと経糸の干渉を解消でき、左右方向反対側のヤーンキャリアにはガイド部材を設ける必要がない。経糸をパイプを通して供給し、左右双方のヤーンキャリアにガイド部材を設けると、ヤーンキャリアが互いにクロスすることが難しい。そこで上記の構成は、経糸をパイプを通して供給する際に特に有効である。
好ましくは、ガイド部材は、中央に歯口の長手方向と平行な直線部を備え、直線部の左右両側に経糸を前記直線部へガイドするガイド部を備えている。なお直線部はインレイ糸用のヤーンキャリアには不要で、インレイ糸用のヤーンキャリアではガイド部を直線部を欠く弧状等の形状としても良い。直線部がないと、ガイド部材の中心部で、経糸は歯口の長手方向に水平面内で直角な方向、即ち針の出没方向のみでなく、歯口の長手方向にも傾斜する。ヤーンキャリアから編糸を供給すると、ヤーンキャリアの進行方向の直後方で針床の針により、編糸を捕捉して編目を形成する。ここで経糸が歯口の長手方向に傾斜すると、針が経糸と衝突する、あるいは針が経糸を捕捉するなどのトラブルが生じる。これに対して編糸供給用のヤーンキャリアのガイド部材の端面中央部に直線部を設けると、ガイドされる経糸は歯口の長手方向に沿って傾斜しない。従って上記のトラブルを解消できる。
また好ましくは、ガイド部は、ヤーンキャリアよりも歯口から離れた位置から経糸のガイドを開始する形状をしている。歯口から離れたとは、直線状の歯口に対し、ガイド部材の高さの位置で、平面視においてヤーンキャリアよりも歯口から離れた箇所からガイド部が始まることを意味する。針床を前後一対以上設ける場合、針床間のスペースの中心が歯口中心線で、歯口中心線に対してヤーンキャリアよりも離れた位置から、ガイドを開始する。このためにはガイド部材の左右に、ヤーンキャリアの裏面よりも歯口から遠い位置まで伸びる後退部を設けると良い。このようにすると、他のヤーンキャリアにより反らされた経糸がヤーンキャリアの裏面へ回り込むことがない。
マルチレイヤ編地の編成原理を示す図 経糸挿入用の治具を示す図 マルチレイヤ編地の編組織を示す図 編糸を平編みする編成組織を示す図 編糸をリブ編みする編成組織を示す図 横編機の歯口付近を示す側面図 横編機の歯口付近を示す平面図 実施例のヤーンキャリアの正面図 実施例で編成した編地の写真 変形例での横編機の歯口付近を示す側面図 変形例の横編機のパイプを揺動させた状態を示す要部側面図 変形例の横編機での、パイプガイドの分解状態を示す図 変形例のヤーンキャリアの正面図 第2の変形例での横編機の歯口付近を示す側面図
以下に、発明を実施するための最適実施例を示す。この発明の範囲は、特許請求の範囲の記載に、周知技術による変更の可能性を加味して解釈されるべきである。
図1〜図9に、実施例を示す。図において、2は横編機で、例えば前針床Fと後針床Rとを備えるが、前針床Fのみでもよく、あるいは前後上下に4枚など針床をより多数備えても良い。前後の針床F,R間の歯口3には経糸4が上下方向に通され、インレイ糸(横糸)6がヤーンキャリア10で供給され、編糸8がヤーンキャリア12で供給される。歯口3は針床先端から針床とは反対側へ続くスペースで、ここでは平面視で針床F,R間のスペースである。歯口は、針床F,Rの針の出没方向に対し水平面内で直角に延び、針床F,Rの長手方向に平行である。歯口の中心という場合、針の出没方向に関する歯口の中心を言う。また歯口中心線は針床F,R間のスペースの中心にあり、針床F,Rの長手方向に平行な線である。歯口に関して左右とは、歯口の中心と針床F,Rを結ぶ向きを言う。経糸4は例えばカーボンファイバー,ガラスファイバー,アラミドファイバーなどから成り、特に強度が高く曲げが困難なカーボンファイバーが好ましい。インレイ糸6はガラスファイバーあるいはアラミドファイバーなどから成り、特に屈折が容易なアラミドファイバーが好ましい。ヤーンキャリア10はインレイ糸6を供給するが、針床F,Rの針はインレイ糸6に対しては編成動作を行わず、図示しないプレッサによりインレイ糸6が歯口から浮き上がらないように押さえ付ける。編糸8はヤーンキャリア12から供給され、針床F,Rの針による編成動作を受けて、編目(ニードルループ)と渡り糸(シンカーループ)とになり、経糸4とインレイ糸6を互いに結びつける。
図2は経糸4を供給するための治具14を示し、治具14は歯口3の上部で横編機2に固定されている。治具14には例えば多数の孔15があり、この孔15を経糸4が上から下へと通過して歯口3へ供給される。実施例では強化ファイバーとして経糸4とインレイ糸6とを供給するが、これ以外に斜めに強化ファイバーを供給することもでき、その場合、例えば治具14から編地の斜め上から針床F,Rへ供給する。あるいは針床F,R間の目移しと針床のラッキングとにより、編地を針床F,Rの長手方向に沿って移動させても、斜めに強化ファイバーを通すことができる。複数本の平行な経糸4は経糸の層を成し、複数本の平行なインレイ糸6はインレイ糸の層を成し、斜めに糸を供給する場合、これらに斜めの糸の層が加わる。斜めの糸は、例えば水平方向から45°傾いた方向と135°傾いた方向の2方向に配置する。
図3にマルチレイヤ編地の構造を示し、図の上から下への順に経糸4の層とインレイ糸6の層と編目16の層とがあり、経糸4の層は歯口の中心付近にあり、歯口の中心から一方に寄った位置にインレイ糸6の層があり、編目16の層はインレイ糸6の層よりも歯口の中心から外れた側にある。編目16,16間の渡り糸18は経糸4とインレイ糸6を編目16に結び付け、編目16と渡り糸18とで経糸4の層とインレイ糸6の層を結合する。17は1コース前の編目で、編目16をインレイ糸6の図3での下側に固定する。図3の構造の編地から経糸4を除くと、一種のインレイ編地となる。なお通常のインレイ編地では、図3の経糸4の位置でも編糸により編目を形成してリブ編地とする。
図3の編地を編成するには、例えば歯口の中心を通るように経糸4を治具14から供給し、インレイ糸6の供給用のヤーンキャリアを先行して歯口に沿って移動させ、インレイ糸6を供給する。次いで、経糸4から見てインレイ糸6の反対側(図3の上側)に沿って、歯口に平行に編糸の供給用のヤーンキャリアを移動させ、針床の針で編目16を形成する。以上のようにインレイ糸供給用のヤーンキャリア10が先行し、編糸供給用のヤーンキャリア12が後行する。キャリッジの1コースの間に、インレイ糸6を供給し、編目16を編成して、経糸4とインレイ糸6とを編み込むことができる。従って効率的に編成できる。またインレイ糸供給用のヤーンキャリア10と編糸供給用のヤーンキャリア12は、歯口中心線の左右に、横編機の側面視で互いに向き合うように配置する。例えば針床の針を選択し、経糸4の正面にある針は動作させず、経糸4と経糸4の間の針を動作させて、編目16を形成する。なお針の配置間隔が広い場合、経糸4を針と針の間に配置して、全ての針を動作させることもできる。
図4,図5にマルチレイヤ編地の組織を示す。図4では、経糸4の層の前針床F側にインレイ糸6の層が有り、さらに前針床F側に編目16の層がある。そして渡り糸18が経糸4の後側を通ることにより、経糸4の層とインレイ糸6の層を編目16の層に結合する。図4では、例えば前針床Fの針のみでマルチレイヤ編地を編成でき、編目16の編組織は平編である。
図5では、リブ編地を用いてマルチレイヤ編地を編成する。前針床Fと後針床Rとの間に経糸4の層があり、その両側に一対のインレイ糸6,7を配置する。また編糸として一対の編糸8,9を用い、これらをリブ編成する。各編糸8,9により、前針床F側と後針床R側とに編目16を形成し、この間の渡り糸18,19により、経糸4とインレイ糸6,7を編目16の層に結合する。
実施例では、歯口3の付近で経糸4がヤーンキャリア10,12先端のチップ24に設けた給糸口25と干渉する恐れがある。即ち、歯口3を上下に通過する経糸4が、ヤーンキャリア10,12、特にヤーンキャリア10,12の先端のチップ24と、給糸口25の付近で接触して運ばれ、あるいは歯口3を通過する位置がシフトする恐れがある。経糸4の位置がシフトすると、針床から進出する針と衝突し、あるいは針に捕捉される可能性があり、また仮に針と接触しないにしても、編地が乱れる可能性がある。経糸4がヤーンキャリア10,12先端の給糸口25と干渉することを防止するための機構を、図6〜図8に示す。
図6〜図8に示すように、ヤーンキャリア10,12にプレート状のガイド部材26を設けて、経糸4をガイドする。図6に示すように、針20,21は針床F,Rから出没し、ヤーンキャリア12から供給する編糸8により編目を形成する。またヤーンキャリア10,12は先端にチップ24を備え(図8)、チップ24の給糸口25を通って、インレイ糸6と編糸8が供給される。ガイド部材26はヤーンキャリア10,12に板状の取付部34でボルト36とナット38等により固着され、固着の手段は任意である。ガイド部材26はヤーンキャリア10,12から歯口3の中央方向へ突き出した突出部28を備え、経糸4と接触すると突出部28の端面に沿って経糸4を反らせる。この結果、経糸4をチップ24の給糸口25等と干渉させずに、ヤーンキャリア10,12が通過できる。
図7に示すように、突出部28の中央に歯口に平行な直線状の端部からなる直線部30があり、その左右に直線部30へと経糸をガイドするガイド部31がある。針20,21の操作用の図示しないキャリッジ等により、針が針床F,Rから進出する区間の長さに対して、直線部30の長さwは最大で2倍程度とし、より短くても良い。この長さは歯口に沿った長さで、針の配列ピッチと、キャリッジが同時に針床F,Rから進出させる針の本数の積で定まる。また左右のガイド部31,31の部分で突出部28に連続して後退部32,32を設け、後退部32はヤーンキャリア10,12の裏面(歯口と反対側の面)よりも、歯口から遠ざかっている。なおインレイ糸6用のヤーンキャリア10では、直線部30を設けなくても良い。
図6に戻り、歯口の左右に配置された向かい合うヤーンキャリア10,12で、ガイド部材26の取り付け高さを異ならせる。なおヤーンキャリア10,12は経糸4の列(歯口中心線)の左右に例えば数本ずつ設けることができ、経糸4の列から見て同じ側にあるヤーンキャリアはガイド部材26の高さを共通にしても異ならせても良い。
図8に示すように、ヤーンキャリア10,12の上部(基部)には連行部40があり、例えば図示しないヤーンキャリアレールに沿って、歯付ベルト41と従動ローラ42で、ヤーンキャリア10,12を移動させる。ヤーンキャリア10,12は、針の操作用のキャリッジと共に移動する部材から出没するピンなどで連行しても良い。
ガイド部材26の作用を示す。図7に示すように、ヤーンキャリア10,12が移動すると、経糸4はガイド部31に接触して、ヤーンキャリアから見て歯口中心線39の反対側へ反るようにガイドされ、直線部30を介して、次のガイド部31へとガイドされる。このため図6に示すように、チップ24と経糸4との接触を防止できる。
ガイド部材26で経糸4をガイドする際に、直線部30以外の箇所では、経糸4が歯口の長手方向にもシフトする。経糸4が歯口の長手方向にシフトすると、針床F,Rから進出する針と干渉するおそれがある。ここで直線部30では、経糸4は歯口の長手方向にシフトしないので、針と干渉しない。なお一般に、針は、ヤーンキャリア12の運動方向中心からその直後の範囲から、数本程度が進出する。この区間を図7に模式的に半円で示す。そこで直線部30の長さがこの区間の長さの2倍以上あれば、歯口の長手方向に傾斜した経糸4と針が接触するおそれはない。また針の先端が歯口中心線39付近まで進出しないと、針は経糸4と接触しないので、直線部30の長さはより短くてもよい。なおインレイ用のヤーンキャリア10の下部で針が進出することはないので、直線部30は編糸用のヤーンキャリア12にのみ設ければよい。
経糸4が直線部30でガイドされている際に、ヤーンキャリア10,12が向かい合うヤーンキャリア12,10とクロスすると、経糸4が向かい合うヤーンキャリア12,10の裏面へ運ばれるおそれがある。そこで左右の後退部32,32を設け、ヤーンキャリア12,10の裏面よりも歯口中心線39から離れた位置から、経糸4の直線部30へのガイドが始まるようにすると、経糸4がヤーンキャリア12,10の裏面へ運ばれることがない。
向かい合うヤーンキャリア10,12がクロスする際に、ガイド部26が衝突しないようにする必要がある。そこでガイド部26を高さを変えて、向かい合うヤーンキャリア10,12に取り付ける。
ガイド部材26を設ける代わりに、歯口3の幅を大きくし、ヤーンキャリア10,12の先端に取り付けたチップ24の付近で、経糸4がチップ24と接触しないようにすることも、発明者は検討した。ただしこのようにすると、大きな編目が形成されるので、編目の層が緩む。従ってガイド部材26により経糸4を歯口の反対側に反らせる。また発明者は、治具14を前針床Fと後針床R間で揺動させることも検討した。例えば、ヤーンキャリア10でインレイ糸6を供給する際には、治具14を後針床R側へ揺動させることにより、経糸14と干渉しないようにし、ヤーンキャリア12で編糸を供給する際には治具14を前針床F側へ揺動させることにより、経糸4と干渉しないようにすることを検討した。しかしこのようにすると、治具14をヤーンキャリア10,12の移動と同期して揺動させる機構が必要になる、また治具14が反対方向に揺動できるように、治具14の付近を通過する時間を、ヤーンキャリア10とヤーンキャリア12とでずらせる必要がある。従って編成効率が低下する。
図9は螺旋状に編成したマルチレイヤ編地を示し、ここでは経糸及びインレイ糸として組紐状の糸を用いているが、これは試作編地だからである。図9でマルチレイヤ編地の前後から延びている組紐状の糸が経糸で、マルチレイヤ編地の横方向に沿って折り返している組み紐状の糸がインレイ糸である。マルチレイヤ編地が螺旋状になっているのは、引き返し編成により、編幅の内側と外側とで編目の数が異なるためで、編幅の内側では編目の数が少なく、外側では多い。このためマルチレイヤ編地は編目の少ない側を内側に、多い側を外側にカールし、図9の形態となる。図9のマルチレイヤ編地は、長い場合は螺旋状となり、短い場合は螺旋の一部の形状となる。
図10〜図14は2種類の変形例を示す。図1〜図8と同じ符号は同じものを表し、特に指摘した点以外は図1〜図8の実施例と同様である。図10〜図13は最初の変形例を示し、48は横編機で、50はインレイ糸用のヤーンキャリア、52は編糸用のヤーンキャリア、56はガイド部材である。経糸4はパイプ60を介して歯口3へ供給され、治具14の下方にパイプガイド61が設けられている。なお治具14とパイプガイド61とは一体でも良い。パイプ60とパイプガイド61の構造を図12に示す。パイプ60は上端に下細りのテーパー部が設けられてパイプガイド61により揺動自在に支持され、揺動自在に支持する手段はテーパー部以外のものでも良い。
パイプガイド61は、例えば角筒状で長手方向が歯口3の長手方向に平行な筒体62を備えている。筒体62の上面には丸孔67が歯口3の長手方向に沿って配列されている。また歯口3の長手方向に水平面内で直角な方向に伸びる長孔66が、筒体62の底面に歯口3の長手方向に沿って配列されている。また筒体62内には、スポンジ状の発泡合成樹脂、ゴム等の弾性体64が配置され、弾性体64には孔69が歯口3の長手方向に沿って配列されている。そしてパイプ60は、丸孔67,孔69,長孔66を通ってパイプガイド61を上下に貫通し、歯口3の長手方向に沿って配列されている。またパイプガイド61は横編機48のキャリアレール(ヤーンキャリア50,52を支持するレール)などに固定されており、治具14と一体としても良い。なお弾性体64に変えて、パイプ60にバネの一端を取り付け、バネの他端を筒体62に固定して、パイプ60が鉛直下向きとなるように付勢しても良い。またパイプガイド61で重要な点は、丸孔67と長孔66とが平面視で重なるように配列され、その間に弾性体64があることである。従って、パイプガイドを丸孔67を設けた板と長孔66を設けた板の、2枚の別々の板などで構成しても良い。
図13は変形例のガイド部材56を示し、長孔66のため、パイプ60は歯口3の長手方向に水平面内で直角な方向にしか揺動しない。このため図7,図8に示す直線部30をガイド部材56に設ける必要がない。他の点では、ガイド部材56はガイド部材26と同様である。
図10に示すように、ガイド部材56と接触していない場合、パイプ60は鉛直である。ガイド部材56と接触すると、図11に示すように、パイプ60は長孔66に沿って揺動し、ガイド部材56がパイプ60に接触する位置を通過すると、弾性体64からの力で鉛直に戻る。変形例では、ガイド部材56が経糸4と接触しないので、経糸を傷つけることがない。
図10〜図13の変形例では、経糸の供給を行う位置では、ヤーンキャリア50,52がクロスできない。この点を改良した変形例を図14に示し、70は編糸用のヤーンキャリアでガイド部材を備えておらず、インレイ糸用のヤーンキャリア50のみがガイド部材56を備えている。CLは歯口3の中心線で、パイプ60とパイプガイド71は左右方向の中心が、歯口3の中心線CLからインレイ糸用のヤーンキャリア50の側へ偏っている。このため編糸用のヤーンキャリア70は、ガイド部材56でガイドされていない状態のパイプ60あるいは経糸4と干渉せず、編糸用のヤーンキャリア70にはガイド部材56を設ける必要がない。従ってインレイ糸用のヤーンキャリア50にのみガイド部材56を設ければ良く、経糸4を供給する位置においても、ヤーンキャリア56,70がクロスできる。なおパイプ60を設ける場合、ヤーンキャリア50,70に共にガイド部材56を設けると、パイプ60が設けられている位置では、ヤーンキャリア50,70が互いにクロスできない。また図14の変形例では、パイプ60が揺動する方向はヤーンキャリア70寄りに限られるので、パイプガイド71では弾性体74をヤーンキャリア74寄りにのみ設け、筒体72の長孔76を、丸孔67の直下からヤーンキャリア70側へ伸びる方向に設ける。
図14の変形例では、パイプガイド71の左右方向の中心を歯口3の中心から偏らせたが、パイプ60がガイド部材56と接触していない状態で歯口3の左右方向の中心から一方へ偏っているようにすればよく、パイプガイド71は必ずしも左右方向の中心から偏っている必要はない。さらに図14の変形例では、インレイ糸用のヤーンキャリア50にガイド部材56を設け、編糸用のヤーンキャリア70にはガイド部材56を設けなかったが、編糸用のヤーンキャリア70にのみガイド部材56を設け、インレイ糸用のヤーンキャリア50にガイド部材56を設けないようにしても良い。図1〜図8の実施例で、ヤーンキャリア10,12の一方にのみガイド部材26を設けるためには、治具14に設けた孔15を歯口3の左右方向の中心から上記の一方の側に偏らせれば良い。経糸4を供給する位置においてもヤーンキャリア56,70がクロスできると、編成効率が増すと共に、引き返し編みが容易になるので立体的な編地の編成がより容易になる。このことは図1〜図8の実施例でも同様である。
実施例では以下の効果が得られる。
1) 経糸4が給糸口25の付近でチップ24と干渉するおそれがない。
2) 向かい合うヤーンキャリア10,12で、ガイド部材26が互いに干渉しない。
3) 直線部30を設けると、針床F,Rから進出した針が経糸4と接触しない。
4) 左右の後退部32,32を設けると、経糸4がヤーンキャリア10,12の裏面へ運ばれることがない。
図10〜図13の変形例ではさらに、
5) ガイド部材56が経糸4と接触しないので経糸4が傷つかない。
なお編糸用のヤーンキャリア12,70とインレイ糸用のヤーンキャリア10,50とがクロスできるようにすると、編成効率が向上すると共に、立体的な編地の編成も容易になる。特に図14の変形例のように、経糸4を歯口3の中心から左右一方に偏らせて供給すると、経糸4を偏らせた側のヤーンキャリア50にのみガイド部材56を設ければよい。
2 横編機
3 歯口
4 経糸
6,7 インレイ糸
8,9 編糸
10,12 ヤーンキャリア
14 治具
15 孔
16,17 編目
18,19 渡り糸
20,21 針
24 チップ
25 給糸口
26 ガイド部材
28 突出部
30 直線部
31 ガイド部
32 後退部
34 取付部
36 ボルト
38 ナット
39 歯口中心線
40 連行部
41 歯付ベルト
42 従動ローラ
48,68 横編機
50,52 ヤーンキャリア
56 ガイド部材
60 パイプ
61,71 パイプガイド
62,72 筒体
64,74 弾性体
66,76 長孔
67 丸孔
69 孔
70 ヤーンキャリア

F 前針床
R 後針床
CL 中心線

Claims (13)

  1. 針床先端から針床とは反対側へ続くスペースからなる歯口に供給手段により経糸を供給し、歯口に沿って移動するインレイ糸用のヤーンキャリアの先端の給糸口からインレイ糸を歯口に供給し、歯口に沿って移動する編糸用のヤーンキャリアの先端の給糸口から編糸を歯口に供給し、針床の針により編糸から編目を形成して経糸の層とインレイ糸の層を結合するマルチレイヤ編地の編成方法において、
    前記給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出すガイド部材を、少なくとも1個のヤーンキャリアが備え、
    歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へ、経糸を前記ガイド部材により直接または間接的にガイドすることを特徴とする、マルチレイヤ編地の編成方法。
  2. 前記経糸を鉛直面内で揺動自在なパイプを介して供給し、
    前記ガイド部材によりヤーンキャリアを避ける方向へパイプを揺動させることを特徴とする、請求項1のマルチレイヤ編地の編成方法。
  3. インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアとが、歯口の左右に互いに向き合うように配置され、インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアの一方にのみ前記ガイド部材が設けられ、
    ガイド部材が設けられたヤーンキャリアの側へ歯口の中心から偏らせて経糸を前記供給手段により供給することにより、ガイド部材が設けられていないヤーンキャリアと経糸との干渉を解消することを特徴とする、請求項1または2のマルチレイヤ編地の編成方法。
  4. 少なくとも1枚の針床を備えて、針床の先端から針床とは反対側へ続くスペースを針床から出没する針により編目を形成する歯口とし、歯口に沿って移動し先端の給糸口から編糸もしくはインレイ糸を歯口に供給する複数のヤーンキャリアと、歯口に経糸を供給する供給手段とを備えた、マルチレイヤ編地を編成自在な横編機において、
    少なくとも1個のヤーンキャリアが、前記給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出し、かつ歯口を通過する経糸を歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へガイドするガイド部材を備えていることを特徴とする、横編機。
  5. 鉛直面内で揺動自在に支持され、かつ前記経糸を通すパイプをさらに備えて、前記ガイド部材によりヤーンキャリアを避ける方向へパイプを揺動させることを特徴とする、請求項4の横編機。
  6. 前記パイプが鉛直下向きとなるように、パイプを付勢する部材をさらに備えていることを特徴とする、請求項5の横編機。
  7. 横編機の側面視で、歯口の左右双方にヤーンキャリアを配置し、左右のヤーンキャリアでガイド部材の高さが異なることを特徴とする、請求項4の横編機。
  8. インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアとが、歯口の左右に互いに向き合うように配置され、インレイ糸用のヤーンキャリアと編糸用のヤーンキャリアの一方にのみ前記ガイド部材が設けられ、ガイド部材が設けられたヤーンキャリアの側へ歯口の中心から偏らせて経糸を供給するように前記供給手段が構成されていることを特徴とする、請求項4〜6のいずれかの横編機。
  9. 前記ガイド部材は、中央に歯口の長手方向と平行な直線部を備え、直線部の左右両側に経糸を前記直線部へガイドするガイド部を備えていることを特徴とする、請求項4,7,8のいずれかの横編機。
  10. 前記ガイド部は、ヤーンキャリアよりも歯口から離れた位置から経糸のガイドを開始する形状をしていることを特徴とする、請求項4、7,9のいずれかの横編機。
  11. 経糸が挿入された横編機の歯口に、先端の給糸口から編糸もしくはインレイ糸を供給するヤーンキャリアにおいて、
    前記給糸口よりもヤーンキャリアの基部寄りに、ヤーンキャリアから歯口側へ突き出し、かつ歯口を通過する経糸を歯口から見てヤーンキャリアとは反対側へガイドするガイド部材を備えていることを特徴とする、横編機用のヤーンキャリア。
  12. 前記ガイド部材は、中央に歯口の長手方向と平行な直線部を備え、直線部の左右両側に経糸を前記直線部へガイドするガイド部を備えていることを特徴とする、請求項11の横編機用のヤーンキャリア。
  13. 前記ガイド部は、ヤーンキャリアよりも歯口から離れた位置から経糸のガイドを開始する形状をしていることを特徴とする、請求項11または12の横編機用のヤーンキャリア。
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