JP2013036541A - 超電導軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、溶融凝固バルク体を用いずに構成された新規な超電導軸受装置の提供を目的とする。また、本発明は、大型化した場合にも容易に製造可能な超電導軸受装置の提供を目的とする。
【解決手段】本発明の超電導軸受装置30は、超電導部と磁石が動径方向に対向しているラジアル型の超電導軸受装置30であって、軸20と、この軸20の周囲に配置される軸受10を備え、軸20の外周部22A、または、軸受10を構成している超電導部が、テープ状の超電導線材の両端部を接合してリング状とされ、且つこのリング径方向に超電導体のc軸が放射状に向いている超電導リングよりなることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、高速回転機器などに用いられる超電導軸受装置に関する。
超電導軸受は、超電導体のピン止め効果を利用し、回転体を非接触で安定に支持できる軸受である。超電導軸受には、超電導体と磁石との位置関係からアキシャル型とラジアル型の2種類が存在する。アキシャル型は図8(a)に示すように、超電導体71と磁石72が軸方向に対向しており、ラジアル型は図8(b)に示すように、超電導体81と磁石82が動径方向に対向している。
超電導軸受には、単結晶状に作製された大型の酸化物系超電導体(通称:溶融凝固バルク体)が用いられる。しかし、単結晶状の酸化物系超電導体には結晶方位による異方性があり、結晶のc軸に平行な方向と、結晶のc軸に垂直な方向、すなわち結晶のa軸とb軸で形成するa−b面内に平行な方向との間で、超電導特性が大きく異なる。そのため、磁石に対して超電導体の結晶方位をどちらに向けるかによって浮上力が大きく異なる。
浮上力を大きくするには、超電導体のc軸を磁石の方に向ける、すなわち超電導体のc軸が磁石の面に垂直になるような結晶配置で用いられるのが一般的である。図8(a)に示すアキシャル型では、磁石72と超電導体71の対向面に垂直な方向にc軸を向ける必要があり、図8(b)に示すラジアル型においては軸受の動径方向にc軸を向ける必要がある。
アキシャル型においては、軸受を構成する超電導体全体のc軸をアキシャル配向させることは可能であるが、軸受のサイズが大きくなると、1つの単結晶で超電導体を作製することが難しくなる。そこで、特許文献1には、内部に複数の単結晶領域を有する超電導体で軸受を構成する技術が開示されている。
ラジアル型においては、ピン止め効果を最大限に活かすために、超電導体のc軸を軸受全周にわたって揃えるようにする必要があるが、軸受全周にわたってc軸をラジアル配向させることは単一の結晶では不可能である。そこで、特許文献2には図9に示すように、複数の単結晶91を接合して超電導軸受90とする技術が開示されている。
特開2009−47314号公報 特開2006−101585号公報
ラジアル型軸受において、溶融凝固バルク体の超電導体を用いた場合は、超電導体のc軸を軸受全周にわたって揃えるためには、特許文献2に記載の技術のように、超電導体を複数個に細分化して、これら複数個の超電導体をc軸の配向を揃えて接合する必要があり、製造に手間がかかるという問題があった。また、このような手法では、大型の軸受を作製することは難しいと考えられる。
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、溶融凝固バルク体を用いずに構成された新規な超電導軸受装置の提供を目的とする。また、本発明は、大型化した場合にも容易に製造可能な超電導軸受装置の提供を目的とする。
上記課題を解決するため、本発明の超電導軸受装置は、超電導部と磁石が動径方向に対向しているラジアル型の超電導軸受装置であって、軸と、この軸の周囲に配置される軸受を備え、軸の外周部、または、軸受を構成している超電導部が、テープ状の超電導線材の両端部を接合してリング状とされ、且つこのリング径方向に超電導体のc軸が放射状に向いている超電導リングよりなることを特徴とする。
本発明の超電導軸受装置は、超電導線材を構成する超電導体のc軸がリング径方向を向くように、該超電導線材の両端部を接合してリング状とされた超電導リングより超電導部を構成している。このような構成の超電導部は、c軸が動径方向に配向した状態を全周にわたって実現できる。
また、本発明の超電導軸受装置が備える超電導部は、使用する超電導線材および超電導リングの寸法および個数を調整することにより、c軸が中心軸から放射状に揃った状態を全周にわたって実現しつつ、多様な寸法とすることができ、大型化も容易となる。
本発明の超電導軸受装置において、前記超電導部が、径の異なる複数の前記超電導リングを同心円状に重ねた多層リング構造であり、且つ各超電導リングの両端部の接合部が多層リング構造の周方向に分散するように配置されていることが好ましい。
この場合、用いる超電導リングの個数を変更することにより、所望の寸法の超電導部を容易にえることができる。また、例えば溶接などにより形成された超電導リングの接合部が常電導である場合に、複数の接合部を多層リング構造の円周方向に均等に分布させることにより、形成される超電導部の超電導体のc軸の分布を全周にわたって均一にすることができる。
本発明の超電導軸受装置は、超電導部と磁石が動径方向に対向しているラジアル型の超電導軸受装置であって、軸と、この軸の周囲に配置される軸受を備え、軸の外周部、または、軸受を構成している超電導部が、テープ状の超電導線材を超電導体のc軸が外側を向くように巻回してコイル状とした超電導リングよりなることを特徴とする。
この場合、簡便に超電導リングを製造できるので、より簡便に製造可能な超電導軸受装置を提供できる。
本発明の超電導軸受装置において、前記超電導線材が、基材と、該基材の上方に設けられた酸化物超電導層と、を備えてなり、前記酸化物超電導層のc軸が前記基材の表面に対して垂直な方向に配向していることも好ましい。
この場合、超電導線材の酸化物超電導層中で磁束ピン止め点が均一に分散されているため、超電導リングおよび超電導体の全周において均一なピン止め力が得られる。これにより、大きな浮上力が得られるため、軸受装置としての安定性が向上する。
本発明の超電導軸受装置において、円柱状の前記軸の下端側外周面に磁石が配置されて、該軸の径方向に磁力線が放射状に出ているラジアル磁界が形成され、前記超電導軸受が前記超電導リングより構成され、リング状の前記超電導軸受の内周面と、前記軸の外周面に配置された磁石とが対向するように、前記超電導軸受の中心部に前記軸が配置され、超電導状態の前記超電導軸受による前記磁石の磁束のピン止め効果により、前記軸が浮上支持可能とされることもできる。
本発明によれば、溶融凝固バルク体を用いずに構成された新規な超電導軸受装置を提供できる。また、本発明の超電導軸受装置は、大型化した場合にも容易に製造可能である。
本発明に係る超電導軸受装置の第1実施形態を示す概略斜視図である。 図1に示す超電導軸受装置の部分断面斜視図である。 図1に示す超電導軸受装置の超電導軸受を模式的に示す上面図である。 図1に示す超電導軸受装置が備える超電導線材の一例構造を示す斜視図である。 図1〜図3に示す超電導軸受の製造工程の一例を示す工程図である。 本発明に係る超電導軸受装置が備える磁石の例を示す斜視図であり、図6(a)は軸の外周部に磁石が設置された例を示し、図6(b)はラジアルリングタイプの磁石の例を示す。 本発明に係る超電導軸受装置が備える超電導線材の他の構造例を示す断面図である。 図8(a)はアキシャル型の超電導軸受を模式的に示す斜視図であり、図8(b)はラジアル型の超電導軸受を模式的に示す斜視図である。 特許文献2に記載の超電導軸受を示す斜視図である。
以下、本発明に係る超電導軸受装置の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る超電導軸受装置の第1実施形態を示す概略斜視図であり、図2は図1に示す超電導軸受装置の部分断面斜視図であり、図3は同超電導軸受装置の超電導軸受を模式的に示す上面図であり、図4は同超電導軸受装置が備える超電導線材の一例構造を示す斜視図である。
図1に示す超電導軸受装置30は、超電導部と永久磁石が動径方向に対向するラジアル型軸受装置であって、軸20と、この軸20の周囲に配置されたドーナツ形状の超電導軸受10より構成されている。円柱状の軸20は、その底部が円盤状に拡径しており、円柱状の軸部21と円盤状の底部22から構成され、底部22の外周部(外周面)22Aには永久磁石Mが固定され、外周部22Aの全周にわたってラジアル型の磁界(軸20の径方向に向かう磁界)が形成されるようになっている。ここで、動径方向とは、軸20あるいは超電導軸受10の径方向を表わす。また、以下の説明において、軸中心から径方向に放射状に広がる磁束線が向いている磁界を「ラジアル磁界」と称することがある。
軸20の外周部22Aに配置される永久磁石Mとしては、軸20の外周面にラジアル磁界を形成できるものであれば特に限定されず、従来公知のラジアル型永久磁石を使用することができる。図1に示す例では、図6(a)に示す如く、上下方向にN極−S極−N極となるように着磁された板状の永久磁石Mが、軸20の外周面22Aに複数個、等間隔に固定されて、軸20の中心側から径方向に放射状に広がるラジアル磁界が形成されている。
なお、図1では超電導軸受10を冷却する冷却系は示されていないが、超電導軸受10は冷却容器に収容されて液体窒素等の冷媒によって臨界温度以下に冷却されるか、あるいは冷凍機からの伝導冷却によって臨界温度以下に冷却される。
超電導軸受10は、図2および図3に示すように、径が異なる複数のリング状の超電導リング5が、同心円状に重ねられて構成されている。各超電導リング5は、テープ状の超電導線材1の長手方向の両端部を溶接などにより形成される接合部1Aで接合し、リング状としたものである。
超電導リング5を構成する超電導線材1は、図4に示すように、テープ状の基材11の上に中間層12と酸化物超電導層13と安定化層14が、この順に積層されて概略構成されている。
超電導線材1に適用できる基材11は、通常の超電導線材の基材として使用でき、高強度であればよく、長尺のプレート状、シート状又はテープ状であることが好ましく、耐熱性の金属からなるものが好ましい。例えば、ハステロイB、C、G、N、W(米国ヘインズ社製商品名)などのニッケル合金等の各種金属材料、もしくはこれらの各種金属材料上にセラミックスを配したもの、またはニッケル合金に集合組織を導入した配向Ni−W基板のような配向金属基材等が挙げられる。
基材11の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良く、通常は10〜500μmの範囲である。
中間層12は、単層構造あるいは複層構造のいずれでもよく、その上に積層される酸化物超電導層13の結晶配向性を制御するために2軸配向する物質から選択される。中間層12の好ましい材質として具体的には、GdZr、MgO、ZrO−Y(YSZ)、SrTiO、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd等の金属酸化物を例示できる。
中間層12は、基材11側にベッド層が介在された複数層構造でもよい。ベッド層は、耐熱性が高く、界面反応性を低減するためのものであり、必要に応じて配され、例えば、Y、Si、Al等から構成される。このベッド層の厚さは例えば10〜200nmである。
さらに、本発明において、中間層12は、基材11側に拡散防止層とベッド層が積層された複数層構造でもよい。この場合、基材11とベッド層との間に拡散防止層が介在された構造となる。拡散防止層は、Si、Al、あるいは希土類金属酸化物等から構成され、その厚さは例えば10〜400nmである。
また中間層12は、前記金属酸化物層の上に、さらにキャップ層が積層された複数層構造でも良い。キャップ層は、中間層12よりも高い面内配向度が得られ、好ましい材質として具体的には、CeO、Y、Al、Gd、Zr、Ho、Nd、HfO等が例示できる。キャップ層は、PLD法(パルスレーザ蒸着法)、スパッタリング法等で成膜することができるが、大きな成膜速度を得られる点でPLD法を用いることが好ましい。
中間層12の厚さは、目的に応じて適宜調整すれば良いが、通常は、0.1〜5μmである。
中間層12が、前記金属酸化物層の上にキャップ層が積層された複数層構造である場合には、キャップ層の厚さは、通常は、0.1〜1.5μmである。
中間層12は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法(以下、IBAD法と略記する)等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法);溶射等、酸化物薄膜を形成する公知の方法で積層できる。特に、IBAD法で形成された前記金属酸化物層は、結晶配向性が高く、酸化物超電導層13やキャップ層の結晶配向性を制御する効果が高い点で好ましい。
酸化物超電導層13は通常知られている組成の酸化物超電導体からなるものを広く適用することができ、REBaCu(REはY、La、Nd、Sm、Er、Gd等の希土類元素を表す)なる材質のもの、具体的には、Y123(YBaCu)又はGd123(GdBaCu)を例示することができる。また、その他の酸化物超電導体、例えば、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高い他の酸化物超電導体からなるものを用いても良いのは勿論である。
酸化物超電導層13は、スパッタ法、真空蒸着法、レーザ蒸着法、電子ビーム蒸着法等の物理的蒸着法;化学気相成長法(CVD法);塗布熱分解法(MOD法)等で積層でき、なかでもレーザ蒸着法が好ましい。
酸化物超電導層13の厚みは、0.5〜5μm程度であって、均一な厚みであることが好ましい。また、酸化物超電導層13の結晶のc軸とa軸とb軸は、その下の中間層12(キャップ層を備える場合はキャップ層)の結晶に整合するようにエピタキシャル成長して結晶化しており、a軸およびb軸が基材11の上面(成膜面)に平行な方向に配向し、c軸が基材11の上面に対して垂直方向を向いて配向し、結晶配向性が優れたものとなっている。
酸化物超電導層13の上に積層される安定化層14は、酸化物超電導層13の一部領域が常電導状態に遷移しようとした場合に、電流のバイパス路として機能することで、酸化物超電導層13を安定化させて焼損に至らないようにする、主たる構成要素である。
安定化層14は、導電性が良好な金属からなるものが好ましく、具体的には、銀又は銀合金、銅などからなるものが例示できる。安定化層14は1層構造でも良いし、2層以上の積層構造であってもよい。
安定化層14は、公知の方法で積層できる。安定化層14が1層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成する方法が挙げられる。また、安定化層14が2層構造の場合は、銀層をメッキやスパッタ法で形成し、その上に銅テープなどを貼り合わせるなどの方法を採用できる。安定化層14の厚さは、3〜300μmの範囲とすることができる。
次に、本実施形態の超電導軸受装置30が備える超電導軸受10の製造方法の一実施形態について説明する。
図5は、図1〜図3に示す超電導軸受10の製造工程の一例を示す工程図である。
超電導軸受10を製造するには、まず、図5(a)に示す如く、前述したテープ状の超電導線材1を準備する。一例として、基材11上にスパッタ法で拡散防止層とベッド層を形成した後、このベッド層の上にIBAD法によりMgO等の金属酸化物層を形成し、さらにPLD法でキャップ層を形成することにより基材11上に複数層構造の中間層12を形成する。次いで、中間層12の上にPLD法により酸化物超電導層13を形成した後、酸化物超電導層13の上にスパッタ法によりAgの安定化層14を形成することにより超電導線材1を得ることができる。なお、安定化層14はスパッタ法によりAg層を形成した後に、Ag層上にCuの金属テープを半田を介して積層して形成してもよい。このような工程で得られた超電導線材1は、酸化物超電導層13のa軸およびb軸が基材11の上面(成膜面)に平行な方向に配向し、c軸が基材11の上面に対して垂直方向を向いて配向している。
次に、図5(b)に示す如く、テープ状の超電導線材1の長手方向の両端部である一端部1Pと他端部1Qとを接合して接合部1Aを形成し、リング状の超電導リング5を作製する。ここで、超電導線材1の両端部1P、1Qの接合方法は、両端部1P、1Qを機械的に接合できる方法であれば特に限定されず、例えば、溶接、接着剤による接合、半田付け、接着剤付き樹脂テープによる接合、銅などの導電性材料製の接続板を半田付けして量端部を接合する方法などが挙げられる。超電導線材1の両端部1P、1Qの接合は、両端部1P、1Qを重ね合わせて前記方法で接合してもよく、両端部1P、1Qの端部側の所定長さの中間層12、酸化物超電導層13および安定化層14を削除して基材11を露出させ、両端部1P、1Qで露出した基材11同士を前記方法で接合してもよい。
超電導リング5を作製する際、超電導線材1はその安定化層14側を外側にしてリング状にしてもよく、その基材11側を外側にしてリング状としてもよい。超電導線材1の酸化物超電導層13は基材11表面に対して垂直な方向にc軸が配向しているため、基材11側と安定化層14側のどちらを外側にして超電導線材1をリング状にした場合であっても、製造される超電導リング5は、超電導体のc軸が全周にわたってリング中心から外周方向に向かって放射状に配向した状態となる。
次に、長さの異なる複数の超電導線材1を準備し、上記と同様の手順で両端部を接合して直径の異なる複数の超電導リング5を作製する。次いで、作製した直径の異なる複数の超電導リング5を同心円状の重ねて、図5(c)に示すような多重リング構造とする。ここで、複数の超電導リング5は、各超電導リング5の接合部1Aが、円周方向に均等に分布するように配置する。溶接などにより形成された接合部1Aは常電導である場合が多いため、複数の接合部1Aを円周方向に均等に分布させることにより、形成される超電導軸受10の超電導体のc軸の分布を全周にわたって均一にすることができる。
また、簡易的に1本の長尺の超電導線材1を超電導体のc軸が外側に向くように巻回してコイル状としたパンケーキコイルを超電導リング5とし、超電導軸受とすることも可能である。その場合、簡便に超電導リング5を製造できるので、より簡便に製造可能な超電導軸受装置30を提供できる。しかし、1本の超電導線材1を巻回して超電導リング5が形成された場合、その超電導体の配向性がドーナツ状(コイル状)の超電導軸受全周にわたって均一とはならない。そのため、上述の如く複数の超電導リング5を同心円状に重ねて超電導軸受10とすることが好ましい。
図5(c)に示すように重ねて配置された複数の超電導リング5は、エポキシ樹脂などの樹脂に含浸した後に樹脂を硬化させる、粘着剤付きの樹脂テープを外周に巻き付ける、などの方法により固定する。なお、図3および図5では、各超電導リング5間に超電導線材1の厚みと同程度の隙間がある例を示しているが、これは図面を見やすくするために描画したものであり、図2のように隙間なく、或いは隙間が小さくなるように超電導リング5を配置して固定することが好ましい。
以上の工程により複数の超電導リング5から構成されるドーナツ状の超電導軸受10を製造できる。
超電導軸受10の寸法は特に制限されず、適宜調整可能である。所望の超電導軸受10の寸法に合わせて、超電導軸受10の作製に使用する超電導リング5の寸法、個数を適宜変更すればよい。超電導軸受10を大型化する場合には、図5(c)に示すように複数の超電導リング5を同心円状に重ね合わせたリング部材を更に複数個作製し、得られた複数のリング部材を同軸的に積層して超電導軸受10の高さを調整してもよい。
本実施形態の超電導軸受装置30が備える軸20は、回転駆動可能であることが好ましく、材質および寸法は特に制限されず適宜調整可能である。場合によっては、軸20の底部22を拡径せずに、円柱状の軸部21の長さ方向の一部、その外周部一周にわたって永久磁石を固定してもよい。
軸20の外周部22Aに永久磁石を配置する例としては、例えば、図6(a)に示すように、上下方向にN極−S極−N極となるように着磁された板状の磁石Mを軸20の外周部22Aに一定間隔ごとに固定する方法や、図6(b)に示すラジアル型のリング状磁石M2(図6(b)の矢印は磁界の方向を示す)を軸20の外周部に固定する方法などが挙げられる。
本実施形態の超電導軸受装置30が備える超電導軸受10は、図4に示すようなテープ状の超電導線材1より形成されている。この例の超電導線材1は、通常、酸化物超電導層13の厚さは数μm、超電導線材1全体の厚さは数十〜数百μm程度と薄い。そのため、この薄い超電導線材1を丸めてリング形状とすることは容易であり、且つ酸化物超電導層13は基材11表面に対して垂直な方向にc軸が向いた配向を保ったままリング状の超電導リング5となる。したがって、超電導リング5並びにこの超電導リング5を同心円状に複数重ねて形成される超電導軸受10は、超電導体のc軸が動径方向(超電導軸受10の中心から外周側に向かう方向)に配向した状態を全周にわたって実現できる。
また、上記構造の超電導軸受10は使用する超電導線材1および超電導リング5の寸法および個数を調整することにより、c軸が中心軸から放射状に揃った状態を全周にわたって実現しつつ、多様な寸法とすることができ、大型化も容易となる。
さらに、図4に示す超電導線材1は、酸化物超電導層13において磁束ピン止め点が均一に分散されているため、超電導リング5および超電導軸受10の全周において均一なピン止め力が得られる。これにより、大きな浮上力が得られるため、軸受としての安定性が向上する。
上述の様に構成される本実施形態の超電導軸受装置30は、液体窒素などの冷媒あるいは冷凍機により冷却されて超電導状態とされた超電導軸受10と、軸20の外周部22Aに配置された永久磁石Mとの間に働く磁束ピン止め効果により、永久磁石M並びに軸20が、超電導軸受10の内側に非接触状態で保持される。
即ち、軸20の外周に固定された永久磁石Mの磁界の向きと、超電導軸受10の超電導体のc軸の配向が、共にラジアル方向であることにより、永久磁石M(軸20の外周部22A)と超電導軸受10の内周面とが近づく部分で反発力が生じ、遠ざかる部分で吸引力が生じる。この結果、軸20はドーナツ状の超電導軸受10と同心に保持される。
このような構成の本実施形態の超電導軸受装置30において、軸20を回転駆動しつつ超電導軸受10を超電導体の臨界電流温度以下に冷却するならば、軸20を浮上状態のまま回転自在に支持することができる。
以上、本発明の超電導軸受装置について説明したが、上記実施形態において、超電導軸受装置を構成する各部一例であって、本発明の範囲を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、上記実施形態では、軸20の外周部22Aに永久磁石Mが設置され、軸受10が超電導体である場合を例示したが、本発明はこの例に限定されない。上記実施形態で超電導軸受10としたドーナツ状の超電導部の穴に軸20を通して、軸20の外周に超電導体を設置し、更にこの超電導部の外周側に図6(b)に示すようなラジアル型リング磁石を軸受として配置してもよい。
また、上記実施形態では、図4に示すようにテープ状の基材11上に中間層12などを介して酸化物超電導層13が積層された構成の超電導線材1を使用して超電導リング5および超電導軸受10とする例を示したが、本発明の超電導軸受装置30はこの例に限定されない。図7に示す超電導線材100のように、BiSrCan−1Cu4+2n+δなる組成等に代表される臨界温度の高いBi系の酸化物超電導層101を銀または銀合金のシース材102で被覆したテープ状の線材を使用することもできる。この場合、超電導線材100を構成する超電導体のc軸がリング径方向に向くように超電導線材100の両端部を接合して超電導リングを形成すればよい。なお、この例の超電導線材100は、酸化物超電導層101の原料粉末が充填された銀または銀合金製のパイプを伸線して多芯化し、さらに伸線、圧延および焼成を繰り返すPIT法(Powder In Tube法)などにより製造される。
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
幅10mm、厚さ0.1mmのテープ状のハステロイ(米国ヘインズ社製商品名)製の基板上に、スパッタ法によりAl(拡散防止層;膜厚100nm)を成膜した上に、イオンビームスパッタ法によりY(ベッド層;膜厚30nm)を成膜した。次いで、このベッド層上に、イオンビームアシスト蒸着法(IBAD法)によりMgO(中間層;膜厚10nm)を形成した上に、パルスレーザー蒸着法(PLD法)により500nm厚のCeO(キャップ層)を成膜した。次いでCeO層上にPLD法により2.0μm厚のGdBaCu(酸化物超電導層)を形成し、さらに酸化物超電導層上にスパッタ法により8μm厚の銀層の安定化層を形成することにより超電導線材を作製した。
得られた超電導線材の長手方向の両端部を溶接して、図5(b)に示す形状の超電導リングを作製した。
超電導線材の長さを変更したこと以外は上記と同様の手順で、直径の異なる複数の超電導リングを作製した。次に、これらの超電導リングを図5(c)に示すように同心状(動径方向)に180層重ねて、エポキシ樹脂を用いて真空加熱含浸することで、内径60mm、外径80mmの超電導リング状部材を作製した。
さらに、同様の手順で同サイズの超電導リング状部材を作製し、得られた計3個の超電導リング状部材を同軸的に重ねてエポキシ系接着剤で常温硬化して固定することにより、超電導部を作製した。
また、回転軸としては、図1に示す形状の軸(材質;ステンレス、軸部直径;20mm、外径(底部直径):50mm)の軸の底部外周面に、図6に示すように幅10mm×長さ10mm×厚さ2mmの永久磁石を3個、等間隔に固定したものを用いた。
この回転軸を、図1に示すように、上記で作製した超電導部の中心に配置した後、超電導軸部を液体窒素で冷却することで、超電導部に磁束をピン止めさせて超電導軸受とした。本実施例の回転軸の浮上力は150Nであった。
本発明は、高速回転機器、磁気浮上装置などに用いられる超電導軸受装置に利用することができる。
1…超電導線材、1A…接合部、5…超電導リング、10…超電導軸受、11…基材、12…中間層、13…酸化物超電導層、14…安定化層、20…軸、21…軸部、22…底部、22A…外周部、M、M1…永久磁石、100…超電導線材、101…酸化物超電導層、102…シース材。

Claims (5)

  1. 超電導部と磁石が動径方向に対向しているラジアル型の超電導軸受装置であって、
    軸と、この軸の周囲に配置される軸受を備え、
    軸の外周部、または、軸受を構成している超電導部が、テープ状の超電導線材の両端部を接合してリング状とされ、且つこのリング径方向に超電導体のc軸が放射状に向いている超電導リングよりなることを特徴とする超電導軸受装置。
  2. 前記超電導部が、径の異なる複数の前記超電導リングを同心円状に重ねた多層リング構造であり、且つ各超電導リングの両端部の接合部が多層リング構造の周方向に分散するように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の超電導軸受装置。
  3. 超電導部と磁石が動径方向に対向しているラジアル型の超電導軸受装置であって、
    軸と、この軸の周囲に配置される軸受を備え、
    軸の外周部、または、軸受を構成している超電導部が、テープ状の超電導線材を超電導体のc軸が外側を向くように巻回してコイル状とした超電導リングよりなることを特徴とする超電導軸受装置。
  4. 前記超電導線材が、基材と、該基材の上方に設けられた酸化物超電導層と、を備えてなり、前記酸化物超電導層のc軸が前記基材の表面に対して垂直な方向に配向していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の超電導軸受装置。
  5. 円柱状の前記軸の下端側外周面に磁石が配置されて、該軸の径方向に磁力線が放射状に出ているラジアル磁界が形成され、
    前記超電導軸受が前記超電導リングより構成され、
    リング状の前記超電導軸受の内周面と、前記軸の外周面に配置された磁石とが対向するように、前記超電導軸受の中心部に前記軸が配置され、
    超電導状態の前記超電導軸受による前記磁石の磁束のピン止め効果により、前記軸が浮上支持可能とされることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の超電導軸受装置。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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