以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
本発明の積層体は、少なくともヒートシール層を含み、消臭性能を有する。図1は、本発明の積層体10の一好適な実施の形態の概略断面図であり、図示例においては、外層から内層に向って、ガスバリア層1、ラミネート用接着剤層2a、基材樹脂層3、ラミネート用接着剤層2b、およびヒートシール層4が順次積層されている。
本発明においては、ヒートシール層4が、メソポーラスシリカからなる消臭剤を0.01〜50質量%、好適には0.5〜35質量%含有する樹脂からなることが肝要である。ヒートシール層4にかかる消臭剤を含有させることにより、飲食品等から発生する臭味を除去することが可能となるが、この含有量が0.01質量%未満であると充分な消臭性能を得ることができない。一方、50質量%を超えると、消臭性能に大きな差がみられないばかりか、製膜適性が悪化してしまう。なお、本発明の積層体10は、ヒートシール層4の表面に消臭物質をコーティングするものではないため、シール性は十分に確保することができる。
以下、本発明に係るメソポーラスシリカについて説明する。
本発明に用いることができるメソポーラスシリカとは、直径が1.3〜50nmの細孔を有する多孔性シリカである。一般に、多孔体は、細孔に他の分子を吸着し、クラッキングやハイドロクラッキングを行うことができ、脱臭用吸着剤、触媒、酵素用担体、香料・生理活性物質の担体等に用いることができる。特に、細孔の直径が1.3〜50nmであれば、従来のゼオライトに比べて細孔の直径が大きく、ゼオライトでは吸着できなかった大分子も吸着することができる。
直径が1.3〜50nmの細孔を有するメソポーラスシリカとしては、例えば、細孔の直径が1.3〜50nmの蜂の巣状のシリカからなるハニカム状メソポーラスシリカ多孔体等を好適に用いることができる。なお、この場合、細孔の垂直断面の最大寸法を細孔の寸法とし、例えば六方構造の場合には、対向する二つの面の間隔が細孔の最大寸法となる。
本発明においては、直径が1.3〜50nmの細孔を有するものを広く用いることができ、その比表面積は、300〜1300m2/gのものを好適に用いることができる。被表面積がこの範囲であれば、ヒートシール層4の臭気の除去性に優れるからである。
本発明に係るメソポーラスシリカとしては、例えば、界面活性剤のミセルを鋳型として合成される直径が1.3〜50nmの細孔を有するハニカム状メソポーラスシリカ多孔体を好適に用いることができる。例えば、水酸化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルホスホニウム、塩化オクタデシルトリメチルホスホニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ミリスチルトリメチルアンモニウム、水酸化デシルトリメチルアンモニウム、水酸化ドデシルトリメチルアンモニウムおよび水酸化ジメチルジドデシルアンモニウム等の界面活性剤溶液に極限粒子径が0.02μmの沈降水和シリカを添加すると、界面活性剤の外周にシリカが蜂の巣状に結合する。このようにして得た結晶相物質を焼成処理すれば、界面活性剤が除去されたメソポーラスシリカとなる。なお、使用する界面活性剤を適宜選択することで、蜂の巣状に形成される細孔の直径を制御することができる。
本発明に係るメソポーラスシリカおいては、細孔の寸法は、厳密な結晶学的寸法ではなく、収着測定により決定した有効細孔寸法である。細孔の寸法を決定するのに好ましい方法は、従来公知のアルゴンの物理収着を利用する方法である。すなわち、定温で試料上の相対圧力を変化させて試料に吸着したアルゴンの質量を測定し、吸着等温線をプロットする。等温線の勾配の急激な変化に対応する点は細孔への充填を示し、公知の数学的関係に適用して細孔の寸法を決定することができる。また、直径が6.0nm以上の細孔構造においては、下記式(7)、
ln(P/P0) = −2Vγcosθ/rkRT (7)
で表わされるケルビン式を適用することができる。ここで、式中、γは吸着質の表面張力であり、Vは吸着質のモル体積、θは接触角(通常は実用上の理由により0とする)、Rは気体定数、Tは絶対温度、rkは毛管凝縮(細孔)の半径、P/P0は相対圧力(物理吸着等温式から)である。
上記ケルビン式は、細孔構造における吸着を毛管凝縮現象として取り扱い、吸着が起こる圧力を表面張力と吸着質(ここではアルゴン)の接触角とにより細孔の直径に関係付けたものである。ケルビン式が基にする原理は、直径が5〜100nmの範囲の細孔において有効である。ケルビン式を適切に適用できない細孔壁部の吸着質の表面層の効果を修正して細孔の直径を正確に測定するため、細孔寸法の測定に用いられるケルビン式に代えて、ドリモアおよびヒール(D.Dollimore and G.R.Heal)の方法「ジェイ・アプライド・ケム(J.Applied Chem.)、14巻、108頁、1964年」を用いる。ドリモアとヒールの方法は脱着等温線に適用するために導出されたものであるが、単にデータを逆に入れることにより吸着等温線にも良好に適用することができる。
本発明においては、メソポーラスシリカは、市販品を用いてもよく、例えば、太陽化学社製のメソポーラスシリカ、商品名「TMPS−1.5」、「TMPS−2.7」、「TMPS−4」などを用いることができるが、例えば、下記の(a)または(b)の条件を満足する結晶相物質からなるメソポーラスシリカを好適に用いることができる。なお、本発明において、結晶相物質とは、焼成後、例えばX線、電子、中性子回折による回折パターンが少なくとも一つのピークを与えるのに十分な規則性を有する物質を指す。
(a)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、焼成後、X線回折パターンの少なくとも一つのピークが1.8nmより大きいd間隔を有し、6.7kPa、25℃におけるベンゼン吸着容量が100gあたり15gより大きい無機質、多孔質または非層状の結晶相物質であって、かつ、結晶相が下記式(1)、
Mn/q(SiO2) (1)
(ここで、式中、Mは1種以上のイオンであり、nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、qはMの重量モル平均原子価であり、n/qはMのモル数またはモル分率である。)で表わされる関係を満足するものである。
(a)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、6.7kPa、25℃において結晶100gあたり約15gより大きい平衡ベンゼン吸着容量を示す。平衡ベンゼン吸着容量は、不純物が細孔に吸着していない状態で測定する。水は、例えば熱処理等の脱水方法で除去することができる。シリカ等の無機非晶質物質や有機物は酸や塩基または他の化学薬剤および/または物理的方法(例えば、焼成)で除去することができるので、(a)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカに悪影響を与えることなく、不純物を除去することができる。
(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、直径が少なくとも1.3nmの均一な細孔の六方構造配列を有し、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質の結晶相物質であり、かつ、上記式(1)満足するものである。
(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、焼成後、1.8nmより大きいd100値で示され得る六方構造の電子回折パターンを示す無機質、多孔質であり、上記記式(1)で示す組成の結晶相物質であるから、大きな分子寸法を有する有機化合物、具体的には、置換または非置換の多環式芳香族成分を有する芳香族炭化水素、かさばったナフテン化合物、またはかさばった立体配置を有する高度置換化合物、例えば、分子寸法が1.3nm以上のものの吸着に好適である。
(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、高い収着容量、および極端に大きな細孔の開口を含み、細孔の垂直断面の最大寸法を細孔の寸法とする。六方構造の場合には、対向する二つの面の間隔が細孔の最大寸法となる。(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカとしては、電子回折および透過電子顕微鏡で容易に観察しうる開口したチャンネルがほぼ六方構造配列をとるものを好ましく用いることができる。特に、物質の試料を適切な向きに置いた透過電子顕微鏡写真は、大きなチャンネルの六方構造配列を示し、対応する電子回折パターンは回折極大値を有するほぼ六方構造の配列を与えるものである。電子回折パターンのd100間隔は、六方構造格子のhk0投影の隣接する点の間隔であり、電子顕微鏡で観察されるチャンネル間の繰り返し距離a0は、下記式(8)、
d100 = a0(3)1/2/2 (8)
で関係付けられる。
電子回折パターンで観察されるこのd100間隔は、物質のX線回折パターンにおける低角度ピークのd間隔に相当する。このパターンは、独特の100、110、200、210等の反射である六方構造のhk0部分集合とこれの対称の関係にある反射とで表示することができる。ここで、チャンネルの六方構造(ヘキサゴナル)配列とは、数学的に完全なヘキサゴナル対称のみでなく、物質中のほとんどのチャンネルが最も近い六つのチャンネルによって実質的に等距離で取り囲まれていることを意味する。上記結晶相物質の細孔の寸法は、1.3〜20nmのメソポーラス範囲であり、電子回折および透過電子顕微鏡で容易に観察しうる開口したチャンネルがほぼ六方構造配列の結晶相物質を焼成処理したものである。
(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、極度に低い角度領域に数個の明確な極大値を有する六方構造のX線回折パターンを与えるものであるが、X線回折パターンの低角度領域においてただ1つの明確なピークを有するものであってもよい。
(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、その焼成された形態において、物質の電子回折パターンのd100値に対応するd間隔が約1.8nm(CuKα線で4.909度の2θ)より大きい位置に少なくとも1つのピークを有するX線回折パターンを示す。また、d間隔が約1nm(CuKα線で8.842度の2θ)よりも大きい位置に少なくとも2つのピークを有し、少なくとも1つのピークは、d間隔が1.8nmよりも大きい位置にあり、最強のピークの約20%よりも大きい相対強度でd間隔が1nmよりも小さい位置にピークが存在しないX線回折パターンを示すものであることが好ましい。さらに好ましくは、最強のピークの約10%よりも大きい相対強度で1nmよりも小さいd間隔の位置にピークを持たないものである。好ましい六方構造配列において、X線パターンの少なくとも1つのピークは、物質の電子回折パターンのd100値に対応するd間隔を有する。
なお、本願明細書におけるX線回折データは、θ−θ結晶構造、CuKα線、およびエネルギー分散型X線検出器を使用するシンターグ・ピー・エー・ディー・エックス自動回折装置によるものとする。入射X線および回折X線の両方のビームをダブルスリットの入射および回折コリメーション系でコリメーションする。使用したスリットのサイズは、X線管源から始めて、それぞれ0.5、1.0、0.3、そして0.2mmである。異なるスリット系によるとピーク強度が異なる。
なお、回折データは、2θを0.04度ずつ10秒毎の計数時間で段階的にスキャンして記録した(θはブラッグ(Bragg)角)。層間間隔dはnm単位で計算し、バックグラウンドを差し引いたラインの相対強度I/I0(I0は最強ラインの100分の1の強度)はプロファイル・フィッティング・ルーチンを使用して導き、強度は、ローレンツ効果および分極効果のため補正をしていない。なお、相対強度は、vs(非常に強い)を75〜100で、s(強い)を50〜74で、m(中位)を25〜49で、w(弱い)を0〜24で表わす。
シングルラインとして掲載してある回折データは、実験用の高分解能や結晶学上の交換等のような特定の条件において分解できるかまたは部分的に分解できるように見える多くの重なりあったラインからなると解すべきである。一般に、結晶学上の変化は構造上の実質的な変化を伴わずに、単位格子パラメーターの軽度の変化および/または結晶の対称性の変化を含み得る。相対強度の変化を含むこれらの軽度の効果は、カチオン含量、骨格構造、細孔の充填の状態および程度、熱および/または水熱履歴、そして粒子寸法/形の影響、構造の不規則性、またはX線回折の従来技術で知られるその他の要因によるピークの幅/形状の変動における差異の結果として生じうる。
(a)および(b)の結晶相物質からなるメソポーラスシリカは、上記式(1)で表わされる関係を満足するものであるが、かかるメソポーラスシリカは、酸化物のモル比で表して下記式、
溶媒/SiO2 = 1〜1500 (2)
OH−/SiO2 = 0〜10 (3)
(M2/aO+R2/bO)/SiO2 = 0.01〜20 (4)
(M2/a)/SiO2 = 0〜10 (5)
(R2/bO)/SiO2 = 0.01〜2.0 (6)
(ここで、Mは1種またはそれ以上のイオンであり、aおよびbはそれぞれMおよびRの重量平均原子価であり、溶媒は炭素数1〜6のアルコール、ジオール、または水であり、Rは、物質の合成を助けるために使用される全有機物であって、一般式、R1R2R3R4Q+(ここで、式中、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4の少なくとも一つは炭素数6〜36のアリール基またはアルキル基であり、R1、R2、R3およびR4の残りのそれぞれは水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)を有する有機誘導剤からなる全有機物である。)で表わされる関係を満足する組成を有する反応混合物を結晶化した結晶相物質を焼成処理して調製することができる。
Rとしては、セチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルホスホニウム、オクタデシルトリメチルホスホニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、セチルピリジニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムおよびジメチルジドデシルアンモニウム化合物等を好適に用いることができる。以下、これらを有機誘導剤と称する。
また、Rで示される有機誘導剤に加えて、R1R2R3R4Q+(ここで、Qは窒素またはリンであり、R1、R2、R3およびR4は水素および炭素数1〜5のアルキル基から選ばれる。)で表わされる付加的有機誘導剤を併用してもよい。このような付加的有機誘導剤としては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウム化合物等を挙げることができる。
上記式(1)の組成を示す結晶性物質は、合成したままの形態において、無水物を基にして、下記式(9)、
rRMn/q(SiO2) (9)
で表わされる組成を有する反応混合物を結晶化した結晶相物質を焼成処理することにより得られる。(ここで、式中、Mは1種以上のイオンであり、nは酸化物として表わされるMを除いた組成の電荷であり、qはMの重量モル平均原子価であり、Rは、イオンとしてMに含まれず、物質の合成において補助的に使用される全有機物、rはRの係数、すなわち、Rのモル数またはモル分率である。)
MとRの成分は結晶化の際にそれらが存在する結果として物質に取り込まれており、容易に除去することができ、またはMについては、後結晶化法などにより交換することができる。例えば、合成したままの形態の物質の元のM、例えば、ナトリウムまたは塩素のイオンは、イオン交換によって他のイオンに交換する。好ましい交換イオンは、金属イオン、水素イオン、水素前駆体、例えば、アンモニウムイオン、およびこれらの混合物である。特に好ましいイオンは、炭化水素転化反応のために触媒活性を仕立てるものである。これは、元素周期表のIA族(例えば、K)、IIA族(例えば、Ca)、VIIA族(例えば、Mn)、VIIIA族(例えば、Ni)、IB族(例えば、Cu)、IIB族(例えば、Zn)、IIIB族(例えば、In)、IVB族(例えば、Sn)およびVIIB族(例えば、F)の金属、希土類金属、水素、およびこれらの混合物を含む。
上記式(9)で表わされる関係を満たす組成を有する物質は、下記式、
溶媒/SiO2 = 1〜1500
OH−/SiO2 = 0〜10
(M2/aO+R2/bO)/SiO2 = 0.01〜20
(M2/a)/SiO2 = 0〜10
(R2/bO)/SiO2 = 0.01〜2.0
で表わされる関係を満足する反応混合物を使用して調製すことができる。ここで、Rで示される有機誘導剤としては、前述の有機誘導剤であるセチルトリメチルアンモニウム、セチルトリメチルホスホニウム、オクタデシルトリメチルホスホニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、セチルピリジニウム、ミリスチルトリメチルアンモニウム、デシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウムおよびジメチルジドデシルアンモニウム等の化合物を好適に用いることができ、これらは水酸化物、ハロゲン化物、シリケートまたはこれらの混合物により誘導体化されていてもよい。これにより、有機誘導剤であるセチルトリメチルアンモニウムを水酸化して得られる水酸化セチルトリメチルアンモニウムや、ミリスチルトリメチルアンモニウムを臭素化して得られる臭化ミリスチルトリメチルアンモニウムなどは界面活性剤となり、溶媒中でミセルを形成し、これによって所望する超大孔物質の核を形成し、成長させるテンプレートとなる。
反応混合物中には、さらに、有機誘導剤の他、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウムおよびテトラブチルアンモニウム化合物等の付加的有機誘導剤を含むことが好ましい。なお、有機誘導剤と付加的有機誘導剤のモル比は、100/1〜0.01/1であることが好ましい。付加的有機誘導剤が存在する場合、反応混合物中のR2/bO/(SiO2)のモル比は0.1〜2.0であることが好ましく、0.12〜1.0が最も好ましい。
また、得られる結晶相物質の細孔寸法を変化させるために、さらに有機補助剤を含めてもよい。この有機補助剤は、(i)炭素数5〜20の芳香族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換および炭素数1〜14のアルキル置換誘導体、(ii)炭素数5〜20の環状および多環状脂肪族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換および炭素数1〜14アルキル置換誘導体、(iii)炭素数3〜16の直鎖状および分枝状脂肪族炭化水素およびアミンならびにそれのハロゲン置換誘導体のいずれかを用いることができる。なお、このような有機補助剤のハロゲン置換基としては、臭素が好ましい。
炭素数1〜14アルキル置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基およびそれらの組合せ等の直鎖または分枝状脂肪族鎖を挙げることができる。この有機補助剤は、例えば、p−キシレン、トリメチルベンゼン、トリエチルベンゼンおよびトリイソプロピルベンゼンを含む。
反応混合物中に有機補助剤を含む場合、有機補助剤/SiO2のモル比は0.05〜20、好ましくは0.1〜10であり、有機補助剤/有機誘導剤のモル比は0.02〜100、好ましくは0.05〜35である。
また、ケイ素源として、例えば、4級アンモニウムシリケートのような有機シリケートを少なくとも部分的に用いることが好ましい。4級アンモニウムシリケートとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムシリケートやテトラエチルオルトシリケート等を挙げることができるが、これらに限らない。
上記結晶性物質を製造するには、必要な結晶を形成するまでの間、一般には5分間から14日間、好ましくは1〜300時間、上述の反応混合物を温度25〜250℃、好ましくは50〜175℃、好ましくはpH9〜14に保持する。これにより結晶化固体を得ることができる。
次いで、得られた結晶化固体に含まれる使用した有機成分の一部分または全部を除去する。結晶化固体は、特にその金属、水素およびアンモニウム形態において、焼成処理して用いる。この焼成処理は、一般に、400〜750℃の温度で、1分以上で20時間以下、好ましくは1〜10時間かけて行う。焼成処理は減圧条件下で行ってもよいが、常圧で、空気、窒素、アンモニア等が存在する条件下で行ってもよい。
上記によって結晶相物質を得るには、例えば、有機誘導剤として水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液を使用し、これにテトラメチルアンモニウムシリケート溶液を混合し、次いで沈降水和シリカ(遊離水約6質量%、水和結合水約4.5質量%、極限粒子径0.02μm)を添加し、95℃の蒸気箱内に一晩放置する。得られた結晶性物質を室温で乾燥した後に、窒素雰囲気下で540℃、1時間焼成し、次いで空気中で6時間焼成する。焼成生成物は、表面積が475m2/gで、平衡吸着容量(g/100g)は、H2Oが8.3、シクロヘキサンが22.9、n−ヘキサンが18.2、ベンゼンが21.5であった。得られた焼成生成物のX線回折パターンでは、10Å(1.0nm)単位のd間隔が8.842゜の2θ(CuKα線)に対応し、18Å(1.8nm)単位が4.908゜に対応し、d間隔3.78±0.2nmに非常に強い相対強度線、2.16±0.1および1.92±0.1nmに弱い相対強度線を含む。透過電子顕微鏡(TEM)が、均一な細孔の六方構造配列の像と約3.9nmのd100値で六方構造の電子回折パターンを示し、平均細孔直径は3.22nmである。
また、例えば、有機誘導剤として水酸化セチルトリメチルアンモニウム溶液を使用し、付加的有機誘導剤として水酸化テトラメチルアンモニウム溶液を併用し、これに沈降水和シリカ(遊離水約6質量%、水和結合水約4.5質量%、極限粒子径0.02μm)を添加し、150℃の蒸気箱内に一晩放置することで、結晶相物質を得ることができる。これを室温で乾燥した後に、窒素中で540℃で1時間焼成し、ついで空気中で6時間焼成する。焼成生成物は、表面積が993m2/gであり、平衡吸着容量(g/100g)は、H2Oが7.1、シクロヘキサンが47.2、n−ヘキサンが36.2、ベンゼンが49.5であった。この焼成生成物のX線回折パターンは、d間隔3.93±0.2nmに非常に強い相対強度線、2.22±0.1および1.94±0.1nmに弱い相対強度線を含む。この結晶性物質の平均細孔直径は、3.54nmである。
次に、ヒートシール層4を構成する基材樹脂について説明する。
本発明において、ヒートシール層4を構成する基材樹脂としては、熱によって溶融し相互に融着し得る各種のヒートシール性を有するポリオレフィン系樹脂等を好適に用いることができる。具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、メタロセン触媒を使用して重合したエチレン−α・オレフィン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマー、ポリブテンポリマー、ポリエチレンまたはポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等の樹脂を用いることができる。本発明においては、これら1種以上のフィルム、シートまたは塗布膜などを、ヒートシール層4として用いることができる。
本発明においては、上記樹脂の中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。特に、シングルサイト系メタロセン触媒を使用したポリプロピレン系ランダム共重合体が好適である。具体的には、プロピレンとエチレン、またはプロピレンと1−オクテンとのブロックまたはランダムコポリマーからなるポリプロピレン系ランダム共重合体を挙げることができる。これらの共重合体は接着性に優れるからである。
本発明においては、ヒートシール層4の製膜法としてインフレーション法を用いる場合、ヒートシール層4を構成する樹脂のメルトフローレート(MFR)としては、0.2〜4.0g/min.であることが好ましく、より好ましくは0.2〜2.0g/min.である。MFRが0.2g/min.未満であったり、4.0g/min.を超えたりすると、加工適性の点で不利である。ここでMFRとは、JIS K6921に準拠した手法により測定された値であり、また、密度は、JIS K7112に準拠した手法から測定された値である。
本発明においては、ヒートシール層4の層厚は、5〜100μmであることが好ましく、好適には10〜60μmである。ヒートシール層4は、上記樹脂の1種からなる単層でもよく、2層以上の多層であってもよい。例えば、ヒートシール層4を2層として(図示せず)、1層をメソポーラスシリカを含有する層とし、他方の層をメソポーラスシリカを含まない層とすることができる。この場合は、メソポーラスシリカを含む層を最内層とする。このような構成とすることで、初期の消臭性能に優れた積層体とすることができる。なお、他方の層には他の機能性充填剤を含有させてもよい。本発明においては、ヒートシール層4を顔料や染料を含有する着色層と、顔料や染料を含まない層とに分離してもよく、この場合、着色層として、例えば、白色顔料や染料を混練して遮光性に優れる白色樹脂層等としてもよい。
白色系着色剤としては、白色系の各種の無機系または有機系の顔料や染料等の着色剤の1種または2種以上の混合物を使用できる。例えば、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、塩基性珪酸鉛、亜鉛華、硫化亜鉛、リトポン、三酸化アンチモン、アナタス形酸化チタン、ルチル形酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸バリウム等の白色顔料の1種または2種以上を用いることができる。これらは、包装容器の美粧性を損なうことなく、太陽や蛍光灯等の透過を阻止または遮断し、包装袋内に充填包装した内容物の分解または変質、褪色等の光劣化を防止することができる。着色層において、着色料の配合量は、ヒートシール層4を構成する樹脂に対し、0.1〜30質量%、好ましくは、0.5〜20質量%である。
着色剤は白色染料または白色顔料に限定されず、他の色彩の顔料や染料を使用して着色層を形成してもよい。この場合には、目的の着色による効果を得るために、着色層の厚さは5〜60μmとすることが好ましく、より好ましくは10〜40μmとする。
なお、着色層を形成した場合には、着色剤を含まない樹脂で最内層にヒートシール層4を形成する。顔料や染料として無機チタンなどを混練するとヒートシール性が低下するが、メソポーラスシリカの添加の場合と同様に、最内層に顔料や染料を含まない層を形成することで、ヒートシール性を確保することができる。この際の顔料や染料を含まない層の厚さは、5〜60μm、好ましくは10〜30μmである。この範囲であれば、十分なヒートシール性を確保することができる。
ここまで本発明の積層体10のヒートシール層4について説明してきたが、その他の構造については、特に制限はない。本発明の積層体10は、例えば、図1に示す様に、基材樹脂層3の他、ガスバリア層1を有していてもよく、さらに図示はしないが、印刷層等を有していてもよい。さらにまた、各層を積層するために、ラミネート用接着剤からなるラミネート用接着剤層2a、2bを形成することもできる。
本発明においては、基材樹脂層3としては、包装する内容物や物流中における機械的強度、耐薬品性、耐溶剤性、製造性などがあれば、用途に応じて種々の材料が適用できる。基材樹脂層3としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、各種のナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。特に本発明においては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、または、ポリアミド系樹脂が好ましい。
基材樹脂層3としては、上記の樹脂の1種または2種以上を使用し、押し出し法、キャスト成形法、Tダイ法、切削法、インフレーション法等の製膜化法を用いて単層で製膜化したもの、または2種以上の樹脂を使用して共押し出しなどで多層製膜したもの、または2種以上の樹脂を混合使用して製膜し、テンター方式やチューブラー方式等で1軸または2軸方向に延伸してなる各種の樹脂フィルムを用いることができる。
本発明においては、基材樹脂層3の膜厚は、好ましくは6〜100μm、より好ましくは9〜50μmとする。なお、本発明に係る基材樹脂層3には、フィルムの加工性、耐熱性、耐候性、機械的性質、寸法安定性、抗酸化性、滑り性、離形性、難燃性、抗カビ性、電気的特性、強度等を改良、改質する目的で、種々のプラスチック配合剤や添加剤等を添加することができる。この場合、これら添加剤をヒートシール層4に、極く微量〜数10質量%まで、その目的に応じて任意に添加すればよい。本発明においては、一般的な添加剤としては、滑剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、染料、顔料等の着色剤等を任意に使用することができ、さらには改質用樹脂等を用いてもよい。
また、本発明においては、積層体10を飲食品用の包装体に用いる場合、図1に示す様に、酸素や水蒸気の透過を阻止しうる各種のガスバリア性フィルムをガスバリア層1として設けてもよい。ガスバリア性フィルムとしては、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体を用いることが好ましい。ポリビニルアルコールをガスバリア性フィルムとして用いる場合は、層厚は15〜25μmであることが好ましく、エチレン・ビニルアルコール共重合体を用いる場合は、層厚は10〜30μmであることが好ましい。また、これら以外にもガスバリア層としてアルミニウム箔を用いてもよく、この場合、アルミニウム箔の厚みとしては5〜30μm程度とすることが好ましい。
ガスバリア層1として、ポリビニルアルコールを用いる場合は、単層として使用してもよいが、水溶性高分子であるため、耐水性に優れる基材フィルムにポリビニルアルコールからなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、耐水性を確保することができる。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を挙げることができる。
ガスバリア層1として、エチレン・ビニルアルコール共重合体を用いる場合は、単層フィルムとして使用してもよいが、基材フィルムにエチレン・ビニルアルコール共重合体からなる塗布膜を形成した積層フィルムであってもよい。このような基材フィルムは、やはり、後記するガスバリア性積層フィルムの項で記載する基材フィルムを好適に使用することができる。これにより、機械的特性など基材フィルムに応じた各種の特性を向上させることができる。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を挙げることができる。
ガスバリア層1を構成する基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を設け、この蒸着膜上に一般式R1 nM(OR2)m(ここで、式中のR1およびR2は炭素数1〜8の有機基を表し、Mは金属原子を表し、nは0以上の整数、mは1以上の整数を表し、n+mはMの原子価である。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法によって重縮合して得られるガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を設けたガスバリア性積層フィルムを使用してもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン・ビニルアルコール共重合体と1種以上のアルコキシドとが相互に化学的に反応して強固な三次元網目状複合ポリマー層を形成しており、蒸着膜とが相乗的に作用し、酸素、水蒸気などの透過を阻止するガスバリア性に優れ、耐熱水性にも優れる。
ガスバリア層1を構成する基材フィルム樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリアリールフタレート系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アセタール系樹脂、セルロース系樹脂等の各種の樹脂を使用することができる。特に、ポリエステル系樹脂、またはポリアミド系樹脂が好適である。基材樹脂の膜厚としては、好ましくは6〜100μm、好適には、9〜50μmである。
本発明においては、基材フィルムの一方の面に有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することが好ましいが、予め基材フィルムに表面処理をおこなってもよい。これによって蒸着膜やガスバリア性塗布膜との密着性を向上させることができる。このような表面処理としては、コロナ放電処理、オゾン処理、酸素ガスまたは窒素ガス等を用いた低温プラズマ処理、グロー放電処理、化学薬品等を用いて処理する酸化処理等の前処理などが挙げられる。
本発明においては、上述のとおり、ガスバリア層1は基材フィルム上に金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することにより製造することができる。蒸着膜は、例えば化学気相成長法、物理気相成長法またはこれらを複合して、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の1層からなる単層あるいは2層以上からなる多層または複合層を形成して製造することができる。
化学気相成長法としては、例えば、プラズマ化学気相成長法、低温プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等がある。具体的には、基材フィルムの一方の面に、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを原料とし、キャリヤーガスとして、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガスを用い、さらに、酸素供給ガスとして、酸素ガス等を使用し、低温プラズマ発生装置等を利用する低温プラズマ化学気相成長法を用いて酸化珪素等の蒸着膜を形成することができる。
低温プラズマ発生装置としては、例えば、高周波プラズマ、パルス波プラズマ、マイクロ波プラズマ等の発生装置を用いることができる。高活性の安定したプラズマが得られる点で、高周波プラズマ方式による発生装置を使用することが好ましい。
低温プラズマ化学気相成長法による蒸着膜の形成法の一例を、低温プラズマ化学気相成長装置の概略構成図である図2を用いて説明する。図示例では、プラズマ化学気相成長装置121の真空チャンバー122内に配置された巻き出しロール123から基材フィルム101を繰り出し、さらに、基材フィルム101を、補助ロール124を介して所定の速度で冷却・電極ドラム125周面上に搬送する。一方、ガス供給装置126、127および、原料揮発供給装置128から酸素ガス、不活性ガス、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスを供給して蒸着用混合ガス組成物を調製し、これを原料供給ノズル129を通して真空チャンバー122内に導入する。蒸着用混合ガス組成物を冷却・電極ドラム125周面上に搬送された基材フィルム101の上に供給し、グロー放電プラズマ130によってプラズマを発生させ照射し、蒸着膜を製膜する。次いで、蒸着膜を形成した基材フィルム101を、補助ロール133を介して巻き取りロール134に巻き取れば、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、冷却・電極ドラム125は、真空チャンバー122の外に配置されている電源131から所定の電力が印加され、冷却・電極ドラム125の近傍には、マグネット132を配置してプラズマの発生が促進されている。このように冷却・電極ドラムに電源から所定の電圧が印加されているため、真空チャンバー内の原料供給ノズルの開口部と冷却・電極ドラムとの近傍でグロー放電プラズマが生成される。このグロー放電プラズマは、混合ガス中の1つ以上のガス成分から導出されるものであり、この状態で基材フィルムを一定速度で搬送させると、グロー放電プラブマによって、冷却・電極ドラム周面上の基材フィルムの上に、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成することができる。なお、図中の符号135は真空ポンプである。
本発明においては、真空チャンバー内を真空ポンプにより減圧し、真空度1×10−1〜1×10−8Torr程度、好ましくは、真空度1×10−1〜1×10−4Torr程度に調整することが好ましい。
原料揮発供給装置は、原料である有機珪素化合物を揮発させ、ガス供給装置から供給される酸素ガス、不活性ガス等と混合し、得られた混合ガスを原料供給ノズルを介して真空チャンバー内に導入する。この際、混合ガス中の有機珪素化合物の含有量は、1〜40%、酸素ガスの含有量は10〜70%、不活性ガスの含有量は10〜60%の範囲とすることが好ましく、例えば、有機珪素化合物:酸素ガス:不活性ガスの混合比を1:6:5〜1:17:14程度とすることができる。なお、上記有機珪素化合物、不活性ガス、酸素ガスなどを供給する際の真空チャンバー内の真空度は、好ましくは1×10−1〜1×10−4Torr、より好ましくは真空度1×10−1〜1×10−2Torrである。また、基材フィルムの搬送速度は、好ましくは10〜300m/min.、より好ましくは50〜150m/min.とする。このようにして得られる有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜は、基材フィルムの上に、プラズマ化した原料ガスを酸素ガスで酸化しながらSiOXの形で薄膜状に形成されるので、緻密で隙間の少ない、可撓性に富む連続層となる。そのため、蒸着膜のバリア性は、従来の真空蒸着法等によって形成される酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜と比較してはるかに高く、薄い膜厚で十分なバリア性を得ることができる。また、SiOXプラズマにより基材フィルムの表面が清浄化され、基材フィルムの表面に、極性基やフリーラジカル等が発生するので、蒸着膜と基材フィルムとの密接着性は高いものとなる。さらに、蒸着膜形成時の真空度は、従来の真空蒸着法により酸化珪素等の無機酸化物の蒸着膜を形成する時の真空度、1×10−4〜1×10−5Torrに比較して低真空度であることから、基材フィルムの原反交換時の真空状態設定時間を短くすることができ、真空度が安定しやすく製膜プロセスも安定化する。
有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスを使用して形成される蒸着膜は、有機珪素化合物等の蒸着モノマーガスと酸素ガス等とが化学反応し、その反応生成物が、基材フィルムの一方の面に密接着し、緻密で、柔軟性等に富む薄膜であり、通常、一般式SiOX(ここでXは0〜2の数である)で表される酸化珪素を主体とする連続状の薄膜である。酸化珪素の蒸着膜としては、透明性、バリア性等の点から、一般式SiOX(ここでXは1.3〜1.9の数である)で表される酸化珪素の蒸着膜を主体とする薄膜であることが好ましい。なお、Xの値は、蒸着モノマーガスと酸素ガスのモル比、プラズマのエネルギー等により変化するが、一般的に、Xの値が小さくなればガス透過度は小さくなるが、膜自身が黄色性を帯び、透明性が悪くなる。
本発明においては、酸化珪素の蒸着膜は、酸化珪素を主体とし、さらに、炭素、水素、珪素または酸素の1種類、または2種類以上の元素からなる化合物の少なくとも1種類を化学結合等により含有するものとしてもよい。例えば、C−H結合を有する化合物、Si−H結合を有する化合物、または、炭素単位がグラファイト状、ダイヤモンド状、フラーレン状等になっている化合物、さらに、原料の有機珪素化合物やそれらの誘導体を化学結合等によって含有してもよい。例えば、CH3部位を持つハイドロカーボン、SiH3シリル、SiH2シリレン等のハイドロシリカや、SiH2OHシラノール等の水酸基誘導体等を挙げることができる。なお、これら以外でも、蒸着過程の条件を変化させることにより、蒸着膜中に含有される化合物の種類、量等を変化させることができる。この際、上記の化合物が蒸着膜中に含有する含有量としては、0.1〜50%、好ましくは5〜20%である。含有率が0.1%未満であると、蒸着膜の耐衝撃性、延展性、柔軟性等が不十分となり、曲げなどにより、擦り傷、クラック等が発生し易く、高いバリア性を安定して維持することが困難になる場合がある。一方、50%を越えるとバリア性が低下する場合がある。
さらに、本発明においては、有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜において、上記の化合物の含有量が蒸着膜の表面から深さ方向に向かって減少していることが好ましい。これにより、蒸着膜の表面では上記化合物等により耐衝撃性等が向上し、また、基材フィルムとの界面では、上記化合物の含有量が少ないために基材フィルムと蒸着膜との密接着性が強固なものとなる。
本発明においては、上記蒸着膜は、例えばX線光電子分光装置(Xray Photoelectron Spectroscopy、XPS)、二次イオン質量分析装置(Secondary Ion Mass Spectroscopy、SIMS)等の表面分析装置を用い、深さ方向にイオンエッチングする等して分析し、蒸着膜の元素分析を行うことで、上記の物性を確認することができる。
本発明においては、上記蒸着膜の膜厚は、50Å〜4000Åであることが好ましく、より好ましくは100〜1000Åである。4000Åより厚くなると、その膜にクラック等が発生するおそれがあり、一方、50Å未満であると、バリア性の効果を得ることが困難になるおそれがある。なお、膜厚は、例えば、株式会社理学製の蛍光X線分析装置(機種名、RIX2000型)を用いて、ファンダメンタルパラメーター法で測定することができる。また、蒸着膜の膜厚の変更は、蒸着膜の体積速度を大きくする方法、すなわち、モノマーガスと酸素ガス量を多くする方法や蒸着する速度を遅くする方法等によって行えばよい。
本発明においては、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜として、蒸着膜の1層だけでなく、2層あるいはそれ以上を積層した多層膜でもよく、また、使用する材料も1種または2種以上の混合物で使用し、また、異種の材質で混合した蒸着膜であってもよい。
本発明においては、有機珪素化合物等の蒸着用モノマーガスとしては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシロキサン、ビニルトリメチルシラン、メチルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、メチルシラン、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、プロピルシラン、フェニルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等を挙げることができる。特に、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、およびヘキサメチルジシロキサンは、その取り扱い性、形成された連続膜の特性等から好ましい。なお、不活性ガスとしては、例えば、アルゴンガス、ヘリウムガス等を用いることができる。
一方、本発明においては、物理気相成長法によっても有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成することもできる。このような物理気相成長法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンクラスタービーム法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)を挙げることができる。
具体的には、有機珪素化合物、金属または金属の酸化物を原料とし、これを加熱して蒸気化し、これを基材フィルムの一方の上に蒸着する真空蒸着法、原料として金属または金属の酸化物を使用し、酸素を導入して酸化させて基材フィルムの一方の上に蒸着する酸化反応蒸着法、さらに酸化反応をプラズマで助成するプラズマ助成式の酸化反応蒸着法等を用いることができる。なお、蒸着材料の加熱方式としては、例えば、抵抗加熱方式、高周波誘導加熱方式、エレクトロンビーム加熱方式(EB)等にて行うことができる。物理気相成長法による蒸着膜を形成する方法について、巻き取り式真空蒸着装置の一例を示す概略的構成図を示す図3を参照して説明する。
まず、巻き取り式真空蒸着装置141の真空チャンバー142の中で、巻き出しロール143から繰り出す基材フィルム101は、ガイドロール144、145を介して、冷却したコーティングドラム146に導入される。冷却したコーティングドラム146上に導入された基材フィルム101の上に、るつぼ147で熱せられた蒸着源148、例えば、金属アルミニウム、または酸化アルミニウム等を蒸発させ、さらに必要があれば、酸素ガス吹出口149より酸素ガス等を噴出し、これを供給しながら、マスク150、150を介して、酸化アルミニウム等を蒸着してなる蒸着膜を製膜化し、次いで、蒸着膜を形成した基材フィルム101を、ガイドロール151、152を介して送り出し、巻き取りロール153に巻き取ると物理気相成長法による蒸着膜を形成することができる。なお、巻き取り式真空蒸着装置を用いて、まず第1層の蒸着膜を形成し、次いで、その上に蒸着膜をさらに形成し、または巻き取り式真空蒸着装置を2以上連接し、連続的に蒸着膜を形成して、2層以上の多層膜からなる蒸着膜を形成してもよい。
金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜は、金属の酸化物を蒸着した薄膜であればよく、例えば、ケイ素、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム、スズ、ナトリウム、ホウ素、チタン、鉛、ジルコニウム、イットリウム等の金属の酸化物の蒸着膜を使用することができる。好ましくは、ケイ素、アルミニウム等の金属の酸化物の蒸着膜を挙げることができる。その表記は、例えば、SiOX、AlOX、MgOX等のようにMOX(ここで、式中Mは金属元素を表し、Xの値は金属元素によって範囲が異なる。)で表される。
上記Xの値の範囲としては、ケイ素は0を超え2以下、アルミニウムは0を超え1.5以下、マグネシウムは0を超え1以下、カルシウムは0を超え1以下、カリウムは0を超え0.5以下、スズは0を超え2以下、ナトリウムは0を超え0.5以下、ホウ素は0を超え1、5以下、チタンは0を超え2以下、鉛は0を超え1以下、ジルコニウムは0を超え2以下、イットリウムは0を超え1.5以下の範囲である。この場合、X=0の場合は完全な金属であり、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。一般的に、ケイ素、アルミニウム以外は、使用される例に乏しい。このため、本発明において、Mとしてケイ素やアルミニウムが好ましく、その際これらのXの値は、ケイ素は1.0〜2.0、アルミニウムは0.5〜1.5の範囲である。なお、蒸着膜の膜厚は、使用する金属や金属の酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50〜2000Å、好ましくは、100〜1000Åの範囲内で任意に選択することができる。また、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜は、使用する金属または金属の酸化物としては、1種または2種以上の混合物であってもよく、異種の材質で混合したものであってもよい。
さらに、本発明においては、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成してもよい。異種の蒸着膜の2層以上からなる複合膜としては、まず、基材フィルムの上に、化学気相成長法により、緻密で柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成し、次いで、その蒸着膜の上に、物理気相成長法による金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成して、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を形成することができる。これとは逆に、基材フィルムの上に、まず物理気相成長法により、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜を形成し、次に、化学気相成長法により、緻密で、柔軟性に富み、比較的にクラックの発生を防止し得る有機珪素化合物を蒸着してなる蒸着膜を形成して、2層以上からなる複合膜からなる蒸着膜を形成してもよい。
また、本発明においては、ガスバリア層1は基材フィルムの表面にガスバリア性塗布膜を形成することにより製造することもできる。本発明においては、ガスバリア性塗布膜としては、一般式R1 nM(OR2)m(ここで、式中R1およびR2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合してなるガスバリア性組成物からなる塗布膜であり、この組成物を基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を設け、20℃〜180℃、かつ基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理して形成することができる。また、ガスバリア性組成物を基材フィルム上の蒸着膜の上に塗工して塗布膜を2層以上積層し、20℃〜180℃、かつ、基材フィルムの融点以下の温度で10秒〜10分間加熱処理し、ガスバリア性塗布膜を2層以上積層した複合ポリマー層を形成してもよい。
一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解縮合物の少なくとも1種以上を使用することができ、また、アルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されるものに限定されず、1個以上が加水分解されているもの、およびその混合物であってもよく、さらに、加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2〜6量体のものを使用してもよい。
一般式R1 nM(OR2)m中のR1としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、好ましくは1〜5、より好ましくは1〜4のアルキル基であり、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等を挙げることができる。
一般式R1 nM(OR2)m中のR2としては、分岐を有していてもよい炭素数1〜8、より好ましくは1〜5、特に好ましくは1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、その他等を挙げることができる。なお、同一分子中に複数の(OR2)が存在する場合には、(OR2)は同一であっても、それぞれ異なっていてもよい。
一般式R1 nM(OR2)m中のMで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム等を挙げることができるが、好適にはケイ素である。この場合、本発明で好ましく使用できるアルコキシドとしては、一般式R1 nM(OR2)mにおいてn=0の場合には、一般式Si(ORa)4(ここで、式中Raは炭素数1〜5のアルキル基である。)で表される。この場合において、Raとしては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、その他等が用いられる。このようなアルコキシシランの具体例としては、テトラメトキシシランSi(OCH3)4、テトラエトキシシランSi(OC2H5)4、テトラプロポキシシランSi(OC3H7)4、テトラブトキシシランSi(OC4H9)4等を挙げることができる。
また、nが1以上の場合には、一般式RbnSi(ORc)4−m(ここで、式中mは1、2、3の整数を表し、Rb、Rcは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等である。)で表されるアルキルアルコキシシランとすることができる。このようなアルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシランCH3Si(OCH3)3、メチルトリエトキシシランCH3Si(OC2H5)3、ジメチルジメトキシシラン(CH3)2Si(OCH3)2、ジメチルジエトキシシラン(CH3)2Si(OC2H5)2等を用いることができる。本発明においては、アルコキシシラン、アルキルアルコキシシラン等は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、本発明においては、上記のアルコキシシランの縮重合物も使用することができ、具体的には、例えば、ポリテトラメトキシシラン、ポリテトラエメトキシシラン等を挙げることができる。
本発明においては、一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがZrであるジルコニウムアルコキシドも好適に使用することができる。例えば、テトラメトキシジルコニウムZr(OCH3)4、テトラエトキシジルコニウムZr(OC2H5)4、テトラiプロポキシジルコニウムZr(iso−OC3H7)4、テトラnブトキシジルコニウムZr(OC4H9)4等を挙げることができる。
また、一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがTiであるチタニウムアルコキシドも好適に使用することができ、例えば、テトラメトキシチタニウムTi(OCH3)4、テトラエトキシチタニウムTi(OC2H5)4、テトライソプロポキシチタニウムTi(iso−OC3H7)4、テトラnブトキシチタニウムTi(OC4H9)4、その他等を挙げることができる。
また、一般式R1 nM(OR2)mで表されるアルコキシドとして、MがAlであるアルミニウムアルコキシドも使用することができ、例えば、テトラメトキシアルミニウムAl(OCH3)4、テトラエトキシアルミニウムAl(OC2H5)4、テトライソプロポキシアルミニウムAl(is0−OC3H7)4、テトラnブトキシアルミニウムAl(OC4H9)4等を使用することができる。
本発明においては、上記アルコキシドは、2種以上を併用してもよい。例えばアルコキシシランとジルコニウムアルコキシドを混合して用いると、ガスバリア層の靭性、耐熱性等が向上し、また、延伸時のフィルムの耐レトルト性などの低下を回避することができる。この際、ジルコニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100質量部に対して10質量部以下の範囲とすることが好ましい。10質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜がゲル化し易くなる。また、その膜の脆性が大きくなるため、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる傾向がある。
また、アルコキシシランとチタニウムアルコキシドを混合して用いると、得られるガスバリア性塗布膜の熱伝導率が低くなり、耐熱性が著しく向上する。この際、チタニウムアルコキシドの使用量は、アルコキシシラン100質量部に対して5質量部以下の範囲とすることが好ましい。5質量部を越えると、形成されるガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、基材フィルムを被覆した際に、ガスバリア性塗布膜が剥離し易くなる場合がある。
本発明で使用するポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、ポリビニルアルコール系樹脂、またはエチレン・ビニルアルコ一ル共重合体を単独で各々使用することができ、あるいは、ポリビニルアルコ一ル系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて使用することができる。本発明においては、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することにより、ガスバリア性、耐水性、耐候性、その他等の物性を著しく向上させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて用いる場合、それぞれの配合割合としては、質量比で、ポリビニルアルコ一ル系樹脂:エチレン・ビニルアルコール共重合体=10:0.05〜10:6であることが好ましい。
また、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体の含有量は、アルコキシドの合計量100質量部に対して5〜500質量部の範囲とすることが好ましく、好適には20〜200質量部である。500質量部を越えると、ガスバリア性塗布膜の脆性が大きくなり、得られるバリア性フィルムの耐水性および耐候性等が低下する場合がある。一方、5質量部未満であるとガスバリア性が低下する場合がある。
ポリビニルアルコ一ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体において、ポリビニルアルコ一ル系樹脂としては、一般に、ポリ酢酸ビニルをケン化して得られるものを用いることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸基が数10%残存している部分ケン化ポリビニルアルコール系樹脂でも、酢酸基が残存しない完全ケン化ポリビニルアルコールでも、OH基が変性された変性ポリビニルアルコール系樹脂でもよく、特に限定されるものではない。このようなポリビニルアルコール系樹脂としては、株式会社クラレ製のRSポリマーである「RS−110(ケン化度=99%、重合度=1,000)」、同社製の「クラレポバールLM−20SO(ケン化度=40%、重合度=2,000)」、日本合成化学工業株式会社製の「ゴーセノールNM−14(ケン化度=99%、重合度=1,400)」等を挙げることができる。
また、エチレン・ビニルアルコール共重合体としては、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体のケン化物、すなわち、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体をケン化して得られるものを用いることができる。例えば、酢酸基が数10モル%残存している部分ケン化物から、酢酸基が数モル%しか残存していないかまたは酢酸基が残存しない完全ケン化物まで含み、特に限定されるものではない。ただし、ガスバリア性の観点から好ましいケン化度は、80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体中のエチレンに由来する繰り返し単位の含量(以下「エチレン含量」ともいう)は、通常、0〜50モル%、好ましくは20〜45モル%である。このようなエチレン・ビニルアルコール共重合体としては、株式会社クラレ製、「エバールEP−F101(エチレン含量;32モル%)」、日本合成化学工業株式会社製、「ソアノールD2908(エチレン含量;29モル%)」等を挙げることができる。
本発明において使用するガスバリア性組成物は、一般式R1 nM(OR2)m(ここで、式中、R1およびR2は炭素数1〜8の有機基であり、Mは金属原子であり、nは0以上の整数、mは1以上の整数であり、n+mはMの原子価である。)で表される少なくとも1種以上のアルコキシドと、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合して得たガスバリア性組成物である。ガスバリア性組成物を調製するに際し、シランカップリング剤等を添加してもよい。
本発明においては、好適に使用できるシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを広く挙げることができる。例えば、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適であり、具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、またはβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を挙げることができる。このようなシランカップリング剤は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。なお、シランカップリング剤の使用量は、アルコキシシラン100質量部に対して1〜20質量部の範囲内とすることが好ましい。20質量部以上を使用すると、ガスバリア性塗布膜の剛性と脆性とが大きくなり、また、絶縁性および加工性が低下する場合がある。
また、ゾルゲル法触媒とは、主として、重縮合触媒として使用される触媒であり、水に実質的に不溶であり、かつ有機溶媒に可溶な第三アミン等の塩基性物質が用いられる。例えば、N、N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等を挙げることができる。本発明においては、特に、N、N−ジメチルベンジルアミンが好適である。その使用量は、アルコキシド、および、シランカップリング剤の合計量100質量部当り、0.01〜1.0質量部である。
また、ガスバリア性組成物において用いられる酸としては、ゾルゲル法において、主として、アルコキシドやシランカップリング剤などの加水分解のための触媒として用いられる。例えば、硫酸、塩酸、硝酸などの鉱酸や、酢酸、酒石酸等の有機酸等を用いることができる。酸の使用量は、アルコキシドおよびシランカップリング剤のアルコキシド分(例えばシリケート部分)の総モル量に対し0.001〜0.05モル%が好ましい。
さらに、アルコキシドの合計モル量1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは、0.8から2モルの割合の水を用いることができる。水の量が100モルを越えると、アルコキシシランと金属アルコキシドとから得られるポリマーが球状粒子となる。さらに、この球状粒子同士が3次元的に架橋し、密度の低い多孔性のポリマーとなる。このような多孔性のポリマーでは、ガスバリア性積層フィルムのガスバリア性を改善することができない。一方、水の量が0.1モル未満であると、加水分解反応が進行しにくくなる場合がある。
ガスバリア性組成物において用いられる有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等を挙げることができる。なお、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体は、アルコキシドやシランカップリング剤などを含む塗工液中で溶解した状態で取り扱われることが好ましく、有機溶媒の中から適宜選択することができる。例えば、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体を組み合わせて用いる場合には、n−ブタノールを使用することが好ましい。なお、溶媒中に可溶化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体を使用することもでき、例えば、日本合成化学工業株式会社製、商品名「ソアノール」などを好適に用いることができる。有機溶媒の使用量は、通常、アルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、酸およびゾルゲル法触媒の合計量100質量に対して30〜500質量部である。
本発明においては、ガスバリア性積層フィルムは、以下の方法で製造することができる。まず、アルコキシシラン等のアルコキシド、シランカップリング剤、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体、ゾルゲル法触媒、酸、水、有機溶媒、および、必要に応じて、金属アルコキシド等を混合し、ガスバリア性組成物を調製する。混合により、ガスバリア性組成物(塗工液)は、重縮合反応が開始および進行する。
次いで、基材フィルム上の蒸着膜の上に、常法により、ガスバリア性組成物を塗布し、および乾燥する。この乾燥工程によって、アルコキシシラン等のアルコキシド、金属アルコキシド、シランカップリング剤およびポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体等の重縮合がさらに進行し、塗布膜が形成される。第一の塗布膜の上に、さらに塗布操作を繰り返して、2層以上からなる複数の塗布膜を形成してもよい。その後、ガスバリア性組成物を塗布した基材フィルムを20℃〜180℃、かつ基材フィルムの融点以下の温度、好ましくは、50℃〜160℃で、10秒〜10分間加熱処理する。これによって、蒸着膜の上に、ガスバリア性組成物によるガスバリア性塗布膜を1層または2層以上形成したガスバリア性フィルムを製造することができる。
なお、エチレン・ビニルアルコール共重合体単独、またはポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体との両者を用いて得られたガスバリア性フィルムは、熱水処理後のガスバリア性に優れている。一方、ポリビニルアルコール系樹脂のみを使用してガスバリア性フィルムを製造した場合には、予め、ポリビニルアルコール系樹脂を使用したガスバリア性組成物を塗工して第1の塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜の上に、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物を塗工して第2の塗布膜を形成し、それらの複合層を形成すると、熱水処理後のガスバリア性が向上したガスバリア性フィルムを製造することができる。
さらに、エチレン・ビニルアルコール共重合体を含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、または、ポリビニルアルコール系樹脂とエチレン・ビニルアルコール共重合体とを組み合わせて含有するガスバリア性組成物により塗布膜を形成し、これらを複数積層することも、ガスバリア性フィルムのガスバリア性の向上に有効な手段となる。
ガスバリア層1の製造法について、アルコキシドとしてアルコキシシラン用いて、より詳細に説明する。ガスバリア性組成物として配合されたアルコキシシランや金属アルコキシドは、添加された水によって加水分解される。加水分解の際には、酸が触媒として作用する。次いで、ゾルゲル法触媒の働きによって、加水分解によって生じた水酸基からプロトンが奪われ、加水分解生成物同士が脱水重縮合する。このとき、酸触媒により同時にシランカップリング剤も加水分解されて、アルコキシ基が水酸基となる。
また、塩基触媒の働きによりエポキシ基の開環も起こり、水酸基が生じる。また、加水分解されたシランカップリング剤と加水分解されたアルコキシドとの重縮合反応も進行する。反応系にはポリビニルアルコール系樹脂、または、エチレン・ビニルアルコール共重合体、または、ポリビニルアルコール系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコール共重合体が存在するため、ポリビニルアルコール系樹脂およびエチレン・ビニルアルコール共重合体が有する水酸基との反応も生じる。なお、生成する重縮合物は、例えば、Si−O−Si、Si−O−Zr、Si−O−Ti等の結合からなる無機質部分と、シランカップリング剤に起因する有機部分とを含有する複合ポリマーである。かかる反応において、例えば、下記の式(I)に示される部分構造式を有し、さらに、シランカップリング剤に起因する部分を有する直鎖状のポリマーがまず生成する。
式(I)で表わされるポリマーは、OR基(エトキシ基などのアルコキシ基)を、直鎖状のポリマーから分岐した形で有する。このOR基は、存在する酸が触媒となって加水分解されてOH基となり、ゾルゲル法触媒(塩基触媒)の働きにより、まず、OH基が、脱プロトン化し、次いで、重縮合が進行する。すなわち、このOH基が、下記の式(II)に示されるポリビニルアルコール系樹脂、または、下記の式(III)に示されるエチレン・ビニルアルコール共重合体と重縮合反応し、Si−O−Si結合を有する、例えば、下記の式(IV)に示される複合ポリマー、あるいは、下記の式(V)および(VI)に示される共重合した複合ポリマーを生じると考えられる。
上記の反応は常温で進行し、ガスバリア性組成物は、調製中に粘度が増加する。このガスバリア性組成物を、基材フィルム上の蒸着膜の上に塗布し、加熱して溶媒および重縮合反応により生成したアルコールを除去すると重縮合反応が完結し、基材フィルム上の蒸着膜の上に透明な塗布膜が形成される。なお、塗布膜を複数層積層する場合には、層間の塗布膜中の複合ポリマー同士も縮合し、層と層との間が強固に結合する。
さらに、シランカップリング剤の有機反応性基や、加水分解によって生じた水酸基が、基材フィルム、または、基材フィルム上の有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜の表面の水酸基等と結合するため、基材フィルム、または蒸着膜表面と、塗布膜との接着性も良好なものとなる。このように、本発明においては、有機珪素化合物、金属または金属酸化物を蒸着してなる蒸着膜とガスバリア性塗布膜とが、例えば、加水分解・共縮合反応による化学結合、水素結合、あるいは、配位結合などを形成するため、蒸着膜とガスバリア性塗布膜との密着性が向上し、その2層の相乗効果により、より良好なガスバリア性の効果得ることができる。
なお、本発明においては、添加される水の量をアルコキシド類1モルに対して0.8〜2モル、好ましくは1.0〜1.7モルとした場合には、上記直鎖状のポリマーが形成される。このような直鎖状ポリマーは結晶性を有し、非晶質部分の中に多数の微小の結晶が埋包された構造をとる。このような結晶構造は、結晶性有機ポリマー(例えば、塩化ビニリデンやポリビニルアルコール)と同様であり、さらに極性基(OH基)が部分的に分子内に存在し、分子の凝集エネルギーが高く分子鎖剛性も高いため、特にガスバリア性(O2、N2、H2O、CO2、その他等の透過を遮断、阻止する)に優れている。さらに、この水酸基によって接着性樹脂層と化学的に結合し、強固な積層構造を形成することができる。
本発明において、ガスバリア性組成物を塗布する方法としては、例えば、グラビアロールコーターなどのロールコート、スプレーコート、スピンコート、デイツピング、刷毛、バーコード、アプリケータ等の塗布手段により、1回あるいは複数回の塗布で、乾燥膜厚が、0.01〜30μm、好ましくは、0.1〜10μmの塗布膜を形成する方法を挙げることができ、さらに、通常の環境下、50〜300℃、好ましくは、70〜200℃で、0.005〜60分間、好ましくは、0.01〜10分間、加熱・乾操することにより、縮合が行われ、ガスバリア性塗布膜を形成することができる。このようなガスバリア性積層フィルムの厚さは、好適には12〜30μmである。
本発明においては、図示はしないが、印刷層を設けることができる。かかる印刷層には、通常のインキビヒクルの1種または2種以上を主成分とし、これに、必要ならば、可塑剤、安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、硬化剤、架橋剤、滑剤、帯電防止剤、充填剤、その他等の添加剤の1種または2種以上を任意に添加し、さらに、染料・顔料等の着色剤を添加し、溶媒、希釈剤等で充分に混練してインキ組成物を調整して得たインキ組成物を使用することができる。このようなインキビヒクルとしては、公知のもの、例えば、あまに油、きり油、大豆油、炭化水素油、ロジン、ロジンエステル、ロジン変性樹脂、シェラック、アルキッド樹脂、フェノール系樹脂、マレイン酸樹脂、天然樹脂、炭化水素樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アクリルまたはメタクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ゴム、環化ゴム等の1種または2種以上を併用することができる。なお、印刷方法は、グラビア印刷のほか、凸版印刷、スクリーン印刷、転写印刷、フレキソ印刷等の印刷方式を採用してもよい。
本発明においては、ヒートシール層4と基材樹脂層3、目的に応じてガスバリア層1等を積層する際、ラミネート用接着剤を用いて、ラミネート用接着剤層2a、2bを形成してもよい。ラミネート用接着剤としては、例えば、ポリ酢酸ビニル系接着剤、アクリル酸のエチル、ブチル、2−エチルヘキシルエステル等のホモポリマー、または、これらとメタクリル酸メチル、アクリロニトリル、スチレン等との共重合体等からなるポリアクリル酸エステル系接着剤、シアノアクリレート系接着剤、エチレンと酢酸ビニル、アクリル酸エチル、アクリル酸、メタクリル酸等のモノマーとの共重合体等からなるエチレン共重合体系接着剤、セルロース系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤、ポリイミド系接着剤、尿素樹脂またはメラミン樹脂等からなるアミノ樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリウレタン系接着剤、反応型(メタ)アクリル系接着剤、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム等からなるゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、アルカリ金属シリケート、低融点ガラス等からなる無機系接着剤等を挙げることができる。
接着剤の組成系は、水性型、溶液型、エマルジョン型、分散型等のいずれの組成物形態でもよく、また、その性状は、フィルム・シート状、粉末状、固形状等のいずれの形態でもよい。さらに、接着機構については、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれの形態でもよい。
本発明においては、ラミネート用接着剤層2a、2bは、例えば、ロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法等のコート法、印刷法等によって形成することができ、そのコーティング量としては、0.1〜10.0g/m2(乾爆状態)が望ましい。
次に本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の一好適な実施の形態の積層体としては、ガスバリア層1、基材樹脂層3およびヒートシール層4を構成する樹脂を調製し、それらを、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を使用して共押出成形することで、ガスバリア層1、基材樹脂層3、およびヒートシール層4を構成する樹脂層の順に積層された3層の共押出製膜化フィルムからなる積層体を挙げることができる。図示例においては、これらの層はラミネート用接着剤層2a、2bを介して積層されているが、これらの場合においては、定法に従って、ラミネート接着性樹脂を介してガスバリア層1、基材樹脂層3およびヒートシール層4を積層すればよい。
また、他の好適な実施の形態の積層体としては、図示はしないが、ガスバリア層およびヒートシール層を構成する樹脂を調製し、それらを、Tダイ共押出機、インフレーション共押出機等を使用して共押出成形することで、ガスバリア層およびヒートシール層とが順次積層された2層の共押出製膜化フィルムを挙げることができる。
次に本発明の包装体について説明する。
本発明の包装体は、本発明の積層体が製袋されてなるものであり、例えば、本発明の積層体のヒートシール層4の面を対向して重ね合わせ、その周辺端部をヒートシールしてシール部を形成して製造することができる。その製造方法としては、本発明の積層体を、折り曲げるかまたは重ね合わせて、その内層の面を対向させ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型等のヒートシール形態によりヒートシールして、本発明の包装体を製造することができる。その他、例えば、自立性包装用袋(スタンディングパウチ)等も可能である。
本発明においては、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
本発明においては、包装体の開口部から、例えば、内容物を充填し、その後、包装体内の空気を脱気して減圧状態にしながら真空包装すれば、特に包装体内に残存する酸素などによる酸化を効率的に防止することができる。
本発明の積層体は、ヒートシール性を充分に確保しつつ、消臭性能を有しているため、包装体として用いられた場合は、その内容物から発生する臭味を除去することができる。また、本発明の積層体は、容器本体と蓋材とからなる包装容器の蓋材などとしても使用することができる。容器本体が、ポリプロピレン製の碗型または舟形容器であり、その開口部のフリンジを介して本発明の積層体を蓋材として、内容物収納後に蓋材をヒートシールして、包装容器とすることができる。本発明の包装体は、目的に応じて、ガスバリア層等を設けることができるため、この場合、ガスバリア層によって酸素や水蒸気の透過を防止することができ、内容物の保存性に優れる。
以下、本発明を、実施例を用いて、より詳細に説明する。
<実施例1>
メソポーラスシリカとしてTMPS−4.0(太陽化学(株):平均細孔直径4.2nm、比表面積1159.0m2/g、細孔容積1.020cm3/g、嵩比重0.184g/cm3、平均粒子径11.0μm、吸油量595ml/100g)を、ポリエチレン(SP2020:(株)プライムポリマー社)に対して1質量%添加した混練樹脂を、50μm、設定温度170℃にして製膜し、ヒートシール層用フィルムを作製した。
<実施例2>
メソポーラスシリカをTMPS−1.5(太陽化学(株):平均細孔直径1.8nm、比表面積1019.0m2/g、細孔容積0.373cm3/g、嵩比重0.281g/cm3、平均粒子径3.2μm、吸油量201ml/100g)としたこと以外は実施例1と同様の手順でヒートシール層用フィルムを作製した。
<実施例3>
TMPS−4.0の添加量を30質量%としたこと以外は実施例1と同様の手法でヒートシール層用フィルムを作製した。
<実施例4>
TMPS−4.0の添加量を0.05質量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順でヒートシール層用フィルムを作製した。
<比較例1>
TMPS−4.0の添加量を0.005質量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順でヒートシール層用フィルムを作製した。
<比較例2>
TMPS−4.0の添加量を60質量%としたこと以外は、実施例1と同様の手順でヒートシール層用フィルムを作製した。
<従来例>
メソポーラスシリカを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の手順でヒートシール層用フィルムを作成した。
<官能評価>
実施例1〜4および比較例1、2および従来例のヒートシール層用フィルムの片面にコロナ処理を施した後、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、2液硬化型ウレタン系接着剤でドライラミネートして、透明バリアPET(12μm)/接着剤/ヒートシール層用フィルム(50μm)の積層体を作製した。この積層体を用いて2枚を90mm×90mmの大きさに切り取り、シール幅10mmにて3方平パウチを作製した。この平パウチにえびせんを1枚入れ、残りの1辺をシールして密封し、常温で2カ月保存後のアンモニア臭の有無を官能評価した。臭味を感じない場合を○、臭味を感じる場合を×とした。得られた結果を表1に示す。
<ヒートシール性>
実施例1〜4および比較例1、2および従来例のヒートシール層用フィルムの片面にコロナ処理を施した後、厚さ12μmのシリカ蒸着ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと、2液硬化型ウレタン系接着剤でドライラミネートして、透明バリアPET(12μm)/接着剤/ヒートシール層用フィルム(50μm)の積層体を作製した。得られた積層体から15mm幅の2片を切り出して、2を重ねて、200℃、0.1MPaで1秒間加熱加圧してヒートシールした。得られた2片の幅15mmのヒートシール層用フィルムを剥離角度90°(Tピール)、剥離速度300mm/min.で剥離するヒートシール強度を測定した。評価結果を表1に示す。
表1より、本発明の積層体に係るヒートシール層用の樹脂は消臭性能に優れており、本発明の積層体をヒートシールして包装体を製造した場合、得られた包装体も消臭性能が優れていることがわかる。