JP2013033980A - 磁性流体用金属粉末 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ダンパー1は、上下端が閉塞した円筒状のシリンダ2と、このシリンダ2の天井部21を貫通し、シリンダ2内に延伸するよう設けられたピストンロッド31と、ピストンロッド31の下端に設けられ、シリンダ2内を上下に摺動するピストン3と、シリンダ2内に収納された磁性流体10とを有している。また、ダンパー1には、磁性流体10に磁界を付与する磁界形成手段が設けられている。また、磁性流体10は、Fe−B系金属材料で構成された粒子を含んでいる。ダンパー1では、磁性流体10に付与する磁界の有無や強度を調整することにより、その減衰力を調整することができる。
【選択図】図1
Description
このような磁性流体は、外部磁界に応じて、その粘度や流動性が変化する性質を有する。このため、この性質を利用し、減衰力を自在に変化させることができるダンパー(緩衝器)が実用化されている。
このような減衰力可変ダンパーに用いる磁性流体としては、例えば、表面を界面活性剤等で被覆した、主に鉄とフェライトの混合物を含む粒子を、ヒマシ油のような植物油の誘導体に分散してなる磁性流体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、フェライトのような飽和磁束密度が比較的低い材料では、外部磁界の変化に対して、磁性流体の流体特性の変化に著しく時間を要することがある。この場合、減衰力特性の変化を高い精度で制御することが困難となる。
本発明の磁性流体は、表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、
該磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有し、
前記磁性粒子が、Fe−B系金属で構成されていることを特徴とする。
これにより、流体特性の長期安定性に優れ、かつ、外部磁界に対する流体特性の変化の応答性に優れた磁性流体が得られる。
これにより、Bによる融点降下作用が十分に発揮され、異形状が少なく粒径の揃った磁性粒子が得られるとともに、相対的にFeの含有率が低くなり過ぎて、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度等)が著しく低下するのを防止することができる。
これにより、磁性粒子は、Feによる優れた磁気特性(飽和磁束密度等)と、Bによる磁性粒子の形状特性向上とを高度に両立するものとなる。
本発明の磁性流体では、前記Fe−B系金属は、さらに、Crを0.1〜5質量%の割合で含むものであることが好ましい。
Crは、Feが酸化するより先に酸化する上、その酸化物は化学的に極めて安定である。したがって、磁性粒子においてFeが酸化され難くなり、その結果、磁性粒子の酸化が防止されることとなる。
これにより、磁性流体において、流体特性の最適化を図ることができる。
本発明の磁性流体では、前記磁性粒子の最大粒径は、50μm以下であることが好ましい。
これにより、磁性粒子の粒度バラツキを抑制し、流動性に優れた磁性流体が得られる。
これにより、磁性粒子は球形状に近いものとなるので、その形状作用によって、より破壊・欠損し難くなる。このため、耐久性に優れた磁性粒子が得られる。
このような磁性粒子を含む磁性流体は、必然的に流動性の高いものとなる。このため、このような磁性流体は、外部から付与される磁界に対してより速やかに反応することができる。そして、流体特性の変化の応答性に特に優れたものとなる。
これにより、外部磁界の変化に対して、流体特性の変化の応答性(即応性および変化量の大きさ)に優れた磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記磁性粒子は、アトマイズ法により製造されたものであることが好ましい。
これにより、各粒子が球形に近い形状をなし、かつ、異形状の粒子が少なく、粒径の揃った磁性粒子を効率よく製造することができ、このようにして得られた磁性粒子は、形状特性に優れたものとなるため、破壊・欠損を生じ難いものとなる。
これにより、磁性粉末中の磁性粒子が焼鈍され、粉末製造時に生じた残留応力を緩和することができる。これにより、残留応力に伴う磁性粒子の亀裂・割れ等を確実に防止することができる。すなわち、焼鈍処理によって、磁性粒子が劣化に至るまでに許容される応力が拡大されることになるため、磁性粒子の耐久性を高めることができる。
また、残留応力が緩和されることにより、磁性粒子同士の耐久性のバラツキを抑制することもできる。
これにより、流動性に優れるとともに、外部磁界の変化に対して十分な応答性を示す磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものであることが好ましい。
これにより、安定性に優れた磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体では、前記液相分散媒は、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものであることが好ましい。
これにより、耐久性に優れた磁性流体が得られる。
該シリンダ内を摺動し、前記シリンダ内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダ内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段とを有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とする。
これにより、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることが好ましい。
これにより、磁性流体の粘度をより厳密に調整することができ、減衰力を長期にわたって正確に調整することができるダンパーが得られる。
[ダンパー]
まず、本発明の磁性流体について説明する前に、本発明のダンパーについて説明する。
図1は、本発明のダンパーの実施形態を示す縦断面図、図2は、図1に示すダンパーの一部を拡大して示す部分拡大図、図3および図4は、図1に示すダンパーの動作を説明するための図である。なお、以下の説明では、図1ないし図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
このようなダンパー1は、ピストンロッド31の上端部に接続された部材と、シリンダ2の下端部に接続された部材との間で伸縮するように動作する。例えば、ピストンロッド31の上端部が自動車の車体に接続され、シリンダ2の下端部が車輪または車軸に接続されている場合、車体と車輪(車軸)との間隔が伸縮する際に、ダンパー1に伸縮力が付与される。
また、ダンパー1は、ピストン3内に設けられ、シリンダ2内に収納された磁性流体10に対して磁界を付与するコイル4と、コイル4に電圧を印加する電源回路5とを有している。すなわち、コイル4と電源回路5とにより、磁性流体10に磁界を付与する磁界形成手段を構成している。
ここで、磁性流体10では、後に詳述するが、磁界の有無や強度に応じて、その流体特性(粘度、流動性等)が変化する。このため、前述の磁界形成手段による磁界の有無や強度を適宜設定することにより、磁性流体10の流体特性を調整することができる。このような特性を利用することにより、ダンパー1は、その減衰力を制御し得る減衰力可変ダンパーとなる。
図1に示すシリンダ2の側面は、2層構造(複筒式)になっており、外側の外筒22と、内側の内筒23とで構成されている。
また、内筒23の内側の空間は、ピストン3の上方のロッド側室2aと、ピストン3の下方のピストン側室2bとに分けられている。
さらに、ピストン側室2bの下方には、内筒23の内側の空間を仕切るように設けられたベースバルブ24を介して、第1リザーバ室25が設けられている。
また、外筒22と内筒23との間の空間は、第2リザーバ室26である。なお、第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とは、内筒23の下端部を介して隣接している。
また、内筒23の第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とを隔てる部分には、この部分を貫通するオリフィス231が設けられており、このオリフィス231を介して、第1リザーバ室25と第2リザーバ室26とが連通している。
ピストンロッド31は、剛性の高い棒状部材で構成されており、シリンダ2の天井部21の中央部を貫通して、シリンダ2の内外に延伸している。
また、ピストン3を貫通するように、2つのオリフィス32、33が設けられている。この各オリフィス32、33により、ロッド側室2aとピストン側室2bとが連通している。
また、コイル4には、前述したように電源回路5が接続されている。そして、コイル4に電圧を印加すると、コイル4の周囲に、図2に磁力線(破線)として示すような磁界が発生する。
コイル4は、リング状の磁心と、磁心の周囲に巻き回された導線とを有する。なお、磁心と導線とは、磁心表面や導線表面に形成された樹脂製被覆層により電気的に絶縁されている。また、導線の両端が、それぞれ電源回路5に接続されている。
また、図示しないが、電源は、コイル4に印加する電圧を調整する変圧回路を有している。この変圧回路によれば、コイル4に印加する電圧を変えることができ、コイル4が発生する磁界の強度を変えることができる。
また、これらの軟磁性材料は、例えば、積層体、圧粉成形体等の形態で、磁心を構成している。
また、図1では、ピストン3に設けられた2つのオリフィス32、33に対して、1つのコイル4を用いて磁界を付与しているが、それぞれ個別のコイルを用いて磁界を付与するようにしてもよい。この場合、各コイルの動作を独立して制御することにより、ダンパー1の減衰力を、より細かく厳密に制御することができる。
まず、ダンパー1の圧縮過程について説明する。
ここでは、図3(a)に示すように、ダンパー1が伸長した状態を初期状態とする。
ダンパー1の上端部に接続された上部材8と、下端部に接続された下部材9との間の距離が縮まると、それに伴って、図3(b)に示すように、ダンパー1においてもピストン3がシリンダ2内を下方に摺動する。
さらに、ピストン側室2b内の磁性流体10の一部は、オリフィス33を通過して、ロッド側室2aへと移動する。
また、ピストン3の摺動速度が所定の速度以上になると、弁体34が閉状態から開状態となり、オリフィス231にも磁性流体10の流れが形成される。この流れの形成により、ピストン3の摺動速度がこの所定の速度以上になったとき、減衰の程度を変化させることができる。
磁界が付与されると、各オリフィス32、33中の磁性流体10では、例えば、磁力線に沿って磁性流体10中の磁性粒子(金属粒子)が配列する。
このようにして、コイル4および電源回路5を用いて、各オリフィス32、33を流れる磁性流体10の流体特性を変化させることができる。そして、ダンパー1の減衰力を変化させることができる。また、シリンダ2に比べて細径の各オリフィス32、33において、磁性流体10に磁界を付与することにより、磁性流体10の粘度をより厳密に調整することができる。
ここでは、図4(d)に示すように、ダンパー1が圧縮された状態を初期状態とする。
上部材8と下部材9との間の距離が広がると、それに伴って、図4(e)に示すように、ダンパー1においてもピストン3がシリンダ2内を上方に摺動する。
このとき、ロッド側室2a内の磁性流体10の一部が、ピストン3に押されて、オリフィス33を通過し、ピストン側室2bに押し出される。
さらに、第2リザーバ室26内の磁性流体10の一部は、各オリフィス231、231を通過して、第1リザーバ室25内に流れ込む。
このようにして、上部材8と下部材9との間の伸長力の一部が、ピストン3の摺動の駆動力や、磁性流体10の流れの駆動力へと変換されることにより、ダンパー1に吸収される。その結果、前記伸長力を緩和・減衰させることができる。
ここで、圧縮過程と同様にして、オリフィス33を流れる磁性流体10に対して磁界を付与すると、オリフィス33を流れる磁性流体10の流体特性を変化させることができ、ダンパー1の減衰力を変化させることができる。
以上のような圧縮過程と伸長過程とを連続的に行うことにより、ダンパー1は、上部材8と下部材9との間に発生する伸長力および圧縮力を、それぞれ緩和させることができる。
次に、以上のようなダンパー1に用いることができる磁性流体(本発明の磁性流体)10について説明する。
本発明の磁性流体は、表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、この磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有している。このうち、磁性粒子は、Fe−B系金属材料で構成されたものである。
前述したように、ダンパー1では、付与される磁界の有無や強度に応じて、磁性流体の流体特性が変化することを利用して、その減衰力が調整可能になっている。
ここで、従来の磁性流体では、磁性粒子として、カルボニル鉄のような鉄の粒子や、フェライト粒子等が用いられていた。
さらに、フェライト粒子等は、飽和磁束密度が低いため、磁性流体中において外部磁界に対する磁化が弱くなり、磁化力を十分に得ることができなかった。
そこで、本発明の磁性流体では、前述したように、磁性粒子としてFe−B系金属材料で構成された粒子を用いることとした。
また、異形状が少ない磁性流体は、流動性の高いものとなる。このため、このような磁性流体は、外部から付与される磁界に対して速やかにかつ滑らかに反応することができる。そして、流体特性の変化の応答性に優れたものとなる。
以上のことから、Fe−B系金属で構成された磁性粒子を含む本発明の磁性流体を用いれば、ダンパー1の減衰力を長期にわたって安定的に制御することができる。
また、粘性の低い溶湯を用いることにより、例えばアトマイズ法によって磁性粒子を製造する場合、溶湯をより細かく分断することができる。その結果、より微細な磁性粒子を得ることもできる。
磁性粒子を構成するFe−B系金属は、Feを主成分とし、B(ホウ素)を含む金属(Fe基合金)材料である。
具体的には、Fe−B系金属におけるBの含有率は、0.1〜5質量%程度であるのが好ましく、0.1〜2質量%程度であるのがより好ましい。Bの含有率を前記範囲内とすることにより、磁性粒子において、Bによる融点降下作用が十分に発揮されるとともに、相対的にFeの含有率が低くなり過ぎて、磁性粒子の磁気特性(飽和磁束密度等)が著しく低下するのを防止することができる。
また、磁性粒子を構成するFe−B系金属は、その構成元素として、さらに、Cr(クロム)を好ましくは0.1〜5質量%程度、より好ましくは0.1〜3質量%程度含んでいてもよい。Crは、Feが酸化するより先に酸化する性質を有する。また、Crの酸化物は化学的に極めて安定である。このようなCrの性質によりFeが酸化され難くなる。その結果、磁性粒子の酸化が防止されることとなる。
さらに、Crを含んだFe−B系金属の表面には、不働態被膜と呼ばれる化学的に安定な被膜が自然に形成される。この不働態被膜は、一般に酸化クロム等の金属酸化物で構成され、耐候性、耐酸化性に優れた被膜である。したがって、表面に不働態被膜が形成された磁性粒子は、耐酸化性に優れたものとなり、長期にわたって機械的特性の低下を確実に防止することができる。その結果、磁性粒子が破壊・欠損するのを特に確実に防止することができる。
さらに、磁性粒子を構成するFe−B系金属は、その構成元素として、さらに、P(リン)、S(硫黄)およびMn(マンガン)のうちの少なくとも1種の補助剤を含んでいてもよい。このような補助剤は、Fe−B系金属の硬度を高めることができる。このため、補助剤を含むFe−B系金属で構成された磁性粒子は、耐摩耗性に優れたものとなり、破壊・欠損の発生をさらに確実に防止し得るものとなる。
ここで、P、Sの含有率は、それぞれ、好ましくは0.01〜0.5質量%程度、より好ましくは0.05〜0.3質量%程度とされる。これにより、磁性粒子の脆性が著しく増大してしまうのを防止しつつ、Fe−B系金属の硬度を高めることができる。また、磁性粒子の磁気特性を損なうことなく、Fe−B系金属の溶湯の温度を十分に下げることができ、異形状が少なくかつ粒径の揃った磁性粒子を確実に得ることができる。
なお、このようなFe−B系金属は、その製造時に不可避的に含まれる不純物を含んでいてもよい。その場合、これらの不純物の含有率の合計は、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下に調整される。
なお、上記の最大粒径とは、累積重量が99.9%となる粒径のことを言う。
また、磁性粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたとき、S/Lで定義される磁性粒子のアスペクト比の平均値は、0.4〜1程度であるのが好ましく、0.7〜1程度であるのがより好ましい。このようなアスペクト比の磁性粒子は、その形状が比較的球形に近くなるので、形状作用によって、より破壊・欠損し難くなる。このため、耐久性に優れた磁性粒子が得られる。なお、前述したように、Fe−B系金属に各種補助剤を添加することによって、磁性粒子の形状を球形に近づけることができる。すなわち、アスペクト比を1に近づけることができる。
また、磁性粒子の飽和磁束密度は、できるだけ大きければよいが、1.7T以上であるのが好ましく、1.9T以上であるのがより好ましい。磁性粒子の飽和磁束密度が前記範囲内であれば、外部磁界の変化に対して、流体特性の変化の応答性(即応性および変化量の大きさ)に優れた磁性流体が得られる。
このような磁性粒子は、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、アトマイズ法、粉砕法等の方法で製造されたものを用いることができる。
このうち、磁性粒子は、アトマイズ法で製造されたものが好ましい。
このうち、アトマイズ法としては、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法を用いるのが好ましい。これらのアトマイズ法によれば、冷却媒として比重の大きい媒体(例えば、水等)を用いるため、溶湯をより微細に分断することができる。これにより、平均粒径の小さい微細な磁性粒子を容易に製造することができる。
また、磁性粒子は、焼鈍処理を施したものが好ましい。
このような磁性粒子の表面は、界面活性剤で覆われている。
界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、オレイン酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩のような各種陰イオン(アニオン)界面活性剤、アミノ酸塩、第4級アンモニウム塩のような各種陽イオン(カチオン)界面活性剤、グリセリン脂肪酸エステルのようなエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのようなエーテル型、脂肪酸ポリエチレングリコールのようなエステル・エーテル型等の各種非イオン(ノニオン)界面活性剤、アルキルベタインのような各種両性界面活性剤等が挙げられる。
界面活性剤は、分子内に、親水性の部分と、疎水性の部分とを有するものである。例えば、磁性粒子を分散させる液相分散媒としてオイルを用いた場合、磁性粒子と液相分散媒との界面に沿って界面活性剤の分子が配列する。このとき、界面活性剤の分子の親水性部分が磁性粒子側に配向し、疎水性部分は液相分散媒側に配向する。
また、液相分散媒としては、水のような水系分散媒、炭化水素系オイル、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、エステル系オイル、エーテル系オイル等が挙げられる。
このうち、特に、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものが好ましい。これらのオイルは、耐熱性および化学的な安定性に優れることから、磁性流体の液相分散媒として特に好適に用いられる。すなわち、耐久性に優れた磁性流体が得られる。
以上、本発明の磁性流体およびダンパーについて、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の磁性流体は、前述したダンパーに用いられる他、回転軸のシール部材、スピーカー、センサ等にも用いることができる。
1.ダンパーの製造
(実施例1)
[1]まず、以下の組成の原材料を高周波誘導炉で溶融するとともに、水アトマイズ法により粉末化して、金属粉末(磁性粒子)を得た。次いで、目開き32μmの標準ふるいを用いて32μmで分級した。
・B :0.05質量%
・P :0.009質量%
・S :0.003質量%
・Mn:0.06質量%
・Fe:残部
・その他、不可避的に存在する微量元素(Si、C等)を含む。
また、得られた金属粉末の飽和磁束密度を測定したところ、飽和磁束密度が2.05Tであった。また、金属粉末の平均粒径は6μm、最大粒径は32μm、アスペクト比の平均値は0.7であった。
次いで、得られた金属粉末に対し、水素雰囲気下で、温度800℃×1時間の焼鈍処理を施した。
なお、磁性流体中の金属粉末の含有率は、80質量%であった。
[3]次に、得られた磁性流体をダンパーのシリンダ内に注入し、ダンパーを作製した。
(実施例2〜17)
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更するとともに、金属粉末の製造方法(粉末化方法)を水アトマイズ法からガスアトマイズ法に変更した以外は、前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
(実施例19)
焼鈍処理を省略した以外は、前記実施例7と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
原材料の組成を、表1に示す組成に変更した以外は、それぞれ前記実施例1と同様にして金属粉末を得るとともにダンパーを作製した。
なお、得られた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
粉砕法によって製造されたカルボニル鉄の粉末を用いるようにした以外は、前記実施例1と同様にしてダンパーを作製した。
なお、用いた金属粉末の平均粒径、最大粒径、アスペクト比の平均値、および飽和磁束密度を、それぞれ表1に示す。
また、分級は省略した。
各実施例および各比較例で得られたダンパーについて、それぞれ、伸縮動作を1万回行った。
なお、伸縮動作をまず1000回行った時点で、シリンダ内から磁性流体を取り出し、磁性流体中の金属粉末を走査型電子顕微鏡で観察した。
その後、取り出した磁性流体をシリンダ内に戻し、残る9000回の伸縮動作を行った。
以上のようにして1000回の伸縮動作後の金属粉末および1万回の伸縮動作後の金属粉末について、それぞれの形状を以下の基準にしたがって評価することにより、金属粉末(磁性粒子)の耐久性を評価した。
◎:磁性粒子の形状が評価前からほぼ変化していない
○:一部の磁性粒子に破壊・欠損が認められる
△:多数の磁性粒子に破壊・欠損が認められる
×:ほぼ全ての磁性粒子に破壊・欠損が認められる
以下、磁性粒子の耐久性の評価結果を表1に示す。
一方、各比較例で用いた磁性粒子は、多数の磁性粒子に破壊・欠損が認められたものが多かった。
また、各実施例で用いた磁性粒子には、耐久性の評価後も、錆の発生がほとんど認められなかった。一方、各比較例で用いた磁性粒子では、多数の粒子に錆の発生が認められた。
このようなタップ密度(形状特性)が高い磁性粒子を含む磁性流体は、流動性に優れるとともに、外部応力に対する耐久性に優れたものとなる。このため、各実施例で得られた磁性流体は、長期にわたって、高い応答性で滑らかな緩衝が可能なダンパーを実現し得るものであることが明らかとなった。
さらに、焼鈍処理により、磁性粒子の耐久性を高め得ることが明らかとなった。
本発明の磁性流体用金属粉末は、磁性流体に使用される金属粉末であって、
Feを90〜98.382質量%の割合で含み、Bを0.1〜2.68質量%の割合で含み、Crを0.1〜5質量%の割合で含むFe基合金で構成され、
前記金属粉末の表面が不働態被膜で覆われていることを特徴とする。
これにより、流体特性の長期安定性に優れ、かつ、外部磁界に対する応答性に優れた磁性流体を実現可能な磁性流体用金属粉末が得られる。
Feを90〜98.382質量%の割合で含み、Bを0.1〜2.68質量%の割合で含み、Crを0.1〜5質量%の割合で含むFe基合金で構成され、
前記金属粉末の表面が酸化クロムを含む金属酸化膜で覆われていることを特徴とする。
本発明の磁性流体用金属粉末では、前記Fe基合金は、さらに、Mn(マンガン)を0.1〜2質量%の割合で含むことが好ましい。
これにより、磁性流体において、流体特性の最適化を図ることができる。
本発明の磁性流体用金属粉末では、前記金属粉末の最大粒径は、50μm以下であることが好ましい。
これにより、磁性流体用金属粉末の粒度バラツキを抑制し、流動性に優れた磁性流体が得られる。
これにより、磁性流体用金属粉末は球形状に近いものとなるので、その形状作用によって、より破壊・欠損し難くなる。このため、耐久性に優れた磁性流体用金属粉末が得られる。
このような磁性流体用金属粉末を含む磁性流体は、必然的に流動性の高いものとなる。このため、このような磁性流体は、外部から付与される磁界に対してより速やかに反応することができる。そして、流体特性の変化の応答性に特に優れたものとなる。
これにより、外部磁界の変化に対して、流体特性の変化の応答性(即応性および変化量の大きさ)に優れた磁性流体が得られる。
本発明の磁性流体用金属粉末では、前記金属粉末は、水アトマイズ法または高速回転水流アトマイズ法により製造されたものであることが好ましい。
これにより、各粒子が球形に近い形状をなし、かつ、異形状の粒子が少なく、粒径の揃った磁性流体用金属粉末を効率よく製造することができ、このようにして得られた磁性流体用金属粉末は、形状特性に優れたものとなるため、破壊・欠損を生じ難いものとなる。
Claims (16)
- 表面を界面活性剤で覆われた磁性粒子と、
該磁性粒子を分散させる液相分散媒とを有し、
前記磁性粒子が、Fe−B系金属で構成されていることを特徴とする磁性流体。 - 前記Fe−B系金属は、Bを0.1〜5質量%の割合で含むFe基合金である請求項1に記載の磁性流体。
- 前記Fe−B系金属におけるFeの含有率は、90〜99.9質量%である請求項1または2に記載の磁性流体。
- 前記Fe−B系金属は、さらに、Crを0.1〜5質量%の割合で含むものである請求項1ないし3のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子の平均粒径は、0.1〜25μmである請求項1ないし4のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子の最大粒径は、50μm以下である請求項1ないし5のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子の短径をS[μm]とし、長径をL[μm]としたとき、S/Lで定義される前記磁性粒子のアスペクト比の平均値は、0.4〜1である請求項1ないし6のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子のタップ密度は、3.5g/cm3以上である請求項1ないし7のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子の飽和磁束密度は、1.7T以上である請求項1ないし8のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子は、アトマイズ法により製造されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記磁性粒子は、温度600〜1000℃×0.5〜10時間の加熱条件で焼鈍処理を施したものである請求項1ないし10のいずれかに記載の磁性流体。
- 当該磁性流体における前記磁性粒子の含有率は、50〜95質量%である請求項1ないし11のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記界面活性剤は、オレイン酸塩を主成分とするものである請求項1ないし12のいずれかに記載の磁性流体。
- 前記液相分散媒は、炭化水素系オイル、シリコーン系オイルまたはフッ素系オイルを主成分とするものである請求項1ないし13のいずれかに記載の磁性流体。
- 請求項1ないし14のいずれかに記載の磁性流体を貯留するシリンダと、
該シリンダ内を摺動し、前記シリンダ内の空間を2つに仕切るピストンと、
一端が前記ピストンに接続され、他端が前記シリンダの外部に位置するピストンロッドと、
前記シリンダ内に貯留された前記磁性流体に及ぶように磁界を形成する磁界形成手段とを有し、
磁界の作用によって前記磁性流体の流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得ることを特徴とするダンパー。 - 前記ピストンに形成され、前記2つの空間と互いに連通する流路を有し、
前記磁界形成手段が前記流路近傍に設けられており、前記流路を通過する前記磁性流体に及ぶように磁界を形成して流体特性を変化させることにより、減衰力を制御し得る請求項15に記載のダンパー。
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