JP2013033106A - ホーリーファイバ - Google Patents

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Abstract

【課題】Aeffを拡大しながら、従来よりも曲げ損失の増大を抑制したホーリーファイバを提供すること。
【解決手段】コア部と、前記コア部の外周に位置し、前記コア部の周囲に層状に形成された複数の空孔と、前記コア部における光のモードフィールド半径の4倍以上の内径を有し前記コア部よりも屈折率が低い低屈折率層とを有するクラッド部と、を備える。好ましくは、前記低屈折率層は、前記複数の空孔が形成された領域よりも外側に形成されている。
【選択図】図1

Description

本発明は、ホーリーファイバに関するものである。
ホーリーファイバ(Holey Fiber:HF)、あるいはフォトニッククリスタルファイバ(PCF)は、クラッドに空孔を規則的に配列することにより、クラッドの平均屈折率を下げ、全反射の原理を用いて、光の伝送を実現する新しいタイプの光ファイバである。ホーリーファイバは、光ファイバの屈折率制御に空孔を用いることにより、従来の光ファイバでは実現不可能なEndlessly Single Mode(ESM)特性や、きわめて短波長側にシフトした零分散波長等の特異な特性を実現可能である。なお、ESMとは、カットオフ波長が存在しないことを意味し、広帯域にわたって高伝送速度の光伝送を可能にする特性である(非特許文献1参照)。
一方、ホーリーファイバは、通信用や光ファイバレーザー用の低非線形(大コア)伝送媒体としての応用も期待されている。例えば、非特許文献2では、コア径を20μm以上に拡大したフォトニッククリスタルファイバの特性を報告している。
K. Saitoh, Y. Tsuchida, M. Koshiba, and N.A. Mortensen, "Endlessly single-mode holey fiber: the influence of core design," Optics Express, vol. 13, pp. 10833-10839 (2005). M.D. Neilsen et al., "Predicting macrobending loss for large-mode area photonic crystal fibers", OPTICS EXPRESS, Vol.12, No.8, pp.1775-1779(2004) K. Saitoh et al., "Empirical relations for simple design of photonic crystal fibers", OPTICS EXPRESS, Vol.13, No.1, pp.267-274(2005)
しかしながら、コア径、あるいは有効コア断面積(Aeff)を拡大したホーリーファイバでは、短波長側での曲げ損失が増大してしまう、と言う問題が報告されている。
たとえば、従来型のホーリーファイバでは、波長1.55μmでの曲げ損失が増大してしまうと、それよりも短波長での曲げ損失はさらに増大してしまう。したがって、折角ESMという特性を有していても、Aeffを拡大すると広波長帯域での使用が困難になるという問題がある。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、Aeffを拡大しながら、従来よりも曲げ損失の増大を抑制したホーリーファイバを提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るホーリーファイバは、コア部と、前記コア部の外周に位置し、前記コア部の周囲に層状に配置された複数の空孔と、前記コア部における光のモードフィールド半径の4倍以上の内径を有し前記コア部よりも屈折率が低い低屈折率層とが形成されたクラッド部と、を備える。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記低屈折率層は、前記複数の空孔が形成された領域よりも外側に形成されている。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記低屈折率層の厚さが0μmよりも大きく、前記クラッド部に対する比屈折率差Δが0%より小さく−1.0%以上である。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記低屈折率層の厚さが3μm〜10μmである。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、波長1550nmにおける曲げ損失が、当該ホーリーファイバにおいて前記低屈折率層が無い場合の曲げ損失よりも小さい。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記複数の空孔は、三角格子を形成するように配置され、該空孔の直径をd[μm]、該三角格子の格子定数をΛ[μm]とすると、d/Λは0.45±0.2の範囲内であり、該空孔の層数は2層以上である。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記d/Λは0.45±0.05の範囲内である。
また、本発明に係るホーリーファイバは、上記の発明において、前記Λは5μm〜25μmである。
本発明によれば、Aeffを拡大しながら、従来よりも曲げ損失の増大を抑制できるという効果を奏する。
図1は、実施の形態に係るホーリーファイバの模式的な断面図である。 図2は、計算例に係るホーリーファイバの構造パラメータと光学特性とを示す図である。 図3は、比屈折率差Δと曲げ損失との関係を示す図である。 図4は、ΛとV値との関係を示す図である。 図5は、Λと閉じ込め損失との関係を示す図である。 図6は、Λとd/ΛとAeffとの関係を示す図である。 図7は、ディプレスト層が無い場合の波長と曲げ損失との関係を示す図である。
以下に、図面を参照して本発明に係るホーリーファイバの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、本明細書では、曲げ損失とは、直径(曲げ径)20mmで曲げたときのマクロの曲げ損失を意味する。また、本明細書において特に定義しない用語については、ITU−T(国際電気通信連合)G.650.1における定義、測定方法に従うものとする。また、以下ではホーリーファイバを適宜HFと記載する。
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態に係るHFの断面概略図である。図1に示すように、このHF10は、ほぼ中心に位置するコア部11と、コア部11の外周に位置するクラッド部12とを備える。なお、コア部11とクラッド部12とは、いずれも屈折率調整用のドーパントが添加されていない純シリカガラスからなる。
クラッド部12には、コア部11の周囲に層状に配置された複数の空孔13が形成されている。なお、コア部11を中心とする正六角形の各頂点および各辺上に配置した空孔13の組み合わせを1層とすると、このHF10においては、空孔13の層数は4である。また、この空孔13は、層状に配置されるとともに、三角格子Lを形成するように配置されている。空孔13の直径はいずれもdであり、三角格子Lの格子定数、すなわち空孔13の中心間距離はΛである。
さらに、クラッド部12には、コア部11およびクラッド部12よりも屈折率が低い低屈折率層であるディプレスト層14が形成されている。ディプレスト層14は、たとえば屈折率を低めるドーパントであるフッ素(F)を添加したシリカガラスからなる。ディプレスト層14はコア部11の中心軸を中心とした内半径がR、厚さがWのリング状に形成されている。また、ディプレスト層14は空孔13が形成された領域よりも外側に形成されている。これによって、ディプレスト層14と空孔13とは重ならないように配置されている。なお、クラッド部12のうち、ディプレスト層14よりも外側の部分の厚さについては、5μm以上であることが好ましい。
ここで、図7は、図1に示すHF10において、仮にディプレスト層14が無く、その部分をクラッド部12と同じ純シリカガラスで置き換えた場合の、波長と曲げ損失との関係を示す図である。なお、d/Λを0.43に固定し、Λを4μmから10μmまで変化させている。図7に示すように、曲げ損失は、Λが大きくなるにつれて、すなわちコア部11のAeffを拡大するにつれて短波長側において大きくなる。たとえば、Λが10μmの場合は、波長1.55μmでの曲げ損失が約5dB/mであっても、波長1.31μmでの曲げ損失は100dB/m以上に大きくなる。曲げ損失が100dB/mを超えると、コア部からの光の漏れが大きくなるため、光学特性が不安定になる。
これに対して、本実施の形態に係るHF10では、ディプレスト層14を形成したことによって曲げ損失の増大が抑制される。特に、HF10では、コア部11における光のモードフィールド半径の4倍以上の内径のディプレスト層14を形成することによって、ディプレスト層14は光のフィールドにあまり影響を与えない。その結果、HF10の他の光学特性を殆ど変化させずに、曲げ損失の増大だけを抑制することができる。また、このようにディプレスト層14をモードフィールドよりも十分に大きくすることによって、ディプレスト層14による高次伝搬モードの閉じ込め、伝搬が起こらないので好ましい。
つぎに、図1に示す本実施の形態に係るHF10において、ディプレスト層の内半径と厚さとを変化させた場合のHF10の光学特性について説明する。
図2は、計算例に係るHFの構造パラメータと光学特性とを示す図である。図2において、計算例のたとえば「No.120/122−1」は、ディプレスト層の内径が120μm、外径が122μmである計算例であることを示している。ただし、「No.120/122−0」は、比較としてのディプレスト層がないHFの計算例を示す。また、「Δ」は、コア部およびクラッド部に対するディプレスト層の比屈折率差を示す。「R−W」は、ディプレスト層の内半径Rと厚さWとの組み合わせを示す。たとえば、「60−1」はRが60μm、Wが1μmであることを示している。neffはコア部の実効屈折率を示す。「MFD」はモードフィールド径を示す。neff、Aeff、MFD、および曲げ損失は、波長1550nmでの値である。
図2に示すHFは、いずれもAeffが120μm以上に拡大されているものである。しかしながら、曲げ損失については、No.120/122−0のディプレスト層がない場合と比較して、ディプレスト層がある計算例はいずれも低い値であった。また、比屈折率差Δとしては0%より小さく−1.0%以上であれば、Δが小さければ小さいほど曲げ損失を低減する効果があることが確認された。内半径Rとしては60μm〜65μmであれば、Rが大きいほど曲げ損失を低減する効果があることが確認された。厚さWとしては1μm〜10μm、好ましくは3μm以上であれば、Wが大きいほど曲げ損失を低減する効果があることが確認された。
また、図2の各計算例では、neff、Aeff、MFDは、小数点以下の桁まで見ても殆ど同一である。すなわち、上記のようなΔ、R、Wの範囲内であれば、ディプレスト層の存在が、HFの光学特性であるneff、Aeff、MFDに殆ど影響を与えないことが確認された。また、図2に示すHFについては、波長1550nmにおける波長分散値も24ps/nm/km以下であり、実用的な値が得られた。また、図2に示すHFについては、特に高次モードの閉じ込め、伝搬は観測されなかった。
図3は、比屈折率差Δと曲げ損失との関係を示す図である。図3から更に明らかなように、比屈折率差Δとしては0%より小さく−1.0%以上であれば、Δが小さければ小さいほど曲げ損失を低減する効果があった。また、厚さWとしては1μm〜10μmであれば、Wが大きいほど曲げ損失を低減する効果があり、特に3μm以上の場合に効果があることが確認された。
なお、比屈折率差Δが−1.0%以上であれば、使用すべきフッ素の量も低減できるので、製造上も好ましい。
図2では、Λを10μm、d/Λを0.43に固定しているが、好ましいΛ、d/Λはこれらの値に限られない。以下に、空孔13に関する構造パラメータであるΛ、d/Λの好ましい範囲について説明する。
まず、HF10は、たとえば波長1550nmの光をシングルモードで伝搬するように構成することが望ましい。以下では、非特許文献3に開示されるV値を用いる方法を用いて、シングルモード伝搬を実現する構造パラメータについて検討する。
図4は、HF10において、d/Λの値を様々に変化させた場合の、波長1500nmにおけるΛとV値との関係を示す図である。V値が2.405以下であれば、波長1550nmでシングルモード伝搬が可能になる。したがって、図4より、d/Λが0.45±0.05の範囲内であれば、Λが5μm〜25μmの範囲において、シングルモード伝搬性を実現できるので好ましい。なお、Λについては、Aeffの拡大のためには5μm以上が好ましい。また、25μm以下であれば、HF10のクラッド径があまり大きくならず、取り扱い性の点から好ましい。
ただし、d/Λは0.45±0.05の範囲内に限られない。シングルモード伝搬の条件を満たすd/Λの範囲は、Λや空孔の層数によって変わってくるが、d/Λが大きくなるとHFがマルチモードで光を伝搬する場合があり、光信号を伝送した場合のペナルティーが大きくなる。一方、d/Λが小さいと曲げ損失が増大する。これらの問題を勘案すると、d/Λは0.45±0.2の範囲内とすることが好ましい。なお、HF10のクラッド径については、300μm以下であれば、剛性が高くならないため取り扱いの点から好ましく、特に標準の光ファイバと同様に125μm±10μmの範囲であればより好ましい。
図5は、HF10において、空孔13の層数を様々に変化させた場合の、Λと閉じ込め損失との関係を示す図である。なお、d/Λは0.45に固定している。また、閉じ込め損失は波長1550nmでの値である。「E」は10のべき乗を表す記号であり、たとえば「2.91E−02」は「2.91×10−2」を意味する。
図5に示すように、空孔層数が大きいほど閉じ込め損失は小さくなる。また、Λが大きいほど閉じ込め損失は小さくなる。空孔層数が2層以上であれば、閉じ込め損失を0.1dB/m以下にできるので好ましい。また、空孔層数が3層以上であれば、閉じ込め損失を1×10−4dB/m以下、すなわち長さ1kmあたり0.1dB以下にできるのでさらに好ましい。
図6は、HF10において、Λとd/ΛとAeffとの関係を示す図である。Aeffは波長1550nmでの値である。図6に示すように、たとえばd/Λが0.43の場合には、Λを10μmとした場合に、Aeffを120μm以上に拡大できるので好ましい。なお、図2に示すように、本実施の形態に係るHF10は、ディプレスト層14の存在によって、Λを大きくしても曲げ損失の増大を抑制できる。
以上説明したように、本実施の形態に係るホーリーファイバは、Aeffを拡大しながら、曲げ損失の増大が抑制されたものとなる。
なお、本実施の形態に係るホーリーファイバは、たとえば以下のようにして公知のスタックアンドドロー法によって製造することができる。すなわち、はじめに、純シリカガラスからなる中空の第1ガラス管内に、外径が第1ガラス管の内径程度であり、ディプレスト層を形成するためのフッ素添加ガラスからなる中空の第2ガラス管を挿入する。つぎに、第2ガラス管内に空孔を形成するための純シリカガラスからなる中空のガラスキャピラリを多数挿入してスタックして母材を形成する。そして、この母材を線引きすることによってホーリーファイバを製造することができる。
また、上記実施の形態に係るホーリーファイバでは、ディプレスト層14は空孔13が形成された領域よりも外側に形成されている。しかしながら、ディプレスト層の位置はこれに限られず、コア部における光のモードフィールド半径の4倍以上の内径のディプレスト層であればよい。したがって、空孔とディプレスト層とが重なる位置に形成されてもよい。なお、このようなホーリーファイバを製造する場合は、たとえば純シリカガラスからなる中実の母材内にディプレスト層が形成されたものに、ドリル法で空孔を形成し、これを線引きすればよい。
また、空孔の配置も、三角格子状に限られず、たとえば矩形格子状でもよい。さらに、空孔の直径も均一に限られず、不均一であってもよい。
また、本発明に係るホーリーファイバで伝搬する光の波長としては、1550nmを含む波長帯、または光ファイバ通信に信号光として使用されるたとえば1300nm〜1600nmの波長帯を使用することができる。
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上記実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明に含まれる。
10 HF
11 コア部
12 クラッド部
13 空孔
14 ディプレスト層
L 三角格子

Claims (8)

  1. コア部と、
    前記コア部の外周に位置し、前記コア部の周囲に層状に配置された複数の空孔と、前記コア部における光のモードフィールド半径の4倍以上の内径を有し前記コア部よりも屈折率が低い低屈折率層とが形成されたクラッド部と、
    を備えることを特徴とするホーリーファイバ。
  2. 前記低屈折率層は、前記複数の空孔が形成された領域よりも外側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のホーリーファイバ。
  3. 前記低屈折率層の厚さが0μmよりも大きく、前記クラッド部に対する比屈折率差Δが0%より小さく−1.0%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のホーリーファイバ。
  4. 前記低屈折率層の厚さが3μm〜10μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載のホーリーファイバ。
  5. 波長1550nmにおける曲げ損失が、当該ホーリーファイバにおいて前記低屈折率層が無い場合の曲げ損失よりも小さいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載のホーリーファイバ。
  6. 前記複数の空孔は、三角格子を形成するように配置され、該空孔の直径をd[μm]、該三角格子の格子定数をΛ[μm]とすると、d/Λは0.45±0.2の範囲内であり、該空孔の層数は2層以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載のホーリーファイバ。
  7. 前記d/Λは0.45±0.05の範囲内であることを特徴とする請求項6に記載のホーリーファイバ。
  8. 前記Λは5μm〜25μmであることを特徴とする請求項6または7に記載のホーリーファイバ。
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