JP2013028493A - 黒鉛およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】黒鉛1は、炭素と、該炭素中に原子レベルで分散するように添加されたドーパント3と、不可避不純物とで構成される。黒鉛1は、一体の固体であって、結晶化部分を含む。上記黒鉛1は、真空チャンバ内で1500℃以上の温度に基材を加熱し、該真空チャンバ内に、炭化水素ガスと、V族元素またはIII族元素を含むガスとを導入することで、上記基材上に形成可能である。
【選択図】図1
Description
本発明は、上記のような課題に鑑みなされたものであり、ドーパントが均一にドープされたドープトナノ多結晶ダイヤモンドを作製可能な黒鉛およびその製造方法を提供することを目的とする。
本実施の形態における黒鉛(グラファイト)は、該黒鉛本体を構成する炭素中に原子レベルで分散するように添加されたドーパントを備える。該黒鉛では、上記炭素中でドーパント原子がクラスター状に凝集することがなく、黒鉛全体にわたってほぼ均一に分散した状態となる。理想的には、ドーパント原子は、上記炭素中で、互いにほぼ孤立したような状態で存在する。ここで、「原子レベルで分散する」とは、本願明細書では、たとえば、真空雰囲気中で、炭素と、ドーパントとなる元素とを、気相状態で混合させて固化した場合に、黒鉛本体を構成する炭素中にドーパントが分散するレベルの分散状態をいう。
まず、真空チャンバ内で、1500℃以上3000℃以下程度の温度に基材を加熱する。加熱方法としては周知の手法を採用することができる。たとえば、基材を直接あるいは間接的に1500℃以上の温度に加熱可能なヒータを真空チャンバに設置することが考えられる。
図2に、本発明の1つの実施の形態における黒鉛を使用して作製したドープトナノ多結晶ダイヤモンド中のドーパント元素(硼素)および不純物分布の一例を示す。なお、図2に示されるドープトナノ多結晶ダイヤモンドは、上述の本実施の形態の手法で作製した硼素含有黒鉛を、10−2Paの真空雰囲気中で、2000℃で熱処理して得られたものである。また、ドーパントである硼素濃度や不純物濃度はSIMS分析にて測定した。
図2に示されるように、ダイヤモンド中のドーパント元素(硼素)濃度および各不純物の濃度の深さ方向のばらつきが小さくなっているのがわかる。また、本実施の形態における黒鉛を使用して作製したナノ多結晶ダイヤモンド中の不純物量が極めて低い値となっていることがわかる。
下記の表1に、硼素源としてのB4Cと、従来の手法で作製した黒鉛とを混合し、10−2Paの真空雰囲気中で、2000℃で熱処理することで、黒鉛に硼素を固溶して得られた硼素ドープトナノ多結晶ダイヤモンドと、本実施の形態の黒鉛を用いて作製した硼素ドープトナノ多結晶ダイヤモンドについて、B4Cの混入率を比較した結果を示す。
粒径2μm以下の純黒鉛とB4Cを混合し、この混合物を2000℃で焼成し、炭素中に硼素を固溶させた。黒鉛中の硼素濃度は0.5%であった。作製した硼素濃度0.5%の黒鉛を、超高圧装置を用いて、温度2200℃、15GPaでダイヤモンドを作製した。この多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々1μm〜100μmの大きさであり、結晶粒のサイズのばらつきは大きかった。この多結晶ダイヤモンドのヌープ硬度は75GPaであった。上記多結晶ダイヤモンドから3mm×1mmの基板を切り出し、電気抵抗を測定したところ、電気抵抗値は10Ωであった。
粒径2μm以下の純黒鉛を硼素を含む溶液に12時間浸した後に取り出し、2000℃で加熱処理を行った。黒鉛中の硼素濃度は0.003%であった。液をアルカリ性にしても、酸性にしても、有機溶媒にしても、ほとんど黒鉛中に硼素が取り込まれることは無かった。
かさ密度0.8g/cm3の黒鉛を用いてp型ドープトダイヤモンドを作製した場合、黒鉛の体積変化が大きいため、合成途中に異常が生じて装置を停止せざるを得ない状況が発生する頻度が2倍以上であった。
粒径2μm以下の純黒鉛と赤リンとを混合し、この混合物を2000℃で焼成し、炭素中にリンを固溶させた。黒鉛中のリン濃度は0.5%であった。作製したリン濃度0.5%の黒鉛を、超高圧装置を用い、温度2200℃、15GPaでダイヤモンドを作製した。この多結晶ダイヤモンド中には、肉眼でも明らかに不透明な部分と透明な部分とが存在することを確認できた。該多結晶ダイヤモンドの結晶粒径は各々100μm〜500μmの大きさであり、結晶粒のサイズのばらつきは大きかった。この多結晶ダイヤモンドの透明部分(リンドープされていない部分)のヌープ硬度は100GPaであり、不透明な部分(リンドープされている部分)のヌープ硬度は60GPaであり、これらの部分は互いに分離していた。上記多結晶ダイヤモンドから3mm×1mmの基板を切り出し、電気抵抗を測定したところ、電気抵抗値は800kΩであった。
粒径2μm以下の純黒鉛を、リンを含む溶液に12時間浸した後に取り出し、2000℃で加熱処理を行った。黒鉛中のリン濃度は0.001%以下であった。液をアルカリ性にしても、酸性にしても、有機溶媒にしても、ほとんど黒鉛中にリンが取り込まれることは無かった。
かさ密度0.8g/cm3の黒鉛を用いてn型ドープトダイヤモンドを作製した場合も、比較例3の場合と同様に、黒鉛の体積変化が大きいため、合成途中に異常が生じて装置を停止せざるを得ない状況が発生する頻度が2倍以上であった。
以上の実施例では、真空チャンバー内の真空度を20〜100Torrとし、該真空チャンバー内で、炭化水素ガスと、V族元素またはIII族元素を含むガスとを混合し、1500℃から1900℃の温度に加熱した基材上に供給することで、該基材上に、固相で、かさ密度が1.4g/cm3から2.0g/cm3である、原子レベルでV族元素やIII族元素が分散された黒鉛を作製できることを確認できた。また、当該黒鉛を用いることで、電気抵抗値が10Ω〜100Ω程度、結晶粒径(結晶粒の最大長さ)が各々10〜100nm程度の大きさのドープトナノ多結晶ダイヤモンドを作製できることも確認できた。しかし、上記以外の範囲の条件であっても、特許請求の範囲に記載の範囲であれば、所望の特性を有する黒鉛を作製できるものと考えられる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の実施の形態および実施例を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は上述の実施の形態および実施例に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
Claims (11)
- 炭素と、
前記炭素中に原子レベルで分散するように添加されたドーパントと、
不可避不純物とで構成され、
一体の固体であって、結晶化部分を含む、黒鉛。 - 前記ドーパントは、V族元素またはIII族元素である、請求項1に記載の黒鉛。
- 前記V族元素またはIII族元素の濃度は、1×1014/cm3以上1×1022/cm3以下である、請求項2に記載の黒鉛。
- 前記黒鉛は、一部に結晶化部分を含む結晶状あるいは多結晶であり、
前記黒鉛の密度は0.8g/cm3より大きい、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の黒鉛。 - 前記V族元素またはIII族元素は、気相状態で炭化水素ガスと混合されて前記黒鉛中に添加される、請求項1から請求項4のいずれかに記載の黒鉛。
- 真空チャンバ内で、1500℃以上の温度に基材を加熱する工程と、
前記真空チャンバ内に、炭化水素ガスと、V族元素またはIII族元素を含むガスとを導入し、前記基材上に前記V族元素またはIII族元素を含有する黒鉛を形成する工程と、
を備えた、黒鉛の製造方法。 - 前記黒鉛を形成する前記基材の表面を、ダイヤモンドあるいは黒鉛で構成した、請求項6に記載の黒鉛の製造方法。
- 前記炭化水素ガスと、前記V族元素またはIII族元素を含むガスとを、前記基材の表面に向けて流すようにした、請求項6または請求項7に記載の黒鉛の製造方法。
- 前記炭化水素ガスは、メタンガスである、請求項6から請求項8のいずれかに記載の黒鉛の製造方法。
- 前記V族元素を含むガスは、前記V族元素の水素化物からなる第1のガス、トリメチルリン、トリエチルリン、トリメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、ターシャリブチルホスフィンから選ばれる一つ以上のガスからなる第2のガス、トリメチルヒドラジン、アンモニアから選ばれる一つ以上のガスからなる第3のガス、トリメチル砒素、トリエチル砒素、ターシャリブチルアルシンから選ばれる一つ以上のガスからなる第4のガス、トリメチルアンチモン、トリエチルアンチモン、ターシャリブチルアンチモンから選ばれる一つ以上のガスからなる第5のガス、トリメチルビスマス、トリエチルビスマス、ターシャリブチルビスマスから選ばれる一つ以上のガスからなる第6のガスのいずれかである、請求項6から請求項9のいずれかに記載の黒鉛の製造方法。
- 前記III族元素を含むガスは、前記III族元素の水素化物からなる第1のガス、トリメチル硼素、トリエチル硼素、トリメチルボレートから選ばれる一つ以上のガスからなる第2のガス、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、ジメチルアルミニウムハイドライド、トリイソブチルアルミニウムから選ばれる一つ以上のガスからなる第3のガス、トリメチルガリウム、トリエチルガリウムから選ばれる一つ以上のガスからなる第4のガス、トリメチルインジウム、トリエチルインジウムから選ばれる一つ以上のガスからなる第5のガス、トリメチルタリウム、トリエチルタリウムから選ばれる一つ以上のガスからなる第6のガスのいずれかである、請求項6から請求項9のいずれかに記載の黒鉛の製造方法。
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JP2015030646A (ja) * | 2013-08-05 | 2015-02-16 | 住友電気工業株式会社 | ナノ多結晶ダイヤモンドおよびこれを備える工具 |
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