JP2013024279A - 無段変速機の挟圧制御装置 - Google Patents

無段変速機の挟圧制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ベルト式無段変速機の無端ベルトのスリップを防止しながら動力伝達効率の向上を図る。
【解決手段】 無端ベルトのスリップを防止するための両プーリの何れか一方の必要軸推力を求め、推定したトルク比と目標トルク比との偏差に基づく補正係数により必要軸推力を補正し、補正した必要軸推力に基づいて何れか一方のプーリの側圧を制御するので、ベルト式無段変速機の定常運転時には、トルク比のフィードバックにより必要軸推力の推定値の誤差が吸収されてプーリ側圧の制御精度が向上するだけでなく、ベルト式無段変速機の伝達トルクの変化時のようにプーリ側圧を瞬時に応答させる必要が生じた場合には、フィードフォワード制御により必要軸推力が瞬時に応答することで無端ベルトのスリップを防止することができ、制御精度および制御応答性の両立が可能になる。
【選択図】 図10

Description

本発明は、入力軸に設けた入力軸要素と出力軸に設けた出力軸要素との間で動力伝達要素を介して動力伝達を行う無段変速機において、動力伝達要素のスリップを防止しながら動力伝達効率の向上を図るために、入力軸要素または出力軸要素の一方の挟圧を制御する挟圧制御装置に関する。
入力軸に設けたドライブプーリと出力軸に設けたドリブンプーリとに無端ベルトを巻き掛け、両プーリの溝幅を変速用油圧で変化させて変速を行うベルト式無段変速機において、入力軸の変動成分と出力軸の変動成分との間に無端ベルトのスリップに起因する振幅差や位相差が発生することに着目して滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφというパラメータを導入し、これらのパラメータに基づいてプーリに加えるプーリ側圧を制御することで動力伝達効率の向上を図るものが、下記特許文献1により公知である。
特開2009−243683号公報
ところで、ベルト式無段変速機の動力伝達効率は後述するトルク比Trというパラメータに密接に関連するが、上記従来のものは滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφをパラメータとしてトルク比Trを間接的に制御するため、トルク比Trを所望の値に応答性良く制御することが困難であり、ベルト式無段変速機の動力伝達効率を充分に高めることができなかった。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、無段変速機の動力伝達要素のスリップを防止しながら動力伝達効率の向上を図ることを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源の駆動力が入力される入力軸と、前記入力軸に設けられた入力軸要素と、前記駆動源の駆動力が変速して出力される出力軸と、前記出力軸に設けられた出力軸要素と、前記入出力軸要素にそれぞれ接触して接触部分の摩擦により前記入力軸から前記出力軸に駆動力を伝達する動力伝達要素と、前記入力軸が有する任意の変動成分の前記出力軸への伝達特性に基づき、伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比を推定するトルク比推定手段と、前記入出力軸要素のうちの何れか一方の軸要素の挟圧を制御する挟圧制御手段とを備える無段変速機の挟圧制御装置であって、前記トルク比推定手段は、前記入力軸および前記出力軸の変動成分の振幅比を指標化した滑り識別子と、前記入力軸および前記出力軸の変動成分の位相差を指標化した位相遅れとの少なくとも一方から前記トルク比を推定し、前記挟圧制御手段は、前記何れか一方の軸要素の必要軸推力を求め、前記推定したトルク比と目標トルク比との偏差に基づく補正係数により前記必要軸推力を補正し、前記補正した必要軸推力に基づいて前記何れか一方の軸要素の挟圧を制御することを特徴とする無段変速機の挟圧制御装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記駆動源の負荷トルクを推定する負荷トルク推定手段を備え、前記挟圧制御手段は、前記負荷トルクと、前記何れか一方の軸要素および前記動力伝達要素間の摩擦係数とに基づいて前記必要軸推力を求めることを特徴とする無段変速機の挟圧制御装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記駆動源および前記無段変速機を搭載した移動体がクルーズ走行しているか否かを判定するクルーズ判定手段と、前記移動体が前記クルーズ状態にあるときに前記補正係数を学習する学習処理手段とを備えることを特徴とする無段変速機の挟圧制御装置が提案される。
尚、実施の形態のドライブプーリ13は本発明の入力軸要素に対応し、実施の形態のドリブンプーリ14は本発明の出力軸要素に対応し、実施の形態の無端ベルト15は本発明の動力伝達要素に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応し、実施の形態の側圧制御手段M2は本発明の挟圧制御手段に対応し、実施の形態のプーリ側圧は本発明の挟圧に対応する。
請求項1の構成によれば、無段変速機の伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比を、入力軸が有する任意の変動成分が動力伝達要素を介して出力軸に伝達される伝達特性に基いて推定する際に、入力軸および出力軸の変動成分の振幅比を指標化した滑り識別子と、入力軸および出力軸の変動成分の位相差を指標化した位相遅れとの少なくとも一方を用いるので、無段変速機の動力伝達効率に極めて密接に関連するトルク比を精度良く推定して動力伝達効率の向上を図ることができる。しかも滑り識別子あるいは位相遅れからトルク比を推定するので、それを推定するために必要なセンサの数を最小限に抑えてコストの削減を図ることができる。更に、目標とするトルク比を直接指定して的確な制御を行うことができるだけでなく、挟圧の応答性が変動成分の周波数によって変化するのを防止することができる。
また挟圧制御手段は、動力伝達要素のスリップを防止するための入出力軸要素のうちの何れか一方の軸要素の必要軸推力を求め、推定したトルク比と目標トルク比との偏差に基づく補正係数により必要軸推力を補正し、補正した必要軸推力に基づいて前記何れか一方の軸要素の挟圧を制御するので、無段変速機の定常運転時には、トルク比のフィードバックにより必要軸推力の推定値の誤差が吸収されて挟圧の制御精度が向上するだけでなく、無段変速機の伝達トルクの変化時のように挟圧を瞬時に応答させる必要が生じた場合には、フィードフォワード制御により必要軸推力が瞬時に応答することで動力伝達要素のスリップを防止することができ、制御精度および制御応答性の両立が可能になる。
また請求項2の構成によれば、挟圧制御手段は駆動源の負荷トルクと、何れか一方の軸要素および動力伝達要素間の摩擦係数とに基づいて必要軸推力を求めるので、必要軸推力を簡単に精度良く求めることができる。
また請求項3の構成によれば、クルーズ判定手段は駆動源および無段変速機を搭載した移動体がクルーズ走行しているか否かを判定し、学習処理手段は移動体がクルーズ状態にあるときに補正係数を学習するので、何らかの理由で一時的に補正係数が算出不能になった場合でも経年変化が生じない短時間であれば挟圧制御を精度良く継続することができるだけでなく、学習を行わない場合に比べて目標トルク比への収束性を高めることができる。
ベルト式無段変速機の全体構造を示す図。(第1の実施の形態) ベルト式無段変速機の変速制御および側圧制御の説明図。(第1の実施の形態) プーリの変速制御および側圧制御を決定するフローチャート(第1の実施の形態) プーリ側圧と動力伝達効率との関係を示すグラフ。(第1の実施の形態) トルク比と動力伝達効率との関係を示グラフ。(第1の実施の形態) トルク比とベルトスリップとの関係を示す図。(第1の実施の形態) 入力軸回転数の変動波形および出力軸回転数の変動波形を示す図。(第1の実施の形態) 変動成分の周波数および滑り識別子からトルク比を検索するマップを示す図。(第1の実施の形態) 変動成分の周波数および位相遅れからトルク比を検索するマップを示す図。(第1の実施の形態) プーリ側圧の制御系のブロック図。(第1の実施の形態) 目標トルク比の設定の一例を示す図。(第1の実施の形態) 目標トルク比の設定の他の例を示す図。(第1の実施の形態) 従来例の制御および本発明の制御を比較する図。(第1の実施の形態) 従来例のトルク比の制御結果および本発明のトルク比の制御結果を比較する図。(第1の実施の形態) トルク比検出可否判断のフローチャート。(第1の実施の形態) 学習処理のフローチャート。(第1の実施の形態) 実施の形態の作用の一例を示すタイムチャート。(第1の実施の形態) 学習の効果の説明図。(第1の実施の形態) トルク比の推定手法の説明図。(第2の実施の形態) トルク比の推定手法の説明図。(第3の実施の形態) システムの固有振動数が変化する理由を説明する図。(第3の実施の形態) トルク比の推定手法の説明図。(第4の実施の形態)
以下、図1〜図18に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、自動車に搭載されるベルト式無段変速機TMは、エンジンEに接続された入力軸11と、入力軸11と平行に配置された出力軸12と、入力軸11に設けられたドライブプーリ13と、出力軸12に設けられたドリブンプーリ14と、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に巻き掛けられた金属製の無端ベルト15とを備える。ドライブプーリ13は固定側プーリ半体13aと可動側プーリ半体13bとで構成され、可動側プーリ半体13bはプーリ側圧で固定側プーリ半体13aに接近する方向に付勢される。同様に、ドリブンプーリ14は固定側プーリ半体14aと可動側プーリ半体14bとで構成され、可動側プーリ半体14bはプーリ側圧で固定側プーリ半体14aに接近する方向に付勢される。従って、ドライブプーリ13の可動側プーリ半体13bおよびドリブンプーリ14の可動側プーリ半体14bに作用させるプーリ側圧を制御し、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の一方の溝幅を増加させて他方の溝幅を減少させることで、ベルト式無段変速機TMの変速比を任意に変更することができる。
ベルト式無段変速機TMの変速比を制御する電子制御ユニットUには、入力軸回転数センサSaで検出した入力軸11の回転数と、出力軸回転数センサSbで検出した出力軸12の回転数と、エンジン回転数センサScで検出したエンジンEの回転数とに加えて、アクセル開度信号、車速信号等が入力される。電子制御ユニットUは、アクセル開度信号および車速信号に基づいてベルト式無段変速機TMのプーリ側圧を変化させる通常の変速比制御以外に、後述するトルク比Trを推定し、このトルク比Trを用いてベルト式無段変速機TMの動力伝達効率を高めるべくプーリ側圧を変化させる制御を行う。
図2に示すように、ベルト式無段変速機TMの入力トルクをTDRとし、出力トルクをTDNとし、最大伝達入力トルク、即ちドライブプーリ13および無端ベルト15間にスリップが発生する瞬間の入力トルクTDRをTmaxDRとし、最大伝達出力トルク、即ちドリブンプーリ14および無端ベルト15間にスリップが発生する瞬間の出力トルクTDNをTmaxDNとし、動力伝達効率をη、変速比をiとすると、ベルト式無段変速機TMの最大伝達トルクTmaxは,TmaxDRあるいはTmaxDN/ηiの何れか小さい方となり、TDR>Tmaxのときに、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の何れか一方がスリップする。
図3のフローチャートに示すように、例えば、ステップS1でTmaxDR>TmaxDN/ηiの場合には、出力トルクTDN>最大伝達出力トルクTmaxDNになった瞬間にドリブンプーリ14にスリップが発生するため、ステップS2でベルト式無段変速機TMの変速比を制御するためにドライブプーリ13の側圧を制御し(変速制御)、ドリブンプーリ14のスリップを防止するためにドリブンプーリ14の側圧を制御する(側圧制御).
逆に、前記ステップS1でTmaxDR≦TmaxDN/ηiの場合には、入力トルクTDR>最大伝達入力トルクTmaxDRになった瞬間にドライブプーリ13にスリップが発生するため、ステップS3でベルト式無段変速機TMの変速比を制御するためにドリブンプーリ14の側圧を変更し(変速制御)、ドライブプーリ13のスリップを防止するためにドライブプーリ13の側圧を制御する(側圧制御)。
本願発明は、上述したドライブプーリ13および無端ベルト15間、あるいはドリブンプーリ14および無端ベルト15間のスリップを防止するための側圧制御に関するものである。
ところで、ベルト式無段変速機TMの動力伝達効率を高める手段の一つとして、プーリに加えるプーリ側圧を低下させることが知られている。図4は、プーリ側圧に対する動力伝達効率および摩擦損失の関係を示すもので、プーリ側圧の減少に伴って、プーリおよび無端ベルト間のスリップが小さいミクロスリップ領域から、遷移領域を経て、プーリおよび無端ベルト間のスリップが大きいマクロスリップ領域に移行する。ミクロスリップ領域ではプーリ側圧の減少に応じて動力伝達効率が次第に向上するが、遷移領域で動力伝達効率が低下し始め、マクロスリップ領域で動力伝達効率が急激に低下する。
その理由は、無端ベルトの金属エレメントの半径方向滑りと金属リングの滑りに起因する摩擦損失の和は、プーリ側圧の減少に伴ってミクロスリップ領域からマクロスリップ領域まで一定の比較的に大きい減少率Aで減少するが、金属エレメントの接線方向滑りに起因する摩擦損失は、ミクロスリップ領域から遷移領域にかけて略一定の比較的に小さい増加率B(A>B)で増加し、マクロスリップ領域で急激に増加するためと考えられる。
最大の動力伝達効率を得るには、プーリ側圧を遷移領域の直前のミクロスリップ領域に制御することが望ましいが、プーリ側圧を過剰に減少させてしまうと、ミクロスリップ領域から遷移領域を通り越してマクロスリップ領域に入ってしまい、プーリに対して無端ベルトが大きくスリップして損傷する可能がある。従って、ベルト式無段変速機TMの耐久性を確保しながら動力伝達効率を高めるには、プーリ側圧を遷移領域の直前のミクロスリップ領域に精度良く制御することが必要となる。
そのために、本発明ではトルク比Trというパラメータを導入している。トルク比Trは、
Tr=T/Tmax …(1)
で定義されるもので、Tはベルト式無段変速機TMが現在伝達しているトルク(極端なスリップが発生している場合を除き、入力トルクTDRに一致する)であり、Tmaxはベルト式無段変速機TMが現在の軸推力(つまり、プーリ側圧×プーリピストンの受圧面積)でスリップせずに伝達可能な最大トルクである。トルク比Tr=0は動力伝達が行われていない状態に対応し、トルク比Tr=1は現在伝達しているトルクが飽和した状態に対応し、トルク比Tr>1はマクロスリップが発生してしまったか、それに遷移している状態に対応する。
図5に示すように、変速比がODの状態および変速比がMIDの状態では、トルク比Trが1.0で最大の動力伝達効率が得られる。また変速比がLOWの状態では、最大の動力伝達効率が得られるトルク比Trは0.9に低下するが、トルク比Trが1.0でも依然として高い動力伝達効率が得られることが分かる。つまり、トルク比Trというパラメータは動力伝達効率と極めて高い相関関係があり、このトルク比Trが1.0に近い値になるようにベルト式無段変速機TMのプーリ側圧を制御することで動力伝達効率を高めることができ、しかもマクロスリップの発生を防止してベルト式無段変速機TMの耐久性を確保することができる。
トルク比Trを算出する際に必要な最大伝達可能トルクTmaxは、ドライブプーリ13を側圧制御する場合、即ちドライブプーリ13がスリップする場合には、
Tmax=2μRQ/cosα …(2)
で与えられ、ドリブンプーリ14を側圧制御する場合、即ちドリブンプーリ14がスリップする場合には、
Tmax=2μRQ/ηicosα …(3)
で与えられる。ここで、μは側圧制御される側のプーリ13,14および無端ベルト15間の摩擦係数、Rは側圧制御される側のプーリ13,14に対する無端ベルト15の巻き付き半径、Qは側圧制御される側のプーリ13,14の軸推力、αはプーリ13,14のV角の半分の角度、ηはベルト式無段変速機TMの動力伝達効率、iは変速比である。
このように、トルク比Trを算出するには最大伝達可能トルクTmaxを算出する必要があり、最大伝達可能トルクTmaxを算出するには、プーリ13,14および無端ベルト15間の摩擦係数μ、プーリ13,14に対する無端ベルト15の巻き付き半径Rおよびプーリ13,14の軸推力Qを検出する必要があるため、多くのセンサが必要になる。これらのセンサを実際の車両に搭載することは、コストの観点から実現することが困難である。
本実施の形態は、トルク比Trを、滑り識別子IDslipと入力軸11の回転数変動の周波数f0 (変動成分の周波数f0 )とから、あるいは位相遅れΔφと入力軸11の回転数変動の周波数f0 (変動成分の周波数f0 )とから推定するものである。入力軸11の回転数変動はエンジンEの回転数変動と同期することから、入力軸11の回転数変動の周波数f0 はエンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数から算出可能であり、また後述するように、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφは入力軸回転数センサSaで検出した入力軸回転数の変動と、出力軸回転数センサSbで検出した出力軸回転数の変動とから算出可能であるため、トルク比Trを最小限の数のセンサで精度良く推定することができる。
次に、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφについて説明する。図6に示すように、トルク比Trが増加するのに伴い、ミクロスリップ領域ではベルトのスリップ量は僅かずつ増加し、マクロスリップ領域に入るとベルトのスリップ量は急激に増加する。入力軸11に無端ベルト15を介して接続された出力軸12には、入力軸11の回転数変動が無端ベルト15を介して伝達されるため、出力軸12にも同じ周波数の回転数変動が発生する。ベルトおよびプーリ間に全くスリップが存在しないとき、入力軸回転数の変動は減衰することなく出力軸に伝達されるが、トルク比Trの増加に伴ってスリップ量が増加すると、入力軸回転数の変動波形の振幅に対して出力軸回転数の変動波形の振幅が小さくなり、かつ入力軸回転数の変動波形の位相に対して出力軸回転数の変動波形の位相が遅れることになる。
図6および図7において、実線で示す入力軸回転数の変動波形に対して鎖線で示す出力軸回転数の変動波形は、トルク比Trの増加に伴って振幅が次第に減少するとともに位相が次第に遅れていることが分かる。入力軸回転数の振動波形は、
Nin=Acos(ωt+φin) …(4)
で与えられ、出力軸回転数の振動波形は、
Nout=Bcos(ωt+φout) …(5)
で与えられる。
つまり、入力軸回転数の振動波形に対して出力軸回転数の振動波形は、振幅がAからBに減少し、位相がφin−φoutだけ遅れることになる。
次に、滑り識別子IDslipの算出の手法を説明する。
先ず、入力軸11の回転数の変動周波数f0 を、エンジンEの気筒数nと、エンジン回転数の直流成分Neとを用いて、次式により算出する。エンジン回転数の直流成分Neは、通常のエンジンEに必ず備えられているエンジン回転数センサScにより検出可能である。
Figure 2013024279
滑り識別子IDslipは、変動周波数f0 における入力軸11と出力軸12との間の振幅比Mを、ベルト式無段変速機TMの幾何学的な応答、即ち滑りや励振の影響を受けない場合の振幅比Mgにより標準化したものであり、次式により定義される。
Figure 2013024279
入力軸11の回転数の変動周波数f0 の関数である振幅比Mは次式で定義されるもので、変動周波数f0 はエンジン回転数センサScが出力するエンジン回転数から算出可能であり、Sin(f0 )は入力軸回転数の変動波形のパワスペクトルであって入力軸回転数センサSaの出力から算出可能であり、またSout(f0 )は出力軸転数の変動波形のパワスペクトルであって出力軸回転数センサSbの出力から算出可能である。
Figure 2013024279
また幾何学条件における振幅比Mgは、ベルト式無段変速機TMで生じる滑りが小さい場合には、近似的に出力信号と入力信号との直流成分の比として表され、次式で定義される。
Figure 2013024279
幾何学条件における振幅比Mgは、入力軸11および出力軸12の変動成分として用いる物理量に依存する。本実施の形態では前記変動成分として回転数変動を用いているため、ベルト式無段変速機TMの変速比をiとしたときに、Mg=1/iで与えられる。入力軸11および出力軸12の変動成分として、トルク変動を用いた場合には、Mg=iで与えられる。ベルト式無段変速機TMの変速比iは、入力軸回転数センサSaの出力と出力軸回転数センサSbの出力とから算出可能である。
以上のことから、(7)式を書き換えると次式のようになり、滑り識別子IDslipは、ベルト式無段変速機TMに既存の入力軸回転数センサSaおよび出力軸回転数センサSbの出力と、エンジンEに既存のエンジン回転数センサScの出力とから算出することができる。
Figure 2013024279
また位相遅れΔφは次式で定義されるもので、入力軸回転数の変動波形の位相φinは入力軸回転数センサSaの出力から算出可能であり、出力軸回転数の変動波形の位相φoutは出力軸回転数センサSbの出力から算出可能である。
Figure 2013024279
図8は、横軸に入力軸回転数の変動成分の周波数f0 (あるいはエンジン回転数Ne)をとり、縦軸に滑り識別子IDslipをとったマップであり、トルク比Trを0.7、0.8、0.9、1.0のように変化させると、対応する滑り識別子IDslipの特性ラインが変化する。このマップにより、そのときのベルト式無段変速機TMの変動成分の周波数f0 と滑り識別子IDslipとが決まると、それらの値からそのときのトルク比Trを推定することができる。例えば、変動成分の周波数f0 の値がaであり、滑り識別子IDslipの値がbであるとき、トルク比Trは一点鎖線で示されるラインの0.9になる。
図9は、横軸に入力軸回転数の変動成分の周波数f0 (あるいはエンジン回転数Ne)をとり、縦軸に位相遅れΔφをとったマップであり、トルク比Trを0.7、0.8、0.9、1.0のように変化させると、対応する位相遅れΔφの特性ラインが変化する。このマップにより、そのときのベルト式無段変速機TMの変動成分の周波数f0 と位相遅れΔφとが決まると、それらの値からそのときのトルク比Trを推定することができる。例えば、変動成分の周波数f0 の値がcであり、位相遅れΔφの値がdであるとき、トルク比Trは一点鎖線で示されるラインの0.9になる。
しかして、図10に示すように、電子制御ユニットUのトルク比推定手段M1は、エンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数に対応する変動成分の周波数f0 を算出するとともに、入力軸回転数センサSaおよび出力軸回転数センサSbの出力をフィルタ機能を有するロックインアンプを通過させて前記周波数f0 に対応する振動波形を抽出し、それら入力側および出力側の振動波形から滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφを算出する。続いて滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφ(図10の例では位相遅れΔφ)と変動成分の周波数f0 とをパラメータとしてマップ検索することで、そのときのトルク比Trを推定する。
そして電子制御ユニットUの側圧制御手段M2のPIDコントローラが、推定したトルク比Trと目標トルク比STrとの偏差に基づき補正係数Kを算出する。
このとき、図15フローチャートに示すように、ステップS31でトルク比推定手段M1によるトルク比Trの推定が可能であるときには、ステップS32でPIDコントローラはPID値をそのまま出力し、前記ステップS31でトルク比推定手段M1によるトルク比Trの推定が何らかの理由で不能になった場合や、推定精度が低下した場合には、ステップS33でPIDコントローラはPIDの結果を無効にしてゼロを出力する。
更に、図16のフローチャートに示すように、ステップS34でクルーズ判定手段M4が車速、アクセル開度、操舵角等に基づいて車両がクルーズ状態にあることを判定すると、ステップS35で学習処理手段M5が補正係数Kを学習し、前記ステップS34でクルーズ判定手段M4が車両がクルーズ状態にないことを判定すると、ステップS36で学習処理手段M5が前回学習した補正係数Kを保持する(初期値は1)。学習処理手段M5が学習した学習値からはPIDコントローラが出力するPID値(トルク比Trの推定が不能である場合にはゼロ)が減算され、その差分が補正係数Kとして出力される。トルク比推定手段M1によるトルク比Trの推定が不能になった場合等にはPIDコントローラの出力値はゼロになるため、学習処理手段M5の学習値がそのまま補正係数Kとなる。また学習の結果が完全に正しいならば、推定したトルク比Trと目標トルク比STrとの偏差がゼロになって調整の必要がないため、PIDコントローラが出力するPID値はゼロになる。
続くステップS37でトルク比推定手段M1によるトルク比Trの推定が可能であるときには、ステップS38で学習処理手段M5が前回学習した補正係数Kを保持し(初期値は1)、前記ステップS37でトルク比推定手段M1によるトルク比Trの推定が不能であるときには、ステップS39で学習値を更新する。その理由は、トルク比Trが推定されてフィードバック制御が行われているときに学習値を更新してしまうと、フィードバック制御と学習値の更新とが干渉してしまうため、フィードバック制御が行われないとき、つまりPIDコントローラの出力値がゼロにされるときに学習値を更新すれば、前記干渉が回避されるからである。
一方、負荷トルク推定手段M3は、エンジンEの負荷トルクT(ベルト式無段変速機TMが現在伝達しているトルクに相当)を、エンジンEの吸気負圧等の運転状態から算出し、側圧制御手段M2は、無端ベルト15のスリップを防止するために必要な側圧制御される側のプーリ13,14の必要軸推力Qを、ドライブプーリ13を側圧制御する場合、即ちドライブプーリ13がスリップする場合には、
Q=Tcosα/2μRTr …(12)
により算出し、ドリブンプーリ14を側圧制御する場合、即ちドリブンプーリ14がスリップする場合には、
Q=Tηicosα/2μRTr …(13)
により算出する。ここで、αはプーリ13,14のV角の半分の角度、μは側圧制御される側のプーリ13,14と無端ベルト15との接触面の摩擦係数、Rは側圧制御される側のプーリ13,14に対する無端ベルト15の巻き付き半径、Trは前記トルク比、ηはベルト式無段変速機TMの動力伝達効率、iは速度比である。
但し、エンジンEの負荷トルクTには若干の推定誤差が存在し、また摩擦係数μはプーリ13,14および無端ベルト15の材質等で決まる定数であるが、無端ベルト15の劣化状態や潤滑状態によって変化するため、推定した必要軸推力Qにも所定の誤差が存在することが避けられない。ここで、動力伝達効率ηに関しては、車両走行中での算出自体が困難であるために代表的な定数として扱わざるを得ないが、他の変数と比べて生じる誤差は僅かである。
続いて、側圧制御手段M2は、推定した必要軸推力Qに補正係数Kを乗算することで補正した必要軸推力Q′を算出し、この補正した必要軸推力Q′を電流値に換算する。そして前記電流値でプーリ側圧を制御する油圧回路のリニアソレノイドを作動させることで、スリップ防止のためのプーリ側圧の制御が行われる。その結果、ベルト式無段変速機TMのプーリ側圧は、基本的にフィードフォワード項である必要軸推力Qに基づいて制御され、必要軸推力Qの誤差がフィードバック項である補正係数Kで補償されることで、プーリ側圧の制御の高い応答性および高い収束性を両立させることができる。よって、例えば目標トルク比STrを1.0に設定すれば、動力伝達効率を最大限に高めながら、ベルトおよびプーリ間にマクロスリップが発生するのを防止してベルト式無段変速機TMの耐久性を高めることができる。
以上のように、クルーズ判定手段M4は車両がクルーズ走行しているか否かを判定し、学習処理手段M5は車両がクルーズ状態にあるときに補正係数Kを学習するので、何らかの理由で一時的に補正係数Kが算出不能になった場合でも、経年変化が生じない短時間であれば側圧制御を精度良く継続することができる。
図18は補正係数Kの学習の効果を説明するもので、実線は学習を行わない場合、破線は学習を行う場合に対応する。学習を行わない場合には、トルク比Trを推定できなくなると実際のトルク比Trが目標トルク比STrから大きく外れてしまい、トルク比Trを推定できるようになっても、実際のトルク比Trが目標トルク比STrに収束するまでに時間が掛かるが、学習を行う場合には、トルク比Trを推定できなくっても実際のトルク比Trが目標トルク比STrから大きく外れることはなく、プーリ側圧の制御を精度良く継続することができる。
次に、図11に基づいて目標トルク比STrの設定の一例を説明する。
先ずステップS11でアクセル開度APの変化率dAPを算出し、ステップS12でアクセル開度変化率dAPがdAPL<dAP<dAPHの範囲から外れることで、アクセルペダルが急激に踏み込まれたりアクセルペダルが急激に戻されたと判断された場合、ステップS15で目標トルク比STrを低トルク比STrLに減少させる。前記ステップS12でアクセル開度変化率dAPがdAPL<dAP<dAPHの範囲に戻り、かつステップS13でその状態が所定時間が継続すると、ステップS14で目標トルク比STrを高トルク比STrHに増加させる。
これにより、通常時は目標トルク比STrを高く設定してプーリ側圧を減少することで動力伝達効率の向上を図り、アクセルペダルが急激に操作されてベルト式無段変速機TMの無端ベルト15およびプーリ13,14間にスリップが発生する虞があるときには、目標トルク比STrを低く設定してプーリ側圧を増加することでベルト式無段変速機TMの保護を図ることができる。また前記ステップS13でヒステリシスを持たすことで、目標トルク比STrが頻繁に切り換わるのを防止することができる。
次に、図12に基づいて目標トルク比STrの設定の他の例を説明する。
先ずステップS21で目標トルク比STrに対する推定トルク比Trの偏差dTrを算出し、ステップS22でトルク比偏差dTrがdTrL<dTr<dTrHの範囲から外れることで、車両が悪路を走行して路面からベルト式無段変速機TMに逆伝達される負荷が大きく変動していると判断された場合、ステップS25で目標トルク比STrを低トルク比STrLに減少させる。前記ステップS22でトルク比偏差dTrがdTrL<dTr<dTrHの範囲に戻り、かつステップS23でその状態が所定時間が継続すると、ステップS24で目標トルク比STrを高トルク比STrHに増加させる。
これにより、通常時は目標トルク比STrを高く設定してプーリ側圧を減少することで動力伝達効率の向上を図り、悪路走行時に路面からの負荷でベルト式無段変速機TMの無端ベルト15およびプーリ13,14間にスリップが発生する虞があるときには、目標トルク比STrを低く設定してプーリ側圧を増加することでベルト式無段変速機TMの保護を図ることができる。また前記ステップS23でヒステリシスを持たすことで、目標トルク比STrが頻繁に切り換わるのを防止することができる。
ところで、上記特許文献1に記載された発明(以下、比較例という)は、滑り識別子IDslipを目標滑り識別子に収束させるようにプーリ側圧をフィードバック制御し、あるいは位相遅れΔφを目標位相遅れに収束させるようにプーリ側圧をフィードバック制御するものであるが、各変動成分の周波数f0 において滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφはトルク比Trと対応関係にあるため、比較例であってもトルク比Trを目標トルク比STrに間接的に収束させることができる。しかしながら、比較例では変動成分の周波数f0 が変化すると、トルク比Trの変動に対する滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφの変動率が異なるため、以下のような問題が発生する。
例えば、比較例において、図13(A)に示すように、トルク比Trを0.9から1.0に変更する指令を出力した場合を考えると、変動成分の周波数f0 が比較的に小さいf0 1であるときには、トルク比Tr=0.9に対応する滑り識別子IDslipとトルク比Tr=1.0に対応する滑り識別子IDslipとの偏差e1は比較的に大きくなるのに対し、変動成分の周波数f0 が比較的に大きいf0 2であるときには、トルク比Tr=0.9に対応する滑り識別子IDslipとトルク比Tr=1.0に対応する滑り識別子IDslipとの偏差e2は比較的に小さくなる。よって、前記偏差e1,e2に基づいてプーリ側圧をフィードバック制御した場合にトルク比Trの応答性が変化してしまい、エンジンEの全回転数領域での速応性を確保できなくなる。
即ち、目標トルク比STr(指令値)を0.7と0.8との間で矩形波状に変化させた場合、図14(A)に示すように変動成分の周波数f0 が比較的に小さいf0 1=15.6Hzであれば、推定したトルク比Trおよび実際のトルク比Trは比較的に高い応答性を有するのに対し、図14(B)に示すように、変動成分の周波数f0 が比較的に大きいf0 2=22.2Hzであれば、推定したトルク比Trおよび実際のトルク比Trの応答性は著しく低下する。
それに対して本実施の形態によれば、図13(B)に示すように、トルク比自体が目標値STrとなっているため、当然のことながら、変動成分の周波数f0 が変化しても、目標トルク比STr(指令値)を0.7と0.8との間で変化させたときの偏差eは一定値の0.1であり、図14(C)および図14(D)に示すように、変動成分の周波数f0 が15.6Hzの場合も22.2Hzの場合も推定したトルク比Trおよび実際のトルク比Trの応答性は共に高くなり、しかも図14(A)および図14(B)に示す比較例の制御に比べて追従性も向上する。
次に、図17のタイムチャートに基づいて本実施の形態の作用の一例を説明する。
時刻t1から時刻t2にかけてアクセル開度が急激に増加すると、これに僅かに遅れて時刻t2から時刻t3にかけて無段変速機TMが実際に伝達しているトルク(負荷トルク)Tが増加する。このとき、本実施の形態(フィードフォワードあり)ではプーリ側圧が時刻t1に素早く立ち上がるのに対し、比較例(フィードフォワードなし)ではプーリ側圧の立ち上がりに遅れが生じる。本実施の形態では、時刻t1にプーリ側圧が素早く立ち上がることで最大伝達トルクTmaxが実際の伝達トルクTに先立って素早く立ち上がるため、実トルク比Tr(=T/Tmax)が目標トルク比STrから一時的に落ち込み、そこから増加に転じて目標トルク比STrに収束する。
一方、比較例では、プーリ側圧が遅れて立ち上がることで最大伝達トルクTmaxの立ち上がりも遅れるため、時刻t2からの実際の伝達トルクTの増加と共に実トルク比Tr(=T/Tmax)が目標トルク比STrを大幅に超えてしまい、プーリ13,14および無端ベルト15間にマクロスリップが発生する可能性がある。
以上のように、本実施の形態によれば、ベルト式無段変速機TMのトルク比Trを、入力軸11が有する変動成分が無端ベルト15を介して出力軸12に伝達される伝達特性に基いて推定する際に、入力軸11および出力軸12の変動成分の振幅比を指標化した滑り識別子IDslipと、入力軸11および出力軸12の変動成分の位相差を指標化した位相遅れΔφとの少なくとも一方を用いるので、ベルト式無段変速機TMの動力伝達効率に極めて密接に関連するトルク比Trを精度良く推定して動力伝達効率の向上を図ることができる。しかも滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφからトルク比Trを推定するので、それを推定するために必要なセンサの数を最小限に抑えてコストの削減を図ることができる。
また定常運転時には、必要軸推力Qの推定誤差を、推定したトルク比Trと目標トルク比STrとの偏差から求めた補正係数Kで補償するフィードバック制御を行うことで、ベルト式無段変速機TMのトルク比Trを目標トルク比STrに精度良く収束させることができる。一方、アクセルペダルを急激に踏み込んだような場合には、必要軸推力Qを瞬時に変化させるフィードフォワード制御を行うことで、制御応答性を高めて無端ベルト15のスリップを確実に防止することができる。
次に、図19に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
変動成分の周波数f0 および滑り識別子IDslipに基づいてトルク比Trを検索するマップから明らかなように、変動成分の周波数f0 の中間領域(fL <f0 <fH )では各トルク比Trの特性ラインの上下間隔が大きく、他の領域では前記間隔が狭くなっており、よってfL <f0 <fH の領域でトルク比Trの推定精度が向上する。また変動成分の周波数f0 および位相遅れΔφに基づいてトルク比Trを検索するマップから明らかなように、変動成分の周波数f0 の低い領域(f0 ≦fL )および高い領域(f0 ≧fH )では各トルク比Trの特性ラインの上下間隔が大きく、他の領域では前記間隔が狭くなっており、よってf0 ≦fL の領域およびf0 ≧fH の領域でトルク比Trの推定精度が向上する。
以上のことから、ステップS41でfL <f0 <fH であれば、ステップS42で変動成分の周波数f0 および滑り識別子IDslipをパラメータとするマップに基づいてトルク比Trを検索し、前記ステップS41でf0 ≦fL またはf0 ≧fH であれば、ステップS43で変動成分の周波数f0 および位相遅れΔφをパラメータとするマップに基づいてトルク比Trを検索する。そしてステップS44でトルク比Trを目標トルク比STrと比較し、ステップS45でその偏差に基づいてプーリ側圧を制御することで、より精度の高い制御を可能にすることができる。
次に、図20および図21に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
図20において、変動成分の周波数f0 および滑り識別子IDslipに基づいてトルク比Trを検索するマップの特性ラインは、システムの固有振動数fn が変化すると横軸方向に平行移動する。前記固有振動数fn はベルト式無段変速機TMの入力トルクおよび変速比に応じて変化するため、トルク比Trを推定するためのマップを各固有振動数fn に応じて複数準備する必要があり、メモリの記憶容量の増加やコストアップの要因となる問題がある。システムの固有振動数fn が変化する理由は、図21に示される。
図21(A)はベルト式無段変速機TMを振動系としてモデル化したもので、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14にマスm1,m2が接触し、マスm1,m2がスプリングおよびダッシュポッドよりなる無端ベルト15で接続される。ベルト式無段変速機TMの無端ベルト15は、複数枚の金属リングを積層した金属リング集合体に多数の金属エレメントを支持したもので、金属エレメントを相互に圧接することで駆動力を伝達する。入力トルク(ベルト式無段変速機TMが現在伝達しているトルクに相当)が増加するのに応じて金属エレメント同士の接触面が圧縮変形して接触面積が増加することで、金属エレメントが次第に圧縮変形し難くなって前記モデルのスプリングのばね剛性が増加し(図21(B)参照)、その結果として入力トルクの増加に応じてシステムの固有振動数fn が増加する(図21(C)参照)。
またベルト式無段変速機TMの変速比がLOW側に変化すると、入力軸11の回転数に対する出力軸12の回転数が低くなるため、出力軸12自体の慣性モーメントJ2が減少したのと同じ効果が得られ、逆にベルト式無段変速機TMの変速比がOD側に変化すると、入力軸11の回転数に対する出力軸12の回転数が高くなるため、出力軸12自体の慣性モーメントJ2が増加したのと同じ効果が得られ、これにより変速比がLOW側に変化するとシステムの固有振動数fn が増加する(図21(D)参照)。
図20のフローチャートのステップS51で入力トルクTDRと変速比とから固有振動数fn を算出する。入力トルクTDRはエンジンEの負荷トルクに一致するのでエンジンEのECUで算出した値を使用することができ、変速比は入力軸回転数センサSaで検出した入力軸回転数NDRおよび出力軸回転数センサSbで検出した出力軸回転数NDNの比NDR/NDNとして電子制御ユニットUで算出可能である。
続くステップS52で変動成分の周波数f0 および上下の閾値fL ,fH を固有振動数fn で除算して正規化する。これにより、トルク比Trを検索するマップを各周波数領域毎に準備することなく、正規化した周波数をパラメータとする共通のマップを使用することが可能となり、メモリの記憶容量の節減およびコストの節減が可能となる。そして第2の実施の形態と同様に、fL /fn <f0 /fn <fH /fn であれば、ステップS53で正規化した変動成分の周波数f0 /fn および滑り識別子IDslipをパラメータとするマップに基づいてトルク比Trを検索し、前記ステップS52でf0 /fn ≦fL /fn またはf0 /fn ≧fH /fn であれば、ステップS54で正規化した変動成分の周波数f0 /fn および位相遅れΔφをパラメータとするマップに基づいてトルク比Trを検索する。そしてステップS55でトルク比Trを目標トルク比STrと比較し、ステップS56でプーリ側圧を制御することで、より精度の高い制御を可能にすることができる。
次に、図22に基づいて本発明の第4の実施の形態を説明する。
上記各実施の形態では、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφの二つのパラメータのうち、何れか一方のパラメータを用いてトルク比Trを推定しているが、第4の実施の形態は、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφの両方のパラメータを用いてトルク比Trを推定するものである。
図22は、各トルク比Trの滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφの特性を、滑り識別子IDslipの平方根を動径とし、位相遅れΔφを偏角として極座標に表したマップである。例えば、滑り識別子IDslipの値がr2 であり、位相遅れΔφの値がθの場合には、そのときのトルク比Trは0.7であると推定することができる。この実施の形態によれば、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφの両方を用いてトルク比Trを推定するので、その推定精度を高めることができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の入力軸11および出力軸12の変動成分は回転数に限定されず、トルクであっても良い。
また本発明の入力軸11は、それに結合されたエンジンEのクランクシャフトであっても良い。
また実施の形態ではエンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数から変動成分の周波数f0 を算出しているが、入力軸回転数センサSaで検出した入力軸回転数から、あるいはエンジンEの点火時期信号から変動成分の周波数f0 を算出しても良い。
尚、実施の形態では、プーリ側圧の制御にフィードバックおよびフィードフォワードを併用しているが、必要軸推力Qのフィードフォワードを廃止し、推定トルク比Trおよび目標トルク比STrの偏差からPIDコントローラでプーリ側圧の制御量(実施の形態の補正係数Kに相当)を算出し、この制御量に基づいてフィードバック制御を行うことも可能である。この場合、PIDコントローラで算出したプーリ側圧の制御量を、上述した補正係数Kと同様に学習して記憶すれば、何らかの理由で一時的に前記制御量が算出不能になった場合に、学習値を用いて側圧制御を継続することができる。
また実施の形態では無端ベルト15を有するベルト式無段変速機TMについて説明したが、本発明の無段変速機はチェーンベルト式無段変速機やトロイダル無段変速機であっても良い。トロイダル無段変速機の場合、入力軸に設けられた入力ディスクが本発明の入力軸要素に対応し、出力軸に設けられた出力ディスクが本発明の出力軸要素に対応し、入力ディスクおよび出力ディスク間に挟持されて駆動力を伝達するパワーローラが本発明の動力伝達要素に対応し、入力ディスクおよび出力ディスク間にパワーローラを挟持する圧力が本発明の挟圧に対応する。
11 入力軸
12 出力軸
13 ドライブプーリ(入力軸要素)
14 ドリブンプーリ(出力軸要素)
15 無端ベルト(動力伝達要素)
E エンジン(駆動源)
i 速度比
IDslip 滑り識別子
K 補正係数
M1 トルク比推定手段
M2 側圧制御手段(挟圧制御手段)
M3 負荷トルク推定手段
M4 クルーズ判定手段
M5 学習処理手段
Q 必要軸推力
Q′ 補正した必要軸推力
R 無端ベルトの巻き付き半径
STr 目標トルク比
T 実際の伝達トルク
TM ベルト式無段変速機
Tmax 伝達可能な最大トルク
Tr トルク比
Δφ 位相遅れ
η 動力伝達効率
μ 摩擦係数

Claims (3)

  1. 駆動源(E)の駆動力が入力される入力軸(11)と、
    前記入力軸(11)に設けられた入力軸要素(13)と、
    前記駆動源(E)の駆動力が変速して出力される出力軸(12)と、
    前記出力軸(12)に設けられた出力軸要素(14)と、
    前記入出力軸要素(13,14)にそれぞれ接触して接触部分の摩擦により前記入力軸(11)から前記出力軸(12)に駆動力を伝達する動力伝達要素(15)と、
    前記入力軸(11)が有する任意の変動成分の前記出力軸(12)への伝達特性に基づき、伝達可能な最大トルク(Tmax)に対する実際の伝達トルク(T)の比であるトルク比(Tr)を推定するトルク比推定手段(M1)と、
    前記入出力軸要素(13,14)のうちの何れか一方の軸要素(13,14)の挟圧を制御する挟圧制御手段(M2)と、
    を備える無段変速機の挟圧制御装置であって、
    前記トルク比推定手段(M1)は、前記入力軸(11)および前記出力軸(12)の変動成分の振幅比を指標化した滑り識別子(IDslip)と、前記入力軸(11)および前記出力軸(12)の変動成分の位相差を指標化した位相遅れ(Δφ)との少なくとも一方から前記トルク比(Tr)を推定し、
    前記挟圧制御手段(M2)は、前記何れか一方の軸要素(13,14)の必要軸推力(Q)を求め、前記推定したトルク比(Tr)と目標トルク比(STr)との偏差に基づく補正係数(K)により前記必要軸推力(Q)を補正し、前記補正した必要軸推力(Q′)に基づいて前記何れか一方の軸要素(13,14)の挟圧を制御することを特徴とする無段変速機の挟圧制御装置。
  2. 前記駆動源(E)の負荷トルクを推定する負荷トルク推定手段(M3)を備え、
    前記挟圧制御手段(M2)は、前記負荷トルクと、前記何れか一方の軸要素(13,14)および前記動力伝達要素(15)間の摩擦係数(μ)とに基づいて前記必要軸推力(Q)を求めることを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機の挟圧制御装置。
  3. 前記駆動源(E)および前記無段変速機(TM)を搭載した移動体がクルーズ走行しているか否かを判定するクルーズ判定手段(M4)と、前記移動体が前記クルーズ状態にあるときに前記補正係数(K)を学習する学習処理手段(M5)とを備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の無段変速機の挟圧制御装置。
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