JP6494671B2 - 無段変速機の側圧制御装置 - Google Patents

無段変速機の側圧制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、駆動源の駆動力が入力される入力軸要素と、前記駆動源の駆動力が変速して出力される出力軸要素と、前記両要素にそれぞれ接触して接触部分の摩擦により前記入力軸要素から前記出力軸要素に駆動力を伝達する伝達要素と、前記入力軸要素が有する任意の変動成分の前記出力軸要素への伝達特性に基づき、伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比を推定するトルク比推定手段とを備える無段変速機の側圧制御装置に関する。
かかる無段変速機の側圧制御装置は、下記特許文献1により公知である。この無段変速機の側圧制御装置によれば、無段変速機の伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比Trを、入力軸要素が有する任意の変動成分が摩擦要素を介して出力軸要素に伝達される伝達特性に基づいて推定する際に、前記両要素の変動成分の振幅差を指標化した滑り識別子IDslipと、前記両要素の変動成分の位相差を指標化した位相遅れΔφとの何れか一方を用いるので、無段変速機の動力伝達効率に極めて密接に関連するトルク比Trを精度良く推定して動力伝達効率の向上を図ることができる。しかも滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφからトルク比Trを推定するので、それを推定するために必要なセンサの数を最小限に抑えてコストの削減を図ることができる。
また、入力軸要素に設けたドライブプーリと出力軸要素に設けたドリブンプーリとに無端ベルトを巻き掛けた無段変速機の変速比を変速制御手段で制御する際に、推定したトルク比Trが目標トルク比に一致するようにドライブプーリおよびドリブンプーリに加えるプーリ側圧を制御するので、目標とするトルク比Trを直接指定して的確な制御を行うことができるだけでなく、プーリ側圧の応答性が変動成分の周波数によって変化するのを防止することができる。
特許第5548765号公報
ところで、上記従来の発明は、無端ベルトおよびプーリ間のスリップ状態をミクロスリップ領域の上限、すなわちトルク比Tr=1.0となるように制御することで、動力伝達効率を最大限に高めながら、無端ベルトおよびプーリ間にマクロスリップが発生するのを防止してベルト式無段変速機の耐久性を高めることができる。しかしながら、トルク比Trが増加して1.0に近付くと滑り識別子IDslipの値が次第に小さくなり、滑り識別子IDslipから求めるトルク比Trの精度が低下するため、トルク比Trの目標値を1.0に設定すると無端ベルトおよびプーリ間のスリップ状態がマクロスリップ領域に入ってしまい、動力伝達効率の急激な低下を招く可能性があった。
この問題を回避するには、トルク比Trの目標値を余裕を残して1.0よりも低めに設定すれば良いが、このようにすると、折角の動力伝達効率の向上効果を有効に発揮させられないという問題がある。そこで、無端ベルトおよびプーリ間のスリップ状態がマクロスリップ領域に入ったことを別途検出し、マクロスリップ領域に入ったときにプーリ側圧を増加させてミクロスリップ領域に留めることにより、滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφによるプーリ側圧制御の精度をより高め、動力伝達効率の更なる向上を図ることができると考えられる。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφによるプーリ側圧制御の精度をより高めることを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、駆動源の駆動力が入力される入力軸要素と、前記駆動源の駆動力が変速して出力される出力軸要素と、前記両要素にそれぞれ接触して接触部分の摩擦により前記入力軸要素から前記出力軸要素に駆動力を伝達する伝達要素と、前記入力軸要素が有する任意の変動成分の前記出力軸要素への伝達特性に基づき、伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比を推定するトルク比推定手段とを備える無段変速機の側圧制御装置であって、前記トルク比推定手段は、前記両要素の変動成分の振幅差を指標化した滑り識別子、および前記両要素の変動成分の位相差を指標化した位相遅れのうちの何れか一方と、前記両要素の変動成分の周波数あるいは前記駆動源であるエンジンの回転数とに基づいて前記トルク比を推定し、前記無段変速機は、前記入力軸要素に設けられたドライブプーリと、前記出力軸要素に設けられたドリブンプーリと、前記両プーリに巻き掛けられた無端ベルトよりなる前記伝達要素と、前記無段変速機の変速比を制御する変速制御手段とを備え、前記変速制御手段は、前記無段変速機の下流側に配置されたドライブシャフトに起因する振動が該ドライブシャフトの共振周波数よりも高い周波数で減衰しないときに、前記推定したトルク比と目標トルク比との偏差に基づいて、該偏差が0となるように、前記ドライブプーリおよび前記ドリブンプーリに加えるプーリ側圧を制御し、前記無段変速機の下流側に配置されたドライブシャフトに起因する振動が該ドライブシャフトの共振周波数よりも高い周波数で減衰するときに、前記推定したトルク比による前記プーリ側圧の制御を中止することを特徴とする無段変速機の側圧制御装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記入力軸要素および前記出力軸要素の回転変動に基づいて描いたリサジュー図形が楕円形である場合に、推定した前記トルク比によるプーリ側圧の制御を許可することを特徴とする無段変速機の側圧制御装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項2の構成に加えて、前記リサジュー図形が楕円形でなくなった場合、前記リサジュー図形が再度楕円形になるまでの間、最後に前記リサジュー図形が楕円形であったときの前記滑り識別子あるいは前記位相遅れから推定した前記トルク比によりプーリ側圧の制御を継続することを特徴とする無段変速機の側圧制御装置が提案される。
尚、実施の形態の入力軸11は本発明の入力軸要素に対応し、実施の形態の出力軸12は本発明の出力軸要素に対応し、実施の形態の無端ベルト15は本発明の伝達要素に対応し、実施の形態のエンジンEは本発明の駆動源に対応し、実施の形態のベルト式無段変速機TMは本発明の無段変速機に対応し、実施の形態の電子制御ユニットUは本発明のトルク比推定手段あるいは変速制御手段に対応する。
請求項1の構成によれば、無段変速機の伝達可能な最大トルクに対する実際の伝達トルクの比であるトルク比を、入力軸要素が有する任意の変動成分が摩擦要素を介して出力軸要素に伝達される伝達特性に基いて推定する際に、前記両要素の変動成分の振幅差を指標化した滑り識別子と、前記両要素の変動成分の位相差を指標化した位相遅れとの何れか一方を用いるので、無段変速機の動力伝達効率に極めて密接に関連するトルク比を精度良く推定して動力伝達効率の向上を図ることができる。しかも滑り識別子あるいは位相遅れからトルク比を推定するので、それを推定するために必要なセンサの数を最小限に抑えてコストの削減を図ることができる。
また入力軸要素に設けたドライブプーリと出力軸要素に設けたドリブンプーリとに無端ベルトを巻き掛けた無段変速機の変速比を変速制御手段で制御する際に、推定したトルク比が目標トルク比に一致するようにドライブプーリおよびドリブンプーリに加えるプーリ側圧を制御するので、目標とするトルク比を直接指定して的確な制御を行うことができるだけでなく、プーリ側圧の応答性が変動成分の周波数によって変化するのを防止することができる。
また無段変速機の下流側に配置されたドライブシャフトに起因する振動が該ドライブシャフトの共振周波数よりも高い周波数で減衰しないときに、推定したトルク比に基づいてドライブプーリおよびドリブンプーリに加えるプーリ側圧を制御し、無段変速機の下流側に配置されたドライブシャフトに起因する振動が該ドライブシャフトの共振周波数よりも高い周波数で減衰するときに、推定したトルク比によるプーリ側圧の制御を中止するので、無端ベルトにマクロスリップが発生していないことが保証された状態で上記プーリ側圧の制御を行うことで、制御精度を高めて動力伝達効率の更なる向上が可能になる。
また請求項2の構成によれば、入力軸要素および出力軸要素の回転変動に基づいて描いたリサジュー図形が楕円形である場合に、推定したトルク比によるプーリ側圧の制御を許可するので、無段変速機の下流側に配置されたドライブシャフトに起因する振動が共振周波数よりも高い周波数で減衰しない状態をリサジュー図形により精度良く判定し、推定したトルク比によるプーリ側圧の制御を的確に実行することができる。
また請求項3の構成によれば、リサジュー図形が楕円形でなくなった場合、リサジュー図形が再度楕円形になるまでの間、最後にリサジュー図形が楕円形であったときの滑り識別子あるいは位相遅れから推定したトルク比によりプーリ側圧の制御を継続するので、無端ベルトが一時的にマクロスリップ状態になっても、次にミクロスリップ状態に復帰するまでの間、動力伝達効率を低下させることなくプーリ側圧の制御を継続することができる。
ベルト式無段変速機の全体構造を示す図。 プーリ側圧と動力伝達効率との関係を示すグラフ。 トルク比と動力伝達効率との関係を示グラフ。 トルク比とベルトスリップとの関係を示す図。 入力軸回転数の変動波形および出力軸回転数の変動波形を示す図。 変動成分の周波数および滑り識別子からトルク比を検索するマップを示す図。 変動成分の周波数および位相遅れからトルク比を検索するマップを示す図。 プーリ側圧の制御系のブロック図。 目標トルク比の設定の一例を示す図。 目標トルク比の設定の他の例を示す図。 ベルト式無段変速機からタイヤまでの動力伝達経路をモデル化した図。 振動周波数に対する振幅の関係を減衰係数の大きさに応じて示すグラフ。 振動周波数および減衰係数に応じたリサジュー図形を示す図。 マクロスリップを考慮したプーリ側圧制御のフローチャート。
以下、図1〜図14に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、自動車に搭載されるベルト式無段変速機TMは、エンジンEに接続された入力軸11(あるいは入力軸要素)と、入力軸11と平行に配置された出力軸12(あるいは出力軸要素)と、入力軸11に設けられたドライブプーリ13と、出力軸12に設けられたドリブンプーリ14と、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に巻き掛けられた金属製の無端ベルト15(あるいは伝達要素)とを備える。ドライブプーリ13は固定側プーリ半体13aと可動側プーリ半体13bとで構成され、可動側プーリ半体13bはプーリ側圧で固定側プーリ半体13aに接近する方向に付勢される。同様に、ドリブンプーリ14は固定側プーリ半体14aと可動側プーリ半体14bとで構成され、可動側プーリ半体14bはプーリ側圧で固定側プーリ半体14aに接近する方向に付勢される。従って、ドライブプーリ13の可動側プーリ半体13bおよびドリブンプーリ14の可動側プーリ半体14bに供給するプーリ側圧を制御し、ドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の一方の溝幅を増加させて他方の溝幅を減少させることで、ベルト式無段変速機TMの変速比を任意に変更することができる。
ベルト式無段変速機TMの変速比を制御する電子制御ユニットUには、入力軸回転数センサSaで検出した入力軸11の回転数と、出力軸回転数センサSbで検出した出力軸12の回転数と、エンジン回転数センサScで検出したエンジンEの回転数とに加えて、アクセル開度信号、車速信号等が入力される。電子制御ユニットUは、アクセル開度信号および車速信号に基づいてベルト式無段変速機TMのプーリ側圧を変化させる通常の変速比制御以外に、後述するトルク比Trを推定し、このトルク比Trを用いてベルト式無段変速機TMの動力伝達効率を高めるべくプーリ側圧を変化させる制御を行う。
ところで、ベルト式無段変速機TMの動力伝達効率を高める手段の一つとして、プーリに加えるプーリ側圧を低下させることが知られている。図2は、プーリ側圧に対する動力伝達効率および摩擦損失の関係を示すもので、プーリ側圧の減少に伴って、プーリおよび無端ベルト間のスリップが小さいミクロスリップ領域から、遷移領域を経て、プーリおよび無端ベルト間のスリップが大きいマクロスリップ領域に移行する。ミクロスリップ領域ではプーリ側圧の減少に応じて動力伝達効率が次第に向上するが、遷移領域で動力伝達効率が低下し始め、マクロスリップ領域で動力伝達効率が急激に低下する。
その理由は、無端ベルトの金属エレメントの半径方向滑りと金属リングの滑りに起因する摩擦損失の和は、プーリ側圧の減少に伴ってミクロスリップ領域からマクロスリップ領域まで一定の比較的に大きい減少率Aで減少するが、金属エレメントの接線方向滑りに起因する摩擦損失は、ミクロスリップ領域から遷移領域にかけて略一定の比較的に小さい増加率B(A>B)で増加し、マクロスリップ領域で急激に増加するためと考えられる。
最大の動力伝達効率を得るには、プーリ側圧を遷移領域の直前のミクロスリップ領域に制御することが望ましいが、プーリ側圧を過剰に減少させてしまうと、ミクロスリップ領域から遷移領域を通り越してマクロスリップ領域に入ってしまい、プーリに対して無端ベルトが大きくスリップして損傷する可能がある。従って、ベルト式無段変速機TMの耐久性を確保しながら動力伝達効率を高めるには、プーリ側圧を遷移領域の直前のミクロスリップ領域に精度良く制御することが必要となる。
そのために、本発明ではトルク比Trというパラメータを導入している。トルク比Trは、
Tr=T/Tmax …(1)
で定義されるもので、Tはベルト式無段変速機TMが現在伝達しているトルクであり、Tmaxはベルト式無段変速機TMが現在の軸推力(つまり、プーリ側圧×プーリピストンの受圧面積)でスリップせずに伝達可能な最大トルクである。トルク比Tr=0は動力伝達が行われていない状態に対応し、トルク比Tr=1は現在伝達しているトルクが飽和した状態に対応し、トルク比Tr>1はマクロスリップが発生してしまったか、それに遷移している状態に対応する。
図3に示すように、変速比がODの状態および変速比がMIDの状態では、トルク比Trが1.0で最大の動力伝達効率が得られる。また変速比がLOWの状態では、最大の動力伝達効率が得られるトルク比Trは0.9に低下するが、トルク比Trが1.0でも依然として高い動力伝達効率が得られることが分かる。つまり、トルク比Trというパラメータは動力伝達効率と極めて高い相関関係があり、このトルク比Trが1.0に近い値になるようにベルト式無段変速機TMのプーリ側圧を制御することで動力伝達効率を高めることができ、しかもマクロスリップの発生を防止してベルト式無段変速機TMの耐久性を確保することができる。
トルク比Trを算出する際に必要な最大伝達可能トルクTmaxは、
Tmax=2μRQ/cosα …(2)
で与えられるもので、μはプーリおよびベルト間の摩擦係数、Rはプーリのベルト巻き付き半径、Qはプーリの軸推力、αはプーリのV角の半分の角度である。このように、トルク比Trを算出するには最大伝達可能トルクTmaxを算出する必要があり、最大伝達可能トルクTmaxを算出するには、プーリおよびベルト間の摩擦係数μ、プーリのベルト巻き付き半径Rおよびプーリの軸推力Qを検出する必要があるため、多くのセンサが必要になる。これらのセンサを実際の車両に搭載することは、コストの観点から実現することが困難である。
本実施の形態は、トルク比Trを、滑り識別子IDslipと入力軸11の回転数変動の周波数f0 (変動成分の周波数f0 )とから、あるいは位相遅れΔφと入力軸11の回転数変動の周波数f0 (変動成分の周波数f0 )とから推定するものである。入力軸11の回転数変動はエンジンEの回転数変動と同期することから、入力軸11の回転数変動の周波数f0 はエンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数から算出可能であり、また後述するように、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφは入力軸回転数センサSaで検出した入力軸回転数の変動と、出力軸回転数センサSbで検出した出力軸回転数の変動とから算出可能であるため、トルク比Trを最小限の数のセンサで精度良く推定することができる。
次に、滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφについて説明する。図4に示すように、トルク比Trが増加するのに伴い、ミクロスリップ領域ではベルトのスリップ量は僅かずつ増加し、マクロスリップ領域に入るとベルトのスリップ量は急激に増加する。入力軸11に無端ベルト15を介して接続された出力軸12には、入力軸11の回転数変動が無端ベルト15を介して伝達されるため、出力軸12にも同じ周波数の回転数変動が発生する。ベルトおよびプーリ間に全くスリップが存在しないとき、入力軸回転数の変動波形と出力軸回転数の変動波形とは一致するが、トルク比Trの増加に伴ってスリップ量が増加すると、入力軸回転数の変動波形の振幅に対して出力軸回転数の変動波形の振幅が小さくなり、かつ入力軸回転数の変動波形の位相に対して出力軸回転数の変動波形の位相が遅れることになる。
図4および図5において、実線で示す入力軸回転数の変動波形に対して鎖線で示す出力軸回転数の変動波形は、トルク比Trの増加に伴って振幅が次第に減少するとともに位相が次第に遅れていることが分かる。入力軸回転数の振動波形は、
Nin=Acos(ωt+φin) …(3)
で与えられ、出力軸回転数の振動波形は、
Nout=Bcos(ωt+φout) …(4)
で与えられる。
つまり、入力軸回転数の振動波形に対して出力軸回転数の振動波形は、振幅がAからBに減少し、位相がφin−φoutだけ遅れることになる。
次に、滑り識別子IDslipの算出の手法を説明する。
先ず、入力軸11の回転数の変動周波数f0 を、エンジンEの気筒数nと、エンジン回転数の直流成分Neとを用いて、次式により算出する。エンジン回転数の直流成分Neは、通常のエンジンEに必ず備えられているエンジン回転数センサScにより検出可能である。
Figure 0006494671
滑り識別子IDslipは、変動周波数f0 における入力軸11と出力軸12との間の振幅比Mを、ベルト式無段変速機TMの幾何学的な応答、即ち滑りや励振の影響を受けない場合の振幅比Mgにより指標化したものであり、次式により定義される。
Figure 0006494671
入力軸11の回転数の変動周波数f0 の関数である振幅比Mは次式で定義されるもので、変動周波数f0 はエンジン回転数センサScが出力するエンジン回転数から算出可能であり、Sin(f0 )は入力軸回転数の変動波形のパワスペクトルであって入力軸回転数センサSaの出力から算出可能であり、またSout(f0 )は出力軸転数の変動波形のパワスペクトルであって出力軸回転数センサSbの出力から算出可能である。
Figure 0006494671
また幾何学条件における振幅比Mgは、ベルト式無段変速機TMで生じる滑りが小さい場合には、近似的に出力信号と入力信号との直流成分の比として表され、次式で定義される。
Figure 0006494671
幾何学条件における振幅比Mgは、入力軸11および出力軸12の変動成分として用いる物理量に依存する。本実施の形態では前記変動成分として回転数変動を用いているため、ベルト式無段変速機TMの変速比をiとしたときに、Mg=1/iで与えられる。入力軸11および出力軸12の変動成分として、トルク変動を用いた場合には、Mg=iで与えられる。ベルト式無段変速機TMの変速比iは、入力軸回転数センサSaの出力と出力軸回転数センサSbの出力とから算出可能である。
以上のことから、(6)式を書き換えると次式のようになり、滑り識別子IDslipは、ベルト式無段変速機TMに既存の入力軸回転数センサSaおよび出力軸回転数センサSbの出力と、エンジンEに既存のエンジン回転数センサScの出力とから算出することができる。
Figure 0006494671
また位相遅れΔφは次式で定義されるもので、入力軸回転数の変動波形の位相φinは入力軸回転数センサSaの出力から算出可能であり、出力軸回転数の変動波形の位相φoutは出力軸回転数センサSbの出力から算出可能である。
Figure 0006494671
図6は、横軸に入力軸回転数の変動成分の周波数f0 (あるいはエンジン回転数Ne)をとり、縦軸に滑り識別子IDslipをとったマップであり、トルク比Trを0.7、0.8、0.9、1.0のように変化させると、対応する滑り識別子IDslipの特性ラインが変化する。このマップにより、そのときのベルト式無段変速機TMの変動成分の周波数f0 と滑り識別子IDslipとが決まると、それらの値からそのときのトルク比Trを推定することができる。例えば、変動成分の周波数f0 の値がaであり、滑り識別子IDslipの値がbであるとき、トルク比Trは一点鎖線で示されるラインの0.9になる。
図7は、横軸に入力軸回転数の変動成分の周波数f0 (あるいはエンジン回転数Ne)をとり、縦軸に位相遅れΔφをとったマップであり、トルク比Trを0.7、0.8、0.9、1.0のように変化させると、対応する位相遅れΔφの特性ラインが変化する。このマップにより、そのときのベルト式無段変速機TMの変動成分の周波数f0 と位相遅れΔφとが決まると、それらの値からそのときのトルク比Trを推定することができる。例えば、変動成分の周波数f0 の値がcであり、位相遅れΔφの値がdであるとき、トルク比Trは一点鎖線で示されるラインの0.9になる。
しかして、図8に示すように、電子制御ユニットUは、エンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数に対応する変動成分の周波数f0 を算出するとともに、入力軸回転数センサSaおよび出力軸回転数センサSbの出力をフィルタ機能を有するロックインアンプを通過させて前記周波数f0 に対応する振動波形を抽出し、それら入力側および出力側の振動波形から滑り識別子IDslipおよび位相遅れΔφを算出する。続いて滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφ(図8の例では位相遅れΔφ)と変動成分の周波数f0 とをパラメータとしてマップ検索することで、そのときのトルク比Trを推定する。
そして推定したトルク比Trと目標トルク比STrとの偏差が入力されるPIDコントローラが、前記偏差をゼロに収束させるための制御信号を出力し、その制御信号が入力される油圧制御回路がベルト式無段変速機TMのドライブプーリおよびドリブンプーリの何れか一方にトルク比Trを制御するためのプーリ側圧を発生させ、また他方のプーリ側圧は変速比を適正に維持するために制御される。その結果、ベルト式無段変速機TMのトルク比Trは目標トルク比STrに一致するようにフィードバック制御される。従って、例えば目標トルク比STrを1.0に設定すれば、動力伝達効率を最大限に高めながら、ベルトおよびプーリ間にマクロスリップが発生するのを防止してベルト式無段変速機TMの耐久性を高めることができる。
次に、図9に基づいて目標トルク比STrの設定の一例を説明する。
先ずステップS1でアクセル開度APの変化率dAPを算出し、ステップS2でアクセル開度変化率dAPがdAPL<dAP<dAPHの範囲から外れることで、アクセルペダルが急激に踏み込まれたりアクセルペダルが急激に戻されたと判断された場合、ステップS5で目標トルク比STrを低トルク比STrLに減少させる。前記ステップS2でアクセル開度変化率dAPがdAPL<dAP<dAPHの範囲に戻り、かつステップS3でその状態が所定時間継続すると、ステップS4で目標トルク比STrを高トルク比STrHに増加させる。
これにより、通常時は目標トルク比STrを高く設定してプーリ側圧を減少することで動力伝達効率の向上を図り、アクセルペダルが急激に操作されてベルト式無段変速機TMのベルトおよびプーリ間にスリップが発生する虞があるときには、目標トルク比STrを低く設定してプーリ側圧を増加することでベルト式無段変速機TMの保護を図ることができる。また前記ステップS3でヒステリシスを持たすことで、目標トルク比STrが頻繁に切り換わるのを防止することができる。
次に、図10に基づいて目標トルク比STrの設定の他の例を説明する。
先ずステップS11で目標トルク比STrに対する推定トルク比Trの偏差dTrを算出し、ステップS12でトルク比偏差dTrがdTrL<dTr<dTrHの範囲から外れることで、車両が悪路を走行して路面からベルト式無段変速機TMに逆伝達される負荷が大きく変動していると判断された場合、ステップS15で目標トルク比STrを低トルク比STrLに減少させる。前記ステップS12でトルク比偏差dTrがdTrL<dTr<dTrHの範囲に戻り、かつステップS13でその状態が所定時間継続すると、ステップS14で目標トルク比STrを高トルク比STrHに増加させる。
これにより、通常時は目標トルク比STrを高く設定してプーリ側圧を減少することで動力伝達効率の向上を図り、悪路走行時に路面からの負荷でベルト式無段変速機TMのベルトおよびプーリ間にスリップが発生する虞があるときには、目標トルク比STrを低く設定してプーリ側圧を増加することでベルト式無段変速機TMの保護を図ることができる。また前記ステップS13でヒステリシスを持たすことで、目標トルク比STrが頻繁に切り換わるのを防止することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、ベルト式無段変速機TMのトルク比Trを、入力軸11が有する変動成分が無端ベルト15を介して出力軸12に伝達される伝達特性に基いて推定する際に、入力軸11および出力軸12の変動成分の振幅差を指標化した滑り識別子IDslipと、入力軸11および出力軸12の変動成分の位相差を指標化した位相遅れΔφとの少なくとも一方を用いるので、ベルト式無段変速機TMの動力伝達効率に極めて密接に関連するトルク比Trを精度良く推定して動力伝達効率の向上を図ることができる。しかも滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφからトルク比Trを推定するので、それを推定するために必要なセンサの数を最小限に抑えてコストの削減を図ることができる。また推定したトルク比Trが目標トルク比STrに一致するようにドライブプーリ13およびドリブンプーリ14の一方に加えるプーリ側圧を制御するので、目標とするトルク比Trを直接指定して的確な制御を行うことができるだけでなく、プーリ側圧の応答性が変動成分の周波数f0 によって変化するのを防止することができる。
次に、図11〜図14に基づいて、無端ベルト15のマクロスリップの検出に基づく制御について説明する。本制御は上述したプーリ側圧制御に組み合わされるもので、無端ベルト15のマクロスリップを検出し、マクロスリップが検出されたときに滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφから推定したトルク比Trによるプーリ側圧制御を中止し、無端ベルト15のスリップ状態がマクロスリップ領域に入るのを防止することでプーリ側圧制御の精度をより高め、これによりベルト式無段変速機TMの動力伝達効率の更なる向上を図るものである。
図11は、ベルト式無段変速機TMからタイヤWまでの動力伝達経路をモデル化したものであり、ベルト式無段変速機TMの無端ベルト15の金属エレメントは弾性係数K1を有するバネ要素を構成し、ベルト式無段変速機TMのプーリ13,14および無端ベルト15は減衰係数C1を有する摩擦要素を構成し、ベルト式無段変速機TMおよびタイヤWを接続するドライブシャフトSは弾性係数K2を有するバネ要素を構成する。入力軸11の回転数(つまりドライブプーリ13の回転数)は入力軸回転数センサSaで検出され、出力軸12の回転数(つまりドリブンプーリ14の回転数)は出力軸回転数センサSbで検出される。
タイヤWが地面に接地した状態では、車体重量に相当する大きな荷重でタイヤWが固定されていると見なせるため、ベルト式無段変速機TMのドリブンプーリ14はドライブシャフトSからなる弾性係数K2のバネ要素を介して固定端に固定されていると見なすことができる。この状態でベルト式無段変速機TMからドライブシャフトSに振動が伝達されると、弾性係数K2のバネ要素を構成するドライブシャフトSは振動する。ドライブシャフトSの共振周波数は、例えば28Hzである。
図12は、ドライブシャフトSの振動周波数に対する振幅の関係を、減衰係数C1の大きさに応じて示すものである。ベルト式無段変速機TMの無端ベルト15の滑り量が小さいミクロスリップ状態では減衰係数C1が大きくなり、無端ベルト15の滑り量が大きいマクロスリップ状態では減衰係数C1が小さくなる。図12では、ドライブシャフトSの共振周波数である28Hzにおいて、減衰係数C1=1、C1=10およびC1=40の三つの場合の振幅を同じ大きさに揃えて記載しているが、周波数が28Hzよりも高い領域では減衰係数C1の大きさに応じて振幅の変化特性が異なっている。
すなわち、周波数がドライブシャフトSの共振周波数である28Hzよりも大きい周波数、例えば51Hzおよび74Hzにおいて、減衰係数C1=1の場合には振幅が減衰しているのに対し、減衰係数C1=10あるいは減衰係数C1=40の場合には振幅が発散している。
その理由は、減衰係数C1=1で小さいときは無端ベルト15がマクロスリップ状態であり、無端ベルト15の滑り量が大きいためにドライブプーリ13の回転変動がドリブンプーリ14に伝達され難くなり、ドリブンプーリ14の振幅が減衰するためである。逆に、減衰係数C1=10あるいは減衰係数C1=40で大きいときには無端ベルト15がミクロスリップ状態であり、無端ベルト15の滑り量が小さいためにドライブプーリ13の回転変動がドリブンプーリ14に伝達され易くなり、ドリブンプーリ14の振幅が発散するためである。
よって、ドライブシャフトSの共振周波数よりも高い周波数領域で、振幅が減衰すればマクロスリップ状態であり、振幅が発散すればミクロスリップ状態であると判断することができる。そしてマクロスリップ状態では、ミクロスリップ状態を前提とし算出した滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφに基づくプーリ側圧制御は精度が低下するため、滑り識別子IDslipあるいは位相遅れΔφに基づくプーリ側圧制御を中止する。
本実施の形態では、無端ベルト15がマクロスリップ状態にあることをリサジュー図形を用いて判定する。
クランクシャフトが回転数変動するエンジンEに接続されたドライブプーリ13には回転数変動が存在し、ドライブプーリ13の回転数変動ΔNDRは入力軸回転数センサSaの出力から算出される。またドライブプーリ13に無端ベルト15を介して接続されたドリブンプーリ14にも回転数変動が存在し、ドリブンプーリ14の回転数変動ΔNDNは出力軸回転数センサSbの出力から算出される。
ドライブプーリ13の回転数変動ΔNDRを単振動X=Acos ωtで表すと、ドリブンプーリ14の回転数変動ΔNDNは単振動Y=Acos (ωt+δ)で表されるので、単振動Xを基準波として横軸に取り、単振動Y=Acos (ωt+δ)を測定波として縦軸に取ることで、ドライブプーリ13からドライブプーリ13への振動伝達状態を示すリサジュー図形を描くことができる。
ところで、粘弾性体に正弦波状の応力を与えて発生する歪みを測定する動的測定において、応力の波形を基準波とし、歪みの波形を測定波としてリサジュー図形を描くと、粘性および弾性の大きさに応じて位相差δが変化して楕円形になるが、粘弾性体が純弾性体であって粘性を無視できる場合には位相差δ=0になってリサジュー図形が直線になり、粘弾性体が純粘性体であって弾性を無視できる場合には位相差δ=π/2になってリサジュー図形が円形になることが知られている。
図11に示すベルト式無段変速機TMのモデルは、外力に対して応答の速いバネ(弾性係数K1のバネ要素)と、応答の遅いダッシュポット(減衰係数C1の減衰要素)とを直列に接続したマックスウェルモデルであり、ベルト式無段変速機TMの弾性係数K1および減衰係数C1はそれぞれ粘弾性体の弾性および粘性に相当し、位相差δは弾性係数K1および減衰係数C1の大きさに応じて変化する。よって、弾性係数K2を有するドライブシャフトSを考慮しなければ、ベルト式無段変速機TMがバネ要素だけを含んで摩擦要素を含まない場合にはドリブンプーリ14の単振動Y=Acos (ωt+δ)においてδ=0となり、リサジュー図形は直線となる。逆にベルト式無段変速機TMが摩擦要素だけを含んでバネ要素を含まない場合にはδ=π/2となり、リサジュー図形は円形となる。そしてベルト式無段変速機TMがバネ要素および摩擦要素の両方を含む場合には、リサジュー図形は楕円形となる。
無端ベルト15がミクロスリップ状態にあるとき減衰係数C1は大きい値をとるのでリサジュー図形は楕円形となり、逆に無端ベルト15がマクロスリップ状態にあるとき減衰係数C1は小さい値をとるのでリサジュー図形は直線となることから、リサジュー図形を監視することで無端ベルト15のスリップ状態を検出することができる。
弾性係数K2を有するドライブシャフトSを考慮した場合、図13(A)に示すように、周波数が共振周波数(28Hz)のとき、減衰係数C1の大小に関わらずにリサジュー図形は直線になる。それに対して、図13(B)に示すように、共振周波数(28Hz)よりも高い周波数(51Hz)において、あるいは図13(C)に示すように、共振周波数(28Hz)よりも高い周波数(74Hz)において、減衰係数C1=1であってリサジュー図形が直線になるときには、図12において振幅が減衰しているのに対し、減衰係数C1=10あるいはC1=40であってリサジュー図形が楕円形になるときには、図12において振幅が発散していることが分かる。
ところで、粘弾性体に応力を与えた際の歪みの挙動が線形で表されることが知られているが、これは応力および歪みが小さくて粘弾性体を線形粘弾性体として取り扱うことが可能な場合に限られる。線形粘弾性体の場合には、入力振動の角振動数ωと出力振動の角振動数ωとが一致するため、リサジュー図形が楕円形になるという性質があり、ベルト式無段変速機TMのモデルにおいても、リサジュー図形が楕円形になる場合には線形性が確保されていることになり、再現性の高いプーリ側圧制御が可能となる。一方、リサジュー図形が崩れて楕円形にならない場合には、ベルト式無段変速機TMのモデルを線形粘弾性体と見なせなくなるため、再現性の高いプーリ側圧制御が不能となる。
図14は本実施の形態によるプーリ側圧制御のフローチャートを示すもので、先ずステップS21でエンジン回転数、ドライブプーリ回転数およびドリブンプーリ回転数を測定し、ステップS22で滑り識別子IDslip(あるいは位相遅れΔφ)を算出する。続くステップS23でドライブプーリ13の回転数変動ΔNDRおよびドリブンプーリ14の回転数変動ΔNDNに基づいて描いたリサジュー図形が楕円形である場合には、ベルト式無段変速機TMのモデルが線形粘弾性体と見なせると判断してステップS24に移行する。
ステップS24でドライブシャフトSに起因する振動が共振周波数よりも高い周波数において減衰しない場合には、無端ベルト15にマクロスリップが発生していないと判断してステップS25に移行する。ステップS25で滑り識別子IDslip(あるいは位相遅れΔφ)に基づいて算出したトルク比Trに基づいてプーリ側圧を制御する。具体的には、リサジュー図形が楕円形でなくなった場合、リサジュー図形が再度楕円形になるまでの間、最後にリサジュー図形が楕円形であったときに推定したトルク比Trによりプーリ側圧制御を継続する。これにより、必要最小限のプーリ側圧で無端ベルト15のスリップを抑制して動力伝達効率を高めることができるだけでなく、無端ベルト15が一時的にマクロスリップ状態になっても、次にミクロスリップ状態に復帰するまでの間、動力伝達効率を低下させることなくプーリ側圧制御を継続することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、ベルト式無段変速機TMの下流側に配置されたドライブシャフトSに起因する振動が共振周波数よりも高い周波数で減衰しないときに、つまり無端ベルト15にマクロスリップが発生していないことが保証されたときに、推定したトルク比Trに基づいてドライブプーリ13およびドリブンプーリ14に加えるプーリ側圧を制御するので、プーリ側圧制御の精度を高めて動力伝達効率の更なる向上が可能になる。
しかも入力軸11および出力軸12の回転変動ΔNDR,ΔNDNに基づいて描いたリサジュー図形が楕円形である場合に、推定したトルク比Trによるプーリ側圧制御を許可するので、マクロスリップが発生していないことを一層確実に判定し、推定したトルク比によるプーリ側圧制御を的確に実行することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、本発明の入力軸要素および出力軸要素の変動成分は回転数に限定されず、トルクであっても良い。
また本発明の入力軸要素は実施の形態の入力軸11に限定されず、入力軸11に結合されたエンジンEのクランクシャフトであっても良い。
また実施の形態ではエンジン回転数センサScで検出したエンジン回転数から変動成分の周波数f0 を算出しているが、入力軸回転数センサSaで検出した入力軸回転数から、あるいはエンジンEの点火時期信号から変動成分の周波数f0 を算出しても良い。
11 入力軸(入力軸要素)
12 出力軸(出力軸要素)
13 ドライブプーリ
14 ドリブンプーリ
15 無端ベルト(伝達要素)
E エンジン(駆動源)
IDslip 滑り識別子
S ドライブシャフト
STr 目標トルク比
T 実際の伝達トルク
Tmax 伝達可能な最大トルク
Tr トルク比
TM ベルト式無段変速機(無段変速機)
U 電子制御ユニット(トルク比推定手段、変速制御手段)
Δφ 位相遅れ

Claims (3)

  1. 駆動源(E)の駆動力が入力される入力軸要素(11)と、
    前記駆動源(E)の駆動力が変速して出力される出力軸要素(12)と、
    前記両要素(11,12)にそれぞれ接触して接触部分の摩擦により前記入力軸要素(11)から前記出力軸要素(12)に駆動力を伝達する伝達要素(15)と、
    前記入力軸要素(11)が有する任意の変動成分の前記出力軸要素(12)への伝達特性に基づき、伝達可能な最大トルク(Tmax)に対する実際の伝達トルク(T)の比であるトルク比(Tr)を推定するトルク比推定手段(U)と、
    を備える無段変速機の側圧制御装置であって、
    前記トルク比推定手段(U)は、前記両要素(11,12)の変動成分の振幅差を指標化した滑り識別子(IDslip)、および前記両要素(11,12)の変動成分の位相差を指標化した位相遅れ(Δφ)のうちの何れか一方と、前記両要素(11,12)の変動成分の周波数(f0 )あるいは前記駆動源(E)であるエンジンの回転数(Ne)とに基づいて前記トルク比(Tr)を推定し、
    前記無段変速機(TM)は、前記入力軸要素(11)に設けられたドライブプーリ(13)と、前記出力軸要素(12)に設けられたドリブンプーリ(14)と、前記両プーリ(13,14)に巻き掛けられた無端ベルトよりなる前記伝達要素(15)と、前記無段変速機(TM)の変速比を制御する変速制御手段(U)とを備え、
    前記変速制御手段(U)は、前記無段変速機(TM)の下流側に配置されたドライブシャフト(S)に起因する振動が該ドライブシャフト(S)の共振周波数よりも高い周波数で減衰しないときに、前記推定したトルク比(Tr)と目標トルク比(STr)との偏差に基づいて、該偏差が0となるように、前記ドライブプーリ(13)および前記ドリブンプーリ(14)に加えるプーリ側圧を制御し、前記無段変速機(TM)の下流側に配置されたドライブシャフト(S)に起因する振動が該ドライブシャフト(S)の共振周波数よりも高い周波数で減衰するときに、前記推定したトルク比(Tr)による前記プーリ側圧の制御を中止することを特徴とする無段変速機の側圧制御装置。
  2. 前記入力軸要素(11)および前記出力軸要素(12)の回転変動に基づいて描いたリサジュー図形が楕円形である場合に、推定した前記トルク比(Tr)によるプーリ側圧の制御を許可することを特徴とする、請求項1に記載の無段変速機の側圧制御装置。
  3. 前記リサジュー図形が楕円形でなくなった場合、前記リサジュー図形が再度楕円形になるまでの間、最後に前記リサジュー図形が楕円形であったときの前記滑り識別子(IDslip)あるいは前記位相遅れ(Δφ)から推定した前記トルク比(Tr)によりプーリ側圧の制御を継続することを特徴とする、請求項2に記載の無段変速機の側圧制御装置。
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