JP2013019339A - 回転式流体機械 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動軸を支持する転がり軸受の内輪を潤滑油で確実に潤滑する。
【解決手段】ハウジング(5)は、上部軸受部材(6)に供給された潤滑油を油溜まり(46)に戻すための返油通路(52)を内部に有する。返油通路(52)は、上部軸受部材(6)の下部に連通するとと共に、クランク軸(33)の周囲を取り囲むように形成された環状通路部(52a)と、環状通路部(52a)の内周端部に接続して下方に延出する下向き通路部(52b)とを有する。この下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)を上部軸受部材(6)の内輪軌道面(61a)よりもクランク軸(33)に接近させる。
【選択図】図3

Description

本発明は、回転式流体機械に関し、特に、駆動軸の軸受に潤滑油を供給する技術に関する。
従来より、例えば空気調和装置の冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続され、冷媒を圧縮する圧縮機や冷媒を膨張させる膨張機などの流体機械が知られている。こうした流体機械には、回転軸を備えた回転式のものがある。例えば特許文献1には、電動機と、該電動機に連結され、上下方向に延びる軸周りに回転する駆動軸と、電動機及び駆動軸を収容するケーシングとを備えた回転式流体機械(スクロール圧縮機)が開示されている。
このスクロール圧縮機は、駆動軸の上部が転がり軸受で支持されていて、該転がり軸受を潤滑油で潤滑することができる構成となっている。具体的には、ケーシング底部に潤滑油が溜まる油溜まりが設けられ、駆動軸に給油通路が形成されている。そうして、給油通路と転がり軸受の上部とが連通されていると共に、転がり軸受の下部と油溜まりとが返油用の通路で連通されている。返油用の通路は、転がり軸受に対し外輪側の下部で連通し、駆動軸の周囲を取り囲むように形成された環状溝と、該環状溝から径方向外方に延びる返油穴と、該返油穴と油溜まりとを連通する返油管とを有している。このスクロール圧縮機では、油溜まりの潤滑油が給油通路を通って転がり軸受に供給される。これにより、転がり軸受を潤滑油で潤滑することができるようになっている。そうして、潤滑油は、返油用の通路を通って油溜まりに戻されるようになっている。
特開平11−22669号公報(第4,5頁、図1)
本願発明者は、上記特許文献1に開示されたような構造の回転式流体機械においては、転がり軸受の内輪が外輪よりも摩耗や焼付きを起こし易いことを見出した。
そこで、本願発明者がかかる転がり軸受の内輪の摩耗・焼付きの現象について検討したところ、次に述べるメカニズムにより発生することが判明した。即ち、給油通路を通って転がり軸受に供給された潤滑油は、駆動軸の回転による遠心力によって転がり軸受の外輪側にもっていかれ、転がり軸受の外輪を伝うようにして下方に流れる。そうして、潤滑油は、転がり軸受から環状溝に排出され、該環状溝から上記遠心力によって径方向外方に流されて返油穴及び返油管を通って油溜まりに戻される。そのため、潤滑油が油溜まりを出発して油溜まりに戻されるまで、転がり軸受の内輪が潤滑油でほとんど潤滑されず、転がり軸受の内輪の潤滑が不足気味になっていた。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動軸が転がり軸受で支持された回転式流体機械において、転がり軸受の内輪を潤滑油で確実に潤滑することである。
第1の発明は、電動機(3)と、該電動機(3)に連結され、内部に給油通路(33c)を有し且つ上下に延びる軸周りに回転する駆動軸(33)と、上記電動機(3)及び駆動軸(33)を収容すると共に、底部に潤滑油が溜まる油溜まり(46)が設けられたケーシング(4)と、該ケーシング(4)に固定され、内部に返油通路(52)を有するハウジング(5)と、該ハウジング(5)に固定され、上記駆動軸(33)を支持する転がり軸受(6)と、上記油溜まり(46)の潤滑油を上記給油通路(33c)に供給する給油ポンプ(8)とを備え、上記給油ポンプ(8)により潤滑油を上記給油通路(33c)を介して上記転がり軸受(6)に供給し、該転がり軸受(6)に供給された潤滑油を上記返油通路(52)を介して上記油溜まり(46)に戻すように構成された回転式流体機械を対象とし、上記返油通路(52)は、上記転がり軸受(6)の下部に連通すると共に上記駆動軸(33)の周囲を取り囲むように形成された環状通路部(52a)と、該環状通路部(52a)の内周端部に接続して下方に延出する下向き通路部(52b)とを有し、上記下向き通路部(52b)と上記環状通路部(52a)との接続部(52g)は、上記転がり軸受(6)の内輪軌道面(61a)よりも上記駆動軸(33)に接近していることを特徴とする。
第1の発明では、給油ポンプ(8)によって転がり軸受(6)に供給された潤滑油は、駆動軸(33)の回転による遠心力によって転がり軸受(6)の外輪側にもっていかれ、転がり軸受(6)の外輪を伝うようにして下方に流れて環状通路部(52a)に流入する。そうして、潤滑油は、環状通路部(52a)から下向き通路部(52b)側に流れる。ここで、下向き通路部(52b)が環状通路部(52a)の内周端部、即ち、遠心力の方向とは逆方向の端部に接続されているため、潤滑油は、転がり軸受(6)内の径方向の油面位置(以下、ヘッド位置ともいう)が環状通路部(52a)内のヘッド位置と合致するように、転がり軸受(6)内に溜まっていく。つまり、潤滑油は、環状通路部(52a)内のヘッド位置と転がり軸受(6)内のヘッド位置とを合致させるようにしながら環状通路部(52a)内を下向き通路部(52b)側に流れる。加えて、下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)が転がり軸受(6)の内輪軌道面(61a)よりも駆動軸(33)に接近しているため、環状通路部(52a)内の潤滑油のヘッド位置が下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)に達するよりも前に、転がり軸受(6)内の潤滑油のヘッド位置が内輪軌道面(61a)に達することになる。従って、潤滑油が下向き通路部(52b)を通過するときには、転がり軸受(6)の内輪軌道面(61a)は潤滑油で潤滑される。
第2の発明は、第1の発明において、上記返油通路(52)は、潤滑油を上方に導く上向き通路部(52d)を上記下向き通路部(52b)よりも下流側に有することを特徴としている。
仮に、返油通路(52)が下向き通路部(52b)よりも下流側に上向き通路部(52d)を有しておらず、水平な通路や下方に延びる通路のみを有しているときには、回転式流体機械を停止(電動機(3)及び給油ポンプ(8)を停止)すると、転がり軸受(6)及び返油通路(52)内の潤滑油が重力によって油溜まり(46)に戻され得る。
これに対し、第2の発明では、返油通路(52)が下向き通路部(52b)よりも下流側に上向き通路部(52d)を有しているため、回転式流体機械を停止したときに、転がり軸受(6)内及び返油通路(52)の上向き通路部(52d)及び該上向き通路部(52d)よりも上流側の通路に溜まっている潤滑油が油溜まり(46)に戻されない。その結果、回転式流体機械の次回起動時まで、潤滑油を転がり軸受(6)及び環状通路部(52a)に溜めておくことができる。
第1の発明によれば、潤滑油が下向き通路部(52b)を通過するときには、転がり軸受(6)の内輪軌道面(61a)は潤滑油で潤滑されているから、転がり軸受(6)の内輪(61)を潤滑油で確実に潤滑することができる。その結果、転がり軸受(6)の内輪(61)の摩耗・焼付きを抑制することができる。
また、第2の発明によれば、回転式流体機械の次回起動時まで、潤滑油を転がり軸受(6)及び環状通路部(52a)に溜めておくことができるから、回転式流体機械の次回起動時には、転がり軸受(6)の内輪(61)を潤滑油で早期に潤滑することができる。
本発明に係る回転式流体機械を適用したスクロール圧縮機の全体構成を示す図である。 潤滑油の流れを説明するための図である。 上部軸受内が潤滑油が満たされたときの状態図である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎない。
図1は、本発明に係る回転式流体機械を適用したスクロール圧縮機(1)の全体構成を示す図である。このスクロール圧縮機(1)は、例えば空気調和装置の蒸気圧縮冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続され、冷媒回路の冷媒ガスを吸入して圧縮するものである。
−スクロール圧縮機の構成−
スクロール圧縮機(1)は、冷媒ガスを圧縮する圧縮機構(2)と、該圧縮機構(2)を駆動する電動機(3)と、該電動機(3)に連結され、電動機(3)の動力を圧縮機構(2)に伝達する駆動軸としてのクランク軸(33)と、圧縮機構(2)、電動機(3)及び、クランク軸(33)を収容するケーシング(4)とを備えている。
ケーシング(4)は、縦長の密閉容器であり、円筒状の胴部(41)と、該胴部(41)の上端に接合された上側蓋部(42)と、胴部(41)の下端に接合された下側蓋部(43)とを有している。
胴部(41)には、ケーシング(4)の内部空間を上下に区画するハウジング(5)が固定されている。ケーシング(4)の内部空間には、ハウジング(5)を挟んだ上側に圧縮機構(2)が、その下側に電動機(3)がそれぞれ配設されている。
ケーシング(4)には、上側蓋部(42)に冷媒回路の冷媒ガスを吸入するための吸入管(44)が、胴部(41)に圧縮機構(2)で圧縮された冷媒ガスを冷媒回路に吐出するための吐出管(45)がそれぞれ取り付けられている。これら吸入管(44)及び吐出管(45)は、何れもケーシング(4)を貫通している。そして、吸入管(44)は、ケーシング(4)のハウジング(5)を挟んで上側の上部空間(S1)に開口している一方、吐出管(45)は、ケーシング(4)のハウジング(5)を挟んで下側の下部空間(S2)に開口している。
ハウジング(5)は、中央部が下方に膨らんだ厚肉の略円盤状に形成されていて、その中央部には、上下に貫通する貫通孔(51)が形成されている。
電動機(3)は、ケーシング(4)の胴部(41)に固定された略円筒状のステータ(31)と、該ステータ(31)の内側に回転可能に設けられた略円筒状のロータ(32)とを有する。
クランク軸(33)は、上下方向に延びる軸であり、ロータ(32)を貫通すると共に、該ロータ(32)に固定された主軸部(33a)と、該主軸部(33a)の上側に一体に設けられ、軸心が主軸部(33a)の軸心に対して偏心した偏心部(33b)とを有する。以下、クランク軸(33)の軸方向である上下方向に直交する方向を径方向とし、クランク軸(33)を周回する方向を周方向として説明する。
主軸部(33a)は、円柱状に形成されていて、その上寄り部分には、偏心部(33b)や後述する圧縮機構(2)の可動スクロール(22)とのバランスをとるためのバランスウェイト(33d)が取り付けられている。また、主軸部(33a)は、上端部が上部軸受部材(6)によって、下端部が下部軸受部材(7)によって、それぞれ回転自在に支持されている。
上部軸受部材(6)は、ハウジング(5)に貫通孔(51)内で固定されている。この上部軸受部材(6)は、転がり軸受であり、主軸部(33a)に嵌め込まれた内輪(61)と、該内輪(61)に対し径方向外方で対向し、ハウジング(5)に固定された外輪(62)と、内輪(61)と外輪(62)とで転がり自在に挟まれた転動体(63)とを有する。
一方、下部軸受部材(7)は、ケーシング(4)の胴部(41)の下端部に固定されている。この下部軸受部材(7)には、主軸部(33a)が挿通される軸受孔(71)が形成されていて、該軸受孔(71)に主軸部(33a)を支持する軸受メタル(滑り軸受)(72)が挿通固定されている。
偏心部(33b)は、主軸部(33a)よりも小径の円柱状に形成されていて、後述する可動スクロール(22)のボス部(22c)に係合している。
圧縮機構(2)は、ハウジング(5)に固定された固定スクロール(21)と、該固定スクロール(2)とハウジング(5)との間で偏心回転運動(公転運動)をする可動スクロール(22)とを有する。
固定スクロール(21)は、略円盤状の固定側鏡板部(21a)と、該固定側鏡板部(21a)の前面(図1における下面)に立設された渦巻き状の固定側ラップ(21b)とを有する。
可動スクロール(22)は、当該可動スクロール(22)の自転を阻止するオルダム継手(図示せず)を介してハウジング(5)の上面に載置されている。この可動スクロール(22)は、略円盤状の可動側鏡板部(22a)と、該可動側鏡板部(22a)の前面(図1における上面)に立設された渦巻き状の可動側ラップ(22b)と、可動側鏡板部(22a)の背面(図1における下面)に立設された筒状のボス部(22c)とを有する。
ボス部(22c)は、ハウジング(5)の貫通孔(51)に挿入されていて、この状態でクランク軸(33)の偏心部(33b)がボス部(22c)に挿入されている。こうして、可動スクロール(22)は、クランク軸(33)に係合している。
ボス部(22c)の内周面には、偏心部(33b)を支持する偏心軸受メタル(滑り軸受)(22d)が挿通固定されている。
ボス部(22c)の内部には、偏心部(33b)と可動側鏡板部(22a)の背面(図1における下面)との間に油室(S3)が、偏心部(33b)と偏心軸受メタル(22d)との間に軸受隙間(S4)がそれぞれ形成されている。そして、ハウジング(5)の貫通孔(51)内における上部軸受部材(6)の上側には、可動スクロール(22)の可動側鏡板部(22a)及びボス部(22c)と、ハウジング(5)と、クランク軸(33)とによってクランク室(S5)が形成されている。
そうして、圧縮機構(2)では、固定スクロール(21)の固定側ラップ(21b)と可動スクロール(22)の可動側ラップ(22b)とが互いに噛み合っていて、固定側ラップ(21b)と可動側ラップ(22b)との間に、冷媒を圧縮する複数の圧縮室(23)が形成されている。
また、固定スクロール(21)には、固定側ラップ(21b)の最外周壁から径方向外方に連続する外周縁部近傍に上方に開口する開口部(21c)が形成されていて、該開口部(21c)に吸入管(44)が接続されている。また、固定スクロール(21)には、開口部(21c)と圧縮室(23)とを連通する吸入ポート(21d)が形成されている。こうして、冷媒回路の冷媒ガスが吸入管(44)、開口部(21c)及び、吸入ポート(21d)を通って圧縮室(23)に吸入されるようになっている。
また、固定側鏡板部(21a)の上面には、下方に向かって凹陥した凹部(21e)が形成されていて、該凹部(21e)は蓋(21f)で閉塞されている。これにより、凹部(21e)と蓋部(21f)とで囲まれた吐出室(21g)が形成されている。
固定側鏡板部(21a)の固定側ラップ(21b)の中心付近には、圧縮室(23)と吐出室(21g)とを連通する吐出ポート(21h)が形成されている。
固定スクロール(21)及びハウジング(5)には、吐出室(21g)と下部空間(S2)とを連通する吐出ガス通路(不図示)が形成されている。こうして、圧縮室(23)で圧縮された冷媒ガスが吐出ポート(21h)、吐出室(21g)、上記吐出ガス通路及び、下部空間(S2)、吐出管(45)を通って冷媒回路に吐出されるようになっている。
そうして、本スクロール圧縮機(1)では、クランク軸(33)と下部軸受部(7)や可動スクロール(22)のボス部(22c)との摺動部及び、上部軸受部(6)(内輪(61)及び外輪(62)の軌道面(61a),(62a)(転動体(63)が転がる表面))を潤滑油で潤滑することができるように構成されている。以下、この構成について、具体的に説明する。
ケーシング(4)の底部は、潤滑油が溜まる油溜まり(46)となっている。
クランク軸(33)の内部には、給油通路(33c)が形成されている。
給油通路(33c)は、クランク軸(33)を上下に貫通していて、給油通路(33c)の上端と上部軸受部材(6)の上部とは、油室(S3)、軸受隙間(S4)及び、クランク室(S5)を介して連通している。
給油通路(33c)には、クランク軸(33)と下部軸受部材(7)との摺動部に連通する分岐通路(図示せず)が接続されている。
主軸部(33a)の下端には、油溜まり(46)の潤滑油を給油通路(33c)に供給するための給油ポンプ(8)が設けられている。
給油ポンプ(8)は、油溜まり(46)に溜まっている潤滑油をクランク軸(33)の回転に伴って汲み上げるように構成されている。
ハウジング(5)の内部には、上部軸受部材(6)を潤滑した潤滑油を油溜まり(46)に戻すための返油通路(52)が形成されている。
返油通路(52)は、図2に示すように、環状通路部(52a)と、下向き通路部(52b)と、第1外向き通路部(52c)と、上向き通路部(52d)と、第2外向き通路部(52e)と、排出通路部(52f)とを有する。
環状通路部(52a)は、上部軸受部材(6)の下部に連通すると共に、クランク軸(33)の周囲を取り囲むように形成されている。
環状通路部(52a)の内周端部(径方向内方の端部)は、上部軸受部材(6)の内輪軌道面(61a)よりもクランク軸(33)に接近している(径方向内方に位置している)一方、環状通路部(52a)の外周端部(径方向外方の端部)は、上部軸受部材(6)の外輪(62)の鍔部(62b)における径方向内方の端部と一致している。
下向き通路部(52b)は、環状通路部(52a)の内周端部における周方向の一部に接続して下方に延出している。従って、下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)は、上部軸受部材(6)の内輪軌道面(61a)よりもクランク軸(33)に接近している(径方向内方に位置している)。
第1外向き通路部(52c)は、下向き通路部(52b)の下端部から径方向外方に延びていて、上部軸受部材(6)の外輪(62)よりも径方向外方位置まで延びている。
上向き通路部(52d)は、第1外向き通路部(52c)の径方向外方の端部から上方に延出している。
第2外向き通路部(52e)は、上向き通路部(52d)の上端部から径方向外方に延びていて、ケーシング(4)の内壁付近まで延びている。
排出通路部(52f)は、第2外向き通路部(52e)の径方向外方の端部から下方に向かって延びていて、その下端は下部空間(S2)に開口している。
−運転動作−
本スクロール圧縮機(1)は、以上のように構成されており、次にスクロール圧縮機(1)の運転動作について説明する。
電動機(3)に通電すると、ロータ(32)の回転に伴ってクランク軸(33)が上下方向に延びる軸周りに回転する。これにより、クランク軸(33)の偏心部(33b)に係合した可動スクロール(22)が公転運動をする。可動スクロール(22)の公転運動によって、圧縮室(23)の容積が周期的に増減を繰り返す。この圧縮室(23)の容積増加によって、冷媒回路の冷媒ガスが吸入管(44)等を通じて圧縮室(23)に吸入され、圧縮室(23)の容積減少によって、冷媒ガスが圧縮されて、吐出ポート(21h)等を介して吐出管(45)から冷媒回路に吐出される。
次に、本スクロール圧縮機(1)における潤滑油の流れについて、図1〜3を参照しながら説明する。
クランク軸(33)が回転すると、給油ポンプ(8)により、油溜まり(46)の潤滑油が給油通路(33c)に吸い上げられる。給油通路(33c)に吸い上げられた潤滑油の一部は、上記分岐通路を通ってクランク軸(33)と下部軸受部材(7)との摺動部に供給され、残りの潤滑油は、クランク軸(33)(偏心部(33b))の上端面から流出する。
クランク軸(33)の上端面から流出した潤滑油は、図2に示すように、油室(S3)、軸受隙間(S4)を通ってクランク室(S5)に流入する。このとき、クランク軸(33)と可動スクロール(22)のボス部(22c)との摺動部が潤滑油で潤滑される。クランク室(S5)に流入した潤滑油は、上部軸受部材(6)の上部から上部軸受部材(6)内(内輪(61)と外輪(62)との間)に流入する。
上部軸受部材(6)内に流入した潤滑油は、クランク軸(33)の回転による遠心力によって外輪(62)側(径方向外方)にもっていかれ、外輪軌道面(62a)を伝うようにして下方に流れて環状通路部(52a)に流入する。
環状通路部(52a)に流入した潤滑油は、下向き通路部(52b)側に流れる。ここで、下向き通路部(52b)が環状通路部(52a)の内周端部(径方向内方の端部)、即ち、上記遠心力の方向(径方向外方)とは逆方向の端部に接続されているため、潤滑油は、上部軸受部材(6)内の径方向の油面位置(h2)(以下、ヘッド位置という。尚、ヘッド位置を示す符号は、図3にのみ付している。)が環状通路部(52a)内のヘッド位置(h1)と合致するように、上部軸受部材(6)内に溜まっていく。つまり、潤滑油は、環状通路部(52a)内のヘッド位置(h1)と上部軸受部材(6)内のヘッド位置(h2)とを合致させるようにしながら環状通路部(52a)内を下向き通路部(52b)側(径方向内方)に流れる。
環状通路部(52a)内の潤滑油のヘッド位置(h1)が内輪軌道面(61a)と同じ径方向位置に達すると、上部軸受部材(6)内の潤滑油が内輪軌道面(61a)に達し、その結果、内輪軌道面(61a)が潤滑油で潤滑される。
そうして、環状通路部(52a)内の潤滑油のヘッド位置(h1)が下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)に達すると、図3に示すように、環状通路部(52a)内の潤滑油が下向き通路部(52b)に流入する。下向き通路部(52b)に流入した潤滑油は、第1外向き通路部(52c)を通って上向き通路部(52d)に流入し、該上向き通路部(52d)で上方に導かれてから第2外向き通路部(52e)及び排出通路部(52f)を通って下部空間(S2)に流出する。そうして、潤滑油は、下部空間(S2)を通って油溜まり(46)に戻される。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、下向き通路部(52b)が環状通路部(52a)の内周端部、即ち、上記遠心力の方向とは逆方向の端部(径方向内方の端部)に接続されているため、潤滑油は、環状通路部(52a)内のヘッド位置(h1)と上部軸受部材(6)内のヘッド位置(h2)とを合致させるようにしながら環状通路部(52a)内を下向き通路部(52b)側(径方向内方)に流れる。そして、下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)が上部軸受部材(6)の内輪軌道面(61a)よりもクランク軸(33)に接近している(径方向内方に位置している)ため、環状通路部(52a)内の潤滑油のヘッド位置(h1)が下向き通路部(52b)と環状通路部(52a)との接続部(52g)に達するよりも前に、上部軸受部材(6)内の潤滑油のヘッド位置(h2)が内輪軌道面(61a)に達することになる。従って、潤滑油が下向き通路部(52)を通過するときには、上部軸受部材(6)の内輪軌道面(61a)は潤滑油で潤滑されていることになるから、上部軸受部材(6)の内輪(61)を潤滑油で確実に潤滑することができる。その結果、上部軸受部材(6)の内輪(61)の摩耗・焼付きを抑制することができる。
また、下向き通路部(52b)よりも下流側に上向き通路部(52d)を有しているため、スクロール圧縮機(1)(電動機(3)及び給油ポンプ(8))を停止させたときに、上部軸受部材(6)内及び返油通路(52)の上向き通路部(52d)及び該上向き通路部(52d)よりも上流側の通路(つまり、環状通路部(52a)、下向き通路部(52b)及び、第1外向き通路部(52c))に溜まっている潤滑油が油溜まり(46)に戻されない。そのため、スクロール圧縮機(1)の次回起動時まで、潤滑油を上部軸受部材(6)及び環状通路部(52a)に溜めておくことができ、その結果、スクロール圧縮機(1)の次回起動時には、上部軸受部材(6)の内輪(61)を潤滑油で早期に潤滑することができる。
《その他の実施形態》
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
即ち、下向き通路部(52b)は、環状通路部(52a)の周方向の一部に接続されているが、これに限られず、環状通路部(52a)の周方向の全部に接続されている、即ち、環状に形成されていてもよい。
また、上記実施形態においては、スクロール圧縮機について説明したがこれに限られず、その他の回転式圧縮機や、膨張機等に適用してもよい。
本発明は、駆動軸が転がり軸受で支持された様々な回転式流体機械において、転がり軸受の内輪を潤滑油で確実に潤滑することができる点で有用である。
1 スクロール圧縮機(回転式流体機械)
2 圧縮機構
3 電動機
33 クランク軸(駆動軸)
33c 給油通路
4 ケーシング
46 油溜まり
5 ハウジング
52 返油通路
52a 環状通路部
52b 下向き通路部
52d 上向き通路部
52g 接続部
6 上部軸受部材(転がり軸受)
61 内輪
61a 内輪軌道面
8 給油ポンプ

Claims (2)

  1. 電動機(3)と、該電動機(3)に連結され、内部に給油通路(33c)を有し且つ上下に延びる軸周りに回転する駆動軸(33)と、上記電動機(3)及び駆動軸(33)を収容すると共に、底部に潤滑油が溜まる油溜まり(46)が設けられたケーシング(4)と、該ケーシング(4)に固定され、内部に返油通路(52)を有するハウジング(5)と、該ハウジング(5)に固定され、上記駆動軸(33)を支持する転がり軸受(6)と、上記油溜まり(46)の潤滑油を上記給油通路(33c)に供給する給油ポンプ(8)とを備え、
    上記給油ポンプ(8)により潤滑油を上記給油通路(33c)を介して上記転がり軸受(6)に供給し、該転がり軸受(6)に供給された潤滑油を上記返油通路(52)を介して上記油溜まり(46)に戻すように構成された回転式流体機械であって、
    上記返油通路(52)は、上記転がり軸受(6)の下部に連通すると共に上記駆動軸(33)の周囲を取り囲むように形成された環状通路部(52a)と、該環状通路部(52a)の内周端部に接続して下方に延出する下向き通路部(52b)とを有し、
    上記下向き通路部(52b)と上記環状通路部(52a)との接続部(52g)は、上記転がり軸受(6)の内輪軌道面(61a)よりも上記駆動軸(33)に接近していることを特徴とする回転式流体機械。
  2. 請求項1に記載の回転式流体機械において、
    上記返油通路(52)は、潤滑油を上方に導く上向き通路部(52d)を上記下向き通路部(52b)よりも下流側に有することを特徴とする回転式流体機械。
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