JP2013018983A - 半導体装置の製造方法および半導体装置 - Google Patents

半導体装置の製造方法および半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた接着シートにおいて、チップと配線接続基板との間の熱応力を緩和できる構成を提供する。
【解決手段】本発明の接着シートは、放射性重合性基材上にダイボンディング剤として使用できる接着剤層を有しているので、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた接着シートを提供できる。また、接着剤層として、Bステージ状態で相分離する2種類の樹脂であって、Bステージ状態で分散相を形成する樹脂(A)と連続相を形成する樹脂(B)とを持ち、前記樹脂(A)は、未硬化状態での重量平均分子量が1万以下で、前記樹脂(B)は、未硬化状態での重量平均分子量が10万以上である。
【選択図】なし

Description

本発明は、半導体装置の製造に使用する接着シートに関し、特にダイシングの際のウエハ固定機能と、リードフレーム上へのチップ固定のための接着機能とをあわせ持つ接着シートに関する。
シリコン、ガリウムヒ素などの半導体装置のプロセスは、大径の半導体ウエハ状態で素子形成等を行う前工程と、ウエハを素子小片(チップ)ごとに分離し、最終製品に仕上げる後工程とに分けられる。
後工程では、まず、半導体ウェハはチップごとに切断分離(ダイシング)されるが、この際、半導体ウェハはあらかじめ粘着シートに貼着された状態でダイシング、洗浄、乾燥、粘着シートの引き延ばし(エキスパンディング)、粘着シートからのチップの引き剥がし(ピックアップ)の各工程が加えられる。この後、リードフレーム上へのチップのダイボンディング工程が続く。
半導体ウェハのダイシング工程からピックアップ工程に至るプロセスで用いられる粘着シートは、ダイシング工程から乾燥工程まではチップに対して充分な接着力を維持することが必要であるとともに、ピックアップ時にはチップに粘着剤が付着しない程度に良好な剥離性を有していることが望まれている。
ピックアップされたチップをリードフレーム上にダイボンディングする際には、エポキシ接着剤などのダイ接着用接着剤を介してリードフレームに接着する。よって、チップ裏面に接着剤を塗布する必要があるが、チップが非常に小さい場合には、適量の接着剤をチップに塗布することは困難であり、ICチップから接着剤がはみ出したり、あるいはICチップが大きい場合には、接着剤量が不足するなど、適切な接着力を有するように接着を行うことは必ずしも容易ではない。またこのようなダイ接着用接着剤の塗布作業は煩雑でもあり、プロセスの簡略化も要求されている。
最近、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えたウェハ貼着用粘着シート(以下、「接着シート」という。)が種々提案されている(たとえば、特開平2−32181号公報、特開平3−268345号公報、特公平3−34853号公報等)。
特開平2−32181号公報には、(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エポキシ樹脂、光重合性低分子化合物、熱活性型潜在性エポキシ樹脂硬化剤および光重合開始剤よりなる組成物から形成される粘接着層と、基材とからなる粘接着テープが開示されている。この粘接着層は、ウェハダイシング時には、ウェハを固定する機能を有し、ダイシング終了後、エネルギー線を照射すると硬化し、基材との間の接着力が低下する。したがって、チップのピックアップを行うと、粘接着層は、チップとともに剥離する。粘接着層を伴ったICチップをリードフレームに載置し、加熱すると、粘接着層が接着力を発現し、ICチップとリードフレームとの接着が完了する。
また、特公平3−34853号公報には、剥離層が実質的に存在しない表面を有する重合体支持フィルムと、導電性接着剤とからなるダイシング用フィルムが教示されている。この導電性接着剤は、上記の粘接着層と略同等の機能を有する。
さらに、特開平3−268345号公報には、支持基材上に設けられた加熱発泡粘着層の上に、ダイ接着用の接着剤層が設けられており、加熱により該接着剤層と加熱発泡粘着層とが剥離可能となる、半導体ウェハの分断時の支持機能を兼ね備えたダイ接着用シートが教示されている。
上述するような、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた接着シートを使用すれば、いわゆるダイレクトダイボンディングが可能になり、ダイ接着用接着剤の塗布工程を省略できるようになる。ダイボンディング工程の為に接着剤をあらたに塗布する必要がないので、プロセスの簡易化を図ることができる。
近年、電子機器の小型化、高周波数動作化の動向にともない、これに搭載する半導体パッケージは基板に高密度で実装することが要求され、小型・軽量化が進んでいる。また、外部端子がパッケージ下部にエリアアレイ状配置されたマイクロBGA(ボールグリッドアレイ)やCSP(チップサイズパッケージ)と呼ばれる小型のパッケージの開発も進められている。
半導体パッケージとしては、例えば2層配線構造を有するガラスエポキシ基板や1層配線構造のポリイミド基板などの有機樹脂基板上に、絶縁性接着剤を介して半導体チップが搭載され、チップ側の端子と配線板側端子とがワイヤボンドないしはTAB(テープオートメーテッドボンディング)のインナーボンディング方式で接続され、接続部とチップ上面部ないしは端面部とがエポキシ系封止材ないしはエポキシ系液状封止材で封止され、配線基板裏面にはんだボールなど金属端子がエリアアレイ状に配置されている構造が採用されている。
また、これらの半導体パッケージを電子機器基板上に実装する際には、半田リフロー方式を用いて、高密度で面付け一括実装されることが多い。このとき、半導体パッケージ全体は210〜260℃の高温にさらされる。
上述するように、半導体チップは、絶縁性接着剤を介してTAB等の配線接続板上に搭載されているが、チップと配線接続板との熱膨張係数の差が大きいときは、半田リフロー時にパッケージクラック(リフロークラックともいう。)が発生する場合がある。
そこで、本発明の目的は、上述する従来の課題に鑑み、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備え、しかも半導体製造工程における上述するリフロークラックの発生を抑制できる接着シートを提供することである。また、この接着シートを用いた半導体装置の製造方法および半導体装置を提供することである。
本発明の接着シートは、放射線重合性を持つ基材と、前記基材上に形成される接着剤層とを有し、前記接着剤層が、Bステージ状態で相分離する分散相を形成する樹脂(A)と連続相を形成する樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)は、未硬化状態での重量平均分子量が1万以下で、前記樹脂(B)は、未硬化状態での重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする。
本発明の半導体装置の製造方法は、上記本発明の接着シートを接着剤層を接着面として半導体ウエハに貼り付ける工程と、半導体ウエハをダイシングする工程と、接着シートの基材に、基材側より放射線を照射する工程と、接着シートの基材から接着剤層を接着させたままの半導体チップを剥離する工程と、剥離した前記半導体チップをリードフレーム等の配線接続基板上に前記接着剤層を介して接着する工程とを有することを特徴とする。
また、本発明の半導体装置は、上述する本発明の半導体装置の製造方法を用いて作製された装置である。
本発明の接着シートおよびこれを用いた半導体装置の製造方法によれば、放射線重合性を有する基材を有しているので、放射線の照射により、重合硬化を図り、基材と接着剤層との接着性を調整できる。よって、本発明の接着シートは、半導体装置の製造工程において、ダイシングの際は、ウェハ固定用接着シートとして使用することができるとともに、ダイシング工程後には、基材に放射線を照射して、基材と接着剤層との接着性を下げ、接着剤層を備えたままチップを容易に基材から剥離させることができる。この後、剥離したチップは、接着剤層を介してリードフレームやTAB等の配線接続基板上に接着させることができる。
さらに、本発明の接着シートは、室温で十分なダイボンディング材としての接着力を有するとともに、接着剤層をBステージ状態で、樹脂(A)が島状の分散相を形成し、樹脂(B)が海状の連続相を構成するため、Bステージ状態における弾性率を低く調整できる。即ち半田リフロー工程等の高温工程において、接着剤層は弾性率の低いBステージ状態にあるため、半導体チップと配線接続基板との熱膨張係数の差により生じる応力を緩和し、クラックの発生を抑制できる。従って、本発明の接着シートを用いた上述する半導体装置の製造方法によって作製された半導体装置は、高温でもパッケージクラック等を生じない。
以上に説明するように、本発明の接着シートは、放射性重合性基材上にダイボンディング剤として使用できる接着剤層を有しているので、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた接着シートを提供できる。よって、この接着シートを用いた本発明の半導体装置の製造方法は、ダイボンディング接着剤を接着する工程を省略できる。
また、本発明の接着シートは、その接着剤層が耐熱性、耐湿性、および高温において十分低い弾性率を示すので、ダイボンディング後のチップと配線接続基板との間の熱応力を緩和し、高温工程での半導体装置のクラックの発生を抑制する。よって、この接着シートを使用した本発明の半導体装置の製造方法で作製された半導体装置は、クラック発生のない高温安定性の高いものを提供できる。
本発明の実施例に係る接着剤層の連続相を形成する樹脂材料を示す表である。 本発明の実施例に係る接着シートの接着剤層およびこの接着シートを用いた半導体装置の耐熱性、耐湿性、弾性率の測定結果を示す表である。
以下、本発明の接着シートの実施の形態について説明する。
本発明の実施の形態に係る接着シートは、放射線重合性を有する基材と、この上に形成されたダイ接着用接着剤層とから構成され、基材にUV(紫外線)やEB(電子ビーム)等の放射線を照射することにより、基材とダイ接着用接着剤層との接着力を調整することで、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを兼ね備えた半導体ウエハ貼着用粘着シートである。
本実施の形態の放射線重合性を有する基材としては、樹脂フィルム中に放射線重合性官能基を有する成分を含有させたもの、あるいは放射線重合性官能基を有する樹脂をフィルム状に形成したものを用いることができる。
基材に用いる樹脂としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、ポリアミド、ポリエチレン、ポリスルホン等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂、あるいは、アクリル樹脂、ゴム系ポリマー、フッ素ゴム系ポリマー、フッ素樹脂等があげられ、これら樹脂中に放射線重合性成分を混入するか、あるいは、これら樹脂に放射線重合性官能基を付加した変成樹脂が用いられる。またこれらの2種以上の混合物であってもよい。
また、基材中の放射線重合性官能基としては、分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する化合物を用いることができる。
さらに、放射線重合性を有する基材には、必要に応じて反応性希釈剤を添加してもよい。反応性希釈剤としては、分子量が100〜3000程度、好ましくは100〜1500程度であり、分子内に炭素−炭素二重結合を少なくとも1個以上有する重合性化合物が用いられる。具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが一種または複数用いられる。反応性希釈剤は、樹脂100重量部に対して0〜50重量部、特には0〜30重量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
上述する放射線重合性を有する基材には、光反応開始剤を混入してもよい。光反応開始剤を混入した場合は、光照射による重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることもできる。このような光反応開始剤としては、具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光反応開始剤は、樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、特には0.5〜5重量部の範囲の量で用いられることが好ましい。
次に、上述する基材の上に形成される本実施の形態の接着剤層は、Bステージ状態で相分離する2種類の樹脂、即ち、分散相を形成する樹脂(A)及び連続相を形成する樹脂(B)とを有する。
なお、ここでBステージ状態とは樹脂の加熱半硬化状態をいい、詳細には、DSC(示差走査熱量計:Differential Scanning Calorimeter)を用いて、硬化発熱量を測定した値が、未硬化状態での組成物の硬化発熱量の10〜40%である状態をいう。
Bステージ状態で分散相を形成する樹脂(A)としては、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、シアネート樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ基やカルボキシル基などの官能基を有するアクリルゴム、エポキシ基やカルボキシル基などの官能基を有するブタジエンゴム、シリコーン変性ポリアミドイミドなどの変性樹脂などが使用できる。このうち、接着性、耐熱性が高い点でエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては硬化して接着作用を呈するものであればよい。二官能基以上で、平均分子量が5000以下、好ましくは平均分子量3000以下のエポキシ樹脂を用いる。分子量が大きすぎると、液状でなくなり、取り扱いも難しくなるからである。二官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型樹脂などが例示される。ビスフェノールA型またはビスフェノールF型液状樹脂は、油化シェルエポキシ株式会社から、エピコート807、エピコート827、エピコート828という商品名で市販されている。また、ダウケミカル日本株式会社からは、D.E.R.330、D.E.R.331、D.E.R.361という商品名で市販されている。さらに、東都化成株式会社から、YD8125、YDF8170という商品名で市販されている。
エポキシ樹脂としては、高Tg(ガラス転移温度)化を目的に多官能エポキシ樹脂を加えてもよく、多官能エポキシ樹脂としてはフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂などが例示される。フェノールノボラック型エポキシ樹脂は、日本化薬株式会社から、EPPN−201という商品名で市販されている。クレゾールノボラック型エポキシ樹脂は、住友化学工業株式会社から、ESCN−190、ESCN−195という商品名で市販されている。また、日本化薬株式会社から、EOCN1012、EOCN1025、EOCN1027という商品名で市販されている。さらに、東都化成株式会社から、YDCN701、YDCN702、YDCN703、YDCN704という商品名で市販されている。
エポキシ樹脂の硬化剤は、エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられているものを使用でき、アミン、ポリアミド、酸無水物、ポリスルフィド、三弗化硼素及びフェノール性水酸基を1分子中に2個以上有する化合物であるビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどが挙げられる。特に吸湿時の耐電食性に優れるためフェノール樹脂であるフェノールノボラック樹脂やビスフェノールノボラック樹脂等を用いるのが好ましい。フェノールノボラック樹脂は、大日本インキ化学工業株式会社からバーカムTD−2090、バーカムTD−2131、ビスフェノールノボラック樹脂は大日本インキ化学工業株式会社からフェノライトLF2882、フェノライトLF2822という商品名で市販されている。硬化剤の使用量としては、エポキシ樹脂の化学当量の0.8〜1.2倍の官能基を含む量が好ましい。
Bステージ状態で連続相を形成する樹脂(B)としては、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステル及びアクリロニトリルなどの共重合体であるアクリルゴム、スチレンやアクリロニトリルなどを含むブタジエンゴム、シリコーン樹脂、シリコーン変性ポリアミドイミドなどの変性樹脂が挙げられる。また、重量平均分子量が10万以上の高分子量成分を使用した場合、フィルムとしての取り扱い性が良好である。さらにまた、グリシジルメタクリレート又はグリシジルアクリレート2〜6重量%を含むTgが−10℃以上でかつ重量平均分子量が80万以上であるアクリル系共重合体を用いた場合、接着性、耐熱性が高い点で特に好ましい。グリシジルメタクリレート又はグリシジルアクリレート2〜6重量%を含むTgが−10℃以上でかつ重量平均分子量が80万以上であるアクリル系共重合体は、HTR−860P−3(帝国化学産業株式会社製商品名)を使用することができる。官能基モノマーとして用いるグリシジルメタクリレートやグリシジルアクリレートの量は、2〜6重量%の共重合体比であることが好ましい。より高い接着力が得られるため、2重量%以上が好ましく、ゴムのゲル化が低減されるため、6重量%以下が好ましい。残部は炭素数1〜8のアルキル基をもつ、メチルアクリレート、メチルメタクリレートなどのアルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、およびこれらとスチレンやアクリロニトリルなどとの混合物を用いることができる。
硬化促進剤はBステージ状態で島状に不連続な分散相の樹脂(A)と相溶性を有し、海状の連続相である樹脂(B)とは相分離する物質であることが望ましい。即ち、島状の分散相の樹脂(A)と同様の極性、分子構造を有し、海状の連続相である樹脂(B)とは大きく異なる極性、分子構造を有するものであることが好ましい。
例えば島状に不連続に分散する樹脂相がエポキシ樹脂及び硬化剤を主成分とする相であり、もう一方の連続相がアクリルゴムの場合には、硬化促進剤はエポキシ化合物とイミダゾール化合物との付加化合物、エポキシ化合物とジアルキルアミン類との付加化合物などが好ましい。さらにエポキシ化合物が長鎖であるものが特に好ましい。特に室温での活性を低減できる点でアダクト型の構造をとっているものが好ましい。アダクト型の構造とは、触媒活性を有する化合物と種々の化合物を反応させて得られる付加化合物のことであり、触媒活性を有する化合物がイミダゾール化合物や1,2,3級アミノ基を有する化合物などのアミン類であればアミンアダクト型という。更に、原料の種類によりアミン−エポキシ付加化合物、アミン−尿素付加化合物、アミン−ウレタン付加化合物等がある。硬化時に発泡せず、かつ低弾性を有し、耐熱性、耐湿性が良好な接着剤硬化物を得られる点でアミン−エポキシ付加化合物が特に好ましい。
アミン−エポキシアダクト系潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノール、またはグリセリンやポリエチレングリコール等の多価アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエーテル、あるいは、p−ヒドロキシ安息香酸、β―ヒドロキシナフトエ酸等のヒドロキシカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルエーテルエステル、あるいはフタル酸、テレフタル酸等のポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られるポリグリシジルエステル、あるいは、4,4’−ジアミノジフェニルメタンやm−アミノフェノールなどとエピクロルヒドリンを反応させて得られるグリシジルアミン化合物、さらにはエポキシ化フェノールノボラック樹脂、エポキシ化クレゾールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン等の多官能性エポキシ化合物や、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等の単官能性エポキシ化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
アミン−エポキシアダクト系の潜在性硬化促進剤の製造原料として用いられるアミン類は、エポキシ基と付加反応しうる活性水素を分子内に少なくとも一つ有し、かつ1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基の中から選ばれた置換基を分子内に少なくとも一つ有するものであればよい。このようなアミン類としては、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、n−プロピルアミン、2−ヒドロキシエチルアミノプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタン等の脂肪族アミン類、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2−メチルアニリンなどの芳香族アミン類、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾリン、2,4−ジメチルイミダゾリン、ピペリジン、ピペラジン等の環式アミン化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これら化合物の中でも特に3級アミノ基を有する化合物は潜在性が極めて高い硬化促進剤を与える点で好ましい。そのような化合物を以下に示すが、これらに限定されるものではない。例えば、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジ−n−プロピルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノエチルアミン、ジエチルアミノエチルアミン、N−メチルピペラジン等のような脂肪族アミン化合物や、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール化合物のような、分子内に3級アミノ基を有する1級もしくは2級アミン類などがある。
本実施の形態に用いられるアダクト型硬化促進剤の代表的な例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。アミン−エポキシアダクト系としては、味の素株式会社からアミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアMY−D、アミキュアMY−H等、エーシー・アール株式会社からはハードナーX−3615S、ハードナーX−3293S等、旭化成株式会社からはノバキュアHX−3748、ノバキュアHX−3088等、パシフィック アンカー ケミカルからはAncamine2014AS、Ancamine2014FG等がそれぞれ上記の商品名で市販されている。また、アミン−尿素型アダクト系としては富士化成株式会社からフジキュアFXE−1000、フジキュアFXR−1030という商品名で市販されている。
潜在性硬化促進剤の配合量は好ましくは、分散相の樹脂(A)及び硬化剤の合計100重量部に対して0.1〜20重量部、より好ましくは1.0〜15重量部である。0.1重量部未満であると硬化速度が遅くなる傾向にあり、また20重量部を超えると可使期間が短くなる傾向がある。
その他に硬化促進剤として各種イミダゾール類などを保存安定性を損なわない程度に併用しても良い。イミダゾールとしては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾリウムトリメリテート等が挙げられる。イミダゾール類は、四国化成工業株式会社から、2E4MZ、2PZ−CN、2PZ−CSNという商品名で市販されている。
このほかに、接着剤層には、流動性の調節、耐湿性の向上を目的に、フィラーを添加しても良い。このようなフィラーとしては、シリカ、三酸化二アンチモン等がある。
また、本実施の形態の接着剤層には、異種材料間の界面結合をよくするために、カップリング剤を配合することもできる。カップリング剤としてはシランカップリング剤が好ましい。シランカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。前記したシランカップリング剤は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがNUC A−187、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランがNUC A−189、γ−アミノプロピルトリエトキシシランがNUC A−1100、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシランがNUC A−1160、N−β−アミノエチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランがNUC A−1120という商品名で、いずれも日本ユニカ−株式会社から市販されている。カップリング剤の配合量は、添加による効果や耐熱性およびコストから、分散相と連続相のそれぞれを形成する組成物の合計100重量部に対して、0.1〜10重量部を添加するのが好ましい。
さらに、本実施の形態の接着剤層の接着剤には、イオン性不純物を付着させて、吸湿時の絶縁信頼性をよくするために、イオン補足剤を配合することもできる。
なお、接着剤層を形成するためには、上述した接着剤の各成分を溶剤に溶解ないし分散させてワニスとし、キャリアフィルム上に塗布、加熱し溶剤を除去することにより得られる。
ワニスを作る際に使用する溶剤は、比較的低沸点の、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、2−エトキシエタノール、トルエン、ブチルセロソルブ、メタノール、エタノール、2−メトキシエタノールなどを用いるのが好ましい。また、塗膜性を向上するなどの目的で、高沸点溶剤を加えても良い。高沸点溶剤としては、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、メチルピロリドン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
本実施の形態の接着シートの製造方法としては、例えば、まず接着剤層および放射線重合性を有する基材をそれぞれフィルム状の支持部材上に塗布、乾燥後、接着剤層および放射線重合性を有する基材を室温、場合によっては加熱、加圧しながら張り合わせる方法がある。また、接着材層をあるいは基材を形成後、接着剤層あるいは基材を支持部材として放射線重合性を有する基材をあるいは接着剤層を形成してもよい。支持部材は貼り合わせた後、はがしてもよいが、保護材として、使用前まで貼り付けておくこともできる。また、放射線重合性を有する基材の接着剤層形成面と反対面を接着剤層形成前あるいは後に放射線の照射により重合させておくことが、作業性の観点から好ましい。なお、接着シートの形状は、特に限定されない。テープ状、ラベル状などいずれの形状であってもよい。
本実施の形態の接着シートを使用した半導体装置の製造方法について説明する。即ち、まず、接着シートのダイ接着用接着剤層上にダイシング加工すべき半導体ウエハを室温または加熱しながら圧着する。この状態でウエハをダイシングし、洗浄、乾燥を加える。これら一連のダイシング工程の間、接着剤層によりウェハチップは接着シートの基材に充分に接着保持されているので、ウェハチップが脱落することはない。次に、紫外線(UV)あるいは電子線(EB)などの放射線を接着シートの基材側に照射し、放射線重合性を有する基材を重合硬化させる。この結果、放射線重合性を有する基材と接着剤層との間の粘着力は低減する。接着シートの引き延ばし(エキスパンディングし)を行い、各チップ間距離を広げる。この後、チップのピックアップを行う。チップに対する接着剤層の接着性はそのままに、放射線照射により基材と接着剤層との粘着力は十分低減しているので、各チップは接着剤層を裏面に付けたまま、基材から剥離される。
接着剤層と共にピックアップしたチップは、リードフレームに室温または加熱しながら圧着する。圧着後、加熱し、この加熱により接着剤層は耐リフロークラック性に耐える接着力を発現し、チップとリードフレームとの接着が完了する。
この後、各チップは、リードフレームとの電気的接続、封止工程を経て、パッケージ化され、半田リフロー工程を経て電子部品の基板へ実装されるが、この際、接着剤層が、チップと電子部品の基板との間の熱膨張係数の差に起因する熱応力のを緩和するため、リフロークラックの発生を抑制できる。
上述するように、本発明の接着シートは、基材と接着剤層の二層構造から構成され、その構成が簡易なためフィルムの張り合わせは1回でよく、製造工程が簡易である。また、本発明の接着シートは、基材が放射性重合性を有するため放射線の照射により剥離が可能となるが、放射性重合性を基材のみに付与し、半導体チップ裏面に残る接着剤層には放射性重合剤を加えないため、接着剤層を純粋な接着機能を目的とする組成で構成することができる。従って、上述するような組成の接着剤層とすることにより、高温においても十分な接着力と応力緩和効果を合わせ持つものにできる。従って、本発明の接着シートを使用した半導体装置の製造方法は、製造工程が簡易であるとともに、歩留まりが高く、信頼性の高い半導体装置を提供できる。
<接着剤層の作製>
(実施例1)
Bステージ状態で分散相を形成する樹脂(A)としては、エポキシ樹脂を用いた。具体的には、エポキシ樹脂として、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量200重量部、油化シェルエポキシ株式会社製のエピコート828を使用)45重量部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量220、住友化学工業株式会社製のESCN001を使用)15重量部、エポキシ樹脂の硬化剤としてフェノールノボラック樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製のプライオーフェンLF2882を使用)40重量部、エポキシ樹脂と相溶性がありかつ重量平均分子量が3万以上の高分子量樹脂としてフェノキシ樹脂(分子量5万、東都化成株式会社製のフェノトートYP−50を使用)15重量部を用意した。また、Bステージ状態で連続相を形成する樹脂(B)としては、エポキシ基含有アクリルゴムを用いた。具体的には、エポキシ基含有アクリルゴム(分子量100万、帝国化学産業株式会社製のHTR−860P−3を使用)150重量部用意した。また、硬化促進剤として硬化促進剤1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール(キュアゾール2PZ−CN)0.5重量部、シランカップリング剤としてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製のNUC A−187を使用)0.7重量部からなる組成物に、メチルエチルケトンを加えて撹拌混合し、真空脱気し、ワニスを作製した。このワニスを支持部材上に塗布し、140℃で5分間加熱乾燥して、Bステージ状態の塗膜を形成し、接着剤層を作製した。
なおこの状態での接着剤の硬化度は、DSC(デュポン社製912型DSC)を用いて測定(昇温速度、10℃/分)した結果、全硬化発熱量の15%の発熱を終えた状態であった。また、接着剤硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置(レオロジ製、DVE−V4)を用いて測定(サンプルサイズ 長さ20mm、幅4mm、膜厚80μm、昇温速度5℃/分、引張りモード 自動静荷重)した結果、25℃で360MPa、260℃で4MPaであった。
(実施例2)
実施例1で用いたフェノキシ樹脂を、カルボキシル基含有アクリロニトリルブタジエンゴム(分子量40万、日本合成ゴム株式会社製のPNR−1を使用)に変更したほか、実施例1と同様な条件で、接着剤層を作製した。なお、この状態での接着剤の硬化度は、DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量の20%の発熱を終えた状態であった。接着剤硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置を用いて測定した結果、25℃で300MPa、260℃で3MPaであった。
(実施例3)
実施例1の接着剤ワニスの接着剤固形分100体積部に対してシリカを10体積部添加し、ビーズミルで60分間混練したワニスを用いて、あとは実施例1と同様の条件で、接着剤層を作製した。DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量の15%の発熱を終えた状態であった。接着剤硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置を用いて測定した結果、25℃で1,500MPa、260℃で10MPaであった。
(実施例4)
実施例3で用いたフェノキシ樹脂を用いないこと以外実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量の15%の発熱を終えた状態であった。接着剤硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置を用いて測定した結果、25℃で350MPa、260℃で4MPaであった。
(実施例5)
実施例1のエポキシ基含有アクリルゴムの量を150重量部から50重量部にしたこと以外は実施例1と同様の条件を用いて接着剤層を作製した。DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量の20%の発熱を終えた状態であった。接着剤硬化物の貯蔵弾性率を、動的粘弾性測定装置を用いて測定した結果、25℃で3,000MPa、260℃で5MPaであった。
(実施例6)
実施例1のエポキシ基含有アクリルゴムの量を150重量部から400重量部にしたこと以外は実施例1と同様の条件を用いて接着剤層を作製した。DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量の20%の発熱を終えた状態であった。接着剤硬化物の貯蔵弾性率を動的粘弾性測定装置を用いて測定した結果、25℃で200MPa、260℃で1MPaであった。
(実施例7)
実施例3のエポキシ基含有アクリルゴムの150重量部をフェノキシ樹脂に変更(フェノキシ樹脂160重量部)した他、実施例1と同様の条件を用いて接着剤層を作製した。DSCを用いて測定した結果、全硬化発熱量は20%であった。貯蔵弾性率は、25℃で3,400MPa、260℃で3MPaであった。
(実施例8)
実施例1のエポキシ基含有アクリルゴムをアクリロニトリルブタジエンゴムに変更した他は、実施例1と同様にして接着フィルムを作製した。この接着フィルムの全硬化発熱量は、20%あった。また、貯蔵弾性率は、25℃で500MPa、260℃で2MPaであった。
<接着シートの作製>
メチルメタクリレート/n−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メタクリル酸の共重合割合が重量基準で55/8/15/22であるアクリル酸エステル共重合体(酸価143.3、ガラス転移点66.3℃、重量平均分子量8万)100重量部、トリメチロールプロパントリアクリレート/ポリエチレングリコールジメタクリレートの重量比20/10/の混合物60重量部、ベンゾフェノン5重量部からなる組成物を支持材上に塗布し、100℃のオーブンで3分間乾燥し、放射線重合性を有する基材を作製した。
<半導体パッケージの作製>
この基材と実施例1〜8で得た接着フィルムを貼り合わせ接着シートを作製した。得られた接着シートにシリコンウエハを100℃1Kgで熱圧着した後、接着材層までを10mm×10mmにダイシングし、その後、基材に高圧水銀灯を用いて紫外線(UV)を500mJ/cm照射した。UV照射後カットされたシリコンチップは、接着材層と共に容易に、基材から容易に剥離できた。
裏面に接着剤層が付着した半導体チップをポリイミドフィルムを主材とするフレキシブルプリント配線基板上にダイボンディングし、半導体装置を作製した。
この半導体装置の耐リフロークラック性と温度サイクル試験を適用した。耐リフロークラック性の評価は、サンプル表面の最高温度が240℃でこの温度を20秒間保持するように温度設定したIR(赤外線)リフロー炉にサンプルを通し、室温で放置することにより冷却する処理を2回繰り返したサンプル中のクラックの観察で行った。クラックの発生していないものを良好とし、発生していたものを不良とした。温度サイクル試験は、サンプルを−55℃雰囲気に30分間放置し、その後125℃の雰囲気に30分間放置する工程を1サイクルとして、破壊が起きるまでのサイクル数を示した。また、耐湿性評価は、半導体装置サンプルをプレッシャークッカーテスター中で96時間処理(PCT処理)後接着フィルムの剥離及び変色を観察することにより行った。接着フィルムの剥離及び変色の認められなかったものを良好とし、剥離のあったもの又は変色のあったものを不良とした。
<結果>
各実施例で使用した、連続相の樹脂(B)の材料を図1の表に示した。また、各接着層の耐熱性、耐湿性、弾性率等の特性を図2の表に示した。
実施例1、2及び3は、いずれも、エポキシ樹脂及びその硬化剤、エポキシ樹脂と相溶性のある高分子量樹脂、エポキシ基含有アクリル系共重合体、硬化促進剤をともに含む接着剤であり、実施例4は、エポキシ樹脂及びその硬化剤、エポキシ基含有アクリル系共重合体、硬化促進剤をともに含む接着剤であり、25℃で300〜1500、及び260℃で3〜10と比較的低い貯蔵弾性率を示した。また、これらは、耐リフロークラック性、温度サイクル試験、耐PCT性がいずれも良好であった。
一方、実施例5は、Bステージで連続相となるエポキシ基含有アクリル系共重合体の量が少ないため貯蔵弾性率が高く、十分応力を緩和できないため、実施例1〜4に較べると、耐リフロークラック性、温度サイクルテストの結果は劣った。また、実施例6は、エポキシ基含有アクリル系共重合体の量が多すぎるため貯蔵弾性率が低く良好であるが、実施例1〜4に較べると接着フィルムの取扱性が劣った。また、実施例7は、エポキシ基含有アクリル系共重合体を含まない組成であるため貯蔵弾性率が高く実施例5と同様、応力を緩和できずに耐リフロークラック性、温度サイクルテストでの結果は実施例1〜4に較べると劣った。実施例8は、エポキシ基含有アクリル系共重合体を含まず、それ以外のゴム成分を含み25℃での貯蔵弾性率が低くリフロークラック性は良好であるが、耐電食性に劣る、即ち基板中への銅のマイグレーションが生じる虞れがあった。
接着剤層の取り扱い性、リフロークラック耐性、および室温での十分な堅さ等の条件を考慮すると、接着剤層の貯蔵弾性率は、25℃で10〜2000MPa、260℃で3〜50MPaあると、より好ましい。
以上に説明するように、本発明の接着シートは、放射性重合性基材上にダイボンディング剤として使用できる接着剤層を有しているので、ウェハ固定機能とダイ接着機能とを同時に兼ね備えた接着シートを提供できる。よって、この接着シートを用いた本発明の半導体装置の製造方法は、ダイボンディング接着剤を接着する工程を省略できる。
また、本発明の接着シートは、その接着剤層が耐熱性、耐湿性、および高温において十分低い弾性率を示すので、ダイボンディング後のチップと配線接続基板との間の熱応力を緩和し、高温工程での半導体装置のクラックの発生を抑制する。よって、この接着シートを使用した本発明の半導体装置の製造方法で作製された半導体装置は、クラック発生のない高温安定性の高いものを提供できる。

Claims (14)

  1. 放射線重合性を持つ基材と、
    前記基材上に形成される接着剤層とを有し、
    前記接着剤層は、Bステージ状態で、互いに相分離する、分散相を形成する樹脂(A)と連続相を形成する樹脂(B)とを含み、前記樹脂(A)は、未硬化状態での重量平均分子量が1万以下で、前記樹脂(B)は、未硬化状態での重量平均分子量が10万以上であることを特徴とする接着シート。
  2. 前記接着剤層は、25℃での貯蔵弾性率が10〜2000MPa、260℃での貯蔵弾性率が3〜50MPaであることを特徴とする請求項1に記載の接着シート。
  3. Bステージ状態での前記分散相と前記連続相との体積比率が、1:0.3〜1:5であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着シート。
  4. 前記樹脂(A)がエポキシ樹脂であり、
    前記樹脂(B)がアクリル系共重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着シート。
  5. 前記分散相は、さらに硬化剤を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着シート。
  6. 前記エポキシ樹脂は、二官能基以上で、平均分子量が5000以下である請求項4に記載の接着シート。
  7. 前記アクリル系共重合体は、グリシジルメタクリレート又はグリシジルアクリレートを2〜6重量%を含み、Tgが−10℃以上でかつ重量平均分子量が80万以上である請求項4に記載の接着シート。
  8. 前記エポキシ樹脂と前記アクリル系重合体が、重量部比で3:5〜3:10である請求項4に記載の接着シート。
  9. 前記基材は、
    樹脂フィルム中に放射線重合性官能基を有する成分を含有させたもの、あるいは放射線重合性官能基を有する樹脂をフィルム状に形成したものであることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の接着シート。
  10. 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の接着シートを、接着剤層を接着面として半導体ウエハに貼り付ける工程と、
    前記半導体ウエハをダイシングする工程と、
    前記接着シートの基材に、該基材側より放射線を照射する工程と、
    前記基材から接着剤層を接着させたままの半導体チップを剥離する工程と、
    剥離した前記半導体チップを配線接続基板上に前記接着剤層を介して接着する工程とを有する半導体装置の製造方法。
  11. さらに、前記半導体チップと配線接続基板とを電気的に接続する工程を有する請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
  12. さらに、前記半導体チップを樹脂で封止する工程を有する請求項11に記載の半導体装置の製造方法。
  13. さらに、該半導体チップを電子部品の基板に半導体リフロー法で実装する工程を有する請求項11又は12に記載の半導体装置の製造方法。
  14. 請求項10〜請求項13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置。
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