JP2013014126A - 積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に、被覆層、無機薄膜層、保護層が順に設けられてなり、被覆層は、オキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含み、膜厚(D)が5〜150nmであり、全反射赤外吸収スペクトルにおいて2つの所定の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)とピークの強度(P2)と前記膜厚(D)とが特定の関係を満たし、保護層は、(メタ)アクリル酸を10質量%以上含む重合体(a)と、エーテル結合を持つポリウレタン・ウレア樹脂(b)と、特定の架橋剤(c)とを含有する組成物から形成されている。
【選択図】なし
Description
(1)プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に被覆層が設けられ、該被覆層上に無機薄膜層が積層され、さらに該無機薄膜層上に保護層が設けられてなり、前記被覆層はオキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含み、該被覆層の膜厚(D)は5〜150nmであり、かつ該被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおいて1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)と1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P2)との比(P1/P2)と前記被覆層の膜厚(D)とが下記式
0.03≦(P1/P2)/D≦0.15
に示す関係を満たし、前記保護層は、(メタ)アクリル酸の単独重合体または(メタ)アクリル酸を10質量%以上含む(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体のいずれか一方の重合体(a)と、エーテル結合を持つポリウレタン・ウレア樹脂(b)と、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(c)とを含有する保護層用樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルム。
(2)前記被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを必須成分として含む被覆層用樹脂組成物から形成される前記(1)に記載の積層フィルム。
(3)前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基量が5.1〜9.0mmol/gである前記(2)に記載の積層フィルム。
(4)前記被覆層用樹脂組成物がウレタン樹脂を含む前記(2)または(3)に記載の積層フィルム。
(5)前記ウレタン樹脂がカルボキシル基を有しており、その酸価が10〜40mgKOH/gである前記(4)に記載の積層フィルム。
(6)前記被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂がカルボキシル基を有しており、その酸価が40mgKOH/g以下である前記(2)〜(5)のいずれかに記載の積層フィルム。
(7)前記オキサゾリン基を有する樹脂、前記アクリル樹脂および前記ウレタン樹脂の合計100質量%中、オキサゾリン基を有する樹脂が20〜70質量%、アクリル樹脂が10〜60質量%、ウレタン樹脂が10〜60質量%である前記(4)〜(6)のいずれかに記載の積層フィルム。
(8)前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である前記(1)〜(7)に記載の積層フィルム。
このような本発明にかかるガスバリア性積層フィルムは、各種食品や医薬品、工業製品の包装用途、高温高湿の環境下に置かれたり長期の安定したガスバリア性や耐久性が求められる太陽電池、電子ペーパー、有機EL素子、半導体素子等の工業用途に有用である。
本発明で用いるプラスチック基材フィルム(以下「基材フィルム」と称する)としては、例えば、プラスチックを溶融押出しし、必要に応じ、長手方向及び/又は幅方向に延伸、冷却、熱固定を施したフィルムを用いることができる。プラスチックとしては、ナイロン4・6、ナイロン6、ナイロン6・6、ナイロン12等に代表されるポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート等に代表されるポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等に代表されるポリオレフィン;のほか、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリスチレン、ポリ乳酸等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、寸歩安定性、透明性の点でポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンテレフタレートに他の成分を共重合した共重合体が好ましい。
基材フィルムの透明度は、特に限定されるものではないが、透明性が求められる包装材料として使用する場合には、50%以上の光線透過率をもつものが望ましい。
また基材フィルムには、本発明の目的を損なわない限りにおいて、コロナ放電処理、グロー放電、火炎処理、表面粗面化処理等の表面処理が施されていてもよく、また、公知のアンカーコート処理、印刷、装飾等が施されてもよい。
本発明において、前記被覆層は、オキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含む。そのためには、被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを必須成分として含む被覆層用樹脂組成物から形成されることが好ましい。そして、この被覆層の膜厚(D)は特定範囲であり、かつ被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおける所定の2つのピークのピーク強度比(P1/P2)と前記膜厚(D)とが特定の関係を満たす。これにより、レトルト処理を施した際にも優れたガスバリア性およびラミネート強度を保持させることができる。
オキサゾリン基は金属酸化物といった無機薄膜との親和性が高く、また無機薄膜層形成時に発生する無機酸化物の酸素欠損部分や金属水酸化物と反応できるため、無機薄膜層と強固な密着性を示す。また被覆層中に存在する未反応のオキサゾリン基は、基材フィルムおよび被覆層の加水分解により発生したカルボン酸末端と反応し、架橋を形成することができる。このような作用により、本発明では、レトルト処理時であっても、無機薄膜層−被覆層−基材フィルムの各層間の密着性が強固になり、結果として無機薄膜のひび割れや劣化を防止でき、ガスバリア性およびラミネート強度を維持できる。
0.03≦(P1/P2)/D≦0.15
に示す関係を満たしている必要がある。ここで、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークはオキサゾリン基に由来し、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークはポリエステルに由来するものである。上記式中、(P1/P2)/Dで示される値は、好ましくは0.035以上、さらに好ましくは0.04以上であり、好ましくは0.13以下、さらに好ましくは0.10以下である。(P1/P2)/Dで示される値が0.03未満であると、オキサゾリン基量が少ないため、レトルト処理後において十分なガスバリア性およびラミネート強度が得られない場合がある。一方、(P1/P2)/Dで示される値が0.15を超えると、オキサゾリン基量が多すぎることにより凝集力が低下したり、オキサゾリン基量に対して膜厚が薄くなりすぎ、レトルト処理後に十分な層間密着性が得られない。なお、被覆層の全反射赤外吸収スペクトル測定は、例えば後述する実施例に記載の方法で行うことができる。
(オキサゾリン基を有する樹脂)
被覆層用樹脂組成物は、オキサゾリン基を有する樹脂を含有することが好ましい。オキサゾリン基を有する樹脂としては、例えば、オキサゾリン基を有する重合性不飽和単量体を、必要に応じその他の重合性不飽和単量体とともに従来公知の方法(例えば溶液重合、乳化重合等)で共重合させることにより得られるオキサゾリン基を有する重合体等を挙げることができる。
被覆層用樹脂組成物は、アクリル樹脂を含有する。アクリル樹脂としては、アルキルアクリレート及び/又はアルキルメタクリレート(以下、纏めて「アルキル(メタ)アクリレート」と称することがある)を主要な成分とする水性アクリル樹脂が用いられる。水性アクリル樹脂としては、具体的には、アルキル(メタ)アクリレートを通常40〜95モル%(好ましくは45〜90モル%、より好ましくは50〜85モル%)の含有割合で含み、共重合可能でかつ特定の官能基を有するビニル単量体を通常5〜60モル%(好ましくは10〜55モル%、より好ましくは15〜50モル%)の含有割合で含む水溶性樹脂または水分散性樹脂が好ましく挙げられる。
前記ビニル単量体における特定の官能基としては、例えば、カルボキシル基、酸無水物基、スルホン酸基またはその塩、アミド基またはアルキロール化されたアミド基、アミノ基(置換アミノ基を含む)またはアルキロール化されたアミノ基またはそれらの塩、水酸基、エポキシ基などが挙げられ、特に、カルボキシル基、酸無水物基、エポキシ基などが好ましい。これらの官能基は、1種のみでもよいし2種以上であってもよい。
スルホン酸基またはその塩を有する前記ビニル単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、これらスルホン酸の金属塩(ナトリウム塩等)やアンモニウム塩等が挙げられる。
エポキシ基を有する前記ビニル単量体としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。
本発明においては、被覆層用樹脂組成物はウレタン樹脂を含有することが好ましい。
ウレタン樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシ化合物とポリイソシアネート化合物とを常法に従って反応させることにより製造される水溶性または水分散性樹脂等の水性樹脂を用いることができる。特に、カルボキシル基またはその塩を含有する水性ウレタン樹脂は、水媒体との親和性が高い。なお、ウレタン樹脂の構成成分は、核磁気共鳴分析などにより特定することが可能である。
本発明の積層フィルムは、前記被覆層の上に無機薄膜層が積層されている。無機薄膜層は金属または無機酸化物からなる薄膜である。無機薄膜層を形成する材料は、薄膜にできるものなら特に制限はないが、ガスバリア性の観点から、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合物(複合酸化物)等の無機酸化物が好ましく挙げられる。特に、薄膜層の柔軟性と緻密性を両立できる点からは、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの複合酸化物が好ましい。この複合酸化物において、酸化ケイ素と酸化アルミニウムとの混合比は、金属分の質量比でAlが20〜70%の範囲であることが好ましい。Al濃度が20%未満であると、バリア性が低くなる場合があり、一方、70%を超えると、無機薄膜層が硬くなる傾向があり、印刷やラミネートといった二次加工の際に膜が破壊されてバリア性が低下する虞がある。なお、ここでいう酸化ケイ素とはSiOやSiO2等の各種珪素酸化物又はそれらの混合物であり、酸化アルミニウムとは、AlOやAl2O3等の各種アルミニウム酸化物又はそれらの混合物である。
本発明の積層フィルムは、前記無機薄膜層の上に保護層が設けられている。この保護層は、(メタ)アクリル酸の単独重合体または(メタ)アクリル酸を10質量%以上含む(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体のいずれか一方の重合体(a)と、エーテル結合を持つポリウレタン・ウレア樹脂(b)と、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(c)とを含有する保護層用樹脂組成物から形成されている。
前記(メタ)アクリル酸系樹脂(a)の重量平均分子量は、1万〜6万の範囲であることが好ましい。
前記エーテル系ポリオールとともに他のポリオールをも併用する場合、両者の使用比率は適宜設定すればよい。(メタ)アクリル酸系樹脂(a)との混和性を重視する場合はエーテル系ポリオールの比率を高くし、耐溶剤性を重視する場合には他のポリオールの比率を高くすることで、保護層の性能を自由にコントロールすることができる。具体的には、例えば、エーテル結合を有するポリオールは、全ポリオールの20〜100質量%とすることが好ましい。前記エーテル系ポリオールと前記他のポリオールは、ポリウレタン樹脂を合成する際に混合して用いてもよいし、それぞれのポリオールを用いてそれぞれのポリウレタン・ウレア樹脂を合成し、得られた各ポリウレタン・ウレア樹脂を混合してもよい。
前記架橋剤(c)として用いることのできるポリイソシアネートとしては、特に制限はなく、従来公知のものを使用することができるが、特にイソシアネート基を2個以上持つポリイソシアネートもしくはブロックポリイソシアネートが好ましく挙げられる。
前記エポキシ樹脂またはポリイソシアネートの含有量は、特に制限されないが、通常、皮膜形成成分((メタ)アクリル酸系樹脂(a)、ポリウレタン・ウレア樹脂(b)およ架橋剤(c))の合計100質量%のうち、それぞれ、5〜20質量%程度が好ましく、8〜15質量%がより好ましい。
また保護層を形成するための塗工液には、必要に応じて、ブロッキング防止あるいはスリッピング性向上のために、二酸化珪素、脂肪酸アミド、ポリエチレンワックスなどの添加剤を適宜加えることができる。
保護層用樹脂組成物を塗布する際の塗布量は、特に限定されるものではないが、乾燥状態で0.01〜5g/m2となる範囲が好ましく、実用性の観点からは0.05〜1g/m2となる範囲がより好ましい。0.01g/m2未満であると、十分な密着性や被膜形成性が得られにくくなり、5g/m2を超えるとコスト的に不利になる傾向がある。
本発明の積層フィルムには、上記基材フィルム、被覆層、無機薄膜層および保護層のほかに、必要に応じて、公知のガスバリア性積層フィルムが備えている種々の層を設けることができる。
例えば、無機薄薄膜層を備えたガスバリア性積層フィルムを包装材材料として用いる場合には、シーラントと呼ばれるヒートシール性樹脂層を形成することが好ましい。ヒートシール性樹脂層は通常、保護層上に設けられるが、基材フィルムの外側(被覆層形成面の反対側の面)に設けることもある。ヒートシール性樹脂層の形成は、通常押出しラミネート法あるいはドライラミネート法によりなされる。ヒートシール性樹脂層を形成する熱可塑性重合体としては、シーラント接着性が十分に発現できるものであればよく、HDPE、LDPE、LLDPEなどのポリエチレン樹脂類、ポリプロピレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、アイオノマー樹脂等を使用できる。
(1)評価用ラミネート積層体の作製
実施例および比較例で得られた各積層フィルムの保護層の上に、グラビア印刷機によりインキ(東洋インキ社製「NewLPスーパー白」)を用いて印刷層を形成した。得られた印刷層の上に、ウレタン系2液硬化型接着剤(三井化学社製「タケラックA525S」と「タケネートA50」を13.5:1(質量比)の割合で配合)を用いてドライラミネート法により、厚さ15μmのナイロンフィルム(東洋紡績株式会社製「N1100」)を貼り合わせ、次いで該ナイロンフィルムの上に、上記と同様のウレタン系2液硬化型接着剤を用いてドライラミネート法により、熱接着性樹脂層として厚さ70μmの無延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡績株式会社製「P1147」)を貼り合わせ、40℃にて4日間エージングを施すことにより、評価用のラミネートガスバリア性積層体(以下「ラミネート積層体」と称することもある)を得た。なお、ウレタン系2液硬化型接着剤で形成される接着剤層の乾燥後の厚みはいずれも約4μmであった。
上記(1)で作製したラミネート積層体について、無延伸ポリプロピレンフィルムの上から目視にて印刷層のインキの網点の広がりの程度を観察した。一方、対照として、保護層を設けないこと以外は各実施例、比較例と同様にして得た積層フィルムの無機薄膜層上に上記(1)と同様にして印刷層を形成し、ナイロンフィルムおよび無延伸ポリプロピレンフィルムを貼り合わせてラミネート積層体を作製し、該ラミネート積層体について上記と同様に印刷層のインキの網点の広がりの程度を観察した。そして、両者の網点の広がり(網点濃度)を比較し、下記の基準で判定した。このインキ転移性の評価は、保護層の耐溶剤性が低いと、付与されたインキは保護層に吸収されやすくなる結果、保護層面での横方向(平面方向)への広がりが少なくなり(網点濃度が低くなり)、一方、保護層の耐溶剤性が高いと、付与されたインキが保護層に吸収されにくくなる結果、保護層面での横方向(平面方向)への広がりが大きくなる(網点濃度が高くなる)ことに基づくものであり、グラビアインキ中の溶剤に対する保護層の耐久性を示す尺度である。
◎:保護層なしの場合(対照)と同等の大きさの網点の広がりである。
○:保護層なしの場合(対照)よりは劣るが網点の広がりは大きい。
△:保護層なしの場合(対照)に比べ明らかに網点の広がりが小さく、見かけの網点濃度低下が大きい。
上記(1)で作製したラミネート積層体について、JIS−K7126−2の電解センサー法(付属書A)に準じて、酸素透過度測定装置(MOCON社製「OX−TRAN 2/20」)を用い、温度23℃、湿度65%RHの雰囲気下で、常態での酸素透過度を測定した。なお、酸素透過度の測定は、ラミネート積層体の基材フィルム側から熱接着性樹脂層側に酸素が透過する方向で行った。
他方、上記(1)で作製したラミネート積層体に対して、温度131℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、40℃で24時間乾燥し、得られたレトルト処理後のラミネート積層体について、上記と同様にして酸素透過度(レトルト処理後)を測定した。
上記(1)で作製したラミネート積層体に対して、温度131℃の加圧熱水中に保持するレトルト処理を30分間施した後、直ちに、得られたレトルト処理後のラミネート積層体を幅15mm、長さ200mmに切り出して試験片とし、温度23℃、相対湿度65%の条件下で、テンシロン万能材料試験機(東洋ボールドウイン社製「テンシロンUMT−II−500型」)を用いてラミネート強度を測定した。なお、ラミネート強度の測定は、引張速度を200mm/分とし、ガスバリア性積層フィルム層(実施例および比較例で得られた各積層フィルムの保護層)と、印刷層との層間に水をつけて剥離角度90度で剥離させたときの強度を測定した。
各実施例および比較例において、基材フィルム上に被覆層を形成した段階で得られた各フィルムの被覆層の面について、全反射吸収赤外分光法で全反射赤外吸収スペクトルを測定し、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク(オキサゾリン由来のピーク)のピーク強度(P1)と、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピーク(ポリエチレンテレフタレート由来のピーク)のピーク強度(P2)を求め、その強度比(P1/P2)を算出した。
ピーク強度の算出に際しては、ピーク強度の比(P1/P2)は各ピークの高さの比に基づき求めた。なお、1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークについては、ピークがショルダーになることから、1600cm-1と1800cm-1を結ぶ線をベースラインとし、一方、1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのベースラインについては、ピークの両側の袖を結ぶ線とした。
装置:Varian社製「FTS−60A/896」
1回反射ATRアタッチメント:SPECTRA TECH社製「Silver Gate」
光学結晶:Ge
入射角:45°
分解能:4cm-1
積算回数:128回
なお、被覆層の膜厚が薄く十分な感度が得られない場合(実施例6および比較例4)は、使用する1回反射アタッチメントを、より入射角が大きい(65度)アタッチメント(エス・ティ・ジャパン社製「VeeMax」)に代えて測定した。
各実施例および比較例において基材フィルム上に被覆層のみを積層した段階で得られた積層フィルムを試料とし、該試料を斜め切削して得られた斜め切削面を観察し、被覆層表面から被覆層/基材フィルム界面までの高さ測定を走査型プローブ顕微鏡(SPM)で行うことにより、被覆層の膜厚(D)(nm)を求めた。
オキサゾリンを含有する樹脂を凍結乾燥し、これを核磁気共鳴分析計(NMR)(ヴァリアン社製「ジェミニ−200」)を用いて1H−NMR分析し、オキサゾリン基に由来する吸収ピーク強度と、その他のモノマーに由来する吸収ピーク強度とを求め、それらピーク強度からオキサゾリン基量(mmol/g)を算出した。
(オキサゾリン基を有する樹脂(A−1))
攪拌機、還流冷却器、窒素導入管および温度計を備えたフラスコに、イソプロピルアルコール460.6部を仕込み、緩やかに窒素ガスを流しながら80℃に加熱した。そこへ予め調製しておいたメタクリル酸メチル126部、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン210部およびメトキシポリエチレングリコールアクリレート84部からなる単量体混合物と、重合開始剤である2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(日本ヒドラジン工業株式会社製「ABN−E」)21部およびイソプロピルアルコール189部からなる開始剤溶液を、それぞれ滴下漏斗から2時間かけて滴下して反応させ、滴下終了後も引き続き5時間反応させた。反応中は窒素ガスを流し続け、フラスコ内の温度を80±1℃に保った。その後、反応液を冷却し、得られた重合体をイオン交換水に溶解させ、固形分濃度25%のオキサゾリン基を有する樹脂(A−1)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(A−1)のオキサゾリン基量は4.3mmol/gであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により測定した数平均分子量は20000であった。
上記オキサゾリン基を有する樹脂(A−1)の合成と同様の方法で、組成(オキサゾリン基量および分子量)の異なる固形分濃度10%のオキサゾリン基を有する樹脂(A−2)を得た。得られたオキサゾリン基を有する樹脂(A−2)のオキサゾリン基量は7.7mmol/gであり、GPCにより測定した数平均分子量は40000であった。
アクリル樹脂として、市販のアクリル酸エステル共重合体の25質量%エマルジョン(ニチゴー・モビニール社製「モビニール(登録商標)7980」を用意した。このアクリル樹脂(B−1)の酸価(理論値)は4mgKOH/gであった。
撹拌機、ジムロート冷却器、窒素導入管、シリカゲル乾燥管および温度計を備えた4つ口フラスコに、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン72.96部と、ジメチロールプロピオン酸12.60部と、ネオペンチルグリコール11.74部と、数平均分子量2000のポリエステルジオール112.70部と、溶剤としてアセトニトリル85.00部およびN−メチルピロリドン5.00部とを投入し、窒素雰囲気下、75℃において3時間撹拌し、反応液が所定のアミン当量に達したことを確認した。次いで、この反応液を40℃にまで降温した後、トリエチルアミン9.03部を添加し、ポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)を得た。
次に、高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水450部を添加し、25℃に調整して2000min-1で攪拌混合しながら、上記で得られたポリウレタンプレポリマー溶液(イソシアネート基末端プレポリマー)の全量を添加して水分散させた。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、固形分濃度30%の水溶性ポリウレタン樹脂(C−1)を調製した。得られたウレタン樹脂(C−1)の酸価(理論値)は25mgKOH/gであった。
(1)塗布液1(被覆層用樹脂組成物)の調製
下記の配合比率で各材料を混合し、塗布液1(被覆層用樹脂組成物)を調製した。なお、得られた塗布液中のオキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の固形分換算の質量比は表1に示す通りである。
水 67.53質量%
イソプロパノール 5.00質量%
オキサゾリン基を有する樹脂(A−2) 20.00質量%
アクリル樹脂(B−1) 4.80質量%
ウレタン樹脂(C−1) 2.67質量%
まず、ポリプロピレングリコール(重量平均分子量2,000)1質量部に対して、ネオペンチルグリコールとアジピン酸との重合により得られたポリエステルポリオール(重量平均分子量2,000)9質量部を混合し、次いで、得られた混合物にイソホロンジイソシアネートをNCO:OH(当量比)=3:2となるように反応させて末端イソシアネートのプレポリマーを得、さらに該プレポリマーにイソホロンジアミンを理論当量の1.1倍加えることにより分子鎖を伸長させて、末端にアミノ基を持ち、かつエーテル結合を持つポリウレタン・ウレア樹脂を調製した。
次に、上記で得たポリメタクリル酸/ポリウレタン・ウレア樹脂含有溶液に、架橋剤として、エポキシ系硬化剤(東都化学社製「エポトートYP300」、不揮発分100%)およびシランカップリング剤(信越化学工業(株)製「信越シリコンKBM403」、不揮発分100%)を、それぞれ、ポリメタクリル酸/ポリウレタン・ウレア樹脂含有溶液中の固形分に対して10%加えて、塗布液2(保護層用樹脂組成物)を調製した。
極限粘度0.62(30℃、フェノール/テトラクロロエタン(質量比)=60/40)のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を予備結晶化した後、本乾燥し、Tダイを有する押出機を用いて280℃で押出し、表面温度40℃のドラム上で急冷固化して無定形シートを得た。次に、得られた無定形シートを加熱ロールと冷却ロールとの間で縦方向に100℃で4.0倍に延伸し、一軸延伸PETフィルムを得た。
次に、得られた一軸延伸PETフィルムの片面に、上記(1)で調製した塗布液1をファウンテンバーコート法により塗布した。その後、乾燥しながらテンターに導き、予熱温度100℃で溶媒を揮発、乾燥させた。次いで、温度120℃で横方向に4.0倍に延伸し、6%の横方向の弛緩を行いながら、225℃で熱固定処理を行うことにより、厚さ12μmの二軸延伸ポリエステルフィルム(プラスチック基材フィルム)の片面に被覆層が形成された2層フィルム(プラスチック基材フィルム/被覆層)を得た。
なお、この2層フィルムについて全反射赤外吸収スペクトル測定および膜厚測定を行った。結果を表1に示す。
次に、上記(3)で得られた2層フィルムの被覆層面に、無機薄膜層として二酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合無機酸化物層を電子ビーム蒸着法で形成し、3層フィルム(プラスチック基材フィルム/被覆層/無機薄膜層)を得た。蒸着源としては、3mm〜5mm程度の粒子状SiO2(純度99.9%)とA12O3(純度99.9%)とを用いた。ここで複合酸化物層の組成は、SiO2/A12O3(質量比)=60/40であった。またこのようにして得られた3層フィルムにおける無機薄膜層(SiO2/A12O3複合酸化物層)の膜厚は13nmであった。
次に、上記(4)で得られた3層フィルムの無機薄膜層面に、グラビアロールコート法にて、上記(2)で調製した塗布液2を乾燥後の塗布量が0.3g/m2(dry)となるように塗布し、その後120℃で乾燥させることにより保護層を形成した。
以上のようにして、基材フィルムの上に被覆層、無機薄膜層および保護層を備えた本発明の積層フィルムを得た。得られた積層フィルムについて、上記の通り、インキ転移性、酸素透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表2に示す。
塗布液1(被覆層用樹脂組成物)を調製するにあたり、オキサゾリン基を有する樹脂、アクリル樹脂およびウレタン樹脂の固形分換算の質量比が表1に示す通りとなるよう各材料の使用量を変更し(このとき、塗工液1全量に占めるイソプロパノールの比率は、実施例1と同様、5.00質量%とした)、あるいは被覆層の膜厚が表1に示す通りとなるよう塗布液1の塗布量を変更したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、インキ転移性、酸素透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表2に示す。
塗布液2(保護層用樹脂組成物)を調製するにあたり、ポリメタクリル酸とポリウレタン・ウレア樹脂との固形分換算の質量比が表1に示す通りとなるようポリメタクリル酸溶液とポリウレタン・ウレア樹脂溶液を混合したこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、インキ転移性、酸素透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表2に示す。
塗布液2(保護層用樹脂組成物)を調製するにあたり、架橋剤(エポキシ系硬化剤およびシランカップリング剤)を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、インキ転移性、酸素透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表2に示す。
基材フィルム上に被覆層を設けなかったこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを作製し、インキ転移性、酸素透過度およびラミネート強度を評価した。結果を表2に示す。
Claims (8)
- プラスチック基材フィルムの少なくとも片面に被覆層が設けられ、該被覆層上に無機薄膜層が積層され、さらに該無機薄膜層上に保護層が設けられてなり、
前記被覆層はオキサゾリン基を含有するとともにアクリル樹脂を含み、該被覆層の膜厚(D)は5〜150nmであり、かつ該被覆層の全反射赤外吸収スペクトルにおいて1655±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P1)と1580±10cm-1の領域に吸収極大を持つピークのピーク強度(P2)との比(P1/P2)と前記被覆層の膜厚(D)とが下記式
0.03≦(P1/P2)/D≦0.15
に示す関係を満たし、
前記保護層は、(メタ)アクリル酸の単独重合体または(メタ)アクリル酸を10質量%以上含む(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸エステル共重合体のいずれか一方の重合体(a)と、エーテル結合を持つポリウレタン・ウレア樹脂(b)と、エポキシ樹脂、ポリイソシアネート、シランカップリング剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の架橋剤(c)とを含有する保護層用樹脂組成物から形成されていることを特徴とする積層フィルム。 - 前記被覆層は、オキサゾリン基を有する樹脂とアクリル樹脂とを必須成分として含む被覆層用樹脂組成物から形成されている請求項1に記載の積層フィルム。
- 前記被覆層用樹脂組成物中のオキサゾリン基を有する樹脂は、そのオキサゾリン基量が5.1〜9.0mmol/gである請求項2に記載の積層フィルム。
- 前記被覆層用樹脂組成物がウレタン樹脂を含む請求項2または3に記載の積層フィルム。
- 前記ウレタン樹脂がカルボキシル基を有しており、その酸価が10〜40mgKOH/gである請求項4に記載の積層フィルム。
- 前記被覆層用樹脂組成物中のアクリル樹脂がカルボキシル基を有しており、その酸価が40mgKOH/g以下である請求項2〜5のいずれかに記載の積層フィルム。
- 前記オキサゾリン基を有する樹脂、前記アクリル樹脂および前記ウレタン樹脂の合計100質量%中、オキサゾリン基を有する樹脂が20〜70質量%、アクリル樹脂が10〜60質量%、ウレタン樹脂が10〜60質量%である請求項4〜6のいずれかに記載の積層フィルム。
- 前記無機薄膜層が、酸化ケイ素と酸化アルミニウムの複合酸化物からなる層である請求項1〜7のいずれかに記載の積層フィルム。
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