JP2013010851A - 難燃性スチレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐トラッキング性、耐熱性、耐熱水性及び難燃性を併せ持ち、かつSPSが本来有する良好な成形性、耐薬品性、機械的強度を有する難燃性スチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供する。
【解決手段】(A)主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体70〜99質量%及び(B)スチレン系エラストマー30〜1質量%からなるスチレン系重合体混合物100質量部に対して、(C)酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種5〜40質量部、(D)難燃剤5〜30質量部、(E)難燃助剤1〜10質量部並びに(F)繊維強化材20〜200質量部を含む難燃性スチレン系樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は難燃性樹脂組成物及びその成形体に関し、さらに詳しくは、耐トラッキング性が要求される電気・電子部品及び自動車電装部品等、例えば、トランス・コイルパワーモジュール(含むデバイス)、モータ部品、照明器具、ソケット、コイル、端子台、インシュレータ、プラグ、スイッチ、リレー、センサー、トランス及びプリント基板の製造に好適な難燃性樹脂組成物及びその成形体に関する。
主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体(以下、「SPS」と称することがある)は優れた耐薬品性、耐熱性、電気特性、吸水寸法安定性を有しており、エンジニアリングプラスチックとして種々の工業部品に用いられている。
SPSを電気・電子部品や自動車電装部品の用途に供する場合、繊維状補強材による強化や臭素化難燃剤・アンチモン系難燃助剤による難燃化を行うことにより、製品の強度や火災に対する安全性を高めている。近年、電気・電子部品においては、軽薄短小化、高性能化、高密度化が進み、電気絶縁性の尺度の一つである耐トラッキング性に対する安全性の向上が求められている。SPSは優れた耐トラッキング性を有するが、繊維状補強材や臭素化難燃剤・アンチモン系難燃助剤を添加することにより、成形体の耐トラッキング性が著しく低下するという問題がある。この問題を解決するために、水酸化マグネシウム及びハイドロタルサイト系化合物から選ばれる少なくとも1種を添加することにより、成形体の耐トラッキング性を改善することが提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、水酸化マグネシウムやハイドロタルサイト系化合物のように分子内に水を含有する化合物(熱分解により水を放出する化合物)は、350℃以下と比較的低温度で熱分解し水を放出する。このため、これら化合物を耐トラッキング性改善の目的で使用すると、特にSPSのようなエンジニアリングプラスチックを含む樹脂組成物の溶融成形時、該化合物から水分が放出され、耐熱性や耐熱水性に悪影響を与え問題があることが分かった。これら耐熱性や耐熱水性は、特に自動車の電装部品分野において、部品の小型化、軽量化の流れに伴い、耐トラッキング性と共に特に求められている性質である。
特開2005−132967号公報
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、優れた耐トラッキング性、耐熱性、耐熱水性及び難燃性を併せ持ち、かつSPSが本来有する良好な成形性、耐薬品性、機械的強度を有する難燃性スチレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、SPSに特定の成分を特定量配合したスチレン系樹脂組成物により上記目的が達成されることを見出した。本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(6)に関する。
(1)(A)主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体70〜99質量%及び(B)スチレン系エラストマー30〜1質量%からなるスチレン系重合体混合物100質量部に対して、(C)酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種5〜40質量部、(D)難燃剤5〜30質量部、(E)難燃助剤1〜10質量部並びに(F)繊維強化材20〜200質量部を含むことを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
(2)(B)成分のスチレン系エラストマーが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選択される少なくとも1種である上記(1)に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
(3)(D)成分の難燃剤が臭素系難燃剤である上記(1)又は(2)に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
(4)(E)成分の難燃助剤がアンチモン系難燃助剤である上記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
(5)(F)成分の繊維強化材がガラス繊維である上記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
本発明によれば、優れた耐トラッキング性、耐熱性、耐熱水性及び難燃性を併せ持ち、かつSPSが本来有する良好な成形性、耐薬品性、機械的強度を有する難燃性スチレン系樹脂組成物及びその成形体を得ることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(A)成分として、主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を用いる。シンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体におけるシンジオタクチック構造とは、立体化学構造がシンジオタクチック構造、即ち炭素−炭素結合から形成される主鎖に対して側鎖であるフェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、例えば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができるが、本発明に言う主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体とは、通常はラセミダイアッドで75%以上、好ましくは85%以上、若しくはラセミペンタッドで30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(ハロゲン化スチレン)、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)、これらの水素化重合体及びこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体を指称する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソピルスチレン)、ポリ(t−ブチルスチレン)、ポリ(フェニルスチレン)、ポリ(ビニルナフタレン)、ポリ(ビニルスチレン)などがあり、ポリ(ハロゲン化スチレン)としては、ポリ(クロロスチレン)、ポリ(ブロモスチレン)、ポリ(フルオロスチレン)などがある。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)としては、ポリ(クロロメチルスチレン)など、またポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などがある。
なお、これらのうち特に好ましいスチレン系重合体としては、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−t−ブチルスチレン)、ポリ(p−クロロスチレン)、ポリ(m−クロロスチレン)、ポリ(p−フルオロスチレン)、水素化ポリスチレン及びこれらの構造単位を含む共重合体が挙げられる。
このようなSPSは、例えば、不活性炭化水素溶媒中又は溶媒の不存在下に、チタン化合物及び水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系重合体に対応する単量体)を重合することにより製造することができる(特開昭62―187708号公報)。また、ポリ(ハロゲン化アルキルスチレン)については特開平1−46912号公報、これらの水素化重合体は特開平1−178505号公報記載の方法などにより得ることができる。
これらのSPSは一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(B)成分としてスチレン系エラストマーを用いる。(B)成分として使用されるスチレン系エラストマーは、ポリスチレン相をハードセグメントとして有する公知のスチレン系エラストマーが使用できるものであり、主にSPSの靭性を改善する目的で使用されるものである。
好ましい(B)成分のスチレン系エラストマーとしては、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)及びスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体(SEEPS)が挙げられる。これらのスチレン系エラストマーは一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(C)成分として酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種を用いる。この(C)成分は、主に、耐トラッキング性を改善する目的で使用するものである。(C)成分として使用する酸化マグネシウムは、その化合物内に結晶水のごとく水分を含有しないものであり、本発明の難燃性樹脂組成物を溶融成形する際に、水分が放出される恐れがない。また、(C)成分として使用するアルミナ1水和物は、化学式としてAl23・H2Oで示され、その化合物内に1結晶水を有するものであり、その脱水温度は500℃近くであって熱分解性に優れるものである。そして、(C)成分として使用するタルクは水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物であって、粘土鉱物の1種である。その組成式は、Mg3Si410(OH)2で示され、その脱水温度は800〜1000℃と高く、極めて熱分解性に優れるものである。
本発明では、SPSを含む難燃性樹脂組成物において、耐トラッキング性を改善し、かつ溶融成形時に水分が放出されることに起因して耐熱性や耐熱水性の悪影響を与える恐れのない酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種を(C)成分として使用するものである。これら(C)成分の中でも酸化マグネシウムを使用すると耐熱水性がより優れるので好ましい。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(D)成分として難燃剤を使用するものである。(D)成分の難燃剤は、臭素系難燃剤、リン系難燃剤、塩素系難燃剤等が挙げられる。臭素系難燃剤としては、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリアクリレート、臭素化ポリフェニレンエーテル、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂の分子鎖末端のグリシジル基の一部又は全部を封止した変性物、臭素化ビスフェノールAを原料として合成したポリカーボネートオリゴマー、臭素化ジフタルイミド化合物、臭素化ビフェニルエーテル、及び1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン等の臭素化ジフェニルアルカン等の化合物が挙げられる。これらの中でもポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレン、ポリ(ジブロモフェニレンオキシド)、デカブロモジフェニルエーテル、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン、エチレン−ビス−(テトラブロモフタルイミド)、テトラブロモビスフェノールA、臭素化ポリカーボネートオリゴマーがより優れた難燃性の観点から好ましく、また、成形体における耐トラッキング性の低下を小さくする観点から、ポリトリブロモスチレン等の臭素化ポリスチレンや1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタンが好ましい。従って、難燃性及び耐トラッキング性の観点から共に優れている臭素化ポリスチレン又は1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタンを使用することが特に好ましい。ここで、臭素化ポリスチレンは、ポリスチレンのベンゼン環の水素原子(1〜5個)が臭素原子で置換されたものであり、臭素化スチレンの重合又はポリスチレンの置換によって得られる。臭素化ポリスチレンは、重量平均分子量が5,000〜20,000のものが好ましい。臭素化ポリスチレンには、スチレン、α−メチルスチレン等の他のビニル化合物が共重合されていてもよい。
リン系難燃剤としては、例えばリン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリエチルホスフェート、酸性リン酸エステル、トリフェニルホスフェンオキシドなどが挙げられる。また、塩素系難燃剤としては、ペンタクロロペンタシクロデカン、ヘキサクロロベンゼン、ペンタクロロトルエン、テトラクロロビスフェノールA、ポリクロロスチレン等が挙げられる。
上記の臭素系難燃剤、リン系難燃剤及び塩素系難燃剤の中でも、臭素系難燃剤を用いることが好ましい。また、これら難燃剤は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(E)成分として難燃助剤を使用するものである。(E)成分の難燃助剤としては、特に制限はなく、従来ポリスチレン系樹脂の難燃助剤として慣用されているものの中から、任意のものを選択して用いることができる。この難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムなどのアンチモン酸のアルカリ金属塩、アンチモン酸のアルカリ土類金属塩、金属アンチモン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三硫化アンチモン、五硫化アンチモンなどのアンチモン系難燃助剤、さらにはホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化鉄、酸化亜鉛などが挙げられる。これらの中で、性能及び経済性の点から、酸化アンチモン、アンチモン酸のアルカリ金属塩、アンチモン酸のアルカリ土類金属塩等のアンチモン系難燃助剤が好適である。特にこれらのアンチモン系難燃助剤の中でも、三酸化アンチモン及びアンチモン酸ナトリウムが好適である。難燃助剤を用いる場合の平均粒径は、通常0.01〜10μm程度、好ましくは0.02〜5μmである。平均粒径が0.01μm以上であると取り扱いが容易であり、また、10μm以下であると難燃性が低下することがない。この(E)成分の難燃助剤は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の難燃性樹脂組成物においては、(F)成分として繊維強化材を使用するものである。(F)成分の繊維状強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、ウィスカー、セラミック繊維、金属繊維などが挙げられる。具体的に、ウィスカーとしてはホウ素、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素など、セラミック繊維としてはセッコウ、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウムなど、金属繊維としては銅、アルミニウム、鋼等がある。本発明においてはガラス繊維が好ましい。ここで、繊維状強化材の形状としてはクロス状、マット状、集束切断状、短繊維、フィラメント状のものなどがある。集束切断状の場合、長さが0.05〜50mm、繊維径が5〜20μmのものが好ましい。また、クロス状、マット状の場合、長さが1mm以上、好ましくは5mm以上が好ましい。
また、表面処理した繊維状強化材も用いることができ、通常表面処理に用いられるカップリング剤、例えばシラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤などを用いて上記繊維状強化材を表面処理したものが挙げられる。このシラン系カップリング剤の具体例としては、トリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピル−トリス(2−メトキシ−エトキシ)シラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ビニルベンジル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、トリアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−(4,5−ジヒドロイミダゾリル)プロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N−ビス(トリメチルシリル)ウレアなどが挙げられる。これらの中で好ましいのは、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのアミノシラン、エポキシシランである。
また、チタン系カップリング剤の具体例としては、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(1,1−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミドエチル,アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネートなどがあげられる。これらの中で好ましいのは、イソプロピルトリ(N−アミドエチル,アミノエチル)チタネートである。
このようなカップリング剤を用いて前記繊維状強化材の表面処理を行うには、通常の公知の方法によればよく、特に制限はない。例えば、上記カップリング剤の有機溶媒溶液あるいは懸濁液をいわゆるサイジング剤として繊維状強化材に塗布するサイジング処理法、あるいはヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、レーディゲミキサー、V型ブレンダ−などを用いての乾式混合法、スプレー法、インテグラルブレンド法、ドライコンセントレート法など、繊維状強化材の形状により適宜な方法にて行うことができるが、サイジング処理法、乾式混合法、スプレー法により行うことが望ましい。また、上記のカップリング剤とともにガラス用フィルム形成性物質を併用することができる。このフィルム形成性物質には、特に制限はなく、例えばポリエステル系、ウレタン系、エポキシ系、アクリル系、酢酸ビニル系、ポリエーテル系などの重合体が挙げられる。本発明において、(F)成分の繊維状強化材は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
[(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)成分の配合割合について]
本発明では、まず、(A)成分のSPSと(B)成分のスチレン系エラストマーとの割合は、その合計量に基づいて(A)成分は、70〜99質量%、好ましくは80〜95質量%であり、(B)成分は、30〜1質量%、好ましくは20〜5質量%である。(A)成分が70質量%未満であると、耐トラッキング性及び耐熱性等のSPS本来の性質が損なわれることとなり望ましくない。また、(A)成分が99質量%を超えると靱性が低下することとなり望ましくない。
本発明で使用する(C)成分の酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して5〜40質量部、好ましくは10〜30質量部である。(C)成分が5質量部より少ないと耐トラッキング性が低下することとなり、また40質量部を超えると流動性や機械的特性の低下、及び成形体における外観不良などの問題が生じることとなり望ましくない。
本発明で使用する(D)成分の難燃剤は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して5〜30質量部、好ましくは10〜25質量部である。(D)成分が5質量部より少ないと難燃性が低下することとなり、また30質量部を超えると、流動性や機械的特性の低下、及び成形体における外観不良などの問題が発生するおそれがあり望ましくない。
本発明で使用する(E)成分の難燃助剤は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して1〜10質量部、好ましくは2〜7質量部である。(E)成分が1質量部より少ないと(D)成分である難燃剤との相乗効果による難燃効果が小さく、また、10質量部を超えると、流動性や機械的特性の低下、及び成形体における外観不良などの問題が発生することがあり望ましくない。
本発明で使用する(F)成分の繊維強化材は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して20〜200質量部、好ましくは30〜150質量部である。(F)成分が20質量部より少ないと、樹脂組成物の機械的特性や耐熱性などの向上効果が充分に発揮されず、また、200質量部を超えると、樹脂組成物の成形性や外観不良などが低下する原因となる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、上記の(A)〜(F)配合成分に加えて、ヒンダードフェノール系化合物、3価の有機リン系化合物及びチオエーテル化合物等の酸化防止剤を添加することが、機械的強度や耐熱性の向上の点から好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物としては、2,6−ジ−t−4−メチルフェノール(BHT)、2,6−ジ−t−4−エチルフェノール(ノクラック M−17)、2,6−ジ−t−4−フェニルフェノール(ノクライザー NS−260)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)(Sumilizer MDP−S、ノクラック NS−6)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)(ノクラック NS−5)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−n−ノニルフェノール)(ノクライザー NS−90)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(Sumilizer BBM−S、ノクラック NS−30、Adekastab AO−40)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(Sumilizer WX−R、ノクラック 300)、1,1,3−トリス(5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)ブタン(Adekastab AO−30)、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(Sumilizer GM)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer GS)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1076、Adekastab AO−50、Sumilizer BP−76)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスフォネート−ジエチルエステル(IRGANOX 1222)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX 245)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX 249)、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX 1035)、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)(IRGANOX 1098)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β{(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(Sumilizer GA−80、Adekastab AO−80)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(IRGANOX MD1024)、ペンタエルスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX 1010、Adekastab AO−60、Sumilizer BP−101)、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン(IRGANOX 565)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(IRGANOX 1330、Adekastab AO−330)、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト(IRGANOX 3114、Adekastab AO−20)及びトリス(4−t−ブチル−2,6−ジメチル−3−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト(Cyanox 1790)が好ましい。
この中で、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート(Sumilizer GM)、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート(Sumilizer GS)、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1076、Adekastab AO−50、Sumilizer BP−76)及びペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](IRGANOX 1010、Adekastab AO−60、Sumilizer BP−101)がより好ましい。
なお、「ノクラック」及び「ノクライザー」は大内新興化学工業社製品の商品名、「Sumilizer」は住友化学工業社製品の商品名、「Adekastab」はADEKA社製品の商品名、「IRGANOX」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製品の商品名、「Cyanox」はサイテックインダストリー社製品の商品名であり、これらは後述する3価の有機リン化合物及びチオエーテル系化合物においても同様である。
3価の有機リン化合物としては、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−4C)、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−2)、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−8)、ジオクチルペンタエリスリトールジホスファイト、ジラウリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジフェニルペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、(Adekastab PEP−24、ULTRANOX 626)、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエルスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−36)、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−45、Doverphos S−9228)、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスフォナイト(Sandstab P−EPQ)、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4'−ビフェニレンホスフォナイト(GSY−P101)、2,2'−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト(ETHANOX 398)、2,2'−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト(Adekastab HP−10)、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(HCA)、トリス(イソデシル)ホスファイト(Adekastab 3010)、トリス(トリデシル)ホスファイト(Adekastab 3013)、フェニルジイソオクチルホスファイト(PDIOD)、フェニルジイソデシルホスファイト(Adekastab 517)、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト(Adekastab 2013)、ジフェニルイソオクチルホスファイト(Adekastab C)、ジフェニルイソデシルホスファイト(Adekastab 135A)、ジフェニルトリデシルホスファイト(Adekastab 1013)、トリフェニルホスファイト(Sumilizer TPP−R)、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト(Irgafos 168、Adekastab 2112、Sumilizer P−16)、トリス(モノノリルフェニル)ホスファイト(Adekastab 1178)、トリス(モノ,ジノリルフェニル)ホスファイト(Adekastab 329K、Sumilizer TNP)、4,4'−イソプロピリデンジフェノールテトラアルキル(C12〜C15)ジホスファイト(Adekastab 1500)、4,4'−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト(Adekastab QL)及び1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジ−トリデシルホスファイト−5−t−ブチルフェニル)ブタン(Adekastab 522A)が好ましい。
この中で、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−36)、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(Adekastab PEP−45、Doverphos S−9228)、ビス(2,4,6−トリ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト(Sandstab P−EPQ)及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンホスフォナイト(GSY−P101)がより好ましい。
なお、「ULTRANOX」はGE社製品の商品名、「Sandstab」」はクラリアント社製品の商品名、「ETHANOX」はエチル社製品の商品名、「Irgafos」はチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製品の商品名、「Doverphos」はドーヴァーケミカル社製品の商品名、「GSY」はエーピーアイコーポレーション社製の商品名である。
チオエーテル系化合物としては、ジラウリル 3,3'−チオジプロピオネート(Sumilizer TPL−R、ノクラック 300)、ジトリデシル 3,3'−チオジプロピオネート(Sumilizer TL)、ジミリスチル 3,3'−チオジプロピオネート(Sumilizer TPM)、ジステアリル 3,3'−チオジプロピオネート(Sumilizer TPS)、ジステアリル 3,3’−メチル−3,3’−チオジプロピオネート、ビス[2−メチル−4−(3−n−アルキル(C12又はC14)チオプロピオニルオキシ)−5−t−ブチルフェニル]サルファイド((Adekastab AO−503A)、テトラキス[メチレン−3−(ヘキシルチオ)プロピオネート]メタン、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン(Sumilizer TP−D、Adekastab AO−412S)、テトラキス[メチレン−3−(オクタデシルチオ)プロピオネート]メタン、2−メルカプトベンゾイミダゾール(Sumilizer MB、ノクラック MB)及び2−メルカプトメチルベンゾイミダゾール(ノクラック MMB)が好ましい。この中で、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン(Sumilizer TP−D、Adekastab AO−412S)がより好ましい。これらの酸化防止剤は単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、上記の(A)〜(F)配合成分に加えて、更に、酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂を添加することが、機械的強度や耐熱性の向上の点から好ましい。
酸変性されるポリフェニレンエーテルとしては、特に限定されず、公知の化合物を用いれば良く、例えば、米国特許3,306,874号、同3,306,875号、同3,257,357号及び同3,257,358号各明細書で挙げられたものを用いることができる。具体的なポリフェニレンエーテルとしては、通常、銅アミン錯体、一種又はそれ以上の二箇所もしくは三箇所置換フェノ−ルの存在下で、ホモポリマー又はコポリマーを生成する酸化カップリング反応によって調製されたものを用いることができる。ここで、銅アミン錯体は第一、第二及び又は第三アミンから誘導される銅アミン錯体を使用できる。適切なポリフェニレンエーテルの例としては、ポリ(2,3−ジメチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−クロロメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−ヒドロキシエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−n−ブチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−エチル−6−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−(4’−メチルフェニル)−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−ブロモ−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−フェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−クロロ−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−クロロ−6−ブロモ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジ−n−プロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−クロロ−6−メチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)等が挙げられる。例えば前記ホモポリマ−の調製に使用されるようなフェノ−ル化合物の二種又はそれ以上から誘導される共重合体などの共重合体も適切である。更に例えばポリスチレン等のビニル芳香族化合物と前述のポリフェニレンエーテルとのグラフト共重合体及びブロック共重合体が挙げられる。これらのうち特に好ましくはポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)が用いられる。酸変性したポリフェニレンエーテルとしては、フマル酸変性ポリフェニレンエーテル、マレイン酸変性ポリフェニレンエーテルが特に好ましく用いられる。これらの酸変性したポリフェニレンエーテル樹脂の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して0.01〜15質量部が好ましい。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、更にハイドロタルサイト系化合物を(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して3質量部まで添加することができる。ここで、ハイドロタルサイト系化合物とは、ハイドロタルサイトおよびハイドロタルサイト類化合物を包含する。ハイドロタルサイトとは、式:Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O(Mg、Alは、それぞれ2価、3価である)で表される層状の結晶構造を有する層状複水酸化物であり、ハイドロタルサイト類化合物とは、2価のMgおよび3価のAlを含むハイドロタルサイトと同様の層状結晶構造を有する化合物である。これらのハイドロタルサイト系化合物を添加することにより、成形加工性及び熱安定性を高めることができる。但し、ハイドロタルサイト系化合物が3質量部を超えると、前述したようにハイドロタルサイト系化合物から脱水する水分の影響により、耐熱性や耐熱水性に悪影響を与えるので望ましくない。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、核剤を配合することにより耐熱性を向上することができる。核剤としては、アルミニウムジ(p−t−ブチルベンゾエート)をはじめとするカルボン酸の金属塩、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウムをはじめとするリン酸の金属塩、タルク、フタロシアニン誘導体等、公知のものから任意に選択して用いることができる。具体的な商品名としては、ADEKA社製のAdekastab NA−10、Adekastab NA−11、Adekastab NA−21、Adekastab NA−30、Adekastab NA−35、大日本インキ社製のPTBBA−AL等が挙げられる。なお、これらの核剤は一種のみを単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。核剤の配合量は、(A)成分と(B)成分との合計量100質量部に対して0.01〜5質量部が好ましい。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、更に、前記(C)成分、(E)成分及び(F)成分以外の無機充填材を配合することができる。これらの無機充填材としては、例えば、タルク、カーボンブラック、グラファィト、二酸化チタン、シリカ、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、オキシサルフェート、酸化スズ、アルミナ、カオリン、炭化ケイ素、金属粉末、ガラスパウダー、ガラスフレーク、ガラスビーズ等の粒状、粉状充填材が挙げられる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、紫外線吸収剤、耐熱安定剤、耐光(耐候)剤、滑剤、離型剤、結晶化促進剤、染料及び顔料を含む着色剤などを配合することができる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物の調製方法については特に制限はなく公知の方法により調製することができる。例えば、上記成分を常温で混合、あるいは溶融混練など様々な方法でブレンドすればよく、その方法は特に制限はされない。これらの混合・混練方法の中でも二軸押出機を用いた溶融混練が好ましく用いられる。二軸押出機を用いた溶融混練においては、用いるSPSの融点以上、350℃未満での混練が好ましい。混練温度を用いるSPSの融点以上とすることにより、SPSの粘度が高くなりすぎることがないため、生産性が低下することがない。また、350℃未満とすることにより、SPSが熱分解するおそれがない。
本発明の樹脂組成物を用いた成形方法についても特に制限はなく、射出成形、押出成形等公知の方法により成形することができる。射出成形のときの成形温度は、用いるSPSの融点以上、350℃未満が好ましい。成形温度を用いるSPSの融点以上とすることにより、流動性が低下するおそれがなく、350℃未満とすることにより、SPSが熱分解するおそれがない。また金型温度としては、40〜200℃が好ましく、50〜180℃が更に好ましい。金型温度を40℃以上とすることにより、SPSが十分結晶化し、SPSの特徴が十分発揮される。また200℃以下とすることにより、離型時の剛性が低下することがないため、エジェクター割れや変形が発生するおそれがない。
以下に本発明の実施例を挙げてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
製造例1(フマル酸変性ポリフェニレンエーテルの製造)
ポリフェニレンエーテル(固有粘度0.45デシリットル/g、クロロホルム中、25℃)1kg、フマル酸30g、ラジカル発生剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(日本油脂社製、ノフマーBC)20gをドライブレンドし、30mm二軸押出機を用いてスクリュー回転数200rpm、設定温度300℃で溶融混練を行った。この時樹脂温度は約331℃であった。ストランドを冷却後ペレット化し、フマル酸変性ポリフェニレンエーテルを得た。変性率測定のため、得られた変性ポリフェニレンエーテル1gをエチルベンゼンに溶解後、メタノールに再沈し、回収したポリマーをメタノールでソックスレー抽出し、乾燥後IRスペクトルのカルボニル吸収の強度及び滴定により変性率を求めた。この時、変性率は1.45質量%であった。
実施例1〜5及び比較例1〜5
配合成分として下記のものを用いた。
(A)SPS
SPS:ホモシンジオタクチックポリスチレン(出光興産株式会社製、ザレック130ZC)、ラセミペンタッドタクティシティートが98%、MFRが13g/10分(温度300℃、荷重1.2Kgf)
(B)SEBS:スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(クラレ株式会社製、SEPTON 8006:スチレン量30%)
(C)成分
(1)酸化マグネシウム:神島化学工業株式会社製、スターマグ PSF−150
(2)アルミナ1水和物:神島化学工業株式会社製、ベーマイト
(3)タルク:日本タルク株式会社製、MSZ−C
(D)難燃剤:臭素化ポリスチレン
1,2−ジ(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール社製、SAYTEX 8010、Br含有量82質量%)
(E)難燃助剤:三酸化アンチモン(日本精鉱株式会社製、PATOX−M)
(F)繊維状強化材:ガラス繊維(オーウェンス・コーニング社製、JA−FT164G、直径10μm)
その他成分
(1)FAPPE:製造例1にて製造したフマル酸変性ポリフェニレンエーテル
(2)フェノール系酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGANOX 1010)
(3)リン系酸化防止剤:ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(ADEKA社製、Adekastab PEP−36)
(4)水酸化マグネシウム:神島化学工業株式会社製、マグシーズ S−6F
(5)ハイドロタルサイト:協和化学工業株式会社製、DHT−4A(平均結晶粒子径0.4μm、比表面積(BET法)12m2/g)
上記配合成分を表1及び表2に示す割合でドライブレンドした後、二軸押出機を用いシリンダー温度290℃で、ガラス繊維をサイドフィードしながら溶融混練を行い、得られたストランドを水槽に通し冷却した後ペレット化し、樹脂組成物を調製した。得られた樹脂組成物を用いて以下の評価を行った。評価結果を表1〜2に示す。
<評価項目>
(1)耐熱性:
350℃でコンパウンドした材料の引張破断強さを290℃でコンパウンドした材料の引張破断強さを基準とした時の保持率(%)で評価した。数値が高いほうが優れている。引張破断強さはISO527−1,2に準拠して測定した。
(2)耐熱水性:
120℃の加圧水中に1000時間浸漬した後の引張破断強さについて浸漬前を基準とした時の保持率(%)で評価した。数値が高いほうが優れている。引張破断強さはISO527−1,2に準拠して測定した。
(3)耐トラッキング性:
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL746Cに準拠して、湿式比較トラッキング指数(CTI)を測定した。
(4)難燃性:
米国アンダーライターラボラトリー社が定めるUL94垂直燃焼試験に従い、肉厚1.6mmの成形体について燃焼試験を行い、V−0、V−1、V−2、V−out(V−2に満たない難燃性)に分類して評価した。
Figure 2013010851
Figure 2013010851
第1表及び第2表から分かるように、水酸化マグネシウム15質量部を使用した比較例1は、耐熱性、耐熱水性に劣っていることが分かる。また、難燃剤の少ない比較例2及び難燃助剤を添加しない比較例3は、難燃性に劣ることが分かる。そして、本発明(C)成分の使用量が少ない比較例4及び比較例5では、耐トラッキング性に劣ることが分かる。これに対して、実施例1〜5は、耐熱性、耐熱水性、耐トラッキング性及び難燃性が共に優れていることが分かる。
本発明の難燃性スチレン系樹脂組成物は、耐トラッキング性、耐熱性、耐熱水性及び難燃性に優れ、かつSPSが本来有する良好な成形性、耐薬品性、機械的強度を有するので、高温・高湿度下で高電圧を使用する電気・電子部品及び自動車電装部品等、例えば、トランス・コイルパワーモジュール(含むデバイス)、モータ部品、照明器具、ソケット、コイル、端子台、ボビン、インシュレータ、プラグ、スイッチ、リレー、センサー、ターミナル、コネクタ、ブレーカー、パワーモジュール、トランス、インバーター及びプリント基板などの製造に好適である。

Claims (6)

  1. (A)主としてシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体70〜99質量%及び(B)スチレン系エラストマー30〜1質量%からなるスチレン系重合体混合物100質量部に対して、(C)酸化マグネシウム、アルミナ1水和物及びタルクから選択される少なくとも1種5〜40質量部、(D)難燃剤5〜30質量部、(E)難燃助剤1〜10質量部並びに(F)繊維強化材20〜200質量部を含むことを特徴とする難燃性スチレン系樹脂組成物。
  2. (B)成分のスチレン系エラストマーが、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体及びスチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレン共重合体から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  3. (D)成分の難燃剤が臭素系難燃剤である請求項1又は2に記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  4. (E)成分の難燃助剤がアンチモン系難燃助剤である請求項1〜3のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  5. (F)成分の繊維強化材がガラス繊維である請求項1〜4のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の難燃性スチレン系樹脂組成物を成形してなる成形体。
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