以下に本発明の好適な実施の形態について説明する。以下に説明する実施の形態は、本発明の一例を説明するものである。また、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形例も含む。
なお、本発明において、スルホ基、カルボキシ基等の酸性官能基は、特に断りがない限り、遊離酸の形態で表す。
本発明において、「Cv−Cwアルキル(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)とは、v〜w個の炭素原子を含むアルキル基を意味する。例えば、C1−C4アルキルは、1〜4個の炭素原子を含むアルキル基のことをいう。アルキル基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
また、「Cv−Cwアルコキシ(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)は、v〜w個の炭素原子を含むアルコキシ基を意味する。例えば、C1−C4アルコキシは、1〜4個の炭素原子を含むアルコキシ基のことをいう。アルコキシ基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
また、「Cv−Cwアルキレン(基)」(vおよびwは、それぞれ整数である。)は、v〜w個の炭素原子を含むアルキレン基を意味する。例えば、C1−C4アルキレンは、1〜4個の炭素原子を含むアルキレン基のことをいう。アルキレン基は、特に断りがない限り、直鎖または分岐鎖のいずれの構造であってもよい。
1.インクセット
本発明の一実施形態に係るインクセットは、水、顔料および前記顔料の対イオンとして第1金属イオンを含有する第1インクと、水、後述する一般式(1)で表される染料および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する第2インクと、を有し、
下記(条件1)または(条件2)に記載の前記第1金属イオンの極限当量伝導率[S・cm2/eq]は、下記(条件3)または(条件4)に記載の前記第2金属イオンの極限当量伝導率[S・cm2/eq]よりも大きいことを特徴とする。
(条件1)前記第1金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件2)前記第1金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第1金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
(条件3)前記第2金属イオンが単独の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記単独の金属イオンの極限当量伝導率とする
(条件4)前記第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合は、前記第2金属イオンの極限当量伝導率は、前記2種以上の金属イオンの平均の極限当量伝導率とする
第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率よりも大きいと、第1インクと第2インクとが混合された際に、第1インクに含有されている顔料の分散性が低下しにくくなる。これにより、本実施形態に係るインクセットを後述する液滴吐出装置に用いた際にも、ノズルの詰まり等による吐出不良の発生を低減することができる。一方、第1金属イオンの極限当量伝導率が、第2金属イオンの極限当量伝導率以下であると、第1インクおよび第2インクが混合された際に、第1インクに含まれる顔料の分散性が低下して、顔料の凝集等が発生する場合がある。
金属イオンの極限当量伝導率(Limiting equivalent conductivity;S・cm2/eq)とは、無限希釈状態における固有値であり、イオン独立移動の法則で定義される値として知られている。即ち、イオン独立移動の法則において、無限希釈状態における電解質の極限モル伝導率は、陽イオン及び陰イオンの極限モル伝導率の和として表される。無限希釈状態とは、電解質(イオン)が存在しないことを意味するのではなく、溶液中での陽イオン−陰イオン間距離が無限大であり、陽イオンと陰イオンとが相互に影響を及ぼさないことを意味している。なお、金属イオンの当量伝導率(S・cm2/eq)とは、当該金属イオンの極限モル伝導率(S・cm2/mol)を当該金属イオンの価数で割ったものをいう。
金属イオンの極限当量伝導率は、既知のものが多く、具体的には、25℃における極限当量伝導率(S・cm2/eq)は、カリウムイオン(K+)で73.5、ナトリウムイオン(Na+)で50.1、リチウムイオン(Li+)で38.7、である(電気化学協会「電気化学便覧 第4版」)。また、金属イオンの極限当量伝導率は、実験的に求めることも可能であり、当量伝導率の濃度変化を測定し、適当な方法を用いて濃度ゼロへの外挿を行うことによって決定することができる。
また、第1金属イオンが、2種以上の金属イオンからなる場合には、第1金属イオンの極限当量伝導率を平均の極限当量伝導率とする。平均の極限当量伝導率とは、顔料の対イオンとしてインクに含まれる金属イオンの極限当量伝導率の平均値を示すものである。例えば、m個のXイオンと、n個のYイオンと、の平均の極限当量伝導率は、[(Xイオンの極限当量伝導率)×m+(Yイオンの極限当量伝導率)×n]/(m+n)、により求められる。なお、第2金属イオンが2種以上の金属イオンからなる場合にも、第1金属イオンと同様にして、平均の極限当量伝導率を求めることができる。
極限当量伝導率の関係が顔料の凝集に影響する理由については、詳細は明らかになっていないが、以下のメカニズムによるものと考えられる。
例えば、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が大きいと、第1インクおよび第2インクが混合された際に、顔料粒子の周囲の導電率が高くなる。つまり、顔料粒子は、極限当量伝導率の高い金属イオンと出会いやすくなる。その結果、顔料周囲の電気二重層が収縮することにより、顔料粒子の粒子間距離が縮まり、顔料の凝集が発生すると考えられる。
一方、第1金属イオンの極限当量伝導率に比べて、第2金属イオンの極限当量伝導率が小さいと、顔料粒子の周囲の導電率は上昇しにくい。このような理由から、顔料の凝集が発生しにくくなると考えられる。
第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含む。これにより、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
第2インクは、一般式(1)で示される染料と第2金属イオンの金属塩を含む。これにより、染料の溶解性が改善する。
1.1.第1インク
本実施形態に係るインクセットは、第1インクを有する。以下、第1インクに含まれる成分について、詳細に説明する。
1.1.1.顔料
第1インクは、顔料を含有する。顔料としては、公知の顔料を用いることができるが、自己分散型の顔料であることが好ましい。自己分散型の顔料とは、分散剤なしに水性媒体中に分散することが可能な顔料である。ここで、「分散剤なしに水性媒体中に分散」とは、顔料を分散させるための分散剤を用いなくても、その表面の親水基により、水性媒体中に安定に存在している状態をいう。自己分散型の顔料を用いると、顔料を分散させるための分散剤の使用量を低減できるので、分散剤に起因するインクの発泡を低減でき、吐出安定性の良好なインクが調製しやすい。
自己分散型の顔料は、その顔料表面に親水基を有することができる。顔料表面の親水基は、−OM、−COOM、−CO−、−SO3M、−SO2M、−SO2NH2、−RSO2M、−PO3HM、−PO3M2、−SO2NHCOR、−NH3、および−NR3(式中のMは、水素原子、アルカリ金属(例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム)、アンモニウム、置換基を有していてもよいフェニル基、または有機アンモニウムを表し、Rは、炭素原子数1〜12のアルキル基または置換基を有していてもよいナフチル基を表す)からなる群から選択される一以上の親水基であることが好ましい。
本実施形態に係る第1インクは、顔料と第1金属イオンの金属塩を含み、第1インクに含まれる顔料は実質的に第1金属イオンの金属塩からなることが好ましい。上述したように、第1インクに含まれる顔料が金属塩構造を有していると、顔料の分散性が改善し、顔料の凝集が発生しにくくなる。
顔料の対イオンとして第1インクに含まれる第1金属イオンとしては、カリウムイオンおよびナトリウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第1インク中における顔料の分散性を向上させることができる。
顔料は、例えば、物理的処理または化学的処理を施すことで、前記親水基を顔料の表面に結合(グラフト)させることにより製造される。前記物理的処理としては、例えば真空プラズマ処理等が例示できる。また前記化学的処理としては、例えば水中で酸化剤により酸化する湿式酸化法や、p−アミノ安息香酸を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介してカルボキシル基を結合させる方法等が例示できる。
第1インクをブラック色のインク(以下、「顔料ブラックインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、次亜ハロゲン酸および/または次亜ハロゲン酸塩による酸化処理、オゾンによる酸化処理、または過硫酸および/または過硫酸塩による酸化処理により表面処理されたものであることが、高発色という点で好ましい。
第1インクをブラック色以外のカラーのインク(以下、「顔料カラーインク」ともいう。)として用いる場合には、顔料は、その表面にフェニル基を介して上記親水基を有するものであることが、高発色という点で好ましい。顔料表面にフェニル基を介して親水基を結合させる表面処理手段としては、種々の公知の表面処理手段を適用することができ、スルファニル酸、p−アミノ安息香酸、4−アミノサリチル酸等を顔料表面に結合させることによりフェニル基を介して親水基を結合させる方法等が例示できる。
顔料ブラックインクに用いられる顔料は、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。カーボンブラックの好ましい具体例としては、No.2300、900、MCF88、No.20B、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No2200B(以上三菱化学(株)製)、カラーブラックFW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、Printex 30、U、V、140U、スペシャルブラック6、5、4A、4、250(以上エボニックデグサ社製)、コンダクテックスSC、ラーベン1255、5750、5250、5000、3500、1255、700(以上コロンビアカーボン社製)、リガール400R、330R、660R、モグルL、モナーク700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、エルフテックス12(キャボット社製)等が挙げられる。これらのカーボンブラックは一種または二種以上の混合物として用いても良い。
また、顔料カラーインクに用いられる顔料としては、カラーインデックスに記載されているピグメントレッド、ピグメントバイオレット、ピグメントブルー等の顔料の他、フタロシアニン系、アゾ系、アントラキノン系、アゾメチン系、縮合環系等の顔料が例示できる。また、橙色228号、405号、青色1号、404号等の有機顔料や酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化鉄、群青、紺青、酸化クローム等の無機顔料が挙げられ、具体的には、例えば、C.I.ピグメントレッド1,3,5,8,9,16,17,19,22,38,57:1,90,112,122,123,127、146,184、C.I.ピグメントバイオレッド1,3,5:1,16,19,23,38、C.I.ピグメントブルー1,2,15,15:1,15:2,15:3,15:4,16が挙げられる。
また、顔料として市販品を利用することも可能であり、例えば、マイクロジェットCW1(オリヱント化学工業株式会社製)、CAB−O−JET250C、CAB−O−JET260M(以上キャボット社製)等が挙げられる。
顔料の含有量は、第1インク組成物の全質量に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。
また、顔料は、インクの保存安定性やノズルの目詰まり防止等の観点から、その平均粒径が50〜250nmの範囲であることが好ましい。
1.1.2.水
本実施形態に係るインク組成物は、水を含有する。水は、上述した顔料を分散もしくは溶解させる主溶媒として機能する。
水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水または超純水のようなイオン性不純物を極力除去したものであることが好ましい。また、紫外線照射または過酸化水素添加等により滅菌した水を用いると、顔料分散液およびこれを用いたインクを長期保存する場合にカビやバクテリアの発生を防止することができるので好適である。
本実施形態に係る第1インクに含有される水は、第1インクの全質量に対して、50質量%以上であることが好ましい。
1.1.3.その他の成分
本実施形態に係る第1インクは、界面活性剤を含有することができる。界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
これらの中でも、ノニオン系界面活性剤は、インクの被記録媒体に対する浸透性および定着性を向上できるとともに、インクジェット記録方法によって被記録媒体上に付着させたインクの液滴の形状を真円に近いものとすることができるので、好ましく用いることができる。
また、ノニオン系界面活性剤の中でも、アセチレングリコール系界面活性剤は、表面張力および界面張力を適正に保つ能力に優れており、かつ起泡性がほとんどないという特性を有する点から、より好ましく用いることができる。アセチレングリコール系界面活性剤としては、2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、または3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3オール、2,4−ジメチル−5−ヘキシン−3−オールなどが挙げられる。また、アセチレングリコール系界面活性剤は市販品も利用することができ、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG−50、104S、420、440、465、485、SE、SE−F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA(以上全て商品名、Air Products and Chemicals. Inc.社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD−001、PD−002W、PD−003、PD−004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF−103、AF−104、AK−02、SK−14、AE−3(以上全て商品名、日信化学工業株式会社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル株式会社製)等が挙げられる。
界面活性剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る第1インクは、浸透促進剤を含有することができる。浸透促進剤は、被記録媒体に対するインクの濡れ性をさらに向上させて均一に塗らす作用を備える。これにより、形成された画像のインクの濃淡ムラや滲みをさらに低減させることができ、画像の発色濃度を一層向上させることができる。浸透促進剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
浸透促進剤としては、例えば、グリコールエーテル類が挙げられる。グリコールエーテル類は、浸透促進剤としての効果に特に優れる。グリコールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、本実施形態に係る第1インクに含まれる成分との相溶性に優れている点から、トリエチレングリコールモノブチルエーテルを好ましく用いることができる。
浸透促進剤を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上15質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る第1インクは、保湿剤を含有することができる。保湿剤としては、例えば、1,2−アルカンジオール類、多価アルコール類、ピロリドン誘導体、尿素類等が挙げられる。保湿剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
1,2−アルカンジオール類は、被記録媒体に対するインクの濡れ性を高めて均一に濡らす作用に優れているため、被記録媒体上に優れた画像を形成することができる。1,2−アルカンジオール類としては、例えば、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等が挙げられる。1,2−アルカンジオール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
多価アルコール類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。多価アルコール類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
ピロリドン誘導体は、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。ピロリドン誘導体としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、N−ブチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン等が挙げられる。ピロリドン誘導体を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。
尿素類は、第1インクをインクジェット記録装置に用いた場合に、ヘッドのノズル面でのインクの乾燥固化を抑制して目詰まりや吐出不良等を低減できるという観点から好ましく用いることができる。尿素類としては、例えば、尿素、チオ尿素、エチレン尿素、1,3−ジメチルイミダゾリジノン類等が挙げられる。尿素類を含有する場合には、その含有量は、第1インクの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましい。
本実施形態に係る第1インクは、pH調整剤を含有することができる。pH調整剤は、第1インクのpH値の調整を容易にすることができる。pH調製剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
pH調整剤としては、無機酸(例えば、硫酸、塩酸、硝酸等)、無機塩基(例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリ−iso−プロパノールアミン)、有機酸(例えば、アジピン酸、クエン酸、コハク酸等)等が挙げられる。
pH調整剤としては、上記の中でも、有機酸および有機塩基の少なくとも一方を用いることが好ましい。特に、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用する場合には、無機酸と無機塩基、無機酸と有機塩基、有機酸と無機塩基の組み合わせよりもpH緩衝能力が高い。そのため、有機酸と有機塩基とを組み合わせて使用した場合には、pH値の変動を抑制する効果が一層向上して、所望のpHに設定しやすいという効果を奏する。
本実施形態に係る第1インクは、さらに、防腐剤・防かび剤、防錆剤、キレート化剤等を含有することができる。本実施形態に係る第1インクは、これらの化合物を含有していると、その特性がさらに向上する場合がある。
防腐剤・防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2−ジベンジソチアゾリン−3−オン等が挙げられる。市販品では、プロキセルXL2、プロキセルGXL(以上商品名、アビシア社製)や、デニサイドCSA、NS−500W(以上商品名、ナガセケムテックス株式会社製)等が挙げられる。
防錆剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩等)等が挙げられる。
1.2.第2インク
本実施形態に係るインクセットは、第2インクを有する。第2インクでは、前述した第1インクに含まれる成分のうち顔料以外の成分を同様に用いることができるので、同様に用いられる成分については、その説明を省略する。
1.2.1.染料
(a)染料
本実施形態に係る第2インクは、下記一般式(1)で表される染料(以下、「第1染料」ともいう。)および前記染料の対イオンとして第2金属イオンを含有する。
第1染料は、光の照射を受けたり、大気中のガス(特に、オゾン)に晒されたりしても、分解しにくい性質を備えている。そのため、第2インクを用いて形成された画像は、耐光性、耐ガス性(特に、耐オゾン性)に優れ、光や大気の影響による変色や退色を起こしにくい。また、第1染料は、インク中で分解しにくい性質を備える。そのため、第2インクは、保存安定性に優れたものとなる。
第1染料の含有量は、第2インクの全質量に対して、好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上10質量%以下である。第1染料の含有量が上記範囲内にあると、記録される画像の発色濃度を向上させたり、耐光性および耐ガス性を向上させたりすることができる。
上記一般式(1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立に、水素原子;ハロゲン原子;スルホ基;カルボキシ基;スルファモイル基;カルバモイル基;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;置換基として、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基;C1−C4アルキルカルボニルアミノ基;カルボキシ基で置換されたC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;ウレイド基;モノC1−C4アルキルウレイド基;ジC1−C4アルキルウレイド基;置換基として、ヒドロキシ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたモノC1−C4アルキルウレイド基;置換基として、ヒドロキシ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたジC1−C4アルキルウレイド基;ベンゾイルアミノ基;ベンゼン環が、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたベンゾイルアミノ基;ベンゼンスルホニルアミノ基;または、ベンゼン環が、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたフェニルスルホニルアミノ基;を表す。
また、Xは、2価の袈橋基を表す。
上記一般式(1)中、R1〜R8におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。これらの中では、フッ素原子、塩素原子、および臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。
R1〜R8におけるC1−C4アルキル基としては、直鎖、又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。C1−C4アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、n−プチルといった直鎖のもの;イソプロピル、イソプチル、sec−プチル、t−プチルといった分岐鎖のもの;が挙げられる。好ましい具体例としては、メチル、エチルが挙げられ、メチルが特に好ましい。
R1〜R8におけるC1−C4アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。具体例としてはメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシといった直鎖のもの;イソプロポキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシといった分岐鎖のもの;等が挙げられる。好ましい具体例としてはメトキシ、エトキシが挙げられ、メトキシが特に好ましい。
前記R1〜R8における、置換基として、ヒドロキシ基、C1−C4アルコキシ基、ヒドロキシC1−C4アルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたC1−C4アルコキシ基としては、C1−C4アルコキシ基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1または2、好ましくは1である。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に2つ以上の酸素原子が置換しないものが好ましい。具体例としては、2−ヒドロキシエトキシ、2−ヒドロキシプロポキシ、3−ヒドロキシプロポキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシ基;メトキシエトキシ、エトキシエトキシ、n−プロポキシエトキシ、イソプロポキシエトキシ、n−ブトキシエトキシ、メトキシプロポキシ、エトキシプロポキシ、n−プロポキシプロポキシ、イソプロポキシブトキシ、n−プロポキシブトキシ等のC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシ基;2−ヒドロキシエトキシエトキシ等のヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシ基;カルボキシメトキシ、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ等のカルボキシC1−C4アルコキシ基;2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ等のスルホC1−C4アルコキシ基;等が挙げられる。
R1〜R8における、C1−C4アルキルカルボニルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。具体例としては、アセチルアミノ(メチルカルボニルアミノ)、エチルカルボニルアミノ、プロピルカルボニルアミノ、ブチルカルボニルアミノ等の直鎖のもの;イソプロピルカルボニルアミノ、t−ブチルカルボニルアミノ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
R1〜R8における、カルボキシ基で置換されたC1−C4アルキルカルボニルアミノ基の具体例としては例えば、2−カルボキシエチルカルボニルアミノ、3−カルボキシプロピルカルボニルアミノ等のカルボキシC1−C4アルキルカルボニルアミノ基;等が挙げられる。カルボキシ基の置換数は、通常1又は2、好ましくは1である。
R1〜R8における、モノC1−C4アルキルウレイド基としては、アルキル部分が直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。該C1−C4アルキルの置換位置は特に制限されないが、「N’」に置換するのが好ましい。本明細書において、「モノC1−C4アルキルウレイド基」とは、「C1−C4アルキルNH−CO−NH−」基または「H2N−CO−N(C1−C4アルキル)−」基を意味し、R1〜R8が結合するベンゼン環において、該ベンゼン環に直接結合する窒素原子を「N」、この窒素原子とカルボニル(CO)基を介して結合する窒素原子を「N’」として記載する。したがって、該C1−C4アルキルの置換位置としては前者が「N’」、後者が「N」である。その具体例としては、N’−エチルウレイド、N’−プロピルウレイド、N’−ブチルウレイド等の直鎖のもの;N’−イソプロピルウレイド、N’−イソブチルウレイド、N’−t−ブチルウレイド等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
R1〜R8における、ジC1−C4アルキルウレイド基としては、直鎖又は分岐鎖のものが挙げられる。該C1−C4アルキルの置換位置は特に制限されず、前記「モノC1−C4アルキルウレイド基」における置換位置に準じて「N」及び「N’」に1つずつ、又は「N’」に2つ置換しても良いが、後者が好ましい。また2つの該C1−C4アルキルは、同一であっても異なっていてもよいが、同一のものが好ましい。その具体例としては、N’,N’−ジメチルウレイド、N’,N’−ジエチルウレイド、N’,N’−ジプロピルウレイド、N’,N’−ジブチルウレイド等の直鎖のもの;N’,N’−ジイソプロピルウレイド、N’,N’−ジイソブチルウレイド等の分岐のもの;等が挙げられる。
R1〜R8における、置換基として、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたモノC1−C4アルキルウレイド基としては、前記モノC1−C4アルキルウレイド基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1又は2、好ましくは1である。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に窒素原子とヒドロキシ基とが置換しないものが好ましい。具体例としては、N’−2−ヒドロキシエチルウレイド、N’−3−ヒドロキシプロピルウレイド等のN’−モノ(ヒドロキシC1−C4アルキル)ウレイド基;N’−2−スルホエチルウレイド、N’−3−スルホプロピルウレイド等のN’−モノ(スルホC1−C4アルキル)ウレイド基;N’−カルボキシメチルウレイド、N’−2−カルボキシエチルウレイド、N’−3−カルボキシプロピルウレイド、N’−4−カルボキシブチルウレイド等のN’−モノ(カルボキシC1−C4アルキル)ウレイド基;等が挙げられる。
R1からR8における、置換基として、ヒドロキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたジC1−C4アルキルウレイド基としては、前記ジC1−C4アルキルウレイド基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1又は2、好ましくは2である。置換基の位置は特に制限されないが、同一の炭素原子に窒素原子とヒドロキシ基とが置換しないものが好ましい。また、置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていてもよいが、同一のものが好ましい。具体例としては、N’,N’−ジ(2−ヒドロキシエチル)ウレイド、N’,N’−ジ(2−ヒドロキシプロピル)ウレイド、N’,N’−ジ(3−ヒドロキシプロピル)ウレイド等のN’,N’−ジ(ヒドロキシC1−C4アルキル)ウレイド基;N’,N’−ジ(3−スルホプロピル)ウレイド等のN’,N’−ジ(スルホC1−C4アルキル)ウレイド基;N’,N’−ジ(カルボキシメチル)ウレイド等のN’,N’−ジ(カルボキシC1−C4アルキル)ウレイド基;等が挙げられる。
R1〜R8における、ベンゼン環が、置換基として、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられ、塩素原子が特に好ましい。)、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基、およびカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基で置換されたベンゾイルアミノ基としては、これらの置換基を1ないし3つ、好ましくは1または2つ有するものが挙げられる。置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていてもよく、同一であるものが好ましい。その具体例としては、2−クロロベンゾイルアミノ、4−クロロベンゾイルアミノ、2,4−ジクロロベンゾイルアミノ等のハロゲン原子置換ベンゾイルアミノ基;2−メチルベンゾイルアミノ、3−メチルベンゾイルアミノ、4−メチルベンゾイルアミノ等のC1−C4アルキル置換ベンゾイルアミノ基;2−ニトロベンゾイルアミノ、4−ニトロベンゾイルアミノ、3,5−ジニトロベンゾイルアミノ等のニトロ置換ベンゾイルアミノ基;2−スルホベンゾイルアミノ、4−スルホベンゾイルアミノ等のスルホ置換ベンゾイルアミノ基;2−カルボキシベンゾイルアミノ、4−カルボキシベンゾイルアミノ、3,5−ジカルボキシベンゾイルアミノ等のカルボキシ置換ベンゾイルアミノ基;等が挙げられる。
R1〜R8において、ハロゲン原子、C1−C4アルキル基、ニトロ基、スルホ基及びカルボキシ基よりなる群から選択される少なくとも1種類の基でベンゼン環が置換されたフェニルスルホニルアミノ基としては、これらの置換基を1ないし3つ、好ましくは1または2つ、より好ましくは1つ有するものが挙げられる。置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていても良い。その具体例としては、2−クロロフェニルスルホニルアミノ、4−クロロフェニルスルホニルアミノ等のハロゲン原子置換フェニルスルホニルアミノ基;2−メチルフェニルスルホニルアミノ、4−メチルフェニルスルホニルアミノ、4−t−ブチルフェニルスルホニルアミノ等のC1−C4アルキル置換フェニルスルホニルアミノ基;2−ニトロフェニルスルホニルアミノ、3−ニトロフェニルスルホニルアミノ、4−ニトロフェニルスルホニルアミノ等のニトロ置換フェニルスルホニルアミノ基;3−スルホフェニルスルホニルアミノ、4−スルホフェニルスルホニルアミノ等のスルホ置換フェニルスルホニルアミノ基;3−カルボキシフェニルスルホニルアミノ、4−カルボキシフェニルスルホニルアミノ等のカルボキシ置換フェニルスルホニルアミノ基;等が挙げられる。
上記のうち、R1〜R8としては、水素原子;ハロゲン原子;C1−C4アルキル基;C1−C4アルコキシ基;スルホ基又はカルボキシ基で置換されたCl−C4アルコキシ基;C1−C4アルキルカルボニルアミノ基;が好ましい。これらの中でも、水素原子、メチル、エチル、t−ブチル、2−カルボキシエトキシ、3−カルボキシプロポキシ、2−スルホエトキシ、3−スルホプロポキシ、4−スルホブトキシ;がより好ましい。さらに、これらのなかでも、水素原子、メチル、3−スルホプロポキシが特に好ましい。
一般式(1)において、R1〜R8としては、少なくとも1つがスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基であるのが好ましい。また、R1〜R4がそれぞれ独立に、水素原子、C1−C4アルキル基、またはスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基であり、かつ、R1からR4の少なくとも1つがスルホ基で置換されたC1−C4アルコキシ基であり、R5からR8がそれぞれ独立に、水素原子又はC1−C4アルキル基であるのがより好ましい。また、R1およびR2の少なくとも一方がスルホプロポキシ基であり、R3およびR4の少なくとも一方がスルホプロポキシ基であり、R5からR8がC1−C4アルキル基であるのがさらに好ましい。
R1からR8の置換位置は特に制限されないが、これらが置換するそれぞれのベンゼン環において、トリアジン環に結合する窒素原子の置換位置を1位、アゾ基の置換位置を4位として、R1からR4が2位、R5からR8が5位に置換するのが好ましい。
一般式(1)中、Xを表す架橋基としては、一般式(1)で表される染料が水に対して溶解性を示す範囲で、2価のものであれば特に制限されない。ここで、水に対する一般式(1)で表される染料の溶解性としては、1リットルの水に対して一般式(1)で表される染料が通常5g以上、好ましくは10g以上、より好ましくは25g以上、さらに好ましくは50g以上、特に好ましくは100g以上、それぞれ溶解するのが良い。その具体例としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等の2価の原子(好ましくは2価のヘテロ原子);それぞれC1−C8の、アルキレンジアミノ基、アルキレンジオキシ基もしくはアルキレンジチオ基;N,N’−ヒドラジンジイル基;アミノアルコキシアルキルアミノ基といった、酸素原子に2つのアルキルアミノ基が置換したもの;および、アミノアルコキシアルコキシアルキルアミノ基等のエーテル結合を1つ以上含むアルキレンオキシド鎖の末端に、アミノ基及びアルキルアミノ基が1つずつ置換したもの;等が挙げられる。Xを表す2価の袈橋基は、炭素原子の置換基として、ヒドロキシ基、カルボキシ基およびアルコキシ基よりなる群から選択される基を;また、窒素原子の置換基として、アルキル部分がヒドロキシ基若しくはカルボキシ基で置換されていてもよいアルキル基を;それぞれ有してもよい。
Xを表す2価の架橋基としては、C1−C8アルキレンジアミノ基;ヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されたC1−C8アルキレンジアミノ基;N−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;アルキル部分がヒドロキシ基もしくはカルボキシ基で置換されたN−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;アミノC1−C6アルコキシC1−C6アルキルアミノ基;アミノC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキルアミノ基;キシリレンジアミノ基;ピペラジン−1,4−ジイル基;C1−C4アルキル基もしくはC1−C4アルコキシ基で置換されたピペラジン−1,4−ジイル基;またはフェニレンジアミノ基;よりなる群から選択されるいずれかの基が好ましい。なお、これらの2価の架橋基は、いずれもアミノ基を2つ有する「ジアミノ」基である。したがって、該「ジアミノ」は、ピペラジン−1,4−ジイル等の一部の基を除き、いずれか1つの窒素原子で架橋する(すなわち、N,N−ジイルとなる)場合、または異なる2つの窒素原子で架橋する(すなわち、N,N’−ジイルとなる)場合、の両者を含む。これらのうち、「N,N’−ジイル」となる後者の場合が特に好ましい。
Xにおける、C1−C8アルキレンジアミノ基としては、直鎖、又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。炭素数の範囲としては通常C1−C8、好ましくはC2−C8、より好ましくはC2−C6、さらに好ましくはC2−C4が挙げられる。その具体例としては例えば、エチレンジアミノ、1,3−プロピレンジアミノ、1,4−ブチレンジアミノ、1,5−ペンチレンジアミノ、1,6−へキシレンジアミノ、1,7−ヘプチレンジアミノ、1,8−オクチレンジアミノといった直鎖のもの;2−メチル−1,3−プロピレンジアミノ、3−メチル−1,4−ブチレンジアミノ、4−メチル−1,6−ヘキシレンジアミノ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
Xにおける、ヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されたC1−C8アルキレンジアミノ基としては、前記C1−C8アルキレンジアミノ基における任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は特に制限されないが、好ましくは1又は2である。また、置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていても良く、同一のものが好ましい。その具体例としては例えば、2−ヒドロキシ−1,3−プロピレンジアミノ、2−ヒドロキシ−1,4−ブチレンジアミノ、3−ヒドロキシ−1,6−へキシレンジアミノ等のヒドロキシ置換C1−C8アルキレンジアミノ基;1−カルボキシエチレンジアミノ、1−カルボキシ−1,3−プロピレンジアミノ、1−カルボキシ−1,4−ブチレンジアミノ、1−カルボキシ−1,5−ペンチレンジアミノ、1,5−ジカルボキシ−1,5−ペンチレンジアミノ等のカルボキシ置換C1−C8アルキレンジアミノ基;等が挙げられる。
Xにおける、N−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基としては、C1−C6アルキレンジアミノ基の一方の窒素原子が、C1−C4アルキル基で置換されたものを意味する。本明細書においては、ジアミノ基のうちC1−C4アルキル基で置換された窒素原子を「N」と表記し、必要に応じて他方の窒素原子を「N’」と表記する。アルキレン部分の炭素原子数の範囲としては通常C1−C6、好ましくはC2−C4、特に好ましくはC2またはC3である。該C1−C4アルキル基としては、直鎖または分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。その具体例としては、N−メチルエチレンジアミノ基、N−エチルエチレンジアミノ基、N−プロピルエチレンジアミノ基、N−プチルエチレンジアミノ基といったN−直鎖C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;N−イソプロピルエチレンジアミノ基、N−イソブチルエチレンジアミノ基、N−sec−ブチルエチレンジアミノ基、N−tert−ブチルエチレンジアミノ基といったN−分岐鎖C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;等が挙げられる。
Xにおける、アルキル部分がヒドロキシ基又はカルボキシ基で置換されたN−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基とは、前記N−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基における、N−C1−C4アルキル基のアルキル部分の任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。置換基の位置は特に制限されないが、窒素原子とヒドロキシ基とが同一の炭素原子に置換しないものが好ましい。アルキレン部分の炭素原子数の範囲としては、好ましいものも含めて前記N−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基におけるのと同じ範囲が挙げられる。また、アルキル部分の炭素数の範囲としては、通常C1−C4、好ましくはC2−C4、より好ましくはC2−C3である。該置換基の数は、通常1又は2、好ましくは1である。また、置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていてもよいが、同一のものが好ましい。その具体例としては、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミノ基、N−(3−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミノ基、N−(2−ヒドロキシプロピル)エチレンジアミノ基、N−(4−ヒドロキシブチル)エチレンジアミノ基等のN−ヒドロキシ置換C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;N−(カルボキシメチル)エチレンジアミノ基、N−(2−カルボキシエチル)エチレンジアミノ基、N−(3−カルボキシプロピル)エチレンジアミノ基、N−(4−カルボキシブチル)エチレンジアミノ基等のN−カルボキシ置換C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;等が挙げられる。
Xにおける、アミノC1−C6アルコキシC1−C6アルキルアミノ基としては、直鎖、又は分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。なお、アミノC1−C6アルコキシC1−C6アルキルアミノ基のうち、好ましい炭素数の範囲を有するものとしてアミノC2−C4アルコキシC2−C4アルキルアミノ基が挙げられ、特に好ましい炭素数の範囲を有するものとしてアミノC2−C3アルコキシC2−C3アルキルアミノ基が挙げられる。その具体例としては、アミノエトキシエチルアミノ、アミノエトキシプロピルアミノ、アミノプロポキシプロピルアミノ、アミノエトキシペンチルアミノ等が挙げられる。
Xにおける、アミノC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキルアミノ基としては、直鎖、または分岐鎖のものが挙げられ、直鎖のものが好ましい。なお、アミノC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキルアミノ基のうち、好ましい炭素数の範囲を有するものとしてアミノC2−C4アルコキシC2−C4アルコキシC2−C4アルキルアミノ基が挙げられ、特に好ましい炭素数の範囲を有するものとしてアミノC2−C3アルコキシC2−C3アルコキシC2−C3アルキルアミノ基が挙げられる。その具体例としては、アミノエトキシエトキシエチルアミノ、アミノエトキシプロポキシエチルアミノ、アミノエトキシブトキシエチルアミノ等の直鎖のもの;アミノエトキシ(2−メチルエトキシ)エチルアミノ、アミノエトキシ(2−メチルプロポキシ)エチルアミノ等の分岐鎖のもの;等が挙げられる。
Xにおけるキシリレンジアミノ基としては、例えば、o−キシリレンジアミノ基、m−キシリレンジアミノ基、p−キシリレンジアミノ基が挙げられ、m−キシリレンジアミノ基またはp−キシリレンジアミノ基が好ましい。
Xにおける、C1−C4アルキル基またはC1−C4アルコキシ基で置換されたピペラジン−1,4−ジイル基としては、ピペラジン環の環構成原子の任意の炭素原子に、これらの置換基を有するものが挙げられる。該置換基の数は、通常1または2、好ましくは1である。また、置換基を複数有するとき、その種類としては同一でも異なっていてもよく、同一のものが好ましい。その具体例としては、2−メチルピペラジン−1,4−ジイル基、2−エチルピペラジン−1,4−ジイル基、2,5−ジメチルピペラジン−1,4−ジイル基、2,6−ジメチルピペラジン−1,4−ジイル基、2,5−ジエチルピペラジン−1,4−ジイル基、2−メチル−5−エチルピペラジン−1,4−ジイル基;等が挙げられる。
Xにおけるフェニレンジアミノ基としては、o−、m−、及びp−フェニレンジアミノ基が挙げられ、m一又はp−フェニレンジアミノ基が好ましい。
以上のなかでも、Xは、C1−C8アルキレンジアミノ基;カルボキシ基で置換されたC1−C8アルキレンジアミノ基;アルキル部分がヒドロキシで置換されたN−C1−C4アルキル−C1−C6アルキレンジアミノ基;アミノC1−C4アルコキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキルアミノ基;キシリレンジアミノ基;またはピペラジン−1,4−ジイル基;であることが好ましい。これらの中でも、Xは、C1−C8アルキレンジアミノ基;キシリレンジアミノ基;またはピペラジン−1,4−ジイル基;であることがより好ましい。これらのうち、好ましい具体例としては、1,2−エチレンジアミノ:1,3−プロピレンジアミノ;1,4−ブチレンジアミノ;1−カルボキシペンチレン−1,5−ジアミノ;N−2−ヒドロキシエチル−エチレンジアミノ;アミノエトキシエトキシエチルアミノ;m−キシリレンジアミノ;又は、ピペラジン−1,4−ジイル;が挙げられる。
上記一般式(1)において、置換位置が特定されていない4つのスルホ基の置換位置は、特に制限されない。1つのアゾ結合を有するベンゼン環に置換したスルホ基は、該アゾ結合の置換位置を1位として、2、3もしくは4位に置換してもよく、4位に置換することが好ましい。
一般式(1)で表される第1染料は、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましく、下記一般式(4)で表される化合物であることがより好ましい。
上記一般式(3)中、R1〜R8およびXは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
上記一般式(4)中、R1〜R8およびXは、式(1)におけるものと同じ意味を表す。
一般式(1)、一般式(3)および一般式(4)におけるR1〜R8、一般式(1)におけるR1〜R8の置換位置、ならびに一般式(1)および一般式(3)における置換位置が特定されていないスルホの置換位置等について、好ましいもの同士を組み合わせた化合物はより好ましく、より好ましいもの同士を組み合わせたものはさらに好ましい。さらに好ましいもの同士、好ましいものとより好ましいものとの組み合わせ等についても同様である。
一般式(1)で表される染料は、分子内のスルホ基等を利用して、塩を形成できる。塩を形成するとき、分子内のスルホ基等は、金属、アンモニア又は有機塩基等の各カチオンと塩を形成することが好ましい。
金属としてはアルカリ金属やアルカリ土類金属が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、例えばカルシウム、マグネシウム等が挙げられる。
有機塩基としては、下記一般式(5)で示される4級アンモニウムイオンが挙げられるが、これに限定されるものではない。
本実施形態に係る第2インクは、一般式(1)で表される染料と第2金属イオンの金属塩を含み、第2インクに含まれる染料は実質的に第2金属イオンの金属塩からなることが好ましい。これにより、染料の溶解性が改善するためである。
第1染料の対イオンとして第2インクに含まれる第2金属イオンとしては、ナトリウムイオンおよびリチウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。これにより、第2インク中における第1染料の溶解性を向上させることができる。
また、本実施形態に係る第1染料の遊離酸およびそれらの各種の塩は、混合物であってもよい。例えば、第1染料のナトリウム塩と第1染料のアンモニウム塩との混合物、第1染料の遊離酸と第1染料のナトリウム塩との混合物、第1染料のリチウム塩、第1染料のナトリウム塩および第1染料のアンモニウム塩の混合物等、いずれの組み合わせを用いてもよい。塩の種類によっては溶解性等の物性が異なる場合も有り、必要に応じて適宜塩の種類を選択したり、複数の塩などを含む場合にその比率を変化させたりすることにより、目的に合った物性を有する混合物を得ることができる。
上記一般式(5)においてZ1、Z2、Z3、Z4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、ヒドロキシアルキル基およびヒドロキシアルコキシアルキル基よりなる群から選択される基を表す。
一般式(5)におけるZ1、Z2、Z3、Z4のアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチルなどが挙げられる。また、ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル等のヒドロキシC1−C4アルキル基が挙げられる。また、ヒドロキシアルコキシアルキル基の例としては、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等ヒドロキシC1−C4アルコキシC1−C4アルキル基が挙げられる。これらの中でも、水素原子、メチル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシブチル、ヒドロキシエトキシメチル、2−ヒドロキシエトキシエチル、3−ヒドロキシエトキシプロピル、2−ヒドロキシエトキシプロピル、4−ヒドロキシエトキシブチル、3−ヒドロキシエトキシブチル、2−ヒドロキシエトキシブチル等を好ましく用いることができる。
式(5)で表される4級アンモニウムイオンについて、Z1、Z2、Z3およびZ4の好ましい組み合わせの具体例を表1に示す。
第1染料の好適な具体例として、特に限定されるものではないが、表2〜表23に示す構造式で表される化合物などが挙げられる。各表においてスルホ基及びカルボキシ基等の官能基は、便宜上、遊離酸の形で記載するものとする。
(b)染料の合成方法
一般式(1)、一般式(3)および一般式(4)で表される化合物からなる染料は、例えば次のような方法で合成することができる。なお、各工程における化合物の構造式は、遊離酸の形で表すものとし、また下記一般式(6)〜(22)において適宜使用されるR1〜R8およびXは、それぞれ上記一般式(1)におけるものと同じ意味を表す。
まず、下記一般式(6)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、これと下記式(7)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記一般式(8)で表される化合物を得る。
なお、一般式(8)で表される化合物の他の合成方法としては、以下の方法が挙げられる。具体的には、一般式(6)で表される化合物を常法によりジアゾ化し、これとアニリンのメチル−ω−スルホン酸誘導体とを常法によりカップリング反応させた後、アルカリ条件下で加水分解して、下記一般式(9)で表される化合物を得る。得られた一般式(9)で表される化合物を発煙硫酸等で処理してスルホ化することにより、一般式(8)で表される化合物を得ることができる。また、一般式(8)で表される化合物の中には、市販品として購入できるもの(例えばC.I.アシッドイエロー9)もある。
次に、得られた一般式(8)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(10)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記一般式(11)で表される化合物を得る。
一方、一般式(8)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(12)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記一般式(13)で表される化合物を得る。同様にして、一般式(8)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(14)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記一般式(15)で表される化合物を得る。同様にして、一般式(8)で表される化合物を常法によりジアゾ化した後、これと下記一般式(16)で表される化合物とを常法によりカップリング反応させ、下記一般式(17)で表される化合物を得る。
次に、得られた一般式(11)で表される化合物とハロゲン化シアヌル(例えば、塩化シアヌル)とを常法により縮合反応させ、下記一般式(18)で表される化合物を得る。
次いで、得られた一般式(18)で表される化合物と一般式(13)で表される化合物とを常法により縮合反応させ、下記一般式(19)で表される化合物を得る。同様にして、得られた一般式(15)で表される化合物とハロゲン化シアヌル(例えば、塩化シアヌル)とを常法により縮合反応させ、下記式(20)で表される化合物を得る。次いで、得られた一般式(20)で表される化合物と一般式(17)で表される化合物とを常法により縮合反応させ、下記一般式(21)で表される化合物を得る。
次いで、得られた一般式(19)で表される化合物と一般式(21)で表される化合物と下記一般式(22)で表される架橋基Xに対応する化合物とを、常法により縮合反応させることにより、一般式(1)で表される第1染料を得ることができる。
一般式(6)で表される化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。具体的には、無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは0〜20℃の温度で、亜硝酸塩(例えば亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩)を使用して実施される。また、一般式(6)で表される化合物のジアゾ化物と式(7)で表される化合物とのカップリング反応は、公知の反応条件で実施される。例えば、水又は水性有機媒体中、0〜30℃(好ましくは5〜25℃)の温度、ならびに酸性から弱酸性のpH値(例えば、pH1〜pH6)で反応を行うことが好ましい。ジアゾ化反応液は酸性であり、カップリング反応の進行により反応系内は更に酸性化してしまうため、塩基の添加によって反応液を上記pH値に調整することが好ましい。塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;酢酸ナトリウム等の酢酸塩;アンモニアもしくは有機アミン;等が使用できる。一般式(6)の化合物と式(7)の化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
一般式(8)で表される化合物のジアゾ化は、公知の方法で実施される。具体的には、無機酸媒質中、例えば−5〜30℃、好ましくは0〜25℃の温度で、亜硝酸塩(例えば、亜硝酸ナトリウム等の亜硝酸アルカリ金属塩)を使用して実施される。一般式(8)で表される化合物のジアゾ化物と、一般式(10)、一般式(12)、一般式(14)、または一般式(16)で表される化合物とのカップリング反応は、公知の反応条件で実施される。例えば、水または水性有機媒体中、0〜30℃、好ましくは5〜25℃の温度、ならびに酸性から弱酸性のpH値(例えば、pH1〜pH6)で反応を行うことが有利である。ジアゾ化反応液は酸性であり、カップリング反応の進行により反応系内は更に酸性化してしまうため、塩基の添加によって反応液を前記のpH値へ調整するのが好ましい。塩基としては上述したものと同じものが使用できる。一般式(8)の化合物と、一般式(10)、一般式(12)、一般式(14)、または一般式(16)の化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
一般式(11)または一般式(15)で表される化合物とハロゲン化シアヌル(例えば、塩化シアヌル)との縮合反応は、公知の方法で実施される。例えば、水または水性有機媒体中、0℃〜30℃、好ましくは5℃〜25℃の温度、ならびに弱酸性から中性のpH値(例えば、pH3〜pH8)で反応を行うことが好ましい。反応の進行により反応系内は酸性化してしまうため、塩基の添加によって上記pH値に調整することが好ましい。塩基としては、上述したものと同じものが使用できる。一般式(11)または一般式(15)の化合物とハロゲン化シアヌルとは、ほぼ化学量論量で用いる。
一般式(13)で表される化合物と一般式(18)で表される化合物との縮合反応、または一般式(17)で表される化合物と一般式(20)で表される化合物との縮合反応は、公知の方法で実施される。例えば、水または水性有機媒体中、10〜80℃、好ましくは25〜70℃の温度、ならびに弱酸性から弱アルカリ性のpH値(例えば、pH5〜pH9)で反応を行うことが好ましい。pH値の調整は、塩基の添加によって実施される。塩基としては、上述したものと同じものが使用できる。一般式(13)で表される化合物と一般式(18)で表される化合物、または一般式(17)で表される化合物と一般式(20)で表される化合物とは、ほぼ化学量論量で用いる。
一般式(19)で表される化合物と一般式(21)で表される化合物と一般式(22)で表される化合物との縮合反応は、公知の方法で実施される。具体的には、水または水性有機媒体中、50℃〜100℃、好ましくは60℃〜95℃の温度、ならびに中性から弱アルカリ性のpH値(例えば、pH7〜pH10)で行うことが好ましい。pH値の調整は、塩基の添加によって実施される。塩基としては、上述したものと同じものが使用できる。一般式(19)で表される化合物1当量と一般式(21)で表される化合物1当量に対し、一般式(22)で表される化合物は、0.4当量〜0.6当量、好ましくは0.5当量を用いる。
一般式(1)で表される染料を所望の塩とするには、一般式(1)で表される染料の合成反応における最終工程の終了後、所望の無機塩または有機の陽イオンの塩を反応液に添加することにより塩析するか、あるいは塩酸など鉱酸の添加により遊離酸の形で単離し、これを水、酸性の水または水性有機媒体などを必要に応じて用い洗浄することにより無機塩を除去後、水性の媒体中で所望の無機の塩基または有機の塩基により中和することで、対応する塩の溶液とすることができる。
例として、一般式(1)で表される染料をリチウム塩とする方法を以下に説明する。一般式(19)で表される化合物と一般式(21)で表される化合物と一般式(22)で表される架橋基Xに対応する化合物とを、常法により縮合反応させた後、塩化ナトリウムを添加して、塩析および濾過分取を行うことで、一般式(1)で表される染料のナトリウム塩を得る。次に、ナトリウム塩に水および塩酸を添加し酸析および濾過分取を行うことで、一般式(1)で表される染料の遊離酸を得る。さらに、遊離酸に水および水酸化リチウムを添加することで、一般式(1)で表される染料のリチウム塩を得ることができる。また、リチウム塩とする異なる方法としては、一般式(1)で表される染料のナトリウム塩と、塩化リチウムと、を用いた塩交換反応が挙げられる。
なお、酸性の水とは、例えば硫酸、塩酸などの鉱酸や酢酸などの有機酸を水に溶解し、酸性にしたものをいう。また、水性有機媒体とは、水を含有する水と混和可能な有機物質および水と混和可能ないわゆる有機溶剤などをいう。水性有機媒体の具体例としては、水溶性有機溶剤などが挙げられるが、通常溶剤として分類されない有機物質であっても水と混和可能なものであれば必要に応じて使用することが可能である。
水溶性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、第二ブタノールまたは第三ブタノール等のC1−C4アルカノール;N,N−ジメチルホルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミド等のカルボン酸アミド;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンまたはN−メチルピロリジン−2−オン等のラクタム;1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−オンまたは1,3−ジメチルヘキサヒドロピリミド−2−オン等の環式尿素類;アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オン等のケトンまたはケトアルコール;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、チオジグリコールまたはジチオジグリコール等のC2〜C6アルキレン単位を有するモノ、オリゴまたはポリ−アルキレングリコールまたはチオグリコール;グリセリンまたはヘキサン−1,2,6−トリオール等のポリオール(トリオール);エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)トリエチレングリコールモノメチルエーテルまたはトリエチレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのC1−C4アルキルエーテル;γ−ブチロラクトンまたはジメチルスルホキシド等があげられる。
また、通常溶剤として分類されない有機物質の例としては、尿素や糖類などを挙げることができる。無機塩としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩、塩化アンモニウム、臭化アンモニウム等のアンモニウム塩等が挙げられる。また、有機の陽イオンの塩としては、例えば、有機アミンのハロゲン塩等が挙げられる。無機の塩基としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、水酸化アンモニウム、あるいは炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。また、有機の塩基としては、有機アミン、例えばジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどの一般式(5)で表される4級アンモニウム類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本実施形態のインク組成物は、上記の表2〜表23に示す化合物の中でも、化合物No.59で示される下記式(2)の化合物またはその塩を好ましく用いることができる。
1.3.各インクの物性
本実施形態に係るインクセットをインクジェット記録装置に用いる場合において、各インク(第1インクおよび第2インク)の20℃における粘度は、それぞれ、2mPa・s以上10mPa・s以下であることが好ましく、3mPa・s以上6mPa・s以下であることがより好ましい。各インクは、20℃における粘度が上記範囲内にあると、ノズルから適量吐出され、飛行曲がりを起こすことや飛散することを一層低減できるので、インクジェット記録装置に好適に使用することができる。各インクの粘度は、振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定できる。
2.液滴吐出装置
本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置は、上述した第1インクおよび第2インクを備えるインクセットと、第1インクおよび第2インクを吐出するためのノズル孔を備えたノズル面と、ノズル面を払拭するためのワイプ部材と、を有する。
以下、本発明の一実施形態に係る液滴吐出装置について、図1〜図3を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。本実施形態では、本発明に係る液滴吐出装置として、インクジェットプリンター(以下、単に「プリンター」という。)を例示する。
図1は、本実施形態におけるプリンター1の構成を示す斜視図である。なお、このプリンター1は、シリアルプリンターを表している。
図1に示すように、プリンター1は、インクジェットヘッド2を搭載すると共にインクカートリッジ3を着脱可能に装着するキャリッジ4と、インクジェットヘッド2の下方に配設され被記録媒体6が搬送されるプラテン5と、キャリッジ4を被記録媒体6の媒体幅方向に移動させるキャリッジ移動機構7と、被記録媒体6を媒体送り方向に搬送する媒体送り機構8と、を有するものである。加えて、プリンター1は、当該プリンター1全体の動作を制御する制御装置CONTを有している。なお、上記媒体幅方向とは、主走査方向(ヘッド走査方向)である。上記媒体送り方向とは、副走査方向(主走査方向に直交する方向)である。
インクカートリッジ3は、本実施形態のようにキャリッジ4に装着するものに限らず、これに替えて例えば、プリンター1の筐体側に装着しインク供給チューブを介してインクジェットヘッド2に供給するタイプのものであってもよい。インクカートリッジ3には、それぞれ、第1インク、第2インク、第3インク、第4インクが収容されている。プリンター1のインクセットは、第1インク、第2インク、第3インクおよび第4インクからなる。第3インクおよび第4インクは、第1インクおよび第2インクの少なくとも一方と同様の組成のインクであってもよいし、第1インクおよび第2インクと異なる組成のインクであってもよい。
キャリッジ4は、主走査方向に架設された支持部材であるガイドロッド9に支持された状態で取り付けられたものである。また、キャリッジ4は、キャリッジ移動機構7によりガイドロッド9に沿って主走査方向に移動するものである。
リニアエンコーダ10は、キャリッジ4の主走査方向上における位置を信号で検出するものである。この検出された信号は、位置情報として制御装置CONTに送信されるようになっている。制御装置CONTは、このリニアエンコーダ10からの位置情報に基づいてインクジェットヘッド2の走査位置を認識し、インクジェットヘッド2による記録動作(吐出動作)などを制御するようになっている。また、制御装置CONTは、キャリッジ4の移動速度を可変制御可能な構成となっている。
図2は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2に設けられたノズル孔17の配列を示す概略図である。
図2に示すように、インクジェットヘッド2は、インクを吐出する複数のノズル孔17が設けられたノズル面21Aを有する。インクの吐出面でもあるノズル面21Aには、複数のノズル孔17ごとにノズル列16が形成されている。各ノズル列16においては、例えば異なる組成のインクを吐出可能になっている。本実施形態ではインクの組成に対応して4列、即ちノズル列16(第1インク)、ノズル列16(第2インク)、ノズル列16(第3インク)、およびノズル列16(第4インク)が設けられている。各ノズル列16は、例えば180個のノズル孔17によって構成されている。
図3は、本実施形態におけるインクジェットヘッド2の内部構成を示す部分断面図である。
図3に示すように、インクジェットヘッド2は、ヘッド本体18と、ヘッド本体18に接続された流路形成ユニット22と、を備えている。流路形成ユニット22は、振動板19と、流路基板20と、ノズル基板21と、を備えると共に、共通インク室29と、インク供給口30と、圧力室31と、を形成する。さらに、流路形成ユニット22は、ダイヤフラム部として機能する島部32と、共通インク室29内の圧力変動を吸収するコンプライアンス部33と、を備える。ヘッド本体18には、固定部材26と共に駆動ユニット24を収容する収容空間23と、インクを流路形成ユニット22に案内する内部流路28と、が形成される。
上記構成、即ちピエゾ式のインクジェットヘッド2によれば、ケーブル27を介して駆動ユニット24に駆動信号が入力されると、圧電素子25が伸縮する。これにより、振動板19が圧力室31に接近する方向及び離れる方向に変形(移動)する。このため、圧力室31の容積が変化し、インクを収容した圧力室31の圧力が変動する。この圧力の変動によって、ノズル孔17から、インクが吐出される。
図1に戻り、インクジェットヘッド2の移動範囲のうちプラテン5の外側の領域には、インクジェットヘッド2の走査起点となるホームポジションが設定されている。このホームポジションには、メンテナンスユニット11が設けられている。メンテナンスユニット11は、印字動作以外でインクジェットヘッド2をキャップ部材12でキャッピングしてインクの蒸発を抑制する保湿動作と、インクジェットヘッド2の各ノズル孔17からインクをキャップ部材12に予備吐出させることで増粘インクによるノズル孔17の目詰まり防止やノズル孔17のメニスカスを調整してインクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させるフラッシング動作と、キャップ部材12でインクジェットヘッド2をキャッピングした後に不図示の吸引ポンプを駆動させて各ノズル孔17から粘性が高くなったインクや付着したゴミ等を強制吸引してメニスカスを調整し、インクジェットヘッド2から正常にインクを吐出させる吸引動作(ヘッドクリーニング)と、インクジェットヘッド2のノズル面21A(図2参照)をワイプ部材13で払拭(ワイピング)することでノズル孔17近傍に付着したインクや増粘したインク等を除去したり、ノズル孔17のメニスカスを破壊してメニスカスを再調整させるパージ処理を行うワイピング動作と、を実行する構成となっている。
第1インクおよび第2インクは、上述した組成からなる。そのため、第1インクおよび第2インクがワイピングによってノズル面21Aで混合されても、顔料の凝集が生じにくくなるので、顔料の凝集物によるノズル孔17の詰まり等を低減できる。その結果、プリンター1は、吐出安定性に良好なものとなる。
3.実施例
以下、本発明を実施例および比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
3.1.染料の合成
(製造例1)
後述の工程1〜3により、下記式(2)で表される化合物の合成を行った。
(工程1)
水200部に、下記式(23)で表されるモノアゾ化合物35.7部を加え、水酸化ナトリウムでpH6に調整しながら、亜硝酸ナトリウム7.2部を加えて溶液とした。この溶液を、35%塩酸31.3部を水200部で希釈した水溶液中に、0〜10℃に保ちながら30分間かけて滴下した後、20℃以下で1時間撹拌してジアゾ化反応を行った。得られた反応液にスルファミン酸0.4部を添加し5分間撹拌して、最終的なジアゾ反応液とした。
一方、40〜50℃の水300部に、下記式(24)で表される化合物24.0部および25%水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH5〜6に調整し、水溶液を得た。この水溶液15〜25℃に保ちながら、上記のジアゾ反応液を30分間かけて滴下した。滴下中は炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH5〜6に保持した。次いで、15〜25℃、pH5〜6で2時間撹拌した後、35%塩酸を添加することでpH0〜1に調整した。得られた液を65℃に加熱保持しながら2時間撹拌した後、25℃まで冷却し、析出物を濾過分取することにより下記式(25)で表される化合物を含むウェットケーキ130部を得た。
(工程2)
水250部に上記工程1で得られたウェットケーキ65部を、25%水酸化ナトリウム水溶液の添加により溶液とした。なお、溶液のpHは7〜8とした。この溶液にレオコール TD−90(ライオン社製、界面活性剤)を0.1部添加した後、15〜25℃で塩化シアヌル3.8部を添加した。次に、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH5〜6に保持しながら15〜25℃で2時間撹拌した。次に、この反応液を60〜65℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH6〜7に保持しながら5時間撹拌した。
次に、ピペラジン0.89部を添加し、90〜95℃に加熱し、炭酸ナトリウム水溶液の添加によりpH8〜9に保持しながら16時間撹拌した。得られた反応液を25℃に冷却し、塩化ナトリウムを添加し、析出した固体を濾過分取してウェットケーキを得た。このウェットケーキを水400部を加え、溶液とした。この溶液にメタノール50部、2−プロパノール800部を添加し、析出した固体を濾過分取し、乾燥することにより、下記式(2)で表される化合物のナトリウム塩を得た。
3.2.インクの調製
3.2.1.顔料インクの調製
(1)顔料分散液の調製
顔料としてブラック顔料20質量部、およびイオン交換水80質量部を加えて、混合攪拌した後、サンドミル(安川製作所株式会社製)を用いて、ジルコニアビーズ(直径1.5mm)と共に6時間分散処理を行った。その後、ジルコニアビーズをセパレータで分離することにより、顔料分散液を得た。
(2)顔料インクの調製
次に、表24に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径10μmのメンブレンフィルターで加圧濾過を行って、顔料インクAおよび顔料インクBを得た。なお、表24に記載されている単位は、質量%である。
また、各顔料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各顔料インクの粘度を表24に併せて記載する。
3.2.2.染料インクの調製
表24に示す配合量で各成分を混合攪拌し、孔径1.0μmのメンブレンフィルターにて加圧濾過を行って、染料インクA、染料インクB、染料インクC、染料インクDおよび染料インクEを得た。
また、各染料インクの粘度を振動式粘度計VM−100AL(山一電機株式会社製)を用いて、インクの温度を20℃に保持することで測定した。各染料インクの粘度を表24に併せて記載する。
表24中の各成分は、以下の通りである。ブラック顔料Aは、エボニックデグザ株式会社製、商品名PrinteX 30を常法により処理し、カリウム塩としたものを用いた。また、ブラック顔料Bは、エボニックデグザ株式会社製、商品名PrinteX 30を常法により処理し、ナトリウム塩としたものを用いた。なお、染料Aは、上記製造例1で得られたナトリウム塩を常法により処理し、リチウム塩としたものを用いた。また、染料Cは、上記製造例1で得られたナトリウム塩を常法により処理し、カリウム塩としたものを用いた。また、染料Dは、上記製造例1で得られたナトリウム塩を常法により処理し、リチウム塩とナトリウム塩の混合塩としたものを用いた。また、染料Eは、上記製造例1で得られたナトリウム塩を常法により処理し、リチウム塩とカリウム塩の混合塩としたものを用いた。
(顔料)
・ブラック顔料A(カリウム塩)
・ブラック顔料B(ナトリウム塩)
(染料)
・染料A(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩)
・染料B(上記式(2)で表される化合物のナトリウム塩)
・染料C(上記式(2)で表される化合物のカリウム塩)
・染料D(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩とナトリウム塩の混合塩;Li:Na=8:2)
・染料E(上記式(2)で表される化合物のリチウム塩とカリウム塩の混合塩;Li:K=5:5)
(浸透促進剤)
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル
(保湿剤)
・1,2−ヘキサンジオール
・グリセリン
・トリエチレングリコール
・トリメチロールプロパン
・2−ピロリドン
(界面活性剤)
・アセチレングリコール系界面活性剤A(商品名「オルフィン E1010」、日信化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤B(商品名「サーフィノール 104」、Air Products and Chemicals. Inc.社製)
(pH調整剤)
・トリエタノールアミン
・水酸化カリウム
(水)
・イオン交換水
3.3.評価試験
3.3.1.導電率の測定
各顔料インクおよび各染料インクの20℃における導電率を、導電率計DS−52(商品名、株式会社堀場製作所)によって測定した。測定結果を表24に併せて示す。
3.3.2.吐出安定性の評価
インクジェットプリンターPX−B500(商品名、セイコーエプソン株式会社製)のノズル列に、各顔料インクおよび各染料インクを充填した。そして、これらのインクのうち、顔料インク1種および染料インク1種を選択して、(a)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(b)ノズル面の吸引動作(ヘッドクリーニング)およびノズル面のワイピング、(c)選択した顔料インクおよび染料インクを用いたチェック印字、(d)インクジェットプリンターの24時間放置、という(a)〜(d)の各操作をこの順に10サイクル行った。
その後、選択した顔料インクおよび染料インクをノズルから吐出させて、チェック印字を行い、ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりの有無を確認することにより、吐出安定性の評価を行った。評価結果を表25に示す。また、評価基準の分類については、以下のとおりである。
「○」:ノズル抜けおよびインクの飛行曲がりがない
「×」:ノズル抜けまたはインクの飛行曲がりが発生
3.4.評価結果
以上の評価試験の結果を表25に示す。
表25の実施例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率よりも大きい。そのため、吐出安定性試験により、ノズル抜けや飛行曲がりがないことが示された。これにより、顔料インクおよび染料インクが混合されても、顔料の凝集が生じにくいことが示された。
一方、表25の比較例1〜4のインクセットは、いずれも顔料インクに含まれる金属イオン(第1金属イオン)の極限当量伝導率が染料インクに含まれる金属イオン(第2金属イオン)の極限当量伝導率以下である。そのため、吐出安定性試験において、ノズル抜けや飛行曲がりが発生した。これにより、顔料インクおよび染料インクの混合により、顔料の凝集が生じていることが示された。なお、顔料の凝集は、ノズル面のワイピング時に多く発生したほか、染料インクの吐出時における染料インクの飛沫が顔料インクを吐出するノズル孔に付着することによっても発生した。
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成または同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。