以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図1に本発明に係る軌道走行車両の一例として軌陸作業車1を示している。軌陸作業車1は、運転キャブ11を有するトラック車両をベースに構成された走行体10と、この走行体10上に設けられた垂直昇降装置20と、この垂直昇降装置20に支持された作業者搭乗用の作業台30とを有して構成されている。
走行体10は、車体の前後左右に道路走行用車輪であるタイヤ車輪12を備えるとともに、車体内部にエンジン(図示せず)を備えており、このエンジンによりタイヤ車輪12を駆動して道路上を走行することができるようになっている。また、走行体10は、車体の前後左右(各タイヤ車輪12の後側)に鉄輪支持部材13を介して軌道走行用車輪である鉄輪15を備え、前側左右の鉄輪15に左および右側走行油圧モータ16L,16R(図2を参照)の回転駆動軸が接続されており、この左および右側走行油圧モータ16L,16Rにより前側左右の鉄輪15を駆動して軌道(鉄道レール)R上を走行することができるようになっている。
鉄輪支持部材13は、走行体10に上下方向に揺動自在に支持され、走行体10の内部に設けられた鉄輪張出シリンダ(油圧シリンダ)の伸縮作動により上下に揺動されて鉄輪15をタイヤ車輪12より下方に張り出したり上方に格納したりできるようになっている。このように鉄輪15を張り出したり格納したりするため(軌陸作業車1を軌道上へ載せ換え移動するため)、走行体10は、車体の中央下部に転車台17を備えるとともに、内部に転車台張出シリンダ(油圧シリンダ)を備えており、この転車台張出シリンダの伸縮作動により転車台17を下方に張り出して軌陸作業車1を持ち上げた状態(タイヤ車輪12が地面から浮いた状態)とすることができるようになっている。
走行体10の前部には、左右一対の前照灯(ヘッドライト)14が設けられており、走行体10の後部には、尾灯および制動灯が一体となって形成された左右一対の尾灯兼制動灯(テール・ブレーキランプ)18が設けられている。これらのランプは、車両バッテリからの電源を受け、通常は運転キャブ11の運転席に設けられた照明灯スイッチや、ブレーキペダル等の操作に応じて作動する制動スイッチの操作により点灯するようになっている。また、前照灯14は、照明灯スイッチの操作によりハイビーム(水平照明)とロービーム(下方照明)とを切り替えて点灯させることができるようになっている。また、走行体10には、軌道R上を走行する際の車両の発進時に警報音を発する発進ブザー19(図2を参照)が設けられている。
垂直昇降装置20は、運転キャブ11後方の走行体10上に架装フレーム21を介して車幅方向に一対に設けられ、2本のリンクバーを交差させてその交点を回動自在に連結したシザースリンク機構(図示せず)と、このシザースリンク機構と架装フレーム21に跨って設けられた昇降シリンダ(油圧シリンダ)とを有して構成され、昇降シリンダの伸縮作動によりシザースリンク機構の上端部に取り付けられた作業台30を昇降移動させることができるようになっている。なお、垂直昇降装置20(昇降シリンダ)の作動は、走行体10および作業台30にそれぞれ設けられた作業操作装置(図示せず)によって作動操作することができるようになっている。
このような構成の軌陸作業車1では、軌道R上を走行して目的地まで移動し、垂直昇降装置20を作動させて作業台30を所望の高所位置に移動させ、その位置において車両を停車させたまま、もしくは軌道R上を走行しながら、作業台30に搭乗した作業者が軌道R上の張架線やトロリ線等の鉄道設備の工事等を行うことができる。なお、一般道路走行時の運転は運転キャブ11内より行うが、軌道R上を走行する際の運転は運転キャブ11内のほか、作業台30上からも行うことができるようになっている。以下に、この軌陸作業車1が軌道R上を走行する際の走行制御装置50について図2を参照して説明する。
走行制御装置50は、軌道R上を走行する際の走行操作を行うための走行操作装置40と、走行操作装置40から入力される操作信号に応じて後述する走行油圧回路60に作動制御信号を出力するコントローラ51とを有して構成される。
走行操作装置40は、電源スイッチ41と、走行速度設定ダイヤル42と、駐車ブレーキ操作レバー43と、走行操作レバー44と、走行モード切替スイッチ45とを有して構成されており、運転キャブ11内および作業台30にそれぞれ設けられている。電源スイッチ41をON操作すると、電源スイッチ操作検出器41aから電源ON信号がコントローラ51に入力され、走行操作装置40が電源側と電気的に接続されて作業者による走行操作が可能となるように構成されている。
走行速度設定ダイヤル42は、所定の範囲内で右回り(時計回り)あるいは左回り(反時計回り)に捻り操作可能なダイヤルであり、走行操作装置40による軌道走行時の最高速度を設定可能に構成されている。走行速度設定ダイヤル42の操作状態(捻り操作位置)は速度設定操作検出器42aによって検出されるようになっており、走行速度設定ダイヤル42を捻り操作すると、速度設定操作検出器42aから、その捻り操作位置に対応した設定最高速度信号がコントローラ51に入力されるようになっている。
駐車ブレーキ操作レバー43は、後述する駐車ブレーキ装置95により左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸をロックさせる、あるいはそのロックを解除させるための操作レバーである。駐車ブレーキ操作レバー43の操作状態は駐車ブレーキ操作検出器43aによって検出されるようになっており、駐車ブレーキ操作レバー43をロック位置に移動操作すると駐車ブレーキ操作検出器43aから駆動軸ロック信号がコントローラ51に入力され、駐車ブレーキ操作レバー43をロック解除位置に移動操作すると、駐車ブレーキ操作検出器43aから駆動軸ロック解除信号がコントローラ51に入力されるようになっている。
走行操作レバー44は、非操作状態において中立位置に位置し、この中立位置を基準に前方あるいは後方に傾動操作することができるようになっており、傾動操作状態から手を放したときには、内蔵されたスプリングの力によって自動で中立位置に復帰するように構成されている。走行操作レバー44の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)は走行操作検出器44aによって検出されるようになっており、走行操作検出器44aが検出した走行操作レバー44の操作状態の情報(走行操作信号)はコントローラ51に入力されるようになっている。走行操作レバー44の中立位置よりも前方への傾動操作は走行体10の進行方向を前進に設定し、中立位置よりも後方への傾動操作は走行体10の進行方向を後進に設定し、それぞれの進行方向に対して傾動操作量に対応する走行速度を設定する指令に相当する。なお、このとき設定される走行速度は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設定された最高速度までの範囲内で設定される。また、走行操作レバー44を中立位置に復帰させる操作は走行体10を停止させる指令に相当する。
ところで、軌陸作業車1では、左および右側走行油圧モータ16L,16Rに対して直列に作動油を供給することで左および右側走行油圧モータ16L,16Rを高速回転駆動させて軌道R上を走行する高速走行モードと、左および右側走行油圧モータ16L,16Rに対して並列に作動油を供給することで左および右側走行油圧モータ16L,16Rを低速回転駆動させて軌道R上を走行する低速走行モードとを有しており、走行モード切替スイッチ45により高速走行モードと低速走行モードとを切替設定可能に構成されている。走行モード切替スイッチ45を切替操作すると、走行モード切替操作検出器45aから走行モード切替信号がコントローラ51に入力されるようになっている。
走行体10には、電動モータや小型のエンジン等からなる動力源PSにより駆動されて作動油を吐出する走行油圧ポンプ61と、油圧ポンプPからの作動油を受けて回転作動する左および右側走行油圧モータ16L,16Rと、走行油圧ポンプ61からの作動油の流量を略半分ずつに分流・集流させる分集流弁63と、走行油圧ポンプ61からの作動油を左および右側走行油圧モータ16L,16Rに対して並列に供給させるか直列に供給させるかを切り換える流路切換手段65とが設けられており、これらは油路71〜81により連結されて走行油圧回路60を形成している。
走行油圧ポンプ61は、斜板式可変容量型の油圧ポンプであり、その斜板の傾転方向および傾転角度の制御は斜板制御アクチュエータ62により行われるようになっている。斜板制御アクチュエータ62は、コントローラ51から送られる作動制御信号に基づいて作動が制御される。走行油圧ポンプ61の一方の吸込吐出口は、油路71を介して分集流弁63のPポートに接続され、走行油圧ポンプ61の他方の吸込吐出口は、油路80を介して左および右側走行油圧モータ16L,16Rのいずれかの吸込吐出口(本実施形態では、右側走行油圧モータ16Rの一方の吸込吐出口)に接続されている。
分集流弁63は、Pポートを入口、AおよびBポートを出口とした場合に分流弁として機能し、油路71を介してPポートから流入した走行油圧ポンプ61からの作動油の流量を略半分ずつに分流させてAおよびBポートそれぞれから流出させるように構成されている。すなわち、AおよびBポートから流出する作動油の流量はそれぞれ、走行油圧ポンプ61から吐出される作動油の流量の略半分となる。また、分集流弁63は、AおよびBポートを入口、Pポートを出口とした場合に集流弁として機能し、AおよびBポートからそれぞれ流入した作動油を合流させてPポートから流出させるように構成されている。
流路切換手段65は、電磁制御式の4ポート2位置切換弁である第1流路切換弁65aおよび第2流路切換弁65bから構成されており、第1および第2流路切換弁65a,65bは、コントローラ51からの作動制御信号に基づいて作動が制御される。第1流路切換弁65aは、非励磁状態ではPポート、Tポート、AポートおよびBポートが全て閉じており、励磁状態ではPポートとAポートが通じ、BポートとTポートが通じるようになっている。第2流路切換弁65bは、非励磁状態ではPポートとAポートが通じ、BポートとTポートが通じており、励磁状態ではPポートとTポートが閉じ、AポートとBポートが通じるようになっている。
分集流弁63のAポートは、油路72を介して第1流路切換弁65aのPポートに接続され、油路72から分岐した油路73を介して第2流路切換弁65bのPポートに接続されている。分流流弁63のBポートは、油路74を介して左側走行油圧モータ16Lの一方の吸込吐出口に接続されている。第1流路切換弁65aのAポートは、油路75を介して油路74に接続されている。左側走行油圧モータ16Lの他方の吸込吐出口は、油路76を介して第1流路切換弁65aのBポートに接続され、油路76から分岐した油路77を介して第2流路切換弁65bのBポートに接続されている。第2流路切換弁65bのAポートは、油路79を介して右側走行油圧モータ16Rの一方の吸込吐出口に接続されている。第1流路切換弁65aのTポートは、油路78を介して油路79に接続されている。右側走行油圧モータ16Rの他方の吸込吐出口は、油路80を介して走行油圧ポンプ61の油路71とは反対側の吸込吐出口に接続されている。第2流路切換弁65bのTポートは、油路81を介して油路80に接続されている。
また、走行体10には、走行油圧ポンプ61と同様に駆動源PSにより駆動されるブレーキ用油圧ポンプ91が設けられており、このブレーキ用油圧ポンプ91から吐出される作動油は、各鉄輪15の近傍にそれぞれ設けられたブレーキ装置92と、左および右側走行油圧モータ16L,16Rの内部にそれぞれ設けられた駐車ブレーキ装置95とに供給されるようになっている。
ブレーキ装置92は、シリンダ92aと、シリンダ92a内に張出格納自在に設けられたピストン92bと、ピストン92bの先端に設けられたディスク92cと、シリンダ92a内に設けられてピストン92bを格納方向(図2の場合には上方)に付勢するピストンバネ92dとを有して構成される。そして、ブレーキ用油圧ポンプ91からの作動油が油路82を介してシリンダ92aのシリンダ室に供給されると、ピストン92bはピストンバネ92dによる付勢力に抗して張出方向(図2の場合には下方)に移動し、ディスク92cを鉄輪15に押圧させて鉄輪15の制動を行うようになっている。
油路82から分岐して、油タンクTと繋がる油路87へそれぞれ繋がる油路83,84には、リリーフ弁93とシャットオフ弁94とがそれぞれ設けられている。リリーフ弁93は、電磁制御式の弁であり、コントローラ51からの作動制御信号に基づいて作動が制御される。リリーフ弁93は、非励磁状態であるときには完全に弁を開き、コントローラ51からの作動制御信号により励磁されるとその作動制御信号に応じて弁を比例的に絞るようになっている。また、リリーフ弁93は、弁を完全に閉じた状態では、油圧が所定圧以上になると弁を開いて作動油をリリーフさせるようになっている。
シャットオフ弁94は、電磁制御式の弁であり、コントローラ51からの作動制御信号に基づいて作動が制御される。シャットオフ弁94は、非励磁状態であるときには図2に示すように油路84を閉じ、コントローラ51からの作動制御信号により励磁されると油路84を開くようになっている。ブレーキ装置92は、このようにしてリリーフ弁93およびシャットオフ弁94により作動油のリリーフ圧を制御することで油路82の油圧を制御して、その作動が制御されるようになっている。
駐車ブレーキ装置95は、シリンダ95aと、シリンダ95a内に張出格納自在に設けられたピストン95bと、ピストン95bの先端に設けられたディスク95cと、シリンダ95a内に設けられてピストン95bを張出方向(図2の場合には上方)に付勢するピストンバネ95dとを有して構成されている。そして、駐車ブレーキ装置95に油圧が供給されていないときには、ピストン95bはピストンバネ95dに押されて張出方向へ移動し、ディスク95cが左および右側走行油圧モータ16L,16Rの内部に設けられた多板ブレーキ(図示せず)を押圧して、左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸がロックされるようになっている。
一方、ブレーキ用油圧ポンプ91からの作動油が油路82から分岐した油路85および油路86を介してシリンダ95aのシリンダ室内に供給されると、ピストン95bはピストンバネ95dの付勢力に抗して格納方向(図2の場合には下方)に移動し、ディスク95cが多板ブレーキから離れて左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックが解除されるようになっている。
油路85と油路86の間には駐車ブレーキ制御弁96が設けられている。駐車ブレーキ制御弁96は、電磁制御式のバルブであり、コントローラ51からの作動制御信号に基づいて作動が制御される。駐車ブレーキ制御弁96は、非励磁状態であるときには図2に示すように油路85の一端を閉鎖状態にするとともに、油路86と油タンクTに繋がる油路87とを接続し、コントローラ51からの作動制御信号により励磁されると油路87の一端を閉鎖状態にするとともに、油路85と油路86とを接続するようになっている。駐車ブレーキ装置95は、このようにして駐車ブレーキ制御弁96により油路85と油路86との断接制御を行ってその作動が制御されるようになっている。
このような構成の走行制御装置50によれば、運転キャブ11もしくは作業台30内の走行操作装置40を作業者が操作して軌道R上を走行するときには、まず、電源スイッチ41をON操作して走行操作装置40による走行操作を可能にした後、駐車ブレーキ操作レバー43を操作して駐車ブレーキ装置95による左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックを解除する。このとき、駐車ブレーキ操作検出器43aからコントローラ51にオフ信号が入力され、コントローラ51は駐車ブレーキ制御弁96に油路85と油路86を接続させる作動制御信号を出力し、駐車ブレーキ装置95に作動油が供給されて左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックが解除される。
また、駐車ブレーキ操作レバー43が操作されて、駐車ブレーキ操作検出器43aから駐車ブレーキ装置95による左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックを解除する信号がコントローラ51に入力されると、コントローラ51は、前照灯14および尾灯兼制動灯18に点灯制御信号を出力し、前照灯14および尾灯兼制動灯18を点灯させる。またこのとき、コントローラ51は、発進ブザー19に警報制御信号を出力し、発進ブザー19から警報音を発生させる。
このように駐車ブレーキ操作レバー43が操作されて駐車ブレーキ装置95による各走行油圧モータのロックが解除されたとき、すなわち軌陸作業車1を発進させようとしたとき(車両発進時の直前)に、前照灯14および尾灯兼制動灯18を点灯させるとともに、発進ブザー19により警報音を発生させるようになっているため、車両の周りに作業者が居るような場合であっても、その作業者に対して車両が発進することを報知して車両から離れるように促すことができるので、作業者に対する安全性を向上させることができる。
また、例えば夜間等であって、前照灯14および尾灯兼制動灯18が既に点灯されている場合には、コントローラ51は、前照灯14および尾灯兼制動灯18に点滅制御信号を出力し、前照灯14および尾灯兼制動灯18を点滅させる。もしくは、コントローラ51は、前照灯14にハイ/ロー切替制御信号を出力し、前照灯14においてハイビーム(水平照明)とロービーム(下方照明)とを切り替えて交互に点灯させるパッシングを行う。このように軌陸作業車1を発進させようとしたときに、前照灯14および尾灯兼制動灯18を点滅させる、もしくは前照灯14においてパッシングを行うとともに、発進ブザー19により警報音を発生させるようになっているため、前照灯14および尾灯兼制動灯18が既に点灯されている夜間等の場合であっても、車両の周りに居る作業者に対して車両が発進することを報知することができる。
なお、尾灯兼制動灯18もハイビームとロービームとを切り替えて点灯できるように構成し、前照灯14においてパッシングを行うときに、尾灯兼制動灯18においてもハイビームとロービームとを切り替えて交互に点灯させるパッシングを行うようにしてもよい。
このような軌陸作業車1を発進させようとしたときの前照灯14および尾灯兼制動灯18の点灯、点滅またはパッシングは、これらの制御開始から所定時間が経過するまで、もしくは車両が発進して所定速度になるまで継続され、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、元の状態となるように制御される。すなわち、駐車ブレーキ操作レバー43が操作される以前に、前照灯14および尾灯兼制動灯18が点灯されていなかった場合には、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、前照灯14および尾灯兼制動灯18が消灯され、前照灯14および尾灯兼制動灯18が既に点灯されていた場合には、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、前照灯14および尾灯兼制動灯18が点灯状態となる。
駐車ブレーキ装置95による各走行油圧モータのロックが解除されると、次に、走行速度設定ダイヤル42を捻り操作して所望の最高速度を設定する。このとき、速度設定操作検出器42aからコントローラ51へ設定最高速度信号が入力される。そして、走行操作レバー44を前方もしくは後方へ傾動操作する。このとき、走行操作検出器44aから走行操作レバー44の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)の情報がコントローラ51に入力され、コントローラ51は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設定された最高速度までの範囲内で走行操作レバー44の傾動操作量に応じた作動制御信号を斜板制御アクチュエータ62に出力して走行油圧ポンプ61の斜板を傾動させ、走行油圧ポンプ61から作動油が供給されて左および右側走行油圧モータ16L,16Rが回転する。すなわち、左および右側走行油圧モータ16L,16Rにより鉄輪15,15が回転して軌陸作業車1が軌道R上を走行する。
なお、走行操作レバー44を前方へ傾動させると、走行操作検出器44aからコントローラ51に前進走行操作信号が入力され、コントローラ51は斜板制御アクチュエータ62に軌陸作業車1が前進するように走行油圧ポンプ61の斜板を傾転させる作動制御信号を出力する。また、走行操作レバー44を後方へ傾動させると、走行操作検出器44aからコントローラ51に後進走行操作信号が入力され、コントローラ51は斜板制御アクチュエータ62に軌陸作業車1が後進するように走行油圧ポンプ61の斜板を傾転させる作動制御信号を出力する。
軌陸作業車1の走行速度は、走行操作レバー44の操作量(傾動量)を変化させることにより、走行油圧ポンプ61の斜板の傾転角度を変化させ、走行油圧ポンプ61から吐出され左および右側走行油圧モータ16L,16Rに供給される作動油の流量を変化させることにより制御される。軌陸作業車1の走行速度は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設定された最高速度までの範囲内で走行操作レバー44の操作量に応じた速度となる。
また、作業者が走行操作装置40を操作して軌道R上を走行するときには、走行モード切替スイッチ45により高速走行モードと低速走行モードとに切替可能になっている。走行モード切替スイッチ45を低速走行モードに切り替えると、走行モード切替操作検出器45aからコントローラ51に低速走行モード切替信号が入力され、コントローラ51は第1および第2流路切換弁65a,65bのソレノイドを非励磁状態として第1および第2流路切換弁65a,65bを図2に示す左方の切換位置に切り換える。そうすると、走行油圧ポンプ61に対して左および右側走行油圧モータ16L,16Rが並列に接続された並列油圧回路が構成され、左および右側走行油圧モータ16L,16Rに対して並列に作動油が供給されることにより、軌陸作業車1は高トルク低速走行を行う。
一方、走行モード切替スイッチ45を高速走行モードに切り替えると、走行モード切替操作検出器45aからコントローラ51に高速走行モード切替信号が入力され、コントローラ51は第1および第2流路切替弁65a,65bに作動制御信号を出力して各ソレノイドを励磁状態とし、第1および第2流路切換弁65a,65bを図2に示す右方の切換位置に切り換える。そうすると、走行油圧ポンプ61に対して左および右側走行油圧モータ16L,16Rが直列に接続された直列油圧回路が構成され、左および右側走行油圧モータ16L,16Rに対して直列に作動油が供給されることにより、軌陸作業車1は低トルク高速走行を行う。
軌道R上を走行する軌陸作業車1を停止させるには、走行操作レバー44を中立位置に復帰させる。このとき、走行操作検出器44aからコントローラ51に走行停止信号が入力され、コントローラ51は斜板制御アクチュエータ62に走行油圧ポンプ61の吐出量を零にする作動制御信号を出力し、左および右側走行油圧モータ16L,16Rへの作動油の供給を停止させるとともに、シャットオフ弁94に油路84を開放させる作動制御信号を出力し、リリーフ弁93に所定量弁を絞らせる作動制御信号を出力して、ブレーキ装置92へブレーキ用油圧ポンプ91からの作動油を供給し、ブレーキ装置92に所定ブレーキ圧による鉄輪15の制動を行わせる。
リリーフ弁93およびシャットオフ弁94への作動制御信号の出力は、制動開始から所定時間(例えば、15秒程度)行われ、この所定時間が経過すると、コントローラ51はシャットオフ弁94に油路84を閉鎖させる作動制御信号を出力し、リリーフ弁93に完全に弁を開かせる作動制御信号を出力して、ブレーキ装置92への作動油の供給を停止させる。また、制動開始から所定時間(例えば、10秒程度)経過後に、コントローラ51は駐車ブレーキ制御弁96に油路85と油路86とを遮断して駐車ブレーキ装置95への作動油の供給を停止させる作動制御信号を出力し、駐車ブレーキ装置95により左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸をロックさせる。これにより、軌陸作業車1は停止状態となる。
このように構成された軌陸作業車1は、作業目的地までの移動または架線作業等において単独で軌道R上を走行する場合もあるが、図3に示すように、複数の車両を連結させた状態で軌道R上を走行する場合もある。軌陸作業車100は、運転キャブ111を有するトラック車両をベースに構成された走行体110を有して構成されており、車体内部のエンジンにより車体の前後左右に設けられたタイヤ車輪112を駆動して道路上を走行することができるようになっている。また、軌陸作業車100は、車体の前後左右に鉄輪支持部材113を介して鉄輪115を備え、左および右側走行油圧モータ16L,16R(図2を参照)により前側左右の鉄輪115を駆動して軌道R上を走行することができるようになっている。
走行体110の前部には、左右一対の前照灯(ヘッドライト)114が設けられており、走行体110の後部には、尾灯および制動灯が一体となって形成された左右一対の尾灯兼制動灯(テール・ブレーキランプ)118が設けられている。これらのランプは、車両バッテリからの電源を受け、通常は運転キャブ111の運転席に設けられた照明灯スイッチや、ブレーキペダル等の操作に応じて作動する制動スイッチの操作により点灯するようになっている。また、前照灯114は、照明灯スイッチの操作によりハイビーム(水平照明)とロービーム(下方照明)とを切り替えて点灯させることができるようになっている。また、走行体110には、軌道R上を走行する際の車両の発進時に警報音を発する発進ブザー119(図2を参照)が設けられている。
走行体110上には、高所作業装置120、ドラム駆動装置130、中央キャビン140が設けられている。高所作業装置120は、運転キャブ111の後側で垂直に立設された入れ子式に伸縮自在な昇降ポスト121と、この昇降ポスト121の上部に取り付けられた作業者搭乗用の作業台122とを有し、昇降ポスト121に内蔵された昇降シリンダ(図示せず)の伸縮作動により作業台122を昇降移動させることができるように構成されている。作業台122内には、作業台122の昇降移動を操作するための昇降操作装置(図示せず)が設けられている。
ドラム駆動装置130は、外周部に架線を巻き付けることが可能なドラム135を回転駆動して架線の繰出し・巻取りを行うように構成されている。ドラム駆動装置130では、軌陸作業車100が前方に走行しながら、巻取り用のドラム135を巻取り方向(図3における時計方向)に回転させて、作業車100の前方上方からの架線をドラム135に巻き取るように作動する。このとき、ドラム駆動装置130は、軌陸作業車100の走行速度に応じた回転速度でドラム135を回転させ、これにより巻き取られる架線に所定範囲内の張力を作用させる。一方、架線を繰り出すときには、新設する架線が巻き付けられたドラム135を繰出し方向に対して逆方向(図3における反時計方向)に回転させて、架線をドラム135から作業車100の後方上方に繰り出すように作動する。このとき、ドラム駆動装置130は、軌陸作業車100の走行速度に応じた回転速度(所定のトルク)でドラム135を上記逆方向に回転させ、これによりドラム135から繰り出される架線に所定範囲内の張力を作用させる。
中央キャビン140は、高所作業装置120とドラム駆動装置130の間に設けられた作業者が搭乗可能な箱状の操作室であり、その内部には作業者が着座するためのオペレータシート(図示せず)と、軌陸作業車100の軌道R上での走行操作を行うための走行操作装置(上記走行操作装置40と同一構成のものであり、以下では走行操作装置40と称して詳細な説明は省略する)と、高所作業装置120やドラム駆動装置130などの車体上に配設された各装置の作動操作を行うための作業操作装置(図示せず)とが配設されている。中央キャビン140は車体上において180度の水平旋回が可能に設けられており、中央キャビン140に搭乗した作業者は、旋回モータ(図示せず)を作動させて中央キャビン140を水平旋回させることで、車両の前方もしくは後方を向いた状態で各種操作入力を行うことができるようになっている。なお、走行操作装置40は、中央キャビン140内の他に、運転キャブ111内にも設けられており、軌陸作業車100では、軌道R上を走行する際の運転を運転キャブ111内および中央キャビン140のいずれからでも行うことができるようになっている。
軌陸作業車100は、上述した軌陸作業車1と同様に、軌道R上を走行する際の走行操作を行うための走行操作装置40と、走行油圧回路60と、走行操作装置40から入力される操作信号に応じて走行油圧回路60に作動制御信号を出力するコントローラ51とを有する走行制御装置50を備えて構成されている(図2を参照)。これらの構成については、上述した構成と同一であるため、同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、軌陸作業車200は、上述した軌陸作業車1と同一車両であるため、この軌陸作業車200の構成についても、同一符号を付して詳細な説明を省略する。
以上のように構成された軌陸作業車1,100,200は、図3に示すように、連結棒55および各作業車の前後に配設された連結手段56,156を用いてそれぞれ連結される。連結棒55は、容易に曲がったり伸縮したりしない金属製の棒状部材からなり、各作業車に配設された連結手段56,156に架設して固定される。連結棒55の内部には、車両間にて各々の車両情報を相互通信可能とするための通信ケーブル(図示せず)が設けられており、連結棒55を用いて軌陸作業車1,100,200が連結されると、この通信ケーブルを介して各作業車の走行制御装置50が接続され各車両情報を相互通信可能になる。
連結手段56,156は、連結棒55を固定するための固定金具と、この固定金具に連結棒55が取り付けられて他車両が連結されたか否かを検出する連結検出器57,157(図2を参照)を有して構成され、走行体10,110の前部および後部にそれぞれ設けられている。連結検出器57,157は、上記通信ケーブルと接続可能な連結コネクタ58,158(図4を参照)を有して構成され、このコネクタに通信ケーブルが接続されると、他車両が連結された旨の検出信号(車両連結信号)を自車両の走行制御装置50に出力するようになっている。連結コネクタ58,158は、図4に示すように、自車両の前後に他車両の前部および後部のいずれが連結されているか(自車両の前後連結状態)を検出するために、前部検出用の第1ポートAと、後部検出用の第2ポートBと、その他の情報通信用の第3ポートCとを有して構成されている。なお、この3つのポートに対応して連結棒55内の通信ケーブルも3本の信号線を備えている。
次に、自車両の前後連結状態の検出方法については説明する。各作業車に設けられた走行制御装置50は、自車両の前後連結状態、および、連結台数毎にその台数の連結組合せが予め記憶されているメモリ52を備えている。コントローラ51は、車両前後の連結検出器57,157から入力される車両連結信号に基づいて、当該連結手段56,156において他車両が連結されているか否かを認識するとともに、連結を認識すると他車両の走行制御装置(コントローラ)に対して連結認識信号を出力する。このとき、車両前部の連結手段56,156においては連結コネクタ58,158の第1ポートAを介して連結認識信号が他車両に出力され、車両後部の連結手段56,156においては連結コネクタ58,158の第2ポートBを介して連結認識信号が他車両に出力されるようになっている。このポートの違いにより、他車両の走行制御装置では、相手の車両の前後いずれが連結されているかを認識することができる。同様に、コントローラ51では、他車両の走行制御装置から連結コネクタ58,158の第1ポートAもしくは第2ポートBを介して連結認識信号が入力され、このポートの違いにより自車両の前後に他車両の前後いずれが連結されているか(自車両の前後連結状態)を認識することができる。
メモリ52には、自車両の前後連結状態の全パターンを示す前後連結状態テーブルBT(図5を参照)と、連結台数毎にその台数の連結組合せの全パターンを示す連結組合せテーブルVT(図6を参照)とが予め記憶されている。
図5に示すように、前後連結状態テーブルBTは、自車両の前後連結状態の全パターンを示す表であり、表の最も右側(前後連結状態)の列に示すようにこの前後連結状態は全8通りである(前後連結状態=0〜7)。ここで、FF列は自車両の前部に他車両の前部が連結されているか否か、FR列は自車両の前部に他車両の後部が連結されているか否か、RF列は自車両の後部に他車両の前部が連結されているか否か、RR列は自車両の後部に他車両の後部が連結されているか否かを示す列である。コントローラ51は、上記のように自車両の前後連結状態を認識すると、この前後連結状態テーブルBTから前後連結状態=0〜7のいずれであるかを判断し、その状態ナンバーによって前後連結状態を認識する。例えば、自車両の前部に他車両の後部が連結され、自車両の後部に他車両の前部が連結されている場合、コントローラ51は前後連結状態=4と認識する。また、自車両の前部に他車両の前部が連結され、自車両の後部に他車両の前部が連結されている場合、コントローラ51は前後連結状態=7と認識する。
図6に示すように、連結組合せテーブルVTは、連結台数が3台の場合の連結組合せの全パターンを示す表であり、3台連結の場合は全8種類の組合せである。ここで、連結組合せとは、上述の各車両における前後連結状態を車両連結順に組合せたものである。この表における連結方向の列は、各車両の向き(連結方向)の情報を符号の違い(「1」または「−1」)で示しており、同一符号の車両は同じ向きであり、符号の異なる車両は逆向きである。なお、メモリ52には、この3台連結のほか、2台連結(全4種類の組合せ)、4台連結(全16種類の組合せ)、5台連結(全32種類の組合せ)、および5台以上の連結の連結組合せテーブルもそれぞれ記憶されている。
以上のように構成される軌陸作業車1,100,200を図3に示すように連結して鉄道レールR上を走行する際の各作業車の走行制御装置50による走行制御について以下に説明する。連結棒55および連結手段56,156を用いて3台の軌陸作業車1,100,200を連結すると、まず、各作業車において自車両の前後連結状態が検出(認識)される。
このとき、軌陸作業車1においては、車両後部の連結検出器57からコントローラ51に車両連結信号が入力されるが、車両前部の連結検出器57からコントローラ51への信号入力はない。これと同時に、コントローラ51は、作業車100のコントローラ51に対して連結コネクタ58,158の第2ポートBを介して連結認識信号を出力するとともに、作業車100のコントローラ51から第1ポートAを介して連結認識信号が入力される。これにより、作業車1のコントローラ51は、自車両の前部には他車両の連結がなく、自車両の後部に作業車100の前部が連結されていると認識し、メモリ52内の前後連結状態テーブルBTから前後連結状態=1であると認識する。
また、軌陸作業車100においては、車両前後の連結検出器157,157からコントローラ51に車両連結信号がそれぞれ入力される。これと同時に、コントローラ51は、作業車1のコントローラ51に対して連結コネクタ158,58の第1ポートAを介して連結認識信号を出力し、作業車200のコントローラ51に対して連結コネクタ158,58の第2ポートBを介して連結認識信号を出力するとともに、作業車1のコントローラ51から第2ポートBを介して連結認識信号が入力され、作業車200のコントローラ51から第2ポートBを介して連結認識信号が入力される。このようにポートの違いによって、作業車100のコントローラ51は、自車両の前部に作業車1の後部が連結され、自車両の後部に作業車200の後部が連結されていると認識し、メモリ52内の前後連結状態テーブルBTから前後連結状態=3であると認識する。
また、軌陸作業車200においては、車両後部の連結検出器57からコントローラ51に車両連結信号が入力されるが、車両前部の連結検出器57からコントローラ51への信号入力はない。これと同時に、コントローラ51は、作業車100のコントローラ51に対して連結コネクタ58,158の第2ポートBを介して連結認識信号を出力するとともに、作業車100のコントローラ51から第2ポートBを介して連結認識信号が入力される。これにより、作業車200のコントローラ51は、自車両の前部には他車両の連結がなく、自車両の後部に作業車100の後部が連結されていると認識し、メモリ52内の前後連結状態テーブルBTから前後連結状態=0であると認識する。
次に、各作業車において、連結台数(連結された合計車両数)および連結番号(連結順序位置)をそれぞれ入力する。このとき、各車両において作業者は、走行操作装置40に設けられた連結台数選択ボリューム(図示せず)によって連結台数(ここでは3台)を選択入力するとともに、走行操作装置40に設けられた連結順序選択ボリューム(図示せず)によって当該車両の連結番号を選択入力する。なお、この連結番号は、連結された全車両の先頭もしくは最後尾から順になるように入力される。以下の説明では、図5に示すように、軌陸作業車1を1号車、軌陸作業車100を2号車、軌陸作業車200を3号車と入力した場合について説明する。
各作業車において、前後連結状態の検出と、連結台数および連結番号の入力とが終了すると、これらの情報に基づいて連結組合せ(前後連結状態の組合せ)を検出し、この組合せがメモリ52に記憶されている連結組合せテーブルVTに存在するか否かを判定する。各作業車のコントローラ51では、各車両において検出された前後連結状態を、各車両の連結順序選択ボリュームから入力された連結番号順に組み合わせて連結組合せを検出し、その連結組合せがメモリ内の連結組合せテーブルVTに存在するか否かを判定する。ここでは、1号車(作業車1)から順に{1,3,0}という連結組合せとなり、図6において楕円Aで示すように、この組合せは連結組合せテーブルVTに存在している。
このように組合せが連結組合せテーブルVTに存在する場合に、各作業車のコントローラ51は、車両の走行を許可する。このとき、作業者は、連結された作業車1,100,200におけるいずれの走行操作装置40からでも走行操作を行うことが可能となる。ただし、いずれかの走行操作装置で操作を開始した時点で、それ以外の操作装置による操作入力が規制される。なお、各走行操作装置に優先スイッチを設け、この優先スイッチの操作された走行操作装置の操作のみが有効となるように構成してもよい。また、各作業車のコントローラ51では、検出した連結組合せ情報(連結組合せテーブルVTの連結方向)から操作車両に対する自車両の向き(連結方向)を認識し、これより操作車両からの走行操作信号(指令値)に対して自車両がどちらに進めばよいかを判断することができ、全車両を確実に同じ進行方向に走行させることができる。
なお、軌陸作業車200を1号車、軌陸作業車100を2号車、軌陸作業車1を3号車と入力した場合、1号車(作業車200)から順に{0,3,1}という組合せになるが、図6において楕円Bで示すように、この組合せも連結組合せテーブルVTに存在している。そのため、連結番号は、連結された全車両の先頭もしくは最後尾から順になるように入力すればよいことが分かる。
例えば、上記の{1,3,0}という連結組合せにおいて、軌陸作業車100(2号車)の走行操作装置40を操作して軌陸作業車1(1号車)が先頭となる方向(図3における左方)に連結車両を走行させる場合、各作業車のコントローラ51は、上記連結組合せ情報(連結組合せテーブルVTの連結方向)から、「同符号」である作業車1(1号車)と作業車100(2号車)とは同じ向きに連結されており、「異なる符号」である作業車200(3号車)は作業車1,100と逆向きに連結されていると判断する。
そして、電源スイッチ41をON操作して走行操作装置40による走行操作を可能にした後、駐車ブレーキ操作レバー43を操作して駐車ブレーキ装置95による左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックを解除する。このとき、駐車ブレーキ操作検出器43aから各作業車のコントローラ51にそれぞれオフ信号が入力され、各作業車においてコントローラ51は駐車ブレーキ制御弁96に油路85と油路86を接続させる作動制御信号を出力し、駐車ブレーキ装置95に作動油が供給されて左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックが解除される。
また、駐車ブレーキ操作レバー43が操作されて、駐車ブレーキ操作検出器43aから駐車ブレーキ装置95による左および右側走行油圧モータ16L,16Rの鉄輪駆動軸のロックを解除する信号が各作業車のコントローラ51にそれぞれ入力されると、各作業車においてコントローラ51は、自車両における前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118を点灯させる。またこのとき、各作業車においてコントローラ51は、自車両における発進ブザー19,119に警報制御信号を出力し、発進ブザー19,119から警報音を発生させる。
このように駐車ブレーキ操作レバー43が操作されて駐車ブレーキ装置95による各走行油圧モータのロックが解除されたとき、すなわち軌陸作業車1,100,200(連結車両)を発進させようとしたとき(連結車両発進時の直前)に、連結車両における全ての前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118を点灯させるとともに、発進ブザー19,119により警報音を発生させるようになっているため、車両間に居る作業者や車両の進行方向側に居る作業者に対して連結車両が発進することを報知して連結車両から離れるように促すことができるので、作業者に対する安全性を向上させることができる。
また、例えば夜間等であって、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が既に点灯されている場合には、各作業車のコントローラ51は、自車両における前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118に点滅制御信号を出力し、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118を点滅させる。もしくは、各作業車のコントローラ51は、前照灯14,114にそれぞれハイ/ロー切替制御信号を出力し、前照灯14,114においてハイビーム(水平照明)とロービーム(下方照明)とを切り替えて交互に点灯させるパッシングを行う。このように軌陸作業車1,100,200(連結車両)を発進させようとしたときに、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118を点滅させる、もしくは前照灯14,114においてパッシングを行うとともに、発進ブザー19,119により警報音を発生させるようになっているため、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が既に点灯されている夜間等の場合であっても、連結車両の周りに居る作業者に対して連結車両が発進することを報知することができる。
なお、尾灯兼制動灯18,118もハイビームとロービームとを切り替えて点灯できるように構成し、前照灯14,114においてパッシングを行うときに、尾灯兼制動灯18,118においてもハイビームとロービームとを切り替えて交互に点灯させるパッシングを行うようにしてもよい。
このような連結車両を発進させようとしたときの前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118の点灯、点滅またはパッシングは、これらの制御開始から所定時間が経過するまで、もしくは連結車両が発進して所定速度になるまで継続され、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、元の状態となるように制御される。すなわち、駐車ブレーキ操作レバー43が操作される以前に、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が点灯されていなかった場合には、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が消灯され、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が既に点灯されていた場合には、当該所定時間が経過した後、もしくは当該所定速度以上となったときに、前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118が点灯状態となる。
各作業車において駐車ブレーキ装置95による各走行油圧モータのロックが解除されると、次に、走行速度設定ダイヤル42を捻り操作して所望の最高速度を設定する。このとき、速度設定操作検出器42aから各作業車のコントローラ51へ設定最高速度信号が入力される。そして、走行操作レバー44を前方もしくは後方へ傾動操作する。このとき、走行操作検出器44aから走行操作レバー44の操作状態(中立位置を基準とした操作方向および操作量)の情報が各作業車のコントローラ51に入力され、各作業車においてコントローラ51は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設定された最高速度までの範囲内で走行操作レバー44の傾動操作量に応じた作動制御信号を斜板制御アクチュエータ62に出力して走行油圧ポンプ61の斜板を傾動させ、走行油圧ポンプ61から作動油が供給されて左および右側走行油圧モータ16L,16Rが回転する。すなわち、左および右側走行油圧モータ16L,16Rにより鉄輪15,115が回転して軌陸作業車1,100,200(連結車両)が軌道R上を走行する。
なお、走行操作レバー44を前方へ傾動させると、走行操作検出器44aから各作業車のコントローラ51に前進走行操作信号が入力され、各作業車においてコントローラ51は斜板制御アクチュエータ62に車両が前進するように走行油圧ポンプ61の斜板を傾転させる作動制御信号を出力する。また、走行操作レバー44を後方へ傾動させると、走行操作検出器44aから各作業車のコントローラ51に後進走行操作信号が入力され、各作業車においてコントローラ51は斜板制御アクチュエータ62に車両が後進するように走行油圧ポンプ61の斜板を傾転させる作動制御信号を出力する。
軌陸作業車1,100,200(連結車両)の走行速度は、走行操作レバー44の操作量(傾動量)を変化させることにより、走行油圧ポンプ61の斜板の傾転角度を変化させ、走行油圧ポンプ61から吐出され左および右側走行油圧モータ16L,16Rに供給される作動油の流量を変化させることにより制御される。連結車両の走行速度は、速度ゼロから走行速度設定ダイヤル42により設定された最高速度までの範囲内で走行操作レバー44の操作量に応じた速度となる。
このような連結車両においても、作業者が走行モード切替スイッチ45を操作することにより高速走行モードと低速走行モードとに切替可能になっているが、この各走行モードおよび車両を停止させる場合については、上述の軌陸作業車1が単独で走行する場合と同様の油圧回路構成および作動制御であるため、ここでは詳細な説明を省略する。
これまで本発明に係る実施形態を説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施形態に示したものに限定されない。例えば、上述の実施形態では、駐車ブレーキ操作レバー43が操作されて駐車ブレーキ装置95による各走行油圧モータのロックが解除されたときが、軌陸作業車を発進させようとしたときであると判断して、前照灯および尾灯兼制動灯を点灯等させるように構成されている。しかしながら、駐車ブレーキ操作レバー43が操作されたときではなく、例えば、電源スイッチ41がオン操作されたときや、走行操作レバー44を傾動操作してから実際に車両が発進するまでにタイムラグがある場合には走行操作レバー44が傾動操作されたとき等、他の判断基準をもって軌陸作業車を発進させようとしたときを判断して、前照灯および尾灯兼制動灯を点灯等させるように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、軌陸作業車1を発進させようとしたときに、前照灯14および尾灯兼制動灯18の両方を点灯等させるように構成されているが、前照灯14および尾灯兼制動灯18のうち少なくとも一方の照明灯を点灯等させるように構成すればよい。また、連結車両においても全ての前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118を点灯等させるように構成されているが、連結車両における全ての前照灯14,114および尾灯兼制動灯18,118のうち少なくとも一つの照明灯を点灯等させるように構成すればよい。このように構成すれば、車両の周りに居る作業者に対して車両が発進することを報知して車両から離れるように促すことができる。
また、軌陸作業車1および連結車両において、例えば、走行操作レバーが車両の前後進を切り替える機能を備えず、前後進切替スイッチにより設定された車両の進行方向に走行操作レバーの操作量に応じた走行速度で車両が走行するように構成された場合に、前後進切替スイッチ(前後進切替検出器)から入力される前後進切替信号に基づいて車両の進行方向を検知し、このように検知された車両の進行方向側の照明灯だけを点灯等させるように構成してもよい。このとき、前後進切替スイッチ(前後進切替検出器)が、車両の進行方向を検知する進行方向検知手段として機能する。このように構成すれば、車両の進行方向側に居る作業者に対して車両が発進することをより確実に報知することができる。なお、進行方向検知手段としては、上述の実施形態のように走行操作レバーが車両の前後進を切り替える機能を備えている場合には、この走行操作レバーの操作方向に基づいて車両の進行方向を検知するように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、照明灯および尾灯兼制動灯が既に点灯している場合に、これらの照明灯を点滅させる、もしくはパッシングさせるように構成されているが、照明灯および尾灯兼制動灯が消灯している状態において、軌陸作業車を発進させようとしたときに、照明灯および尾灯兼制動灯を点滅させる、もしくはパッシングさせるように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、軌陸作業車を発進させようとしたときに、前照灯および尾灯兼制動灯を点灯等させるとともに、発進ブザーにより警報音を発生させるように構成されているが、照明灯の点灯等および警報音の発生のいずれか一方だけを行うように構成してもよい。または、照明灯の点灯等および警報音の発生のいずれか一方だけを行うように切り替えることができるスイッチ手段を備えるように構成してもよい。また、発進ブザーにより警報音を発生させる場合には、車両進行方向が前進の場合と後進の場合とで異なる警報音が発進ブザーから発生されるように構成してもよく、このように構成すれば、この警報音の違いにより作業者に対して車両の進行方向を報知することができる。
また、上述の実施形態では、軌陸作業車を発進させようとしたときに、前照灯および尾灯兼制動灯を点灯等させるように構成されているが、点灯等させる照明灯は、前照灯および尾灯兼制動灯に限定されず、例えば、補助灯(フォグランプ)、方向指示器(ウインカー)、車幅灯(スモールランプ)や、その他に車体に別途設けた発進報知用ランプを点灯等させるように構成してもよい。
また、上述の実施形態では、本発明が適用される軌道走行車両の一例として、軌陸作業車について説明したが、本発明は軌陸作業車に限定されるものではなく、軌道上を走行可能な軌道走行車両であれば、本発明を適用することが可能である。