JP2013009031A - 電力増幅回路 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電力増幅回路は、予め定められた周波数の基本波を含む信号を増幅する増幅素子と、増幅素子が増幅した信号に含まれる基本波と、基本波の2倍波と、基本波の3倍波とそれぞれの特性インピーダンスとのインピーダンス整合をとる出力整合回路と、2倍波の反射位相を変化させる2倍波用チューナーと、3倍波の反射位相を変化させる3倍波用チューナーと、出力整合回路が出力する信号に含まれる基本波を通過させるとともに、信号に含まれる2倍波及び3倍波を反射する高調波反射フィルタであって、2倍波用チューナー及び3倍波用チューナーが接続され、2倍波用チューナー及び3倍波用チューナーを用いて2倍波及び3倍波の反射位相を独立に変化させる高調波反射フィルタとを備える。
【選択図】図1
Description
F級増幅器は、後者の設計思想による高効率増幅回路のひとつである。増幅素子の動作波形のピークが平坦化されることは、動作波形の中に高調波成分が含まれることと等価であるため、高調波に対するインピーダンスを適切に制御することによって、動作波形を制御することができる。すなわち、F級動作(F級増幅器)は高調波に対するインピーダンスの制御により増幅素子の動作を高効率にする手法である。
増幅素子を、ゲート電圧によって制御される理想的な電流源とすると、理想的なF級動作は、図5に示されるように、ドレイン電圧(vd)が実線で示された矩形波となり、ドレイン電流(id)が破線で示された半波正弦波となる。同図に示されるように、F級動作を行う増幅素子において、ドレイン電圧とドレイン電流とが共存する時間がないため、増幅素子自身が消費する電力(ドレイン損失)は零となる。したがって、理想的なF級動作を行う増幅素子のドレイン効率は100%となる。
図8は、n=3、m=2のF級動作において2倍波及び3倍波の位相が最適状態からずれた一例を示す波形図である。同図において、実線が示すように、3倍波のドレイン電圧(vd)の位相が最適値からφ3=10°ずれ、2次倍波のドレイン電流(id)の位相が最適値からφ2=21°ずれた場合、ドレイン効率は、58.2%に劣化してしまう。なお、図8において、点線は、高調波の位相が最適状態、すなわちドレイン効率が81.6%となるときのドレイン電圧及びドレイン電流の動作波形を示している。
図9は、高調波における位相のずれφ2、φ3とドレイン効率との関係を示すグラフである。同図において、横軸は位相ずれφ3を示し、縦軸は位相ずれφ2を示している。同図に示すように、高調波位相ずれφ2、φ3が大きくなると、F級増幅器の効率は劣化し、効率に大きな影響を及ぼす。
また、非特許文献2に記載されている高調波リアクション反射型増幅器(HMRA)では、2倍波までの高調波インピーダンスを最適化することが可能な構成であるが、3倍波のインピーダンス最適化のための制御をしておらず、3倍波の位相のずれによりドレイン効率が劣化してしまうという問題がある。
また、本発明は、上記に記載の発明において、前記伝送線路の線路長は、前記波長の24分の5以上であることを特徴とする。
また、電力増幅回路1は、入力整合回路10と、増幅素子11と、出力整合回路12と、高調波反射フィルタ13と、2倍波用可変線路長チューナー14と、3倍波用可変線路長チューナー15とを備えている。
出力整合回路12は、増幅素子11から入力された信号の基本波、2倍波、及び3倍波それぞれの周波数に対してインピーダンス整合をとる。
また、高調波反射フィルタ13には、2倍波用可変線路長チューナー14及び3倍波用可変線路長チューナー15が接続されており、2倍波用可変線路長チューナー14及び3倍波用可変線路長チューナー15を用いて、2倍波及び3倍波の反射位相それぞれを独立に調整することができる。また、高調波反射フィルタ13の後段には、アンテナ等の負荷が接続されている。また、高調波反射フィルタ13は、2倍波用可変線路長チューナー14を接続する2f0端子と、3倍波用可変線路長チューナー15を接続する3f0端子とを有している。
3倍波用可変線路長チューナー15は、線路長が可変であり、先端が短絡又は開放されている伝送線路である。また、3倍波用可変線路長チューナー15は、2倍波用可変線路長チューナー14と同様に、入力インピーダンスが純虚数となっている。
高調波反射フィルタ13は、伝送線路131と、分岐線路132〜137と、共振回路138とを有している。伝送線路131、分岐線路132〜137、及び共振回路138は、例えば、基板上に構成される。
基本波は、2倍波処理部(図2において、フィルタ入力点A〜点C間)をすべて通過する。点Gに共振周波数が基本波の周波数と同一の共振回路138が接続されているので、点Gにおいて短絡となる。したがって、点Fから点Gの側を見込んだインピーダンスは開放となる。
また、分岐線路136による先端開放スタブHIは、基本波に対する分岐線路137による先端開放スタブHJの影響を補償するものである。スタブHJと、スタブHIの線路長の和は、半波長(λ0/2)となっているので、この2つのスタブHJ及びスタブHIは、基本波に影響を与えない。ゆえに、高調波反射フィルタ13は、基本波成分に影響を与えることなく、フィルタ入力点Aに入力された信号の基本波成分をフィルタ出力点Hから出力する。
2倍波の波長は、基本波の半分の波長である。分岐線路133による先端開放スタブBDの線路長は2倍波の半波長であるので、点Bから点Dの側を見込んだインピーダンスは開放である。分岐線路132による線路ABの線路長は2倍波の半波長なので、点Bの2f0端子(2倍波位相調整用端子)に2倍波用可変線路長チューナー14を用いて入力インピーダンスが純虚数の回路を接続すると、フィルタ入力点Aから点Bの側を見込んだインピーダンスも同じ純虚数インピーダンスとなる。
共振回路138は、基本波の周波数以外の周波数に対して開放であり、分岐線路135による線路FGの線路長は、3倍波に対して(3/4)波長であるので、3倍波に対しては(1/4)波長と同じ効果を有する。したがって、点Fから点G側を見込んだインピーダンスは、点Gの3f0端子(3倍波位相調整用端子)に接続されたリアクタンスの逆数に比例した量となり、純虚数となる。
図3(a)は、2倍波用可変線路長チューナー14における線路長L2を2[mm]とし、3倍波用可変線路長チューナー15における線路長L3を0[mm]としたときの入力インピーダンス特性を示している。図3(b)は、2倍波用可変線路長チューナー14における線路長L2を0[mm]とし、3倍波用可変線路長チューナー15における線路長L3を0[mm]としたときの入力インピーダンス特性を示している。図3(c)は、2倍波用可変線路長チューナー14における線路長L2を0[mm]とし、3倍波用可変線路長チューナー15における線路長L3を1.33[mm]としたときの入力インピーダンス特性を示している。
この構成により、2倍波用可変線路長チューナー14を用いて2倍波の負荷インピーダンスを適正化制御すると、増幅素子11のドレイン効率を70.7%に向上させることができる(図6)。更に、3倍波用可変線路長チューナー15を用いて3倍波の負荷インピーダンスを適正化制御すると、増幅素子11のドレイン効率を81.6%にまで向上させることができる。すなわち、3倍波の適正化を行うことにより、非特許文献2に記載されている技術に対して、ドレイン効率を10ポイント程度改善することができる。
このように、電力増幅回路1は、増幅素子11のドレイン効率を向上させることができ、電力損失を低減することができる。
これにより、電力増幅回路1を組み立てた後に、2倍波及び3倍波の負荷インピーダンスの位相成分を調整することが容易になり、増幅素子11ごとの個体差がある場合においても、増幅素子11の特性に合わせて2倍波及び3倍波の位相を最適化して、増幅素子11に高効率な動作を行わせることができる。その結果、電力増幅回路1の電力効率性能を向上させることができ、電力増幅回路1の製造における歩留りを改善することができる。
以上のように、上述した回路構成を用いることで、増幅素子11におけるF級増幅器の高調波負荷インピーダンス条件、特に反射係数偏角の条件について、最適化が容易になり、高効率の動作が実現できる。
2…信号源
4…負荷回路
10…入力整合回路
11…増幅素子
12…出力整合回路
13…高調波反射フィルタ
14…2倍波用可変線路長チューナー
15…3倍波用可変線路長チューナー
131…伝送線路
132,133,134,135,136,137…分岐線路
138…共振回路
Claims (3)
- 予め定められた周波数の基本波を含む信号を増幅する増幅素子と、
前記増幅素子が増幅した信号に含まれる前記基本波と、前記基本波の2倍波と、前記基本波の3倍波とそれぞれの特性インピーダンスとのインピーダンス整合をとる出力整合回路と、
前記2倍波の反射位相を変化させる2倍波用チューナーと、
前記3倍波の反射位相を変化させる3倍波用チューナーと、
前記出力整合回路が出力する信号に含まれる前記基本波を通過させるとともに、前記信号に含まれる前記2倍波及び前記3倍波を反射する高調波反射フィルタであって、前記2倍波用チューナー及び前記3倍波用チューナーが接続され、前記2倍波用チューナー及び前記3倍波用チューナーを用いて前記2倍波及び前記3倍波の反射位相を独立に変化させる高調波反射フィルタと
を備えることを特徴とする電力増幅回路。 - 前記高調波反射フィルタは、
前記出力整合回路が接続されるフィルタ入力点から負荷が接続されるフィルタ出力点までを接続し、所定の特性インピーダンスを有する伝送線路と、
一端が前記フィルタ入力点に接続され、他端が前記2倍波用チューナーに接続され、線路長が前記基本波の波長の4分の1である第1分岐線路と、
一端が前記第1分岐線路の他端に接続され、他端が開放端となっており、線路長が前記波長の4分の1である第2分岐線路と、
一端が前記伝送線路において前記フィルタ入力点から前記フィルタ出力点に向かって前記波長の8分の1隔てた点に接続され、他端が短絡端となっており、線路長が前記波長の4分の1である第3分岐線路と、
一端が前記伝送線路において前記フィルタ出力点から前記フィルタ入力点に向かって前記波長の12分の1隔てた点に接続され、他端が前記3倍波用チューナーに接続され、線路長が前記波長の4分の1である第4分岐線路と、
前記第4分岐線路の他端に接続された共振回路と、
一端が前記フィルタ出力点に接続され、他端が開放端となっており、線路長が前記波長の12分の5である第5分岐線路と、
一端が前記フィルタ出力点に接続され、他端が開放端となっており、線路長が前記波長の12分の1である第6分岐線路と
を具備することを特徴とする請求項1に記載の電力増幅回路。 - 前記伝送線路の線路長は、前記波長の24分の5以上である
ことを特徴とする請求項2に記載の電力増幅回路。
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