JP2013004652A - 金属化フィルムコンデンサ - Google Patents

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Abstract

【課題】優れた耐湿性を有する金属化フィルムコンデンサを提供する。
【解決手段】本発明の金属化フィルムコンデンサは、誘電体フィルムであるポリプロピレンフィルム3a、3b上に金属蒸着電極4a、4bを形成した第1の金属化フィルム1、第2の金属化フィルム2を一対とし、金属蒸着電極4a、4bがポリプロピレンフィルム3a、3bを介して対向するように重ね合わせて巻回または積層した素子と、素子の両端面のメタリコン6a、6bからなり、金属蒸着電極4a、4bの少なくとも一方は、アルミニウムとマグネシウムを含有するとともに、マグネシウムの金属蒸着電極4a、4bにおける濃度の相対標準偏差が0.2以下である構成とした。この結果、金属蒸着電極4a、4bにマグネシウムを満遍なく分布させることになり、外部からの水分の浸入を効果的に抑制し、金属化フィルムコンデンサの耐湿性を向上させることができる。
【選択図】図3

Description

本発明は各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に使用され、特に、ハイブリッド自動車のモータ駆動用インバータ回路の平滑用、フィルタ用、スナバ用に最適な金属化フィルムコンデンサに関するものである。
近年、環境保護の観点から、あらゆる電気機器がインバータ回路で制御され、省エネルギー化、高効率化が進められている。中でも自動車業界においては、電気モータとエンジンで走行するハイブリッド車(以下、HEVと呼ぶ)が市場導入される等、地球環境に優しく、省エネルギー化、高効率化に関する技術の開発が活発化している。
このようなHEV用の電気モータは使用電圧領域が数百ボルトと高いため、この電気モータに関連して使用されるコンデンサとして、高耐電圧で低損失の電気特性を有する金属化フィルムコンデンサが注目されており、更に市場におけるメンテナンスフリー化の要望からも極めて寿命が長い金属化フィルムコンデンサを採用する傾向が目立っている。
そして、この金属化フィルムコンデンサは、一般に金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いるものとに大別される。中でも、蒸着金属を電極(以下、金属蒸着電極と呼ぶ)とする金属化フィルムコンデンサは、金属箔のものに比べて電極の占める体積が小さく小型軽量化が図れることと、金属蒸着電極特有の自己回復機能(欠陥部周辺の金属蒸着電極が蒸発・飛散し、コンデンサの機能が回復する性能を意味し、一般にセルフヒーリング性と呼ばれる。)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことから、従来から広く用いられているものである。
図4はこの種の従来の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面図、図5(a)、(b)は同金属化フィルムコンデンサに使用される一対の金属化フィルムを示した平面図である。図4と図5に示すように、金属蒸着電極101aと金属蒸着電極101bはポリプロピレンフィルム等の誘電体フィルム102a、102bの片面上に一端の絶縁マージン103a、103bを除いてアルミニウムを蒸着することで形成されている。この金属蒸着電極101aと101bは、誘電体フィルム102a、102bの絶縁マージン103a、103bの反対側の端部において亜鉛を溶射することで形成されたメタリコン104a、104bと接続されており、この構成により外部に電極を引き出している。
また、上記金属蒸着電極101a、101bは、容量を形成する有効電極部の幅Wの略中央部から絶縁マージン103a、103bに向かう側に、オイル転写により形成された金属蒸着電極を有しない非蒸着のスリット105a、105bにより複数の分割電極106a、106bに夫々区分され、かつ、有効電極部の幅Wの略中央部から絶縁マージン103a、103bと反対側でメタリコン104a、104bに近い側に位置する誘電体フィルム102a、102bの片面全体に蒸着された金属蒸着電極101a、101bにヒューズ107a、107bで並列接続しているものである。
このように構成された従来の金属化フィルムコンデンサは、セルフヒーリング性を有し、しかもヒューズ107a、107bにより発熱の少ない金属化フィルムコンデンサを実現できる。すなわち、金属蒸着電極101a、101bにおいて通電する電流は、メタリコン104a、104bに近いほど大きく、離れるほど小さくなっていくものである。従って、流れる電流の少なくなっていく絶縁マージン103a、103bに近い側にヒューズ107a、107b、分割電極106a、106bを設けているので、流れる電流によるヒューズ107a、107bでの発熱を少なくでき、温度上昇を抑制することができるというものであった。
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
特開2004−134561号公報
このような金属化フィルムコンデンサの耐湿性を向上させる方法としては、金属蒸着電極に合金を使用する方法が挙げられる。すなわち、アルミニウム、亜鉛、マグネシウム等の複数の金属にて形成された合金を電極として用いることで金属化フィルムコンデンサの耐湿性を向上させることが可能となる。
例えば、アルミニウムを主とし、マグネシウムを添加した合金電極では、下記の化学式で示すような反応より、金属化フィルム中、あるいは金属化フィルム表面の水分を低減することができるようになり、耐湿性の向上を図ることが可能となる。
Mg+2H2O→Mg(OH)2+H2
このように合金を使用した電極では、漏れ電流の因子である水分を低減することができ、金属化フィルムコンデンサの特性を向上させることができるものであった。
しかしながら、上述のように車両に搭載された金属化フィルムコンデンサは、その設置箇所等の理由により過酷な環境に晒されることが多い。このような過酷な環境に対しては、たとえ合金を使用した電極であってもこれまで提案されてきたような構成では未だ十分な耐湿性を確保しているとは言えず、改善の余地を残していた。
そこで、本発明はこのような課題を解決し、優れた耐湿性を有する金属化フィルムコンデンサを提供することを目的とするものである。
この課題を解決するために本発明は、金属化フィルムの金属蒸着電極は、少なくともアルミニウムとマグネシウムを含有するとともに、このマグネシウムの金属蒸着電極における濃度の相対標準偏差が0.2以内である構成としたものである。
本発明による金属化フィルムコンデンサは、優れた耐湿性を発揮することができる。
これは、金属蒸着電極におけるマグネシウムの濃度の相対標準偏差を0.2以下とした構成による。
つまり、マグネシウムの濃度のばらつきが大きく、マグネシウムの分布が不均一な金属蒸着電極では、マグネシウムの存在しない、あるいは含有量が非常に少ない領域が存在し、合金を用いたことによる耐湿性向上の効果を十分に発揮できないことがある。
一方、本発明はマグネシウムの濃度の相対標準偏差を0.2以下とし、マグネシウムの濃度のばらつきを比較的小さくしている。
この結果、金属蒸着電極に満遍なく分布したマグネシウムにより、外部からの水分の浸入を効果的に抑制し、金属化フィルムコンデンサの耐湿性を向上させることができる。
本発明の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面図 (a)、(b)本発明の金属化フィルムコンデンサに使用される金属化フィルムの構成を示した平面図 本発明の金属化フィルムコンデンサのマグネシウム濃度とコンデンサ容量減少率の関係を示すグラフ 従来の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面図 (a)、(b)従来の金属化フィルムコンデンサに使用される金属化フィルムの構成を示した平面図
以下、図1〜図2を用いて、本発明の金属化フィルムコンデンサの構成について説明する。
図1は本発明の金属化フィルムコンデンサの構成を示した断面図であり、図2(a)、図2(b)は本発明の金属化フィルムコンデンサに用いられる一対の金属化フィルムの平面図である。
図1において、第1の金属化フィルム1はP極用、第2の金属化フィルム2はN極用の金属化フィルムである。そして、これら第1の金属化フィルム1および第2の金属化フィルム2を一対として重ね合わせ、これを複数ターン巻回したものを素子として金属化フィルムコンデンサを形成している。
図1に示されるように、第1の金属化フィルム1は誘電体となるポリプロピレンフィルム3aの片面上に金属蒸着電極4aが形成されており、第2の金属化フィルム2と絶縁するために絶縁マージン5aを設けた状態となっている。なお、本実施例では各金属化フィルムの誘電体フィルムとしてポリプロピレンフィルムを用いたが、これ以外にもポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニルサルファイド、ポリスチレンなどを用いてもよい。
この金属蒸着電極4aは亜鉛溶射により端面に形成されたメタリコン6aと接続されて電極を引き出すようにしている。金属蒸着電極4aは、容量を形成する有効電極部(幅W)略中央部から絶縁マージン5aに向かう側に、オイル転写により形成された金属蒸着電極4aを有しない非蒸着の縦マージン7aおよび横マージン8a(図2に図示)により大電極部9aと複数の分割小電極部10aに区分されている。
この分割小電極部10aは図2(a)に示されるように、大電極部9aとヒューズ11aにて電気的に並列に接続されており、また隣接する分割小電極部10aどうしもヒューズ12aにて電気的に並列に接続されている。ここで、大電極部9aは図2(a)に示されるように、ポリプロピレンフィルム3aの片面に有効電極部の幅Wの略中央部からメタリコン6aにかけて形成されている。各分割小電極部10aの幅は有効電極部の幅Wの約1/4で、ポリプロピレンフィルム3aの片面に有効電極部の幅Wの略中央部から絶縁マージン5aにかけて形成されている。なお、この分割小電極部10aは有効電極部(幅W)略中央部から絶縁マージン5aにかけて2つ設けた構成としたが、これに限らず3つ以上設けた構成としてもよい。
実使用時において、絶縁の欠陥部分で短絡が生じた場合には短絡のエネルギーで欠陥部分周辺の金属蒸着電極4aが蒸発・飛散して絶縁が復活する(セルフヒーリング性)。この自己回復機能により、第1の金属化フィルム1、第2の金属化フィルム2間の一部が短絡しても金属化フィルムコンデンサの機能が回復する。また、分割小電極部10aの不具合により分割小電極部10aに大量の電流が流れた場合には、ヒューズ11a、あるいはヒューズ12aが飛散することで不具合の生じている部分の分割小電極部10aの電気的接続が切断され、金属化フィルムコンデンサの電流は正常な状態に戻る。
第2の金属化フィルム2は、第1の金属化フィルム1と同様、図1に示されるように、誘電体となるポリプロピレンフィルム3bの片面上に一端の絶縁マージン5bを除いて金属蒸着電極4bが形成されている。ただし、第2の金属化フィルム2と第1の金属化フィルム1とではメタリコンに接続される方向が異なり、第2の金属化フィルム2は、第1の金属化フィルム1が接続されたメタリコン6aと対向して配置されたメタリコン6bに接続されている。また、金属蒸着電極4bは、容量を形成する有効電極部(幅W)略中央部から絶縁マージン5bに向かう側に、金属蒸着電極を有しない非蒸着の縦マージン7bおよび横マージン8bにより大電極部9bと複数の分割小電極部10bに区分されている。
この分割小電極部10bは、図2(b)に示されるように第1の金属化フィルム1の分割小電極部10aと同様の構成となっており、大電極部9bとヒューズ11bにて並列接続され、また分割小電極部10bどうしもヒューズ12bにて並列接続されている。分割小電極部10b、ヒューズ11b、12bを備えることによる効果も第1の金属化フィルム1と同様である。
なお、このように本発明の金属化フィルムは、「背景技術」の項目で述べた金属化フィルムとその電極構成(パターン)において異なるものであるが、以下で説明する本発明のポイントによる効果は、背景技術で述べた金属化フィルムにおいても得られるものである。
以下の実施例1〜3で示すように、本発明による金属化フィルムコンデンサでは金属蒸着電極におけるマグネシウムの相対標準偏差が0.2以下となっており、濃度のばらつきが少ないものとなっている。各実施例の詳細について以下に述べる。なお、本明細書での濃度とは金属蒸着電極に含まれる各金属の重量から算出している。
(実施例1)
本実施例の金属化フィルムコンデンサは上述の図1で示したような構成となっており、さらにP極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bは、両電極ともアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を蒸発させることで形成した。このアルミニウムの金属材料中のアルミニウムの重量%は99.9wt%以上と純度の高いものとなっている。同様にマグネシウムの金属材料中のマグネシウムの重量%も99.9wt%以上と純度の高いものとなっている。このように純度の高い金属材料を用いることによって、形成される金属蒸着電極は不純物が少なく、特性の優れたものが得られる。また、蒸着工程において金属蒸着電極中のアルミニウムやマグネシウムの量、分布を調整する際、このように純度の高い金属材料を用いることでこの金属蒸着電極中のアルミニウムやマグネシウムの量、分布は制御し易くなる。
なお、本実施例の第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2は、同一の電極材料、誘電体材料(ポリプロピレンフィルム)を用いて同一の製造方法から形成されるものであるため、下記に述べる本実施例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものである。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムの金属蒸着電極中に含まれるマグネシウムの濃度を測定した。このマグネシウムの濃度の測定では、使用する金属化フィルムから10mおきに切り取った30mmφの個片の金属化フィルムに含まれるマグネシウムの濃度を蛍光X線分析(XRF)にて測定した。金属化フィルムから切り取った10個の個片のマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ1.7%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は0.34%となり、相対標準偏差は0.2となった。なお、本明細書内で述べる相対標準偏差とは標準偏差を平均値で除したものであることを注記する。
(実施例2)
P極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bに実施例1と同様のアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を用いた。さらに実施例1と同様の理由により、下記に述べる本実施例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものとする。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムから切り取った10個の個片に含まれるマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ4.0%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は0.1%となり、相対標準偏差は0.025となった。
(実施例3)
P極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bに実施例1と同様のアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を用いた。さらに実施例1と同様の理由により、下記に述べる本実施例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものとする。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムから切り取った10個の個片に含まれるマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ5.6%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は0.29%となり、相対標準偏差は0.051となった。
次に、これら本発明の実施例1〜3に対し、金属蒸着電極におけるマグネシウムの濃度の分布のムラが比較的大きい比較例1〜3について以下に述べる。
(比較例1)
P極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bに実施例1と同様のアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を用いた。さらに実施例1と同様の理由により、下記に述べる本比較例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものとする。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムから切り取った10個の個片に含まれるマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ1.0%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は0.8%となり、相対標準偏差は0.8となった。
(比較例2)
P極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bに実施例1と同様のアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を用いた。さらに実施例1と同様の理由により、下記に述べる本比較例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものとする。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムから切り取った10個の個片に含まれるマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ2.5%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は6.93%となり、相対標準偏差は2.77となった。
(比較例3)
P極である金属蒸着電極4a、N極である金属蒸着電極4bに実施例1と同様のアルミニウムの金属材料とマグネシウムの金属材料を用いた。さらに実施例1と同様の理由により、下記に述べる本比較例の金属化フィルムの特徴は第1の金属化フィルム1と第2の金属化フィルム2に共通するものとする。
本実施例の金属化フィルムコンデンサに用いる金属化フィルムから切り取った10個の個片に含まれるマグネシウムの濃度の平均値を求めたところ4.8%となった。さらに、このマグネシウムの濃度の標準偏差は3.3%となり、相対標準偏差は0.69となった。
次にこれら、実施例1〜3、比較例1〜3の金属化フィルムコンデンサについて、コンデンサ容量減少率を測定することにより、各々の金属化フィルムコンデンサの耐湿性を評価した。本耐湿性試験は、85℃/85%r.h.の高温高湿度の条件下で500Vの電圧を900時間印加し続けた後のコンデンサ容量の減少率を求めたものである。この評価結果と各実施例および各比較例の相対標準偏差を併せて以下の(表1)に示す。
Figure 2013004652
(表1)からわかるように、本発明の実施例1〜3においては容量減少率が比較的低く、一方比較例1〜3においては容量減少率が高い。
さらに、金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの相対標準偏差(濃度のムラ)が容量減少率すなわち耐湿性に与える影響をわかりやすく示すため、上記(表1)の結果を図3にグラフとしてまとめた。ここで、図3におけるグラフでは縦軸に耐湿性試験によるコンデンサ容量減少率、横軸にマグネシウム濃度をとり、各実施例、各比較例のコンデンサ容量減少率およびマグネシウム濃度の平均値をプロットした。さらに、本発明の実施例である実施例1〜3どうしを平滑曲線で結び、同じく比較例1〜3どうしを平滑曲線で結んだ。
図3のグラフから明らかなように、本実施例の金属化フィルムコンデンサは、比較例の金属化フィルムコンデンサと比較して、マグネシウムの濃度に対する容量減少率が小さい。これは「発明の効果」の項目で述べたように、夫々の金属化フィルムコンデンサの金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの分布状態の違いに起因する。
仮に従来の金属化フィルムコンデンサのようにマグネシウムの濃度がばらつき、局所的に濃度の低い部分が存在すると、まずこの部分に外部から水分が浸入し、金属蒸着電極としてのアルミニウムを腐食させてしまう。そして、この濃度の低い部分を起点としてアルミニウムの腐食が広がり、ついには金属蒸着電極が電極として機能しなくなる可能性がある。一方、本実施例の金属化フィルムコンデンサでは金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの相対標準偏差が2.0以下と小さく、マグネシウムの濃度のばらつきが抑制され、金属蒸着電極内にマグネシウムが満遍なく分布した状態となっている。このため、上記のような水分の浸入ルートとなり得る部分は極めて少なく、この結果コンデンサ容量の経時的な減少を抑制することが可能となっている。
なお、図3のグラフから明らかなように金属化フィルムコンデンサの耐湿性は金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの濃度に依存している。金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの濃度を変化させた試作品を複数作製し、夫々の耐湿性を評価した結果、マグネシウムの濃度を増加させるに伴って耐湿性も向上することが分かった。ただし、マグネシウムの濃度が45wt%(図3のグラフには示さず)を超えると金属蒸着電極の形成(蒸着)が困難になるために好ましくない。またマグネシウムの濃度が0.5wt%未満(図3のグラフには示さず)では得られる効果が小さく、これらのことからマグネシウムの濃度は0.5wt%以上45wt%以下の範囲が適していると言える。
さらに、以下の(表2)に示すように、本発明の金属化フィルムコンデンサと比較例の金属化フィルムコンデンサの様々な電位傾度における耐湿性について評価した。ここで電位傾度とは印加電圧を誘電体フィルムの厚さで除した値であり、誘電体フィルムの単位厚さあたりの印加電圧を示すものである。
また、耐湿性に関してはまずアルミニウム単体で形成した金属蒸着電極を備えた金属化フィルムコンデンサの耐湿性をリファレンス値とし、このリファレンス値に対して本発明の金属化フィルムコンデンサおよび比較例の金属化フィルムコンデンサの耐湿性を比較した値を算出した。より具体的には、様々な電位傾度において本発明の金属化フィルムコンデンサおよび比較例の金属化フィルムコンデンサの容量が5%減少するのにかかる時間を夫々測定し、これらの測定値と様々な電位傾度においてアルミニウム単体で形成した金属蒸着電極を備えた金属化フィルムコンデンサの容量が5%減少するのにかかる時間の測定値(リファレンス値)を比較した値を算出した。
なお、(表2)では本発明の金属化フィルムコンデンサとして実施例1の金属化フィルムコンデンサ(Mg濃度平均値1.7、相対標準偏差0.2)、比較例の金属化フィルムコンデンサとして比較例2の金属化フィルムコンデンサ(Mg濃度平均値2.5、相対標準偏差2.77)を記載している。
Figure 2013004652
(表2)の結果から明らかなように、電位傾度が増加するにつれ比較例2の金属化フィルムコンデンサの耐湿性が低下していることがわかる。すなわち、電位傾度が増加するにつれアルミニウム単体で形成した金属蒸着電極を備えた金属化フィルムコンデンサの耐湿性に近づいてきていることがわかる。
一方、実施例1の金属化フィルムコンデンサにおいては電位傾度が増加したとしても、その耐湿性を示す値は(表2)に示すようにほとんど変化せず、すなわちアルミニウム単体で形成した金属蒸着電極を備えた金属化フィルムコンデンサの耐湿性に対して十分な優位性を備えていることが確認できた。
同じ印加電圧下において使用する誘電体フィルムの厚みを薄くしていくと当然電位傾度は増していくものであるが、このことと上記結果より、本発明の金属化フィルムコンデンサは薄い誘電体フィルムを使用したとしても十分な耐湿性を示すことができるということが明らかとなった。
すなわち、本発明の金属化フィルムコンデンサは誘電体フィルムの単位厚みあたりの電位傾度が150V/μm以上の場合においても十分な耐湿性を示すことが確認できており、このことから誘電体フィルムの薄型化やひいては金属化フィルムコンデンサの小型化にも有効であることがわかった。
以上説明したように、本発明による金属化フィルムコンデンサは優れた耐湿性を発揮することができ、また金属化フィルムコンデンサの小型化にも有効なものである。
なお、この発明は上記の実施例に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、上記の実施例では図1の金属蒸着電極4a、金属蒸着電極4bの両方の金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの濃度の相対標準偏差を2.0以下としたが、この構成に限らず一方の金属蒸着電極に含まれるマグネシウムの濃度の相対標準偏差を上記範囲とすることでも本発明の効果は得られる。
また、本発明において巻回型の金属化フィルムコンデンサを実施例として説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく積層型の金属化フィルムコンデンサに本発明を適用することも可能である。
本発明による金属化フィルムコンデンサは、優れた耐湿性を有しており、各種電子機器、電気機器、産業機器、自動車等に用いられるコンデンサとして好適に採用でき、特に高耐湿性、高耐電圧特性が求められる自動車用分野に有用である。
1 第1の金属化フィルム
2 第2の金属化フィルム
3a、3b ポリプロピレンフィルム
4a、4b 金属蒸着電極
5a、5b 絶縁マージン
6a、6b メタリコン
7a、7b 縦マージン
8a、8b 横マージン
9a、9b 大電極部
10a、10b 分割小電極部
11a、11b ヒューズ
12a、12b ヒューズ

Claims (4)

  1. 誘電体フィルム上に金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを一対とし、この一対の金属化フィルムに形成された夫々の金属蒸着電極が誘電体フィルムを介して対向するように重ね合わせて巻回または積層した素子と、
    この素子の両端面に形成された一対のメタリコン電極からなり、
    前記一対の金属化フィルムの金属蒸着電極のうち少なくとも一方は、アルミニウムとマグネシウムを少なくとも含有するとともに、このマグネシウムの前記金属蒸着電極における濃度の相対標準偏差が0.2以下である金属化フィルムコンデンサ。
  2. 前記金属蒸着電極におけるマグネシウムの濃度が0.5%以上45%以下である請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
  3. 前記アルミニウムとマグネシウムを含有する金属蒸着電極は、アルミニウムが99.9wt%以上含まれる金属材料と、マグネシウムが99.9wt%以上含まれる金属材料とを蒸着させることで形成した請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
  4. 実使用時に印加する電圧として、前記誘電体フィルムの単位厚みあたりの電位傾度を150V/μm以上とした請求項1に記載の金属化フィルムコンデンサ。
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