JP2013001750A - 架橋ポリイミド樹脂、その製造方法、接着剤樹脂組成物、その硬化物、カバーレイフィルム及び回路基板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂である。(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有する。(A)成分中の水素結合形成基により、C=N結合の形成が促進される。
【選択図】なし
Description
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂であって、
前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有することを特徴とする。
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有する重量平均分子量が20,000〜150,000であるポリイミドシロキサン、並びに
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を含み、
前記(A)成分中のケトン基1モルに対し、前記第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モルの範囲内となるように前記(B)成分を含有するものである。
前記接着剤層が、上記いずれかに記載の接着剤樹脂組成物を用いて形成されたものである。
前記ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程、並びに、
前記ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、前記ポリイミドシロキサンを前記アミノ化合物によって架橋する工程、
を備えている。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂である。そして、本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有している。
上記(A)成分は、例えば一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンにおいて、基Ar及び/又は基R2中、好ましくは基Ar中にケトン基を含み、このケトン基が、アミノ化合物との反応に関与する。一般式(1)、(2)で表される構成単位において、ケトン基を含む基Arを形成するための芳香族テトラカルボン酸としては、例えば下記の式(3)で表される3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を挙げることができる。
(A)成分のポリイミドシロキサンは、上記芳香族テトラカルボン酸無水物、ジアミノシロキサン及びジアミンを溶媒中で反応させ、前駆体樹脂であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
以上のようにして得られるポリイミドシロキサンは、分子構造中に水素結合形成基を有するため、常温でも隣接するポリイミドシロキサンの主鎖どうしの間で水素結合が生じる。例えば、ポリイミドシロキサン中に含まれる水素結合形成基が−NHCO−基である場合、隣接する片方のポリイミドシロキサン鎖のNH基と、もう片方のポリイミドシロキサン鎖のCO基との間に水素結合が生じる。その結果、多数のポリイミドシロキサン鎖をある程度の配向状態に近づけるとともに、隣り合うポリイミドシロキサン鎖の間で、アミノ化合物との架橋反応の反応点となるケトン基どうしを近づけることができる。このような水素結合の形成は、ポリイミドシロキサンを溶媒溶液の状態で保持しておくことにより進行し、イミン架橋反応を促進させるために十分な水素結合を形成できる。
本発明の架橋ポリイミド樹脂において、上記(A)成分のポリイミドシロキサンのケトン基と反応させる相手方の(B)成分である、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物としては、(I)芳香族ジアミン、(II)ジアミノシロキサン、(III)脂肪族アミン、(IV)ジヒドラジド化合物等を例示することができる。
芳香族ジアミンとしては、例えば以下の式(12)、(13)で表されるものを挙げることができる。
ジアミノシロキサンとしては、下記一般式(14)で表されるジアミノシロキサン又はそのオリゴマーが好ましく挙げられる。
脂肪族アミンとしては、例えば、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン等のジアミノアルカン類、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、N−メチル−2,2’−ジアミノジエチルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン等の窒素原子を含有するアミン類、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]−ウンデカン等の酸素原子を含有するアミン類、2,2’−チオビス(エチルアミン)等の硫黄原子を有するアミン類等を挙げることができる。以上の脂肪族アミンは、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
ジヒドラジド化合物としては、下記一般式(15)で表されるものを挙げることができる。
本発明の架橋ポリイミド樹脂の製法方法は、上記(A)成分である、ケトン基を有する酸無水物成分と、水素結合形成基を有するジアミン化合物及びジアミノシロキサンを含むジアミン成分と、を混合し、加熱することによりイミド化して、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを形成する工程と、
ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程と、
ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、上記(B)成分である、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、ポリイミドシロキサンをアミノ化合物によって架橋する工程と、を備えている。具体的には、上記(A)成分のポリイミドシロキサンを含み、主鎖間に水素結合が生じた状態の樹脂溶液に、(B)成分の少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物を加えて、ポリイミドシロキサンのケトン基の一部又は全部とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させることにより製造される。この縮合反応により、ポリイミドシロキサン鎖間で架橋形成が進行し、架橋の形成度合いに応じて接着剤樹脂組成物が徐々に硬化してゆく。この場合、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モル、好ましくは0.005モル〜1.2モル、より好ましくは0.03モル〜0.9モル、特に好ましくは0.04モル〜0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することが好ましい。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物によるポリイミドシロキサンの架橋が十分ではないため、接着剤樹脂組成物を硬化させた後の硬化物において半田耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、同硬化物において半田耐熱性を低下させたり、高温での長期耐熱性を低下させたりする傾向がある。
(a)ポリイミドシロキサンの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱すること、
(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、ポリイミドシロキサンの合成(イミド化)に引き続き、イミド化(若しくはアミド化)に関与しない残りのアミノ化合物とともにポリイミドシロキサンを加熱すること、又は、
(c)アミノ化合物を添加したポリイミドシロキサンの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱すること、
等によって行うことができる。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、任意の(C)成分として、平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを含有することができる。(C)成分の無機フィラーを配合することによって、架橋ポリイミド樹脂を例えばカバーレイフィルムの接着剤層に利用する場合に、ガスバリア性を有する無機フィラーにより、大気中の酸素の透過が遮断される結果、銅配線の酸化と銅の拡散が抑制されて長期耐熱性を向上させることができる。
上記(A)成分のポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基との反応は、脱水縮合反応であり、ポリイミドシロキサン中のケトン基の炭素原子と第1級アミノ基の窒素原子がC=N結合を形成する結果、鎖状のポリイミドシロキサンがアミノ化合物によって架橋されて網目状の高分子を形成するものと考えられる。そして、上記(A)成分のポリイミドシロキサン中に水素結合形成基を含むことにより、架橋反応に先立ち、隣接するポリイミドシロキサン鎖の間で水素結合が生じ、アミノ化合物との架橋反応の反応点となるケトン基どうしを近づけることができる。その結果、アミノ化合物による架橋反応が促進され、実用上十分な耐湿半田耐熱性を獲得するまでの加熱時間を短縮できる。通常、ポリイミドシロキサンは分子間相互作用を生じにくいため、ポリイミドシロキサンの配向制御は困難であるが、水素結合を可能とする基を主鎖中に含むことにより、水素結合を生じさせることができる。さらに、ケトン基とアミノ化合物との架橋構造が生じると、ポリイミドシロキサンにおける見かけ上の高分子量化のみならず、ポリイミドシロキサンの分子同士をある程度拘束することが可能になるので、耐熱性が向上し、極めて優れた半田耐熱性が得られると考えられる。また、C=N結合における窒素原子近傍が立体的に嵩高くなることにより、架橋ポリイミド樹脂に含まれる極性基の銅原子の求核能を低下させることによって、銅配線からの銅の接着剤層への拡散を抑制することができ、高温環境での使用における接着強度の低下を抑制する効果が得られるものと考えられる。このような理由により、本発明で使用するアミノ化合物は、少なくとも2つのアミノ基を有する必要があり、アミノ基の数は好ましくは2〜5、より好ましくは2〜3である。また、アミノ基を3つ以上有するアミノ化合物では、2つのアミノ基がC=N結合を形成した後の架橋構造体が立体的に嵩高くなるために、残りの未反応のアミノ基がケトン基と反応しにくくなることから、アミノ基の数は2であることが特に好ましい。さらに、上記のとおり接着剤樹脂組成物の硬化時間を短縮するという観点では、アミノ化合物としてジヒドラジド化合物を用いることが最も好ましい。
本発明の接着剤樹脂組成物は、上記ポリイミドシロキサン[(A)成分]と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物[(B)成分]と、を必須成分として含有する。この接着剤樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を混合もしくは混練させることにより、並びに/または(A)成分及び(B)成分を含有した状態で加熱することにより、前記ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基とが縮合反応してC=N結合を形成する性質を有する。すなわち、本発明の接着剤樹脂組成物は、ポリイミドシロキサンとアミノ化合物との縮合反応によって本発明の硬化物に変化する。ここで、本発明の「硬化物」とは、ポリイミドシロキサンのケトン基と、アミノ化合物の第1級アミノ基との架橋反応がそれ以上進行しない程度まで完結した状態だけではなく、上記架橋反応の余地を残した半硬化の状態をも含む。本発明の接着剤樹脂組成物において、(A)成分の重量平均分子量は、例えば30,000〜200,000の範囲内の範囲内が好ましく、160℃、2時間の加熱で十分な耐湿半田耐熱性を得るとの観点からは70,000〜140,000の範囲内がより好ましい。(A)成分の重量平均分子量が70,000未満であると、接着剤樹脂組成物を溶液にした場合の流動性の制御が困難になり、また硬化物の耐熱性の低下が生じる傾向になる。一方、重量平均分子量が140,000を超えると、溶剤への可溶性を損なう傾向になる。
本発明のカバーレイフィルムは、カバーレイフィルム材と、該カバーレイフィルム材に積層された、上記接着剤樹脂組成物により構成される接着剤層とを備えている。本発明のカバーレイフィルムにおけるカバーレイ用フィルム材としては、限定する趣旨ではないが、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のポリイミド系樹脂フィルムや、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルムなどを用いることができる。これらの中でも、優れた耐熱性を持つポリイミド系樹脂フィルムを用いることが好ましい。カバーレイ用フィルム材層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5μm以上100μm以下が好ましい。また、接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば10μm以上50μm以下が好ましい。
本発明の回路基板は、以上のようにして得られるカバーレイフィルムやボンディングシートを備えている限り、その構成に特に制限はない。例えば、本発明の回路基板の好ましい形態は、少なくとも、基材と、基材上に所定のパターンで形成された銅などの金属からなる配線層と、該配線層を覆う本発明のカバーレイフィルムとを備えている。回路基板の基材としては、特に限定する趣旨ではないが、FPCの場合は、上記カバーレイ用フィルム材と同様の材質を用いることが好ましく、ポリイミド系樹脂製の基材を用いることが好ましい。
接着強度は、幅10mm、長さ100mmに切り出した試験片の接着剤面を銅箔(35μm厚み)の光沢面(防錆金属を除去したもの)の上に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスした後、引張試験機(東洋精機株式会社製、ストログラフ−M1)を用いて、180°方向に50mm/分の速度で引き剥がす時の力を接着強度とする。
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC−8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
反りの評価は、以下の方法で行った。厚さ25μmのカプトンフィルム上に乾燥後の厚さが35μmになるようにポリイミド接着剤を塗布した。この状態でカプトンフィルムが下面になるように置き、フィルムの4隅の反り上がっている高さの平均を測定し、5mm以下を「良」、5mmを超える場合を「不可」とした。
ポリイミド銅張積層板(新日鐵化学社製、商品名;エスパネックスMC18−25−00FRM)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意し、試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度170℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度150℃、時間24時間の条件で加熱した。この銅箔付きの試験片を105℃、相対湿度50%で1時間放置した後、各評価温度に設定した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「320℃」は、320℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
ポリイミド銅張積層板(新日鐵化学社製、商品名;エスパネックスMC18−25−00FRM)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意し、試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度170℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度150℃、時間24時間の条件で加熱した。この銅箔付きの試験片を85℃、相対湿度85%で24時間放置した後、各評価温度に設定した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「270℃」は、270℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
離型PETフィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるようにポリイミド接着剤を塗布した。離型PETフィルムからポリイミド接着剤フィルムを剥離し、このポリイミド接着剤フィルム(3cm×3cm)を10枚程度積層し、真空ラミネーターを用いて70℃/0.85MPa/10secの条件で熱圧着を行い、約250μm程度の厚みのサンプルを作製した。得られたサンプルについて、レオメーター(RS150 RheoStress、Haake社製)を用いて、昇温速度4℃/minの条件でサンプルの粘度変化を評価した。
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
BAFL:ビスアニリンフルオレン
PSX:ジアミノシロキサン(重量平均分子量は740である)
N−12:ドデカン二酸ジヒドラジド
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
K−1:タルク(日本タルク株式会社製、商品名;MICRO ACE K−1、形状;鱗片状、平均長径;7.0μm、平均短径;5.8μm、長径と厚みとの比;15以上、平均粒子径;6.6μm、メジアン径(D50);6.9μm、最大粒子径;64.9μm、最小粒子径;0.5μm、最頻径;8.7μm、粒径10μm以下の積算粒子量;77%、粒径20μm以上の積算粒子量;5%)
1000mlのセパラブルフラスコに、71.850gのPSX(0.0971モル)、7.474gのBAPP(0.0182モル)、1.568gのN−12(0.0061モル)、39.109gのBTDA(0.1214モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液aを得た。得られたポリイミド溶液aにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は90,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
1000mlのセパラブルフラスコに、72.407gのPSX(0.0978モル)、5.021gのBAPP(0.0122モル)、3.160gのN−12(0.0122モル)、39.412gのBTDA(0.1223モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液bを得た。得られたポリイミド溶液bにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は73,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
1000mlのセパラブルフラスコに、73.364gのPSX(0.0991モル)、10.175gのBAPP(0.0248モル)、36.461gのBPDA(0.1239モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、6時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液cを得た。得られたポリイミド溶液cにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は27,900であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
1000mlのセパラブルフラスコに、71.301gのPSX(0.0964モル)、9.889gのBAPP(0.0241モル)、38.810gのBTDA(0.1204モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、6時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液dを得た。得られたポリイミド溶液dにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は107,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
合成例1で得られたポリイミド溶液aをポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルムとした。次に、得られたカバーレイフィルムを表面の防錆金属層を除去した銅箔上に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスし、評価サンプルを得た。
合成例1で得られたポリイミド溶液aに5.78gのN−12(0.0224モル)及び57.81gのK−1を配合し、更に1時間攪拌することでポリイミド溶液1を得た。
実施例1における57.81gのK−1を配合したことの代わりに、K−1を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液2を得たのち、カバーレイフィルム2を得、評価サンプル2を得た。評価サンプルにおける接着剤層のラマンスペクトルを測定したところ、1567cm−1付近にイミノ基の形成によるピークが確認された。この測定結果から、評価サンプルでは、カバーレイフィルムと銅箔との熱圧着と同時に、ポリイミド樹脂中のケトン基とアミノ化合物(N−12)との縮合反応が生じたと推定される。硬化後の銅箔との接着強度は1.08kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液2を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は113,000Pa・sであった。
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、3.47gのN−12(0.0134モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液3を得たのち、カバーレイフィルム3を得、評価サンプル3を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.70kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液3を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は35,000Pa・sであった。
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例2で得られたポリイミド溶液bを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液4を得たのち、カバーレイフィルム4を得、評価サンプル4を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.72kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液4を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は110,000Pa・sであった。
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例2で得られたポリイミド溶液bを使用したこと、及び5.78gのN−12を配合したことの代わりに、3.47gのN−12(0.0134モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液5を得たのち、カバーレイフィルム5を得、評価サンプル5を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.80kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液5を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は108,000Pa・sであった。
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、5.78gのBAPP(0.0141モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液6を得たのち、カバーレイフィルム6を得、評価サンプル6を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.72kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液6を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は36,000Pa・sであった。
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、5.78gのBAFL(0.0166モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液7を得たのち、カバーレイフィルム7を得、評価サンプル7を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.65kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液7を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は28,000Pa・sであった。
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例4で得られたポリイミド溶液dを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液をポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルムとした。このカバーレイフィルムについて、実施例1と同様にして評価した。
本発明に係る接着剤樹脂組成物のイミン架橋形成の時間短縮は、以下のようにして検証を行った。
合成例1で得られたポリイミド溶液aに5.78gのN−12(0.224モル)及び11.56gのK−1を配合し、更に1時間攪拌することでポリイミド溶液8を得た。
実施例8と同様にして、ポリイミド溶液8を得たのち、カバーレイフィルム8を得た。
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度200℃、圧力2MPa、時間0.5時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル10を得た。評価結果を表4に示す。
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度160℃、圧力2MPa、時間0.5時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル11を得た。評価結果を表4に示す。
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度130℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル12を得た。評価結果を表4に示す。
実施例1で調製したポリイミド溶液1を、基材の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、厚さ25μmのポリイミド接着剤フィルムを作製した。このポリイミド接着剤フィルム(3cm×3cm)を10枚程度積層し、真空ラミネーターを用いて70℃/0.85MPa/10secの条件で熱圧着を行い、約250μm程度の厚みの評価サンプルAを得た。一方、参考例2で調製したポリイミド溶液についても、同様に処理して評価サンプルBを得た。これらのサンプルA及びBについて、レオメーター評価を実施した。その結果を図1に示した。サンプルAは、160℃前後から速やかに粘度が上昇しており、260℃付近での粘度は118,000Pa・sであった。一方、サンプルBは、サンプルAに比べて粘度上昇が遅く、260℃付近での粘度は45,000Pa・sであった。これらサンプルA、Bの粘度の上昇速度の違いは、水素結合性の官能基である−NHCO−基を含まないポリイミドシロキサンを用いたサンプルBに比較して、−NHCO−基を含むポリイミドシロキサンを用いたサンプルAにおいて架橋形成反応がより速やかに進行したためであると考えられた。ここで、表2及び表3に示した実施例1と参考例2の半田耐熱性の比較では、特に耐湿半田耐熱性において実施例1の方が格段に優れていることがわかる。また、図1から、サンプルAの粘度は、200℃以上では1×105Pa・s以上でほぼ横ばいである。これらのことから、260℃付近での粘度が1×105Pa・s以上であることが、実用上十分な耐湿半田耐熱性、つまり260℃以上のハンダ耐熱温度を得るための架橋形成の割合を示すしきい値として有効であると考えられた。
実施例1で用いたポリイミドシロキサンの分子量を変えて耐湿半田耐熱性の試験を行った。重量平均分子量を変えたポリイミドシロキサンを用いた以外は、実施例1と同様にカバーレイフィルムを作製して耐湿半田耐熱性評価を行った。評価結果を表5に示す。重量平均分子量が約88,000〜130,000のポリイミドシロキサンを用いた場合は、耐湿半田耐熱性が260℃以上を示した。
Claims (22)
- 下記の成分(A)及び(B)、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂であって、
前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有することを特徴とする架橋ポリイミド樹脂。 - 前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内である請求項2に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- 前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内である請求項4に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- 前記ポリイミドシロキサンにおける前記水素結合形成基が、−NHCO−である請求項1〜5のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- 前記ポリイミドシロキサンが、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものである請求項1、4、5又は6のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- 前記アミノ化合物が、ジヒドラジド化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- さらに、平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを、前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して5〜200重量部の範囲内で含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
- 下記(A)成分及び(B)成分、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有する重量平均分子量が20,000〜150,000であるポリイミドシロキサン、並びに
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を含み、
前記(A)成分中のケトン基1モルに対し、前記第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モルの範囲内となるように前記(B)成分を含有する接着剤樹脂組成物。 - 前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内である請求項11に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内であることを特徴とする請求項13に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記(A)成分における前記水素結合形成基が、−NHCO−であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記(A)成分が、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものであることを特徴とする請求項10、13、14又は15のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記(B)成分が、ジヒドラジド化合物であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
- 前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、更に(C)平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを5〜200重量部含有する請求項10〜17のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
- 請求項10〜18のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
- 接着剤層とカバーレイ用フィルム材層とを積層したカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、請求項10〜18のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物を用いて形成されたものであるカバーレイフィルム。 - 基材と、該基材上に形成された配線層と、該配線層を被覆する請求項20に記載のカバーレイフィルムと、を備えた回路基板。
- ケトン基を有する酸無水物成分と、水素結合形成基を有するジアミン化合物及びジアミノシロキサンを含むジアミン成分と、を混合し、加熱することによりイミド化して、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを形成する工程、
前記ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程、並びに、
前記ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、前記ポリイミドシロキサンを前記アミノ化合物によって架橋する工程、
を備えた架橋ポリイミド樹脂の製造方法。
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