JP2013001750A - 架橋ポリイミド樹脂、その製造方法、接着剤樹脂組成物、その硬化物、カバーレイフィルム及び回路基板 - Google Patents

架橋ポリイミド樹脂、その製造方法、接着剤樹脂組成物、その硬化物、カバーレイフィルム及び回路基板 Download PDF

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Abstract

【課題】短時間で耐湿半田耐熱性を発現できる程度の架橋構造を形成できるとともに、繰り返し高温にさらされる使用環境でも、接着力を低下させない接着剤層を形成可能な架橋ポリイミド樹脂を提供する。
【解決手段】(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂である。(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有する。(A)成分中の水素結合形成基により、C=N結合の形成が促進される。
【選択図】なし

Description

本発明は、フレキシブルプリント配線板等の回路基板において接着剤として有用な架橋ポリイミド樹脂、その製造方法、及びその利用に関する。
近年、電子機器の小型化、軽量化、省スペース化の進展に伴い、薄く軽量で、可撓性を有し、屈曲を繰り返しても優れた耐久性を持つフレキシブルプリント配線板(FPC;Flexible Printed Circuits)の需要が増大している。FPCは、限られたスペースでも立体的かつ高密度の実装が可能であるため、例えば、HDD、DVD、携帯電話等の電子機器の可動部分の配線や、ケーブル、コネクター等の部品にその用途が拡大しつつある。
FPCには、配線部分を保護する目的でカバーレイフィルムが用いられる。カバーレイフィルムは、ポリイミド樹脂などの合成樹脂製のカバーレイ用フィルム材と接着剤層とを積層して形成されている。FPCの製造においては、例えば熱プレス等の方法を用いて回路基板に接着剤層を介してカバーレイ用フィルム材を貼り付けている。接着剤層は、銅配線などの回路配線パターンとカバーレイ用フィルム材との両方に対して、高い接着性が要求される。このようなカバーレイフィルム用の接着剤として、比較的低温の熱圧着条件で加工が可能で、耐熱性などの特性に優れたものとして、シロキサンユニットを有するポリイミド樹脂とエポキシ樹脂との混合樹脂に、リン酸エステル系、フタル酸エステル系、ポリエステル系及び脂肪酸エステル系から選ばれる1種以上の可塑剤を配合してなるプリント基板用接着剤樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。
一方、接着フィルムに用いるポリイミド樹脂の低温貼付性、低吸湿性、熱時における接着力、耐PCT性を改善する目的で、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物と、特定構造のシロキサンジアミンとを反応させた後に、他の酸無水物及び/又は他のジアミンを反応させるポリイミド樹脂の製造方法が提案されている(例えば特許文献2)。また、シリコーン構造を主鎖に持つ高分子量のポリイミド樹脂を安全安定に製造する目的で、シリコーン系ジアミンとシリコーン系酸二無水物を特定のモル比の範囲で混合して加熱脱水縮合し、分子量が上がらなくなるまで反応させた後、反応液に芳香族ジアミンを所定のモル比で添加して反応させ、分子量を制御するポリイミド樹脂の製造方法も提案されている(例えば、特許文献3)。
特開平10−212468号公報 特開2006−117945号公報 特開2004−359874号公報
FPCの加工には、半田工程がほぼ必須に含まれるため、カバーレイフィルムに用いる接着剤には高い半田耐熱性が求められる。この点で、比較的耐熱性に優れたポリイミド樹脂はカバーレイフィルムの接着剤として適した素材であるが、半田耐熱性をさらに向上させることができれば、カバーレイフィルム用接着剤としての機能をより高めることができる。
また、FPCを使用した自動車の車載用電子機器では、繰り返し150℃程度の高温環境に置かれるため、長期間の使用でFPCのカバーレイフィルムと配線との接着力が低下し、配線保護機能が大幅に低下してしまうという問題が生じている。FPCの用途拡大に伴い、車載用電子機器に限らず、同様に過酷な温度環境でFPCが使用される場面は今後も増加していくものと予想される。このことから、高温環境で使用されるFPCにおいて、カバーレイフィルムの接着力の低下に対して対策を講ずることが強く求められている。
このようなことから、本発明者らは、先にポリイミドシロキサン中に含まれるケトン基に、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物を反応させたC=N架橋構造を有する架橋ポリイミド樹脂を提案した(PCT/JP2010/071538)。この架橋ポリイミド樹脂は、半田耐熱性に優れ、かつ高温環境下でも長期間に亘り優れた接着性能を維持できることから、カバーレイフィルム等の接着剤として利用価値が高いものである。しかし、この架橋ポリイミド樹脂は、実用上必要な耐湿半田耐熱性を発現させる上で、ポリイミドシロキサンとアミノ化合物との架橋形成比率をある程度まで高める必要があり、そのために150℃で6時間以上の加熱を要する。耐湿半田耐熱性を獲得するまでの時間を短縮することができれば、製品製造のスループットを向上させることが可能になることから、さらなる改善の余地が残されていた。
従って、本発明の課題は、短時間で耐湿半田耐熱性を発現できる程度の架橋構造を形成できるとともに、繰り返し高温にさらされる使用環境でも、接着力を低下させない接着剤層を形成可能な架橋ポリイミド樹脂を提供することである。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、イミド化後ポリイミドシロキサン中に水素結合を可能とする官能基(以下、「水素結合形成基」と記す)を導入しておくことにより、ポリイミドシロキサンの主鎖どうしに水素結合が生じて隣接するポリイミドシロキサン鎖のケトン基が近接した状態となるため、ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物との架橋形成が促進されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の架橋ポリイミド樹脂は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂であって、
前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有することを特徴とする。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記ポリイミドシロキサンが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンであってもよい。この場合、前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内であることが好ましい。
Figure 2013001750
[式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar及び/又はR中にはケトン基及び水素結合形成基を含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35〜1.0の範囲内、nは0〜0.65の範囲内である]
また、本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記ポリイミドシロキサンが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンであってもよい。この場合、前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内であることが好ましい。
Figure 2013001750
[式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar中にケトン基を、R中に水素結合形成基をそれぞれ含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35以上1.0未満の範囲内、nは0を超え0.65以下の範囲内である]
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記ポリイミドシロキサンにおける前記水素結合形成基が、−NHCO−であってもよい。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記ポリイミドシロキサンが、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものであってもよい。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記アミノ化合物が、ジヒドラジド化合物であってもよい。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、さらに、平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを、前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して5〜200重量部の範囲内で含有するものであってもよい。
本発明の接着剤樹脂組成物は、下記(A)成分及び(B)成分、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有する重量平均分子量が20,000〜150,000であるポリイミドシロキサン、並びに
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を含み、
前記(A)成分中のケトン基1モルに対し、前記第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モルの範囲内となるように前記(B)成分を含有するものである。
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(A)成分が、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンであってもよい。この場合、前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内であることが好ましい。
Figure 2013001750
[式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar及び/又はR中にはケトン基及び水素結合形成基を含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35〜1.0の範囲内、nは0〜0.65の範囲内である]
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(A)成分が、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンであってもよい。この場合、前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内であることが好ましい。
Figure 2013001750
[式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar中にケトン基を、R中に水素結合形成基をそれぞれ含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35以上1.0未満の範囲内、nは0を超え0.65以下の範囲内である]
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(A)成分における前記水素結合形成基が、−NHCO−であってもよい。
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(A)成分が、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものであってもよい。
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(B)成分が、ジヒドラジド化合物であってもよい。
本発明の接着剤樹脂組成物は、前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、更に(C)平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを5〜200重量部含有するものであってもよい。
本発明の硬化物は、上記いずれかに記載の接着剤樹脂組成物を硬化して得られるものである。
本発明のカバーレイフィルムは、接着剤層とカバーレイ用フィルム材層とを積層したカバーレイフィルムであって、
前記接着剤層が、上記いずれかに記載の接着剤樹脂組成物を用いて形成されたものである。
本発明の回路基板は、基材と、該基材上に形成された配線層と、該配線層を被覆する上記カバーレイフィルムと、を備えている。
本発明の架橋ポリイミド樹脂の製造方法は、ケトン基を有する酸無水物成分と、水素結合形成基を有するジアミン化合物及びジアミノシロキサンを含むジアミン成分と、を混合し、加熱することによりイミド化して、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを形成する工程、
前記ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程、並びに、
前記ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、前記ポリイミドシロキサンを前記アミノ化合物によって架橋する工程、
を備えている。
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、ポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分にアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成し、ポリイミドシロキサンの少なくとも一部分がアミノ化合物によって架橋された構造を有する。このため、半田耐熱性に優れるとともに、繰り返し高温環境に置かれても、金属配線層との接着力を低下させない接着剤層を形成することができる。従って、本発明の架橋ポリイミド樹脂を用いて接着剤層を形成したカバーレイフィルムの剥離強度を高め、該カバーレイフィルムを使用した回路基板の信頼性を向上させることができる。
また、本発明の架橋ポリイミド樹脂は、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを用いるため、架橋形成による硬化が完結した状態だけでなく、その途中段階でも優れた耐湿半田耐熱性を発現することができる。従って、優れた接着性と半田耐熱性とを両立させることが可能であり、カバーレイフィルム等の接着剤として有用である。
本発明の架橋ポリイミド樹脂の製造方法は、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを用いるため、加熱前の組成物の状態でも隣接するポリイミドシロキサンの主鎖どうしが水素結合によって近接した状態となる。そのため、ポリイミドシロキサンのケトン基どうしが近づき、アミノ化合物のアミノ基との架橋形成を促進することができる。従って、短時間で架橋形成させることが可能になり、硬化に要する熱処理時間の短縮化を図ることができる。
試験例1におけるサンプルのレオメーター評価の結果を示すグラフである。 試験例2におけるサンプルのレオメーター評価の結果を示すグラフである。
[架橋ポリイミド樹脂]
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、下記の成分(A)及び(B)、
(A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
(B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂である。そして、本発明の架橋ポリイミド樹脂は、前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有している。
本発明の架橋ポリイミド樹脂の好ましい態様では、上記一般式(1)及び(2)中の基Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基であり、基Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基であり、基Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基である。また、Ar及び/又はR中にはケトン基及び水素結合形成基を含み、構成単位の存在モル比を示すmは0.35〜1.0の範囲内、好ましくは0.75〜1.0の範囲内、nは0〜0.65の範囲内、好ましくは0〜0.25の範囲内である。本発明の架橋ポリイミド樹脂のさらに好ましい態様では、上記一般式(1)及び(2)中の基Ar中にケトン基を含み、かつ基R中に水素結合形成基を含むことができる。この場合、構成単位の存在モル比を示すmは0.35以上1.0未満の範囲内、より好ましくは0.75以上1.0未満の範囲内、最も好ましくは0.75以上0.99以下の範囲内である。また、構成単位の存在モル比を示すnは0を超え0.65以下の範囲内、より好ましくは0を超え0.25以下の範囲内、最も好ましくは0.01以上0.25以下の範囲内である。
本発明の架橋ポリイミド樹脂においては、前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していればよい。架橋ポリイミド樹脂の架橋形成率(硬化の度合い)は、架橋形成によるポリイミド樹脂の硬化が完了した状態でなくてもよく、実用上十分な耐湿半田耐熱性を確保できる程度であればよい。架橋ポリイミド樹脂が実用上十分な耐湿半田耐熱性を有するかどうかは、後述するように、粘度を指標として判断することができる。
[ポリイミドシロキサン]
上記(A)成分は、例えば一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンにおいて、基Ar及び/又は基R中、好ましくは基Ar中にケトン基を含み、このケトン基が、アミノ化合物との反応に関与する。一般式(1)、(2)で表される構成単位において、ケトン基を含む基Arを形成するための芳香族テトラカルボン酸としては、例えば下記の式(3)で表される3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)を挙げることができる。
Figure 2013001750
また、一般式(1)及び(2)で表される構成単位において、基Arを形成するための原料となる芳香族テトラカルボン酸としては、上記ケトン基を有するもの以外に、例えば、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物(DSDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)等を使用することができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
また、上記一般式(1)、(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンにおいて、「水素結合形成基」としては、例えば−NHCO−等を挙げることができる。このような水素結合形成基を含むことにより、隣接するポリイミドシロキサン鎖の間で水素結合が生じ、アミノ化合物との架橋反応の反応点となるケトン基どうしを近づけることができるため、アミノ化合物による架橋反応が促進され、十分な耐湿半田耐熱性を生じさせるまでの加熱時間を短縮できる。水素結合形成基は、一般式(1)及び(2)のどちらか片方に含まれていてもよく、両方に含まれていてもよい。また、水素結合形成基は、基Arで表される酸無水物成分、または基Rもしくは基Rで表されるジアミン成分のいずれかの中に含まれていればよいが、一般式(2)中の基Rに含まれていることが好ましい。全ジアミンに対する水素結合形成基の存在モル比は、隣接するポリイミドシロキサンの主鎖間で水素結合を効率よく形成するために、0を超え1.3以下の範囲内、より好ましくは0を超え0.5以下の範囲内、最も好ましくは0.02以上0.5以下の範囲内とすることができる。
また、一般式(1)で表される構成単位において基Rとしては、例えば、下記の式(4)で表されるジアミノシロキサンから誘導されたジアミノシロキサン残基を挙げることができる。
Figure 2013001750
[ここで、R及びRは、それぞれ、酸素原子を含有していてもよい2価の有機基を示し、R〜Rは、それぞれ炭素数1〜6の炭化水素基を示し、平均繰り返し数であるmは、1〜20である]
特に、基Rとしては、ポリイミドの可溶性を付与するために、式(4)中のR及びRがそれぞれ2価の炭化水素基であり、R〜Rがそれぞれ炭素数1〜6の炭化水素基であり、平均繰り返し数であるmが5〜15であるものが好ましい。
上記ジアミノシロキサン残基は、ジアミノシロキサンからアミノ基を除いたシロキサン結合(Si−O−Si)を有する基であるが、このシロキサン結合の割合を増加させることによって、可塑剤を配合しなくても接着剤層に十分な柔軟性が付与され、カバーレイフィルムの反りを抑制できる。また、可塑剤中には極性基が多く含まれることから、可塑剤を配合しないことの利点として、一般式(1)及び(2)で表される構成単位を有するポリイミドシロキサンを用いた接着剤樹脂組成物中に含まれる極性基の量を抑制できることが挙げられる。このため、本発明では、式(1)におけるmの値を0.35以上、好ましくは0.75以上とする。mの値が0.35未満では反りの抑制効果が十分に得られない。また、シロキサン結合を増加させることによって、ポリイミドシロキサンのイミド結合部位の減少による硬化収縮を低減させる効果もあると考えられる。
このように、上記一般式(4)で表されるジアミノシロキサンを用いてポリイミド中にシロキサン骨格を導入することにより、得られるポリイミドシロキサンに加熱圧着時の流動性を与え、プリント回路配線上での充填性を向上させることができる。一般式(4)で表されるジアミノシロキサンの具体例としては、下記の式(5)〜式(9)で表されるジアミノシロキサンが好ましく、これらの中でも式(5)又は式(6)で表される脂肪族のジアミノシロキサンがより好ましい。これらのジアミノシロキサンは、2種以上を組み合わせて配合することもできる。また、2種以上のジアミノシロキサンを組み合わせて配合する場合、式(5)又は式(6)で表される脂肪族のジアミノシロキサンを全ジアミノシロキサン100重量部に対し、90重量部以上配合することが好ましい。なお、式(4)〜式(9)において、平均繰り返し数であるmは1〜20の範囲内であり、好ましくは5〜15の範囲内である。mが1より小さいと接着剤とした場合の充填性が低下し、20を超えると接着性が低下する。
Figure 2013001750
一般式(2)で表される構成単位において、ケトン基を含む基R(ジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基)としては、例えば以下の式(10)、(11)で表される芳香族ジアミンを挙げることができる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
Figure 2013001750
[ここで、Rは独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、XはCOを示し、nは独立に0〜4の整数を示す]
上記式(10)、(11)で表される基Rを形成するための芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’―ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾフェノン(BABP)、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン(BABB)等を挙げることができる。
また、一般式(2)で表される構成単位において、水素結合形成基を有する基Rを形成するための原料となるジアミン化合物としては、例えば水素結合形成基が−NHCO−基である場合はジヒドラジド化合物等を挙げることができる。ここで、ジヒドラジド化合物の具体例としては、脂肪族ジヒドラジドであるドデカン二酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジド等、芳香族ジヒドラジドであるイソフタル酸ジヒドラジド等を挙げることができる。これらの中でも脂肪族ジヒドラジドであるドデカン二酸ジヒドラジドやアジピン酸ジヒドラジドが好ましい。
また、一般式(2)で表される構成単位において、基Rを形成するための原料となる他のジアミン化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン(BAPP)、2,2’−ジビニル−4,4’−ジアミノビフェニル(VAB)、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル(m−TB)、2,2’−ジエチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,6,6’−テトラメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジフェニル−4,4’−ジアミノビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミンを挙げることができる。これらの芳香族ジアミンは、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリイミドシロキサンの原料となる以上の酸無水物及びジアミンは、それぞれ、その1種のみを使用してもよいし、あるいは2種以上を併用することもできる。また、上記以外の酸無水物及びジアミンを併用することもできる。
[ポリイミドシロキサンの合成]
(A)成分のポリイミドシロキサンは、上記芳香族テトラカルボン酸無水物、ジアミノシロキサン及びジアミンを溶媒中で反応させ、前駆体樹脂であるポリアミド酸を生成したのち加熱閉環させることにより製造できる。例えば、酸無水物成分とジアミン成分をほぼ等モルで有機溶媒中に溶解させて、0〜100℃の範囲内の温度で30分〜24時間撹拌し重合反応させることでポリイミドの前駆体であるポリアミド酸が得られる。反応にあたっては、生成する前駆体が有機溶媒中に5〜30重量%の範囲内、好ましくは10〜20重量%の範囲内となるように反応成分を溶解する。重合反応に用いる有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAC)、N−メチル−2−ピロリドン、2−ブタノン、ジメチルスホキシド、硫酸ジメチル、シクロヘキサノン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジグライム、トリグライム等が挙げられる。これらの溶媒を2種以上併用して使用することもでき、更にはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素の併用も可能である。
合成された前駆体は、通常、反応溶媒溶液として使用することが有利であるが、必要により濃縮、希釈又は他の有機溶媒に置換することができる。また、前駆体は一般に溶媒可溶性に優れるので、有利に使用される。前駆体をイミド化させる方法は、特に制限されず、例えば前記溶媒中で、80〜300℃の範囲内の温度条件で1〜24時間かけて加熱するといった熱処理が好適に採用される。
(A)成分のポリイミドシロキサンを調製する際に、原料となる酸無水物成分及びジアミン成分の配合比率は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリイミドシロキサンの末端置換基をアミノ基とし、すなわち、酸無水物基をジアミンで封止し、架橋ポリイミド樹脂の極性を抑制するという観点から、酸無水物成分:ジアミン成分として、モル比で1.000:1.001〜1.0:1.2が好ましい。
また、(A)成分のポリイミドシロキサンは、芳香族テトラカルボン酸無水物、ジアミノシロキサン及びジアミン化合物との反応で得られるイミド構造となっており、例えばカバーレイフィルムの接着剤として使用した場合に、銅の拡散を抑制するために完全にイミド化された構造が最も好ましい。但し、ポリイミドの一部がアミド酸となっていてもよい。そのイミド化率は、フーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、1回反射ATR法にてポリイミド薄膜の赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1015cm−1付近のベンゼン環吸収体を基準とし、1780cm−1のイミド基に由来するC=O伸縮の吸光度から算出される。
[水素結合の形成]
以上のようにして得られるポリイミドシロキサンは、分子構造中に水素結合形成基を有するため、常温でも隣接するポリイミドシロキサンの主鎖どうしの間で水素結合が生じる。例えば、ポリイミドシロキサン中に含まれる水素結合形成基が−NHCO−基である場合、隣接する片方のポリイミドシロキサン鎖のNH基と、もう片方のポリイミドシロキサン鎖のCO基との間に水素結合が生じる。その結果、多数のポリイミドシロキサン鎖をある程度の配向状態に近づけるとともに、隣り合うポリイミドシロキサン鎖の間で、アミノ化合物との架橋反応の反応点となるケトン基どうしを近づけることができる。このような水素結合の形成は、ポリイミドシロキサンを溶媒溶液の状態で保持しておくことにより進行し、イミン架橋反応を促進させるために十分な水素結合を形成できる。
[アミノ化合物]
本発明の架橋ポリイミド樹脂において、上記(A)成分のポリイミドシロキサンのケトン基と反応させる相手方の(B)成分である、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物としては、(I)芳香族ジアミン、(II)ジアミノシロキサン、(III)脂肪族アミン、(IV)ジヒドラジド化合物等を例示することができる。
(I)芳香族ジアミン:
芳香族ジアミンとしては、例えば以下の式(12)、(13)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2013001750
[ここで、R10は独立に炭素数1〜6の1価の炭化水素基又はアルコキシ基を示し、Zは単結合又は炭素数1〜15の2価の炭化水素基、O、S、CO、SO、SO、NH若しくはCONHから選ばれる2価の基を示し、nは独立に0〜4の整数を示す]
このような芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2’−メトキシ−4,4’−ジアミノベンズアニリド、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジヒドロキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、ビスアニリンフルオレン等が好ましく挙げられる。
さらに、芳香族ジアミンの他の例として、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[1−(4−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[1−(3−アミノフェノキシ)]ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)]ベンゾフェノン、ビス[4,4’−(4−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、ビス[4,4’−(3−アミノフェノキシ)]ベンズアニリド、9,9−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]フルオレン、2,2−ビス−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス−[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレンジ−o−トルイジン、4,4’−メチレンジ−2,6−キシリジン、4,4’−メチレン−2,6−ジエチルアニリン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、3,3’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、3,3’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ベンジジン、3,3’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4'’−ジアミノ−p−テルフェニル、3,3'’−ジアミノ−p−テルフェニル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、1,4−ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス(p−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(p−β−アミノ−t−ブチルフェニル)エーテル、ビス(p−β−メチル−δ−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(2−メチル−4−アミノペンチル)ベンゼン、p−ビス(1,1−ジメチル−5−アミノペンチル)ベンゼン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン、2,4−ビス(β−アミノ−t−ブチル)トルエン、2,4−ジアミノトルエン、m−キシレン−2,5−ジアミン、p−キシレン−2,5−ジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、2,6−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノピリジン、2,5−ジアミノ−1,3,4−オキサジアゾール、ピペラジン等を挙げることができる。以上の芳香族ジアミンは、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
(II)ジアミノシロキサン:
ジアミノシロキサンとしては、下記一般式(14)で表されるジアミノシロキサン又はそのオリゴマーが好ましく挙げられる。
Figure 2013001750
(ここで、R11及びR12は2価の炭化水素基を示し、R13〜R16は炭素数1〜6の炭化水素基を示し、mは1〜20の数、好ましくは1〜10の数を示す。)
このようなジアミノシロキサンとしては、例えばジアミノプロピルテトラメチルジシロキサン、上記一般式(5)〜(9)で表されるジアミノシロキサン等を挙げることができる。以上のジアミノシロキサンは、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
(III)脂肪族アミン:
脂肪族アミンとしては、例えば、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、4,4’−メチレンビスシクロヘキシルアミン等のジアミノアルカン類、トリス(2−アミノエチル)アミン、N,N’−ビス(2−アミノエチル)−1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ジエチレントリアミン、N−メチル−2,2’−ジアミノジエチルアミン、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、N,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン等の窒素原子を含有するアミン類、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス(2−アミノエトキシ)エタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]−ウンデカン等の酸素原子を含有するアミン類、2,2’−チオビス(エチルアミン)等の硫黄原子を有するアミン類等を挙げることができる。以上の脂肪族アミンは、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
(IV)ジヒドラジド化合物:
ジヒドラジド化合物としては、下記一般式(15)で表されるものを挙げることができる。
Figure 2013001750
一般式(15)中、R17は、例えば単結合、脂肪族基、芳香族基等を挙げることができる。R17として好ましいものを、ジヒドラジド化合物の例示によって説明すると、次の化合物が挙げられる。例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、ピメリン酸ジヒドラジド、スベリン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン二酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ二酸ジヒドラジド、4,4−ビスベンゼンジヒドラジド、1,4−ナフトエ酸ジヒドラジド、2,6−ピリジン二酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等が挙げられる。以上のジヒドラジド化合物は、単独でもよいし、2種類以上混合して用いることもできる。
上記のような少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物の中でも、特にジヒドラジド化合物が最も好ましい。ジヒドラジド化合物を使用した場合は、他のアミノ化合物を使用した場合に比べて接着剤樹脂組成物の硬化時間を短縮することができる。これは、ジヒドラジド化合物の第1級のアミノ基がケトン基と反応して得られる生成物が、セミカルバゾン様の分子構造となり、分子間のNH同士の水素結合による2量体構造を形成することによって生成物の安定性が向上するため、反応の平衡が生成物側に偏り、原料であるポリイミドシロキサンのケトン基とジヒドラジド化合物のアミノ基を生成する方向への逆反応が起こりにくくなることに因るものと考えられる。
また、上記(I)芳香族ジアミン、(II)ジアミノシロキサン、(III)脂肪族アミン、(IV)ジヒドラジド化合物等のアミノ化合物は、例えば(I)と(II)の組み合わせ、(I)と(III)との組み合わせ、(I)と(II)と(III)との組み合わせ、(I)〜(IV)の組み合わせのように、カテゴリーを超えて2種以上組み合わせて使用することもできる。特に、(I)、(II)又は(III)のアミノ化合物と、(IV)のジヒドラジド化合物とを所定の配合比率で組み合わせることによって、(I)〜(III)のアミノ化合物の特性を生かしながら、(IV)のジヒドラジド化合物の配合比率に応じて硬化時間の短縮効果を得ることが期待される。
また、アミノ化合物の架橋による網目状の構造をより密にするという観点から、本発明で使用するアミノ化合物は、その分子量(アミノ化合物がオリゴマーの場合は重量平均分子量)が5,000以下であることが好ましく、より好ましくは90〜2,000、更に好ましくは100〜1,500がよい。この中でも、100〜1,000の分子量をもつアミノ化合物が特に好ましい。アミノ化合物の分子量が90未満になると、アミノ化合物の1つのアミノ基がポリイミドシロキサンのケトン基をC=N結合を形成するにとどまり、残りのアミノ基の周辺が立体的に嵩高くなるために残りのアミノ基はC=N結合しにくい傾向となる。
[架橋ポリイミド樹脂の製造方法]
本発明の架橋ポリイミド樹脂の製法方法は、上記(A)成分である、ケトン基を有する酸無水物成分と、水素結合形成基を有するジアミン化合物及びジアミノシロキサンを含むジアミン成分と、を混合し、加熱することによりイミド化して、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを形成する工程と、
ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程と、
ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、上記(B)成分である、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、ポリイミドシロキサンをアミノ化合物によって架橋する工程と、を備えている。具体的には、上記(A)成分のポリイミドシロキサンを含み、主鎖間に水素結合が生じた状態の樹脂溶液に、(B)成分の少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物を加えて、ポリイミドシロキサンのケトン基の一部又は全部とアミノ化合物の第1級アミノ基とを縮合反応させることにより製造される。この縮合反応により、ポリイミドシロキサン鎖間で架橋形成が進行し、架橋の形成度合いに応じて接着剤樹脂組成物が徐々に硬化してゆく。この場合、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モル、好ましくは0.005モル〜1.2モル、より好ましくは0.03モル〜0.9モル、特に好ましくは0.04モル〜0.5モルとなるようにアミノ化合物を添加することが好ましい。ケトン基1モルに対して第1級アミノ基が合計で0.004モル未満となるようなアミノ化合物の添加量では、アミノ化合物によるポリイミドシロキサンの架橋が十分ではないため、接着剤樹脂組成物を硬化させた後の硬化物において半田耐熱性が発現しにくい傾向となり、アミノ化合物の添加量が1.5モルを超えると未反応のアミノ化合物が熱可塑剤として作用し、同硬化物において半田耐熱性を低下させたり、高温での長期耐熱性を低下させたりする傾向がある。
また、縮合反応による硬化は、ポリイミドシロキサンにおけるケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基が反応してイミン結合(C=N結合)を形成できる条件であれば、特に制限されない。アミノ化合物の種類にもよるが、例えば脂肪族アミンを使用する場合は、常温においてもポリイミドシロキサンにおけるケトン基と縮合させることが可能であるが、加熱によって縮合反応を促進することが好ましい。アミノ化合物として、脂肪族アミンを使用する場合は、例えば60〜200℃の範囲内で加熱縮合を行うことが好ましく、芳香族アミンを使用する場合は、例えば120〜220℃の範囲内で加熱縮合を行うことが好ましい。加熱縮合の温度は、縮合によって生成する水を系外へ放出させるため、又はポリイミドシロキサンの合成の後に引き続いて加熱縮合反応を行なう場合に当該縮合工程を簡略化するため等の理由で、例えば120〜220℃の範囲内が好ましく、140〜200℃の範囲内がより好ましい。反応時間は、0.5時間〜24時間程度が好ましい。短時間の熱処理で実用上十分な耐湿半田耐熱性を得るという観点から、160℃以上で、0.5時間以上の加熱とすることが好ましい。そして、より低温の熱処理で実用上十分な吸湿ハンダ耐熱性を得るという観点から150℃以上で、1時間以上の加熱とすることが望ましい。
縮合反応の終点は、例えばフーリエ変換赤外分光光度計(市販品:日本分光製FT/IR620)を用い、赤外線吸収スペクトルを測定することによって、1670cm−1付近のポリイミドシロキサンにおけるケトン基に由来する吸収ピークの減少又は消失、及び1635cm−1付近のイミン基に由来する吸収ピークの出現により確認することができるし、あるいはラマン分光光度計(市販品:日本分光製 NRS−3100)を用い、ラマンスペクトルを測定することによって、1567cm−1付近のイミン基に由来するピークの出現により確認することができる。また、160℃、2時間の熱処理で実用上十分な耐湿ハンダ耐熱性を発現できるか否かは、形成された架橋ポリイミド樹脂の粘度を指標として把握することが可能である。例えば、ポリイミド樹脂の分子量が70,000〜140,000の範囲内である場合に、温度260℃における架橋剤を添加したポリイミド樹脂の粘度が1×10Pa・s以上であることが好ましい。温度260℃における架橋ポリイミド樹脂の粘度が1×10Pa・s以上であれば、実用上十分な耐湿半田耐熱性を獲得できる程度まで架橋形成が生じるものと考えることができる。このように架橋ポリイミド樹脂の粘度をしきい値として採用する理由は、第1にC=N結合による架橋形成率を直接測定することが困難であることが挙げられる。第2に、実用上十分な耐湿半田耐熱性を獲得するために必要な架橋形成率(ケトン基の消費率)は、架橋ポリイミド樹脂の分子量に応じて変化するため、単純に架橋形成率によって本発明の架橋ポリイミド樹脂における耐湿半田耐熱性を判断することが困難であることが挙げられる。しかし、温度260℃における架橋ポリイミド樹脂の粘度が1×10Pa・s以上であれば、実用上十分な耐湿半田耐熱性を獲得できた状態になっているものと考えるため、本発明では、このときの粘度を縮合反応による硬化の終点を判断する目安として採用している。従って、縮合反応の終点とは、必ずしもケトン基のすべてが消費され、それ以上の硬化が進まないことを意味するのではなく、実用上十分な性質(特に耐湿半田耐熱性)を持つ硬化物(半硬化物)が得られた時点を意味する。
ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基との加熱縮合は、例えば、
(a)ポリイミドシロキサンの合成(イミド化)に引き続き、アミノ化合物を添加して加熱すること、
(b)ジアミン成分として予め過剰量のアミノ化合物を仕込んでおき、ポリイミドシロキサンの合成(イミド化)に引き続き、イミド化(若しくはアミド化)に関与しない残りのアミノ化合物とともにポリイミドシロキサンを加熱すること、又は、
(c)アミノ化合物を添加したポリイミドシロキサンの組成物を所定の形状に加工した後(例えば任意の基材に塗布した後やフィルム状に形成した後)に加熱すること、
等によって行うことができる。
上記(b)の場合、過剰のアミノ化合物は、ポリイミドシロキサンの製造時における末端置換基として酸無水物基を封止する反応に消費され、生成するポリイミドシロキサンの分子量が極端に低下することがあるので、硬化物において十分な耐熱性が得られにくい傾向がある。そのため、予め過剰量のアミノ化合物を仕込む方法[上記(b)]は、本発明の効果を損なわない範囲内において適宜用いることが好ましい。アミノ化合物における少なくとも2つの第1級アミノ基を有効にケトン基と反応させてC=N結合を形成させるためには、上記(a)又は(c)のように、アミノ化合物をポリイミドシロキサンの合成(イミド化)を完了した後に添加することが好ましい。上記(c)の場合、加熱縮合は、例えばアミノ化合物とポリイミドシロキサンとが混合した状態の組成物によってカバーレイフィルムの接着剤層を形成する際に行う熱処理の熱や、該接着剤層を形成した後、配線層を有する回路基板に熱圧着させる際の熱などを利用して行うこともできる。
[無機フィラー]
本発明の架橋ポリイミド樹脂は、任意の(C)成分として、平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを含有することができる。(C)成分の無機フィラーを配合することによって、架橋ポリイミド樹脂を例えばカバーレイフィルムの接着剤層に利用する場合に、ガスバリア性を有する無機フィラーにより、大気中の酸素の透過が遮断される結果、銅配線の酸化と銅の拡散が抑制されて長期耐熱性を向上させることができる。
(C)成分の無機フィラーとしては、接着剤層に十分なガスバリア性を付与するために、板状のものを用いることが好ましい。ここで「板状」とは、例えば、扁平状、平板状、薄片状、鱗片状等を含む意味で用い、無機フィラーの厚みが、平面部分の長径又は短径より十分に小さいもの(好ましくは1/2以下)をいう。特に、鱗片状の無機フィラーを用いることが好ましい。別の観点から、「板状」はフィラー粒子の長径と厚みとの比(長径/厚み)が好ましくは5以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは15以上であるものを意味する。また、板状の無機フィラーは、上記長径と平均粒径との関係が、長径≧平均粒径>0.4×長径であることが好ましく、より好ましくは長径≧平均粒径≧0.5×長径であることがよい。なお、本発明においてフィラー粒子の長径(又は短径)及び厚み並びに長径と厚みとの比は、実体顕微鏡により任意10粒のフィラーを測定したときの平均値とする。無機フィラーの形状が板状でなく、例えば球状である場合には、接着剤層のガスバリア性が低下して配線層の酸化が進行し、カバーレイフィルムの接着強度が低下する場合があるが、板状フィラー配合の効果を損なわない範囲で、板状以外の形状の無機フィラーを配合することを妨げるものではない。
(C)成分の無機フィラーとしては、例えばタルク、マイカ、セリサイト、クレイ、カオリン等の絶縁性の無機フィラーを用いることが好ましい。
無機フィラーは、レーザー回折法により算出した平均粒径が2〜25μmの範囲内であることが好ましく、5〜20μmの範囲内であることがより好ましい。ここで、無機フィラーの粒径は、粒子の長手直径の平均値を基準とする。平均粒径が上記上限値を超えると、カバーレイフィルムの接着剤層の表面荒れが生じる傾向があり、上記下限値を下回ると、酸素透過を抑制する効果が得られにくい。
また、無機フィラーの粒度分布は、個数基準で、粒径10μm以下が好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上であり、粒径20μm以上が10%以下であることが好ましい。粒径10μm以下の無機フィラーが60%未満であると、接着剤樹脂組成物をフィルム化した際に、フィラーが層状に並ばす、フィルム表面に突起が現れ、フィルム表面の荒れの原因となる。また、粒径20μm以上の無機フィラーが10%を超えると、フィルム表面に突起が現れ、フィルム表面の荒れの原因となり、例えば15μm以下の薄いフィルムを作製した際には、表面荒れの傾向になりやすい。また、無機フィラーの粒径の頻度分布は、0.1〜100μmが好ましく、0.5〜70μmがより好ましい。頻度分布が、上記上限値を超えると、接着剤層の表面荒れが生じる傾向があり、上記下限値を下回ると、酸素透過を抑制する効果が得られにくい。
(C)成分の無機フィラーの配合量は、上記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、5〜200重量部であり、好ましくは10〜150重量部であり、更に好ましくは30〜100重量部であり、望ましくは40〜80重量部である。上記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して無機フィラーの配合量が5重量部未満では、配合の効果が得られず、酸素透過を抑制する効果が得られない。また、上記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して無機フィラーの配合量が200重量部を超えると、接着剤層が脆弱となり、その結果として接着剤層での凝集破壊による強度低下が生じるため、見かけ上の接着性が著しく低下する。また、本発明において無機フィラーは、板状のものを用いるが、板状でない無機フィラーを併用することも可能である。板状でない無機フィラーを併用する場合には、(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して無機フィラー全体(板状およびその他形状の合計)の配合量が200重量部を超えないようにすることが好ましい。
[作用]
上記(A)成分のポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基との反応は、脱水縮合反応であり、ポリイミドシロキサン中のケトン基の炭素原子と第1級アミノ基の窒素原子がC=N結合を形成する結果、鎖状のポリイミドシロキサンがアミノ化合物によって架橋されて網目状の高分子を形成するものと考えられる。そして、上記(A)成分のポリイミドシロキサン中に水素結合形成基を含むことにより、架橋反応に先立ち、隣接するポリイミドシロキサン鎖の間で水素結合が生じ、アミノ化合物との架橋反応の反応点となるケトン基どうしを近づけることができる。その結果、アミノ化合物による架橋反応が促進され、実用上十分な耐湿半田耐熱性を獲得するまでの加熱時間を短縮できる。通常、ポリイミドシロキサンは分子間相互作用を生じにくいため、ポリイミドシロキサンの配向制御は困難であるが、水素結合を可能とする基を主鎖中に含むことにより、水素結合を生じさせることができる。さらに、ケトン基とアミノ化合物との架橋構造が生じると、ポリイミドシロキサンにおける見かけ上の高分子量化のみならず、ポリイミドシロキサンの分子同士をある程度拘束することが可能になるので、耐熱性が向上し、極めて優れた半田耐熱性が得られると考えられる。また、C=N結合における窒素原子近傍が立体的に嵩高くなることにより、架橋ポリイミド樹脂に含まれる極性基の銅原子の求核能を低下させることによって、銅配線からの銅の接着剤層への拡散を抑制することができ、高温環境での使用における接着強度の低下を抑制する効果が得られるものと考えられる。このような理由により、本発明で使用するアミノ化合物は、少なくとも2つのアミノ基を有する必要があり、アミノ基の数は好ましくは2〜5、より好ましくは2〜3である。また、アミノ基を3つ以上有するアミノ化合物では、2つのアミノ基がC=N結合を形成した後の架橋構造体が立体的に嵩高くなるために、残りの未反応のアミノ基がケトン基と反応しにくくなることから、アミノ基の数は2であることが特に好ましい。さらに、上記のとおり接着剤樹脂組成物の硬化時間を短縮するという観点では、アミノ化合物としてジヒドラジド化合物を用いることが最も好ましい。
[接着剤樹脂組成物]
本発明の接着剤樹脂組成物は、上記ポリイミドシロキサン[(A)成分]と、少なくとも2つの第1級のアミノ基を官能基として有するアミノ化合物[(B)成分]と、を必須成分として含有する。この接着剤樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分を混合もしくは混練させることにより、並びに/または(A)成分及び(B)成分を含有した状態で加熱することにより、前記ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級のアミノ基とが縮合反応してC=N結合を形成する性質を有する。すなわち、本発明の接着剤樹脂組成物は、ポリイミドシロキサンとアミノ化合物との縮合反応によって本発明の硬化物に変化する。ここで、本発明の「硬化物」とは、ポリイミドシロキサンのケトン基と、アミノ化合物の第1級アミノ基との架橋反応がそれ以上進行しない程度まで完結した状態だけではなく、上記架橋反応の余地を残した半硬化の状態をも含む。本発明の接着剤樹脂組成物において、(A)成分の重量平均分子量は、例えば30,000〜200,000の範囲内の範囲内が好ましく、160℃、2時間の加熱で十分な耐湿半田耐熱性を得るとの観点からは70,000〜140,000の範囲内がより好ましい。(A)成分の重量平均分子量が70,000未満であると、接着剤樹脂組成物を溶液にした場合の流動性の制御が困難になり、また硬化物の耐熱性の低下が生じる傾向になる。一方、重量平均分子量が140,000を超えると、溶剤への可溶性を損なう傾向になる。
接着剤樹脂組成物は、ケトン基1モルに対し、第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モル、好ましくは0.005モル〜1.2モル、より好ましくは0.03モル〜0.9モル、特に好ましくは0.04モル〜0.5モルとなるようにアミノ化合物を含有する。
本発明の接着剤樹脂組成物には、上記(A)成分のポリイミドシロキサン、(B)成分のアミノ化合物とともに、任意成分として上記(C)成分の無機フィラーを含有することが好ましい。さらに必要に応じて、エポキシ樹脂などの他の樹脂成分、硬化促進剤、カップリング剤、充填剤、顔料、溶剤、難燃剤などを適宜配合することができる。ただし、可塑剤には、極性基を多く含有するものがあり、それが銅配線からの銅の拡散を助長する懸念があるため、可塑剤は極力使用しないことが好ましい。
本発明の接着剤樹脂組成物に(C)成分の無機フィラー以外の任意成分を配合する場合は、例えば、架橋ポリイミド樹脂100重量部に対し、任意成分の合計で1〜10重量部の配合量とすることが好ましく、2〜7重量部の配合量とすることがより好ましい。
以上のようにして得られる本発明の接着剤樹脂組成物は、これを用いて接着剤層を形成した場合に優れた柔軟性と熱可塑性を有するものとなり、例えばFPC、リジッド・フレックス回路基板などの配線部を保護するカバーレイフィルム用の接着剤として好ましい特性を有している。カバーレイフィルムの接着剤層として使用する場合、カバーレイ用フィルム材の片面に本発明の接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布した後、例えば60〜220℃の温度で熱圧着させることにより、カバーレイ用フィルム材層と接着剤層を有する本発明のカバーレイフィルムを形成できる。この場合、熱圧着の際の熱を利用してポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを加熱縮合させることができる。また、熱圧着の際の加熱縮合が充分でない場合でも、熱圧着の後に更に熱処理を施して加熱縮合させることもできる。熱圧着後に熱処理を施す場合、熱処理温度は、例えば60〜220℃が好ましく、80〜200℃がより好ましい。また、任意の基材上に、本発明の接着剤樹脂組成物を溶液の状態(例えば、溶剤を含有するワニス状)で塗布し、例えば80〜180℃の温度で乾燥した後、剥離することにより、接着剤フィルムを形成し、この接着剤フィルムを、上記カバーレイ用フィルム材と例えば60〜220℃の温度で熱圧着させることによっても、カバーレイ用フィルム材層と接着剤層を有する本発明のカバーレイフィルムを形成できる。この場合も、熱圧着の際の熱を利用してポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを加熱縮合させることができる。以上のように、本発明の接着剤樹脂組成物は、ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とが未反応の状態で種々の形態に加工して利用できる。更にまた、本発明の接着剤樹脂組成物は、任意の基材上に、スクリーン印刷により溶液の状態で被覆膜を形成し、例えば80〜180℃の温度で乾燥させて使用することもできる。好ましくは更に130〜220℃の温度で所定時間熱処理し、被覆膜を完全に硬化させることにより、硬化物を形成することもできる。
[カバーレイフィルム・ボンディングシート]
本発明のカバーレイフィルムは、カバーレイフィルム材と、該カバーレイフィルム材に積層された、上記接着剤樹脂組成物により構成される接着剤層とを備えている。本発明のカバーレイフィルムにおけるカバーレイ用フィルム材としては、限定する趣旨ではないが、例えばポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂等のポリイミド系樹脂フィルムや、ポリアミド系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂フィルムなどを用いることができる。これらの中でも、優れた耐熱性を持つポリイミド系樹脂フィルムを用いることが好ましい。カバーレイ用フィルム材層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば5μm以上100μm以下が好ましい。また、接着剤層の厚さは、特に限定されるものではないが、例えば10μm以上50μm以下が好ましい。
また、本発明の接着剤樹脂組成物をフィルム状に形成したものは、例えば多層FPCのボンディングシートとしても利用することができる。ボンディングシートとして用いる場合、任意の基材フィルム上に、本発明の接着剤樹脂組成物を溶液の状態で塗布し、例えば80〜180℃の温度で乾燥した後、剥離して得られる接着剤フィルムをそのままボンディングシートとして使用してもよいし、この接着剤フィルムを任意の基材フィルムと積層した状態で使用してもよい。ボンディングシートとして用いる場合も、熱圧着の際の熱を利用してポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とを加熱縮合させることができるし、熱圧着の後に更に熱処理を施して加熱縮合させることもできる。
また、カバーレイフィルムやボンディングシートは、接着剤面に離型材を貼り合わせて離型材層を有する形態としてもよい。離型材の材質は、カバーレイフィルムやボンディングシートの形態を損なうことなく剥離可能であれば特に限定されるものではないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの樹脂フィルムや、これらの樹脂フィルムを紙上に積層したものなどを用いることができる。
本発明の接着剤樹脂組成物を用いて、成型し、熱処理により上記加熱縮合反応を生じさせて得られるカバーレイフィルムやボンディングシートは、ポリイミドシロキサンとアミノ化合物との反応によって得られた架橋ポリイミド樹脂を含有するため、優れた半田耐熱性を有している。より具体的には、後記実施例に示すように、半田耐熱性(乾燥)が260℃以上、好ましくは280℃以上、より好ましくは300℃以上であり、半田耐熱性(耐湿)が200℃以上、好ましくは260℃以上、より好ましくは280℃以上である。このように極めて優れた半田耐熱性を具備することにより、半田工程で変形や剥離などの発生が防止され、製造される回路基板等の歩留まりと信頼性の向上に寄与できる。
[回路基板]
本発明の回路基板は、以上のようにして得られるカバーレイフィルムやボンディングシートを備えている限り、その構成に特に制限はない。例えば、本発明の回路基板の好ましい形態は、少なくとも、基材と、基材上に所定のパターンで形成された銅などの金属からなる配線層と、該配線層を覆う本発明のカバーレイフィルムとを備えている。回路基板の基材としては、特に限定する趣旨ではないが、FPCの場合は、上記カバーレイ用フィルム材と同様の材質を用いることが好ましく、ポリイミド系樹脂製の基材を用いることが好ましい。
本発明の回路基板は、本発明のカバーレイフィルムを用いることにより、優れた柔軟性と熱可塑性を有する接着剤層が配線間に充填され、カバーレイフィルムと配線層との高い密着性が得られる。また、ポリイミドシロキサンとアミノ化合物との反応によって得られた架橋ポリイミド樹脂を含む接着剤層を形成することにより、銅配線からの銅の拡散が抑制され、高温環境での使用が繰り返されても、優れた密着性を長期間に亘り維持できる。より具体的には、大気中、150℃、1000時間の長期耐熱性試験後において、エネルギー分散型X線(EDX)分析装置による測定(後記実施例を参照)で、接着剤層への銅の拡散量を2.5%以下に抑制することができる。その結果、長期耐熱性試験後の銅配線層とカバーレイ用フィルム材層との剥離強度を0.2kN/m以上に維持することが可能である。特に、一般式(1)及び(2)中の基Ar、基R及び基Rを選定することにより、0.4kN/m以上の極めて高い剥離強度を得ることが可能である。また、原料の全ジアミン成分に対するジアミノシロキサンの配合比率を35モル%以上とすることにより、優れた可溶性を得ることが可能であり、可塑剤を配合しなくても、カバーレイフィルムの反りを防止できる。
また、本発明の回路基板は、多層回路基板として構成してもよい。この場合、カバーレイフィルムだけでなく、ボンディングシートにも、本発明の接着剤樹脂組成物から得られる接着剤フィルムを用いることができる。
本発明の回路基板の製造は、特に限定されるものではないが、例えば銅張積層板などの金属張積層板の金属箔を化学エッチング等の方法で所定のパターンに回路加工した後、その回路上の必要な部分にカバーレイフィルムを積層し、例えば熱プレス装置などを用いて熱圧着する方法などを挙げることができる。この場合、圧着条件は、特に限定されるものではないが、例えば、圧着温度は好ましくは130℃以上220℃以下、より好ましくは140℃以上200℃以下、圧力は0.1MPa以上4MPa以下とすることが好ましい。なお、カバーレイフィルムの状態で、ポリイミドシロキサンのケトン基とアミノ化合物の第1級アミノ基とが未反応である場合は、カバーレイフィルムを回路配線に熱圧着させる際の熱を利用して縮合反応を起こさせることができる。すなわち、カバーレイフィルムの接着剤層が配線層に当接するように配置し、両部材を熱圧着する工程と同時に、接着剤層中に含まれる(A)成分のケトン基と(B)成分の第1級のアミノ基とを縮合反応させてC=N結合を形成させることが可能である。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、特にことわりのない限り各種測定、評価は下記によるものである。
[接着強度の測定]
接着強度は、幅10mm、長さ100mmに切り出した試験片の接着剤面を銅箔(35μm厚み)の光沢面(防錆金属を除去したもの)の上に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスした後、引張試験機(東洋精機株式会社製、ストログラフ−M1)を用いて、180°方向に50mm/分の速度で引き剥がす時の力を接着強度とする。
[重量平均分子量(Mw)の測定]
重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ(東ソー株式会社製、HLC−8220GPCを使用)により測定した。標準物質としてポリスチレンを用い、展開溶媒にN,N−ジメチルアセトアミドを用いた。
[反りの評価方法]
反りの評価は、以下の方法で行った。厚さ25μmのカプトンフィルム上に乾燥後の厚さが35μmになるようにポリイミド接着剤を塗布した。この状態でカプトンフィルムが下面になるように置き、フィルムの4隅の反り上がっている高さの平均を測定し、5mm以下を「良」、5mmを超える場合を「不可」とした。
[半田耐熱性(乾燥)の評価方法]
ポリイミド銅張積層板(新日鐵化学社製、商品名;エスパネックスMC18−25−00FRM)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意し、試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度170℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度150℃、時間24時間の条件で加熱した。この銅箔付きの試験片を105℃、相対湿度50%で1時間放置した後、各評価温度に設定した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「320℃」は、320℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
[半田耐熱性(耐湿)の評価方法]
ポリイミド銅張積層板(新日鐵化学社製、商品名;エスパネックスMC18−25−00FRM)を回路加工して、配線幅/配線間隔(L/S)=1mm/1mmの回路が形成されたプリント基板を用意し、試験片の接着剤面をプリント基板の配線の上に置き、温度170℃、圧力1MPa、時間1分の条件でプレスし、その後オーブンにて温度150℃、時間24時間の条件で加熱した。この銅箔付きの試験片を85℃、相対湿度85%で24時間放置した後、各評価温度に設定した半田浴中に10秒間浸漬し、その接着状態を観察して、発泡、ふくれ、剥離等の不具合の有無を確認した。耐熱性は不具合が生じない上限の温度で表現し、例えば「270℃」は、270℃の半田浴中で評価して、不具合が認められないことを意味する。
[レオメーター評価]
離型PETフィルム上に乾燥後の厚さが25μmになるようにポリイミド接着剤を塗布した。離型PETフィルムからポリイミド接着剤フィルムを剥離し、このポリイミド接着剤フィルム(3cm×3cm)を10枚程度積層し、真空ラミネーターを用いて70℃/0.85MPa/10secの条件で熱圧着を行い、約250μm程度の厚みのサンプルを作製した。得られたサンプルについて、レオメーター(RS150 RheoStress、Haake社製)を用いて、昇温速度4℃/minの条件でサンプルの粘度変化を評価した。
本実施例で用いた略号は以下の化合物を示す。
BTDA:3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
BPDA:3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物
BAPP:2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン
BAFL:ビスアニリンフルオレン
PSX:ジアミノシロキサン(重量平均分子量は740である)
N−12:ドデカン二酸ジヒドラジド
ADH:アジピン酸ジヒドラジド
K−1:タルク(日本タルク株式会社製、商品名;MICRO ACE K−1、形状;鱗片状、平均長径;7.0μm、平均短径;5.8μm、長径と厚みとの比;15以上、平均粒子径;6.6μm、メジアン径(D50);6.9μm、最大粒子径;64.9μm、最小粒子径;0.5μm、最頻径;8.7μm、粒径10μm以下の積算粒子量;77%、粒径20μm以上の積算粒子量;5%)
合成例1
1000mlのセパラブルフラスコに、71.850gのPSX(0.0971モル)、7.474gのBAPP(0.0182モル)、1.568gのN−12(0.0061モル)、39.109gのBTDA(0.1214モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液aを得た。得られたポリイミド溶液aにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は90,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
合成例2
1000mlのセパラブルフラスコに、72.407gのPSX(0.0978モル)、5.021gのBAPP(0.0122モル)、3.160gのN−12(0.0122モル)、39.412gのBTDA(0.1223モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合して、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、20時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液bを得た。得られたポリイミド溶液bにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は73,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
合成例3
1000mlのセパラブルフラスコに、73.364gのPSX(0.0991モル)、10.175gのBAPP(0.0248モル)、36.461gのBPDA(0.1239モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、6時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液cを得た。得られたポリイミド溶液cにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は27,900であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
合成例4
1000mlのセパラブルフラスコに、71.301gのPSX(0.0964モル)、9.889gのBAPP(0.0241モル)、38.810gのBTDA(0.1204モル)、168gのN−メチル−2−ピロリドン及び112gのキシレンを装入し、室温で1時間良く混合し、ポリアミド酸溶液を得た。このポリアミド酸溶液を190℃に昇温し、6時間加熱、攪拌し、イミド化を完結したポリイミド溶液dを得た。得られたポリイミド溶液dにおけるポリイミド樹脂の重量平均分子量(Mw)は107,000であった。このときの全ジアミン成分に対するジアミノシロキサン成分のモル%は80%(m値=0.8)である。
合成例1〜4を表1にまとめた。
Figure 2013001750
参考例1
合成例1で得られたポリイミド溶液aをポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルムとした。次に、得られたカバーレイフィルムを表面の防錆金属層を除去した銅箔上に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスし、評価サンプルを得た。
[実施例1]
合成例1で得られたポリイミド溶液aに5.78gのN−12(0.0224モル)及び57.81gのK−1を配合し、更に1時間攪拌することでポリイミド溶液1を得た。
得られたポリイミド溶液1をポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルム1とした。このカバーレイフィルム1を表面の防錆金属層を除去した銅箔上に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスし、評価サンプル1を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.65kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。また、ポリイミド溶液1を、基材の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、厚さ25μmのポリイミド接着剤フィルムを作製した。このポリイミド接着剤フィルム10枚程度を真空ラミネーターで温度70℃、圧力0.85MPa、時間10secの条件で熱圧着して約250μm程度の厚みのサンプルを作製し、レオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は118,000Pa・sであった。
次に評価サンプル1に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.45kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、ポリイミドフィルムの両面に銅により回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例1で得られたカバーレイフィルム1をプリント基板の回路面に置き、温度160℃、圧力2MPa、時間2時間の条件でプレスし、カバーレイフィルムを備えた配線基板1を得た。
[実施例2]
実施例1における57.81gのK−1を配合したことの代わりに、K−1を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液2を得たのち、カバーレイフィルム2を得、評価サンプル2を得た。評価サンプルにおける接着剤層のラマンスペクトルを測定したところ、1567cm−1付近にイミノ基の形成によるピークが確認された。この測定結果から、評価サンプルでは、カバーレイフィルムと銅箔との熱圧着と同時に、ポリイミド樹脂中のケトン基とアミノ化合物(N−12)との縮合反応が生じたと推定される。硬化後の銅箔との接着強度は1.08kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液2を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は113,000Pa・sであった。
次に評価サンプル2に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.41kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例2で得られたカバーレイフィルム2をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板2を得た。
[実施例3]
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、3.47gのN−12(0.0134モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液3を得たのち、カバーレイフィルム3を得、評価サンプル3を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.70kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液3を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は35,000Pa・sであった。
次に評価サンプル3に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.39kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例3で得られたカバーレイフィルム3をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板3を得た。
[実施例4]
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例2で得られたポリイミド溶液bを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液4を得たのち、カバーレイフィルム4を得、評価サンプル4を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.72kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液4を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は110,000Pa・sであった。
次に評価サンプル4に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.58kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例4で得られたカバーレイフィルム4をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板4を得た。
[実施例5]
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例2で得られたポリイミド溶液bを使用したこと、及び5.78gのN−12を配合したことの代わりに、3.47gのN−12(0.0134モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液5を得たのち、カバーレイフィルム5を得、評価サンプル5を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.80kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液5を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は108,000Pa・sであった。
次に評価サンプル5に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.48kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例5で得られたカバーレイフィルム5をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板5を得た。
[実施例6]
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、5.78gのBAPP(0.0141モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液6を得たのち、カバーレイフィルム6を得、評価サンプル6を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.72kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液6を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は36,000Pa・sであった。
次に評価サンプル6に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.51kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例6で得られたカバーレイフィルム6をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板6を得た。
[実施例7]
実施例1における5.78gのN−12を配合したことの代わりに、5.78gのBAFL(0.0166モル)を配合したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液7を得たのち、カバーレイフィルム7を得、評価サンプル7を得た。硬化後の銅箔との接着強度は0.65kN/mであった。また、カバーレイフィルムの反りも問題なかった。なお、ポリイミド溶液7を用い、実施例1と同様にして作製したポリイミド接着剤フィルムのレオメーター評価を行ったところ、260℃での粘度は28,000Pa・sであった。
次に評価サンプル7に対しオーブンで大気中、150℃、1000時間の熱処理を行った。処理後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を測定したところ、0.41kN/mであった。このときの剥離面は、銅と接着剤層の界面であった。
さらに、実施例1と同様にして、回路{配線幅/配線間隔(L/S)=25μm/25μm}が形成されたプリント基板を用意し、実施例7で得られたカバーレイフィルム7をプリント基板の回路面に置き熱圧着して、カバーレイフィルムを備えた配線基板7を得た。
参考例2
実施例1におけるポリイミド溶液aの代わりに、合成例4で得られたポリイミド溶液dを使用したこと以外は、実施例1と同様にして、ポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液をポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルムとした。このカバーレイフィルムについて、実施例1と同様にして評価した。
実施例1〜実施例7及び参考例1〜2の結果をまとめて表2及び表3に示した。表2及び表3において、接着強度1は、硬化後の銅箔とカバーレイフィルムの接着強度を示し、接着強度2は、大気中、150℃、1000時間の熱処理後の銅箔とカバーレイフィルムとの接着強度を示す。なお、表2及び表3中のモル比は、ポリイミドシロキサン中のケトン基1モルに対するアミノ化合物中の第1級アミノ基の合計のモル比を意味する。
Figure 2013001750
Figure 2013001750
[水素結合形成基導入によるイミン架橋形成の時間短縮の効果の検証]
本発明に係る接着剤樹脂組成物のイミン架橋形成の時間短縮は、以下のようにして検証を行った。
[実施例8]
合成例1で得られたポリイミド溶液aに5.78gのN−12(0.224モル)及び11.56gのK−1を配合し、更に1時間攪拌することでポリイミド溶液8を得た。
得られたポリイミド溶液8をポリイミドフィルム(デュポン社製、商品名;カプトンENS、縦×横×厚さ=200mm×300mm×25μm)の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、接着剤層厚さ35μmのカバーレイフィルム8とした。このカバーレイフィルム8を表面の防錆金属層を除去した銅箔上に置き、温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件でプレスし、評価サンプル8を得た。評価結果を表4に示す。
[実施例9]
実施例8と同様にして、ポリイミド溶液8を得たのち、カバーレイフィルム8を得た。
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度150℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル9を得た。評価結果を表4に示す。
[実施例10]
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度200℃、圧力2MPa、時間0.5時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル10を得た。評価結果を表4に示す。
[実施例11]
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度160℃、圧力2MPa、時間0.5時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル11を得た。評価結果を表4に示す。
[実施例12]
実施例8における温度200℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したことの代わりに、温度130℃、圧力2MPa、時間1時間の条件で加熱したこと以外は、実施例8と同様にして、評価サンプル12を得た。評価結果を表4に示す。
実施例8〜実施例12の結果をまとめて表4に示した。
Figure 2013001750
表4から、ポリイミドシロキサン中に水素結合形成基を導入したことによって、温度150℃〜200℃、0.5〜1時間の加熱で実用上十分な半田耐熱性(特に耐湿半田耐熱性)が得られることが確認された。
[試験例1]
実施例1で調製したポリイミド溶液1を、基材の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、厚さ25μmのポリイミド接着剤フィルムを作製した。このポリイミド接着剤フィルム(3cm×3cm)を10枚程度積層し、真空ラミネーターを用いて70℃/0.85MPa/10secの条件で熱圧着を行い、約250μm程度の厚みの評価サンプルAを得た。一方、参考例2で調製したポリイミド溶液についても、同様に処理して評価サンプルBを得た。これらのサンプルA及びBについて、レオメーター評価を実施した。その結果を図1に示した。サンプルAは、160℃前後から速やかに粘度が上昇しており、260℃付近での粘度は118,000Pa・sであった。一方、サンプルBは、サンプルAに比べて粘度上昇が遅く、260℃付近での粘度は45,000Pa・sであった。これらサンプルA、Bの粘度の上昇速度の違いは、水素結合性の官能基である−NHCO−基を含まないポリイミドシロキサンを用いたサンプルBに比較して、−NHCO−基を含むポリイミドシロキサンを用いたサンプルAにおいて架橋形成反応がより速やかに進行したためであると考えられた。ここで、表2及び表3に示した実施例1と参考例2の半田耐熱性の比較では、特に耐湿半田耐熱性において実施例1の方が格段に優れていることがわかる。また、図1から、サンプルAの粘度は、200℃以上では1×10Pa・s以上でほぼ横ばいである。これらのことから、260℃付近での粘度が1×10Pa・s以上であることが、実用上十分な耐湿半田耐熱性、つまり260℃以上のハンダ耐熱温度を得るための架橋形成の割合を示すしきい値として有効であると考えられた。
[試験例2]
実施例1で用いたポリイミドシロキサンの分子量を変えて耐湿半田耐熱性の試験を行った。重量平均分子量を変えたポリイミドシロキサンを用いた以外は、実施例1と同様にカバーレイフィルムを作製して耐湿半田耐熱性評価を行った。評価結果を表5に示す。重量平均分子量が約88,000〜130,000のポリイミドシロキサンを用いた場合は、耐湿半田耐熱性が260℃以上を示した。
Figure 2013001750
次に、実施例1で用いたポリイミドシロキサンの分子量を変えてレオメーター評価を行い、粘度上昇の挙動について試験を行った。重量平均分子量が、130,000のポリイミドシロキサンを用いた以外は、実施例1と同様にしてポリイミド溶液を得た。このポリイミド溶液を、基材の片面に塗布し、80℃で15分間乾燥を行い、厚さ25μmのポリイミド接着剤フィルムを作製した。このポリイミド接着剤フィルム(3cm×3cm)を10枚程度積層し、真空ラミネーターを用いて70℃/0.85MPa/10secの条件で熱圧着を行い、約250μm程度の厚みの評価サンプルCを得た。また、重量平均分子量が67,000のポリイミドシロキサンを用いた以外は、実施例1と同様にして得たポリイミド溶液からも、上記と同様にしてサンプルDを調製した。
これらのサンプルC及びDについてのレオメーター評価の結果を図2に示した。図2より、重量平均分子量が130,000のサンプルCは、粘度が上昇し始める温度(硬化開始温度)が、重量平均分子量が67,000のサンプルDに比べて少し高く、かつ200℃を超えると粘度がほぼ1×10Pa・s以上になっているのに対し、サンプルDでは、粘度が上昇し始める温度が低く、かつ1×10Pa・sを上回ることはなかった。
図2と上記表2の結果から、実用上十分な耐湿半田耐熱性を得るためには、ポリイミドシロキサンの重量平均分子量も考慮する必要があり、260℃以上の耐湿ハンダ耐熱性を発現するために適切な分子量範囲が存在することが強く示唆された。さらに、試験例1で得られたしきい値も考慮すると、ポリイミドシロキサンの重量平均分子量は、70,000〜140,000の範囲内が好ましいと考えられた。このような分子量の範囲が、実用上十分な耐湿半田耐熱性を得る上で好ましい理由は未だ解明されていないが、以下のように考えれば合理的説明が可能である。すなわち、ポリイミドシロキサンの分子量が低い方が、架橋反応性が高い傾向にあるが、70,000を下回るような過度に低い分子量では、260℃の粘度がしきい値に達せず、耐湿半田耐熱性が低下するものと考えられる。逆に、ポリイミドシロキサンの分子量が140,000を超えて高くなると、ポリイミド分子鎖の運動性が低下するために架橋反応性が低下し、この場合も260℃の粘度がしきい値に達しないと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を例示の目的で詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に制約されることはない。例えば、上記実施の形態では、本発明のポリイミド樹脂の用途として、FPCなどの回路基板のカバーレイフィルムやボンディングシート用の接着剤を例に挙げたが、上記以外の用途、例えばテープオートメーティッドボンディング(TAB)、チップサイズパッケージ(CSP)等における接着用樹脂の形成にも利用できる。

Claims (22)

  1. 下記の成分(A)及び(B)、
    (A)ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサン、並びに、
    (B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
    を反応させて得られる架橋ポリイミド樹脂であって、
    前記(A)成分のポリイミドシロキサンにおけるケトン基の少なくとも一部分に前記(B)成分のアミノ化合物のアミノ基が反応してC=N結合を形成していることにより、前記ポリイミドシロキサンが前記アミノ化合物によって架橋された構造を有することを特徴とする架橋ポリイミド樹脂。
  2. 前記ポリイミドシロキサンが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位:
    Figure 2013001750
    [式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar及び/又はR中にはケトン基及び水素結合形成基を含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35〜1.0の範囲内、nは0〜0.65の範囲内である]
    を有するポリイミドシロキサンである請求項1に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  3. 前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内である請求項2に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  4. 前記ポリイミドシロキサンが、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位:
    Figure 2013001750
    [式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar中にケトン基を、R中に水素結合形成基をそれぞれ含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35以上1.0未満の範囲内、nは0を超え0.65以下の範囲内である]
    を有するポリイミドシロキサンである請求項1に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  5. 前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内である請求項4に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  6. 前記ポリイミドシロキサンにおける前記水素結合形成基が、−NHCO−である請求項1〜5のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  7. 前記ポリイミドシロキサンが、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものである請求項1、4、5又は6のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  8. 前記アミノ化合物が、ジヒドラジド化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  9. さらに、平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを、前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して5〜200重量部の範囲内で含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の架橋ポリイミド樹脂。
  10. 下記(A)成分及び(B)成分、
    (A)ケトン基及び水素結合形成基を有する重量平均分子量が20,000〜150,000であるポリイミドシロキサン、並びに
    (B)少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物、
    を含み、
    前記(A)成分中のケトン基1モルに対し、前記第1級アミノ基が合計で0.004モル〜1.5モルの範囲内となるように前記(B)成分を含有する接着剤樹脂組成物。
  11. 前記(A)成分が、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位:
    Figure 2013001750
    [式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar及び/又はR中にはケトン基及び水素結合形成基を含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35〜1.0の範囲内、nは0〜0.65の範囲内である]
    を有するポリイミドシロキサンである請求項10に記載の接着剤樹脂組成物。
  12. 前記構成単位の存在モル比mが、0.75〜1.0の範囲内、nが、0〜0.25の範囲内である請求項11に記載の接着剤樹脂組成物。
  13. 前記(A)成分が、下記の一般式(1)及び(2)で表される構成単位:
    Figure 2013001750
    [式中、Arは芳香族テトラカルボン酸無水物から誘導される4価の芳香族基、Rはジアミノシロキサンから誘導される2価のジアミノシロキサン残基、Rはジアミン化合物から誘導される2価のジアミン残基をそれぞれ表し、Ar中にケトン基を、R中に水素結合形成基をそれぞれ含み、m、nは各構成単位の存在モル比を示し、mは0.35以上1.0未満の範囲内、nは0を超え0.65以下の範囲内である]
    を有するポリイミドシロキサンである請求項10に記載の接着剤樹脂組成物。
  14. 前記構成単位の存在モル比mが、0.75以上1.0未満の範囲内、nが、0を超え0.25以下の範囲内であることを特徴とする請求項13に記載の接着剤樹脂組成物。
  15. 前記(A)成分における前記水素結合形成基が、−NHCO−であることを特徴とする請求項10〜14のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
  16. 前記(A)成分が、ジヒドラジド化合物を原料として合成されたものであることを特徴とする請求項10、13、14又は15のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
  17. 前記(B)成分が、ジヒドラジド化合物であることを特徴とする請求項10〜16のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
  18. 前記(A)成分及び(B)成分の合計100重量部に対して、更に(C)平均粒径が2〜25μmの範囲内の板状の無機フィラーを5〜200重量部含有する請求項10〜17のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物。
  19. 請求項10〜18のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
  20. 接着剤層とカバーレイ用フィルム材層とを積層したカバーレイフィルムであって、
    前記接着剤層が、請求項10〜18のいずれか1項に記載の接着剤樹脂組成物を用いて形成されたものであるカバーレイフィルム。
  21. 基材と、該基材上に形成された配線層と、該配線層を被覆する請求項20に記載のカバーレイフィルムと、を備えた回路基板。
  22. ケトン基を有する酸無水物成分と、水素結合形成基を有するジアミン化合物及びジアミノシロキサンを含むジアミン成分と、を混合し、加熱することによりイミド化して、ケトン基及び水素結合形成基を有するポリイミドシロキサンを形成する工程、
    前記ポリイミドシロキサン中の隣接する主鎖の間で水素結合を形成させる工程、並びに、
    前記ポリイミドシロキサンのケトン基の少なくとも一部分に、少なくとも2つの第1級アミノ基を官能基として有するアミノ化合物のアミノ基を反応させてC=N結合を形成させ、前記ポリイミドシロキサンを前記アミノ化合物によって架橋する工程、
    を備えた架橋ポリイミド樹脂の製造方法。
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