JP2012533545A - 肝臓の増殖を増大させる方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、肝臓における骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニストを用いて、損傷、切除または移植後に肝修復を強化する方法に関する。
Description
関連出願
本出願は、2009年7月14日に出願された米国仮特許出願第61/225,388号明細書の恩典を主張する。上記の出願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
本出願は、2009年7月14日に出願された米国仮特許出願第61/225,388号明細書の恩典を主張する。上記の出願の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
政府支援
本発明は、全体または部分的に、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)からの助成金K08により支援された。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
本発明は、全体または部分的に、National Institute of Diabetes and Digestive and Kidney Diseases(米国国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所)からの助成金K08により支援された。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
再生医療の分野では、肝不全患者または肝損傷もしくは切除手術の後に肝臓量が不足している患者の生存率を改善する努力がなされている。これらの病状を有する患者を治療するときと同じくらい成否の境界がくっきりした臨床的状況はほとんどない。損傷後の肝臓の回復が成功すれば、通常、健康は完全に回復するが、回復が不成功に終われば、肝移植が必要になるかまたは死に至る。肝再生または肝修復の改善がごくわずかであっても、転帰を死から完全な健康の回復へと変化させるのに十分である可能性がある。
急性肝不全患者において、修復を強化する能力により、回復不可能な肝臓の状態を、罹患した肝臓が完全に健康に戻り得る状態に転換させることができた。この集団には、米国における年間2万(20,000)人のTylenol(登録商標)(アセトアミノフェン)過剰摂取、急性ウイルス性肝炎もしくは他の感染原因、代謝異常、または毒性傷害を有する患者が含まれる(Hoofnagleら,1995)。これらの疾病に罹患している患者は、多くの場合、若くて、他の病状がほとんどなく、そのため、罹患した肝臓を回復または再生するように誘導することができれば、完全に回復する可能性が極めて高い。
肝臓の手術を受けた患者集団は、スモール・フォー・サイズ(small−for−size)症候群を経験することがある。これは、癌の切除後または臓器全体、分割した臓器、もしくは生きたドナーを用いる場合の移植後に起こる。これらの場合の多くでは、残存肝臓量は生命を維持するのに不十分である。このスモール・フォー・サイズ(small−for−size)症候群は、移植片機能不全として現われ、死に至る場合がある(TuckerおよびHeaton,2005)。
肝臓癌患者は、通常、切除後に結果として残る肝臓量の予測が難しいために、肝切除の候補とはならない。毎年、肝臓癌と診断される全世界の50万(500,000)人を超える患者(Parkinら,2002)のうち、その約80%は、診断時に切除不能であると判断される(Zhuら,2006)。それにもかかわらず切除を行なえば、これらの患者は、高ビリルビン血症(すなわち、黄疸)、そして最終的には肝不全を発症する可能性が高い。癌患者の他の選択肢は非常に限られているので、肝再生または肝修復を強化または増大させる潜在的治療であれば、それ以外の場合には切除不能な肝臓癌を有するさらに多くの患者の肝切除の可能性を大いに高めるであろう。より多くのこれらの患者を切除可能にする薬理学的治療の開発は、肝臓癌の治療に大きな影響を与えるであろう。
生体肝移植時の1つの極めて重要な留意事項は、残ったドナーの肝臓のサイズおよびレシピエントに移植されている移植片のサイズである。成人から子供への肝臓提供において、ドナー手術は左葉一部切除術であり、これは、安全な手術であることが知られている。対照的に、成人間の生体肝移植時には、右葉または左葉全体の胚葉切除術を必然的に使用することにより、ドナーに大きな危険がもたらされる。というのは、残った肝臓では、生命を維持するのに不十分である可能性があるからである(Pomposelliら,2006)。それゆえ、肝再生が強化されれば、より小さいサイズの移植片の使用を可能にすることで、成人間の生体肝移植に大変革をもたらすであろう。
肝不全の治療法としての肝移植の大きな成果および肝臓の恒常性に関与する分子経路の科学的知識にもかかわらず、肝修復および肝再生を強化するための薬理学的治療および方法は、開発の必要性が依然として大いにある。
本発明は、肝修復および肝再生の過程を支える生化学的事象を解明するものであり、かつ肝細胞増殖を強化し、肝再生を増大させ、肝損傷を予防および治療するための方法を様々な臨床背景の幅広い患者グループに提供するものである。
本発明は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路が肝細胞増殖の活性阻害因子であり、この経路のアンタゴニストで処理すると、肝損傷の後にインビボで肝細胞増殖が強化され、肝再生が増大するという発見に基づいている。
第1の態様では、本発明は、肝細胞を有効量の骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニストと接触させることによって肝細胞の増殖を増大させる方法を提供する。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、構成的に活性のあるBMPシグナル伝達経路を阻害するかまたは下方調節する。例えば、BMPシグナル経路は、BMP2またはBMP4介在性シグナル伝達経路である。また別の実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、I型BMP受容体シグナル伝達を阻害する。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、I型受容体に結合することによってI型BMP受容体シグナル伝達を阻害する。別の実施形態では、I型受容体には、ALK2、ALK3またはALK6が含まれる。別の実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、SMAD1、5または8のリン酸化を阻害する。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、BMP受容体へのBMP2もしくは4の結合またはII型BMP受容体とI型BMP受容体との相互作用を阻害する。別の実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、化学薬品である。化学薬品は、ドルソモルフィン、LDN193189またはこれらの類似体であることができる。
第2の態様では、本発明は、有効量の骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニストを対象に投与することによって、それを必要とする哺乳動物対象において肝臓の部分的喪失または損傷後に肝再生を増大させる方法に関する。一実施形態では、肝臓の部分的喪失または損傷は、外科手術または移植術(例えば、肝切除)によって引き起こされる。別の実施形態では、必要とする対象は、切除的肝臓外科手術後の肝不全に罹患している。一実施形態では、必要とする対象は、哺乳動物(例えば、ヒト)である。例えば、必要とする対象は、肝移植レシピエントまたは移植ドナーである。
また別の実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、構成的に活性のあるBMPシグナル伝達経路を阻害するかまたは下方調節する。一実施形態では、BMPシグナル経路は、BMP2またはBMP4介在性シグナル伝達経路である。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、I型BMP受容体シグナル伝達を阻害する。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、I型BMP受容体に結合することによってI型BMP受容体シグナル伝達を阻害する。一実施形態では、I型BMP受容体には、ALK2、ALK3またはALK6が含まれる。一実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、SMAD1、5または8のリン酸化を阻害する。また別の実施形態では、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、BMP受容体へのBMP2もしくは4の結合またはII型BMP受容体とI型BMP受容体との相互作用を阻害する。BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、化学薬品である。化学薬品には、ドルソモルフィン、LDN193189およびそれらの類似体が含まれ得るが、これらに限定されない。
別の態様では、本発明は、有効量の骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニストを投与することによって恩恵を受ける対象の肝損傷を予防または治療する方法を含む。BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、上記のような構成的に活性のあるBMPシグナル伝達経路を阻害するかまたは下方調節する。肝損傷は、肝毒性のある化学薬品によって引き起こされることがある。肝毒性のある化学薬品には、アセトアミノフェンが含まれ得る。一実施形態では、肝損傷は、例えば、肝炎ウイルス感染症、自己免疫性肝炎、肝硬変、急性もしくは慢性肝不全、または癌を含む肝疾患によって引き起こされる。
また別の態様では、本発明は、有効量の骨形成タンパク質(BMP)経路のアンタゴニストを対象に投与することによって、それを必要とする対象の肝再生を強化する方法を提供する。この経路において、アンタゴニストは、肝臓におけるBMP2またはBMP4介在性のSMAD1、5または8のリン酸化を阻害する。一実施形態では、アンタゴニストは、肝臓の部分的喪失または障害の前に対象に投与される。
また別の態様では、本発明は、肝細胞を、肝細胞におけるBMP2またはBMP4介在性のSMAD1、5または8のリン酸化を阻害する有効量のドルソモルフィンまたはLDN193189と接触させることによって、肝細胞の増殖を増大させる方法に関する。
過去において、肝臓がどのようにして損傷に応答するのかということの根幹を明らかにすることは困難であった。数多くの分子経路が肝臓の恒常性に関与しているが、特に、肝再生および肝修復を強化することによる、肝損傷を有するかまたは切除後の肝臓量が十分でない患者に対する有効な治療はない。本明細書に記載のシグナル伝達経路は、肝細胞増殖を構成的に阻害することによって肝臓増殖を負に制御することがその機能であるが、これは、肝臓がどのようにしてそのサイズを感知し、その増殖を調節するのかということに関する基本的な謎を解決するのに役立ち、潜在的な治療にまたとない機会を提供することができる。より重要なことに、そのようなシグナル伝達経路は、潜在的薬剤の有用な標的としての役割を果たし、肝損傷を有するかまたは切除後の肝臓量が十分でない患者に対する有効な治療の開発の成功をもたらすことができる。
骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路は、哺乳動物の肝臓において構成的に活性があること、そして、BMPシグナル伝達経路に活性があるとき、この経路は、肝臓における肝細胞増殖を抑制するかまたは阻害するように働くことが今までに発見されている。BMPシグナル伝達経路のアンタゴニスト(例えば、BMPシグナル伝達の薬物阻害剤)の投与によって、肝細胞増殖が強化され、肝損傷後の肝修復および肝再生が増大することが見出されている。
骨形成タンパク質(BMP)は、軟骨および骨の形成をインビボで誘導するその能力によってもともと同定され、特徴付けられたタンパク質のファミリーである(Reddi,A.H.(1992) Curr,Opin.Cell Biol.4,850−855)。20を超えるBMPがこれまでに同定され、2つの異なるセリン−トレオニンキナーゼ受容体、すなわち、I型およびII型BMP受容体によって認識されることが報告されている。少なくとも3つの異なるI型セリン−トレオニンキナーゼ受容体および少なくとも3つの異なるII型セリン−トレオニンキナーゼ受容体が同定されている。これら3つの同定されたI型BMP受容体は、アクチビン受容体様キナーゼ−2(ALK2)(別名、アクチビン受容体−I)、ALK3(別名、BMPR−IA)、およびALK6(別名、BMPR−IB)であり、他の3つの同定されたII型BMP受容体には、BMPRII、ActRIIaおよびActRIIbが含まれる。
I型BMP受容体とII型BMP受容体は両方とも、その形質膜表面に受容体を発現する標的細胞の細胞質に細胞外BMPシグナルを伝達することができる。二量体BMPリガンドは、I型受容体とII型受容体の会合を容易にして、ヘテロ二量体を形成させることが知られており、この受容体の二量体化によって、II型受容体によるI型受容体のリン酸化が可能になる。リン酸化されているとき、I型BMP受容体は、BMP応答性SMADエフェクター(例えば、SMAD1、SMAD5およびSMAD8)をリン酸化することが示されている。次いで、これらのエフェクターのリン酸化は、SMAD4との複合体を形成したエフェクターの核への移動をもたらす。標的細胞の核内では、リン酸化されたSMADが、BMPシグナルに応答する一連の遺伝子の発現を上方調節する。この遺伝子には、Id−1が含まれるが、これに限定されない。BMPは、II型BMP受容体を介するSMAD非依存的シグナル伝達を誘発することもできる。II型BMP受容体は、BMPと結合すると、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)p38介在性の応答を独立に活性化することができる。
全てのBMPは、特徴的な7つの高度に保存されたシステインをそのカルボキシル末端部分に含み、したがって、形質転換増殖因子−β(TGF−β)スーパーファミリー(例えば、TGF−β、アクチビン、インヒビン、およびミュラー管阻害物質)に属する(Massague,J.(1990) Annu.Rev.Cell Biol.6,597−641)。BMPの中では、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6およびBMP7が研究の中心である。これらのBMPのいくつかの代表的なメンバーがある。BMP2およびBMP4は、約90%のアミノ酸同一性を有することにより、互いに密接に関連している。しかしながら、それらの配列は、BMP3、BMP5、BMP6およびBMP7の配列とは異なっている。第2のグループ(BMP5、BMP6およびBMP7)は、互いに約80%のアミノ酸同一性を示し、BMP3およびその他のものは、このタンパク質ファミリーの第3のグループとなる。
BMPは、I型BMP受容体とII型BMP受容体の両方に結合することが知られている。例えば、BMP2は、I型BMP受容体とII型BMP受容体の両方に対して高い特異性を示す(Keller,Sら(2004)Nature Structural and Molecular Biology,11:481−488)。それにもかかわらず、II型受容体の利用は、BMP2または4とBMP6または7との間で顕著に異なっている。BMPRIIへのより大きな依存が、BMP6または7と比べてBMP2または4で認められるのに対し、ActRIIaは、BMP2または4よりもBMP6または7によるシグナル伝達にとって重要である(Lavery,Kら(2008) J.Biol.Chem.283:20948−20958)。顕著な違いは、I型受容体についても認められる。ALK3およびALK6は、BMP2およびBMP4によってより多く利用されるのに対し、ALK2は、BMP6またはBMP7の好ましいI型受容体である(Lavery,Kら(2008) J.Biol.Chem.283:20948−20958;Roら(2004) Oncogen,23:3024−3032)。
本発明は、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストを用いてBMPシグナル伝達を阻害することによって肝細胞の増殖を強化する方法に関する。本発明は、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストを用いてBMPシグナル伝達を阻害することによって哺乳動物の肝再生を強化する方法に関する。本発明は、BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストを用いてBMPシグナル伝達を阻害することによって肝修復を強化する方法を含む。本発明は、肝臓において有効量の骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニストを投与することによって、それを必要とする対象における肝損傷を予防および治療する方法に関する。
本明細書で使用するとき、「肝損傷」には、肝切除、肝臓の切除、肝移植、または肝臓の一部の外科的除去によって生じる他の物理的外傷もしくは状態が含まれるが、これらに限定されない。急性肝不全に関する肝損傷は、肝細胞癌、肝移植、または肝臓の一部の外科的除去によって生じる他の急性の物理的外傷もしくは状態によって引き起こされることがある。本明細書で使用される「肝損傷」には、肝組織の損傷もしくは障害、またはアポトーシス、壊死もしくは肝毒性のある薬剤もしくは化合物によって引き起こされる他の物理的状態による肝細胞もしくは肝組織の喪失が含まれるが、これらに限定されない。急性肝不全に関する肝損傷は、1種以上の医薬品(例えば、アセトアミノフェン/パラセタモール)の過剰摂取または毒性量の1種以上の肝毒性のある化学薬品の摂取に起因することもある。あるいは、本明細書で使用される「肝損傷」には、組織の損傷もしくは障害、またはアポトーシス、壊死もしくは限定するものではないが、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の肝炎ウイルス感染症、自己免疫性肝炎、肝硬変、胆汁性肝硬変、急性肝不全、急性肝毒性、慢性肝不全、急性肝感染症、肝臓癌、ウィルソン病、ジルベール症候群、ライ症候群、アラジール症候群、ヘモクロマトーシス、フェニルケトン尿症および他のアミノ酸症、血友病および他の凝固因子欠乏症、家族性高コレステロール血症および他の脂質代謝障害、尿素サイクル異常症、果糖血症、糖原病、チロシン血症、ガラクトース血症、タンパク質および糖質の代謝欠乏症、有機酸尿、ミトコンドリア病、ペルオキシソームおよびリソソーム異常症、タンパク質合成異常、肝細胞トランスポーター欠損、グリコシル化欠損、急性化学毒性、胆管炎、α1−アンチトリプシン欠乏症、胆道閉鎖症、肝嚢胞症、脂肪肝、ガラクトース血症、胆石、ポルフィリン症、原発性硬化性胆管炎、サルコイドーシス、チロシン血症、または1型糖原病を含む肝疾患によって引き起こされる他の物理的状態による肝細胞もしくは肝組織の喪失も含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用するとき、「対象」という用語は、哺乳動物を指し、これには、ヒト、霊長類、家畜動物、または実験動物が含まれるが、これらに限定されない。「対象」は、好ましくはヒトであるが、BMPシグナル伝達のアンタゴニストによる治療を必要とする動物、例えば、コンパニオン動物(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ブタ、ウマなど)および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)であることもできる。
本明細書で使用するとき、「治療する」および「予防する」という用語は、肝損傷のありとあらゆる状態、作用または原因、および肝損傷に関連する症状または疾患を予防するか、阻止するか、抑制するか、阻害するか、低下させるか、軽減するか、改善するかもしくは逆転させること;状態、症状または作用の消失とその再発の間の時間を延長すること;肝損傷と関連する有害な症状を安定化すること;または肝損傷と関連する状態の進行を低下させるか、遅延させるか、もしくは安定化することを指す。
本明細書で使用するとき、「移植(transplantation)」という用語は、他人もしくは対象自身の肝臓から採取されたかまたは他人もしくは対象自身の肝臓に由来する1つ以上の部分肝組織または肝細胞の移植(grafting)を指す。
本明細書で使用するとき、「切除(resection)」という用語は、臓器または他の構造の一部または全ての切除(excision)を指す。例えば、肝切除は、肝臓の一部の外科的除去を指し、通常、切除される肝臓の部分にある罹患した肝臓の部分(例えば、肝臓癌)を除去するために行なわれる。
本明細書で使用するとき、「アンタゴニスト」という用語は、BMPシグナル伝達経路の生理的作用に拮抗する化学薬品、医薬品、薬物、化学化合物、小分子、タンパク質、ペプチドまたは抗体を指す。例えば、化学薬品は、1つ以上のBMP受容体への1つ以上のBMPの結合によって通常誘発される1つ以上のBMP受容体関連応答に拮抗することができる。
本明細書で使用するとき、「タンパク質」という用語は、任意の長さのアミノ酸のポリマー形態を指し、これには、天然または合成のアミノ酸ならびにコードされたおよびコードされていないアミノ酸、ペプチド、デプシペプチド、環式、二環式、デプシ環式またはデプシ二環式ペプチド骨格を有するポリペプチド、単鎖タンパク質ならびに多量体、ならびに無傷タンパク質分子の任意の断片または部分が含まれ得る。
本明細書で使用するとき、「ペプチド」とは、互いに化学結合したアミノ酸、アミノ酸類似体から構成される任意の分子を意味する。一般に、アミノ酸は、アミノ結合(CONH)で化学結合しているが、アミノ酸は、当技術分野で公知の他の化学結合で結合していてもよい。例えば、アミノ酸は、アミン結合で結合していてもよい。本明細書で使用されるペプチドには、アミノ酸、アミノ酸類似体、または小ペプチドおよび巨大ペプチドのオリゴマー(ポリペプチドを含む)が含まれる。
本明細書で使用するとき、「抗体」という用語は、免疫グロブリンまたはその断片もしくは誘導体を指し、インビトロで産生されたものであるか、またはインビボで産生されたものであるかを問わず、抗原結合部位を含む任意のポリペプチドを含む。この用語には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、単特異的抗体、ポリ特異的抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、突然変異抗体、および移植抗体が含まれる。「抗体」という用語には、Fab、F(ab’)2、Fv、scFv、Fd、dAbなどの抗体断片、および抗原結合機能(すなわち、特異的抗原に結合する能力)を保持する他の抗体断片も含まれる。通常、そのような断片は、抗原結合ドメイン(すなわち、抗体と抗原の特異的結合に関与するアミノ酸を含む抗体分子の部分)を含む。抗原結合ドメインは、通常、抗体軽鎖可変領域(VL)および抗体重鎖可変領域(VH)を含むが、必ずしも両方を含む必要はない。
本明細書で使用するとき、「類似体」という用語は、その構造が、対応するアンタゴニストの構造と関連しているが、同一ではない分子である。類似体は、対応するアンタゴニストと同様のまたは類似した化学的および生物学的特性を有する。例えば、化学的類似体は、対応するアンタゴニストの化学的活性を保持すると同時に、1つ以上の化学的修飾を有する。ポリペプチド類似体は、対応するポリペプチドアンタゴニストの生物学的活性を保持すると同時に、ポリペプチドアンタゴニストからの特定の生化学的修飾を有する。そのような修飾は、例えば、BMPシグナル伝達経路に関与する1つ以上の生体分子に対する結合特異性を変化させることなく、例えば、類似体の安定性または半減期を増大させ得る。類似体は、合成化学薬品またはポリペプチドを含むことができる。
本明細書で使用するとき、「有効量」は、肝損傷の経過および重症度に影響を及ぼし、肝損傷の予防、低下、阻害、軽減または寛解をもたらすのに十分なBMPシグナル伝達の活性アンタゴニストの量を指す。例えば、BMPアンタゴニストの有効量は、肝細胞におけるBMPシグナル伝達を阻害し、肝損傷の予防、低下、阻害、軽減または寛解をもたらすのに十分な量である。当業者には明らかであるように、必要とする所与の対象にとっての有効量は、サイズ、年齢、体重、状態および治療に対する対象の応答性によって異なり得る。有効量は、投与の経路および必要とする対象の状態によっても決まる。
本明細書で使用するとき、「用量」という用語は、一度に投与される分量、例えば、BMPシグナル伝達のアンタゴニストの一定かつ有効な量を指す。
本明細書で使用するとき、「調節する(modulate)」または「調節する(regulate)」という用語は、変化(例えば、減少または増加)を指す。例えば、変化は、生物学的活性を指すこともある。望ましくは、変化は、参照または対照活性(例えば、1つ以上のSMAD、1つ以上のBMP、または1つ以上のBMP受容体の生物学的活性)と比べた、生物学的活性の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の増加または減少のいずれかである。
本発明によれば、BMPシグナル伝達のアンタゴニストの投与は、1つ以上のBMP受容体を阻害することによって、肝細胞増殖を強化することができる。BMP受容体の阻害は、1つ以上のI型BMP受容体または1つ以上のII型BMP受容体に結合することによって達成することができる。BMP受容体の阻害は、1つ以上のI型BMP受容体または1つ以上のII型BMP受容体に同時に結合することによって達成することができる。本発明のアンタゴニストは、限定するものではないが、ALK2、ALK3およびALK6を含むI型BMP受容体を特異的に阻害することができる。I型BMP受容体には、アクチビン受容体様キナーゼ−2(ALK2)(別名、アクチビン受容体−I)、ALK3(別名、BMPR−IA)、およびALK6(別名、BMPR−IB)が含まれるが、これらに限定されない。II型BMP受容体には、BMPRII、ActRIIaおよびActRIIbが含まれるが、これらに限定されない。I型BMP受容体とII型BMP受容体は両方とも、細胞外BMPシグナルを標的細胞の細胞質に伝達する。BMPリガンドは、I型受容体とII型受容体の会合を容易にして、ヘテロ二量体を形成させることができ、しかも、受容体のヘテロ二量体化によって、II型受容体によるI型受容体のリン酸化が可能になる。活性化(「リン酸化」)されているとき、I型BMP受容体は、BMP応答性のSMADエフェクター(例えば、SMAD1、SMAD5およびSMAD8)をリン酸化する。しかしながら、I型BMP受容体がリン酸化されていないとき、II型BMP受容体へのBMPの特異的結合は、限定するものではないが、マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)p38を含む細胞内エフェクターを活性化することによって、SMAD非依存的シグナル伝達を誘発する。
BMP経路のアンタゴニストは、1つ以上のBMP、特に、BMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6およびBMP7に直接結合することによって、BMPシグナル伝達を阻害することができる。BMP経路のアンタゴニストは、BMP2またはBMP4に直接結合することによって、BMPシグナル伝達を阻害することができる。BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、BMP2または4とBMP受容体との相互作用を阻害することによって、BMPシグナル伝達を阻害することができる。
二量体BMPリガンドは、I型BMP受容体とII型BMP受容体の会合を容易にして、ヘテロ二量体を形成させることができ、しかも、受容体のヘテロ二量体化によって、II型受容体によるI型受容体のリン酸化が可能になるので、BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、1つ以上のBMPとI型またはII型受容体との結合相互作用を妨げることによって、II型BMP受容体とI型BMP受容体との相互作用を阻害することができる。BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、II型受容体によるI型のリン酸化を妨げることによって、II型BMP受容体とI型BMP受容体との相互作用を阻害することもできる。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、BMP2もしくはBMP4のいずれかに特異的に結合することによるか、またはBMP2もしくはBMP4特異的BMP受容体に結合することによって、BMP2またはBMP4介在性シグナル伝達経路を阻害することができる。BMPシグナル伝達経路のアンタゴニストは、1つ以上のBMPの活性を阻害する。好ましくは、BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、1つ以上のBMPに直接結合することによって、1つ以上のBMPの活性を阻害する。
本発明は、1つ以上のI型受容体を阻害する薬剤の使用方法を含む。BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、I型BMP受容体による1つ以上のSMADのリン酸化を阻害することによって、BMPシグナル伝達を阻害することができる。I型受容体は、限定するものではないが、SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD4、SMAD5、SMAD8またはSMAD9を含む1つ以上の受容体調節型SMAD(R−SMAD)をリン酸化する。好ましくは、本発明のアンタゴニストは、限定するものではないが、SMAD1、5または8を含む1つ以上のSMADのリン酸化を阻害する。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、医薬品、化学薬品、タンパク質、ペプチドまたは抗体であることができる。好ましくは、BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、1つ以上のBMP受容体に直接結合する化学薬品である。好適なアンタゴニストの例は、国際公開第2008/033408号パンフレットに記載されており、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本発明で使用される化学薬品には、ドルソモルフィン、LDN193189またはこれらの類似体もしくは誘導体が含まれるが、これらに限定されない。国際公開第2008/033408号パンフレットに教示された方法によって同定され、かつBMPシグナル伝達経路を阻害するその能力について評価された任意のBMP特異的阻害剤化合物または化学薬品が本発明で想定されている。国際公開第2008/033408号パンフレットの教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
ドルソモルフィンは、AMPキナーゼシグナル伝達経路の阻害因子である(Zhouら(2001)J.Clin.Invest.108:1167−1174)。ドルソモルフィンは、ゼブラフィッシュ胚においてBMPシグナル伝達に拮抗し、ゼブラフィッシュ胚における背側化を効果的に促進することも示されている(国際公開第2008/033408号パンフレット)。ゼブラフィッシュにおいて、ドルソモルフィンは、BMP4またはBMP6によってインビトロで誘導される骨形成分化を阻害し、阻害は、BMPシグナル伝達の天然阻害因子nogginによる処理で見られるものよりも強力であることが示されている(国際公開第2008/033408号パンフレット)。ドルソモルフィンは、I型BMP受容体、すなわち、ALK2、ALK3、およびALK6を選択的に阻害することによって、BMP2、BMP4、BMP6、BMP7およびBMP9の活性を阻害し(国際公開第2008/033408号パンフレット)、MAPK p38の活性化に影響を及ぼすことなく、BMP介在性のSMAD1、5および8のリン酸化を遮断することが記載されている(Yuら(2007) Nature Chemical Biology,4:33−41)。ドルソモルフィンは、下記の構造式Iに示すような化学構造を含む。
ドルソモルフィン(6−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−フェニル)]−3−ピリンジン−4−イル−ピラゾロ[1,5−a]−ピリミジン)の生物学的機能および構造は、Zhouら(Zhouら(2001)J.Clin.Invest.108:1167−1174)およびYuら(Yuら(2007)Nature Chemical Biology,4:33−41)によって詳細に記載されており、これらの文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
LDN193189は、ペンダントフェニル環の3位または4位にアミンを含む、ピラゾロ[1,5−a]−ピリミジンの誘導体である。医薬品として許容されるいくつかのドルソモルフィン類似体を図8に示す。これは、国際公開第2008/033408号パンフレットにも記載されており、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。LDN193189およびその類似体を合成する方法は、その分子構造を含めて、Cunyら(Cunyら,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,18:4388−4392(2008))によって詳細に記載されており、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。当業者が当技術分野で公知の方法を用いてこれらの類似体を容易に調製することができることも理解される。
BMPシグナル伝達を調節する化学薬品(例えば、ドルソモルフィンまたはLDN193189の潜在的類似体および他の潜在的アンタゴニスト候補)の肝再生に対する生物学的影響は、SMAD1、5または8のリン酸化に対する薬品の効果を決定することによって評価することができる。BMP介在性のSMADリン酸化は、例えば、抗ホスホSMAD1、5または8(CELL SIGNALING(登録商標))を用いるイムノブロット解析によって決定することができる。あるいは、BMP介在性のSMADリン酸化は、透過処理した肝細胞を用いる免疫沈降および酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によって決定することができる。肝細胞タンパク質を、例えば、氷冷メタノールを10〜15分間用いるメタノール処理によって沈殿させる。肝細胞タンパク質を、例えば、0.25%〜2%のグルタルアルデヒドを導入し、それをアミン(例えば、リジン、エチレンジアミンまたはフィニレンジアミン)でクエンチすることによって、グルタルアルデヒドで架橋する。リン酸化アッセイの詳細なプロトコルは、国際公開第2008/033408号パンフレットに記載されており、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で使用するとき、増大したSMADのリン酸化が検出されることは、薬品がBMPシグナル伝達を活性化することを示すのに対し、減少したSMADのリン酸化が検出されることは、薬品がBMPシグナル伝達を阻害することを示す。
あるいは、BMPシグナル伝達を調節する化学薬品の肝再生に対する潜在的な影響は、本明細書に記載したような5−ブロモ−2−デオキシ−ウリジン(BrdU)標識またはKi−67標識を用いて肝細胞増殖を測定することによって決定することができる。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、医薬品として許容される塩の形態で存在することができる。医薬品として許容される塩形態には、医薬品として許容される酸性/アニオン性または塩基性/カチオン性塩が含まれる。医薬品として許容される酸性/アニオン性塩には、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム、カンシラート、炭酸塩、塩化物塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート、エシラート、フマル酸塩、グリセプタート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニラート、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムカート、ナプシラート、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクラート、トシル酸塩、およびトリエチオジド塩が含まれる。医薬品として許容される塩基性/カチオン性塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ジエタノールアミン塩、N−メチル−D−グルカミン塩、L−リジン塩、L−アルギニン塩、アンモニウム塩、エタノールアミン塩、ピペラジン塩およびトリエタノールアミン塩が含まれる。
BMPアンタゴニストは、肝損傷の前、肝損傷の間または肝損傷の後いつでも、必要とする対象に投与される。BMPアンタゴニストは、肝損傷の前に投与される。BMPアンタゴニストは、肝損傷の進行中いつでも投与される。BMPアンタゴニストは、肝損傷の後に投与される。BMPアンタゴニストは、いくつかの間隔で、複数回投与で投与される。BMPアンタゴニストは、肝損傷の発症前1、2、3、4、5、6、12、24および/または48時間の時点で投与することができる。BMPアンタゴニストは、肝損傷の発症前1、2、3、4、5、6、12、24および/もしくは48時間の時点でならびに/または肝損傷の発症前1、2、3、4、5、6、12、24および/もしくは48時間以内に投与することができる。BMPアンタゴニストは、肝損傷後24、36、48、60、72、もしくは96時間の時点でおよび/または肝損傷後24、36、48、60、72、もしくは96時間以内に投与することができる。BMPアンタゴニストは、肝損傷の発症後3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日の時点でおよび/または肝損傷の発症後3、4、5、6、7、8、9、もしくは10日以内に投与することができる。あるいは、BMPアンタゴニストは、肝損傷後0〜48時間、1〜3日、2〜4日、3〜7日、5〜8日または7〜10日の間に投与することができる。BMPアンタゴニストは、これらの期間内に1回、またはあるいは、これらの期間内に、2回、3回、4回、5回、6回、7回、8回、もしくはさらに多くの回数、投与することができる。一実施形態では、BMPシグナル伝達のアンタゴニストによる治療は、これらの期間の後に終了する;あるいは、治療は、この期間が終了した後、例えば、肝損傷の発症後、最大1カ月、2カ月、3カ月、4カ月、5カ月または6カ月まで継続することができる。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、任意の好適な経路で必要とする対象に有効量で投与することができる。例えば、有効量のBMPシグナル伝達のアンタゴニストは、静脈内投与することができる。有効量のBMPシグナル伝達のアンタゴニストは、経口投与することができる。BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、例えば、肝臓カテーテル法による、肝臓への局所導入によって投与することができる。BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、門脈または他の門脈の支流(例えば、脾静脈、上腸間膜静脈、および幽門静脈)への注入によって局所投与することができる。あるいは、BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、注射によって肝組織に局所投与することができる。「注射によって肝組織に局所投与される」とは、肝臓の内面または外面に送達されることを意味する。局所投与または局所注射では、BMPアンタゴニストの送達点は、BMPアンタゴニストが拡散して、肝臓でBMPシグナル伝達経路が活性化された少なくとも1つ以上の肝細胞と接触することができるよう、肝臓の十分近くにすることができる。BMPアンタゴニストは、分散し、肝臓で増殖することができる肝細胞の少なくとも大部分(50%以上)と接触することができることが好ましい。BMPアンタゴニストは、徐放性処方物に含めて対象に投与することができ、またはポンプもしくは埋込み可能な装置によるか、もしくは担体(例えば、以下で論じるようなポリマー)によって送達することができる。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、医薬品組成物の一部として許容される医薬品担体とともに対象に投与することができる。医薬品組成物の処方は、選択される投与の様式によって異なる。好適な医薬品担体は、BMPアンタゴニストと相互作用しない不活性成分を含み得る。担体は、生体適合性であり、すなわち、非毒性、非炎症性、非免疫原性であり、かつ投与部位での他の望ましくない反応がないものであるべきである。医薬品として許容される担体の例には、例えば、食塩水、市販の不活性ゲル、またはアルブミン、メチルセルロースもしくはコラーゲンマトリックスが補充された液体が含まれる。さらなる例には、滅菌水、生理食塩水、静菌性食塩水(約0.9%mg/mlのベンジルアルコールを含む食塩水)、リン酸緩衝食塩水、ハンクス溶液、乳酸リンゲルなどが含まれる。標準的な医薬品処方技術(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(Remington’s Pharmaceutical Sciences.XVIII,Mack Publishing Company,Easton,PA(1990))に記載されているような技術)を利用することができる。
BMPシグナル伝達のアンタゴニストは、徐放性処方物に含めて投与することができる。ポリマーは、多くの場合、徐放性処方物を形成するために用いられる。これらのポリマーの例には、ポリα−ヒドロキシエステル(例えば、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ホモポリマーおよびコポリマー、ポリホスファゼン(PPHOS)、ポリ無水物およびポリ(プロピレンフマラート)が含まれる。ポリ乳酸/ポリグリコール酸(PLGA)のホモポリマーおよびコポリマーは、徐放性媒体として当技術分野で周知である。放出の速度は、当業者がポリ乳酸対ポリグリコール酸比およびポリマーの分子量を変えることによって調整することができる(Andersonら(1997)Adv.Drug Deliv.Rev.28:5を参照されたく、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。ポリエチレングリコールを混合物としてポリマーに組み入れて微粒子担体を形成させることにより、活性成分の放出プロファイルをさらに変化させることができる(Cleekら,J.Control Release 48:259(1997)を参照されたく、この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)。セラミック(例えば、リン酸カルシウムおよびハイドロキシアパタイト)を処方物に組み入れて、機械的品質を改善することもできる。
本発明は、以下の実施例により説明されるが、いかなる点においても限定されることを意図しない。
実施例1
I.実験手順
本発明は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路が肝細胞増殖の活性阻害因子であり、この経路のアンタゴニストで処理すると、肝損傷の後にインビボで肝細胞増殖が強化され、肝再生が増大するという発見に基づいている。
I.実験手順
本発明は、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路が肝細胞増殖の活性阻害因子であり、この経路のアンタゴニストで処理すると、肝損傷の後にインビボで肝細胞増殖が強化され、肝再生が増大するという発見に基づいている。
A.部分肝切除の実験手順
動物を用いて、損傷後の肝臓量の回復におけるBMPシグナル伝達の様々なメンバーの役割を調べた。マウスに、3分の2(「2/3」)または大規模80パーセント(80%)肝切除を施した。少なくとも8週齢の成体マウスに対して手術を行なった。手術のために、腹腔内に注射されるケタミン100mg/kgおよびキシラジン10mg/kgを用いて、マウスに麻酔をかけた。対象が意識を失わない場合、追加のケタミン25mg/kgおよびキシラジン2.5mg/kgを同様のやり方で注射した。対象が意識を失うまでこれを繰り返した。クリッパーを用いて手術部位を除毛し、無菌的技術およびベタジン(betadyne)を用いて皮膚を消毒した。消毒した部分を70%アルコールで濯いだ。低体温を避けるために、動物は必要以上に濡らさなかった。臍孔に向かって約1センチメートルの剣状突起の位置に滅菌鋏で切開を作った。鋏で腹膜内に侵入し、剣状突起の先端を切除した。2/3肝切除では、脇腹を軽く圧迫し、切開部を通して先に準備した部分の上に肝臓を露出させた。露出した肝臓の部分の周囲に4−0絹結紮糸を置いて、結紮した。次に、この結紮より遠位の肝臓の前方部分を切除した。4−0プロリンを用いて筋膜を縫合し、4−0ナイロンを用いて皮膚を皮下縫合した。80%肝切除では、より大きい切開を用い、個々の葉を4−0絹結紮糸で結紮し、尾状葉のみを残した。次に、この結紮より遠位の肝臓の前方部分を切除した。4−0プロリンを用いて筋膜を縫合し、4−0ナイロンを用いて皮膚を皮下縫合した。
動物を用いて、損傷後の肝臓量の回復におけるBMPシグナル伝達の様々なメンバーの役割を調べた。マウスに、3分の2(「2/3」)または大規模80パーセント(80%)肝切除を施した。少なくとも8週齢の成体マウスに対して手術を行なった。手術のために、腹腔内に注射されるケタミン100mg/kgおよびキシラジン10mg/kgを用いて、マウスに麻酔をかけた。対象が意識を失わない場合、追加のケタミン25mg/kgおよびキシラジン2.5mg/kgを同様のやり方で注射した。対象が意識を失うまでこれを繰り返した。クリッパーを用いて手術部位を除毛し、無菌的技術およびベタジン(betadyne)を用いて皮膚を消毒した。消毒した部分を70%アルコールで濯いだ。低体温を避けるために、動物は必要以上に濡らさなかった。臍孔に向かって約1センチメートルの剣状突起の位置に滅菌鋏で切開を作った。鋏で腹膜内に侵入し、剣状突起の先端を切除した。2/3肝切除では、脇腹を軽く圧迫し、切開部を通して先に準備した部分の上に肝臓を露出させた。露出した肝臓の部分の周囲に4−0絹結紮糸を置いて、結紮した。次に、この結紮より遠位の肝臓の前方部分を切除した。4−0プロリンを用いて筋膜を縫合し、4−0ナイロンを用いて皮膚を皮下縫合した。80%肝切除では、より大きい切開を用い、個々の葉を4−0絹結紮糸で結紮し、尾状葉のみを残した。次に、この結紮より遠位の肝臓の前方部分を切除した。4−0プロリンを用いて筋膜を縫合し、4−0ナイロンを用いて皮膚を皮下縫合した。
B.対象のジェノタイピングおよび選択
ジェノタイピングのために、尾を約2mm切除することにより、2週齢のマウスに対して尾生検を行なった。全ての手順に滅菌器具を用いた。遠位部の尾を70%アルコールで拭い、鋏を用いて切り取った。切断端に、少なくとも30秒間、強い圧力をかけた。出血の停止が確認された後で、マウスをケージに戻した。出血が生じる場合は、尾の切断端にNEXABAND(登録商標)液を1滴かけた。各時点に5匹の動物として、雄の成体マウスを実験に用いた。実験のばらつきを減らすために、近交マウス系統を用いた。
ジェノタイピングのために、尾を約2mm切除することにより、2週齢のマウスに対して尾生検を行なった。全ての手順に滅菌器具を用いた。遠位部の尾を70%アルコールで拭い、鋏を用いて切り取った。切断端に、少なくとも30秒間、強い圧力をかけた。出血の停止が確認された後で、マウスをケージに戻した。出血が生じる場合は、尾の切断端にNEXABAND(登録商標)液を1滴かけた。各時点に5匹の動物として、雄の成体マウスを実験に用いた。実験のばらつきを減らすために、近交マウス系統を用いた。
C.肝臓におけるBMPのmRNAおよびタンパク質の発現レベルの決定
BMPのmRNAおよびタンパク質の発現は、部分肝切除の後、肝臓で顕著に減少した。まず、mRNA発現のレベル(例えば、標的BMP4遺伝子の発現レベル)を測定することにより、内在性遺伝子発現を決定した。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、またはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロッティングおよびRNアーゼ保護)を用いて、遺伝子発現のレベルを測定した。特に、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を利用して、肝切除後のBMP4 mRNAのレベルを定量した。直接的にまたは間接的に標識された検出薬剤(例えば、蛍光標識または放射性標識された核酸、放射性標識または酵素標識された抗体など)を用いて、タンパク質またはmRNAのレベルを検出した。タンパク質およびmRNAのレベルを検出するための方法は、Gelfandに対する米国特許第5,210,015号明細書、Livakらに対する米国特許第5,538,848号明細書、およびHaalandに対する米国特許第5,863,736号明細書、ならびにHeid,C.A.ら,Genome Research,6:986−994(1996);Gibson,U.E.Mら,Genome Research 6:995−1001(1996);Holland,P.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280(1991);およびLivak,K.J.ら,PCR Methods and Applications 357−362(1995)に記載されている。これらの参考文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
BMPのmRNAおよびタンパク質の発現は、部分肝切除の後、肝臓で顕著に減少した。まず、mRNA発現のレベル(例えば、標的BMP4遺伝子の発現レベル)を測定することにより、内在性遺伝子発現を決定した。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、またはハイブリダイゼーションアッセイ(例えば、ノーザンハイブリダイゼーション、ドットブロッティングおよびRNアーゼ保護)を用いて、遺伝子発現のレベルを測定した。特に、定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を利用して、肝切除後のBMP4 mRNAのレベルを定量した。直接的にまたは間接的に標識された検出薬剤(例えば、蛍光標識または放射性標識された核酸、放射性標識または酵素標識された抗体など)を用いて、タンパク質またはmRNAのレベルを検出した。タンパク質およびmRNAのレベルを検出するための方法は、Gelfandに対する米国特許第5,210,015号明細書、Livakらに対する米国特許第5,538,848号明細書、およびHaalandに対する米国特許第5,863,736号明細書、ならびにHeid,C.A.ら,Genome Research,6:986−994(1996);Gibson,U.E.Mら,Genome Research 6:995−1001(1996);Holland,P.M.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276−7280(1991);およびLivak,K.J.ら,PCR Methods and Applications 357−362(1995)に記載されている。これらの参考文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
D.肝臓で条件的BMP4欠失を示すトランスジェニックマウスの作出
BMP4の完全な欠失は胚性致死であることが知られている。したがって、BMPの肝臓特異的な条件的遺伝子欠失(「ノックアウト)の戦略を利用した。通常、ノックアウトシステムでは、標的遺伝子の改変は、標的遺伝子改変を促進する物質に動物を曝露させたときに、例えば、標的遺伝子部位での組換えを促進する酵素(例えば、cre−floxシステムにおけるCre)を導入したときに生じる。本発明では、flox化BMP4マウスを用意し、AAV−8−MUP−cre(Hoら,2008)か、またはアルブミンおよびα−フェトタンパク質プロモーターの制御下のCreリコンビナーゼ(Alfp−Cre)を発現するトランスジェニックマウスのいずれかによってcreリコンビナーゼを送達した。研究技術として、肝臓を研究するためのウイルスベクターの使用は非常に有用である。残念ながら、レンチウイルスおよびアデノウイルスは、管理の難しさ、炎症、または肝毒性のために有用性が限られている(Mahasreshtiら,2003)。この問題を克服するために、マウス尿タンパク質プロモーターを含むアデノ随伴ウイルス8(AAV−8−MUP)を開発し、利用した。このウイルスは、損害をほとんど与えずに、また、損傷後の修復に全く影響を与えずに肝臓に感染する。
BMP4の完全な欠失は胚性致死であることが知られている。したがって、BMPの肝臓特異的な条件的遺伝子欠失(「ノックアウト)の戦略を利用した。通常、ノックアウトシステムでは、標的遺伝子の改変は、標的遺伝子改変を促進する物質に動物を曝露させたときに、例えば、標的遺伝子部位での組換えを促進する酵素(例えば、cre−floxシステムにおけるCre)を導入したときに生じる。本発明では、flox化BMP4マウスを用意し、AAV−8−MUP−cre(Hoら,2008)か、またはアルブミンおよびα−フェトタンパク質プロモーターの制御下のCreリコンビナーゼ(Alfp−Cre)を発現するトランスジェニックマウスのいずれかによってcreリコンビナーゼを送達した。研究技術として、肝臓を研究するためのウイルスベクターの使用は非常に有用である。残念ながら、レンチウイルスおよびアデノウイルスは、管理の難しさ、炎症、または肝毒性のために有用性が限られている(Mahasreshtiら,2003)。この問題を克服するために、マウス尿タンパク質プロモーターを含むアデノ随伴ウイルス8(AAV−8−MUP)を開発し、利用した。このウイルスは、損害をほとんど与えずに、また、損傷後の修復に全く影響を与えずに肝臓に感染する。
E.Ki−67の抗体標識
BMP4シグナル伝達の喪失の機能的結果を調べるために、Ki−67標識指数を利用して、BMPヌルマウスと野生型における肝細胞増殖を明らかにした。8〜10週齢の成体雄マウスに上記のように2/3肝切除を施し、2/3肝切除後の様々な時点(例えば、0、24、48、72、96、120、144、168および192時間)で肝細胞増殖を調べた。細胞増殖マーカーとして、Ki−67タンパク質は、細胞の増殖および分裂と強く関連する。間期には、Ki−67タンパク質(抗原)は、核内にのみ検出されるが、有糸分裂期には、このタンパク質の大半は、染色体に局在する。Ki−67タンパク質は、細胞周期の全ての活動期(G1、S、G2、および有糸分裂)に検出されるが、休止細胞(G0)には全く見られない。したがって、Ki−67は、所与の細胞集団の増殖画分を決定するための優れたマーカーとして役立つ。Ki−67陽性細胞の割合(Ki−67標識指数)は、細胞の分裂および増殖の経過と相関する。モノクローナル抗体MIB−1を用いて、マウスから抽出された肝細胞でKi−67抗原を検出した。その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Suzukiら(Suzukiら(1992)J.Clin.Gastroenterol.15:317−20)に記載されているように、Ki−67抗体標識指数を含む免疫染色を行なった。Alfp−Cre/BMP4f/fおよびAlfp−Cre+BMP4+/fマウス、ならびにAAV−8−MUP−緑色蛍光タンパク質(GFP)対照ウイルスを投与されたマウスを含む、種々の対照を行なった。
BMP4シグナル伝達の喪失の機能的結果を調べるために、Ki−67標識指数を利用して、BMPヌルマウスと野生型における肝細胞増殖を明らかにした。8〜10週齢の成体雄マウスに上記のように2/3肝切除を施し、2/3肝切除後の様々な時点(例えば、0、24、48、72、96、120、144、168および192時間)で肝細胞増殖を調べた。細胞増殖マーカーとして、Ki−67タンパク質は、細胞の増殖および分裂と強く関連する。間期には、Ki−67タンパク質(抗原)は、核内にのみ検出されるが、有糸分裂期には、このタンパク質の大半は、染色体に局在する。Ki−67タンパク質は、細胞周期の全ての活動期(G1、S、G2、および有糸分裂)に検出されるが、休止細胞(G0)には全く見られない。したがって、Ki−67は、所与の細胞集団の増殖画分を決定するための優れたマーカーとして役立つ。Ki−67陽性細胞の割合(Ki−67標識指数)は、細胞の分裂および増殖の経過と相関する。モノクローナル抗体MIB−1を用いて、マウスから抽出された肝細胞でKi−67抗原を検出した。その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Suzukiら(Suzukiら(1992)J.Clin.Gastroenterol.15:317−20)に記載されているように、Ki−67抗体標識指数を含む免疫染色を行なった。Alfp−Cre/BMP4f/fおよびAlfp−Cre+BMP4+/fマウス、ならびにAAV−8−MUP−緑色蛍光タンパク質(GFP)対照ウイルスを投与されたマウスを含む、種々の対照を行なった。
F.5−ブロモ−2−デオキシ−ウリジン(BrdU)標識および免疫細胞化学
肝臓および肝細胞を上記のようにマウスから抽出し、10%FBSを含む従来のDMEMに入れてTフラスコ中で増殖させた。トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞を解離させ、1mLの適切な培地中に12mmカバースリップを入れた、またはその代わりに(PBS中0.05〜0.1%、150〜300Kモル重量を用いて、一晩)ポリリジンでコーティングしたカバースリップを入れた、24ウェルプレートもしくはチャンバースライド中のシェルバイアルに移した。回復させるために、細胞を37℃で2時間インキュベートした。BrdUを最終濃度10μMになるまで各シェルバイアルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。シェルバイアルから培地を完全に吸引し、カバースリップをPBS中で3回洗浄した。1mLのカルノワ固定液(3部のメタノール:1部の氷酢酸)を各シェルバイアルに添加し、完全に吸引した。さらに1mLのカルノワ固定液をすぐに添加した。シェルバイアルを−20℃で20分間固定した。固定液をシェルバイアルから吸引し、カバースリップをPBS中で3回洗浄した。2MのHClを含む水0.2mLを各シェルバイアルに添加し、37℃で1時間インキュベートすることにより、細胞を変性させた。酸をシェルバイアルから完全に吸引し、ホウ酸塩緩衝液(pH8.5)中で3回洗浄することにより、カバースリップを中和した。シェルバイアルをPBS+0.05%Tween 20[PBS/T20]中で3回洗浄し、2〜8℃で保存した。
肝臓および肝細胞を上記のようにマウスから抽出し、10%FBSを含む従来のDMEMに入れてTフラスコ中で増殖させた。トリプシン/EDTA溶液を用いて細胞を解離させ、1mLの適切な培地中に12mmカバースリップを入れた、またはその代わりに(PBS中0.05〜0.1%、150〜300Kモル重量を用いて、一晩)ポリリジンでコーティングしたカバースリップを入れた、24ウェルプレートもしくはチャンバースライド中のシェルバイアルに移した。回復させるために、細胞を37℃で2時間インキュベートした。BrdUを最終濃度10μMになるまで各シェルバイアルに添加し、37℃で2時間インキュベートした。シェルバイアルから培地を完全に吸引し、カバースリップをPBS中で3回洗浄した。1mLのカルノワ固定液(3部のメタノール:1部の氷酢酸)を各シェルバイアルに添加し、完全に吸引した。さらに1mLのカルノワ固定液をすぐに添加した。シェルバイアルを−20℃で20分間固定した。固定液をシェルバイアルから吸引し、カバースリップをPBS中で3回洗浄した。2MのHClを含む水0.2mLを各シェルバイアルに添加し、37℃で1時間インキュベートすることにより、細胞を変性させた。酸をシェルバイアルから完全に吸引し、ホウ酸塩緩衝液(pH8.5)中で3回洗浄することにより、カバースリップを中和した。シェルバイアルをPBS+0.05%Tween 20[PBS/T20]中で3回洗浄し、2〜8℃で保存した。
免疫染色
当技術分野で一般に知られているように免疫染色を行なった。具体的には、0.2mLのPBS/T20/2%正常ヤギ血清を各バイアルに添加し、37℃で10〜30分間インキュベートすることにより、細胞をブロッキングした。溶液を完全に吸引し、PBS/T20/2%正常ヤギ血清に希釈した抗BrdUモノクローナル抗体(Millipore(商標)カタログ番号MAB3424、MAB4072)を0.2mL添加した。バイアルを37℃で30分間インキュベートした(BrdUストック溶液:10mM、PBSに溶解させ、0.2μmのフィルターで滅菌し、−20℃で保存したもの)。BrdUストック溶液を培養培地に1/100希釈して、100μM溶液(10×)を得た。この10×溶液を最終濃度10μMになるまで各バイアルに添加した。バイアルをPBS/T20中で3回洗浄し、0.2mLのヤギ抗マウスFITC(Millipore(商標)カタログ番号AP124F)を添加した。バイアルを暗所37℃で30分間インキュベートし、PBS/T20中で3回洗浄した。バイアルからカバースリップを取り出し、DI水に浸し、蛍光用のマウント剤(Millipore(商標)カタログ番号5013)を用いて、ガラススライド上に標本化した。蛍光顕微鏡観察を用いて、スライドを評価した。
当技術分野で一般に知られているように免疫染色を行なった。具体的には、0.2mLのPBS/T20/2%正常ヤギ血清を各バイアルに添加し、37℃で10〜30分間インキュベートすることにより、細胞をブロッキングした。溶液を完全に吸引し、PBS/T20/2%正常ヤギ血清に希釈した抗BrdUモノクローナル抗体(Millipore(商標)カタログ番号MAB3424、MAB4072)を0.2mL添加した。バイアルを37℃で30分間インキュベートした(BrdUストック溶液:10mM、PBSに溶解させ、0.2μmのフィルターで滅菌し、−20℃で保存したもの)。BrdUストック溶液を培養培地に1/100希釈して、100μM溶液(10×)を得た。この10×溶液を最終濃度10μMになるまで各バイアルに添加した。バイアルをPBS/T20中で3回洗浄し、0.2mLのヤギ抗マウスFITC(Millipore(商標)カタログ番号AP124F)を添加した。バイアルを暗所37℃で30分間インキュベートし、PBS/T20中で3回洗浄した。バイアルからカバースリップを取り出し、DI水に浸し、蛍光用のマウント剤(Millipore(商標)カタログ番号5013)を用いて、ガラススライド上に標本化した。蛍光顕微鏡観察を用いて、スライドを評価した。
II.結果
A.BMP4は、成体の肝臓によって構成的に発現され、肝再生を阻止するものとして働き、種々の方法を用いてこの阻害を取り除くことにより、肝再生が強化される。
A.BMP4は、成体の肝臓によって構成的に発現され、肝再生を阻止するものとして働き、種々の方法を用いてこの阻害を取り除くことにより、肝再生が強化される。
大規模な遺伝子スクリーニングにより、骨形成タンパク質シグナル伝達が、損傷後の肝修復時に高度に阻害されていることが確認された。これには、アンタゴニストの誘導とアゴニストの阻害とが含まれた。増殖の阻害因子の拮抗作用が損傷後の正常な肝修復に必要とされる肝再生における新しいパラダイムを理解するための潜在的標的としてのこれらの分子。BMPは分泌型のシグナル伝達分子であり、したがって、潜在的に操作することができるので、これは、特に魅力のある治療標的となった。
肝切除後のBMP4のリアルタイムPCRを図1に示す。肝切除後18時間までに、このレベルは、損傷していない肝臓と比較して25%にまで低下する。BMP4タンパク質レベルも同様に減少し、肝切除後36時間で顕著に低下する(図2)。同様の結果がBMP2のRNAについて認められた。
B.肝臓におけるBMP4受容体の発現
BMPの受容体が肝臓に存在することを明らかにするために、BMP4によって利用される2つの受容体であるALK2およびALK3について免疫組織化学検査を行なった。ALK2は、主に、BMP6およびBMP7によって利用されるのに対し、ALK3は、主に、上で論じたようなBMP2およびBMP4によって利用される。図3に示すように、ALK3は、門脈に隣接した肝臓で発現される(赤の染色)。同様の結果がALK2について認められた。
BMPの受容体が肝臓に存在することを明らかにするために、BMP4によって利用される2つの受容体であるALK2およびALK3について免疫組織化学検査を行なった。ALK2は、主に、BMP6およびBMP7によって利用されるのに対し、ALK3は、主に、上で論じたようなBMP2およびBMP4によって利用される。図3に示すように、ALK3は、門脈に隣接した肝臓で発現される(赤の染色)。同様の結果がALK2について認められた。
C.マウス肝臓におけるBMP4の条件的遺伝子欠失の作出
BMP4の完全な欠失は胚性致死であることが知られている。したがって、BMPの肝臓特異的な条件的遺伝子欠失(「ノックアウト)の戦略を利用した。具体的には、AAV−8−MUP(Hoら,2008)か、またはアルブミンおよびα−フェトタンパク質プロモーターの制御下のCreリコンビナーゼ(Alfp−Cre)を発現するトランスジェニックマウスのいずれかによってCreリコンビナーゼが送達されるflox化BMP4マウスを利用した。肝臓におけるBMP4の条件的欠失の有効性を確認するために、組換え後に、BMP4タンパク質についてのウェスタンブロットアッセイを行なった。図4に示すように、BMP4タンパク質レベルの大幅な低下が、Creリコンビナーゼによる影響を受けたflox化マウスで認められた(図4)。
BMP4の完全な欠失は胚性致死であることが知られている。したがって、BMPの肝臓特異的な条件的遺伝子欠失(「ノックアウト)の戦略を利用した。具体的には、AAV−8−MUP(Hoら,2008)か、またはアルブミンおよびα−フェトタンパク質プロモーターの制御下のCreリコンビナーゼ(Alfp−Cre)を発現するトランスジェニックマウスのいずれかによってCreリコンビナーゼが送達されるflox化BMP4マウスを利用した。肝臓におけるBMP4の条件的欠失の有効性を確認するために、組換え後に、BMP4タンパク質についてのウェスタンブロットアッセイを行なった。図4に示すように、BMP4タンパク質レベルの大幅な低下が、Creリコンビナーゼによる影響を受けたflox化マウスで認められた(図4)。
D.BMP4の喪失による肝再生の強化
次に、Ki−67標識指数を用いて、BMP4シグナル伝達の喪失の機能的結果を調べた。8〜10週齢の成体マウスに上記のように2/3肝切除を施し、2/3肝切除後の様々な時点(例えば、0、24、48、72、96、120、144、168および192時間)で肝細胞増殖を調べた。図5に示すように、トランスジェニックマウスにおけるBMP4の肝臓特異的欠失は、Ki−67標識で測定したとき、対照と比較して、48時間で2倍を超える量の肝細胞増殖をもたらした(図5)(p<0.05)。Alfp−Cre/BMP4f/fおよび Alfp−Cre+BMP4+/fマウス、ならびにAAV−8−MUP−緑色蛍光タンパク質(GFP)対照ウイルスを投与されたマウスを含む、種々の対照を行なって、同様の結果を得た(全てのデータが示されているわけではない)。それゆえ、肝臓でのBMP4の喪失は、肝再生の構成的障害物を放出することによって、肝再生を顕著に強化した。
次に、Ki−67標識指数を用いて、BMP4シグナル伝達の喪失の機能的結果を調べた。8〜10週齢の成体マウスに上記のように2/3肝切除を施し、2/3肝切除後の様々な時点(例えば、0、24、48、72、96、120、144、168および192時間)で肝細胞増殖を調べた。図5に示すように、トランスジェニックマウスにおけるBMP4の肝臓特異的欠失は、Ki−67標識で測定したとき、対照と比較して、48時間で2倍を超える量の肝細胞増殖をもたらした(図5)(p<0.05)。Alfp−Cre/BMP4f/fおよび Alfp−Cre+BMP4+/fマウス、ならびにAAV−8−MUP−緑色蛍光タンパク質(GFP)対照ウイルスを投与されたマウスを含む、種々の対照を行なって、同様の結果を得た(全てのデータが示されているわけではない)。それゆえ、肝臓でのBMP4の喪失は、肝再生の構成的障害物を放出することによって、肝再生を顕著に強化した。
E.肝損傷後の正常な肝修復のためのBMP4発現の低下
BMP4シグナル伝達の低下または阻害が肝損傷後の正常な肝修復の必要条件であることを立証するために、肝切除後のBMP4発現レベルを維持する必要があった。これを達成するために、AAV−8−MUP−BMP4を開発した。肝切除時および肝切除後にBMP4ウイルスを発現させると、ビヒクル(食塩水)またはAAV−8−MUP−GFP対照ウイルスと比較して肝細胞増殖の70%減少が認められた(P<0.05)。
BMP4シグナル伝達の低下または阻害が肝損傷後の正常な肝修復の必要条件であることを立証するために、肝切除後のBMP4発現レベルを維持する必要があった。これを達成するために、AAV−8−MUP−BMP4を開発した。肝切除時および肝切除後にBMP4ウイルスを発現させると、ビヒクル(食塩水)またはAAV−8−MUP−GFP対照ウイルスと比較して肝細胞増殖の70%減少が認められた(P<0.05)。
肝臓特異的なBMP4の喪失によって肝再生に影響を及ぼす全身作用が生じなかったことを立証するために、BMP4ウイルス(すなわち、AAV−8−MUP−BMP4)を肝臓特異的BMP4ヌルマウスに注射した。予想された通り、肝臓でのBMP4の発現により、肝細胞増殖は、野生型マウスで見られる、より低い正常レベルにまで戻った。
これらの結果は、BMPシグナル伝達の低下が肝切除後の正常な肝細胞増殖に必要であることを強く示すものである。さらに、これらの結果は、BMP4シグナル伝達の程度が肝切除後の肝細胞増殖の速度を制御する強い証拠を示すものである。これらの結果は、阻害経路の解放が、図5に示すような損傷後の肝再生の極めて重要なメカニズムであるという観察とも一致している。BMP4は分泌型のシグナル伝達分子であるので、優れた治療標的候補として役立つ。
F.部分肝切除後のBMPシグナル伝達の薬理学的阻害による肝再生の強化
上で論じた知見の臨床的意義を示すために、8週齢のマウスにBMPシグナル伝達のアンタゴニストを注射した。2/3肝切除の前、2/3肝切除の間、および2/3肝切除の後に、ドルソモルフィンを48時間注射した。具体的には、肝切除の24時間および12時間前に、肝切除の時に、ならびに肝切除の12、24、および36時間後に、ドルソモルフィンを複数回注射した。図6で、BrdUの取込みを2/3肝切除の36時間および48時間後に測定した。図6に示すように、ドルソモルフィンの投与により、肝細胞増殖が著しく強化された。最大60日間のドルソモルフィン投与により、全身毒性は生じなかった。特に、骨髄、増殖、または白血球数に対する影響はなかった。
上で論じた知見の臨床的意義を示すために、8週齢のマウスにBMPシグナル伝達のアンタゴニストを注射した。2/3肝切除の前、2/3肝切除の間、および2/3肝切除の後に、ドルソモルフィンを48時間注射した。具体的には、肝切除の24時間および12時間前に、肝切除の時に、ならびに肝切除の12、24、および36時間後に、ドルソモルフィンを複数回注射した。図6で、BrdUの取込みを2/3肝切除の36時間および48時間後に測定した。図6に示すように、ドルソモルフィンの投与により、肝細胞増殖が著しく強化された。最大60日間のドルソモルフィン投与により、全身毒性は生じなかった。特に、骨髄、増殖、または白血球数に対する影響はなかった。
実施例2
I.肝切除およびTylenol過剰摂取後の肝再生を評価するための一般的アプローチ
遺伝的または薬理学的介入の効果を調べるために、3つの実験手法:2/3肝切除、大規模肝切除、またはTylenol過剰摂取を利用する。2/3肝切除のために、上に記載され、かつ他の者(Otuら,2007)によって記載されているように、胆嚢を含む左葉および中葉の除去を行なう。大規模肝切除(80%)のためには、右葉も切除する。Tylenol過剰摂取のために、300mg/kgを静脈内灌流で投与する。
I.肝切除およびTylenol過剰摂取後の肝再生を評価するための一般的アプローチ
遺伝的または薬理学的介入の効果を調べるために、3つの実験手法:2/3肝切除、大規模肝切除、またはTylenol過剰摂取を利用する。2/3肝切除のために、上に記載され、かつ他の者(Otuら,2007)によって記載されているように、胆嚢を含む左葉および中葉の除去を行なう。大規模肝切除(80%)のためには、右葉も切除する。Tylenol過剰摂取のために、300mg/kgを静脈内灌流で投与する。
2/3肝切除動物を解析するために、肝切除後6、12、24、36、48、および72時間、ならびに7日で肝臓を摘出する。動物を屠殺する2時間前にBrdUを注射し、BrdUの取込みおよびKi−67標識を用いて、肝細胞増殖を明らかにする。屠殺時に肝重量を解析し、肝重量/体重比を測定して、再生速度を評価する。リアルタイムPCR解析およびウェスタンブロッティング用に、RNAおよびタンパク質試料を回収する。一般に、肝切除後の増殖の開始が遅延しているかまたは加速しているかを評価する。再生が始まった後に再生のペースが変化するかどうか、および最終的な肝臓サイズの設定点が変化するかどうかも明らかにする。また、組織学検査を検討して、肝臓における脂肪蓄積、空胞形成、壊死、または構造変化を探す。肝細胞の健康および機能をさらに評価するために、ベースライン時および屠殺した動物において、ast、alt、およびビリルビンを含む肝機能検査を測定する。肝損傷に応答したプログラムされた細胞死(アポトーシス)または壊死の潜在的レベルを評価するために、ターミナルデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼdUTPニック末端標識(TUNEL)を行ない、DNA断片化を解析する。上で論じたように、全ての実験で8〜10週齢の雄マウスを利用し、可能な限り同腹子を対照として用いる。生存実験のために、カプラン−マイヤー生存曲線を作成する。出力計算に基づいて、22匹の実験マウスを22匹の対照マウスと比較する。
実施例3
I.どのBMPリガンドおよび受容体が損傷後の肝修復に影響を及ぼすかを決定し、その分子作用メカニズムを解明するためのインビボ研究
A.肝臓特異的BMPヌルマウスにおける損傷後の肝修復強化のメカニズムの決定
野生型マウス、ウイルスを有する野生型マウス、対照AAV−8−MUP−EGFPウイルスを投与されたトランスジェニックflox化マウスおよびAAV−8−MUP−BMPウイルスを投与された実験トランスジェニックflox化マウスを用いた対照は、上で記載されている。肝臓特異的BMP4ヌルマウスにおける肝切除後の肝細胞増殖強化の経時的シグネチャーを図5に示す。
I.どのBMPリガンドおよび受容体が損傷後の肝修復に影響を及ぼすかを決定し、その分子作用メカニズムを解明するためのインビボ研究
A.肝臓特異的BMPヌルマウスにおける損傷後の肝修復強化のメカニズムの決定
野生型マウス、ウイルスを有する野生型マウス、対照AAV−8−MUP−EGFPウイルスを投与されたトランスジェニックflox化マウスおよびAAV−8−MUP−BMPウイルスを投与された実験トランスジェニックflox化マウスを用いた対照は、上で記載されている。肝臓特異的BMP4ヌルマウスにおける肝切除後の肝細胞増殖強化の経時的シグネチャーを図5に示す。
肝臓特異的BMP4ヌルマウスにおける損傷後の肝修復強化のより具体的なメカニズムをさらに明らかにするために、およびBMP4が増殖を抑制しているメカニズムを評価するために、以下の研究を行なう。
いくつかのアンタゴニストが存在するので、BMP発現のフィードバックループが存在する可能性が高い。BMPシグナル伝達のフィードバックループが存在するかどうかを明らかにするために、BMP経路の他の構成要素、例えば、BMP2、BMP6またはBMP7、I型BMP受容体(例えば、ALK2、ALK3、ALK6)ならびにアンタゴニスト(例えば、NogginおよびCerberus様1)が、BMP4の非存在下でどのように経時変化するかをRT−PCRおよびウェスタンブロッティングを用いて明らかにする。
BMP4は、サイクリン発現をこれらのタンパク質の上流エフェクターとして増大させる可能性が高い。BMP4の喪失が細胞周期進行にどのような影響を及ぼすのかを評価するために、例えば、RT−PCRおよびウェスタンブロッティングによって、サイクリンAおよびDを調べる。
c−junおよびc−EBP−αはBMP4の転写標的ではない可能性が高いが、関係性を確認することは重要である。BMP4の喪失が正の調節経路の転写調節にどのような影響を及ぼすのかを調べるために、例えば、RT−PCRおよびウェスタンブロッティングによって、c−junおよびc−EBP−αの発現を明らかにする。
サイトカインおよび増殖因子はBMP4の標的ではない可能性が高い。BMP4が肝細胞増殖の他の刺激因子を調節するかどうかを明らかにするために、例えば、RT−PCRおよびウェスタンブロッティングによって、サイトカインであるIL−6ならびに増殖因子である上皮増殖因子および肝細胞増殖因子の発現を調べる。また、BMP4シグナル伝達が反対の調節タンパク質であるp21およびp53を転写調節するかどうかをRT−PCRまたはノーザン解析によって調べる。
SMAD1、5および8を含むBMPシグナル伝達の細胞内メディエーターの局在およびそのリン酸化状態を、ウェスタンブロッティングを用いて明らかにする。
Tob1は、BMP4の転写標的として機能し得る。BMPシグナル伝達と相互作用する抗増殖性分子であるErbB2.1(Tob1)のトランスデューサーの変化によって、BMPシグナル伝達がTob1発現を調節するかどうかが明らかになる。
B.肝臓特異的なBMP2の除去が損傷後の肝修復を強化するかどうかの決定
従来のBMP2ノックアウトは胚性致死であるので、上記のBMP4に用いた戦略と同様の「flox化」BMP2(BMP2f/f)マウスを用いる戦略を利用する。ウイルスまたはトランスジェニックによるアプローチを用いて、BMP2f/fにおけるBMP2の不活化を2つの別々の方法で行なうことができる。組換えはマウスに注射したときにのみ起こり、出生前には起こらないので、AAV−8−MUP−Creが好ましい。このウイルスを用いて達成することができる時間特異性は、解析を複雑にする可能性のある低いBMP2レベルに動物をあまり曝露させないことを意味する。ウイルスに基づくアプローチの対照は、BMP4の対照ならびにBMP2f/fおよびeGFPウイルスに基づく対照と同様とし、flox化されているが、組み換えられていないアレル、またはウイルスそれ自体がマウスに影響を及ぼす可能性を排除する。
従来のBMP2ノックアウトは胚性致死であるので、上記のBMP4に用いた戦略と同様の「flox化」BMP2(BMP2f/f)マウスを用いる戦略を利用する。ウイルスまたはトランスジェニックによるアプローチを用いて、BMP2f/fにおけるBMP2の不活化を2つの別々の方法で行なうことができる。組換えはマウスに注射したときにのみ起こり、出生前には起こらないので、AAV−8−MUP−Creが好ましい。このウイルスを用いて達成することができる時間特異性は、解析を複雑にする可能性のある低いBMP2レベルに動物をあまり曝露させないことを意味する。ウイルスに基づくアプローチの対照は、BMP4の対照ならびにBMP2f/fおよびeGFPウイルスに基づく対照と同様とし、flox化されているが、組み換えられていないアレル、またはウイルスそれ自体がマウスに影響を及ぼす可能性を排除する。
組換え事象を探すために、遺伝子欠失の成功の確認を別々のPCRアッセイで行なう。これらのアッセイは当業者によってルーチンに行なわれている。図4に示すアッセイと同様に、BMP2の欠失を保証するための追加の対照として、ウェスタンブロットアッセイを行なう。
条件的ヌルマウスが肝切除の非存在下で表現型を有するかどうかを明らかにするために。肝重量により、BMP2が肝臓サイズを調節するかどうかが決定される。肝臓および骨髄に対する考えられるあらゆる影響について、肝機能検査および血球数を測定する。SMADはBMPシグナル伝達を仲介し、また、SMAD4はヘプシジン発現を介して鉄代謝に関与することが示されているので(Wangら,2005)、Yuら(Yuら(2007)Nature Chemical Biology,4:33−41)(この文献の教示全体は、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているように、鉄、トランスフェリンおよびフェリチンのレベルについて、これらのマウスに関するさらなる研究を行なう。
flox化BMP2マウスにAAV−8−Creを感染させることにより、上記のような対照とともに、肝臓特異的BMP2ヌルマウスを作製する。これらのマウスを2/3肝切除後6時間から7時間の肝細胞増殖について調べる。作用メカニズムを明らかにするために、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングを用いて、BMP2ヌルマウスについてBMP4ヌルマウスと同様の解析を行なう。BMP2の欠失が肝切除後の肝細胞増殖強化をもたらすかどうかをさらに明らかにするために、BMP2ヌルマウスを用いてBrdU取込みおよびKi−67染色も行なう。BMP2マウスとBMP4マウスの増殖の違いは、BMP2とBMP4の特異的機能を示し、この経路の異なるメンバーがいかにして異なる機能に関与するかを示唆する。
C.肝臓特異的なALK2/ALK3の除去が損傷後の肝修復を強化するかどうかの決定
Alk3の除去によって、肝切除後の肝細胞増殖が増大し、より速やかな肝臓量の回復がもたらされるかどうかを肝臓特異的Alk3ヌルマウスで明らかにする。目的は、損傷後の肝修復に対するBMP受容体ALK3の喪失の効果を特徴付けることである。特異性の高い医薬品アンタゴニストを同定する際、どのBMP受容体が関連シグナルを仲介しているのかを明らかにすることが極めて重要である。「flox化」ALK3(Alk3f/f)マウスを上記のように作出する。条件的ヌルマウスが、肝切除がないときの表現型を有するかどうかを明らかにするために、これらのマウスについての広範囲に及ぶ調査を行ない、鉄、トランスフェリン、フェリチン、ヘマトクリットのレベル、および貧血または異常な赤血球形態の証拠を明らかにする。
Alk3の除去によって、肝切除後の肝細胞増殖が増大し、より速やかな肝臓量の回復がもたらされるかどうかを肝臓特異的Alk3ヌルマウスで明らかにする。目的は、損傷後の肝修復に対するBMP受容体ALK3の喪失の効果を特徴付けることである。特異性の高い医薬品アンタゴニストを同定する際、どのBMP受容体が関連シグナルを仲介しているのかを明らかにすることが極めて重要である。「flox化」ALK3(Alk3f/f)マウスを上記のように作出する。条件的ヌルマウスが、肝切除がないときの表現型を有するかどうかを明らかにするために、これらのマウスについての広範囲に及ぶ調査を行ない、鉄、トランスフェリン、フェリチン、ヘマトクリットのレベル、および貧血または異常な赤血球形態の証拠を明らかにする。
BMP4と同様に、ALK3の不活化を、2つの別々の方法、すなわち、ウイルスによるアプローチとトランスジェニックによるアプローチで行なうことができる。ウイルスに基づくアプローチの対照では、eGFPウイルスとともにALK3f/fを用いて、flox化されているが組み換えられていないアレルが解析を複雑にし得る全身作用を有する可能性、またはウイルスそれ自体が再生に影響を及ぼす可能性を排除する。
組換え事象を探すためのPCRアッセイとタンパク質の除去を保証するウェスタンブロットとを用いて、遺伝子欠失を確認する。AAV−8−MUP−Creの感染によって作製される肝臓特異的なAlk3ヌルマウスを、AAV−8−MUP−GFP対照ウイルスを投与したflox化Alk3マウスと比較する。肝切除後6時間から7日までの2/3肝切除後の肝細胞増殖について、これらのマウスを調べる。作用メカニズムを明らかにするために、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングを用いて、BMP4ヌルマウスと同様の解析を行なう。肝臓量が7日後に依然として対照と異なっているならば、Alk3が長期間の肝臓サイズの調節に関与し得ることを示唆する。
同様に、肝再生におけるこれらの構成要素の特定の分子メカニズムを明らかにするために利用されるのと同様の方法を用いて、肝臓特異的Alk2単一ノックアウトおよびAlk2/Alk3二重ノックアウト(「ヌル」)マウスを利用する。
実施例4
I.BMPシグナル伝達を阻害する医薬品または化学薬品が、部分肝切除後の肝細胞増殖を改善し、損傷後の肝修復を強化し、かつ大規模肝切除またはアセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))過剰摂取後の生存を改善することができるかどうかの決定
A.BMPシグナル伝達を阻害する医薬品または化学薬品が、損傷(2/3肝切除)後の肝修復を強化することができるかどうかの決定
C57B6マウスに、BMPシグナル伝達の選択的阻害剤であるドルソモルフィンまたはLDN193189を用いる一連の投薬レジメンを施す。国際公開第2008/033408号パンフレット号に記載されている他の化合物または国際公開第2008/033408号パンフレットに記載されている方法によって同定される化合物も利用する。まず、これらの化合物の肝臓についての用量応答曲線を作成する。BMPシグナル伝達の阻害はId−1およびヘプシジン発現に影響を及ぼすことが知られているので、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングを独立した出力として行ない、医薬品による遮断の効率を評価する。化合物の全身作用があるかどうかを明らかにするために、肝機能検査、鉄、フェリチンレベルも調べる。適切な用量は、2/3肝切除(「部分肝切除」)後の肝細胞増殖の最大の強化をもたらす最小用量として決定する。ひとたびこれを決定すれば、ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与した後に、マウスに2/3肝切除を施す。6、24、36、48、72、96、および168時間で肝臓を摘出する。対照マウスは食塩水のみで処理する。ドルソモルフィンが肝細胞増殖に影響を及ぼすメカニズムを上記のようなBrdU取込みおよびKi−67標識アッセイによって評価する。同様に、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングも行ない、上で論じたようなBMP発現のレベルを決定する。
I.BMPシグナル伝達を阻害する医薬品または化学薬品が、部分肝切除後の肝細胞増殖を改善し、損傷後の肝修復を強化し、かつ大規模肝切除またはアセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))過剰摂取後の生存を改善することができるかどうかの決定
A.BMPシグナル伝達を阻害する医薬品または化学薬品が、損傷(2/3肝切除)後の肝修復を強化することができるかどうかの決定
C57B6マウスに、BMPシグナル伝達の選択的阻害剤であるドルソモルフィンまたはLDN193189を用いる一連の投薬レジメンを施す。国際公開第2008/033408号パンフレット号に記載されている他の化合物または国際公開第2008/033408号パンフレットに記載されている方法によって同定される化合物も利用する。まず、これらの化合物の肝臓についての用量応答曲線を作成する。BMPシグナル伝達の阻害はId−1およびヘプシジン発現に影響を及ぼすことが知られているので、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングを独立した出力として行ない、医薬品による遮断の効率を評価する。化合物の全身作用があるかどうかを明らかにするために、肝機能検査、鉄、フェリチンレベルも調べる。適切な用量は、2/3肝切除(「部分肝切除」)後の肝細胞増殖の最大の強化をもたらす最小用量として決定する。ひとたびこれを決定すれば、ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与した後に、マウスに2/3肝切除を施す。6、24、36、48、72、96、および168時間で肝臓を摘出する。対照マウスは食塩水のみで処理する。ドルソモルフィンが肝細胞増殖に影響を及ぼすメカニズムを上記のようなBrdU取込みおよびKi−67標識アッセイによって評価する。同様に、リアルタイムPCRおよびウェスタンブロッティングも行ない、上で論じたようなBMP発現のレベルを決定する。
B.ドルソモルフィンまたはLDN193189が大規模肝切除(80%肝切除)後の生存を延長するかどうかの決定
記載したような種々の投与レジメンを用いて、C57/B6マウスに上記のような80%肝切除を施す。ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与されたマウスを、対照として食塩水を投与されたマウスと比較する。カプラン−マイヤー曲線を作成する。肝細胞の健康を評価するための組織学検査および肝細胞増殖を評価するためのBrdU取込みのために、48時間および96時間、そしてその後、7日の時点で、生き残ったものから肝臓を摘出する。TUNEL標識を用いて、アポトーシスのレベルを評価する。事前の観察結果に基づくと、介入なしでの30%生存が期待される。出力計算により、22匹の対照マウスと薬物を投与された22匹で十分であることが示唆される。
記載したような種々の投与レジメンを用いて、C57/B6マウスに上記のような80%肝切除を施す。ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与されたマウスを、対照として食塩水を投与されたマウスと比較する。カプラン−マイヤー曲線を作成する。肝細胞の健康を評価するための組織学検査および肝細胞増殖を評価するためのBrdU取込みのために、48時間および96時間、そしてその後、7日の時点で、生き残ったものから肝臓を摘出する。TUNEL標識を用いて、アポトーシスのレベルを評価する。事前の観察結果に基づくと、介入なしでの30%生存が期待される。出力計算により、22匹の対照マウスと薬物を投与された22匹で十分であることが示唆される。
C.ドルソモルフィンまたはLDN193189がアセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))過剰摂取後の生存を延長するかどうかの決定
ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与した後、300mg/kgのアセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))をマウスに投与する。実験動物において70%の死亡率をもたらすように用量を調整する。食塩水を投与された対照動物が対照の役目を果たす。少なくとも22匹の対照マウスと22匹の実験マウスを利用する。生存についての用量応答曲線を作成する。48時間および96時間で、そして再度7日で組織学検査を行なって、肝細胞の健康を評価し、BrdUアッセイで肝細胞増殖を評価する。TUNEL染色を用いてアポトーシスを評価する。
ドルソモルフィンまたはLDN193189を投与した後、300mg/kgのアセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))をマウスに投与する。実験動物において70%の死亡率をもたらすように用量を調整する。食塩水を投与された対照動物が対照の役目を果たす。少なくとも22匹の対照マウスと22匹の実験マウスを利用する。生存についての用量応答曲線を作成する。48時間および96時間で、そして再度7日で組織学検査を行なって、肝細胞の健康を評価し、BrdUアッセイで肝細胞増殖を評価する。TUNEL染色を用いてアポトーシスを評価する。
肝細胞増殖を強化することで、形勢を生存に傾かせることができる可能性が高いが、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))による肝細胞壊死によって、肝細胞が増殖刺激に応答することができなくなる可能性がある。ヒトでは、肝細胞は、アセトアミノフェン(Tylenol(登録商標))毒性の後に増殖するが、マウスでは、生命維持がないとき、これは実現可能でない可能性がある。
本明細書で引用される全ての特許、公開出願および参考文献の教示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、特に、その実例実施形態を参照しながら示され、記載されているが、形態および詳細における様々な変更が、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲を逸脱することなく、その中で行なわれ得ることが当業者に理解されるであろう。
Claims (30)
- 肝臓の治療における使用のための、骨形成タンパク質(BMP)シグナル伝達経路のアンタゴニスト。
- 肝損傷または肝疾患の治療における使用のための、請求項1に記載のアンタゴニスト。
- 前記治療が予防的治療である、請求項1または請求項2の中に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが肝細胞の増殖を増大させる、請求項1〜3のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが、構成的に活性のあるBMPシグナル伝達経路を阻害するかまたは下方調節する、請求項1〜4のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記BMPシグナル経路が、BMP2またはBMP4介在性シグナル伝達経路である、請求項5に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記BMPシグナル伝達経路の前記アンタゴニストがI型BMP受容体シグナル伝達を阻害する、請求項5に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記BMPシグナル伝達経路の前記アンタゴニストが、前記I型受容体に結合することによってI型BMP受容体シグナル伝達を阻害する、請求項7に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記I型BMP受容体が、ALK2、ALK3またはALK6である、請求項7または8に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記I型BMP受容体がALK2またはALK3である、請求項9に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記BMPシグナル伝達経路の前記アンタゴニストが、smad−1、5または8のリン酸化を阻害する、請求項5に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記BMPシグナル伝達経路の前記アンタゴニストが、BMP2もしくは4のBMP受容体への結合またはII型BMP受容体とI型BMP受容体との相互作用を阻害する、請求項5に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記アンタゴニストが化学薬品である、請求項1〜12のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記化学薬品が、ドルソモルフィン、LDN193189、または前述のもののいずれかの類似体である、請求項13に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 肝再生における使用のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載されたアンタゴニスト。
- 肝臓の部分的喪失または損傷の治療における使用のための、請求項1〜14のいずれか一項に記載されたアンタゴニスト。
- 前記喪失または損傷が外科手術または移植術によって引き起こされる、請求項16に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記外科手術が肝切除である、請求項17に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記喪失または損傷が肝不全である、請求項17に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記治療が前記損傷に先行する、請求項16〜19のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記使用が哺乳動物の治療に関するものである、請求項1〜20のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記使用がヒトの治療に関するものである、請求項1〜21のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記使用が肝移植ドナーの治療に関するものである、請求項1〜22のいずれか一項に記載された前記使用のための、アンタゴニスト。
- 前記使用が肝移植レシピエントの治療に関するものである、請求項1〜22のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記肝損傷が肝毒性のある化学薬品によって引き起こされる、請求項2、またはそれに従属する任意の請求項のいずれか一項に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- 前記肝毒性のある化学薬品がアセトアミノフェンである、請求項25に記載された前記使用のためのアンタゴニスト。
- A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、他の肝炎ウイルス感染症、自己免疫性肝炎、肝硬変、胆汁性肝硬変、急性肝不全、慢性肝不全、急性肝不全、急性肝感染症、癌、ウィルソン病、ジルベール症候群、ライ症候群、アラジール症候群、ヘモクロマトーシス、フェニルケトン尿症および他のアミノ酸症、血友病および他の凝固因子欠乏症、家族性高コレステロール血症および他の脂質代謝障害、尿素サイクル異常症、果糖血症、糖原病、チロシン血症、ガラクトース血症、タンパク質および糖質の代謝欠乏症、有機酸尿、ミトコンドリア病、ペルオキシソームおよびリソソーム異常、タンパク質合成異常、肝細胞トランスポーター欠損、グリコシル化欠損、急性化学毒性、胆管炎、α1−アンチトリプシン欠乏症、胆道閉鎖症、肝嚢胞症、脂肪肝、ガラクトース血症、胆石、ポルフィリン症、原発性硬化性胆管炎、サルコイドーシス、チロシン血症、ならびに1型糖原病からなる群から選択される肝疾患によって引き起こされる肝損傷の治療における使用のための、請求項1〜26のいずれか一項に記載されたアンタゴニスト。
- ヒトまたは動物の体外で行なわれる方法であって、肝臓に、肝臓の一部に、または肝細胞にアンタゴニストを投与することを含み、前記アンタゴニストが、請求項1〜27のいずれか一項に記載された前記アンタゴニストである、方法。
- 肝臓、肝臓の一部、または肝細胞を含む組成物であって、アンタゴニストをさらに含み、前記アンタゴニストが、請求項1〜28のいずれか一項に記載された前記アンタゴニストであり、かつ前記肝臓、肝臓の一部、または肝細胞が、前記ヒトまたは動物の体内にない、組成物。
- 移植における使用のための、請求項29に記載の組成物。
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