JP2012520311A - Rafキナーゼの阻害のためのピロロ[2,3−b]ピリジン誘導体 - Google Patents
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Abstract
N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド、N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド、およびその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびその使用を記載する。一定の態様および実施形態では、記載した化合物またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体およびその形態は、少なくとも1つのRafタンパク質キナーゼに対して活性がある。さらに、Rafタンパク質キナーゼの活性に関連する疾患および状態(疼痛および多発性嚢胞腎など)を包含する疾患および状態を治療するためのその使用の方法も記載する。
Description
新規の化合物およびその使用を開示する。一定の実施形態では、開示する化合物は、キナーゼ阻害剤である。
本明細書中で開示する一定の態様および実施形態では、化合物ならびに多様なその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびその使用が提供される。さらに、本発明により企図するのは、1つまたは複数のRafキナーゼ(1つまたは複数のRafキナーゼの任意の変異体を包含する)の活性の調節に関連する疾患および状態の治療における化合物の使用の方法である。したがって、一定の実施形態では、Rafタンパク質キナーゼの調節を含む治療方法における化合物およびその塩形態の使用が提供される。一実施形態では、化合物または薬学的に許容されるその塩は、Rafタンパク質キナーゼの調節を含む治療方法のために使用するが、そのような治療方法としては、さまざまな適応症(疼痛および多発性嚢胞腎などであるが、これらに限定されない)の治療が挙げられる。
第1の態様では、N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0001)、N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0002)から成る群から選択される化合物、その任意の塩、その任意の製剤、その任意のコンジュゲート、その任意の誘導体およびその任意の形態が提供される。一定の実施形態では、P−0001、P−0002またはそれらの塩、それらの製剤、それらのコンジュゲート、それらの誘導体またはそれらの形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
第2の態様では、化合物N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0001)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0001またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
第3の態様では、化合物N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0002)またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態が提供される。一定の実施形態では、P−0002またはその塩、その製剤、そのコンジュゲート、その誘導体またはその形態は、A−Raf、B−Rafおよびc−Raf−1(これらのキナーゼの任意の変異体を包含する)など、1つまたは複数のRafタンパク質キナーゼの阻害剤である。
化合物P−0001およびP−0002に言及する場合、そうでないことが明確に示されない限り、当該化合物の仕様は、当該化合物の塩(薬学的に許容される塩など)、当該化合物の製剤(薬学的に許容される製剤など)、そのコンジュゲート、その誘導体、その形態およびそのプロドラッグを包含する。
第4の態様では、本発明は、動物対象においてRafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態を治療する方法であって、有効量のP−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を該対象に投与することを含む方法を提供する。一実施形態では、この方法は、有効量のP−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を、該疾患または状態のための1つまたは複数の他の療法と組み合わせて該対象に投与することを含む。一実施形態では、この疾患は疼痛である。一実施形態では、この疾患は多発性嚢胞腎である。
第5の態様では、治療上有効量のP−0001またはP−0002のいずれかまたは両方と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、添加剤および/または賦形剤とを含む組成物が提供される。一定の実施形態では、この組成物は、P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を、同じ疾患適応症(disease indication)にとって治療上有効な1つまたは複数の化合物と共に含むことができる。関連する実施形態では、この組成物は、P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を、同じ疾患適応症にとって治療上有効で、該疾患適応症に対して相乗効果を有する1つまたは複数の化合物と共に含む。一実施形態では、この疾患は疼痛である。一実施形態では、この疾患は多発性嚢胞腎である。
第6の態様では、本発明は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1、またはその任意の変異体が介在する疾患または状態を、P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を含む有効量の組成物を対象に投与することにより治療する方法を提供する。多様な実施形態では、本発明は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1、またはその任意の変異体が介在する疾患または状態を、P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を含む有効量の組成物を、該疾患を治療するための1つまたは複数の他の適当な療法と組み合わせて対象に投与することにより治療する方法を提供する。一実施形態では、この疾患は疼痛である。一実施形態では、この疾患は多発性嚢胞腎である。
第7の態様では、本発明は、P−0001もしくはP−0002のいずれかもしくは両方、または本明細書に記載のとおりのそれらの組成物を備えるキットを提供する。いくつかの実施形態では、この化合物または組成物を、たとえばバイアル、瓶、フラスコ内に包装し、これを、たとえば箱、封筒または袋の中にさらに包装してもよく;この化合物または組成物は、米国食品医薬品局、または哺乳動物(たとえばヒト)への投与についての同様の規制当局により認可され;この化合物または組成物は、タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態のための、哺乳動物(たとえばヒト)への投与について認可され;本発明のキットは、使用のための取扱説明書、および/または、該化合物もしくは組成物が、タンパク質キナーゼ介在性の疾患もしくは状態のための、哺乳動物(たとえばヒト)への投与に適しているかもしくは認可されているという他の表示を備えており;ならびに、この化合物または組成物は、単位用量または単回用量の形態(たとえば、単回用量の丸剤、カプセル剤など)で包装されている。
P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を用いる疾患または状態の治療を含む態様および実施形態では、本発明は、動物対象(たとえば、ヒト、他の霊長動物、競技動物、ウシなど商業的に重要な動物、ウマなどの家畜、またはイヌおよびネコなどのペットといった哺乳動物)におけるA−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患または状態、たとえば、異常なA−Raf、B−Rafおよび/またはc−Raf−1活性(たとえばキナーゼ活性)を特徴とする疾患または状態を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、本発明の方法は、A−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に、有効量のP−0001またはP−0002のいずれかまたは両方を投与することが含まれていてもよい。一実施形態では、A−Raf介在性、B−Raf介在性および/またはc−Raf−1介在性の疾患は、以下から成る群から選択される:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば、消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、乳房、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、神経内分泌腫瘍(髄様甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕化、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない))、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチル(palmatyl)トランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。一実施形態では、この疾患または状態は、疼痛または多発性嚢胞腎である。
第8の態様では、P−0001またはP−0002のいずれかまたは両方は、以下から成る群から選択されるA−Raf介在性、B−Raf介在性またはc−Raf−1介在性の疾患または状態の治療用の医薬の調製において使用できる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、乳房、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、消化管間質腫瘍、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、神経内分泌腫瘍(髄質甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕化、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群、(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。一実施形態では、この疾患または状態は、疼痛または多発性嚢胞腎である。
本明細書中で記載のとおりのP−0001およびP−0002のいずれかまたは両方は、Rafキナーゼに及ぼす望ましい阻害活性(他のキナーゼに対し選択性を有する)を示し、さらに、より高い溶解性、より低いCyp阻害など1つまたは複数の望ましい特性を示す。
追加的な態様および実施形態は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかとなろう。
本明細書中で使用する場合、特に明示されない限り、以下の定義が適用される:
本明細書中に記載するP−0001またはP−0002の内にある全ての原子は、そうでないことが明確に示されない限り、その任意の同位元素を包含することを意図している。任意の所与の原子については、同位元素が、自然に発生するとおりの比率で本質的に存在してもよく、または、1つもしくは複数の特定の原子が、当業者に公知の合成法を用いて1つもしくは複数の同位元素に関し強化されていてもよいことは理解される。したがって、水素はたとえば1H、2H、3Hを包含し、炭素はたとえば11C、12C、13C、14Cを包含し、酸素はたとえば16O、17O、18Oを包含し、窒素はたとえば13N、14N、15Nを包含し、イオウはたとえば32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを包含し、フルオロはたとえば17F、18F、19Fを包含し、クロロはたとえば35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを包含する、など。
本明細書中で使用する場合、用語「〜を治療する」、「治療すること」、「療法」、「複数の療法」および同様の用語は、物質、たとえば、本明細書に記載のとおりの任意の1つもしくは複数の化合物(複数可)を、疾患もしくは状態(すなわち適応症)の1つもしくは複数の症状を予防、緩和もしくは改善する、および/または、治療を受けている対象の生存期間を延長するのに有効な量で投与することを指す。
本明細書中で使用する場合、用語「Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」は、A−Rafタンパク質キナーゼ、B−Rafタンパク質キナーゼもしくはc−Raf−1タンパク質キナーゼのいずれか、またはその任意の変異体を包含するRafタンパク質キナーゼ(別名RafキナーゼもしくはRaf)の生物学的機能が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。Raf介在性の疾患または状態としては、Raf調節が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つまたは複数の化合物(複数可)を包含するRaf阻害剤(複数可)を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「A−Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、A−Rafタンパク質キナーゼ(別名A−RafキナーゼもしくはA−Raf)(その任意の変異体を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、A−Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。A−Raf介在性の疾患もしくは状態としては、A−Raf阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めA−Rafを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「B−Rafタンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Rafタンパク質キナーゼ(別名B−RafキナーゼもしくはB−Raf)(その任意の変異体(B−Raf V600E変異体またはB−Raf B600E/T529I変異体など)を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Rafの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Rafを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「B−Raf V600E変異体タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Raf V600E変異体タンパク質キナーゼ(別名B−Raf V600EキナーゼもしくはB−Raf V600E)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Raf V600Eの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf V600E介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf V600E阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Raf V600Eを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「B−Raf V600E/T529I変異体タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、B−Raf V600E/T529I変異体タンパク質キナーゼ(別名B−Raf V600E/T529IキナーゼもしくはB−Raf V600E/T529I)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、B−Raf V600E/T529Iの調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。B−Raf V600E/T529I介在性の疾患もしくは状態としては、B−Raf V600E/T529I阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めB−Raf V600E/T529Iを阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「c−Raf−1タンパク質キナーゼ介在性の疾患または状態」などは、c−Raf−1タンパク質キナーゼ(別名c−Raf−1キナーゼもしくはc−Raf−1)(その任意の変異体を包含する)の生物学的機能が、疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状に影響する、および/または、c−Raf−1の調節が疾患もしくは状態の発症、経過および/または症状を変化させる疾患もしくは状態を指す。c−Raf−1介在性の疾患もしくは状態としては、c−Raf−1阻害が治療利益をもたらす、たとえば、本明細書に記載の1つもしくは複数の化合物(複数可)を含めc−Raf−1を阻害する化合物を用いた治療が、該疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象に治療利益をもたらす疾患もしくは状態が挙げられる。
本明細書中で使用する場合、用語「Raf阻害剤」は、A−Raf、B−Raf、c−Raf−1またはそれらの任意の変異体のうち少なくとも1つを阻害する化合物、すなわち、IC50が500nM未満、100nM未満、50nM未満、20nM未満、10nM未満、5nM未満または1nM未満(一般的に許容されるRafキナーゼ活性アッセイにおいて定量した場合)である化合物を指す。そのような化合物は、好ましくは(ただし必須ではない)、他のタンパク質キナーゼに関して選択的である、すなわち、別のタンパク質キナーゼと比較したとき、他方のキナーゼのIC50をRafキナーゼのIC50で割った値が10超、さらには20超、さらには30超、さらには40超、さらには50超、さらには60超、さらには70超、さらには80超、さらには90超、さらには100超である。好ましくは、この化合物は、他のタンパク質キナーゼ(CSK、インスリン受容体キナーゼ、AMPK、PDGFRまたはVEGFRなどであるが、これらに限定されない)に対して選択的である。
本明細書中で使用する場合、用語「固形形態」は、治療目的での、意図する動物対象への投与に適した薬学的に活性のある化合物の固形調製物(すなわち、気体でも液体でもない調製物)を指す。固形形態としては、当該化合物の塩、共結晶または非晶質錯体などの任意の錯体、ならびに任意の多形が挙げられる。固形形態は、実質的に結晶性、半結晶性または実質的に非晶質であってもよい。固形形態は、直接投与してもよく、または、医薬特性が向上している適当な組成物の調製において使用してもよい。たとえば、固形形態は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体または添加剤を含む製剤において使用してもよい。
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に結晶性の」物質は、約90%超の結晶化度を有する物質を包含し、「結晶性の」物質は、約98%超の結晶化度を有する物質を包含する。
本明細書中で使用する場合、用語「実質的に非晶質の」物質は、約10%以下の結晶化度を有する物質を包含し、「非晶質の」物質は、約2%以下の結晶化度を有する物質を包含する。
本明細書中で使用する場合、用語「半結晶性の」物質は、10%超の結晶化度、ただし90%以下の結晶化度である物質を包含し、好ましくは「半結晶性の」物質は、20%超の結晶化度、ただし80%以下の結晶化度である物質を包含する。本発明の一態様では、化合物の固形形態の混合物、たとえば、非晶質の固形形態と結晶性の固形形態との混合物を調製して、たとえば「半結晶性の」固形形態を得てもよい。そのような「半結晶性の」固形形態は、当技術分野で公知の方法により、たとえば、非晶質の固形形態を結晶性の固形形態と所望の比率で混合することにより調製してもよい。場合により、酸または塩基と混合した化合物が非晶質錯体を形成し;該化合物の化学量論を超える量の化合物成分と、該非晶質錯体中の酸または塩基とを用いて半結晶性の固形物を調製し、それにより、結果として、その化学量論に基づく量の非晶質錯体と、結晶性の形態の過剰な化合物とを得ることができる。この錯体の調製において使用される過剰な化合物の量を調節して、結果として得られる固形形態の混合物中での非晶質錯体対結晶性化合物の所望の比率を得ることができる。たとえば、酸または塩基の非晶質錯体と化合物とが1:1の化学量論を有する場合、化合物対酸または塩基のモル比が2:1の前記錯体を調製する結果、50%の非晶質錯体と50%の結晶性化合物との固形形態が得られることになる。そのような固形形態の混合物は、たとえば、バイオ医薬品特性の向上している非晶質成分と、結晶性成分とをもたらすことにより、薬物製品として有益と考えられる。非晶質成分は、より容易に生体利用可能であろうと考えられるが、結晶性成分は、生体利用されるのが遅いと考えられる。そのような混合物は、活性化合物に対する急速な曝露と長期にわたる曝露とを両方とももたらすことができる。
本明細書中で使用する場合、用語「錯体」は、固形形態中で新しい化学種を形成または生成する、薬学的に活性のある化合物と付加的な分子種との組合せを指す。場合により、この錯体は塩であってもよく、すなわちその場合、付加的な分子種が化合物の酸性/塩基性の基に酸/塩基性の対イオンを供給する結果、酸:塩基の相互作用が生じ、それにより、典型的な塩が形成される。そのような塩形態は、典型的には実質的に結晶性であるが、部分的に結晶性、実質的に非晶質、または非晶質の形態であってもよい。場合により、付加的な分子種を薬学的に活性のある化合物と組み合わせると、塩ではない共結晶が形成される、すなわち、化合物と分子種とは、典型的な酸:塩基相互作用によっては相互作用しなくても、実質的に結晶性の構造を形成する。共結晶は、化合物の塩と付加的な分子種とから形成することもできる。場合により、この錯体は、実質的に非晶質錯体であり、典型的な塩結晶を形成せずに実質的に非晶質の固形物、すなわち、X線粉末回折パターンが鋭いピークを呈さない(たとえば非晶質ハローを呈する)固形物を形成する塩様の酸:塩基相互作用を有してもよい。
本明細書中で使用する場合、用語「化学量論」は、2つ以上の成分の組合せのモル比、たとえば、非晶質錯体を形成する、酸または塩基対化合物のモル比を指す。たとえば、結果として非晶質の固形形態をもたらす酸または塩基と化合物との1:1混合物(すなわち、化合物1モル当たり1モルの酸または塩基)は、1:1の化学量論を有する。
本明細書中で使用する場合、用語「組成物」は、少なくとも1つの薬学的に活性のある化合物(その任意の固形形態を包含する)を含有する、治療目的での、意図した対象への投与に適した医薬調製物を指す。この組成物は、当該化合物の改良型の製剤を得るために、適当な担体または添加剤など少なくとも1つの薬学的に許容される成分を含んでいてもよい。
本明細書中で使用する場合、用語「対象」は、本明細書に記載のとおりの化合物を用いて治療される生体を指し、そのような生体としては、ヒト、他の霊長動物、競技動物、ウシなど商業的に重要な動物、ウマなどの家畜、またはイヌおよびネコなどのペットといった任意の哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書中で使用する場合、用語「バイオ医薬品特性」は、本発明の化合物または錯体の薬物動態学的な作用を指し、そのような作用としては、対象への投与時の化合物の溶解、吸収および分布が挙げられる。したがって、本発明の化合物の一定の固形形態(本発明の化合物の非晶質錯体など)は、本活性化合物の溶解性および吸収性の向上をもたらすことを意図しており、そのような溶解性および吸収性の向上は、典型的には、Cmax(すなわち、薬物の投与後の血漿中の最大到達濃度)の向上およびAUC(すなわち、薬物投与後の薬物血漿濃度対時間の曲線下面積)の向上に反映される。
用語「薬学的に許容される」は、その指示物質が、適度に常識のある医師に、治療すべき疾患または状態およびそれぞれの投与経路を考慮して患者に対し当該物質の投与を回避させる可能性がある特性をもたないことを指す。たとえば、そのような物質は本質的に滅菌済であること(たとえば注射剤用に)が通常求められる。
本発明に関する場合、用語「治療上有効な」または「有効量」は、物質もしくは物質の量が、疾患もしくは医学的状態の1つもしくは複数の症状を予防、緩和もしくは改善するのに、および/または、治療を受けている対象の生存期間を延長するのに有効であることを指す。
本発明に関する場合、用語「相乗的に有効な」または「相乗効果」は、治療上有効な2つ以上の化合物が、組み合わせて使用されると、単独で使用される各化合物の効果に基づいて予想されるであろう相加効果より大きい治療効果の向上が得られることを指す。
本明細書中で使用する場合、用語「調節すること」または「〜を調節する」は、生物活性、特に、タンパク質キナーゼなど特定の生体分子に伴う生物活性を変化させる(すなわち、当該活性を増加または減少させる)効果を指す。たとえば、特定の生体分子の阻害剤は、当該生体分子(たとえば酵素)の活性を減少させることにより、当該生体分子(酵素など)の活性を調節する。そのような活性は、典型的には、たとえば酵素に関する阻害剤については、化合物の阻害濃度(IC50)で示される。
「疼痛」または「疼痛状態」は、限定するものではないが以下を包含する急性および/または慢性の疼痛であってもよい:くも膜炎;関節炎(たとえば変形性関節炎、関節リウマチ、強直性脊椎炎、痛風);背痛(たとえば坐骨神経痛、椎間板ヘルニア、脊椎すべり症、神経根障害);熱傷痛;がん疼痛;月経困難症;頭痛(たとえば偏頭痛、群発頭痛、緊張型頭痛);頭部および顔面の疼痛(たとえば頭部神経痛、三叉神経痛);痛覚過敏;痛感過敏;炎症性疼痛(たとえば、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、膀胱炎に伴う疼痛、細菌性、真菌性またはウイルス性の感染症に由来する疼痛);ケロイドまたは瘢痕組織形成;分娩または出産の疼痛;筋痛(たとえば、多発性筋炎、皮膚筋炎、封入体筋炎、反復性ストレス傷害の結果としてのもの(たとえば書痙、手根管症候群、腱炎、腱鞘炎));筋筋膜痛症候群(たとえば線維筋痛症);神経因性疼痛(たとえば糖尿病性ニューロパチー、灼熱痛、絞扼性ニューロパチー、腕神経叢裂離、後頭部神経痛、痛風、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、幻肢もしくは切断術後の疼痛、ヘルペス後神経痛、中枢性疼痛症候群、または外傷(たとえば神経傷害)の結果生じる神経痛、疾患(たとえば糖尿病、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、重症筋無力症、神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症など)またはがん治療);皮膚障害(たとえば帯状疱疹、単純ヘルペス、皮膚腫瘍、嚢胞、神経線維腫症)に伴う疼痛;スポーツ傷害(たとえば切創、捻挫、筋違い、打撲傷、脱臼、骨折、脊髄、頭部);脊柱管狭窄症;術後疼痛;接触性アロディニア;顎関節症;血管性の疾患または傷害(たとえば血管炎、冠動脈疾患、再灌流傷害(たとえば、虚血、脳卒中または心筋梗塞に次いで生じるもの));他の特定の臓器または組織の疼痛(たとえば眼痛、角膜痛、骨痛、心臓疼痛、内臓痛(たとえば腎臓、胆嚢、消化器の疼痛)、関節痛、歯痛、骨盤過敏症、骨盤痛、腎臓疝痛、尿失禁);疼痛を伴う他の疾患(たとえば鎌状赤血球性貧血、AIDS、帯状ヘルペス、乾癬、子宮内膜症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、珪肺症、肺サルコイドーシス、食道炎、胸焼け、胃食道逆流症、胃潰瘍および十二指腸潰瘍、機能性消化不良、骨吸収疾患、骨粗鬆症、脳性マラリア、細菌性髄膜炎);あるいは、移植片対宿主拒絶反応または同種移植片拒絶反応による疼痛。
キナーゼ標的および本発明の適応症
タンパク質キナーゼは、多様な生物学的経路における生化学的シグナルの伝播において鍵となる役割を果たす。500を超えるキナーゼが記載されており、特定のキナーゼは、広範な疾患または状態(すなわち適応症)に関与しており、このような疾患または状態としては、たとえば限定するものではないが、がん、心血管疾患、炎症性疾患、神経疾患および他の疾患が挙げられる。したがって、キナーゼは、小分子治療剤の介入にとって重要な制御点を代表する。本発明により企図される特定の標的タンパク質キナーゼの記載は、以下のとおりである:
タンパク質キナーゼは、多様な生物学的経路における生化学的シグナルの伝播において鍵となる役割を果たす。500を超えるキナーゼが記載されており、特定のキナーゼは、広範な疾患または状態(すなわち適応症)に関与しており、このような疾患または状態としては、たとえば限定するものではないが、がん、心血管疾患、炎症性疾患、神経疾患および他の疾患が挙げられる。したがって、キナーゼは、小分子治療剤の介入にとって重要な制御点を代表する。本発明により企図される特定の標的タンパク質キナーゼの記載は、以下のとおりである:
A−Raf:標的キナーゼA−Raf(すなわち、v−rafマウス肉腫3611ウイルスがん遺伝子ホモログ1)は、染色体Xp11.4−p11.2によりコードされる67.6kDaのセリン/トレオニンキナーゼである(記号:ARAF)。成熟タンパク質は、RBD(すなわち、Ras結合ドメイン)およびホルボールエステル/DAG型の亜鉛フィンガードメインを含み、細胞膜から核への分裂促進シグナルの伝達に関与する。A−Raf阻害剤は、以下の治療において有用であると考えられる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病など);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、肉腫、癌腫(たとえば直腸結腸、肺、胸部、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛など);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(血管再狭窄、加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。
B−Raf:標的キナーゼB−Raf(すなわち、v−rafマウス肉腫ウイルス性がん遺伝子ホモログB1)は、染色体7q34によりコードされる84.4kDaのセリン/トレオニンキナーゼである(記号:BRAF)。成熟タンパク質は、RBD(すなわち、Ras結合ドメイン)、C1(すなわち、タンパク質キナーゼC保存領域1)およびSTK(すなわち、セリン/トレオニンキナーゼ)ドメインを含む。
標的キナーゼB−Rafは、細胞膜から核への分裂促進シグナルの伝達に関与しており、海馬ニューロンのシナプス後応答において役割を果たすと考えられる。したがって、Rafファミリーの遺伝子は、Rasにより調節されるキナーゼをコードし、成長シグナルに対する細胞応答に介在する。事実、B−Rafキナーゼは、RAS−>Raf−>MEK−>ERK/MAPキナーゼシグナル伝達経路の鍵となる構成要素であり、この経路は、細胞の成長、分裂および増殖の調節において基礎的な役割を果たし、恒常的に活性化されると腫瘍形成の原因となる。Rafキナーゼのいくつかのアイソフォームの中で、B型またはB−Rafは、下流でのMAPキナーゼシグナル伝達の最も強いアクチベーターである。
BRAF遺伝子は、さまざまなヒト腫瘍、特に、悪性メラノーマおよび結腸癌において頻繁に変異する。報告されている最も一般的な変異は、ヌクレオチド1796でのミスセンスチミン(T)からアデニン(A)への塩基転換(T1796A。B−Rafタンパク質におけるアミノ酸変化は、Val<600>からGlu<600>である)であり、悪性メラノーマ腫瘍の80%において観察された。機能分析から、この塩基転換は、B−Rafを優性の形質転換タンパク質に転換させることによる、RAS活性化とは無関係のB−Rafキナーゼ活性の恒常的活性化の原因となる唯一検出された変異であることがわかっている。前例に基づけば、ヒト腫瘍は、触媒ドメインにおける特定のアミノ酸を「ゲートキーパー」として突然変異させることにより、キナーゼ阻害剤への抵抗が生じる。(Balakら、Clin Cancer Res.、2006、12、6494〜501頁)。したがって、BRAF中のThr−529からIleへの突然変異は、BRAF阻害剤に対する抵抗の機序であると予想され、この突然変異は、コドン529においてACCからATCへ移行が生じたものであると想像できる。
Niihoriらは、心臓顔面皮膚(CFC)症候群に罹患している43個体において、3個体においては2つのヘテロ接合のKRAS変異体を、16個体においては8つのBRAF変異体を同定し、このことから、RAS−RAF−ERK経路の調節異常は、3つの関連障害にとって共通の分子基盤であることが示唆されたと報告している(Niihoriら、Nat Genet.、2006、38(3)、294〜6頁)。
c−Raf−1:標的キナーゼc−Raf−1(すなわち、v−rafマウス肉腫ウイルス性のがん遺伝子ホモログ1)は、染色体3p25によりコードされる73.0kDaのSTKである(記号:RAF1)。c−Raf−1は、アポトーシス細胞死の調節因子であるBCL2(すなわちがん遺伝子B細胞白血病2)によりミトコンドリアに標的化されうる。活性のあるc−Raf−1は、アポトーシスに対するBCL2介在性の抵抗を高め、c−Raf−1は、BAD(すなわち、BCL2結合タンパク質)をリン酸化する。c−Raf−1は、癌腫(直腸結腸癌、卵巣癌、肺癌および腎細胞癌など)に関与する。c−Raf−1は、腫瘍血管新生の重要なメディエーターとしても関与する(Hood,J.D.ら、2002、Science、296、2404頁)。c−Raf−1阻害剤は、急性骨髄性白血病および骨髄異形成症候群の治療に有用とも考えられる(Crump、Curr Pharm Des、2002、8(25)、2243〜8頁)。Raf−1アクチベーターは、髄質甲状腺がん、カルチノイド、小細胞肺がんおよび褐色細胞腫などの神経内分泌腫瘍の治療剤として有用であると考えられる(Kunnimalaiyaanら、Anticancer Drugs、2006、17(2)、139〜42頁)。
A−Raf、B−Rafおよび/またはc−Raf−1の阻害剤は、以下から成る群から選択されるA−Raf介在性、B−Raf介在性またはc−Raf−1介在性の疾患または状態の治療において有用であると考えられる:神経疾患(多発梗塞性認知症、頭部傷害、脊髄傷害、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病、発作およびてんかんなどであるが、これらに限定されない);腫瘍性疾患(メラノーマ、神経膠腫、多形神経膠芽腫、毛様細胞性星状細胞腫、肉腫、癌腫(たとえば消化器、肝臓、胆道(たとえば胆管、胆管細胞癌)、直腸結腸、肺、胆嚢、胸部、膵臓、甲状腺、腎臓、卵巣、副腎皮質、前立腺のもの)、リンパ腫(たとえば組織球性リンパ腫)、神経線維腫症、急性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、白血病、腫瘍血管新生、消化管間質腫瘍、神経内分泌腫瘍(髄質甲状腺がんなど)、カルチノイド、小細胞肺がん、カポジ肉腫および褐色細胞腫などであるが、これらに限定されない);神経障害または炎症由来の疼痛(急性疼痛、慢性疼痛、がん関連の疼痛および偏頭痛などであるが、これらに限定されない);心血管疾患(心不全、虚血性脳卒中、心肥大、血栓症(たとえば血栓性微小血管症候群)、アテローム性硬化症および再灌流傷害などであるが、これらに限定されない);炎症および/または増殖(乾癬、湿疹、関節炎ならびに自己免疫性の疾患および状態、変形性関節炎、子宮内膜症、瘢痕化、血管再狭窄、線維性障害、関節リウマチ、炎症性腸疾患(IBD)などであるが、これらに限定されない);免疫不全疾患(臓器移植拒絶反応、移植片対宿主疾患、およびHIVに伴うカポジ肉腫などであるが、これらに限定されない);腎嚢胞性または前立腺の疾患(糖尿病性腎症、多発性嚢胞腎、腎硬化症、糸球体腎炎、前立腺肥大、多発性嚢胞肝、結節性硬化症、フォン・ヒッペル・リンダウ病、髄質嚢胞性腎疾患、ネフロン癆および嚢胞性線維症などであるが、これらに限定されない);代謝障害(肥満などであるが、これに限定されない);感染症(ヘリコバクターピロリ、肝炎ウイルスおよびインフルエンザウイルス、発熱、HIVおよび敗血症などであるが、これらに限定されない);肺疾患(慢性閉塞性肺疾患(COPD)および急性呼吸促迫症候群(ARDS)などであるが、これらに限定されない);遺伝性の発達疾患(ヌーナン症候群、コステロ症候群、(顔面皮膚骨格症候群)、LEOPARD症候群、心臓顔面皮膚症候群(CFC)、ならびに、心血管、骨格、腸、皮膚、毛髪および内分泌性の疾患の原因となる神経堤症候群異常などであるが、これらに限定されない);ならびに、筋肉の再生または変性に伴う疾患(加齢性筋肉減少症、筋ジストロフィー(デュシェンヌ型、ベッカー型、エメリ・ドレフュス型、肢帯型、顔面肩甲上腕型、筋緊張型、眼咽頭型、末梢性および先天性の筋ジストロフィーなどであるが、これらに限定されない)、運動ニューロン疾患(筋萎縮性側索硬化症、小児性の進行性脊髄性筋萎縮症、中間体脊髄性筋萎縮症、若年性脊髄性筋萎縮症、球脊髄性筋萎縮症および成人性脊髄性筋萎縮症などであるが、これらに限定されない)、炎症性ミオパチー(皮膚筋炎、多発性筋炎および封入体筋炎などであるが、これらに限定されない)、神経筋接合部疾患(重症筋無力症、ランバート・イートン症候群および先天性筋無力症候群などであるが、これらに限定されない)、内分泌異常によるミオパチー(甲状腺機能亢進性ミオパチーおよび甲状腺機能低下性ミオパチーなどであるが、これらに限定されない)、末梢神経疾患(シャルコー・マリー・トゥース病、デジェリン・ソッタス病およびフリードライヒ運動失調症などであるが、これらに限定されない)、他のミオパチー(先天性ミオトニア、先天性パラミオトニア、セントラルコア病、ネマリンミオパチー、筋細管ミオパチーおよび周期性麻痺などであるが、これらに限定されない)、ならびに代謝性の筋疾患(ホスホリラーゼ欠損症、酸性マルターゼ欠損症、ホスホフルクトキナーゼ欠損症、脱分枝酵素欠損症、ミトコンドリアミオパチー、カルニチン欠損症、カルニチンパルマチルトランスフェラーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸キナーゼ欠損症、ホスホグリセリン酸ムターゼ欠損症、乳酸デヒドロゲナーゼ欠損症およびミオアデニル酸デアミナーゼ欠損症などであるが、これらに限定されない)などであるが、これらに限定されない)。
化合物の代替的な形態または誘導体
本明細書中で企図される化合物P−0001またはP−0002を、特定の化合物を参照して説明する。加えて、P−0001またはP−0002は、いくつかの異なる形態または誘導体で存在してもよく、全て本発明の範囲内である。代替的な形態または誘導体としては、たとえば、(a)プロドラッグおよび活性代謝物(b)互変異性体(c)薬学的に許容される塩、ならびに(d)固形形態(異なる結晶形態、多形または非晶質の固形物など)(それらの水和物および溶媒和物を包含する)、ならびに他の形態が挙げられる。
本明細書中で企図される化合物P−0001またはP−0002を、特定の化合物を参照して説明する。加えて、P−0001またはP−0002は、いくつかの異なる形態または誘導体で存在してもよく、全て本発明の範囲内である。代替的な形態または誘導体としては、たとえば、(a)プロドラッグおよび活性代謝物(b)互変異性体(c)薬学的に許容される塩、ならびに(d)固形形態(異なる結晶形態、多形または非晶質の固形物など)(それらの水和物および溶媒和物を包含する)、ならびに他の形態が挙げられる。
(a)プロドラッグおよび代謝物
本明細書に記載の化合物P−0001またはP−0002に加え、本発明は、プロドラッグ(一般的に薬学的に許容されるプロドラッグ)、活性代謝誘導体(活性代謝物)、およびそれらの薬学的に許容される塩も包含する。
本明細書に記載の化合物P−0001またはP−0002に加え、本発明は、プロドラッグ(一般的に薬学的に許容されるプロドラッグ)、活性代謝誘導体(活性代謝物)、およびそれらの薬学的に許容される塩も包含する。
プロドラッグは、生理的条件下で代謝されると、または、加溶媒分解により転換されると所望の活性化合物をもたらす化合物または薬学的に許容されるその塩である。プロドラッグとしては、限定するものではないが、活性化合物のエステル、アミド、カルバメート、炭酸塩、ウレイド、溶媒和物または水和物が挙げられる。典型的には、プロドラッグは、不活性であるかまたは活性化合物より活性が低いが、取扱い、投与および/または代謝に関する1つまたは複数の有利な特性をもたらすことができる。プロドラッグしては、化合物の−NH基が、ピロロ[2,3−b]ピリジン環の1位、または、P−0001もしくはP−0002のいずれかのスルホンアミド基の窒素などのアシル化を受けている変異体を挙げることができ、この変異体は、アシル基の切断により活性薬物の遊離−NH基をもたらす。プロドラッグによっては、酵素的に活性化されて活性化合物を生成するものもあり、または、化合物がさらなる化学反応を受けて活性化合物を生成することもある。プロドラッグは、プロドラッグ形態から活性形態へ単一のステップで進むこともあり、または、1つもしくは複数の中間形態(自身が活性をもつ場合もあり、または不活性な場合もある)を有することもある。
The Practice of Medicinal Chemistry、第31〜32章(Wermuth編、Academic Press、San Diego、CA、2001)に記載されているように、プロドラッグは、概念的には2つの非排他的なカテゴリー、すなわち、生物学的前駆体プロドラッグと担体プロドラッグとに分けることができる。一般的に、生物学的前駆体プロドラッグは、不活性であるか、または対応する活性薬物化合物と比較して低い活性を有し、1つまたは複数の保護基を含有し、代謝または加溶媒分解により活性形態に転換する化合物である。活性薬物形態および任意の放出代謝物は両方とも、許容可能に低い毒性を有するべきである。典型的には、活性薬物化合物の形成には、以下の型のうち1つである代謝過程または反応が関与している:
酸化反応:酸化反応は、限定するものではないが、アルコール、カルボニルおよび酸の官能基の酸化、脂肪族炭素のヒドロキシル化、脂環式炭素原子のヒドロキシル化、芳香族炭素原子の酸化、炭素−炭素二重結合の酸化、窒素含有官能基の酸化、ケイ素、リン、ヒ素およびイオウの酸化、酸化的なN−脱アルキル、酸化的なO−およびS−脱アルキル、酸化的な脱アミノ化、ならびに他の酸化反応などの反応により例示される。
還元反応:還元反応は、限定するものではないが、カルボニル官能基の還元、アルコール官能基および炭素−炭素二重結合の還元、窒素含有官能基の還元などの反応ならびに他の還元反応により例示される。
酸化状態の変化を伴わない反応:酸化状態の変化を伴わない反応は、限定するものではないが、エステルおよびエーテルの加水分解、炭素−窒素単結合の加水分解的切断、非芳香族複素環の加水分解的切断、多重結合での水和および脱水、脱水反応の結果生じる新しい原子結合、加水分解的脱ハロゲン化、ハロゲン化水素分子の除去などの反応ならびに他のそのような反応により例示される。
担体プロドラッグは、輸送部分を含有する、たとえば、作用部位(複数可)への取込みおよび/または局所的送達を向上させる薬物化合物である。そのような担体プロドラッグにとって望ましいのは、薬物部分と輸送部分との間の連結が共有結合であり、プロドラッグは不活性であるかまたは薬物化合物より活性が低く、プロドラッグおよび任意の放出輸送部分は許容可能に非毒性であることである。輸送部分が、取込みを向上させるように意図されているプロドラッグの場合、典型的には、輸送部分の放出は急速であるべきである。他の場合、徐放をもたらす部分、たとえば、シクロデキストリンなど一定のポリマーまたは他の部分を利用することが望ましい。(たとえば、参照により本明細書中に組み込まれる、Chengら、米国特許出願公開第20040077595号、米国特許出願第10/656,838号を参照のこと。)そのような担体プロドラッグは、経口投与用の薬物にとって有利であることが多い。場合により、輸送部分は、薬物の標的化送達をもたらし、たとえば、薬物を抗体または抗体断片にコンジュゲートしてもよい。担体プロドラッグは、たとえば、以下の特性のうち1つまたは複数を向上させるために使用できる:親油性の向上、薬理効果の継続期間の長期化、部位特異性の向上、毒性および有害反応の低下、および/または薬物製剤の改善(たとえば、安定性、水溶性、望ましくない官能特性または生理化学的特性の抑制)。たとえば、親油性は、親油性のカルボン酸を用いてのヒドロキシル基のエステル化、またはアルコール(たとえば脂肪族アルコール)を用いてのカルボン酸基のエステル化により向上させることができる。Wermuth、前記文献。
代謝物(たとえば活性代謝物)は、上述のようなプロドラッグ(たとえば生物学的前駆体プロドラッグ)と共通部分がある。したがって、そのような代謝物は、薬理学的に活性のある化合物、または、対象の体内での代謝過程の結果生じる誘導体である薬理学的に活性のある化合物にさらに代謝する化合物である。これらのうち、活性代謝物は、そのような薬理学的に活性のある誘導体化合物である。プロドラッグについては、プロドラッグ化合物は、一般的に不活性な、または、代謝産物より活性の低いものである。活性代謝物については、親化合物は活性化合物であっても不活性なプロドラッグであってもいずれでもよい。たとえば、いくつかの化合物においては、薬理学的な活性を維持しながら1つまたは複数のアルコキシ基をヒドロキシル基に代謝でき、および/または、カルボキシル基をエステル化(たとえばグルクロン酸抱合)できる。場合によっては、中間代謝物(複数可)がさらに代謝されて活性代謝物がもたらされる2つ以上の代謝物があってもよい。たとえば、場合によっては、代謝のグルクロン酸抱合の結果生じる誘導体化合物は、不活性であるかまたは活性が低くてもよく、さらに代謝されて活性代謝物がもたらされてもよい。
化合物の代謝物は、当技術分野で公知の慣例的な手法を用いて同定し、その活性は、本明細書に記載のものなどの試験を用いて定量してもよい。たとえば、Bertoliniら、1997、J.Med.Chem.、40、2011〜2016頁;Shanら、1997、J Pharm Sci、86(7)、756〜757頁;Bagshawe、1995、Drug Dev.Res.、34、220〜230頁;Wermuth、前記文献を参照のこと。
(b)互変異性体
化合物によっては互変異性を呈してもよいことは理解される。そのような場合、本明細書中で提供される式は、可能性のある互変異性型の1つのみを明示的に描く。したがって、本明細書中で提供される化合物P−0001またはP−0002は、描かれた化合物の任意の互変異性型を代表することを意図したものであり、同化合物の図により描かれた特定の互変異性型のみに限定されるべきではないことを理解されたい。
化合物によっては互変異性を呈してもよいことは理解される。そのような場合、本明細書中で提供される式は、可能性のある互変異性型の1つのみを明示的に描く。したがって、本明細書中で提供される化合物P−0001またはP−0002は、描かれた化合物の任意の互変異性型を代表することを意図したものであり、同化合物の図により描かれた特定の互変異性型のみに限定されるべきではないことを理解されたい。
(c)薬学的に許容される塩
そうでないことが明記されない限り、本明細書における化合物P−0001またはP−0002の仕様は、当該化合物の薬学的に許容される塩を包含する。したがって、化合物P−0001またはP−0002は、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、または、薬学的に許容される塩として製剤化できる。企図される薬学的に許容される塩形態としては、限定するものではないが、モノ、ビス、トリス、テトラキスなどが挙げられる。薬学的に許容される塩は、その塩が投与される量および濃度で非毒性である。そのような塩の調製は、化合物の物理的な特徴を改変させることにより、その生理学的な効果を発揮させないようにしなくても、薬理学的な使用を容易にできる。物性の有用な改変としては、融点を下げて経粘膜投与を容易にすること、および、溶解性を高めてより高濃度の薬物の投与を容易にすることが挙げられる。化合物P−0001またはP−0002は、十分に酸性の官能基および十分に塩基性の官能基を有していることから、いくつかの無機塩基または有機塩基ならびに無機酸および有機酸のうちいずれかと反応して薬学的に許容される塩を形成することができる。
そうでないことが明記されない限り、本明細書における化合物P−0001またはP−0002の仕様は、当該化合物の薬学的に許容される塩を包含する。したがって、化合物P−0001またはP−0002は、薬学的に許容される塩の形態であってもよく、または、薬学的に許容される塩として製剤化できる。企図される薬学的に許容される塩形態としては、限定するものではないが、モノ、ビス、トリス、テトラキスなどが挙げられる。薬学的に許容される塩は、その塩が投与される量および濃度で非毒性である。そのような塩の調製は、化合物の物理的な特徴を改変させることにより、その生理学的な効果を発揮させないようにしなくても、薬理学的な使用を容易にできる。物性の有用な改変としては、融点を下げて経粘膜投与を容易にすること、および、溶解性を高めてより高濃度の薬物の投与を容易にすることが挙げられる。化合物P−0001またはP−0002は、十分に酸性の官能基および十分に塩基性の官能基を有していることから、いくつかの無機塩基または有機塩基ならびに無機酸および有機酸のうちいずれかと反応して薬学的に許容される塩を形成することができる。
薬学的に許容される塩としては、以下を含有するものなどの酸付加塩が挙げられる:塩化物、臭化物、ヨウ化物、塩酸塩、酢酸塩、フェニル酢酸塩、アクリル酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、2−フェノキシ安息香酸塩、2−アセトキシ安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、安息香酸メチル、炭酸水素塩、ブチン−1,4ジオエート、ヘキシン−1,6−ジオエート、カプロン酸塩、カプリル酸塩、クロロ安息香酸塩、ケイ皮酸塩、クエン酸塩、デカン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グリコール酸塩、グルコン酸塩、グルカ酸塩、グルクロン酸塩、グルコース−6−ホスフェート、グルタミン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、γ−ヒドロキシ酪酸塩、フェニル酪酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、マレイン酸メチル、マロン酸塩、マンデル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、イソニコチン酸塩、オクタン酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、リン酸塩、リン酸一水素塩、リン酸二水素塩、オルトリン酸塩、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、2−ホスホグリセリン酸塩、3−ホスホグリセリン酸塩、フタル酸塩、プロピオン酸塩、フェニルプロピオン酸塩、プロピオール酸塩、ピルビン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、4−アミノサリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、スベリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、ピロ硫酸塩、重硫酸塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、スルファミン酸塩、スルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(すなわちベシル酸塩)、エタンスルホン酸塩(すなわちエシレート(esylate))、エタン−1,2−二硫酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩(すなわちイセチオン酸塩)、メタンスルホン酸塩(すなわちメシル酸塩)、ナフタレン−1−スルホン酸塩、ナフタレン−2−スルホン酸塩(すなわちナプシル酸塩)、プロパンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩(すなわちトシル酸塩)、キシレンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、酒石酸塩およびトリフルオロ酢酸塩。これらの薬学的に許容される酸付加塩は、適切な対応する酸を用いて調製できる。
カルボン酸またはフェノールなどの酸性官能基が存在するとき、薬学的に許容される塩としては、ベンザチン、クロロプロカイン、コリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、t−ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、エチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、メグルミン、ヒドロキシエチルピロリジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、プロカイン、アルミニウム、カルシウム、銅、鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛、アンモニウム、およびモノ−、ジ−もしくはトリ−アルキルアミン(たとえばジエチルアミン)を含有するものなど塩基付加塩、または、L−ヒスチジン、L−グリシン、L−リシンおよびL−アルギニンなどのアミノ酸に由来する塩も挙げられる。たとえば、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第19版、Mack Publishing Co.、Easton、PA、第2巻、1457頁、1995を参照のこと。これらの薬学的に許容される塩基付加塩は、適切な対応する塩基を用いて調製できる。
薬学的に許容される塩は、標準的な手法により調製できる。たとえば、化合物の遊離塩基形態は、適切な酸を含有する水溶液または水性アルコール溶液などの適当な溶媒に溶解してから溶液を蒸発させることにより単離できる。別の例では、塩は、有機溶媒中の遊離塩基と酸とを反応させることにより調製できる。特定の化合物が酸であれば、所望の薬学的に許容される塩は、任意の適当な方法、たとえば、遊離酸を適切な無機塩基または有機塩基で処理することにより調製してもよい。
(d)他の化合物形態
固形物である薬剤の場合、当業者には、本化合物および塩は、異なる結晶もしくは多形の形態で存在してもよく、または、共結晶として製剤化されてもよく、または、非晶質の形態であってもよく、または、その任意の組合せ(たとえば、部分的に結晶性、部分的に非晶質、または多形の混合物)であってもよく、それらは全て、本発明の範囲および明記する式の範囲内であることを意図していることは理解される。塩は、酸/塩基付加により形成される、すなわち、所望の化合物の遊離塩基または遊離酸が、対応する付加塩基または付加酸とそれぞれ酸/塩基反応を形成し、結果としてイオン電荷相互作用が生じるが、共結晶は、中性化合物の間で形成される新しい化学種であり、結果として、同じ結晶構造の化合物および付加的な分子種が得られる。
固形物である薬剤の場合、当業者には、本化合物および塩は、異なる結晶もしくは多形の形態で存在してもよく、または、共結晶として製剤化されてもよく、または、非晶質の形態であってもよく、または、その任意の組合せ(たとえば、部分的に結晶性、部分的に非晶質、または多形の混合物)であってもよく、それらは全て、本発明の範囲および明記する式の範囲内であることを意図していることは理解される。塩は、酸/塩基付加により形成される、すなわち、所望の化合物の遊離塩基または遊離酸が、対応する付加塩基または付加酸とそれぞれ酸/塩基反応を形成し、結果としてイオン電荷相互作用が生じるが、共結晶は、中性化合物の間で形成される新しい化学種であり、結果として、同じ結晶構造の化合物および付加的な分子種が得られる。
場合により、化合物P−0001またはP−0002のいずれかを、以下を包含する酸または塩基と錯体化させる:アンモニウム、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ピペラジン、メグルミンなどの塩基付加塩;酢酸塩、アセチルサリチル酸塩、ベシル酸塩、カンシル酸塩、クエン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルタル酸塩、塩酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩およびトシル酸塩などの酸付加塩;ならびに、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシンまたはバリンなどのアミノ酸。化合物P−0001またはP−0002のいずれかを酸または塩基と組み合わせることにおいて、典型的な塩または共結晶などの結晶性の物質ではなく、非晶質錯体が好ましくは形成される。場合により、非晶質形態の錯体は、噴霧乾燥、ローラー圧縮などの機械化学的な方法、または、酸もしくは塩基と混合した親化合物のマイクロ波照射によるなど追加的な加工により容易になる。そのような非晶質錯体は、いくつかの利点をもたらす。たとえば、遊離塩基よりも融解温度を下げると、ホットメルト押出しなどの追加的な加工が容易になり、化合物のバイオ医薬品特性がさらに高められる。また、非晶質錯体は容易に砕けやすく、このことから、固形物をカプセルまたは錠剤形態の中に入れるための圧縮性の向上がもたらされる。
加えて、化合物P−0001またはP−0002のいずれかは、同定された物質の水和形態または溶媒和形態、ならびに非水和形態または非溶媒和形態を包含することを意図している。たとえば、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはそれらの塩としては、水和形態および非水和形態の両方が挙げられる。溶媒和物の他の例としては、化合物P−0001またはP−0002のいずれかを、イソプロパノール、エタノール、メタノール、DMSO、酢酸エチル、酢酸またはエタノールアミンなどの適当な溶媒と組み合わせたものが挙げられる。
製剤および投与
本明細書に記載のとおりの化合物P−0001またはP−0002のいずれかまたはその任意の形態は、典型的には、ヒト対象のための療法において使用されることになる。しかし、化合物P−0001またはP−0002のいずれかおよびその組成物は、他の動物対象における類似または同一の適応症を治療するためにも使用でき、注射(すなわち非経口経路(静脈内、腹腔内、皮下および筋肉内など))、経口、経皮、経粘膜、直腸または吸入器など異なる経路により投与できる。そのような剤形は、化合物を標的細胞に到達させるはずである。他の因子は、当技術分野では周知であり、そのような因子としては、毒性などの考慮、化合物または組成物の効果の発揮を阻害する剤形が挙げられる。手法および製剤は、一般的には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott,Williams and Wilkins、Philadelphia、PA、2005(参照により本明細書中に組み込まれる)の中に見出すことができる。
本明細書に記載のとおりの化合物P−0001またはP−0002のいずれかまたはその任意の形態は、典型的には、ヒト対象のための療法において使用されることになる。しかし、化合物P−0001またはP−0002のいずれかおよびその組成物は、他の動物対象における類似または同一の適応症を治療するためにも使用でき、注射(すなわち非経口経路(静脈内、腹腔内、皮下および筋肉内など))、経口、経皮、経粘膜、直腸または吸入器など異なる経路により投与できる。そのような剤形は、化合物を標的細胞に到達させるはずである。他の因子は、当技術分野では周知であり、そのような因子としては、毒性などの考慮、化合物または組成物の効果の発揮を阻害する剤形が挙げられる。手法および製剤は、一般的には、Remington:The Science and Practice of Pharmacy、第21版、Lippincott,Williams and Wilkins、Philadelphia、PA、2005(参照により本明細書中に組み込まれる)の中に見出すことができる。
いくつかの実施形態では、組成物は、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、滑沢剤、錯化剤、可溶化剤および界面活性剤などの薬学的に許容される担体または添加剤を含むことになり、そのような担体または添加剤は、特定の経路による本化合物の投与を容易にするように選ぶことができる。担体の例としては、以下が挙げられる:炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、多様な糖(乳糖、グルコースまたはショ糖など)、数種のデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、脂質、リポソーム、ナノ粒子など。担体としては、以下も挙げられる:溶媒としてまたは懸濁液用に生理学的に適合性のある液体、たとえば、滅菌済の注射用水(WFI)溶液、生理食塩溶液、デキストロース溶液、ハンクス液、リンゲル液、植物油、鉱油、動物油、ポリエチレングリコール、液体パラフィンなど。添加剤としては、たとえば以下を挙げることもできる:コロイド状二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、大結晶(macrocrystalline)セルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、サイロイド、ステアロウェットC、酸化マグネシウム、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水素化植物油、水素化綿実油、ヒマ種子油、鉱油、ポリエチレングリコール(たとえばPEG4000〜8000)、ポリオキシエチレングリコール、ポロキサマー、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カゼイン、メタクリル酸ジビニルベンゼンコポリマー、ナトリウムドキュセート、シクロデキストリン(たとえば2−ヒドロキシプロピル−δ−シクロデキストリン)、ポリソルベート(たとえばポリソルベート80)、セトリミド、TPGS(d−α−トコフェリルポリエチレングリコール1000スクシネート)、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールの二脂肪酸エステル、またはポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(たとえば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルTween(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、たとえば、オレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸などの脂肪酸に由来するソルビタン脂肪酸エステル、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトース、乳糖、乳糖一水和物またはスプレードライ乳糖、ショ糖、フルクトース、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、酢酸セルロース、マルトデキストリン、シメチコン、ポリデキストローセム(polydextrosem)、キトサン、ゼラチン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロースなど。
いくつかの実施形態では、経口投与を用いてもよい。経口使用のための医薬調製物は、カプセル剤、錠剤などの従来の経口剤形、および、シロップ剤、エリキシル剤などの液体調製物、および濃縮ドロップ剤に製剤化できる。化合物P−0001またはP−0002のいずれかを固形添加剤と組み合わせ、任意選択的に、結果として得られる混合物を粉砕し、所望により、適当な補助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して、たとえば、錠剤、コーティング錠、硬カプセル剤、軟カプセル剤、溶液剤(たとえば水性、アルコール性または油性の溶液剤)などを得てもよい。適当な添加剤は、とりわけ、以下を包含する充填剤である:糖(乳糖、グルコース、ショ糖、マンニトールまたはソルビトールなど);セルロース調製物、たとえば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、バレイショデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)および/またはポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン);油性の添加剤(ヒマワリ油、オリーブ油または肝油などの植物油および動物油など)。経口剤形の製剤は、崩壊剤(架橋ポリビニルピロリドン、寒天もしくはアルギン酸など、または、アルギン酸ナトリウムなどその塩)、滑沢剤(タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなど)、可塑剤(グリセロールもしくはソルビトールなど)、甘味剤(ショ糖、フルクトース、乳糖もしくはアスパルテームなど)、天然もしくは人工の香味剤(ペパーミント、ヒメコウジ油もしくはサクランボ香味料など)、または色素もしくは顔料を含有することもでき、これらは、異なる用量または組合せの識別または特徴付けのために使用してもよい。適当なコーティングを用いた糖衣錠コアも提供される。この目的では、濃縮糖溶液剤を使用してもよく、このような濃縮糖溶液剤は、任意選択的に、たとえば、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコール、および/または二酸化チタン、ラッカー溶液、および適当な有機溶媒または溶媒混合物を含有してもよい。
経口的に使用できる医薬調製物としては、以下が挙げられる:ゼラチンで作製されたプッシュフィットカプセル剤(「ゲルキャップ」)、ならびに、ゼラチンと、グリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤とで作製された封入式の軟カプセル剤。プッシュフィットカプセル剤は、乳糖などの充填剤、デンプンなどの結合剤、および/または、タルクもしくはステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、および、場合により安定化剤との混合物中に活性成分を含有できる。軟カプセル剤中では、活性化合物は、脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールなどの適当な液体に溶解または懸濁させてもよい。
いくつかの実施形態では、注射(非経口投与)、たとえば、筋肉内注射、静脈内注射、腹腔内注射および/または皮下注射を使用してもよい。化合物P−0001またはP−0002のいずれかおよびその注射用組成物は、滅菌済の液体溶液、好ましくは、生理食塩水溶液、ハンクス液、またはリンゲル液など生理学的に適合性のある緩衝液または溶液中で製剤化してもよい。分散剤は、グリセロール、プロピレングリコール、エタノール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチンおよび植物油などの非水性溶液中で調製することもできる。溶液剤は、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの保存剤を含有することもできる。加えて、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、たとえば、凍結乾燥形態などの固形形態で製剤化して、使用に先立ち再溶解または懸濁させてもよい。
いくつかの実施形態では、経粘膜投与、局所投与または経皮投与を用いてもよい。化合物P−0001またはP−0002のいずれかのそのような製剤中では、バリアに浸透させるのに適切な浸透剤を使用する。そのような浸透剤は、一般的に当技術分野で公知であり、たとえば、経粘膜投与用としては、胆汁酸塩およびフシジン酸誘導体が挙げられる。加えて、界面活性物質を使用して、浸透を容易にしてもよい。経粘膜投与は、たとえば、鼻スプレーまたは坐剤(直腸または膣用のもの)によってもよい。局所投与の化合物P−0001またはP−0002のいずれかの組成物は、当技術分野で公知の適切な担体を選ぶことにより、油剤、クリーム剤、ローション剤、軟膏剤などとして製剤化してもよい。適当な担体としては、植物油または鉱油、白色ワセリン(白色の軟パラフィン)、分枝鎖の脂肪または油、動物性脂肪および高分子量のアルコール(C12超)が挙げられる。いくつかの実施形態では、担体は、活性成分が溶解できるように選択する。乳化剤、安定化剤、湿潤剤および酸化防止剤、ならびに、所望により、色または芳香を賦与する薬剤を含ませることもできる。局所施用のためのクリーム剤は、好ましくは、鉱油、自己乳化する蜜蝋および水の混合物から製剤化され、この混合物中で、小量の溶媒(たとえば油)に溶解させた活性成分が混合される。加えて、経皮的な手段による投与は、活性成分と、任意選択的に、当技術分野で公知の1つまたは複数の担体または賦形剤とを染み込ませた包帯などの経皮パッチ剤または包帯剤を含んでもよい。経皮送達系の形態で投与するには、製剤投与は、投与計画を通じ、間欠的ではなく連続的なものとなろう。
いくつかの実施形態では、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、吸入剤として投与される。化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、乾燥散剤または適当な溶液剤、懸濁剤またはエアゾール剤として製剤化してもよい。散剤および溶液剤は、当技術分野で公知の適当な添加物を用いて製剤化してもよい。たとえば、散剤は、乳糖またはデンプンなどの適当な粉末ベースを含んでいてもよく、溶液剤は、プロピレングリコール、滅菌水、エタノール、塩化ナトリウム、ならびに、酸、アルカリおよび緩衝塩など他の添加物を含んでいてもよい。そのような溶液剤または懸濁剤は、スプレー、ポンプ、アトマイザーまたはネブライザーなどを介して吸入することにより投与してもよい。化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、たとえば、以下の、他の吸入療法と組み合わせて使用することもできる:コルチコステロイド(フルチカゾンプロプリオネート(proprionate)、二プロピオン酸ベクロメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ブデソニドおよびフロ酸モメタゾンなど)、βアゴニスト(アルブテロール、サルメテロールおよびホルモテロールなど)、抗コリン作用剤(臭化イプラトロプリウム(ipratroprium)またはチオトロピウムなど)、血管拡張薬(トレプロスチナル(treprostinal)およびイロプロストなど)、酵素(DNA分解酵素など)、治療用タンパク質、免疫グロブリン抗体、オリゴヌクレオチド(一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、siRNAなど)、抗生物質(トブラマイシンなど)、ムスカリン受容体拮抗剤、ロイコトリエン拮抗剤、サイトカイン拮抗剤、プロテアーゼ阻害剤、クロモリンナトリウム、ネドクリル(nedocril)ナトリウムおよびクロモグリク酸ナトリウム。
化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物の投与すべき量は、以下のものなどの因子を考慮して、標準的な手順により決定できる:化合物の活性(in vitro活性、たとえば、標的に対する化合物のIC50、または動物有効性モデルにおけるin vivo活性)、動物モデルにおける薬物動態学的な結果(たとえば、生物学的な半減期または生体利用率)、対象の年齢、体長および体重、ならびに、対象が有する障害。こうしたさまざまな因子の重要性は、当業者に周知である。一般的に、用量は、治療を受けている対象の体重1kg当たり約0.01〜50mg、さらには1kg当たり約0.1〜20mgの範囲内であろう。反復投与を用いてもよい。
化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、同じ疾患を治療するための他の療法と組み合わせて使用することもできる。そのような組合せ使用としては、以下が挙げられる:化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかと1つもしくは複数の他の治療剤とを異なる時間で投与すること、または、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかと1つもしくは複数の他の療法とを併用投与すること。いくつかの実施形態では、投与量は、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれか、または組み合わせて使用される他の治療剤については、たとえば、当業者に周知の方法により、単独で使用される化合物または療法に比べて投与量を減らすなど、調節してもよい。
組合せでの使用としては、他の療法、薬物、医学的処置などとの使用が挙げられ、その場合、他の療法または処置は、異なる時間(たとえば、数時間(たとえば1時間、2時間、3時間、4〜24時間)内などの短時間内で、または、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物より長い時間(たとえば1〜2日、2〜4日、4〜7日、1〜4週間)内)で、あるいは、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物と同時に、投与してもよいことは理解される。組合せでの使用としては、外科手術など1回または低頻度で行われる療法または医学的処置との使用も挙げられ、それに併せて、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物は、他の療法または処置の前後の短時間またはより長い時間内に投与される。いくつかの実施形態では、本発明は、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物と、異なる投与経路もしくは同じ投与経路により送達される1つもしくは複数の他の薬物治療剤との送達を提供する。任意の投与経路用の組合せでの使用としては、以下が挙げられる:化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物と、同じ投与経路により送達される1つもしくは複数の他の薬物治療剤とを任意の製剤(2つの化合物が、投与されたときにその治療上の活性を維持するような方式で化学的に連結している製剤など)で一緒に送達すること。一態様では、他の薬物療法は、化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかまたはその組成物と併用投与してもよい。併用投与による組合せでの使用としては、以下が挙げられる:共製剤もしくは化学的に結合した化合物の製剤を投与すること、または、別々の製剤中の2つ以上の化合物を、互いに短時間内(たとえば1時間内、2時間内、3時間内、最大24時間内)に、同じもしくは異なる経路により投与すること。別々の製剤の併用投与としては、以下が挙げられる:1つの器具、たとえば、同一の吸入器具、同一の注射器などを介した送達による併用投与、または、別々の器具からの、互いに短時間内での投与。化合物P−0001もしくはP−0002のいずれかと、同一経路により送達される1つまたは複数の追加的な薬物療法との共製剤としては、以下が挙げられる:1つの器具により投与できるように複数の物質を一緒に調製すること(1つの製剤中で合わされた別々の化合物、または、別々の化合物が化学的に結合していても依然としてその生物活性を維持するように改変されている化合物など)。そのような化学的に結合している化合物は、in vivoで実質的に維持される連結を有していてもよく、または、この連結は、in vivoで切れて、2つの活性成分を分離してもよい。
本発明に関する実施例を以下に記載する。ほとんどの場合、代替的な手法を使用できる。この実施例は、例証的なものであることを意図しており、本発明の範囲を限定または制限するものではない。いくつかの実施例においては、化合物について示された質量分析の結果が、2つ以上の値を有することがあるが、これは、分子中に原子の同位元素が分布していることによるものである(ブロモ置換基またはクロロ置換基を有する化合物など)。公知の化合物の合成は、固形形態の形成については、たとえば、米国特許出願第11/473,347号(PCT国際公開第2007002433号も参照のこと)および米国特許出願第11/960,590号(米国特許出願公開第2008/0167338号)中に見出すことができ、その開示内容は、化合物を作製する方法に関し、参照により本明細書に組み込まれる。
N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0001の合成。
N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0001を、スキーム1に示すように、2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、4つのステップで合成した。
N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0001を、スキーム1に示すように、2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、4つのステップで合成した。
ステップ1 N−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(3)の調製:
13.04mLのジクロロメタン中の2,4−ジフルオロフェニルアミン(1、2.09mL、20.7mmol)に、ピリジン(0.522mL、6.45mmol)を加え、この混合物を窒素下で20分間撹拌した。4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルクロリド(2、5.00g、20.4mmol)をゆっくり加え、この反応物を一晩撹拌した。この反応混合物をジエチルエーテル中の2mLの1M塩酸で処理し、1時間おいた。固形の沈殿物を濾過により除去し、濾液を1N塩酸水溶液で、次いでブラインにより、抽出した。有機部分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる固形物をジクロロメタンで処理し、固形物を回収し、乾燥させると、所望の化合物が白色の固形物として得られた(3、2.383g)。
13.04mLのジクロロメタン中の2,4−ジフルオロフェニルアミン(1、2.09mL、20.7mmol)に、ピリジン(0.522mL、6.45mmol)を加え、この混合物を窒素下で20分間撹拌した。4−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルクロリド(2、5.00g、20.4mmol)をゆっくり加え、この反応物を一晩撹拌した。この反応混合物をジエチルエーテル中の2mLの1M塩酸で処理し、1時間おいた。固形の沈殿物を濾過により除去し、濾液を1N塩酸水溶液で、次いでブラインにより、抽出した。有機部分を硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる固形物をジクロロメタンで処理し、固形物を回収し、乾燥させると、所望の化合物が白色の固形物として得られた(3、2.383g)。
ステップ2 N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(4)の調製:
50.0mLのテトラヒドロフラン中のN,N−ジイソプロピルアミン(2.692mL、19.21mmol)の入った丸底フラスコ中に、n−ブチルリチウム(2.50M、ヘキサン中、7.684mL、19.21mmol)を−78℃で窒素雰囲気下にて加えた。−78℃で30分間の撹拌後、N−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(3、2.09g、6.20mmol)を加え、その間、−78℃で窒素下にて1時間撹拌を続けた。この反応物を15分かけて室温にしてから水中に注ぎ、1N塩酸水溶液でpH=1に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、適切な画分を合わせて溶媒を除去すると、所望の化合物が得られた(4、1.02g)。MS(ESI)[M−H+]−=364.1。
50.0mLのテトラヒドロフラン中のN,N−ジイソプロピルアミン(2.692mL、19.21mmol)の入った丸底フラスコ中に、n−ブチルリチウム(2.50M、ヘキサン中、7.684mL、19.21mmol)を−78℃で窒素雰囲気下にて加えた。−78℃で30分間の撹拌後、N−(2,4−ジフルオロフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(3、2.09g、6.20mmol)を加え、その間、−78℃で窒素下にて1時間撹拌を続けた。この反応物を15分かけて室温にしてから水中に注ぎ、1N塩酸水溶液でpH=1に酸性化し、酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。その結果得られる物質をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、適切な画分を合わせて溶媒を除去すると、所望の化合物が得られた(4、1.02g)。MS(ESI)[M−H+]−=364.1。
ステップ3 N−{3−[4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシ−メチル]−2,4−ジフルオロ−フェニル}−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(6)の調製:
丸底フラスコ中に、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−カルボニトリル(5、0.054g、0.38mmol)、N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(4、0.179g、0.49mmol)、0.75mLのメタノールおよび水酸化カリウム(0.103g、1.89mmol)を合わせた。この反応物を室温で46時間撹拌してから、0.1N塩酸水溶液で中和し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(6、0.018g)。MS(ESI)[M+H+]+=509.1。
丸底フラスコ中に、1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−4−カルボニトリル(5、0.054g、0.38mmol)、N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(4、0.179g、0.49mmol)、0.75mLのメタノールおよび水酸化カリウム(0.103g、1.89mmol)を合わせた。この反応物を室温で46時間撹拌してから、0.1N塩酸水溶液で中和し、酢酸エチルで3回抽出した。有機層を合わせてブラインで洗浄してから硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を真空下で濃縮した。この物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(6、0.018g)。MS(ESI)[M+H+]+=509.1。
ステップ4 N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0001)の調製:
0.2mLのテトラヒドロフランに溶解したN−{3−[(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(6、15mg、0.030mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(13.8mg、0.0324mmol)を加えた。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。この反応混合物を、飽和チオ硫酸ナトリウム中に注ぎ、有機層を分離してブラインで洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0001、4mg)。MS(ESI)[M−H+]−=505.5。
0.2mLのテトラヒドロフランに溶解したN−{3−[(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(6、15mg、0.030mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(13.8mg、0.0324mmol)を加えた。この反応混合物を室温で1時間撹拌した。この反応混合物を、飽和チオ硫酸ナトリウム中に注ぎ、有機層を分離してブラインで洗浄してから、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる物質を、酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0001、4mg)。MS(ESI)[M−H+]−=505.5。
N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0002の合成。
N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0002を、スキーム2に示すように2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、4つのステップで合成した。
N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド P−0002を、スキーム2に示すように2,4−ジフルオロフェニルアミン 1から、4つのステップで合成した。
ステップ1 N−(2,4−ジフルオロ−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(3)の調製:
スキーム1による
スキーム1による
ステップ2 N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミル−フェニル)−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(4)の調製:
スキーム1による
スキーム1による
ステップ3 N−{3−[(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシ−メチル]−2,4−ジフルオロ−フェニル}−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(8)の調製:
丸底フラスコ中に、4−トリメチルシラニルエチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(7、0.250g、1.17mmol)、N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(4、0.498g、1.36mmol)および2.0mLのメタノールを加え、この懸濁液を10分間撹拌した。水酸化カリウム(0.213g、3.79mmol)を加え、この反応物を室温で6時間撹拌した。この反応物を25mLの水および25mLの飽和塩化アンモニウム中に注いでから、50mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を単離し、真空下で濃縮した。残留物を、ヘキサン中の勾配5〜60%の酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(8、0.146g)。
丸底フラスコ中に、4−トリメチルシラニルエチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(7、0.250g、1.17mmol)、N−(2,4−ジフルオロ−3−ホルミルフェニル)−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(4、0.498g、1.36mmol)および2.0mLのメタノールを加え、この懸濁液を10分間撹拌した。水酸化カリウム(0.213g、3.79mmol)を加え、この反応物を室温で6時間撹拌した。この反応物を25mLの水および25mLの飽和塩化アンモニウム中に注いでから、50mLの酢酸エチルで抽出した。有機層を単離し、真空下で濃縮した。残留物を、ヘキサン中の勾配5〜60%の酢酸エチルで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(8、0.146g)。
ステップ4 N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロ−フェニル]−4−トリフルオロメチル−ベンゼンスルホンアミド(P−0002)の調製:
15mLのテトラヒドロフランに溶解したN−{3−[(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(8、0.146g、0.288mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(0.122g、0.288mmol)を加えた。この反応混合物を室温で15分間撹拌した。この反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を分離し、ブラインで洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる物質を、0〜30%酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を真空下で除去し、この物質を、0〜15%酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0001、121mg)。MS(ESI)[M+H+]+=506。
15mLのテトラヒドロフランに溶解したN−{3−[(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−イル)−ヒドロキシメチル]−2,4−ジフルオロフェニル}−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド(8、0.146g、0.288mmol)に、デス・マーチン・ペルヨージナン(0.122g、0.288mmol)を加えた。この反応混合物を室温で15分間撹拌した。この反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、有機層を分離し、ブラインで洗浄してから、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。濾液を真空下で濃縮し、その結果得られる物質を、0〜30%酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。適切な画分を合わせ、溶媒を真空下で除去し、この物質を、0〜15%酢酸エチルおよびヘキサンで溶出させるシリカゲルカラムクロマトグラフィーによりさらに精製した。適切な画分を合わせて溶媒を真空下で除去すると、所望の化合物が得られた(P−0001、121mg)。MS(ESI)[M+H+]+=506。
化合物P−0001またはP−0002の塩形態。
P−0001またはP−0002は、有機塩錯体を形成し、結果として溶解性を高めることができる弱塩基性および弱酸性の中心を両方とも供給する官能基を有すると特徴付けられる。たとえば、ピロロ[2,3−b]ピリジン部分のN−7は弱塩基性(pKa約4〜5)であるが、スルホンアミド窒素は弱酸性(pKa約7)である。弱塩基性のおよび弱酸性の中心があることから、塩または塩錯体は、酸添加または塩基添加のいずれかにより調製してもよい。
P−0001またはP−0002は、有機塩錯体を形成し、結果として溶解性を高めることができる弱塩基性および弱酸性の中心を両方とも供給する官能基を有すると特徴付けられる。たとえば、ピロロ[2,3−b]ピリジン部分のN−7は弱塩基性(pKa約4〜5)であるが、スルホンアミド窒素は弱酸性(pKa約7)である。弱塩基性のおよび弱酸性の中心があることから、塩または塩錯体は、酸添加または塩基添加のいずれかにより調製してもよい。
塩基付加塩、好ましくは有機塩基添加塩(アンモニウム、ジエチルアミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、t−ブチルアミン、ピペラジン、メグルミン、L−アルギニン、L−ヒスチジンおよびL−リシンなど)は、P−0001またはP−0002を、20〜50溶媒体積のアルコール(メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)または他の適当な溶媒(アセトンなど)に、穏やかに加熱(30〜35℃)しながら溶解することにより形成される。この懸濁液を撹拌し、溶媒の別々の部分で粉末化しておいた1当量の塩基を加える。清澄な溶液が形成されるまで、この混合物を不活性雰囲気下で撹拌する。この溶液を濾過し、溶媒を減圧下で濾液から除去する。その結果得られるフィルムは、真空乾燥させた際に、砕けやすい固形物を形成する。あるいは、冷溶媒(ヘプタン、メチルt−ブチルエーテル、酢酸エチルなど)を溶液に加えることにより塩形態を沈殿させ、その結果得られる固形物を濾過し、真空乾燥させると、砕けやすい固形物が単離される。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
酸付加塩、好ましくは有機酸添加塩(酢酸塩、ベシル酸塩、カンシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メシル酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩およびトシル酸塩など)は、P−0001またはP−0002を、20〜50溶媒体積のアセトン(または他の適当な溶媒)に、撹拌および加熱(30〜35℃)しながら加え、次いで1当量の酸を加えることにより形成される。この溶液を2〜8℃にゆっくり冷却し、濾過または遠心分離のいずれかにより固形物を単離し、次いで真空乾燥させる。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
P−0001またはP−0002の追加的な有機酸塩または塩錯体(クエン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、グルタル酸塩およびアセチルサリチル酸塩または塩錯体)は、1:1または1:2の化合物:酸比率で、適当な溶媒(メタノールなど)中で形成される。P−0001またはP−0002を15〜20溶媒体積のメタノールに加え、噴霧乾燥させるか、または、非溶媒(ヘプタンなど)を加えてから濾過および真空乾燥させるか、そのいずれかにより、所望の固形物を単離する。その結果得られる固形物を、物性(DSC、XRPD、溶解性および固有溶解度など)について評価する。
P−0001またはP−0002の鉱酸(硫酸塩、リン酸塩および塩酸塩など)は、メタノールまたは酢酸エチル溶液から調製する。
その結果得られる塩または塩錯体を、噴霧乾燥法または微小沈殿バルク加工によるなど加工して好ましい非晶質の形態を得ることもでき、または、適当な添加剤物質と共に加工して、直接圧縮可能な剤形もしくはカプセル化した剤形を得てもよい。塩または塩錯体は、機械化学的な(たとえばローラー圧縮)、または、電荷移動の相手を適切に選択して親化合物にマイクロ波照射することによっても到達できる。そのようなアプローチを使用すると、溶媒利用が最小化し、収量、純度および処理量が高まるだけでなく、従来の溶媒法を用いては達成できない構成物が得られる。
化合物特性。
P−0001またはP−0002の、任意のRafキナーゼに及ぼす阻害活性は、疾患の治療におけるその活性にとって重要であるが、本明細書に記載の化合物は、医薬としての利点ももたらす好ましい特性を示す。生化学的アッセイにおいてRafキナーゼに対し、キナーゼ阻害活性を示すことに加え、化合物は、好ましい溶解性、好ましい薬物動態学的特性および低いCyp阻害を示すと考えられる。この化合物を、当業者が使用できる以下のアッセイまたは類似のアッセイで評価する。
P−0001またはP−0002の、任意のRafキナーゼに及ぼす阻害活性は、疾患の治療におけるその活性にとって重要であるが、本明細書に記載の化合物は、医薬としての利点ももたらす好ましい特性を示す。生化学的アッセイにおいてRafキナーゼに対し、キナーゼ阻害活性を示すことに加え、化合物は、好ましい溶解性、好ましい薬物動態学的特性および低いCyp阻害を示すと考えられる。この化合物を、当業者が使用できる以下のアッセイまたは類似のアッセイで評価する。
生化学的および細胞ベースの活性のためのアッセイは、たとえば、PCT国際公開第2007/002433号に記載されているように当技術分野で公知であり、その開示内容は、そのようなアッセイに関する場合、参照により本明細書に組み込まれる。たとえば、生化学的活性のIC50値を、B−Rafキナーゼ活性、c−Raf−1キナーゼ活性またはB−Raf V600Eキナーゼ活性の阻害に関して決定するが、この場合、ペプチド基質のリン酸化の阻害を化合物濃度の関数として測定する。試験対象化合物をジメチルスルホキシド中で濃度0.1mMに希釈する。これらを15μL、96ウェルプレート中で30μLのジメチルスルホキシド中に合計8つの希釈点用に7回段階希釈し、各希釈点について1μLをアッセイプレートのウェルに加える。プレートは、384ウェルプレート中の各ウェルが、0.1ngのRaf酵素(すなわち、B−Raf、c−Raf−1またはB−Raf V600Eのいずれか、Upstate Biotechnology、または、当業者に公知の方法により調製したもの)、50mMのHEPES、pH7.0、50mMのNaCl、2mMのMgCl2、1mMのMnCl2、0.01%Tween−20、1mMのDTTおよび基質としての100nMのビオチン−MEK1と合わせて10μL体積中に1μLの化合物を含有するように調製する。反応は、10μLの200μMのATP(すなわち最終的な100μMのATP)を加えて開始させる。キナーゼ反応物を45分間室温でインキュベーションした後、5μL/ウェルのStop溶液を加える(25mMのHepes pH7.5、100mMのEDTA、0.01%BSAに、ドナービーズ(ストレプトアビジンでコーティングしたビーズ、Perkin Elmer)、アクセプタービーズ(プロテインAでコーティングしたもの、Perkin Elmer)、および抗リン酸化MEK1/2抗体(anti phosphor MEK1/2 antibody)(CellSignal)をそれぞれ最終濃度10μg/mLで加えたもの)。このプレートを3時間室温でインキュベートし、Envisionリーダー(Perkin Elmer)で読み取る。Mek1をリン酸化する結果、抗リン酸化MEK1/2抗体と、ドナービーズとアクセプタービーズとを会合させたものとが結合することから、シグナルはキナーゼ活性と相関する。このシグナル対化合物濃度を用いてIC50を決定する。
生化学的アッセイにおける、Rafキナーゼならびに他のキナーゼに対するP−0001またはP−0002の阻害活性から、Rafキナーゼに対する選択的活性が示される。このデータから、IC50は、両方の化合物について、B−Rafおよびc−Raf−1に対しては0.1μM未満、B−Raf変異体V600Eに対しては1μM未満であったが、P−0001活性は、Kit、TrkAおよびSrcに対しては1〜10μMの間であり、Btk、Fms、HgkおよびKdrに対しては10μM超であり、P−0002活性は、KdrおよびSrcに対しては約1μMであり、Btk、FmsおよびTrkAに対しては10μM超であったことが示される。
相対的な溶解性の指標として、水溶液中の化合物の濁度を評価する。異なる生理学的コンパートメント(胃、腸および血液など)における可能性のある化合物特性を評価するために、pHの異なる一連の水性緩衝液を使用する。したがって、各化合物を、生理学的に関連のある4つの異なる緩衝液中に希釈し、溶液濁度を分光光度法により測定する。十分な不溶性の懸濁液を形成して3つの波長(490nm、535nmおよび650nm)での平均光学的密度を0.01超に上げることにより濁度を示す化合物の濃度を用いて、当該緩衝液への化合物溶解性の限度を規定する。
化合物を25mMの濃度でジメチルスルホキシドに溶解してから、1:1で96ウェルプレート中に段階希釈(純粋なジメチルスルホキシド中で10倍希釈)し、各列の最後のウェルはジメチルスルホキシドブランクにする。アッセイプレート中で、99μLの適切な緩衝液を各ウェルに加え、1μLの各試料希釈液を緩衝液に加えると、異なるpHを有する水溶液中の広範な最終的な総濃度が得られる。使用する緩衝液は、人工胃液(SGF−pH1.5)0.5MのNaCl、pH1.5;人工腸液(SIF−pH4.5およびpH6.8)0.05MのNaH2PO4、pH4.5および6.8;ならびにHepes緩衝液(HEPES−pH7.4)10mMのHEPES、150mMのNaCl、pH7.4である。対照化合物のピレン、エストリオールおよびプロプラノロールHClも評価する。プレートを回転させてから1分間混合し、Tecan Safire IIを用いて吸光度を読み取って、1ウェル当たり4つの位置で可視域の波長(490nm、535nmおよび650nm)を読むが、この値が、その時点の濁度を反映している。各ウェル中での各波長についての平均光学的密度を、化合物濃度に対してグラフ化し、曲線が各波長について0.01の閾値O.D.を交差する濃度を、エンドポイント濁度アッセイの結果として報告する。3つの波長の平均を用いて、化合物の濁度を比較する。化合物は、閾値濃度が31.3μM未満であれば低い溶解性を、閾値濃度が31.3μM〜250μMであれば中程度の溶解性を、閾値濃度が250μM超であれば高い溶解性を有するとみなされる。
以下の表は、各pHでの濁度閾値濃度を基準にした相対的な溶解性(L=低、M=中、H=高)を、P−0001およびP−0002について示すデータを記載するものである:
CYP(チトクロムP450)酵素は、肝臓に存在する主要な薬物代謝酵素である。CYP1A2、CYP2C19、CYP2C9、CYP2D6、CYP3A4(BFC)およびCYP3A4(BQ)のそれぞれについてのCYP酵素活性の阻害(IC50)を化合物について決定するが、このとき、公知の基質の代謝が阻害されると、代謝産物の蛍光が減少する。同産物の蛍光を化合物濃度の関数としてモニターする。
化合物をジメチルスルホキシドに溶解して濃度100mMにする。これらを1μL、82μLのアセトニトリル中に希釈する。次に、この溶液の11μLアリコートを、204μLの補因子ミックス(1.3%NADPH再生系溶液A(NADPH Regeneration system Solution A)、1.04%NADPH再生系溶液B(NADPH Regeneration system Solution B)(BD Biosciences製)、5%アセトニトリルおよび0.05%ジメチルスルホキシド)に加える。次に、これらを、合計10点用に160μLを160μLの補因子ミックスに段階希釈する。この最終混合物の10μLアリコートを384ウェルのアッセイプレート中に分注し、10分間37℃でインキュベートする。酵素と基質とのミックス(10μL;0.5pmolのCYP1A2/5μMのCEC;1.0pmolのCYP2C9/75μMのMFC;0.5pmolのCYP2C19/25μMのCEC;1.5pmolのCYP2D6/1.5μMのAMMC;1.0pmolのCYP3A4/50μMのBFC;または1.0pmolのCYP3A4/40μMのBQ)をこれらのアッセイプレートに加える。アッセイプレートを37℃でインキュベートし(CYP1A2は15分;CYP2C9は45分;CYP2C19、2D6および3A4は30分)、Tecan Safire 2プレートリーダーで読み取る(CYP1A2、2C19および3A4は409ex/460em;CYP2C9および2D6は409ex/530em)。シグナル対化合物濃度を用いてIC50を決定する。このアッセイのための酵素および基質は、BD Biosciencesから入手する。他の因子がin vivoでのCYP効果の定量に関与するが、化合物は、好ましくはIC50値が5μM超、より好ましくはIC50値が10μM超である。
以下の表は、Cyp阻害活性をP−0001およびP−0002について示すデータを記載するものである:
化合物(その任意の固形形態または製剤を包含する)の薬物動態学的特性を、オスのSprague Dawleyラットまたはオスのビーグル犬において評価する。ラットには、外科的に埋め込んだ頸静脈カテーテルを介したIV注射または経口強制投与(PO)のいずれかにより化合物を毎日投与する。各化合物は、ジメチルスルホキシド中の20mg/mLストック溶液として調製し、これをさらに希釈すると、IVまたはPO製剤用の所望の濃度の投与ストックが得られる。IV投与については、投与ストックをSolutol(登録商標):エタノール:水の1:1:8混合物中に希釈する。PO投与については、投与ストックを1%メチルセルロース中に希釈する。カセット形式(すなわち、各化合物、その固形形態またはその製剤を個々に投与する)では、化合物をIV投与について各0.5mg/mL、PO投与について各0.4mg/mLに希釈し、それぞれ1mg/kg(2mL/kg)または2mg/kg(5mL/kg)で投与する。IV投与動物については、尾静脈血液試料を、毎日の投与後5分、15分、30分および60分ならびに4時間、8時間および24時間の時点で、リチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。PO投与動物については、尾静脈血試料を、毎日の投与後30分、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間の時点でリチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。イヌには、適当な製剤の経口用カプセル剤により50mg/mLで毎日投与する。頭部の静脈血試料を、毎日の投与後30分、1時間、2時間、4時間、8時間および24時間の時点で、リチウムヘパリン抗凝血剤を用いて採取する。全ての試料は血漿に加工し、追って行うLC/MS/MSによる各化合物の分析用に凍結する。時間の関数としての血漿レベルをプロットして、AUC(ng*時間/mL)を評価する。本発明による化合物は、好ましくは、先に記載した化合物と比較して向上した薬物動態学的特性を示す、すなわち、先に記載した化合物と比較して、AUC、Cmaxおよび半減期のうち1つまたは複数について実質的により高い値を有する。
本明細書中に引用する全ての特許および他の参考文献は、本発明が属する分野の当業者の技能レベルを示すものであり、各参考文献は、その全体が参照により個別に組み込まれた場合と同程度に、一切の表および図を含め、参照によりその全体が組み込まれる。
当業者であれば、本発明をうまく適応させると、言及した目的および利点ならびにそれらに内在する目的および利点を得られることは容易に理解するであろう。好ましい実施形態を現時点で代表するものとして本明細書に記載した方法、変形および組成物は、例示的なものであり、本発明の範囲について限定するものとして意図してはいない。それらの変化形および他の使用が当業者には想起されるであろうが、そのような変化形および使用は、本発明の精神の範囲内に包含され、特許請求の範囲により定義される。
当業者には、本明細書中で開示する本発明に対し、本発明の範囲および精神から逸脱せずに多様な代替物および改変形を作製できることは容易に明らかとなろう。したがって、そのような追加的な実施形態は、本発明の範囲および以下の特許請求の範囲内である。
本明細書に例証的に記載した本発明は、適切には、本明細書中で具体的に開示されない任意の要素または複数の要素、制限または複数の制限なく実行できる。したがって、たとえば、本明細書におけるそれぞれの場合において、用語「〜を含む」、「〜から本質的に成る」および「〜から成る」のいずれも、他の2つの用語のうちいずれでも置き換えることができる。したがって、これらの用語のうち1つを用いた本発明の一実施形態については、本発明は、これらの用語のうち1つがこれらの用語のうち別のものと置き換えられている別の実施形態も包含する。各実施形態においては、これらの用語は、その定着した意味を有する。したがって、たとえば、一実施形態は、一連のステップ「を含む」方法を包含してもよく、別の実施形態は、同じステップ「から本質的に成る」方法を包含することになると考えられ、第3の実施形態は、同じステップ「から成る」方法を包含することになると考えられる。用いられている用語および表現は、制限ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用においては、示しおよび記載した特徴の一切の等価物またはその一部を排除する意図はなく、多様な改変形は、特許請求する本発明の範囲内で可能であることは認識される。したがって、本発明を、好ましい実施形態および任意選択的な特徴により具体的に開示してきたが、本明細書中で開示した概念の改変形および変形が当業者により用いられる可能性があること、また、そのような改変形および変形は、添付の特許請求の範囲により定義するように本発明の範囲内であるとみなされることは理解されるべきである。
加えて、本発明の特徴または態様が、マーカッシュ群または他の分類の代用物に関して記載される場合、当業者は、本発明が、それにより、マーカッシュ群または他の群の任意の個々の構成要素または複数の構成要素の下位群に関しても記載されることを認識するであろう。
また、そうでないことが示されない限り、実施形態について多様な数値が示される場合、追加的な実施形態は、任意の2つの異なる値を範囲の両端の値とすることにより説明される。そのような範囲も、記載された本発明の範囲内である。
したがって、追加的な実施形態は、本発明の範囲内、および、以下の特許請求の範囲内である。
Claims (10)
- N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミド、N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミドから成る群から選択される化合物および薬学的に許容されるその塩。
- N−[3−(4−シアノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
- N−[3−(4−エチニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−3−カルボニル)−2,4−ジフルオロフェニル]−4−トリフルオロメチルベンゼンスルホンアミドである請求項1に記載の化合物または薬学的に許容されるその塩。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその塩と、1つまたは複数の薬学的に許容される添加剤とを含む組成物。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項4に記載の組成物を含むキット。
- 医薬として使用するための、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物またはその塩。
- Rafタンパク質キナーゼ活性の調節が治療利益をもたらす疾患または状態を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項4に記載の組成物の使用。
- 疼痛および多発性嚢胞腎から成る群から選択される疾患または状態を治療するための医薬の調製における、請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項4に記載の組成物の使用。
- Rafキナーゼ介在性の疾患もしくは状態に罹患しているかまたはそのリスクのある対象を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項4に記載の組成物を投与することを含む方法。
- 疼痛および多発性嚢胞腎から成る群から選択される疾患に罹患しているかまたはそのリスクのある対象を治療する方法であって、治療上有効量の請求項1〜3のいずれか一項に記載の化合物もしくはその塩または請求項4に記載の組成物を投与することを含む方法。
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