JP2012516704A - 歯科用工具を形成するための方法 - Google Patents

Abstract

歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイによって形成される歯科用工具を形成するための方法であって、歯および隣接する歯の少なくとも一部の形状に関連する三次元データを取得するステップと、前記歯に嵌り且つ前記隣接する歯の少なくとも前記一部に嵌るオーバーレイを決定するためにコンピュータを用いて前記三次元データを処理するステップと、前記コンピュータを用いて前記三次元データを更に処理して、更なる治療のために前記歯を前処理するべく前記歯から除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するステップと、少なくとも２つの案内エッジを決定し、第１および第２の案内エッジが少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ互いに離間され、前記歯科用切断工具が前記第１および第２の案内エッジと同時に接触することにより案内され得るように前記案内エッジが構成され、それにより、歯構造の前記所定の部分を少なくとも部分的に案内除去できるようにするステップと、前記決定された案内エッジを有する前記決定されたオーバーレイを形成するステップとを含んでいる方法。
【選択図】図２

Description

本発明は、歯から歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイによって形成される歯科用工具を形成するための方法であって、
更なる治療のために前記歯を前処理するべく除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するステップと、
前記歯に嵌り且つ前記歯に隣接する歯の少なくとも一部に嵌るオーバーレイを決定するステップと、
前記所定の部分の少なくとも一部を除去するために歯科用切断工具が従うべき動きをシミュレートするステップと、
前記オーバーレイ内に第１の案内エッジを決定するステップであり、前記第１の案内エッジが前記動きに従う前記歯科用切断工具と接触するべく設けられ、それにより前記歯科用切断工具を所定の位置で案内すべく設けられるように、前記第１の案内エッジが前記動きに対応し、前記第１の案内エッジが案内手段の一部である、ステップと、
前記決定されたオーバーレイを前記案内手段を用いて形成するステップと、
を含む方法に関する。

また、本発明は、患者の歯から歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべき歯科用工具であって、更なる治療のために歯が前処理されるようになっており、前記歯科用工具が、
前記歯上にわたって解放可能に固定でき、且つ前記歯と前記歯に隣接する歯の少なくとも一部とに対して取り付くことができるような形状および寸法を有するオーバーレイと、
所定の動きに従う歯科用切断工具と接触するように設けられ、それにより、前記歯科用切断工具を所定の位置で案内するように設けられる前記オーバーレイ内の第１の案内エッジと、
を備える歯科用工具に関する。

従来のように、最初の外来診療中に、患者がクラウン、ブリッジ、オンレイ、インレイ、ベニア、または、他の修復補綴または他の歯科用補綴および／または審美的な歯治療を必要とする場合、歯医者は、患者のニーズを特定して、適切な治療を決定する。その後の通院中、歯が損傷したおよび／または感染した歯構造を備える場合には、歯医者は、この歯構造を除去するとともに、従来の技術を使用して歯をできる限り再構成する。その後、歯医者は、高速ドリルなどの歯科用切断工具を用いて、当初の歯構造および再構成された歯構造として解釈されるべき歯材料を除去することにより、更なる治療のために歯の最終的な前処理を行う。視力および技能を頼りにして、歯医者は、ドリルを使用して、更なる治療に適する形状、特にクラウン、ブリッジ、オンレイ、インレイ、ベニア、または、他の歯修復部品を取り付けることができる形状に歯を形成する。その後、歯医者は、前処理された歯が位置される歯列弓の印象をとって、その印象を歯科研究所へ送り、歯科技工士に修復部品を作らせる。前処理された歯の印象を使用して、歯科技工士は、色、幾何学的仕様、および、材料仕様と適合する修復部品を形成してそれを歯医者へ送る。患者の最後の診療において、歯医者は、修復部品を所定の位置に嵌める前に必要に応じて修復部品を調整している。

更なる歯科用工具がＥＰ１５４７５４４に開示されている。この歯科用工具は、治療に対する歯医者の経験および技能の影響を減少させるとともに、人工歯根洞を穿孔する際に歯医者により使用されている。ＥＰ１５４７５４４では、ドリルを真っ直ぐに案内するための円筒穴によって形成される案内手段が設けられている。このようにすると、経験が少ない歯医者であっても、人工歯根洞を高精度に穿孔することができる。また、最も最適な方法で空洞を顎骨に形成するために、コンピュータにより処理される情報に基づいて適切な歯根洞位置を計算することができる。

既知の歯科用工具の欠点は、顎骨に穴を穿孔する際に歯医者によって使用することしかできないという点である。この歯科用工具は、更なる治療のために歯を前処理する際に歯医者により使用されるのには適していない。

更なる歯科用工具は、考慮される近い従来技術であるＤＥ４０１２３２７に開示されている。この歯科用工具は、歯科用切断工具を所定の動きに沿って案内するための案内エッジを備えるテンプレートによって形成されている。案内エッジは、位置の他に歯科用切断工具の深さも案内され得るように所定の高さに設けられている。ＤＥ４０１２３２７は、人の口内にテンプレートを配置し、移動プレートを使用して歯科用切断工具の傾きを所定の傾きへと固定し、歯科用切断工具を案内エッジに沿って誘導し、所定の歯構造を除去することにより歯医者がどのようにテンプレートを使用できるのかを更に教示している。

この既知の歯科用工具の欠点は、移動プレートに起因して、傾きが所定の傾きで固定されるという点である。それにより、歯科用工具は、傾き変化も生じる複雑な動きで歯科用切断工具を案内することが不可能となる。特に歯などの複雑な表面を伴う作業では、そのような複雑な動きを行えることが好ましい。

本発明の目的は、複雑な動きに沿って歯科用切断工具を案内するのに適した歯科用工具を形成するための方法を提供することである。

この目的を達成するため、本発明に係る歯科用工具を形成するための方法は、
前記第１の案内エッジから少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ離間される第２の案内エッジを前記オーバーレイ内に決定するステップであって、前記第２の案内エッジが前記第１の案内エッジと同時に前記動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられるように前記第２の案内エッジが前記動きに対応し、それにより、前記第１および第２の案内エッジが所定の傾きで前記歯科用切断工具を案内するように設けられ、前記第２の案内エッジが前記案内手段の一部である、ステップを更に含んでいることを特徴とする。

オーバーレイ内に第２の案内エッジが存在することにより、歯科用切断工具の動きを所定の表面に沿って案内することができる。これに対し、従来技術では、工具の動きを所定の線に沿ってしか案内できない。また、第２の案内エッジが存在することにより、従来技術では不可能な歯科用切断工具の傾斜案内を得ることができる。第２の案内エッジの存在により、位置変化および傾き変化が生じる複雑な動きに沿って歯科用切断工具を案内することができる。

除去されるべき歯構造の所定の部分の決定は、これが歯医者の技能にもはや依存しないという効果を有する。歯科用切断工具と同時に接触するのに適する案内エッジを決定してオーバーレイに形成することにより、少なくとも部分的に予め決定される方法で切断工具を良好に決定される経路に沿って案内することができる。案内エッジを有するオーバーレイは、コンピュータにより決定されるように歯から除去されるべき部分を歯上に正確に示すことになる。また、本発明に係る工具は、該工具によって歯医者が歯構造の所定の部分の少なくとも一部を除去することが可能であるため、歯構造を除去する際に歯医者を支援すべく提供されている。

なお、嵌る（適合する）という用語は、オーバーレイが歯を緊密に取り囲むべきであるという狭い意味で解釈されるべきではない。また、この用語は、オーバーレイが歯と適切に接触するように歯を取り囲むべきであると解釈されるべきであり、そのため、オーバーレイが適用されると、オーバーレイの通常の使用に起因して特定の圧力が加えられる場合であってもオーバーレイが解放されない。

本発明の方法は、
少なくとも前記歯および前記隣接する歯の少なくとも前記一部の形状に関連する三次元データを取得するステップと、
前記オーバーレイのための重要な寸法および方向性を決定するためにコンピュータを用いて前記三次元データを処理するステップと、
前記三次元データを処理して前記所定の部分を決定するステップと、
を更に含んでいることが好ましい。

患者の個々の歯科状況に応じて、コンピュータは、更なる治療に適した形状へと歯を形成するための最適な方法を決定するようにプログラムされている。

本発明の好ましい実施形態において、前記第１の案内エッジおよび前記第２の案内エッジは、前記距離だけ互いに縦方向に離間される接触点で前記歯科用切断工具と同時に接触するように設計され、それにより、前記案内エッジは、それに沿って前記歯科用切断工具が案内されるべき案内面を画定している。

互いに縦方向に離間される接触点で２つの案内エッジを切断工具と同時に接触させることにより、切断工具を所定の方法で少なくとも部分的に案内することが可能となる。切断工具は、２つの案内エッジに沿って移動し、それにより、案内面を画定することが好ましい。この案内面は２つの案内エッジを備え、この案内面に沿って切断工具を案内できる。これは、２つの次元での正確な案内を可能にするものである。

好ましくは、前記案内手段が案内溝を備え、該案内溝は、前記オーバーレイの表面内で延在する経路を画定するとともに、歯構造の前記所定の部分を少なくとも部分的に案内除去できるように前記歯科用切断工具を前記経路に沿って案内するのに適している。

互いに間隔が隔てられる２つの案内エッジのうちの一方を経路の一方側に位置させ、案内エッジの他方を経路の他方側に位置させることが可能であり、それにより、２つの案内エッジ間に経路が画定されることになる。この目的のため、２つの案内エッジ間の距離は切断工具の直径にほぼ等しくなければならない。２つの案内エッジと同時に接触して経路に従う歯科用切断工具を使用すると、切断工具を少なくとも２つの次元で案内することができる。縦方向の切断工具を考慮すると、この形態で２つの案内エッジにより画定される表面は、切断工具の使用時の方向に対して略垂直である。切断工具の好ましい傾きは、この形態では、２つの案内エッジにより形成される面に対して垂直である。

互いに間隔が隔てられる２つの案内エッジをいずれも経路の一方側に位置させることも可能である。この場合、少なくとも第３の案内エッジが経路の他方側を画定することになる。この形態で縦方向の切断工具を考慮すると、２つの案内エッジにより画定される表面は、切断工具の使用時の方向に対して略平行である。この形態の第３の案内エッジは、切断工具に対して更なる案内を与え、それにより、歯構造の除去のプロセスの精度が高められることになる。この形態において２つの案内エッジと同時に接触して経路に従う歯科用工具を使用すると、切断工具を２つの次元で案内できるとともに、切断工具の傾きを案内できることになる。

該方法は、
前記歯の歯構造の所定の残存部分に嵌るように決定される内側形状と、残りの隣接する歯と適合するように決定される外側形状とを有する、歯修復部品を形成するステップを更に含んでいることが好ましい。

本発明に係る方法の利点は、歯構造の案内除去に起因して、前処理される歯の歯構造の残存部分の形状が予め知られているという点である。これは、仮のあるいは最終的なインレイ、オンレイ、ブリッジ、クラウン、または、ベニアを三次元データに基づいて予め形成するなど、更なる治療を向上させることになる。これにより、歯医者は１回の診療で歯を前処理できるとともに、前処理した歯に歯修復部品を取り付けることができるため、診療へ訪れる必要が殆どない。この作業方法は、時間、したがってコストを節約するだけでなく、患者にとっての不都合も大きく低減されることになる。また、前処理された歯が汚染される機会および結果として生じる合併症が最小限まで減少される。

該方法は、
前記歯の歯構造の所定の残存部分に嵌るように決定される内側形状と、残りの隣接する歯と適合するように決定される外側形状とを有する、歯修復部品をシミュレートするために前記三次元データを処理するステップと、
前記歯修復部品を形成するステップと、
を更に含んでいることが好ましい。

これにより、個別に設計される歯修復部品を本発明に係る歯科用工具と共に供給することができる。これは、歯科用工具を使用するときに前処理された歯の最終形状が予め知られるために可能である。その結果、修復部品を配置するために診療へ訪れる必要が殆どなくなる。

好ましくは、前記所定の部分は、
第１に、前記歯修復部品の外側形状をそれが残りの隣接する歯と適合するように決定するとともに、前記外側形状に適合する前記歯修復部品の内側形状を決定し、
第２に、残りの歯構造の形状を、前記内側形状を有する前記歯修復部品が残りの歯構造の前記形状に適合するように決定し、
第３に、前記所定の部分を、残りの歯構造の前記形状が残されるように除去されるべき歯構造の部分であるとして決定する、
ことによって決定される。

従来のように歯を前処理するのではなく、歯修復部品を決定することから始めると有利である。残りの隣接する歯と最適に適合するような外側形状を有する歯修復部品を決定することが可能である。そのような外側形状の決定のための手順は当業者に知られている。そして、内側形状が決定され、該内側形状は前記外側形状に適合することになる。適合するための基準は、使用されるべき材料によって決まり、強度パラメータ、製造パラメータ、および、歯および／または複数の歯に対する修復部品の取り付けに関連するパラメータと主に関係している。内側形状は、最小量の材料が歯修復部品を形成するために必要とされるように決定されるのが好ましい。これにより、この内側形状に適合することが求められる残存する歯構造は可能な限り大きく、すなわち、修復される歯の材料の多くが歯修復材料であればあるほど、その修復される歯の材料が歯構造であることが少なくなる。また、所定の部分を、残存する歯構造の前記形状が残されるように除去されるべき歯構造の部分であるとして決定できる。したがって、歯修復部品を最初に決定することにより、最小の歯構造が歯から除去されるようになり、当初の歯構造が最大限に保存されることになる。当初の歯構造の多くを維持することが最良であるため、これは利点である。

決定された外側形状および内側形状を有する決定された歯修復部品を歯科用工具と共に提供することにより、歯医者は１回の診療で歯を前処理できるとともに前処理した歯に歯修復部品を取り付けることができるため、診療へ訪れる必要が殆どなくなる。

好ましくは、前記歯科用工具が少なくとも１つの更なるオーバーレイを備え、前記オーバーレイおよび前記少なくとも１つの更なるオーバーレイは、歯構造を複数の段階で除去する際に歯科用工具を案内するように決定され、前記オーバーレイの前記案内手段は、前記複数の段階のうちの１つで前記切断工具を案内するように設けられ、前記少なくとも１つの更なるオーバーレイの少なくとも１つの更なる案内手段は、前記複数の段階のうちの少なくとも１つの更なる段階で前記切断工具を案内するように設けられ、該方法は、
前記歯に嵌り且つ前記隣接する歯の少なくとも一部に嵌る少なくとも１つの更なるオーバーレイを決定するステップと、
前記所定の部分の少なくとも１つの更なる部分を除去するために前記歯科用切断工具が従うべき少なくとも１つの更なる動きをシミュレートするステップと、
前記少なくとも１つの更なるオーバーレイ内に少なくとも１つの更なる第１の案内エッジを決定するステップであり、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられ、それにより前記歯科用切断工具を所定の位置で案内するべく設けられるように、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに対応し、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる案内手段の一部である、ステップと、
前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジから少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ離間される少なくとも１つの更なる第２の案内エッジを、前記少なくとも１つの更なるオーバーレイ内に決定するステップであって、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジと同時に前記少なくとも１つの更なる動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられるように、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに対応し、それにより、前記少なくとも１つの更なる第１および第２の案内エッジが所定の傾きで前記歯科用切断工具を案内するように設けられ、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる案内手段の一部である、ステップと、
前記少なくとも１つの更なるオーバーレイを前記少なくとも１つの更なる案内手段を用いて形成するステップと、
を更に含んでいる。

たった１つのオーバーレイではなく複数のオーバーレイを形成すると、歯科用工具を形成するための方法において更なる柔軟性が与えられることになる。前処理されるべき歯の異なる側に沿って歯科用切断工具を案内するための異なるオーバーレイを提供することができ、それにより、例えば、それぞれが円周経路の異なる円弧を画定する複数のオーバーレイを使用することにより円周経路を画定することができる。また、複数のオーバーレイは異なる歯科用切断工具を使用できるようにし、これは幾つかのケースで必要である。歯を複数の段階で前処理するための異なるオーバーレイを提供することができる。この場合、例えば、第１の段階は歯の上部を平滑にするために与えられ、第２および第３の段階は歯の縦方向側および横方向側を切り取るために与えられ、第４および第５の段階は歯の異なる側でそれぞれ縦方向側と横方向側との間のエッジに丸みをつけるために与えられる。歯を段階的に前処理することにより、特定の段階によって特徴付けられる特定の方法で切断工具を案内するために特に決定される案内エッジを有するそれぞれのオーバーレイを設計することが可能となる。

ここで、本発明の幾つかの好ましい実施形態を示す図面に関して、本発明を更に詳しく説明する。

本発明に係る案内溝を有するオーバーレイを示す平面図である。 患者の歯の上に配置される案内溝を有するオーバーレイを示す側面図である。 本発明の１つの実施形態に係る案内手段を有するオーバーレイの一部および切断工具を示す断面図である。 本発明の他の実施形態に係る案内手段を有するオーバーレイの一部および切断工具を示す断面図である。 本発明に係る案内手段を有するオーバーレイの一部および切断工具を示す断面図である。 本発明の更なる実施形態に係る案内手段を有するオーバーレイの一部および切断工具を示す断面図である。 クラウンまたはブリッジを取り付けるために歯を前処理する際に歯医者により使用されるべき一組のオーバーレイを示す概念図である。 図７ａに示されるオーバーレイを示す断面図である。

図中、同じ参照符号が同じあるいは類似の要素に割り当てられている。

用語「下側」、「上側」等、並びに、「水平」および「垂直」などの派生する方向を示す用語は、図示のオーバーレイの通常の形態に基づいており、この場合、オーバーレイは、それらの根元が垂直下方へ延在する状態で歯に嵌っている。この本文における歯医者という用語は、限定的に解釈されるべきではなく、歯科技工士、歯科助手、歯科補助者、歯科療法士、歯科デザイナ等として読み取ることが可能である。

本発明は、歯構造を除去する際に歯医者によって使用されるべきオーバーレイ１により形成される歯科用工具を形成するための方法を提供するものである。また、本発明は、この方法によって得ることができるオーバーレイ１を提供するものである。図１および図２は、患者の歯２に配置されるそのようなオーバーレイ１を示している。好ましくは、本発明は、歯科用工具を使用して前処理される歯に歯修復部品が嵌る態様で歯科用工具および歯修復部品を形成するための方法を提供するものである。

本発明に係る歯科用工具は、インレイおよびオンレイ、クラウン、ブリッジ、および、ベニアを配置するなどの修復のために歯を前処理する際に歯医者によって使用されるのが好ましい。そのような修復では、歯が前処理された後に歯に嵌るように形成されるべき修復部品を必要としている。本発明に係る歯科用工具を使用する結果、従来では前処理後にしか分からない前処理済みの歯の形状が予め決定されることになる。この認識に基づき、歯医者が歯を前処理し始める前であっても修復部品を歯医者が利用できるようにこの修復部品を予め形成することができ、また、修復部品を歯の前処理の直後に取り付けることができる。この結果、患者が不都合を被ることが殆どなく、特に、歯医者へ訪れる回数が減少される。また、前処理された歯が汚染される機会および結果として生じる合併症が最小限まで減少されることになる。

更なる治療のための歯の前処理は、ほぼ健康な歯に対して行なわれるのが好ましい。歯が損傷されあるいは感染されていると、歯の損傷されたおよび／または感染された部分を最初に除去しなければならず、また、更なる治療のために歯を前処理する前に歯を再構成しなければならないからである。これは、感染が歯修復部品下で起こる機会を最小限に抑えるためである。また、これは、歯修復部品の寿命を最大にし、歯修復部品のための土台が、すなわち歯が、損傷部をもはや含まないからである。

他の患者の歯の前処理時に、１つの歯のために作られるオーバーレイを利用することも想定し得る。この場合、そのような他の患者の歯は十分に類似する寸法および形状を有している。したがって、規格化され、再使用され、および／または、再形成され得る幾つかのオーバーレイを用意することは本発明の範囲内である。また、ほぼ同様の寸法および形状を有する新たなオーバーレイの設計および生成において、前のオーバーレイおよび修復部品の形成時に得られたデータを利用することも本発明の範囲内である。

患者の歯の状態から三次元データを取得するための幾つかの方法が知られている。そのようなデータは、例えば患者の歯の状態から撮られた写真を処理することによって回収することができる。他の方法は、歯の状態の物理的印象をとった後に、この印象または印象の反転された成型体を走査することである。そのような走査は、ＣＡＤ／ＣＡＭ ３Ｄ走査装置を用いて行うことができる。そのような装置の例示は、米国のマサチューセッツ州のウォバーンにあるＳｅｎｓＡｂｌｅ Ｔｅｃｈｎｏｌｏｇｉｅｓ社が提供するＦｒｅｅＦｏｒｍ（登録商標）である。そのような走査装置は約１０μｍの許容誤差をもって歯列弓のモデルを走査できるが、これは、印象をとって歯科印象を成型することにより得られる他のエラーファクタを考慮に入れていない。最終的な修復部品または歯科補綴の形成においては、これらの他のエラーファクタまたは許容誤差が考慮されなければならない。

ＣＡＤプログラムは、時としてリダクショントレイと称されるオーバーレイのための特別な形態を選択し、最終的には、歯科補綴を形成するための従前の経験に基づく特定のプロトコルを利用することにより前処理された歯のための形態を選択するものである。

本発明の１つの実施形態では、対象の歯に関するデジタルファイルをそのような補綴のための既存のデータベースと比較することが可能である。そのような例示的なデータベースは、ドイツのハーナウにあるＨｅｒａｅｕｓ Ｋｕｌｚｅｒ ＧｍｂＨのＨｅｒａｅｕｓ Ｋｕｌｚｅｒ Ｔｏｏｔｈ Ｌｉｂｒａｒｙから入手できる。このデータベースは、ＳｅｎｓＡｂｌｅ Ｄｅｎｔａｌ Ｌａｂ Ｓｙｓｔｅｍ（ＳＤＬＳ）にも組み込まれている。対象の歯に適した補綴に匹敵する補綴（例えば、クラウンまたはオンレイ）がＫｕｌｚｅｒデータベースから選択されている。その補綴情報は、補綴の内面に対応する前処理された歯における形態および寸法を含んでいる。その形成されるクラウンのためのＫｕｌｚｅｒデータベース内のこの内部構成は、患者の歯の前処理で用いるオーバーレイ（リダクショントレイ）を設計するために利用されている。オーバーレイの設計では、例えば最小限の当初の歯面を除去するために、当該技術分野において知られる基本的な原理および方針が利用されている。

例えば、一組のオーバーレイまたはリダクショントレイでは、内側および遠位端の面（前および後）の減少のための１つのオーバーレイまたはトレイと、咬合（上）面のための他のトレイとが存在する場合がある。また、歯の舌（べろ）側面および頬（ほお）側面をカットする２つの仕上げトレイが存在し得る。クラウンの形成のためには、歯肉縁用の更なるトレイが必要となる。

以上は、方法の典型的な使用について述べているが、歯科補綴または修復部品のその後の取り付けのために歯の前処理を行なうには、更に多いあるいは更に少ない数のリダクショントレイまたはオーバーレイが適する場合がある。歯の三次元データを取得した後、このデータがコンピュータにより処理され、それにより、患者の歯２に嵌るオーバーレイ１が決定されることになる。この目的を達成するため、オーバーレイの内側形状は、前処理されるべき歯の外側形状と、隣接する歯の少なくとも一部の外側形状とに対応することが好ましい。オーバーレイは、該オーバーレイが歯に配置されると、オーバーレイに十分高い力を加えるだけでオーバーレイが外れるように歯に嵌らなければならない。歯の前処理中、小さな力がオーバーレイに加えられる場合があり、それにより、好ましくは、歯に対するオーバーレイの位置が変えられてはならない。オーバーレイ１は、安定性および保護を目的として歯肉３の一部または隣接する歯の一部を覆うように歯２上にわたって延在することが好ましい。歯医者が歯材料を除去するためにオーバーレイ１を使用するときには、オーバーレイ１が安定した態様で歯に位置付けられることが有益である。一例として、歯、２つの隣り合う歯、および、歯肉３の一部に緊密に嵌るオーバーレイ１は、歯構造の除去中に歯医者がオーバーレイを安定した位置に配置して保持できるようになっている。オーバーレイ１が歯肉３の一部を覆うと、歯肉３の少なくともこの部分が歯構造を除去するプロセス中に保護されることになる。

なお、本発明に係るオーバーレイ１は、同時に複数の歯を覆うことができるとともに、１つの単一のオーバーレイ１を使用して複数の歯を前処理する際に歯医者により使用されるように設けられている。これは、ベニアを配置するために歯を前処理するプロセスにおいて有益である可能性がある。そのようなオーバーレイは、後述するように、前処理される必要があるそれぞれの歯ごとに案内手段を備えている。

決定されたオーバーレイ１は、主にその必要とされる強度に依存し、したがってそれを形成する材料にも依存する厚さ４を有している。本発明に係るオーバーレイ１は一定の全厚４を有することが可能である。ほぼ一定の全厚は、ベニアを配置するために１または複数の歯を前処理する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイにおいて好ましい。ブリッジまたはクラウンを配置するべく歯を前処理するために使用されるべきオーバーレイは、上側案内部５と下側支持部６とを備えていることが好ましい。オーバーレイ１の支持部６は、オーバーレイ１を安定した態様で歯２に配置できるようにし、一方、オーバーレイ１の案内部５は、歯科用切断工具を案内するとともに、歯中への切断工具の最大貫入深さを決定することが好ましい。この目的を達成するため、オーバーレイ１の案内部５の厚さは、後述するように案内手段７の決定と共にケースバイケースで決定されるのが好ましい。オーバーレイ１の支持部６の厚さ４は、歯医者の好みおよび／またはコンピュータのプログラミングに応じて更に自由に選択できる。

三次元データを取得した後、このデータは、歯医者により歯から除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するためにコンピュータにより処理される。所定の部分は、更なる治療を考慮して決定される。更なる治療を可能にするために前処理された歯の特定の形状が必要とされる場合には、歯の前処理後にこの特定の形状が残るように所定の部分が選択されることになる。

所定の部分の決定は、多くのパラメータに依存し、ケースごとに異なっている。パラメータは、患者の口内における歯の位置、損傷された歯構造の量および場所、その歯と隣接する歯との間の距離等である。好ましい実施形態において、コンピュータは、所定の部分を決定する際に、エナメル質、象牙質、歯髄質、セメント質などの歯の異なる部分も考慮に入れる。また、歯の前処理の実際のステップ前に従来の技術および材料によりオーバーレイを利用して患者の歯を作り上げなければならない場合があることも、本発明の一般的態様内で理解される。

本発明によれば、コンピュータは、歯の初期データの入力に関するものを除いて歯医者の助けを伴うことなく、除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するようにプログラムされることになる。しかしながら、また、本発明によれば、コンピュータは、歯医者と協働して所定の部分を決定するようにプログラムされ得る。この場合、例えば、歯医者は幾つかのパラメータを決める。この協働は、歯に関連するデータをコンピュータディスプレイ上に視覚化して、歯医者が少なくとも歯の前処理に関連する１つのパラメータを入力できるようにすることによって確立することが可能である。歯のプレビューは、前処理された歯に対する選択されたパラメータの影響を歯医者が見ることができるように、前処理された歯のシミュレーションのプレビューと共にコンピュータディスプレイ上に視覚化されることが好ましい。後者の特徴は、より大きな自由度を歯医者に与えるとともに、経験が少ない歯医者がコンピュータのデータに基づいて経験がある歯医者に対してあるケースに関して相談できるようにする。このように、本発明に係る歯科用工具を形成するための方法は、経験の少ない歯医者が、あたかも自分が経験豊富な歯医者であるかのように経験豊富な歯医者と同じ資質で更なる治療を決めて、更なる治療のために歯を前処理できるようにするものである。

他の実施形態において、コンピュータは、幾つかの段階で除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するようにプログラムされている。各段階の最後に、コンピュータは、シミュレートされた解決策を歯医者に提案するとともに、提案された解決策の承認または修正を求めるものである。

所定の部分は、幾つかのステップで決定されるのが好ましい。第１のステップでは、歯修復部品が残存する歯と適合して患者の歯列弓に嵌り込むように歯修復部品の外側形状が決定されるようになっている。バイトリフト（ｂｉｔｅ ｌｉｆｔ）または他の矯正的な修正を外側形状の設計に直接に組み込むことが可能である。その後、この決定された外側形状に基づいて、外側形状に適合する内側形状が決定されることになる。そのようにして、最適な外側形状を有し、且つそれが十分に強力で最低限の材料が必要とされるという意味で最適な構造を有する、歯修復部品を決定することが可能である。以降のステップでは、歯構造の除去後に歯修復部品の内側形状が残存する歯構造に嵌るように、残存する歯構造の形状が決定されるようになっている。最後のステップでは、歯構造の所定の部分が、残存する歯構造の形状が残されるように除去されるべき歯構造の部分として決定される。この作業方法は、最良の適したプログラムを使用して歯修復部品の外側形状を決定することになる。従来、歯医者は、前述したような一連のステップに従っていない。歯医者は逆さまに作業する。これは、歯医者が修復部品の内側形状を決定するために前処理された歯の形状を知る必要があり、その後に、歯医者が適切な外側形状を決定するからである。本発明の好ましい実施形態にしたがって歯修復部品を最初に決定すると、最低限の歯構造が歯から除去されるようになり、当初の歯構造を最大限に保つことが可能となる。

所定の部分が決定されると、案内手段を決定することが可能となる。案内手段の目的は、シミュレートされた動きに沿って歯科用切断工具、すなわち、ドリルを案内することであり、それにより、切断工具は所定の部分の少なくとも一部を除去するものである。この目的を達成するため、言うまでもなく、幾つかのケースでは、長さ、直径、断面形状などの歯科用切断工具の寸法が決定されており、その寸法において、歯構造の特定の部分を除去すべく切断工具により動きがなされるようになっている。また、言うまでもなく、多くのケースにおいて、所定の部分の全てを除去するためには１つの単一の動きでは不十分である。コンピュータ計算および／またはシミュレーションにより、１つ以上の動きをシミュレートして、歯構造の所定の部分を除去することが可能となる。この文脈における動きが、二次元位置に関連するだけでなく、水平動、垂直動、および、傾動などその全ての局面における切断工具の動きに関連することは言うまでもない。

本発明に係る案内手段は、少なくとも２つの案内エッジ１１，１２（図３〜図６）を備える。これらの２つの案内エッジ１１，１２は、少なくとも０．５ｍｍの距離ｄをもって互いに離間される。案内エッジ１１，１２は、切断工具１０と同時に接触するように設けられ、それにより、切断工具１０を少なくとも部分的に所定の動きへと案内している。この文脈において、少なくとも０．５ｍｍの長さと幅とを有する表面を前記少なくとも２つの案内エッジ１１，１２と見なすことができることは言うまでもない。すなわち、表面の２つの外側エッジは、切断工具１０と同時に接触するように設けられているとともに、少なくとも０．５ｍｍの距離ｄをもって離間されている。

案内エッジ１１，１２は、歯科用切断工具のシミュレートされた動きに対応して決定され、それにより、両方の案内エッジ１１，１２がその動きに従う切断工具と同時に接触することになる。案内エッジは、切断工具と好ましくは動きの全体にわたって同時に絶えず接触することが好ましい。案内エッジと動きに沿う切断工具との間の接触は、接触点であることが好ましい。

２つの案内エッジ１１，１２は、少なくとも１ｍｍの距離ｄをもって互いに離間されているのが好ましく、より好ましくは少なくとも２ｍｍの距離をもって、最も好ましくは少なくとも３ｍｍの距離をもって離間されている。２つのエッジ１１，１２間の距離ｄを増大させると、歯医者が大きい案内手段にわたって切断工具１０を非常に容易に制御できるため、案内の質が高まる。

案内エッジ１１，１２は、２つの接触点で切断工具と同時に接触するように設けられている。図３に示されるように、切断工具１０上にあると見なされるこれらの接触点１１，１２は、縦方向に距離ｄだけ離間されていることが好ましい。切断工具１０が案内エッジに対して略垂直に配置されると、接触点間の距離は案内エッジ間の距離ｄとほぼ同じになる。図３は、２つの案内エッジ１１，１２に対して同時に接触して位置する切断工具１０を示している。この形態の案内エッジ１１，１２は、それに沿って切断工具１０を案内できる表面を画定している。

しかしながら、案内エッジ１１，１２は、図４に示されるように、それぞれが切断工具１０の一方側に位置される２つの接触点で切断工具１０と同時に接触することも可能となっている。この形態では、案内エッジ１１，１２は、切断工具１０を案内できる案内溝を画定している。案内溝７は、オーバーレイ１の上面に横たわる経路を画定するように決定されるのが好ましい。溝７は、この経路に沿って歯科用切断工具を案内するために設けられ、これを達成するため、溝７は、オーバーレイを貫通して延在して、オーバーレイの内側と外側環境との間の連通部を形成する。所定の部分を除去するために複数の経路に従わなければならない場合には、複数の案内溝７が決定されなければならない。

前述したこれらの２つの形態の組み合わせが、図５に示されている。この図では、離間される２つの案内エッジである第１の案内エッジ１１および第２の案内エッジ１２を左側に見ることができ、これらのエッジは案内面を画定している。第３の案内エッジ１３を右側に見ることができ、このエッジは、第１の案内エッジ１１および第２の案内エッジ１２と共に１つの経路を画定している。したがって、この形態により、切断工具を水平動および傾動の両方へと案内することが可能である。

図５から分かるように、切断工具１０は、該切断工具１０に取り付けられるカラー１４を備えていることが好ましい。好ましくは、案内エッジ１１，１２，１３のうちの少なくとも１つは、切断工具１０のカラー１４を案内するために設けられ、それにより、切断工具１０を所定の垂直位置あるいは高さあるいは深さへと案内している。図５から分かるように、水平経路を画定する案内溝７は、切断工具のそれぞれの水平位置ごとに所定の高さ８を更に画定し、それにより、切断工具１０を水平経路に沿っておよび所定の傾きで案内するとともに、切断工具を垂直方向に案内している。

図６は、図３に示される実施形態の変形例であって、互いに長手方向に間隔が隔てられる２つの接触点で切断工具と同時に接触するように設けられる案内エッジ１１，１２を示している。この実施形態では、２つの案内エッジ１１，１２間に配置される歯構造を除去可能である。特に、ベニアを配置するために歯を前処理する際に、この実施形態が使用されている。

クラウンまたはブリッジを取り付けるために、歯は、丸みを帯びたエッジを有する角錐台へと形成されなければならない。この目的を達成するため、歯の外側の上側部分を除去するようにしている。歯構造のこの除去は、本発明に係る歯科用工具によって案内されるようになっている。

クラウンまたはブリッジを取り付けるべく歯を前処理するための歯構造の除去は、図７に示される幾つかの段階で行われるのが好ましい。図７ａおよび図８に示される第１の段階では、歯の上部が平滑にされる。これは、図６に示されるように、案内エッジ１１，１２を有するオーバーレイを使用して行うことができる。しかしながら、実際には、上部がＶ形状へと形成されるのが好ましい。このため、図３に示されるような２つの案内手段を使用して上部が平滑化されている。これらの案内手段は、前記上部をＶ形状へと切断するために、前記切断工具を案内すべく設けられるように歯の両側に配置されている。

図７ｂおよび図７ｃに示される第２および第３の段階では、歯の縦方向側および横方向側が切断されて、角錐台形状が得られる。これらの側の切断は、図３、４または好ましくは図５に示されるような案内手段を有するオーバーレイによって案内されるようになっている。好ましくは、１つのオーバーレイは、それぞれがオーバーレイの表面内で延在する経路を画定する２つのそのような案内手段を備えており、これらの経路は互いに平行に延在し、それぞれが歯の一方側にある。

図７ｄおよび図７ｅに示される第４および第５の段階では、角錐のエッジが丸められている。これらのエッジの丸み付けは、図１および図２に示されるようなオーバーレイによって案内されている。そのようなオーバーレイは、オーバーレイの表面内で延在して円の円弧を画定する経路を備えている。経路のそれぞれの側は、図３に示されるように、少なくとも２つの案内エッジを有する案内面によって画定されている。オーバーレイ１の案内部５の高さは、所定の垂直位置で切断工具１０を案内するように画定されている。

この一連の段階では、第１の段階を第１の段階としてではなく最後の段階として実行できる。しかしながら、試験により、歯を前処理するプロセスでは、歯の上部を平滑にすることから始めるのが有益であることが分かった。

オーバーレイ１および案内手段が決定されると、決定された案内手段を有する決定されたオーバーレイ１を形成することが可能となる。これは、ＣＡＤ／ＣＡＭシステム、高速プロトタイピング、または、３Ｄ印刷などの任意の既知の手段によって行なうことができる。複数の案内手段が決定されると、それぞれが１つ以上の案内手段を備える複数のオーバーレイ１を形成することが可能である。好ましくは、高速プロトタイピング装置は、約３０μｍの許容誤差をもってオーバーレイを形成している。

オーバーレイ１は、既に先で述べたように、下側支持部６と上側案内部５とを有している。図から分かるように、案内部５は、経路の高さ８を画定して切断工具を垂直方向に案内できるようにする特定の厚さ８を有している。支持部６および／または案内部５は、側部から案内溝７へと向かう垂直開口９を備えていることが好ましく、該垂直開口は、歯科用切断工具のための案内溝７への入口としての機能を果たすべく設けられている。特に、切断工具の主要部の直径よりも大きい直径を有する先端部を切断工具が有する場合、例えばボールの形態を成す先端を有する高速ドリルの場合に、この開口が有益である。そのような切断工具をオーバーレイの上部を介して案内溝７へ入れると、案内溝７の少なくとも一部が広がり、それにより、切断工具を所定の経路に沿って確実に案内できるその可能性が少なくとも部分的に奪われる。また、側方入口９は上部を介した入口よりも好ましい。これは、切断工具を制御された態様で案内溝７へ入れることが容易だからである。

水平面内で円形経路を形成するように案内溝７が決定される場合には、この経路を幾つかの円弧に分割して、それぞれがこの経路の１つの円弧に対応する案内溝７を有する複数のオーバーレイ１を形成することが好ましい。これは、この円形経路にしたがって歯構造を除去するために、歯医者により順次に使用され得る一組のオーバーレイ１をもたらすからである。オーバーレイ１の組のそれぞれのオーバーレイ１は、歯の特定の側に沿って切断工具を案内している。

歯修復部品の形状に基づいて所定の部分が決定されない実施形態では、歯修復部品の形状をコンピュータのデータに基づいて決定することが可能である。歯修復部品の外側形状を幾つかの方法で決定することができ、これらの方法の全ては当業者に知られている。バイトリフトまたは他の矯正的な修正を外側形状の設計に直接に組み込むことができる。第１の可能性は、歯修復部品をそれが当初の歯の外側形状に似るように形成することである。第２の可能性は、歯修復部品をそれが隣接する歯と適合するように形成することである。第３の可能性は、第１および第２の可能性の組み合わせであり、隣接する歯と良好に適合するように当初の歯の形状を変更するものである。歯修復部品の内側形状は、歯の前処理のシミュレーションに基づいて決定される。歯が案内される態様で前処理されるため、前処理される歯が何の形状を有するかが予め知らされる。歯修復部品の内側形状は、それが前処理された歯の形状に適合するように選択されることになる。

本発明に係る方法は、歯修復部品を形成するステップを更に含んでいることが好ましい。

所定の部分の決定と同様に、歯医者との交流を何ら伴うことなく歯修復部品をコンピュータによって決定することができる。しかしながら、例えば前述したように、コンピュータが歯医者と協働して歯修復部品を決定することが好ましい。歯修復部品を決定するこのプロセスにおいて、コンピュータは、所定の臨床チェックを行って、歯修復部品が標準的な規準を満たさない場合に歯医者に警告することができる。これにより、歯医者は、迅速且つ信頼できる態様で歯修復部品を設計することが可能となる。

歯修復部品の形成は、ＣＡＤ／ＣＡＭシステムなどの当業者に知られる任意の手段によって行うことができる。

Claims (15)

1. 歯から歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイ（１）によって形成される歯科用工具を形成するための方法であって、
   更なる治療のために前記歯を前処理して除去されるべき歯構造の所定の部分を決定するステップと、
   前記歯に嵌り且つ前記歯に隣接する歯の少なくとも一部に嵌るオーバーレイ（１）を決定するステップと、
   前記所定の部分の少なくとも一部を除去するために歯科用切断工具が従うべき動きをシミュレートするステップと、
   前記オーバーレイ（１）内に第１の案内エッジ（７）を決定するステップであり、前記第１の案内エッジが前記動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられ、それにより前記歯科用切断工具を所定の位置で案内すべく設けられるように、前記第１の案内エッジが前記動きに対応し、前記第１の案内エッジが案内手段の一部である、ステップと、
   前記決定されたオーバーレイを前記案内手段を用いて形成するステップと、
   を含む方法において、
   前記第１の案内エッジから少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ離間される第２の案内エッジを前記オーバーレイ内に決定するステップであって、前記第２の案内エッジが前記第１の案内エッジと同時に前記動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられるように前記第２の案内エッジが前記動きに対応し、それにより、前記第１および第２の案内エッジが所定の傾きで前記歯科用切断工具を案内するように設けられ、前記第２の案内エッジが前記案内手段の一部である、ステップを更に含んでいることを特徴とする、方法。
2. 少なくとも前記歯および前記隣接する歯の少なくとも前記一部の形状に関連する三次元データを取得するステップと、
   前記オーバーレイ（１）を決定するためにコンピュータを用いて前記三次元データを処理するステップと、
   前記三次元データを処理して前記所定の部分を決定するステップと、
   を更に含んでいる、請求項１に記載の方法。
3. 前記第１の案内エッジおよび前記第２の案内エッジは、前記距離ｄだけ互いに縦方向に離間される接触点で前記歯科用切断工具と同時に接触するように決定され、それにより、前記案内エッジは、それに沿って前記歯科用切断工具が案内されるべき案内面を画定することを特徴とする、請求項１または請求項２に記載の方法。
4. 前記案内手段が案内溝を備え、該案内溝は、前記オーバーレイの表面内で延在する経路を画定するとともに、歯構造の前記所定の部分を少なくとも部分的に案内除去できるように前記歯科用切断工具を前記経路に沿って案内するのに適していることを特徴とする、請求項１から請求項３のいずれか一項に記載の方法。
5. 前記歯の歯構造の所定の残存部分に嵌るように決定される内側形状と、残りの隣接する歯と適合するように決定される外側形状とを有する、歯修復部品を形成するステップを更に含んでいることを特徴とする、請求項１から請求項４のいずれか一項に記載の方法。
6. 前記歯の歯構造の所定の残存部分に嵌るように決定される内側形状と、残りの隣接する歯と適合するように決定される外側形状とを有する、歯修復部品をシミュレートするために前記三次元データを処理するステップと、
   前記歯修復部品を形成するステップと、
   を更に含んでいることを特徴とする、請求項２から請求項４のいずれか一項に記載の方法。
7. 前記所定の部分および前記歯修復部品は、
   第１に、前記歯修復部品の外側形状をそれが残りの隣接する歯と適合するように決定するとともに、前記外側形状に適合する前記歯修復部品の内側形状を決定し、
   第２に、残りの歯構造の形状を、前記内側形状を有する前記歯修復部品が残りの歯構造の前記形状に適合するように決定し、
   第３に、前記所定の部分を、残りの歯構造の前記形状が残されるように除去されるべき歯構造の部分であるとして決定する、
   ことによって決定されることを特徴とする、請求項６に記載の方法。
8. 前記歯科用切断工具が切断部とカラーとを備え、前記第１および第２の案内エッジのうちの一方は、前記歯科用切断工具を所定の深さへと案内できるように前記カラーをそれに沿って案内すべく設計されていることを特徴とする、請求項１から請求項７のいずれか一項に記載の方法。
9. 前記歯科用工具が少なくとも１つの更なるオーバーレイを備え、前記オーバーレイおよび前記少なくとも１つの更なるオーバーレイは、歯構造を複数の段階で除去する際に歯科用工具を案内するように決定され、前記オーバーレイの前記案内手段は、前記複数の段階のうちの１つで前記切断工具を案内するように設けられ、前記少なくとも１つの更なるオーバーレイの少なくとも１つの更なる案内手段は、前記複数の段階のうちの少なくとも１つの更なる段階で前記切断工具を案内するように設けられ、
   前記歯に嵌り且つ前記隣接する歯の少なくとも一部に嵌る少なくとも１つの更なるオーバーレイを決定するステップと、
   前記所定の部分の少なくとも１つの更なる部分を除去するために前記歯科用切断工具が従うべき少なくとも１つの更なる動きをシミュレートするステップと、
   前記少なくとも１つの更なるオーバーレイ（１）内に少なくとも１つの更なる第１の案内エッジ（７）を決定するステップであり、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに従う前記歯科用切断工具と接触するべく設けられ、それにより前記歯科用切断工具を所定の位置で案内するべく設けられるように、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに対応し、前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる案内手段の一部である、ステップと、
   前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジから少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ離間される少なくとも１つの更なる第２の案内エッジを、前記少なくとも１つの更なるオーバーレイ内に決定するステップであって、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる第１の案内エッジと同時に前記少なくとも１つの更なる動きに従う前記歯科用切断工具と接触すべく設けられるように、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる動きに対応し、それにより、前記少なくとも１つの更なる第１および第２の案内エッジが所定の傾きで前記歯科用切断工具を案内するように設けられ、前記少なくとも１つの更なる第２の案内エッジが前記少なくとも１つの更なる案内手段の一部である、ステップと、
   前記少なくとも１つの更なるオーバーレイを前記少なくとも１つの更なる案内手段を用いて形成するステップと、
   を更に含んでいることを特徴とする、請求項１から請求項８のいずれか一項に記載の方法。
10. 前記オーバーレイおよび前記少なくとも１つの更なるオーバーレイは、クラウンまたはブリッジまたはオンレイを配置するために歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイの組を形成し、オーバーレイの前記組が５つのオーバーレイを備え、
    第１のオーバーレイは、歯の上部を滑らかにすべく歯科用切断工具を案内し、それにより、残りの歯構造の所望の高さを考慮するように決定され、
    第２のオーバーレイは、歯の縦方向側または横方向側のうちの一方を切り取るべく歯科用切断工具を案内するように決定され、
    第３のオーバーレイは、歯の縦方向側または横方向側のうちの他方を切り取るべく歯科用切断工具を案内するように決定され、
    第４のオーバーレイは、歯の一方側で歯の縦方向側と横方向側との間のエッジを丸み付けるべく歯科用切断工具を案内するように決定され、
    第５のオーバーレイは、歯の他方側で歯の縦方向側と横方向側との間のエッジを丸み付けるべく歯科用切断工具を案内するように決定される、
    ことを特徴とする、請求項９に記載の方法。
11. 前記オーバーレイが高速プロトタイピングによって形成されることを特徴とする、請求項１から請求項１０のいずれか一項に記載の方法。
12. 前記距離ｄは、少なくとも１ｍｍ、好ましくは少なくとも２ｍｍ、より好ましくは少なくとも３ｍｍ、最も好ましくは少なくとも４ｍｍであることを特徴とする、請求項１から請求項１１のいずれか一項に記載の方法。
13. 患者の歯から歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべき歯科用工具（１）であって、更なる治療のために該歯が前処理されるようになっており、
    前記歯と前記歯に隣接する歯の少なくとも一部とに対して解放可能に固定できるような形状および寸法を有するオーバーレイと、
    所定の動きに従う歯科用切断工具と接触するように設けられ、それにより、前記歯科用切断工具を所定の位置で案内するように設けられる前記オーバーレイ内の第１の案内エッジと、
    を備える歯科用工具（１）において、
    前記オーバーレイ内の第２の案内エッジを備え、前記第２の案内エッジが少なくとも０．５ｍｍの距離ｄだけ前記第１の案内エッジから離間され、前記第２の案内エッジは、前記第１の案内エッジと同時に前記所定の動きに従う前記歯科用切断工具と接触するように設けられ、それにより、前記第１および第２の案内エッジが所定の傾きで前記歯科用切断工具を案内するように設けられていることを特徴とする、歯科用工具。
14. 患者の歯から歯構造を除去する際に歯医者により使用されるべきオーバーレイ（１）の組であって、更なる治療のために該歯が前処理されるようになっており、オーバーレイ（１）の前記組が請求項９または請求項１０に記載の方法によって得られる、オーバーレイ（１）の組。
15. 請求項１３または請求項１４に記載のオーバーレイを使用して更なる治療のために歯を前処理するための方法。

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