JP2012516445A - 体液における新生児敗血症の検出のためのバイオマーカー - Google Patents

体液における新生児敗血症の検出のためのバイオマーカー Download PDF

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Abstract

本発明は、大規模プロテオミクス手法を使用した新生児敗血症の体液バイオマーカーの同定及び検出に関する。

Description

本発明は、大規模プロテオミクス手法を用いた、体液における新生児敗血症及び新生児敗血症関連の合併症のバイオマーカーの同定と検出に関する。
(関連技術の説明)
敗血症は、新生児集中治療が行われる新生児の深刻な問題である。敗血症は、死亡率、羅病率及び病院滞在の長期化の増加と関係している。ゆえに、この感染者及び財政上のコストは高い。可能性のある(「除外される」又は「予測される」)早発性敗血症は、依然として新生児集中治療室(NICU)に入れられる最も一般的な診断である。早発性敗血症の割合は、未熟児及び低体重児の程度により増加するが、特定の研究室レベルの検査では、「真の」血流感染を有するために抗生物質の全部により治療される必要がある患者を同定できるほど十分に正確であることが示されなかった。その結果、抗生物質は「確認された」敗血症の割合の何倍も使用されることが多く、これらの薬剤の濫用により新生児集中治療室における耐性有機体が容易に増殖する。(Clarke 2004)。加えて、入院が長引くとNICUでの治療費が莫大となり、その後の院内感染性微生物から院内敗血症のリスクが上がる。
疾患管理及び予防についての米国保険社会福祉省は、早発性感染を生後72時間以内に起こる入院中の感染と定義し、遅発性感染はこの期間後に生じるものと定義している。(Lopez 2002)。院内感染は、遅発性又は生後72時間後の感染と同等である。(Craft 2001)。感染率は、入院患者の割合、新生児の割合、又は、1000入院日数あたりの感染数によって定められうる。早発性感染率は、常に1000新生児出生あたりおよそ2である。予定日前の新生児の20%〜30%が2以上の院内感染発症を有しうるので、入院日数あたりの感染率はおそらく遅発性感染の大きさをより正確に示すのに対して、患者群あたりの割合(患者、新生児、出生時体重範囲、妊娠年齢の範囲)は感染又は発症率の良い情報となる。
新生児集中治療室(NICU)の院内又は遅発性発症の感染率は過去10年にわたって増加している。(Craft 2001, Zafar 2001)。患者あたりの院内感染を発症する新生児の総数は6.2%(Ferguson 1996)から33%(Hentschel 1999)であるか、1000入院日数あたりの総感染として報告される場合には、割合は4.8(Ferguson 1996)から22(Drews 1995)で変化する。血流感染(院内敗血症)は3%から28%の患者で変化する。(Ferguson 1996, Hentschel 1999, Berger 1998, Horbar 2001, Nagata 2002)。感染率の変動は、在胎月齢、報告のために調査を受ける乳児の分布、及び特定の環境及び診療に依存する。(Gaynes 1996)。
真の早発性敗血症の診断のための究極の判断基準は、公知の病原体について陽性である血液培養物の発見にある。一般に、新生児が臨床経過及び1mL以上の体積の陽性血液培養物において以下の少なくとも2の特徴を有する場合に、早発性敗血症の存在が考慮される。
1)熱>100.4華氏度、労働中の長時間(>12時間継続)の早期破水、又は推定絨毛羊膜炎の母性既往歴。
2)分娩時に悪臭があるか又は化膿が見られる羊水。
3)低5分のアプガースコア(<6)、蒼白、チアノーゼ、低血圧、頻呼吸、頻脈、仮死、腹部膨張、摂食低下又は無気力といった所見の何れかを含む、敗血症に一致する臨床所見。
4)CBC<8000/mm3又は>35000/mm3上のWBC数;I:T好中球数>2;CRP>8;又は、胸部X線上の肺炎を含む確証研究室データ。
これは、早期の治療を容易にするために、早発性新生児敗血症及び新生児敗血症関連の合併症を有する被検体を同定することが可能となる、分娩時に得られた体液内での敗血症関連のバイオマーカーの同定が必要とされていることを示す。新生児敗血症及びその関連の羅病率のリスクの低減は、リスクがある患者の早期発見に左右されるであろう。
一態様では、本発明は、哺乳動物被検体における新生児敗血症の診断方法であって、(a)C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2 (配列番号:13)、炭酸脱水酵素2 (配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質 (配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質 (配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質 (配列番号:30)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質 (配列番号:31)、タンパク質FAM3C前駆物質 (配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1 (配列番号:34)、アミノペプチダーゼN (配列番号:35)、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質 (配列番号:36)、細胞接着分子1前駆物質 (配列番号:37)、カテプシンB前駆物質 (配列番号:38)、エキソストシン2 (配列番号:39)、カテプシンD前駆物質 (配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質 (配列番号:41)、シスタチン-M前駆物質 (配列番号:42)、ノエリン前駆物質 (配列番号:43)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質 (配列番号:44)、エンドプラスミン前駆物質 (配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質 (配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質 (配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝 (配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質 (配列番号:50)、セプラーゼ (配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質 (配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質 (配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質 (配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質 (配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質 (配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質 (配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質 (配列番号:59)、punc e11隣接前駆物質 (配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA (配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2 (配列番号:62)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、α-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)、ストレス誘発性リン酸化タンパク質1 (配列番号:63)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、(b)前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む方法を提供する。
ある実施態様では、この方法は、何れかの組合せで、列挙したタンパク質の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7などのレベルを試験することを含む。
特定の実施態様では、被検体はヒト患者である。
ある実施態様では、体液は、臍帯血、脳脊髄液及び新生児血清からなる群から選択される。特定の実施態様では、体液は臍帯血である。
他の実施態様では、診断は生後24時間に決定される。
一実施態様では、試験は、前記タンパク質のレベルを決定するのに適した装置を使用して実施される。他の実施態様では、試験は、適切なプロセッサーによって実行されるソフトウエアプログラムを用いて実施される。ある実施態様では、プログラムは、有形の媒体に格納されるソフトウェアに統合されている。特定の他の実施態様では、有形の媒体は、CD−ROM、フロッピーディスク、ハードディスク、DVD及びプロセッサーに付属するメモリーからなる群から選択される。
ある実施態様では、本発明の方法は、試験又は診断の結果を記録するレポートを作成する工程を更に含む。一実施態様では、レポートは有形の媒体に記録されるか又は格納される。特定の実施態様では、有形の媒体は紙である。他の実施態様では、有形の媒体は、CD−ROM、フロッピーディスク、ハードディスク、DVD及びプロセッサーに付属するメモリーからなる群から選択される。
特定の他の実施態様では、本発明の方法は、利害関係のある関係者に前記診断の結果を伝える工程を更に含む。一実施態様では、利害関係者は患者又は主治医である。他の実施態様では、伝達は、書面で、電子メール又は電話によるものである。
一実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)なるタンパク質のレベルを試験することと、前記の試験したタンパク質の一又は複数が正常臍帯血と比較して臍帯血試料において有意差を示す場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することとを含む。特定の実施態様では、この方法は、前記試験したすべてのタンパク質が正常な臍帯血と比較して臍帯血試料において有意差を示す場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む。
一実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びインターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)なるタンパク質のレベルを試験することと、前記の試験したタンパク質の一又は複数が正常臍帯血と比較して臍帯血試料において有意差を示す場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することとを含む。他の実施形態では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びC反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びβ-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びカテプシンB前駆物質(配列番号:38)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びシスタチン-M前駆物質(配列番号:42)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びインスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びメタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。更に他の実施態様では、この方法は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)なるタンパク質のレベルを試験することを含む。
ある実施態様では、列挙したタンパク質のレベルは、イムノアッセイ、質量分析、又は、タンパク質アレイを用いて決定される。
他の態様では、本発明は、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2(配列番号:13)、炭酸脱水酵素2(配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質(配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質(配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質(配列番号:30)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、タンパク質FAM3C前駆物質(配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1(配列番号:34)、アミノペプチダーゼN(配列番号:35)、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:37)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、エキソストシン2(配列番号:39)、カテプシンD前駆物質(配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質(配列番号:41)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、ノエリン前駆物質(配列番号:43)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、エンドプラスミン前駆物質(配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質(配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質(配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝(配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質(配列番号:50)、セプラーゼ(配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質(配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質(配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質(配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質(配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質(配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質(配列番号:59)、punc e11 隣接前駆物質(配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA(配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2(配列番号:62)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、α-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)、及びストレス誘発性リン酸化タンパク質1(配列番号:63)からなる群から選択される何れかのタンパク質の一又は複数の、被検体の新生児敗血症の早期診断のための体液のプロテオミクスプロファイルの製造における使用を提供する。
ある実施態様では、このプロテオミクスプロファイルは、何れかの組合せで、前記のタンパク質の少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7などのレベルの情報を含む。
特定の実施態様では、被検体はヒト患者である。
ある実施態様では、体液は、臍帯血、新生児血清及び脳脊髄液からなる群から選択される。特定の実施態様では、体液は臍帯血である。
一実施態様では、プロテオミクスプロファイルは前記タンパク質のレベルの情報を含み、前記の試験したタンパク質の一又は複数が正常な体液と比較して体液試料における有意差を示す場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断する。
他の実施態様では、診断は生後24時間の以内に決定される。
一実施態様では、プロテオミクスプロファイルは、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)なるタンパク質のレベルの情報を含み、このとき試験したタンパク質の一又は複数が正常な体液と比較して体液試料において有意差を示す場合に、前記被検体が新生児敗血症と診断される。特定の実施態様では、前記の試験したすべてのタンパク質が正常体液と比較して体液試料において有意差を示す場合に、前記被検体が新生児敗血症と診断される。
ある実施態様では、列挙したタンパク質のレベルは、イムノアッセイ、質量分析、又は、タンパク質アレイを用いて決定される。
さらに他の態様では、本発明は、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2(配列番号:13)、炭酸脱水酵素2(配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質(配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質(配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質(配列番号:30)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、タンパク質FAM3C前駆物質(配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1(配列番号:34)、アミノペプチダーゼN(配列番号:35)、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:37)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、エキソストシン2(配列番号:39)、カテプシンD前駆物質(配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質(配列番号:41)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、ノエリン前駆物質(配列番号:43)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、エンドプラスミン前駆物質(配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質(配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質(配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝(配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質(配列番号:50)、セプラーゼ(配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質(配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質(配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質(配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質(配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質(配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質(配列番号:59)、punc e11 隣接前駆物質(配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA(配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2(配列番号:62)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、α-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)、及びストレス誘発性リン酸化タンパク質1(配列番号:63)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質の検出のための抗体と試薬を具備するイムノアッセイキットを提供する。
他の態様では、本発明は、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質の検出のための抗体と試薬を具備するイムノアッセイキットを提供する。
一実施態様では、イムノアッセイキットは、列挙したタンパク質すべてを検出するための抗体と試薬を具備する。
さらに他の態様では、本発明は、(a)C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2(配列番号:13)、炭酸脱水酵素2(配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質 (配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質(配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質 (配列番号:30)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質 (配列番号:31)、タンパク質FAM3C前駆物質 (配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1(配列番号:34)、アミノペプチダーゼN(配列番号:35)、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:37)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、エキソストシン2(配列番号:39)、カテプシンD前駆物質(配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質 (配列番号:41)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、ノエリン前駆物質(配列番号:43)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、エンドプラスミン前駆物質(配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質(配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質(配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝(配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質(配列番号:50)、セプラーゼ(配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質(配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質(配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質(配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質(配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質(配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質(配列番号:59)、punc e11 隣接前駆物質(配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA(配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2(配列番号:62)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、α-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)、ストレス誘発性リン酸化タンパク質1(配列番号:63)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、(b)前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む試験の結果及び/又はその試験に基づいた診断を含むレポートを提供する。
さらに別の態様では、本発明は、(a)C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2(配列番号:13)、炭酸脱水酵素2(配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質 (配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質(配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質 (配列番号:30)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質 (配列番号:31)、タンパク質FAM3C前駆物質 (配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1(配列番号:34)、アミノペプチダーゼN(配列番号:35)、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:37)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、エキソストシン2(配列番号:39)、カテプシンD前駆物質(配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質 (配列番号:41)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、ノエリン前駆物質(配列番号:43)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、エンドプラスミン前駆物質(配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質(配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質(配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝(配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質(配列番号:50)、セプラーゼ(配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質(配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質(配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質(配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質(配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質(配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質(配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質(配列番号:59)、punc e11 隣接前駆物質(配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA(配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2(配列番号:62)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、α-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)、ストレス誘発性リン酸化タンパク質1(配列番号:63)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、(b) 前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む試験の結果及び/又はその試験に基づいた診断を貯蔵する有形の媒体を提供する。
臍帯血DIGE分析を表す:(A)コントロール(赤)と疑わしい敗血症(SS)(緑)の DIGEゲル。(B)コントロール(赤)と確認された敗血症(CS)(緑)の DIGEゲル。異なって発現されないスポットは黄色で示される。(C)疑わしい敗血症(SS)とコントロールとの間の異なって発現されるスポット。(D)確認された敗血症(CS)とコントロールとの間の異なって発現されるスポット。赤色で強調されるスポットは2分の1以下に下方制御されることが測定され、緑色で強調されるスポットは2倍以上に上方制御されることが測定された。 コントロール、疑わしい敗血症(SS)及び確認された敗血症(CS)の新生児被検体の臍帯血タンパク質のスペクトル数を、異なる発現を可視化するためにGeneMathsソフトウェアに読み込ませることを示す。タンパク質は、200の反復におけるユークリッド距離学習法を用いて階層的にクラスター化し、図2Aに示す。上方制御(図2B)及び下方制御(図2C)のタンパク質の選別したサブクラスターも示す。よって、図2Aの選択されたサブクラスターの位置に印を付す。
(好ましい実施態様の詳細な説明)
I.定義
特別に定めない限り、本明細書中で用いる技術及び科学用語は、本発明が属する分野の技術者によって共通に理解されるのと同じ意味を有する。Singleton et al., Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed., J. Wiley & Sons (New York, NY 1994)は、本出願において使用する多くの用語の一般的な指針を当業者に提供する。
「新生児敗血症」なる用語は、新生児の血液の感染を示すためにここで用いられ、このような感染と関係しているすべての合併症を含む。例えば、新生児敗血症関連の合併症には、呼吸窮迫症候群(RDS)、中枢神経系(CNS)合併症、例えば脳室周囲出血及び脳室周囲白質軟化症、精神遅滞、脳性麻痺(CP)、障害及び死が含まれるがこれらに限定されない。
「プロテオーム」なる用語は、所定の時間での生物学的試料における顕著な部分のタンパク質を示すためにここで用いられる。プロテオームの概念は基本的にゲノムと異なる。ゲノムが実質的に変化しないのに対して、プロテオームは内外の事象に応答して絶えず変化する。
「プロテオミクスプロファイル」なる用語は、生物学的試料、例えば所定の時間の体液における複数のタンパク質の発現パターンの表現を示すために用いる。プロテオミクスプロファイルは、例えば、質量スペクトルとして表されてもよいが、タンパク質の任意の物理化学的又は生化学性質に基づいた他の表現はも含まれる。ゆえに、プロテオミクスプロファイルは、二次元のゲル電気泳動法、例えば2−D PAGEによって測定されるようなタンパク質の電気泳動的性質の違いに基づくものでも、例えば二次元電気泳動ゲルの複数の点として表されてもよい。
特異的に同定されたタンパク質がない場合であっても、差動的な発現プロファイルは、重要な診断用価値を有しうる。次いで、単一のタンパク質スポットを、例えばイムノブロッティング、タンパク質マイクロアレイを使用した複数のスポット又はタンパク質によって検出されうる。プロテオミクスプロファイルは、一般的に、2、3のピークから50以上のピークを示す複雑なプロファイルにまで及ぶ情報を表すか又は含む。ゆえに、例えば、プロテオミクスプロファイルは、少なくとも2、又は少なくとも5、又は少なくとも10、又は少なくとも15、又は少なくとも20、又は少なくとも25、又は少なくとも30、又は少なくとも35、又は少なくとも40、又は少なくとも45、又は少なくとも50、又は少なくとも60、又は少なくとも65、又は少なくとも70、又は少なくとも75、又は少なくとも80、又は少なくとも85、又は少なくとも85、又は少なくとも90、又は少なくとも95、又は少なくとも100、又は少なくとも125、又は少なくとも150、又は少なくとも175、又は少なくとも200のタンパク質を含むか表しうる。
ここで用いる「体液」なる用語は、ヒト又は他の動物から得られる液体材料を指す。体液には、臍帯血、新生児血清、脳脊髄液(CSF)、子宮頚−膣液(CVF)、羊水、血清、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液、唾液及び汗が含まれるが、これらに限定されない。
「患者の応答」は、限定するものではないが以下のものを含む患者に利益を示す任意のエンドポイントを使用して評価できる。(1)病的状態の進行の、ある程度の阻害、(2)病的状態の予防、(3)病的状態に関連する一又は複数緒症状の、ある程度の軽減、(4)治療後生存期間の増加、及び/又は、(5)治療後のある時点での死亡率の減少。
「治療」なる用語は、治療的処置及び予防的ないしは阻害的な測定を指し、この目的は、標的とする病的状態ないしは障害を予防又は鈍化(小さく)させることである。治療が必要なものには、既に障害を有するもの、並びに障害を起こしやすいもの又は予防されるべき障害があるものが含まれる。
ここで使用する任意の特定のタンパク質の呼称には、すべての断片、前駆物質及び天然に生じる変異体、例えばオルターナティブスプライス及び対立遺伝子変異体及びアイソフォーム、並びに、他の種で称されるタンパク質の可溶型と天然配列ホモログ(すべての天然に生じる変異体を含む)が含まれる。ゆえに、例えば、ハプトグロビン前駆物質(スイスプロット受託番号P00738)のレベルが試験されると述べる場合には、具体的には、スイスプロット受託番号P00738に挙げられるタンパク質の任意の断片、前駆物質又は天然に生じる変異体、並びに被検体がヒトでない場合にはその非ヒトホモログ及びその天然に生じる変異体を試験することが含まれる。
II.詳細な説明
本発明は、臍帯血などの体液のプロテオミクス分析によって新生児敗血症及び/又は新生児敗血症関連の合併症を早期に、確実にかつ非侵襲的に試験するための方法及び手段に関する。本発明はさらに、新生児敗血症のバイオマーカーの同定に関する。他の態様では、本発明は、新生児敗血症を早期に決定するための手段としてプロテオミクスプロファイルの調製又は製造におけるタンパク質の使用に関する。本発明は、例えば以下の教本に記載されるように、当分野で周知のプロテオミクス技術を利用する。以下の教本の内容は出典明記によって特別に本明細書中に援用される。Proteome Research: New Frontiers in Functional Genomics (Principles and Practice), M.R. Wilkins et al., eds., Springer Verlag, 1007;2-D Proteome Analysis Protocols, Andrew L Link, editor, Humana Press, 1999;Proteome Research: Two-Dimensional Gel Electrophoresis and Identification Methods (Principles and Practice), T. Rabilloud editor, Springer Verlag, 2000;Proteome Research: Mass Spectrometry (Principles and Practice), P. James editor, Springer Verlag, 2001;Introduction to Proteomics, D. C. Liebler editor, Humana Press, 2002;Proteomics in Practice: A Laboratory Manual of Proteome Analysis, R. Westermeier et al., eds., John Wiley & Sons, 2002。
当業者は、本明細書中に記載のものと類似又は等価な方法及び材料が多くあることを認識し、これらが本発明の実施にも使用できることを理解するであろう。実際に、本発明は記載した方法及び材料に決して限られない。
1.体液において発現されるタンパク質及びポリペプチドの同定
本発明により、体液のプロテオミクス分析は、当分野で公知の様々な方法を使用して実行されうる。体液には、例えば、臍帯血、新生児血清、脳脊髄液(CSF)、子宮頚−膣液(CVF)、羊水、血清、血漿、尿、脳脊髄液、母乳、粘液、唾液及び汗が含まれる。
一般的に、正常な体液(正常試料)及び試験体液(試験試料)のような異なる供給源からの試料のタンパク質パターン(プロテオームマップ)を比較して、疾患において上方及び下方に制御されるタンパク質を検出する。これらのタンパク質は、例えばペプチド-質量フィンガープリンティング及び/又は質量分析及び配列決定法を用いて同定及び完全特徴化のために切り取られてもよいし、対象の疾患の診断のために又は疾患の有無を確認するために、正常及び/又は疾患に特異的なプロテオームマップを直接用いてもよい。
比較分析において、タンパク質の相対的なレベル又は量を正確に表し、正確な結果を得るために、正常試料と試験試料を正確に同じ方法で扱うことが重要である。総タンパク質の必要量は、使用する解析技術に依存し、当業者によって容易に測定されるであろう。生物学的試料に存在するタンパク質は、一般的に、pI及び分子量に従って二次元のゲル電気泳動(2−DE)によって分離される。タンパク質は、初めに、等電点電気泳動(一次元のゲル電気泳動)を使用してその電荷によって分離される。この工程は、例えば、市販されている固定されたpH勾配(IPG)ストライプを使用して実行してよい。二次元目は、通常のSDS-PAGE分析であり、ここで集中したIPGストライプが試料として用いられる。2-DE分離の後、タンパク質は、クーマシーブルー又は銀染色のような従来の色素によって視覚化され得、例えばBio-Rad GS800濃度計及びPDQUESTソフトウェア(いずれも市販されている)などの公知の技術及び器材を使用して撮像されてよい。次いで、個々のスポットをゲルから切り出し、脱色して、トリプシン消化する。ペプチド混合物は質量分析(MS)によって分析してよい。あるいは、ペプチドは、例えばキャピラリー高圧液体クロマトグラフィ(HPLC)により分離してもよいし、別々又はプールでMSによって分析してもよい。
質量分析計は、イオン源、質量アナライザー、イオン検出器及びデータ収集ユニットからなる。まず、ペプチドはイオン源においてイオン化される。次いで、イオン化したペプチドを、質量アナライザーにおいて質量‐電荷比に従って分離し、異なるイオンを検出する。特に、マトリックス支援レーザー脱離イオン化/飛行時間型(MALDI-TOF)及びエレクトロスプレーイオン化(ESI)方法の発明以降、質量分析法は、タンパク質分析において広く使われている。例えば、MALDI−TOF及び3極子又は四極子−TOF、又はESIと接続したイオントラップ質量アナライザーを含み、様々なバージョンの質量アナライザーがある。ゆえに、例えば、Q−Tof−2質量分析計は、質量スペクトル範囲のすべてにわたるイオンを同時に検出することが可能な直交性飛行時間型のアナライザーを利用する。詳しくは、例えばChemusevich et al., J. Mass Spectrom. 36:849-865 (2001)を参照のこと。必要に応じ、ペプチド断片のアミノ酸配列及びそれから得られた最終的なタンパク質は、質量分析法のある変形型又はエドマン分解などの当分野で公知の技術によって測定されうる。
2.新生児敗血症の早期検出
新生児の血液の感染として定義される新生児敗血症は、臨床上診断するのが困難である。新生児ケアの進歩にもかかわらず、新生児敗血症の死亡率及び羅病率は高いままである(Stoll 2002)。新生児敗血症は、神経発達不良及び新生児死亡を含む新生児羅病率の重要な要因である。新生児敗血症関連の合併症には、例えば、呼吸窮迫症候群(RDS)、中枢神経系(CNS)合併症、脳性麻痺(CP)、障害及び死が含まれる。
低体重(LBW)乳児、出生時に呼吸機能が低下していた乳児、及び母性周産期の危険因子がある乳児に最も高い割合で新生児敗血症が起こる。早発性新生児敗血症の危険因子には、早産、前期破水、母性出血、例えば前置胎盤、胎盤早期剥離、羊水、胎盤、泌尿器管又は子宮内膜の感染、毒血症、急遂分娩、及び出産時の度重なる膣検査によって生じるものが含まれる。入院の延長及び病院機具の汚染は、遅発性新生児敗血症の一般的な原因である。新生児敗血症を引き起こしうる生物体には、以下の非限定的な例である、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、例えば表皮ブドウ球菌、スタフィロコッカス・ヘモリチカス、スタフィロコッカス・ホミニス、S. warneri、腐性ブドウ球菌、S. cohnii、及びS.capitis、グループB連鎖球菌、黄色ブドウ球菌、大腸連鎖球菌及びヘシュウム菌、リステリア菌、大腸菌、緑膿菌、インフルエンザ菌、ストレプトコッカス‐ボビス、α-溶連菌、肺炎連鎖球菌、髄膜炎菌及び淋菌が含まれる。一般的に、早発性新生児敗血症を引き起こす生物体は、子宮頚管からの上行性感染として、胎盤を介して母から、又は、産道に沿った胎児道として分娩時の後天的なものである。
残念なことに、非特異性で微妙な早期兆候であるため、新生児敗血症の診断は難しい。新生児敗血症の徴候及び症状には、例えば、体温変化、呼吸障害、下痢、低血糖、運動低下、吸乳低下、発作、心拍数遅延、腹部膨張、嘔吐及び黄疸が含まれる。新生児敗血症を診断するための究極の判断基準は血液培養であるが、敗血症の強い臨床上の兆候が存在する場合であっても、細菌感染が剖検によって後に確認される場合であっても、血液培養物は陰性である(Kaufman D, Fairchild KD, Clin Microbiol Rev. 2004 Jul;17(3): 638-80)。さらに、新生児、特に予定日前の新生児において十分な血液試料を採取することは難しいことが多い。急速に進行し、高い死亡率であるので、典型的には、血液培養結果が出るまで、迅速に経験に基づく抗生物質療法が投与される。初期療法には、アンピシリン又はペニシリンG及びアミノグリコシド、例えばゲンタマイシン、又はセフォタキシムが含まれうる。新生児敗血症に関連する結果が陰性であり、新生児敗血症を検出するために有用な手段が現在確立されていないので、抗生物質治療の使用は一般的なだけでなく長期にわたるものであり、これは新生児病原体の薬剤耐性の要因となる。したがって、新生児敗血症及び新生児敗血症関連の合併症のための早期の、確実な、非侵襲性のマーカーの開発は、新生児の結果を最適化するために療法及び介入を考慮し、必要でないと思われる抗生物質の使用又は長期使用を最小限にするために急務となっている。
3.体液におけるバイオマーカーを使用した新生児敗血症の早期検出及び診断
一態様では、本発明は、プロテオミクス手法を用いた、臍帯血などの体液において同定されるバイオマーカーを使用した、新生児敗血症及び新生児敗血症関連の合併症の、確実かつ非侵襲性の診断方法を提供する。特定の実施態様では、新生児敗血症に関連するバイオマーカーは早発性及び遅発性の中枢神経系(CNS)合併症の予測因子である。一実施態様では、バイオマーカーは脳室周囲出血及び/又は脳室周囲白質軟化症のための予測因子である。他の実施態様では、バイオマーカーは精神遅滞の予測因子である。
一実施態様では、本発明は、試料採取からおよそ30分及び24時間以内に新生児敗血症及び新生児敗血症関連の合併症のバイオマーカーの検出が可能である。ある実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ30分から48時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ48時間以内に診断される。さらに他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ24時間以内に診断される。さらに他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ12時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ4時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ2時間以内に診断される。一実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ1時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、試料採取からおよそ30分以内に診断される。
ある他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ30分から48時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ48時間以内に診断される。さらに他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ24時間以内に診断される。さらに他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ12時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ4時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ2時間以内に診断される。一実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ1時間以内に診断される。他の実施態様では、早発性新生児敗血症及び/又は関連の合併症は、生後およそ30分以内に診断される。
前記のように、本発明において、「プロテオミクスプロファイル」なる用語は、所定の時間での生物学的試料、例えば体液における複数のタンパク質の発現パターンの表現を指すために用いる。プロテオミクスプロファイルは、例えば、質量スペクトルとして表されてよいが、タンパク質の任意の物理化学的又は生化学的性質に基づく他の表現も含まれる。体液に存在するタンパク質のすべて又はいくつかを同定し配列決定することは可能であるが、本発明によって生成されたプロテオミクスプロファイルの診断用途のためには必要ではない。特定の疾患の診断は、診断される疾患又は病的状態が存在する場合に、正常なプロテオミクスプロファイルと同じ条件下で得た同じ体液のプロテオミクスプロファイルとの間の特徴的な相違(固有の発現シグネチャー)に基づいてよい。固有の発現シグネチャーは、統計学的に有意な方法で、同じ種類の供給源から得た対応する正常な生物学的試料のプロテオミクスプロファイルとは異なる試験又は対照の生物学的試料のプロテオミクスプロファイル内の任意の固有の特徴又はモチーフでありうる。例えば、プロテオミクスプロファイルが質量スペクトルの形で示される場合、固有の発現シグネチャーは、一般的に、対応する正常な試料の質量スペクトルとは質的又は量的に異なるピーク又はピークの組合せである。ゆえに、質量スペクトルの見かけの新規のピークないし新規のピークの組合せ、又は既存のピークないし既存のピークの組合せの幅と形の統計的に有意な変化、又は質量スペクトルの既存のピークの消失は、固有の発現シグネチャーとみなされうる。哺乳動物の被検体から得た試験試料におけるプロテオミクスプロファイルを、病的母体の状態又は胎児の状態に特徴的な固有の発現シグネチャーを含む比較試料のプロテオミクスプロファイルと比較する場合、比較試料と固有の発現シグネチャーを共有する場合には哺乳動物の被検体はこの病的状態と診断される。
特定の病的母性/胎児の状態は、診断される被検体から得た体液のプロテオミクスプロファイルを、同じ方法で得て処理した同じ種の正常な体液のプロテオミクスプロファイルと比較することによって診断されうる。試験試料のプロテオミクスプロファイルが正常試料のプロテオミクスプロファイルと基本的に同じ場合には、被検体は、対象の病的母性/胎児の状態ではないと判断される。試験試料のプロテオミクスプロファイルが正常試料のプロテオミクスプロファイルと比較して固有の発現シグネチャーを示す場合には、被検体は、対象の母性/胎児の状態であると診断される。
あるいは又は加えて、試験試料のプロテオミクスプロファイルは、個別に対象の病的母性/胎児の状態であると診断された被検体の体液から入手した比較試料のプロテオミクスプロファイルと比較してよい。この場合、試験試料のプロテオミクスプロファイルが、比較試料のプロテオミクスプロファイルと、固有の発現シグネチャーを表す少なくとも一の特徴又は複数の特徴の組合せを共有する場合には、被検体は、病的状態と診断される。
プロテオミクスプロファイルを比較するための統計的方法は当分野で周知である。例えば、質量スペクトルの場合、プロテオミクスプロファイルは、スペクトルの水平軸に沿って重要な質量/電荷(M/Z)位置のピーク幅値によって定められる。したがって、特徴的なプロテオミクスプロファイルは、例えば、所定のM/Z谷のスペクトル幅の組合せによって形成されるパターンに特徴がありうる。特徴的な発現シグネチャー有無又は2つのプロファイルの実質的同一性は、適切なアルゴリズムにより、試験試料のプロテオミクスプロファイル(パターン)を比較又は正常試料のプロテオミクスプロファイル(パターン)と一致させることによって決定されうる。プロテオミクスパターンを分析するための統計的方法は、例えば、Petricoin III, et al., The Lancet 359:572-77 (2002);Issaq et al., Biochem Biophys Commun 292:587-92 (2002);Ball et al., Bioinformatics 18:395-404 (2002);及び、Li et al., Clinical Chemistry Journal, 48:1296-1304 (2002)に開示されている。
特定の実施態様では、本発明の診断用検査は、タンパク質アレイ又はイムノアッセイの形で実施される。
4.タンパク質アレイ
近年、タンパク質アレイは、タンパク質を検出し、それらの発現レベルをモニターし、タンパク質相互作用及び機能を調査する強力な手段として広く認知されている。これらにより、多数の測定を同時に実施する場合には、自動化された手段を用いてハイスループットなタンパク質分析が可能となる。本来DNAアレイのために開発されたマイクロアレイ又はチップ形式で、多くの量のデータを生成しながら最小限の材料の使用で前記の様な測定を実施することができる。
上記のように、2Dゲル電気泳動法及び質量分析によるプロテオーム分析は非常に有効であるが、常に必要とされる高い感度が得られるわけではなく、これにより少量で発現される多くのタンパク質を見逃しうる。タンパク質マイクロアレイは、それらの高い効率に加えて、感度の改善を提供する。
タンパク質アレイは、当分野で周知の様々な共有的及び非共有的付着化学を用いて、固形表面、例としてガラス、シリコン、マイクロウェル、ニトロセルロース、PVDF膜及びマイクロビーズ上にタンパク質を固定することによって形成される。固形支持体は、カップリング手順の前後では化学的に安定しており、良好なスポット形態が可能となり、ごく小さい非特異的結合を表すものであり、検出システムのバックグラウンドに影響を与えず、異なる検出システムと互換性を持つものでなければならない。
通常は、タンパク質マイクロアレイは、DNAアレイの読み取りに共通して使用されるタンパク質マイクロアレイ使用。同様に、DNAマイクロアレイの読み込みのために使用するのと同じ測定器はタンパク質アレイにも応用される。
ゆえに、キャプチャアレイ(例えば抗体アレイ)は、正常及び罹患した体液といった2つの異なる供与源からの、蛍光標識したタンパク質によって探索されてよい。この場合、読み取り情報は、標的タンパク質の発現レベルの変化の反映としての蛍光シグナルの変化に基づく。他の読み取り情報には、蛍光共鳴エネルギー転移、表面プラスモン共鳴、ローリングサークルDNA増幅、質量分析、共鳴光散乱、及び原子間力電子顕微鏡法が挙げられるが、これらに限定されない。
詳しくは、例としてZhou H, et al., Trends Biotechnol. 19: S34-9 (2001);Zhu et al., Current Opin. Chem. Biol. 5:40-45-(2001);Wilson and Nock, Angew Chem Int Ed Engl 42:494-500 (2003);及び、Schweitzer and Kingsmore, Curr Opin Biotechnol 13:14-9 (2002)を参照のこと。また、生体分子アレイは、2002年6月18日発行の米国特許第6406921号において開示され、この全体の開示内容は出典明記によってここに援用される。
5.イムノアッセイ
また、本発明の診断用検査は、様々なイムノアッセイ形式の形態で実施されてよく、それらは当分野で周知である。イムノアッセイには、同種及び異種の2つの主なタイプがある。同種イムノアッセイでは、抗原と抗体との間の免疫反応と検出は、同種の反応で行われる。異種イムノアッセイは、反応していない試薬からの反応生成物の分離を行う少なくとも一つの分離工程を含む。
ELISAは異種イムノアッセイであり、1970年代初頭から実験室で広く実施されている。アッセイを用いて様々な形態で抗原を検出することができる。
「サンドイッチ」形式では、検査される抗原は、2つの異なる抗体間に保持される。この方法では、固形表面はまず、固相抗体によりコートされる。次いで、測定される抗原(すなわち診断用タンパク質)を含む試験試料か又は抗原を含む組成物を添加し、抗原を結合した抗体と反応させる。任意の結合しない抗原は洗い流される。次いで、既知量の酵素標識抗体を結合した抗原と反応させる。この反応の後に任意の過剰な結合していない酵素結合抗体が洗い流される。次いで、アッセイに使用する酵素の基質を添加し、基質と酵素との反応により色の変化が生じる。可視化された変色の量は、特異的な酵素コンジュゲート結合抗体の直接の測定値であり、これにより試料に存在する抗原が試験される。
また、ELISAも競合アッセイとして使用されてよい。競合的アッセイ形式では、測定される抗原を含む試験試料が正確な量の酵素標識した抗原と混合され、それらがともに、固形表面に結合した抗抗原抗体への結合について競合する。酵素の基質が添加される前に、過剰量の遊離した酵素標識抗原が洗い流される。酵素−基質相互作用から生じる色強度の量は、試験される試料中の抗原の量の指標である。同種イムノアッセイには、例えば競合的酵素免疫分析法(EMIT)が含まれ、これは一般的に、測定される化合物(一又は複数)を含む生物学的試料、測定される化合物(一又は複数)の酵素標識分子、測定される化合物(一又は複数)を結合する特異的な抗体(一又は複数)、及び特異的な酵素色素原基質を含む。代表的なEMITでは、過剰量の特異的抗体が生物学的試料に添加される。生物学的試料が検出するタンパク質を含む場合、該タンパク質は抗体に結合する。次いで、測定した量の対応する酵素標識タンパク質を混合物に添加する。試料中のタンパク質の分子が占めていない抗体結合部位は、添加した酵素標識タンパク質の分子によって占められる。その結果、遊離した酵素標識タンパク質のみが基質に作用するので、酵素活性は低減する。無色から有色に変換した基質の量により、混合物中に残る遊離酵素の量が測定される。試料において高濃度のタンパク質がが検出されると高い吸光度読み取り値となる。試料中のタンパク質が少ない場合には酵素活性も小さくなり、その結果吸光度読み取り値が低くなる。Ag-酵素複合体がAb−結合である場合に酵素標識が不活性化すると、EMITが特有のシステムとなり、他のイムノアッセイ法では必要である、結合化合物の非結合化合物からの分離を行うことなく試験が可能となる。
また、本発明の一部はイムノアッセイキットである。一態様では、本発明は、捕捉抗体と検出用抗体とを具備するサンドイッチイムノアッセイキットを含む。捕捉抗体及び検出用抗体は、モノクローナル又はポリクローナルであってよい。他の態様では、本発明は、イムノフロークロマトグラフィを使用して、イムノクロマトグラフィストライプ(ICS)試験などの側方流量装置を具備する診断用キットを含む。側方流量装置は、米国特許第4943522号;同第4861711号;同第4857453号;同第4855240号;同第4775636号;同第4703017号;同第4361537号;同第4235601号;同第4168146号;同第4094647号に一般的に記載されている側方流量アッセイ技術を使用する。これらそれぞれの内容全体は出典明記によって援用される。さらに他の態様では、イムノアッセイキットは、例えば、異なる容器に、(a)特定の母性/胎児の状態、例えば新生児敗血症の診断で使用するポリペプチドに対して結合特異性を有するモノクローナル抗体と、(b)抗抗体免疫グロブリンとを具備する。このイムノアッセイキットは、ここで提供される様々な方法の実施のために利用されてよい。モノクローナル抗体及び抗抗体免疫グロブリンは、およそ0.001mgからおよそ100グラム、より好ましくはおよそ0.01mgからおよそ1gの量で提供されてよい。抗抗体免疫グロブリンは、当分野で公知の方法によって使用前に標識されうる、ポリクローナル免疫グロブリン、プロテインA又はプロテインG又はその機能的な断片であってよい。診断用キットは、必要であれば、検査のバックグラウンド干渉を低減するための試薬、シグナルを増強するための試薬、対象の臨床結果を予測するためにマーカー値を組合せ補間するためのソフトウェア及びアルゴリズム、試験を実施するための装置、較正曲線及び図表、標準曲線及び図表などを具備してよい。試験キットは、任意の好適な方法で包装されてよく、典型的にはすべての成分は単一の容器に試験を実施するための印刷された指示書とともにある。
6.診断用及び治療法の方法
本発明の診断法は、医師が迅速な治療決定を行うために価値のある手段であり、この治療決定は新生児の生存に重要であることが多い。ゆえに、例えば、新生児が新生児敗血症の症状を示すか、又は新生児敗血症の危険がある場合には、状態を治療して、新生児の生存性を向上させるために迅速な工程をとることが重要である。
典型的には、本明細書において同定されるタンパク質の発現レベルの測定又は獲得後に、アッセイの結果、所見、診断、予測及び/又は治療勧告は、記録され、例えば、技術者、医師及び/又は患者へ伝達される。ある実施態様では、コンピューターは、利害関係のある関係者、例として患者及び/又は主治医にこのような情報を伝えるために用いられるであろう。いくつかの実施態様では、アッセイが行われ、結果又は診断が伝達される国や管轄区域とは異なる国や管轄区域でアッセイ結果が分析されるであろう。
好ましい実施態様では、本明細書中で示す一又は複数のバイオマーカーの試験被検体における発現レベルに基づいた診断、予測及び/又は治療勧告は、アッセイが完了し診断及び/又は予測がなされた後できるだけすぐに被検体に伝達される。ここに記載の方法で同定され定量化される一又は複数のバイオマーカーは、一又は複数のパネルに含まれうる。パネルに含まれるバイオマーカーの数は、1バイオマーカー、2バイオマーカー、3バイオマーカー、4バイオマーカー、5バイオマーカー、6バイオマーカー、7バイオマーカー、8バイオマーカー、9バイオマーカー、10バイオマーカー、11バイオマーカー、12バイオマーカー、13バイオマーカー、14バイオマーカー、15バイオマーカー、16バイオマーカー、17バイオマーカー、18バイオマーカー、19バイオマーカー、20バイオマーカーなどであってよい。結果及び/又は関連した情報は、被検体を治療する医師によって被検体に伝えられてよい。あるいは、結果は、報告書の提出による等の書物、電子メールなどの電子形式の伝達、又は電話を含む任意の伝達手段によって試験被検体に直接伝えられてよい。伝達は、電子メール伝達の場合などのコンピューターの使用により容易になされうる。ある実施態様では、診断用試験の結果、及び/又は試験からなされた結論及び/又は試験に基づいた治療勧告を含む伝達がなされ、電気通信分野の技術者によく知られたコンピューターハードウェア及びソフトウェアの組合せを使用して被検体に自動的に運搬されてよい。保健医療に関する伝達システムの一例は、米国特許第6283761号に記述され、そのすべての内容は出典明記によって本明細書中に援用されるが、本発明は、この特定の伝達システムを利用する方法に限定されない。本発明の方法のある実施態様では、試料のアッセイ、疾患の診断及びアッセイ結果又は診断の伝達を含むすべて又はいくつかの方法の工程は、多様な(例えば、外国の)管轄区域において実行されてよい。
診断を容易にするために、本発明のここに示す比較及び/又は被検体のバイオマーカープロファイル又は一又は複数のバイオマーカーの発現レベルは、電子的に含まれるか、限定するものではないがとりわけVCRによって読み取り可能なもののようなアナログテープ、CD−ROM、DVD−ROM、USBフラッシュ媒体といった機器が読み取り可能な媒体の、表示機器上に提示されうる。また、このような機器が読み込む媒体は、限定するものではないが、臨床パラメーターの測定値及び従来の実験室危険因子などの他の試験結果を含有しうる。あるいは又はさらに、機器が読み込む媒体は、病歴及び任意の関連する家族歴といった被検体の情報も含んでよい。
さらに、本発明の詳細は以下の非限定的実施例から明らかであろう。本開示内容全体にわたって引用したすべての参考文献とそこで引用される文献は、出典明記によって特別に本明細書中に援用される。
実施例1−大規模プロテオミクス手法を使用した新生児敗血症の臍帯血バイオマーカーの同定
実験方法
試料採取: 20〜34週の妊娠の自然早期分娩の82人の女性の前向き観察コホートの臍帯血試料を分析した。早発性新生児敗血症は、分娩72時間内に陽性新生児血液培養として定められた。82の被検体の中で、34週未満に分娩した71新生児と5新生児は新生児敗血症が確認され(新生児血液培養陽性)、8新生児は敗血症の疑いと診断した(血液培養物陰性、感染を示唆する臨床症状)。
臍帯血清の免疫枯渇: 2-DLC実験に使用される血清試料は、IgY-12 LC2プロテオーム分配システム(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を使用して、12の最も多いタンパク質(アルブミン、IgG、IgA、IgM、α-1-抗トリプシン、トランスフェリン、ハプトグロビン、α-1-酸性糖タンパク質、α-2-マクログロブリン、フィブリノーゲン、アポリポタンパク質−AI及びA−II)を枯渇させた。適切な分画を採取し、濃縮し、10mMのトリス(pH8.4)にバッファ交換した。タンパク質濃度は、DCタンパク質アッセイキット(Bio-Rad, Hercules, CA)を使用して測定した。
差動性ゲル電気泳動(DIGE): タンパク質アッセイの後に、50μgのタンパク質を、400pmの色素濃度のCyDye DIGE Fluor minimal色素(GE Lifesciences)にて標識した。異なる色素(Cy5、Cy3、Cy2)を用いて、コントロール、敗血症の疑い(SS)、又は確認された敗血症(CS)臍帯血清(CBS)試料をそれぞれ標識した。標識したタンパク質は、0.5%の両性電解質を含有するIEFバッファに溶解し、室温で12時間、24cmのIPGストライプ(pH 4〜7)に再水和させた。再水和の後、IPGストライプにおよそ10時間等電点電気泳動を行い、合計64000ボルト×時間とした。IPGストライプのフォーカスしたタンパク質は、初めに15分かけて1%DTTを含有するバッファにて平衡化することによって還元し、次いで2.5%のIAAを含有するバッファにてアルキル化した。還元及びアルキル化工程の後、IPGストライプは勾配(8〜16%) ポリアクリルアミドゲル(24×20cm)に流し、SDS−PAGEを85Vで18時間行って、二次元でタンパク質を分析した。電気泳動後、ゲルは、PMT電圧が600に設定されている適切なレーザーとフィルターを用いてTyphoon9400スキャナー(GE Lifesciences)でスキャンした。異なるチャンネルの画像は、選択した色を使用してオーバーラップさせ、相違は、ImageQuant TLソフトウェア(v7.0、GE Lifesciences)を用いて可視化した。生のスキャン画像ファイルはPhoretix 2D Evolution(Nonlinear Dynamics)に読み込ませ、確認された敗血症及び敗血症疑いとコントロールについて相違マップを作成した。
2−DLC試料処理: タンパク質アッセイ後、1mgの試料をトリプシンにて消化し、結果として生じたペプチドを、強力な陽イオン交換(SCX)クロマトグラフィにて分離した。試料を乾燥させ、0.2MのNH4HCO3及び0.3%のRapigest(Waters, Milford, MA)(pH8.5)を含有する105μlの消化バッファに溶解した。システイン残基を還元し、12.5μlの0.1M DTTに50℃で45分間インキュベートした後、7μlの0.5M ヨードアセトアミドにさらに30分間暗室でインキュベートすることによってアルキル化した。タンパク質は、4μlの0.1M CaCl2と33:1の基質に対する酵素のシークエンシンググレードトリプシン(Trypsin Gold, Promega)を添加することによって37℃に2時間消化した。60μlの0.2M HClを加えて消化を止め、結果として生じたペプチドをC18 SepPak Plusカートリッジ(Waters, Milford, MA)を使用して精製した。
SCXクロマトグラフィは、100×2.1mmのポリスルホエチルAカラム(The Nest Group, Southborough, MA)を使用して実施した。移動相Aには、10mM リン酸カリウム(pH3)及び25%アセトニトリル(ACN)を含めた。移動相Bは、350mM KClを含めたことを除き同じである。ペプチドは、移動相Aに流し、洗浄した後に、0−50%のBの直線濃度勾配を使用して45分、その後50−100%のBの直線濃度勾配により15分、その後100%のAで20分洗浄して、溶出した。合計95の1分間の分画を回収し、真空遠心分離法にて乾燥させ、100μlの0.1%TFA中で振盪することによって再溶解させた。ペプチド分画は、96ウェルスピンカラム、Vydac C18シリカ(The Nest Group, Southborough, MA)を使用して脱塩した。脱塩した分画は、35の分画にまとめ、蒸発させ、LC−MS/MS分析のために20μlの5%蟻酸(FA)に溶解した。
LC-MS/MS分析: 各々の分画の一部は、34-ゲージ金属針キット(ThermoFinnigan, San Jose, CA)を装着したイオンマックスエレクトロスプレー源を有するLTQイオントラップ質量分析計(Thermo Electron, San Jose, CA, USA)とAgilent1100シリーズキャピラリーLCシステムを使用したLC/MSにて分析した。試料は、20μl/分でトラップカートリッジにアプライし、次いで、0.1% FAを含む移動相Aを使用して、0.5×250mmのZorbax SB-C18カラム(Agilent Technologies, Palo Alto, CA, USA)に切り替えた。質量スペクトルファイルは、Bioworks Browserソフトウェア(バージョン3.1、ThermoFinnigan, San Jose, CA)を用いて生データから生成した。合計1195238のタンデム質量スペクトルは、すべてのLC−MS/MS分析から生成した。
ペプチド及びタンパク質同定: タンデム質量スペクトルは、ヒト亜種のために選択されたスイスプロット(バージョン54.2)データベースのフォワード及びリバースエンティティ(デコイタンパク質)を含む複合タンパク質データベースに対して検索した。親イオン及び断片イオン、トリプシン酵素特異性、システイン残基上のカルバミドメチル修飾、及び様々な潜在的インビボ及びインビトロ修飾のために、1.8Daと0.4Daの質量許容が利用できるように設定されたX!タンデム(Fenyo 2003)検索エンジンを使用して、すべての検索を行った。全試料におけるペプチド及びタンパク質の同定をともに蓄積して、スキャフォールドソフトウェア(バージョン1.6、Proteome Software, Portland, OR)により実行される確率タンパク質同定アルゴリズム(Nesvizhskii 2003)を用いて、包括的臍帯血プロテオームを生成した。0.8以上の確率でのペプチド同定は、試料に存在するものとみなす。少なくとも2の固有のペプチド同定があるタンパク質同定は臍帯血に存在するとみなす。
無標識定量化: タンパク質に合致したタンデム質量スペクトルの総数(スペクトル計数)は、複雑な混合物中でのその量を推測するための、無標識の、感度が高い半定量的計測である。(Liu 2004)。2つの複雑な試料間のタンパク質スペクトル計数の相違を用いて、その相対的な発現を定量化した。(Old 2005)。この研究において、1つの試料において少なくとも2つの固有のペプチドが同定された臍帯血タンパク質は、無標識定量化の検討がされた。スペクトル計数を共有した相同タンパク質(配列相同性>50%)は、単一のエンティティに併合した。非相同の共有スペクトル計数は、スペクトルマッチが最も高い数値であったタンパク質に割り当てた(オッカムの剃刀)。管理したタンパク質のスペクトル計数は、コントロールとCS新生児被検体間の独立したペアワイズ比較を行い、タンパク質の相対的な発現を定量化した。(Gravett 2007, Nagalla 2007, Pereira 2007, Zybailov 2006)。ペアワイズ比較において0.05以下のp値を有するタンパク質は、試料間で有意に異なって発現されるものとみなした。異なって発現したタンパク質の倍数的発現変化(FC)は、Old et al. 2005)に記述される方程式を使用して定量化した。
酵素結合免疫測定法(ELISA): 敗血症の検出のための10の候補バイオマーカーは、固相サンドイッチイムノアッセイにて測定した。市販されている抗体及び抗原を様々な販売会社から購入し、イムノアッセイを調製した。製造者が提供する標準物質又は既知量の組み換えタンパク質を用いて、参照試料濃度と比較して標準曲線を描いた。すべてのアッセイは3通り行い、アッセイ間及びアッセイ内の変異係数は3〜7%であった。
一方向の分散分析(ANOVA)を行い、敗血症がない被検体及び敗血症が確認された被検体からの試料のlog変換したELISA値を比較した。プレゼンテーションのために、発明者等は、元の単位(調和平均)へ平均ログ値を戻し変換し、ボンフェローニ補正を適用して複数の比較を考慮した。個々のタンパク質比較の結果に基づいて、発明者等は、ロジスティックな回帰モデルを使用して、2、3又は4のタンパク質のいくつかの異なる組合せの分類法実行を評価した。受信者動作特性(ROC)曲線は、各々の多タンパク質モデルからのリスクスコアに基づいて計算した。描写的な推論統計は、SASソフトウェア(v9.1)を使用して計算した。ROC曲線を描き、カスタマイズしたSTATAモジュールを使用して比較した。(Pepe 2003)。
ELISAデータの統計学的分析: 敗血症のないコントロール被検体(n=77)及び敗血症が確認された被検体(n=5)におけるELISA実験によって測定された臍帯血中の候補タンパク質バイオマーカー濃度は、ログ変換して統計学的分析を行った。コントロールと敗血症間のlog変換タンパク質濃度の個々の対比較は、一方向の分散分析(ANOVA)試験を使用して実行した。プレゼンテーションのために、発明者等は、元の単位(調和平均)へ平均ログ値を戻し変換し、ボンフェローニ補正を適用して複数の比較を考慮した。個々のタンパク質比較の結果に基づいて、発明者等は、ロジスティックな回帰モデルを使用して、2、3又は4のタンパク質のいくつかの異なる組合せの分類法実行を評価した。受信者動作特性(ROC)曲線は、各々の多タンパク質モデルからのリスクスコアに基づいて計算した。
描写的な推論統計は、SASソフトウェア(v9.1)を使用して計算した。ROC曲線を描き、カスタマイズしたSTATAモジュールを使用して比較した。(Pepe 2003)。
結果
新生児敗血症の臍帯血プロテオームのプロテオミクス変化: 二次元のゲル電気泳動分析:コントロール、疑わしい敗血症(SS)及び確認された敗血症(CS)を有する被検体からの臍帯血(CB)を親和性精製し、多量の血清タンパク質を取り除いた。コントロール、SS及びCS被検体の減少したCBSは、それぞれCy5、Cy3及びCy2色素にて標識した。標識した試料は2Dゲルにて分析した。図1A及び1Bは、それぞれコントロール(赤)とSS(緑)、コントロール(赤)とCS(緑)のCBSのDIGEゲル画像を示す。SSとコントロール(図1C)の間及びCSとコントロール(図1D)の間で異なって発現されたスポットは、Phoretix 2Dエボリューションソフトウェアを使用して決定した。区別マップのスポット強度(図1C及び1D)は、総スポット体積に基づいて基準化した。2分の1以下に下方制御される区別マップ内のスポットは赤色で、2倍以上に上方制御されるスポットを緑色で示す。
結論: 二次元のゲル分析により、新生児敗血症被検体の臍帯血内の複数のタンパク質の差動的発現が同定された。
臍帯血プロテオーム: すべての2-DLC質量分析実験から、少なくとも2つの異なるペプチドが一致している(p≧0.8)合計670のタンパク質が同定された。臍帯血タンパク質は、スペクトル数の多い順に分類し、補足の表1(列5)に示す。臍帯血プロテオームの機能予測は、DAVIDバイオインフォーマティックス資源(Dennis 2003)のジーンオントロジー(GO)予測を使用して行った。代謝(21%)、免疫応答(10%)、運搬(10%)及び発達上(7%)の機能を有するタンパク質は、大多数の臍帯血プロテオームを構成した。
新生児敗血症の臍帯血プロテオームにおいて異なって発現されたタンパク質の分類: タンパク質に一致したMS/MSスペクトルの総数は、複雑な混合物中のその量と直接関連する。(Liu 2004)。コントロール、SS及びCSの被検体間のCBにおける大規模タンパク質発現変化はGeneMathsソフトウェア(バージョン1.5、Applied Maths, Austin, TX)を用いて可視化する。複数の試料の中の一つで少なくとも2のペプチドが同定された(p≧0.8)タンパク質のスペクトル数を個別に平均規準化し、GeneMathsソフトウェアによって分析した。試料間で類似の発現変化を有するタンパク質は、200のシミュレーションを有するユークリッド距離学習法を使用して、階層的に分類した(図2A)。CS及びコントロール試料において上方制御されるタンパク質を有する代表的なタンパク質クラスターを、図2B及び図2Cに示す。
結論: 階層的な分類法を使用した臍帯血プロテオームの視覚化により、新生児敗血症被検体において過剰に発現されるタンパク質の特異的なクラスターが示された。
新生児敗血症のための臍帯血バイオマーカーは、二次元の液体クロマトグラフィ及びタンデム質量分析(2D LC−MS−MS)にて同定され、コントロール及び確認された敗血症(CS)の試料からのCB試料は、2−DLCベースのタンデム質量分析の後に無標識定量化を行った。無標識定量化を行い0.05以下のp値と±2.0以上の倍数変化であったCBタンパク質を、コントロール被検体と新生児敗血症被検体との間で有意に異なって発現されるものとみなした(表1)。表1において異なって発現されたタンパク質の生物学的機能予測は、バイオインフォマティックスハーベスターを使用して実施した。以下の表1に、コントロール試料と新生児敗血症試料との間で異なって発現された臍帯血タンパク質を、それらのスイスプロット受託番号、説明、倍数変化及びp値とともに列挙する。タンパク質はそれらの生物学的機能に従って分類した。
Figure 2012516445
Figure 2012516445
Figure 2012516445
結論: 2D−LC MS−MS分析により、臍帯血中の新生児敗血症の60の潜在的バイオマーカーの差動的量が同定され、これらは統計学的に有意であった。
酵素結合免疫吸着測定法を使用した潜在的新生児敗血症バイオマーカーの確認: 2−DLC試験により合計10の有意に異なって発現されたタンパク質は、ELISAを用いて、77のコントロール及び5の新生児敗血症被検体のコホートにて互いに確認した。測定したタンパク質濃度は、log変換し、ANOVA試験を使用してコントロールと敗血症群間のペアワイズを比較した。比較が0.05以下のp値であったタンパク質を以下の表2に示す。それぞれの試料群における各タンパク質の平均濃度は、ELISAで測定したタンパク質濃度(ng/ml)の調和平均を計算することによって決定した(表2に示す)。
Figure 2012516445
結論: 個々の試料についての潜在的バイオマーカーのELISA分析により、2D−LC−MS−MS分析によって観察された候補タンパク質の差動的発現が確認された。
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Claims (16)

  1. 哺乳動物被検体における新生児敗血症の診断方法であって、
    (a)インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、
    (b)前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む方法。
  2. 被検体がヒト患者である、請求項1に記載の方法。
  3. 前記の試験したタンパク質のすべてが正常な臍帯血と比較して臍帯血試料において有意差を示す場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断することを含む、請求項2に記載の方法。
  4. 前記レベルがイムノアッセイによって決定される、請求項2に記載の方法。
  5. 前記レベルが質量分析法によって決定される、請求項2に記載の方法。
  6. 前記レベルがタンパク質アレイを用いて決定される、請求項2に記載の方法。
  7. 更に、インターロイキン-1受容体付属タンパク質前駆物質(配列番号:2)、インターロイキン-1受容体様1前駆物質(配列番号:4)、血清アミロイドAタンパク質前駆物質(配列番号:5)、CD5抗原様前駆物質(配列番号:6)、骨髄プロテオグリカン前駆物質(配列番号:8)、セレン結合タンパク質1(配列番号:9)、リポ多糖結合タンパク質前駆物質(配列番号:10)、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4前駆物質(配列番号:11)、オステオポンチン前駆物質(配列番号:12)、Rho GDP解離抑制因子2 (配列番号:13)、炭酸脱水酵素2 (配列番号:14)、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン前駆物質(配列番号:15)、コラーゲンα-5(IV)鎖前駆物質(配列番号:16)、結合組織増殖因子前駆物質(配列番号:17)、マクロファージコロニー刺激因子1前駆物質 (配列番号:18)、プロテインキナーゼC結合タンパク質NELL2 前駆物質(配列番号:19)、ニューデシン前駆物質(配列番号:20)、タンパク質ジスルフィドイソメラーゼ前駆物質 (配列番号:21)、膵臓リボ核酸分解酵素前駆物質(配列番:22)、δ様タンパク質前駆物質(配列番号:23)、クロモグラニンA 前駆物質(配列番号:24)、オステオモジュリン前駆物質(配列番号:25)、コラーゲンα-2(I)鎖前駆物質(配列番号:26)、Pro低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1前駆物質(配列番号:27)、ラミニンサブユニットγ1前駆物質(配列番号:28)、ラミニンサブユニットβ1前駆物質(配列番号:29)、コラーゲンα-1(II)鎖前駆物質 (配列番号:30)、タンパク質FAM3C前駆物質 (配列番号:32)、α-アクチニン1(配列番号:33)、F-アクチンキャップタンパク質サブユニットα1 (配列番号:34)、アミノペプチダーゼN (配列番号:35)、細胞接着分子1前駆物質 (配列番号:37)、エキソストシン2 (配列番号:39)、カテプシンD前駆物質 (配列番号:40)、神経原性座位ノッチホモログタンパク質3前駆物質 (配列番号:41)、ノエリン前駆物質 (配列番号:43)、エンドプラスミン前駆物質 (配列番号:45)、プロタンパク質転換酵素スブチリシン/ケキシンタイプ9前駆物質 (配列番号:46)、インスリン様成長因子結合タンパク質複合体 酸不安定鎖前駆物質 (配列番号:47)、エズリン(配列番号:48)、脂肪酸結合タンパク質、肝 (配列番号:49)、推定G-タンパク質共役受容体116前駆物質 (配列番号:50)、セプラーゼ (配列番号:51)、腫瘍性タンパク質誘導転写物3タンパク質前駆物質 (配列番号:52)、低酸素アップレギュレートタンパク質1前駆物質 (配列番号:53)、トランスゴルジ網膜内在性タンパク質2前駆物質 (配列番号:54)、トランスケトラーゼ(配列番号:55)、受容体型チロシンタンパク質ホスファターゼF前駆物質 (配列番号:56)、細胞接着分子1前駆物質 (配列番号:57)、低密度リポタンパク質受容体前駆物質 (配列番号:58)、78kDaグルコース調節タンパク質前駆物質 (配列番号:59)、punc e11隣接前駆物質 (配列番号:60)、マンノシル-オリゴ糖1,2αマンノシダーゼIA (配列番号:61)、ピルビン酸キナーゼアイソザイムM1/M2 (配列番号:62)、及びストレス誘発性リン酸化タンパク質1 (配列番号:63)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質を試験することを含む、請求項1から6のいずれか一に記載の方法。
  8. プロテオミクスプロファイルが、インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)なるタンパク質のレベルの情報を含み、このとき試験したタンパク質の一又は複数が正常な体液と比較して体液試料において有意差を示す場合に、前記被検体が新生児敗血症と診断される、請求項2に記載の使用。
  9. 前記の試験したタンパク質のすべてが正常体液と比較して体液試料において有意差を示す場合に、前記被検体が新生児敗血症と診断される、請求項8に記載の使用。
  10. 前記レベルがイムノアッセイによって決定される、請求項8に記載の使用。
  11. 前記レベルが質量分析法によって決定される、請求項8に記載の使用。
  12. 前記レベルがタンパク質アレイを用いて決定される、請求項8に記載の使用。
  13. インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質の検出のための抗体と試薬を具備するイムノアッセイキット。
  14. 前記タンパク質のすべてを検出するための抗体と試薬を具備する、請求項13に記載のイムノアッセイキット。
  15. (a)インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、
    (b)前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断すること
    を含む試験の結果及び/又はその試験に基づいた診断を含むレポート。
  16. (a)インスリン様成長因子結合タンパク質1前駆物質(配列番号:36)、インターロイキン-6前駆物質(配列番号:3)、C反応性タンパク質前駆物質(配列番号:1)、β-2-ミクログロブリン前駆物質(配列番号:7)、カテプシンB前駆物質(配列番号:38)、シスタチン-M前駆物質(配列番号:42)、インスリン様成長因子結合タンパク質2前駆物質(配列番号:44)、マトリックスメタロプロテイナーゼ-9(配列番号:64)、メタロプロテアーゼ阻害剤1前駆物質(配列番号:31)、及びα-1-酸性糖タンパク質1(配列番号:65)からなる群から選択される一又は複数のタンパク質のレベルを、被検体から得た体液の試料において、正常な体液又は新生児敗血症を示すことが知られている体液におけるレベルと比較して試験すること、そして、
    (b)前記レベルが前記正常な体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示すか、又は新生児敗血症を示すことが知られている前記体液におけるレベルと比較して統計学的に有意差を示さない場合に、前記被検体を新生児敗血症と診断すること
    を含む試験の結果及び/又はその試験に基づいた診断を貯蔵する有形の媒体。
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