JP2012253379A - 磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリ - Google Patents
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Abstract
【課題】信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを提供する。
【解決手段】磁気メモリセルが備えるトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層200の磁化容易軸方向に対して直交する方向、特に膜面垂直方向に45度の角度をなす方向に適当な磁界を印加した状態でスピントランスファートルクにより強磁性自由層の磁化反転を行う。
【選択図】図2
【解決手段】磁気メモリセルが備えるトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層200の磁化容易軸方向に対して直交する方向、特に膜面垂直方向に45度の角度をなす方向に適当な磁界を印加した状態でスピントランスファートルクにより強磁性自由層の磁化反転を行う。
【選択図】図2
Description
本発明は、高出力トンネル磁気抵抗素子を装備した磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリに関するものである。
高集積磁気メモリの記録再生セルに出力の大きなトンネル磁気抵抗効果素子を適用することが試みられている。トンネル磁気抵抗効果素子としては、絶縁体にAlの酸化物を用いたトンネル磁気抵抗効果素子や絶縁膜に酸化マグネシウムを用いたトンネル磁気抵抗効果素子が開示されている(T. Miyazaki and N. Tezuka, J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995),S. Yuasa. et al., Nature Material 3, 868(2004))。従来の不揮発性磁気メモリは、MOSFET上にトンネル磁気抵抗効果素子を形成したメモリセルにより構成される。スイッチングにMOSFETを利用し、ビット線とワード線に通電させることにより発生する電流誘起の空間磁場を使ってトンネル磁気抵抗効果素子の磁化方向を回転させて情報を書込み、トンネル磁気抵抗効果素子の出力電圧により情報を読み出す方式である。また、上記電流誘起の空間磁場を使った磁化回転のほかに、直接、磁気抵抗効果素子に電流を流すことにより磁化を回転させるいわゆるスピントランスファートルク磁化反転方式があり、例えば米国特許第5,695,864号明細書や特開2002−305337号公報に開示されている。また、特開2005−50907号公報には、強磁性自由層の磁化容易軸方向と平行な方向に、磁界印加することが記載されている。
J. Magn. Magn. Mater. 139, L231 (1995)
Nature Material 3, 868(2004)
Appl.Phys.Lett.85,5358(2004)
スピントランスファートルク磁化反転による書込み方式は、図17に示すように、一般的なメモリの書込み動作時間である10ナノ秒以下においては、スピントランスファートルク磁化反転の閾値電流が大幅に増大し、磁化反転に誤りが生じることが知られている。図17(a)は、Appl. Phys. Lett. 85, 5358 (2004)から引用した書込み電流に対する反転確率のプロット図である。この図から反転確率が0,1にならない領域が存在し、且つ書込み時間の短い領域で、反転確率を1にする書込み電流の値が著しく増大していることがわかる。図17(b)は、書込み時間に対する書込み電流の大きさを示した図であり、10ナノ秒以下の書込み時間において、書込み電流が増大することがわかる。図17(c)は、書込み電流に対して書込み確率をプロットした図であり、書込み確率が0,1にならない電流領域(I1以上I2以下)が存在することがわかる。
磁気メモリの情報の書込みは、通常10ナノ秒以下の時間において行われる必要がある。低消費電力かつ高信頼性をもつ高集積不揮発性磁気メモリの実現には、そのような短い時間においてトンネル磁気抵抗効果素子の記録層の磁化を低電流で誤りなく確実に反転させる必要がある。
本発明は、このような要請に応えることのできる磁気メモリセル及びランダムアクセスメモリを提供することを目的とする。
本発明では、磁気メモリセルを構成する巨大磁気抵抗効果素子やトンネル磁気抵抗効果素子の記録層である強磁性自由層の磁化容易軸と交差する方向、好ましくは直交する方向であって、強磁性自由層の膜面に対して垂直から45度方向に磁界を印加しながらスピントランスファートルクにより記録層の磁化反転を行う。磁界印加は、強磁性自由層の磁化容易軸と平行に設けた配線に電流を流すことによって行うことができる。磁界印加は、また、強磁性自由層の磁化容易軸に対して平行に配置され、逆向きの磁区の同磁極が向き合った境界領域(磁壁)を有する強磁性配線によって行うことができる。
本発明によると、スピントランスファートルクによる書き込み電流を低減して、書き込みの誤り率を低減することができ、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、磁気抵抗効果素子としてトンネル磁気抵抗効果素子を用いる例によって本発明を説明するが、トンネル磁気抵抗効果素子の代わりに巨大磁気抵抗効果素子を用いても同様の効果を得ることができる。
図1は、トンネル磁気抵抗効果素子を搭載した本発明による磁気メモリセルの構成例を示す概略図である。C−MOS500は、2つのn型半導体410,413と一つのp型半導体411からなる。n型半導体413に接続されたドレイン電極414は、電極415,416を介して接地されている。n型半導体410にはソース電極409が接続されている。ゲート電極412のON/OFFにより、ソース電極409とドレイン電極414の間に流れる電流のON/OFFが制御される。ソース電極409に電極408〜405が積層され、電極403を介してトンネル磁気抵抗効果素子402が接続されている。電極405と電極403の間には何層かの電極が存在してもかまわない。ビット線401はトンネル磁気抵抗効果素子402に接続されている。ビット線401とトンネル磁気抵抗効果素子402の間には何層かの電極層あるいは保護膜が形成されていてもかまわない。
本発明の磁気メモリセルは、更にトンネル磁気抵抗効果素子の強磁性自由層の位置に空間磁界を発生させるための配線100を有する。配線100は、以下に説明するように、トンネル磁気抵抗効果素子402中の強磁性自由層の位置を基準に配置される。磁気メモリセルへの情報書き込みに当たっては、配線100から発生する空間磁界を磁気メモリセルの強磁性自由層に印加しながらゲート電極412をONすると、スピントランスファートルクを発生させる電流が、ビット線401と電極403の間のトンネル磁気抵抗効果素子402に流れる。スピントランスファートルクは、強磁性自由層200、絶縁障壁層201、強磁性固定層202で構成されるトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すことで発生し、強磁性自由層200の磁化を反転させる作用を有する。情報の読み出しは、強磁性自由層200と強磁性固定層202の磁化方向の相対角度で生ずるトンネル磁気抵抗効果を検出することにより行う。
図2は図1に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図2(a)は平面模式図、図2(b)は図2(a)のB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上にビット線を兼ねる保護電極膜401が形成されている。強磁性自由層200と強磁性固定層202は積層順が逆になってもよい。強磁性自由層200の位置に空間磁界を発生させるための配線100は、強磁性自由層200を基準に配置される。
図3は、図2から更にトンネル磁気抵抗効果素子を構成する強磁性自由層200と空間磁界を印加電流により発生させるための配線100を取り出して示した模式図である。図3(a)は平面摸式図、図3(b)は図3(a)のB−B断面摸式図である。
配線100は強磁性自由層200の磁化容易軸方向、この場合、強磁性自由層200の長軸方向に平行に配置されている。さらに、配線100は強磁性自由層200の膜面に対して、垂直方向下方に角度θの方向に配置されている。ここで角度θは0度から90度の範囲で選択可能であるが、図3(b)において、配線100の断面中心と強磁性自由層200の断面中心を結ぶ線800が強磁性自由層200の膜面に対して45度の角度をなすようにするのが最も望ましい。θ=45度となるように配線100を配置することにより、スピントランスファートルクによる書込み電流の低減と書込み誤り率を大幅に低減できる。配線100に電流を流すことにより、強磁性自由層200に磁界が印加される。配線100に流す電流の方向と強磁性自由層200に印加される磁界の方向の関係は図3に示すとおりであり、矢印700の方向に電流を流したときに、強磁性自由層200には矢印702の方向に磁界が印加される。逆に矢印701の方向に電流を流したとき矢印703の方向に磁界が印加される。
なお、図1、図2及び図3には、配線100を強磁性自由層200の膜面に対して垂直方向下方に配置した例を示したが、図4に示すように、配線100を強磁性自由層200の膜面に対して垂直方向上方に角度θをなすように配置してもよい。ここで、図4は図3に対応する図であり、図4(a)は平面摸式図、図4(b)は図4(a)のB−B断面摸式図である。
図5は、配線100と強磁性自由層200の距離と、強磁性自由層200に印加される磁界の大きさとの間の関係を示す図である。図5(a)は配線100の幅が100nmのとき、図5(b)は配線100の幅が200nmのときの関係図である。それぞれ配線100に流す電流密度を104A/cm2〜106A/cm2の間で示した。強磁性自由層200に印加される磁界は、配線100からの距離が近く、電流密度が大きく、配線100の幅が大きいほど大きくなる。
配線100からの発生磁界は、強磁性自由層200のスピントランスファートルク磁化反転を用いた書込み操作のときに書込み電流とともに印加する。図6は、磁界を印加したときと印加しないときの書込み電流の大きさを、書込み電流印加時間に対してプロットした図である。図中のIは書込み電流、Icは閾値電流、tは電流印加時間を表す。印加した磁界の大きさは、強磁性自由層200の異方性磁界の1/10である。印加磁界の大きさは、異方性磁界より小さいことが望ましい。例えば、書込み電流を1ナノ秒印加したときには、磁界がある場合はない場合に比べ書込み電流は1/2程度減少できる。磁界を印加したときの書込み電流の低減分は、印加時間が短くなるほど大きくなる。さらに、磁界を印加しない場合に比べて、磁界を印加した場合にはスピントランスファートルクによる磁化反転の確率が2倍以上に向上した。
ここで、本発明のように強磁性自由層に磁界を印加しながら書込み電流を流すことによってスピントランスファートルク磁化反転の書込み電流の低減と書込み誤り率の低減を達成できる理由について述べる。通常、外部磁界を使った磁化反転による書込みの場合、強磁性自由層の磁化方向(特に磁化容易軸)に平行に、かつ磁化を向けたい方向に外部磁界を印加する。これは、磁化は外部磁界の方向に向く性質を有するからである。一方、スピントランスファートルク磁化反転はそれとは異なる特徴を有し、その特徴について図7を用いて説明する。
図7は、磁気メモリセルを構成するトンネル磁気抵抗効果素子を示している。図7(a)は上面図、図7(b)は図7(a)のB−B断面を示す図、図7(c)は図7(a)のC−C断面を示す図である。図中、x方向は強磁性自由層200の長手あるいは磁化容易軸方向、y方向は強磁性自由層200の長手あるいは磁化容易軸方向に対して垂直な方向、z方向は膜面垂直方向を表す。スピントランスファートルク磁化反転では、強磁性自由層200の膜面垂直方向に書込み電流7007を印加する。図の場合、強磁性自由層200の磁化は初期状態でx方向を向いている。x方向の磁化7001は、xy面内では磁化方向7001、xz面内では磁化方向7004、yz面内では磁化方向7008にそれぞれ方向成分を有している。ここで、書込み電流7007が印加されると、xy面内、xz面内、xz面内において磁化方向7001、7004、7008はそれぞれ磁化反転方向7003、7006、7010に回転し、磁化方向7002、7005、7009へと進む。換言すると、膜面内x方向に向いていた磁化は、y方向とz方向にベクトル成分をもつ方向へ回転がはじまる。したがって、磁化反転方向7003、7006、7010で合成される空間方向へ磁界を印加することにより、スピントランスファートルク磁化反転が円滑に進み、スピントランスファートルク磁化反転の書込み電流閾値を低減し、磁界が磁化回転を確実に一方向へ励起させることが可能である。本発明では、前記磁化反転方向7003、7006、7010で合成される空間方向に、図3に示した角度θを合わせるようにする。
図8は、図1に示した磁気メモリセルを複数個アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図である。ゲート電極412とビット線401がメモリセルに電気的に接続されている。ビット線401を制御するドライバーとしてビット線ドライバー1001が設置され、ゲート電極412を制御するドライバーとしてゲートドライバー1002が設置されている。
配線100は、上述したように、各磁気メモリセルに対してトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層の位置を基準に配置されており、本実施例ではビット線401に平行に配置されている。また、配線100への電流印加制御のために、磁界発生配線制御ドライバー1003を有する。磁気メモリセルを構成するトンネル磁気抵抗効果素子の強磁性自由層にスピントランスファートルク磁化反転を用いて情報書込みを行う際に、配線100に電流を流し、情報書込みを行うべき磁気メモリセルの強磁性自由層に磁界を印加する。配線100への電流印加は、書込みと同時に、書込みの際の時間だけ行うのが望ましいが、常時印加していてもかまわない。配線100の幅は100nm以下が望ましい。配線100の幅を100nmとすることにより、ギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリが実現可能になる。
図9は、本発明による磁気メモリセルの他の構成例を示す図である。本実施例の磁気メモリセルは、配線100の代わりに強磁性配線101を用いた点で図1に示した磁気メモリセルと異なる。強磁性配線101は、トンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層の位置を基準に配置され、逆向きに磁化された2つの領域を有し、その逆向きの磁化の境界領域(磁壁)から発生される空間磁界をトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層に印加する働きをする。
図10は、図9に示した磁気メモリセルの主要部分を取り出して示した模式図であり、図10(a)は平面模式図、図10(b)はそのB−B断面模式図である。図示した例では、電極406〜403上に強磁性固定層202、絶縁障壁層201、強磁性自由層200からなるトンネル磁気抵抗効果素子402が積層されている。強磁性自由層200の上に磁気メモリセルのビット線を兼ねる保護電極膜401が形成されている。強磁性自由層200と強磁性固定層202は積層順が逆でもよい。
図11は、図10から更にトンネル磁気抵抗効果素子を構成する強磁性自由層200と強磁性配線101を取り出して示した模式図である。図11(a)は上面摸式図、図11(b)は図11(a)のB−B断面摸式図である。
強磁性配線101は強磁性自由層200の磁化容易軸方向、この場合、強磁性自由層200の長軸方向に平行に配置される。さらに、強磁性配線101は2つの逆向きに磁化された領域102と103を有し、その境界領域104ではそれぞれの磁極のN極が向き合っている。この境界領域104から、放射状に洩れ空間磁界が発生している。境界領域104は強磁性自由層200の膜面に対して、膜面水平方向から膜面垂直方向に角度をなすように配置されている。つまり、図11(b)に示すように、強磁性配線101のN極の向かい合った境界領域104の面中心と強磁性自由層200の断面中心を結ぶ線802が強磁性自由層200の膜面に対して角度θをなすように配置されている。強磁性配線101及び境界領域104をこのような配置とすることにより、境界領域104から発生される洩れ空間磁界708が、強磁性自由層200に対して角度θ方向に印加される。角度θは45度が望ましいが、0度以上90度未満の角度としても効果は得られる。境界領域104は、強磁性配線101に適当な電流を流すことにより移動させることが可能である。
図9に戻って、磁気メモリへの磁気情報書込みは、強磁性配線101からトンネル磁気抵抗効果素子402の強磁性自由層200に磁界を印加しながら、保護電極膜と電極406の間に電流を流してスピントランスファートルクによる磁化反転方式によって行う。スピントランスファートルクは、強磁性自由層200、絶縁障壁層201、強磁性固定層202で構成されるトンネル磁気抵抗効果素子に電流を流すことで発生し、強磁性自由層200の磁化を反転させる作用をもつ。また、強磁性自由層200と強磁性固定層202の磁化方向の相対角度によって生ずるトンネル磁気抵抗効果を利用して情報の読み出しを行う。
境界領域104から発生する磁界は、強磁性自由層200のスピントランスファートルク磁化反転を用いた書込み操作のときに印加することが望ましいが、常時印加されていてもかまわない。強磁性自由層200に強磁性配線101の境界領域104から漏れ空間磁界を印加したときと印加しないときのスピントランスファートルク磁化反転に必要な書込み電流の違いは、前述した配線からの空間磁界を用いた場合と同様であり、図6に示した関係を有する。例えば、書込み電流を1ナノ秒印加したときには、磁界を印加することによって磁界を印加しない場合に比べて書込み電流を1/2程度減少できる。磁界を印加したときの書込み電流の低減分は、印加時間が短くなるほど大きくなる。さらに、磁界を印加しない場合に比べてスピントランスファートルクによる磁化反転の確率は向上する。
なお、図10及び図11では、強磁性配線101を強磁性自由層200の膜面に対して垂直方向下方に配置した例について説明したが、図12に示すように、強磁性配線101を強磁性自由層200の膜面に対して垂直方向上方に角度θをなすように配置しても同様の効果を得ることができる。ここで、図12は図11に対応する図であり、図12(a)は平面図、図12(b)は図12(a)のB−B断面図である。
図13は、図9に示した磁気メモリセルを複数アレイ状に配置して構成した本発明による磁気ランダムアクセスメモリの構成例を示す図である。ゲート電極412とビット線401が各磁気メモリセルに接続されている。ビット線401及びゲート電極412を流れる信号電流は、それぞれビット線ドライバー1001及びゲートドライバー1002によって制御される。強磁性配線101は、本実施例ではビット線401に平行に配置されている。磁気メモリセルを構成するトンネル磁気抵抗効果素子の強磁性自由層にスピントランスファートルク磁化反転を用いて情報書込みを行う際に、強磁性配線101の磁化の境界領域をその磁気メモリセルの位置に移動させ、磁化の境界領域から発生する空間磁界を強磁性自由層に印加する。強磁性配線101の磁化の境界領域を移動するための印加電流の制御は、磁界発生配線制御ドライバー1003を用いて行われる。配線100の幅は100nm以下が望ましい。配線100の幅を100nmとすることにより、ギガビット級の容量をもつ磁気ランダムアクセスメモリの実現が可能になる。
図13に示した磁気ランダムアクセスメモリの情報書込みの操作の一例について、図14を用いて説明する。図14は、強磁性配線101と磁気メモリセルの強磁性自由層を取り出して示した平面模式図である。
図14において、2001〜2007は磁気メモリセルを構成する強磁性自由層の各々を表す。強磁性配線101は逆向きに磁化した領域102,103を有し、強磁性配線101の2つの磁化102,103は境界領域104でN極同士が向かい合っている。図中の矢印は磁化の方向を示す。
初めに、強磁性自由層2001〜2007には、図14(a)に示すように情報が記録されているものとする。図14(a)は、また、強磁性自由層2001を反転する直前の状態を表している。強磁性配線101の境界領域104は、強磁性自由層2001に対して漏洩磁界を印加する位置にある。この状態で強磁性自由層2001が属するトンネル磁気抵抗素子に書き込み電流を流すと、強磁性自由層2001の磁化は、強磁性配線101の境界領域104から印加される漏洩磁界にアシストされて小さな書き込み電流によって生じるスピントランスファートルクにより、図14(b)に示す強磁性自由層2001のように確実に磁化反転を起こす。
強磁性配線101の磁化の境界領域104は、強磁性配線101に流す電流の方向と反対向きに移動する。境界領域104の移動制御は、強磁性配線101に流す電流の向き、通電時間、電流密度を制御することにより行われる。電流の向きは、境界領域104を移動させたい方向の逆向きに設定する。通電時間は、強磁性配線101に電流を流すことによる境界領域104の移動速度が100m/s程度であることを勘案して設定される。例えば、境界領域104を200nm移動させるときは、電流を2ナノ秒の間流せばよい。電流密度は、108A/cm2台になる。
次に、強磁性自由層2002の磁気情報を書き換えたいときは、強磁性配線101に図の左方向に流れる電流を流し、図14(b)のように磁化の境界領域104を強磁性自由層2002の位置へ移動させる。それと同時に、強磁性自由層2002が属するトンネル磁気抵抗素子に書き込み電流を流し、スピントランスファートルクにより、強磁性自由層2002の磁化を反転させる。次に、強磁性自由層2006の磁気情報を書き換えたいときは、強磁性配線101に図の左方向に流れる電流を流し、図14(c)に示すように、強磁性配線101の磁化の境界領域104を強磁性自由層2006に漏洩磁界が印加される位置に移動させる。それと同時に強磁性自由層2006が属するトンネル磁気抵抗素子に書き込み電流を流しスピントランスファートルクにより強磁性自由層2006の磁化を反転させる。最後に強磁性自由層2004の磁気情報を書き換えたいときは、強磁性配線101に図の右方向に流れる電流を流し、図14(d)のように、磁化の境界領域104を強磁性自由層2004に漏洩磁界が印加される位置に移動させる。それと同時に強磁性自由層2004が属するトンネル磁気抵抗素子に書き込み電流を流し、スピントランスファートルクにより、強磁性自由層2004の磁化を反転させる。
また、境界領域104の位置をより確実に制御するには、図15に示すように、境界領域104を停止させたい位置に、強磁性配線101の幅よりも小さい括れ部900を形成しておくのがよい。磁気ランダムアクセスメモリ内の全ての強磁性自由層の位置に対応させて、強磁性配線101に括れ部900を形成しておくのが望ましい。
図16は、本発明の磁気メモリセルに用いられる強磁性自由層200と強磁性固定層202に用いられる材料の例について示した図である。強磁性自由層200及び強磁性固定層202には、CoFeB,CoFe,CoB,CoFe,Co,Fe,NiFeなどの磁性材料を単層で用いることができる。また、強磁性自由層200及び強磁性固定層202は、それぞれ第一の強磁性自由層210と第二の強磁性層211、第三の強磁性層212と第四の強磁性層213を、図16に示した材料の組み合わせに従って、反平行結合するRuなどの中間層214を選択して3層の構成で使用してもかまわない。絶縁障壁層201には、酸化マグネシウム,アルミニウム酸化物、酸化シリコンなどの材料を用いることができる。
以上、磁気メモリセルを構成する磁気抵抗効果素子402としてトンネル磁気抵抗効果素子を用いる実施例について説明してきた。トンネル磁気抵抗効果素子の代わりに巨大磁気抵抗効果素子を用いる場合には、絶縁障壁層201が非磁性導電層に置き換わることになる。
本発明によると、信頼性の高い低消費電力不揮発性メモリを実現することが可能である。また、本発明によると、ギガビット級の高密度磁気メモリを実現可能である。
100…配線、101…強磁性配線、102…強磁性配線、103…強磁性配線、104…境界領域、200…強磁性自由層、201…絶縁障壁層、202…強磁性固定層、401…ビット線、402…磁気抵抗効果素子、409…ソース電極、412…ゲート電極、414…ドレイン電極、500…トランジスタ、1001…ビット線ドライバー、1002…ゲートドライバー、1003…磁界発生配線制御ドライバー、2001…強磁性自由層、2002…強磁性自由層、2003…強磁性自由層、2004…強磁性自由層、2005…強磁性自由層、2006…強磁性自由層、2007…強磁性自由層
Claims (10)
- 非磁性膜と、前記非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、
前記強磁性自由層に当該強磁性自由層の磁化容易軸方向と交差する方向の磁界を印加するための磁界印加手段とを有し、
前記磁界印加手段は前記磁気抵抗効果素子の横に並んで配置されており、
前記磁界印加手段によって前記強磁性自由層に磁界を印加した状態で、前記磁気抵抗効果素子に電流を流してスピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とする磁気メモリセル。 - 請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記非磁性膜は絶縁膜であることを特徴とする磁気メモリセル。
- 請求項1記載の磁気メモリセルにおいて、前記磁気抵抗効果素子に流れる電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とする磁気メモリセル。
- 非磁性膜と、前記非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極と、
前記強磁性自由層の磁化容易軸に対して平行に配置された配線とを有し、
前記配線は前記磁気抵抗効果素子の横に並んで配置されており、
前記配線から発生された磁界を前記強磁性自由層に印加した状態で前記磁気抵抗効果素子に電流を流し、スピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とする磁気メモリセル。 - 請求項4記載の磁気メモリセルにおいて、前記非磁性膜は絶縁膜からなることを特徴とする磁気メモリセル。
- 請求項4記載の磁気メモリセルにおいて、前記配線は前記強磁性自由層の膜面を含む平面に対して上下方向にずれた位置に配置されていることを特徴とする磁気メモリセル。
- 請求項4記載の磁気メモリセルにおいて、前記磁気抵抗効果素子に流れる電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を有することを特徴とする磁気メモリセル。
- 非磁性膜を挟んで形成された強磁性自由層と強磁性固定層とを有する磁気抵抗効果素子、前記磁気抵抗効果素子の膜厚方向に電流を流すための電極、及び前記磁気抵抗効果素子に流れる電流をオン・オフ制御するスイッチング素子を各々備える磁気メモリセルが2次元アレイ状に配列されたメモリセル群と、
前記メモリセル群の中の所望の磁気メモリセルを選択する選択手段と、
前記2次元アレイを構成する磁気メモリセルの一列毎に、当該列に属する複数の磁気メモリセルに含まれる複数の強磁性自由層の磁化容易軸方向に平行になるように配置された配線と、
前記配線に電流を流す手段とを有し、
前記配線は前記磁気抵抗効果素子の横に並んで配置されており、
前記選択手段によって選択された磁気メモリセルの前記強磁性自由層に、当該磁気メモリセルに対応付けられた前記配線から発生された磁界を印加した状態で当該磁気メモリセルの前記磁気抵抗効果素子に電流を流し、スピントランスファートルクによって前記強磁性自由層の磁化を反転させて情報の書き込みを行うことを特徴とするランダムアクセスメモリ。 - 請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記非磁性膜は絶縁膜からなることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
- 請求項8記載のランダムアクセスメモリにおいて、前記配線は前記強磁性自由層の膜面を含む平面に対して上下方向にずれた位置に配置されていることを特徴とするランダムアクセスメモリ。
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