JP2012253158A - 化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極および太陽電池、並びに上記裏面電極を製造するためのスパッタリングターゲット - Google Patents

化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極および太陽電池、並びに上記裏面電極を製造するためのスパッタリングターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】約450〜500℃程度の高温熱履歴後も低い電気抵抗を有し、基板との密着性にも優れた化合物薄膜太陽電池用の裏面電極に適した新規な材料を提供する。
【解決手段】基板上に化合物半導体薄膜の光吸収層を有する太陽電池に用いられる裏面電極であって、裏面電極は、基板側から順に、Cu合金およびMoの積層構造を有している。Cu合金は、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有することが好ましい。
【選択図】図2

Description

本発明は、化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極および当該裏面電極を備えた太陽電池、並びに当該裏面電極の製造に用いられるスパッタリングターゲットに関するものである。
化合物半導体薄膜は、従来のシリコン半導体薄膜に比べて低コストで製造できることなどから、太陽電池の光吸収層として汎用されており、代表的には、CuInSe、CuInGaSe、CuZnSnSなどの化合物半導体薄膜からなる光吸収層が挙げられる。
図1に、CuInGaSe(CIGS)系化合物半導体薄膜を光吸収層に用いた太陽電池の構成の一例を示す。図1に示す太陽電池は、Naを含むソーダーライムガラス(SLG)基板上にMoなどの裏面電極層、CIGS系薄膜のp型光吸収層、CdSなどの高抵抗バッファー層、窓層、透明電極層などが積層されて構成されている。上記太陽電池は、スパッタリング法によって裏面電極層を基板上に形成した後、蒸着法、スパッタリング法、塗布法などにより光吸収層、高抵抗バッファー層、窓層、透明電極層などが順次形成される。
図1に示すように裏面電極は、基板の次に成膜される薄膜であり、裏面電極の上に光吸収層を成膜する工程では約450〜500℃程度の高温熱履歴を受けるために優れた耐熱性を有していることが必要である。耐熱性が低い裏面電極を用いると、下地のガラス基板との熱膨張係数差が大きくなり、ガラス基板からアルカリ成分が必要以上に過剰に拡散するため、密着性劣化などの問題が生じる。また、裏面電極には、光吸収層に含まれるセレン(Se)や硫黄(S)などに対して高い耐食性を備えていることも要求される。このような観点から、裏面電極としては、図1に示すように、耐熱性と耐食性に優れたモリブデン(Mo)電極が汎用されている。
詳細には裏面電極は、上述の問題を解消するために、単層でなく2層以上の積層構造を有しているものが多い。例えば特許文献1には、Moスパッタリングターゲットを用い、不活性ガスのArガス中でDCスパッタリング法によりMo裏面電極を成膜するに当たり、印加電圧を調整することによって微粒且つ高密度で結晶粒径が調整されたMo層を含む積層構造を形成する方法が開示されている。また、特許文献2には、アルカリ金属を混入させた裏面電極材料を用いて第1の電極層を形成するステップと、アルカリ金属を実質的に含まない裏面電極材料を用いて第2の電極層を形成するステップとによって裏面電極を形成する方法が開示されている。
また、非特許文献1には、CIGS薄膜太陽電池において、SLG基板とMo裏面電極(膜厚30〜200nm)との間にFe、Cr、Co、Cuなどの金属材料を挿入した裏面電極層の場合における吸収層やバッファー層形成後の密着性などを比較検討した結果が報告されている。
特開2006−165386号公報 特許第4384237号公報
Y.Kamikawa−Shimizu et al.,page3095−3097、24th European Photovoltaic Solar Energy Conference,21−25 September 2009,Hamburg,Germany
裏面電極には、上述した特性のほか、太陽電池の成膜工程で被る高温熱履歴(約450〜500℃程度)を受けた後も基板との密着性に優れており、且つ、低い電気抵抗率を有していることが要求される。しかしながら、Moの電気抵抗は高く、例えば、基板との密着性を確保可能な成膜条件下(例えば、約8〜10mtorrといった高ガス圧成膜条件下)におけるMoの電気抵抗率は約20μΩ・cm程度と高いため、Moより低い電気抵抗率を有する裏面電極の提供が望まれている。しかしながら、前述した特許文献1および2は、これらの特性について何ら考慮されていない。また、上記非特許文献1では、実験を行なった種々の金属材料中、最も低い電気抵抗率が期待される純Cuを用いたMo/純Cu/SLGの構造では、基板との密着性が不足し、望ましくないことが報告されている。
一方、太陽電池の技術分野ではなく、液晶ディスプレイなどの表示装置の技術分野では、TFTの製造過程で被る熱履歴後も、低い電気抵抗と基板との高い密着性を兼ね備えたCu合金が提案されている。しかし、表示装置の製造工程では、せいぜい、約250〜400℃程度の熱履歴を受けるに過ぎず、化合物薄膜太陽電池用の裏面電極に求められる、400℃超の更に高い高温熱履歴(約450〜500℃程度)を受けたときの材料設計指針を教示するものではない。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、約450〜500℃程度の高温熱履歴後も低い電気抵抗率を有し、基板との密着性にも優れた化合物薄膜太陽電池用の裏面電極に適した新規な材料(裏面電極)、および当該裏面電極に用いられる材料を製造するためのスパッタリングターゲットを提供することにある。
上記課題を解決し得た本発明に係る化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極は、基板上に化合物半導体薄膜の光吸収層を有する太陽電池に用いられる裏面電極であって、前記裏面電極は、基板側から順に、Cu合金およびMoの積層構造を有するところに要旨を有するものである。
本発明の好ましい実施形態において、前記Cu合金は、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有するものである。
本発明の好ましい実施形態において、前記基板は、Naを含むガラス基板である。
本発明には、上記の裏面電極を備えた太陽電池も包含される。
また、上記課題を解決し得た本発明のスパッタリングターゲットは、上記のいずれかに記載の化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極の製造に用いられるスパッタリングターゲットであって、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有し、残部:Cuおよび不可避的不純物である。
本発明によれば、基板側から順に、Cu合金およびMoの積層構造で構成される裏面電極を用いているため、約450〜500℃程度の高温熱履歴を受けた後も低い電気抵抗率を有し、且つ、基板との高い密着性を確保することができる。しかも本発明の裏面電極は、光吸収層を構成するSeやSに対する耐食性にも優れているため、化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極として非常に有用である。
図1は、裏面電極としてMoを用いた、従来の代表的な太陽電池の構成を模式的に示す断面図である。 図2は、裏面電極としてMoとCu合金の2層構造を用いた、本発明の太陽電池の代表的な構成を模式的に示す断面図である。
本発明者らは、化合物半導体薄膜太陽電池に用いられる裏面電極であって、その上に形成される光吸収層を構成するSeやSに対する耐食性を確保しつつ、特に、光吸収層形成による400℃超の高温熱履歴(約450〜500℃程度)を受けた後も、基板(特に、安価で大面積化が可能なソーダライムガラス基板)との密着性に優れており、しかも低い電気抵抗率を有する裏面電極を提供するとの観点から、従来のMo裏面電極を中心に検討を行なった。その結果、SeやSに対する高い耐食性確保の観点から、光吸収層側にMoを設けると共に、高温熱履歴後も基板との高い密着性および低い電気抵抗率を確保するとの観点から、基板側にCu合金(好ましくは所定量のTiおよび/またはAlを含むCu−Ti/Al合金)を設けた積層構造の裏面電極を採用すれば所期の目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極は、基板上に化合物半導体薄膜の光吸収層を有する太陽電池に用いられる裏面電極であって、前記裏面電極は、基板側から順に、Cu合金(下層)およびMo(上層)の積層構造を有するところに特徴がある。
本発明に係る積層構造の裏面電極において、最大の特徴部分は、基板側にCu合金を設けたところにある。前述した非特許文献1に教示されているように、純Cuは基板との密着性が低く、配線材料が剥がれるといった問題がある。これに対し、本発明では、好ましくは所定量のTiおよび/またはAlを含むCu−Ti/Al合金(残部:Cuおよび不可避的不純物)を用いているため、約450〜500℃程度の高温熱履歴を受けた後にガラス基板との界面側に薄い濃化層を形成し、基板との高い密着性を確保でき、且つ、低い電気抵抗率を維持できる(後記する実施例を参照)。
ここで、TiおよびAlは、上記特性の確保に有用な元素であり、多くの基礎実験から選択されたものである。これらの元素は単独で添加しても良いし、併用しても良い。Alが0.5原子%未満、Tiが1.0原子%未満では、これらの特性を両立させることができず、高温熱履歴後の密着性が低下した(後記する実施例を参照)。AlおよびTiが多くなると、電気抵抗率が増加するようになるため、各元素の上限を10原子%とすることが好ましい。低い電気抵抗率を確保するとの観点からすれば、Al量およびTi量の上限は少ない方が良く、より好ましくは、Al量の上限は8.0原子%以下、Ti量の上限は8.0原子%以下であり、更に好ましくは、Al量の上限は5.0原子%以下、Ti量の上限は5.0原子%以下である。
本発明の裏面電極は、上述したCu合金の上(直上)にMoが形成されたものであり、Moは、その上の光吸収層に接触している。光吸収層側にMoを設置することにより、光吸収層を構成するSeやSに対する耐食性が高められる。
本発明に係る裏面電極(積層構造)の膜厚(全厚)は、おおむね、0.2〜1.0μmであることが好ましい。上記膜厚を薄くし過ぎると、SeやSに対する耐食性不足や裏面電極の断面積減少による電気抵抗値の増大などの問題が生じる。一方、上記膜厚を厚くし過ぎると、膜応力増加による密着性低下の誘発や材料コストの上昇を招くなどの問題があるからである。また、Cu合金(下層)およびMo(上層)の各厚さは、上記範囲内で適切に制御すれば良いが、好ましくは、Cu合金(下層)の厚さをおおむね、0.1〜0.4μmとし、Mo(上層)の厚さをおおむね、0.1〜0.4μmとし、より好ましくは、Cu合金(下層)の厚さをおおむね、0.2〜0.4μmとし、Mo(上層)の厚さをおおむね、0.1〜0.2μmとする。
本発明の裏面電極は、スパッタリング法によってスパッタリングターゲットを用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法によれば、成分や膜厚の膜面内均一性に優れた薄膜を容易に形成することができる。
具体的には、基板上に、上記のCu合金を構成する材料をスパッタリング法により成膜して下層を形成した後、その上に、Moをスパッタリング法により成膜して上層を形成し、積層構成とすればよい。スパッタリング法を用いれば、スパッタリングターゲットとほぼ同じ組成のCu合金膜を成膜できる。そこでスパッタリングターゲットの組成を調整することによって、Cu合金膜の組成を調整できる。例えば、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有し、残部:Cuおよび不可避的不純物であるCu合金スパッタリングターゲットを用いて、上記Cu合金膜を成膜することもでき、このようなスパッタリングターゲットも本発明の範囲内に包含される。あるいは、異なる組成のCu合金ターゲットを用いて所望のCu合金膜を成膜しても良く、あるいは、純Cuターゲットに合金元素の金属をチップオンすることによって所定のCu合金膜を成膜しても良い。
上記スパッタリングターゲットは、例えば真空溶解法や粉末焼結法によって製造することができる。
上記Cu−Ti/Al合金膜は、例えば以下のスパッタリング条件で成膜することが好ましい。なお、上記Cu合金膜の厚さは、例えば、スパッタ時間やパワー密度などを変化させることによって変更することができる。
到達真空度:約1×10-5torr以下
ガス圧:約1〜5mtorr
パワー密度:約1〜10W/cm2(4インチφターゲットの面積で規格化)
基板温度:室温〜300℃
また、Mo膜は、例えば以下のスパッタリング条件で成膜することが好ましい。なお、Mo膜の厚さは、例えば、スパッタ時間やパワー密度などを変化させることによって変更することができる。
到達真空度:約1×10-5torr以下
ガス圧:約1〜5mtorr
パワー密度:約1〜10W/cm2(4インチφターゲットの面積で規格化)
基板温度:室温〜300℃
本発明では、Cu合金膜(下層)およびMo合金膜(上層)の積層膜を効率よく作製するために、例えば、下層と上層のスパッタ時のパワー密度を適切に調整することによってスパッタ時間の差が小さくなるようにして成膜することが好ましい。
本発明には、上記裏面電極を備えた太陽電池も包含される。前述したように本発明の特徴部分は、裏面電極の構成を特定したところにあり、裏面電極以外の構成は太陽電池の分野で通常用いられるものであれば特に限定されない。以下、図2を参照しながら本発明の太陽電極を構成する各要件について説明する。
本発明に用いられる基板は、安価で大面積化が可能なソーダライムガラス基板(珪酸、ソーダ灰、石灰を主な原料とするガラス基板)のほか、低アルカリガラス基板、ステンレスやチタンなど金属基材あるいは樹脂基材などが用いられる。このうち製造コストなどのバランスを考慮して好ましいのは、ソーダライムガラス基板であり、ソーダライムガラス基板を用いれば、Naを含む基板からのNa拡散効果により光吸収層の結晶粒粗大化効果が有効に発揮されるため、太陽電池としての変換効率特性が向上する。
上記裏面電極の上に形成される光吸収層は、例えば、Seを含む光吸収層として、Gaを含むCuInGaSe(CIGS)系光吸収層、Alを含むCuInAlSe(CIAS)系光吸収層、GaやAlを含まないCuInSe系光吸収層など:Sを含む光吸収層として、例えば、CuZnSnS(CZTS)、CuInSなどが代表的に例示される。
上記光吸収層の上に形成されるバッファー層としては、例えば、CdS、InS、ZnSなどが挙げられる。また、上記バッファー層の上に形成される窓層としては、例えば、CdS、ZnO、ZnMgOなどが挙げられる。また、上記窓層の上に形成される透明電極層としては、例えば、ITO薄膜、Al添加のZnOなどが挙げられる。また、上記透明電極層の上に形成される取り出し電極としては、例えば、Al、Ag、Auなどが挙げられ、透明電極層と取り出し電極との間の密着層としては、例えば、NiCr、Crなどが挙げられる。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限されず、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
本実施例では、表1〜3に記載の種々の裏面電極用試料を用い、成膜後の電気抵抗率、並びに熱処理後の電気抵抗率および基板との密着性を調べた。表1は、従来のMo裏面電極を模擬した例であり、表2および表3は、(上層)Mo−(下層)Cu−Ti/Al合金膜の積層試料を用いた例である。表2と表3とは、上層および下層の膜厚が異なること以外、実質的に同じである。
(表1のNo.1〜4について)
ソーダライムガラス基板(テクノクオーツ(株)製、厚さ:0.7mm、φ:2インチ)上にMo膜(300nm)を成膜した。スパッタリング条件は、到達真空度:7×10-6torr以下、Arガス圧:2mtorr、成膜パワー密度:3.2W/cm2(4インチφターゲットの面積で規格化)、基板温度:室温とし、表1に示すようにArガス圧を2〜10mtorrの範囲で変化させ、表1のNo.1〜4の試料(Mo単層膜)を得た。
(表1のNo.5について)
上記のSLG基板を用い、表1のNo.4と同様のスパッタリング条件で下層のMo膜(100nm)を成膜した後、Arガス圧を2mtorrに変えて上層のMo膜(200nm)を成膜し、表1のNo.5の試料(Mo積層膜)を得た。
(表2のNo.1〜10について)
上記のSLG基板を用い、表2に示す種々のCu−Ti/Al合金膜または純Cu膜(下層、100nm)を成膜した後、表1のNo.1と同様のスパッタリング条件でMo膜(上層、200nm)を成膜し、(上層)Mo膜(200nm)−(下層)Cu−Ti/Al合金膜または純Cu膜(100nm)の積層試料(全膜厚300nm)を得た。ここで、Cu−Ti/Al合金膜または純Cu膜のスパッタリング条件は以下のとおりである。
スパッタリングターゲット:4インチの純Cuターゲットもしくは合金ターゲットを使用
到達真空度:7×10-6torr以下
Arガス圧:2mtorr
パワー密度:3.2W/cm2(4インチφターゲットの面積で規格化)
基板温度:室温
(表3のNo.1〜6について)
上記のSLG基板を用い、表3に示す種々のCu−Ti/Al合金膜(下層、200nm)を成膜した後、表1のNo.1と同様のスパッタリング条件でMo膜(上層、100nm)を成膜し、(上層)Mo膜(100nm)−(下層)Cu−Ti/Al合金膜(200nm)の積層試料(全膜厚300nm)を得た。Cu−Ti/Al合金膜のスパッタリング条件は前述した表2と同じであり、スパッタ時間を変えることによってMo膜の厚さおよびCu−Ti/Al合金膜の厚さを変化させた。
(真空熱処理)
上記の表1、表2、および表3の各試料に対し、真空熱処理炉を用いて5×10-6torrまで真空排気を行なった後、5℃/分の平均昇温速度で温度を上昇させ、450℃または500℃で1時間保持した後、5℃/分の平均冷却速度で徐冷し、100℃以下になった後、熱処理後の各試料を真空熱処理炉から取り出した。
(電気抵抗率の測定)
スパッタリング成膜後、および上記熱処理(450℃または500℃)後の各試料について、4端子抵抗評価装置を用いてシート抵抗を測定し、電気抵抗率(μΩ・cm)を算出した。
(基板との密着性の評価)
ここでは、密着性試験用サンプルとして、表1のMo単層膜、表2および表3のMo/Cu合金の積層膜(上層がMo、下層がCu合金膜)を用い、上記熱処理(450℃または500℃)後の各サンプルについて基板との密着性(詳細には、表1ではMo単層膜と基板との密着性;表2ではMoとCu合金膜との界面に比べて密着力の低い、Cu合金膜と基板との密着性)を、テープによる剥離試験で評価した。詳細には、上記サンプルの成膜面側(基板側とは反対側)にカッターナイフで1mm間隔の碁盤目状(5マス×5マスを2箇所)の切り込みを入れた。次いで、住友3M製黒色ポリエステルテープ(製品番号8422B)を上記成膜表面上にしっかりと貼り付け、上記テープの引き剥がし角度が60°になるように保持しつつ、上記テープを一挙に引き剥がして、上記テープにより剥離しなかった碁盤目の区画数をカウントし、全区画との比率(膜残存率)を求めた。なお、碁盤目の全部が剥離せず一部が剥離したものは、0.5枚剥離したものとしてカウントした。なお密着性は◎80%以上〜100%以下、○60%以上〜80%未満、△30%以上〜60%未満、×30%未満で評価した。
(Cu合金膜の組成)
表2および表3の各積層試料について、成膜されたCu合金膜の組成はICP発光分光分析装置(島津製作所製のICP発光分光分析装置「ICP−8000型」)を用い、定量分析して確認した。
これらの結果を表1〜表3に併記する。
Figure 2012253158
Figure 2012253158
Figure 2012253158
まず、表1の従来例(Mo膜)について考察する。表1のNo.1〜4は、スパッタリング時におけるArガス圧を変化させたMo単層膜の例であり、成膜直後(as−depo)に比べ、450℃または500℃の熱処理後に電気抵抗率が上昇する傾向が見られた。詳細には、Arガス圧が高くなる程、Moの膜応力が低下するために基板との密着性は向上する(密着性の評価はNo.3=No.4>No.2>No.1の順に低くなる)反面、基板との密着性が最も高かったNo.4の電気抵抗率は20μΩ・cm以上と高く、この結果は、熱処理温度(450℃または500℃)にかかわらず見られた。よって、Mo単層膜を用いたときは、Arガス圧をどのように変化させても、基板との高い密着性と低い電気抵抗率を両立できないことが分った。
一方、表1のNo.5は、スパッタリング時のArガス圧を変化させてMo積層膜を成膜した例であり、成膜直後(as−depo)に比べ、450℃または500℃の熱処理後に電気抵抗率が若干低下する傾向が見られたが、太陽電池用裏面電極として使用するのに好ましい基準レベル(おおむね15μΩ・cm以下)を遥かに超えるものであった。また、熱処理の密着性はいずれも低かった。
これに対し、表2において、Al量およびTi量を本発明の好ましい範囲で含む下層のCu合金膜(100nm)と、上層のMo膜(200nm)との積層構造からなる試料(表2のNo.1〜7)を用いたときは、各熱処理後の密着性はいずれも良好であった(◎または○)。また、電気抵抗率は、成膜直後(as−depo)に比べ、450℃または500℃の熱処理後に低下する傾向が見られ、合金元素量の増加につれて電気抵抗率は増加する傾向が見られたが、添加量が最も高い表2のNo.4(10原子%Alを含有)およびNo.7(10原子%Tiを含有)においても、太陽電池用裏面電極として使用するのに好ましい基準レベル(おおむね15μΩ・cm以下)を充分クリアした。一方、Al量が本発明の好ましい下限を下回る表2のNo.8、およびTi量が本発明の好ましい下限を下回る表2のNo.9、純Cuを用いる表2のNo.10は、いずれも、熱処理後の電気抵抗率は充分低かったが、密着性が大きく低下した。また、表2には示していないが、Al量およびTi量が本発明の好ましい上限を超えると電気抵抗率が大きく増加し、上記表1のNo.3または4(高Arガス圧成膜でのMo単層膜)と類似の結果となることが予想されるほか、Naを含む基板からのNa拡散効果による光吸収層の結晶粒粗大化効果も失われるため、太陽電池の変換効率などが低下することも考えられる。
以上の結果より、本発明の要件を満足する積層構造の裏面電極を用いると、熱処理後の低い電気抵抗および基板との高い密着性を確保できることが分かった。
一方、表3の積層試料は、表2の積層試料と積層膜の全厚さは同じであるが、表2に比べ、下層のCu合金膜の厚さを200nmと厚くし、上層のMo膜の厚さを100nmと薄くした例である。Cu合金膜を構成するAlまたはTiの含有量が1原子%程度と、低合金組成の場合では、Cu合金膜の厚さを、表2(厚さ100nm)よりも表3のように厚く(厚さ200nm)とすることにより、電気抵抗率を更に低減できることが分かる。詳細には、表2のNo.2と表3のNo.1を対比すると、これらはいずれも、1原子%Alを含むCu合金膜を用いた例であるが、Cu合金膜の厚さを、100nm(表2のNo.2)から200nm(表3のNo.1)と厚くすることにより、いずれの熱処理条件下での電気抵抗率も、一層低くすることができた。同様の傾向は、Alの代わりに1原子%Tiを含むCu合金膜を用いた表2のNo.5と表3のNo.4を対比したときにも見られた。

Claims (5)

  1. 基板上に化合物半導体薄膜の光吸収層を有する太陽電池に用いられる裏面電極であって、
    前記裏面電極は、基板側から順に、Cu合金およびMoの積層構造を有することを特徴とする化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極。
  2. 前記Cu合金は、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有するものである請求項1に記載の化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極。
  3. 前記基板は、Naを含むガラス基板である請求項1または2に記載の化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極を備えた太陽電池。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の化合物半導体薄膜太陽電池用裏面電極の製造に用いられるスパッタリングターゲットであって、Alを0.5〜10原子%、および/またはTiを1.0〜10原子%含有し、残部:Cuおよび不可避的不純物であるスパッタリングターゲット。
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Cited By (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2016517183A (ja) * 2013-05-03 2016-06-09 サン−ゴバン グラス フランス 光電池又は光電池モジュール用のバックコンタクト基材
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JP2016518720A (ja) * 2013-05-03 2016-06-23 サン−ゴバン グラス フランス 光電池又は光電池モジュール用のバックコンタクト基材
JPWO2018189965A1 (ja) * 2017-04-13 2020-03-05 株式会社アルバック 液晶表示装置、有機el表示装置、半導体素子、配線膜、配線基板、ターゲット
WO2022138623A1 (ja) * 2020-12-21 2022-06-30 出光興産株式会社 太陽電池の電極構造および製造方法

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