JP2012251277A - 生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸およびその製造方法 - Google Patents

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孝拓 三枝
Masahiro Yamazaki
昌博 山▲崎▼
Hiroyuki Sato
浩幸 佐藤
Ko Okumura
航 奥村
Mitsugi Kimizu
貢 木水
Atsushi Kamiya
淳 神谷
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Abstract

【課題】高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して提供すること。
【解決手段】(A)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が75%以上であり;
(B)伸長倍率λが下記式(i)で表される条件:
1.0≦λ≦2.0 (i)
を満足する生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸を延伸してなり、
(C)前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelが下記式(ii)で表される条件:
3.3≦λrel (ii)
を満足し;
(D)ネットワーク延伸比λnetが下記式(iii)で表される条件:
3.5≦λnet≦20.0 (iii)
を満足し;
(E)引張強度(単位:cN/dtex)および引張伸度(単位:%)が下記式(iv)で表される条件:
(引張強度)×(引張伸度)(1/2)≧30 (iv)
を満足することを特徴とする生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸。
【選択図】なし

Description

本発明は、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸およびその製造方法に関し、より詳しくは、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の未延伸糸を延伸してなる生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸およびその製造方法に関する。
ポリグリコール酸系樹脂などの生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる延伸糸は、機械強度に優れており、且つ生体吸収性を有するため、従来から医療分野などにおける手術用縫合糸として使用されている。また、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂は、高温環境下において高い加水分解性を示すことから、石油掘削用繊維などの原料樹脂として使用することも検討されている。
このような生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる延伸糸として、特開2004−250853号公報(特許文献1)には、グリコリドとラクチドとのコポリマーからなる縫合糸用繊維が、その製造方法とともに開示されている。この製造方法においては、コポリマーの融点より40〜60℃高い温度に維持された紡糸口金から吐出させた未延伸糸を、紡糸口金から15〜50cmの距離にわたってコポリマーの融点より60℃以上高い温度に維持することによって、高い引張強度と高い引張伸度を有する延伸糸を得ている。しかしながら、前記特許文献1に記載の方法では、紡糸口金から吐出させた未延伸糸を引き取る際に糸切れが発生しやすく、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して製造することはできなかった。
また、米国特許第6005019号明細書(特許文献2)の実施例では、ポリ(グリコリド−ラクチド)共重合体からなる糸を、紡糸口金の出口付近で100℃に加熱しながら110℃の雰囲気に保持して製造している。しかしながら、紡糸口金の出口付近で100℃に加熱しながら110℃の雰囲気に保持して延伸糸を製造した場合、引張伸度を十分に高くすることができず、高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を得ることができなかった。
特開2004−250853号公報 米国特許第6005019号明細書
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して製造することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の吐出温度、紡糸口金直下の雰囲気温度およびドラフト率を所定の範囲に制御することによって、所定の伸長倍率を有する未延伸糸を安定して製造することができ、さらに、この未延伸糸を、ネットワーク延伸比が所定の範囲となるように延伸することによって、高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、
(A)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が75%以上であり;
(B)伸長倍率λが下記式(i)で表される条件:
1.0≦λ≦2.0 (i)
を満足する生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸を延伸してなり、
(C)前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelが下記式(ii)で表される条件:
3.3≦λrel (ii)
を満足し;
(D)ネットワーク延伸比λnetが下記式(iii)で表される条件:
3.5≦λnet≦20.0 (iii)
を満足し;
(E)引張強度(単位:cN/dtex)および引張伸度(単位:%)が下記式(iv)で表される条件:
(引張強度)×(引張伸度)(1/2)≧30 (iv)
を満足することを特徴とするものである。
本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸において、前記生分解性脂肪族ポリエステル樹脂としては、グリコール酸の単独重合体およびグリコール酸繰り返し単位を50質量%以上含むポリグリコール酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
また、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法は、(a)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を溶融する溶融工程と、(b)前記溶融工程で得られた溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸口金から吐出させて、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を形成する吐出工程と、(c)前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を冷却する冷却工程と、(d)冷却後の前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる未延伸糸を得る紡糸工程と、(e)前記未延伸糸を延伸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる延伸糸を得る延伸工程とを含み、
前記吐出工程において、吐出温度T(単位:℃)が下記式(I)で表される条件:
+5℃≦T≦T+40℃ (I)
(式(I)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
を満足し;
前記冷却工程において、紡糸口金直下の雰囲気温度T(単位:℃)が下記式(II)で表される条件:
110.5℃≦T≦T (II)
(式(II)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
を満足し;
前記紡糸工程において、下記式(1)で示されるドラフト率Rが下記式(III)で表される条件:
R=[紡糸速度(単位:m/分)]/[吐出速度(単位:m/分)] (1)
10≦R≦100 (III)
を満足し;
前記紡糸工程で得られる未延伸糸が、前記条件(A)および(B)を満足するものであり;
前記延伸工程で得られる延伸糸が、前記条件(C)〜(E)を満足するものであることを特徴とする方法である。
前記延伸工程においては、前記未延伸糸を前記生分解性脂肪族ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱延伸することが好ましい。
本発明のカットファイバーは、このような本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を切断することによって得られるものである。
なお、本発明にかかる未延伸糸の伸長倍率λ、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよびネットワーク延伸比λnetは、それぞれ下記式(2)〜(4):
λ=1/(1−S/100) (2)
(式(2)中、Sは100℃における未延伸糸の熱収縮率(単位:%)を表す。)
λrel=exp(γshift) (3)
(式(3)中、γshiftは未延伸糸と延伸糸の真応力−歪曲線を破断点で重ね合わせたときの延伸糸における真歪の水平移動量を表す。)
λnet=λ×λrel (4)
(式(4)中、λは前記未延伸糸の伸長倍率であり、λrelは前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率である。)
で示されるパラメータである。
これらのパラメータは、以下の方法により算出することができる。すなわち、先ず、未延伸糸の100℃における熱収縮率を測定して、前記式(2)より未延伸糸の伸長倍率λを算出する。なお、この未延伸糸の伸長倍率λは、紡糸線上における未延伸糸の伸長倍率を意味する。
次に、この未延伸糸およびこの未延伸糸を延伸してなる延伸糸について引張試験を行い、未延伸糸および延伸糸の公称応力−歪曲線をそれぞれ求める。得られた公称応力−歪曲線を下記式:
εt=ln(εn+1)
σt=σn×(εn+1)
(前記式中、σnは公称応力(Stress)、εnは公称歪(Strain)、σtは真応力(True Stress)、εtは真歪(True Strain)を表す。)
を用いて真応力−歪曲線に変換する。得られた延伸糸の真応力−歪曲線を、x軸(真歪)に平行にシフトさせ、破断点において、未延伸糸の真応力−歪曲線に重ね合せる。このときの延伸糸の真応力−歪曲線のシフト量(真歪の水平移動量)をγshiftとする。得られたγshiftから前記式(3)を用いて未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelを算出する。なお、この未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelは、相対ネットワーク延伸比ともいう。このようにして算出したλおよびλrelから前記式(4)を用いて延伸糸のネットワーク延伸比を算出する。
繊維を構成する分子鎖は、他の分子鎖によって動きを拘束された点(絡み合い点)を有しており、他の分子鎖を横切って移動することができないという制限がある。一般に、このような分子鎖の構造は、絡み合い構造(ネットワーク構造)と呼ばれ、繊維構造や繊維物性を評価する上で、重要な構造要素の1つである。繊維構造や繊維物性を評価する場合、熱収縮率を測定して評価する場合もあるが、配向結晶化する繊維においては、結晶がインターロックするため、十分な熱収縮が起こらず、測定された熱収縮率は、繊維のネットワーク構造の配向が十分に考慮されたものではなかった。このため、配向結晶化する繊維においては、ネットワーク構造の配向性を表す、前記ネットワーク延伸比により評価されている。
本発明によれば、高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸が安定して得ることが可能となる。
本発明に用いられる直接紡糸延伸装置の一例を示す概略図である。 実施例1で得たPGA樹脂未延伸糸の公称応力−歪曲線を示すグラフである。 実施例1で得たPGA樹脂延伸糸の公称応力−歪曲線を示すグラフである。 実施例1で得たPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸のシフト前の真応力−歪曲線を示すグラフである。 実施例1で得たPGA樹脂未延伸糸の真応力−歪曲線およびPGA樹脂延伸糸のシフト後の真応力−歪曲線を示すグラフである。
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。
<生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸>
本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、前記式(3)で示される未延伸糸に対する相対的な伸長倍率λrelと前記式(4)で示されるネットワーク延伸比λnetが、下記式(ii)および(iii)で表される条件:
3.3≦λrel (ii)
3.5≦λnet≦20.0 (iii)
を満足するように、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が75%以上であり、前記式(2)で示される伸長倍率λが、下記式(i)で表される条件:
1.0≦λ≦2.0 (i)
を満足する生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸を延伸してなるものである。このような生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、強度および靭性に優れており、下記式:
靭性=[引張強度(単位:cN/dtex)]×[引張伸度(単位:%)](1/2)
で定義される靭性は30以上となる。また、引張強度は5cN/dtex以上となる傾向にある。
前記未延伸糸において、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が前記下限未満になると、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の靭性が低下する。また、延伸糸の引張強度および靭性がより高くなるという観点から、前記分子量保持率は、85%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
前記未延伸糸の伸長倍率λが前記上限を超えると、この未延伸糸を高い延伸倍率で延伸することが困難となり、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelは低下し、延伸糸のネットワーク延伸比λnetが高くならない。その結果、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の引張強度が低くなり、かつ靭性が低下する。なお、前記未延伸糸の伸長倍率λは前記下限未満になることはない。
さらに、前記延伸糸において、未延伸糸に対する相対的な伸長倍率λrelが前記下限未満になると、高い延伸倍率が得られず、配向が十分に発達せず、その結果、引張強度の高い生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸が得られない傾向にある。また、前記ネットワーク延伸比λnetが前記下限未満になることも、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の引張強度が低くなり、かつ靭性が低下する。
(生分解性脂肪族ポリエステル樹脂)
次に、本発明に用いられる生分解性脂肪族ポリエステル樹脂について説明する。本発明においては、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂として特に制限はなく、公知のものを使用することができるが、生分解性や加水分解性、生体適合性、機械的強度、耐熱性に優れているという観点から、下記式:
−[O−CH−C(=O)]−
で表されるグリコール酸繰り返し単位を含有するポリグリコール酸系樹脂(以下、「PGA系樹脂」という。)が好ましい。
このようなPGA系樹脂としては、前記グリコール酸繰り返し単位のみからなるグリコール酸の単独重合体(以下、「PGA単独重合体」といい、グリコール酸の2分子間環状エステルであるグリコリドの開環重合体を含む。)、前記グリコール酸繰り返し単位を含むポリグリコール酸共重合体(以下、「PGA共重合体」という)などが挙げられる。また、前記PGA系樹脂において、前記グリコール酸繰り返し単位の含有量としては、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましく、100質量%が特に好ましい。グリコール酸繰り返し単位の含有量が前記下限未満になると、生分解性や加水分解性、生体適合性、機械的強度、耐熱性といったPGA系樹脂としての効果が低下する傾向にある。本発明において、このようなPGA系樹脂は1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
前記PGA単独重合体は、グリコール酸の脱水重縮合、グリコール酸アルキルエステルの脱アルコール重縮合、グリコリドの開環重合などにより合成することができ、中でも、グリコリドの開環重合により合成することが好ましい。なお、このような開環重合は塊状重合および溶液重合のいずれでも行うことができる。
また、前記PGA共重合体は、このような重縮合反応や開環重合反応においてコモノマーを併用することによって合成することができる。このようなコモノマーとしては、シュウ酸エチレン(すなわち、1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ラクチド類、ラクトン類(例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、β−ピバロラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンなど)、カーボネート類(例えば、トリメチレンカーボネートなど)、エーテル類(例えば、1,3−ジオキサンなど)、エーテルエステル類(例えば、ジオキサノンなど)、アミド類(ε−カプロラクタムなど)などの環状モノマー;乳酸、3−ヒドロキシプロパン酸、3−ヒドロキシブタン酸、4−ヒドロキシブタン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのヒドロキシカルボン酸またはそのアルキルエステル;エチレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族ジオール類と、こはく酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸類またはそのアルキルエステル類との実質的に等モルの混合物を挙げることができる。これらのコモノマーは1種を単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
このようなPGA系樹脂をグリコリドの開環重合によって製造する場合に使用する触媒としては、ハロゲン化スズ、有機カルボン酸スズなどのスズ系化合物;アルコキシチタネートなどのチタン系化合物;アルコキシアルミニウムなどのアルミニウム系化合物;ジルコニウムアセチルアセトンなどのジルコニウム系化合物;ハロゲン化アンチモン、酸化アンチモンなどのアンチモン系化合物といった公知の開環重合触媒が挙げられる。
前記PGA系樹脂は、従来公知の重合方法により製造することができるが、その重合温度としては、120〜300℃が好ましく、130〜250℃がより好ましく、140〜220℃が特に好ましい。重合温度が前記下限未満になると重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成した樹脂が熱分解する傾向にある。
また、前記PGA系樹脂の重合時間としては、2分間〜50時間が好ましく、3分間〜30時間がより好ましく、5分間〜18時間が特に好ましい。重合時間が前記下限未満になると重合が十分に進行しない傾向にあり、他方、前記上限を超えると生成した樹脂が着色する傾向にある。
本発明において、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の重量平均分子量としては、5万〜80万が好ましく、7万〜50万がより好ましい。生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の重量平均分子量が前記下限未満になると、得られる生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の機械的強度が低下する傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を吐出させることが困難となる傾向にある。なお、前記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定したポリメチルメタクリレート換算値である。
また、本発明に用いられる生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の固有粘度としては特に制限はないが、0.5〜3.0dl/gが好ましく、0.6〜2.5dl/gがより好ましく、0.7〜2.0dl/gが好ましい。固有粘度が前記下限未満になると、高強度および高靭性が発現しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、溶融温度をより高くする必要があるため、多大な熱履歴による劣化が懸念され、また粘度が高いために押出が困難になる傾向にある。
本発明においては、このような生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を単独で使用してもよいし、必要に応じて熱安定剤、末端封止剤、可塑剤、紫外線吸収剤などの各種添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加して使用してもよい。
<生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法>
次に、図面を参照しながら、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法の好適な実施形態について詳細に説明するが、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法は前記図面に限定されるものではない。なお、以下の説明および図面中、同一または相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
(未延伸糸の製造方法)
先ず、本発明にかかる生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸の製造方法について説明する。本発明にかかる生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸の製造方法は、(a)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を溶融する溶融工程と、(b)前記溶融工程で得られた溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸口金から吐出させて、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を形成する吐出工程と、(c)前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を冷却する冷却工程と、(d)冷却後の前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる未延伸糸を得る紡糸工程とを含むものである。
(a)溶融工程:
本発明にかかる溶融工程は、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂、および必要に応じて前記添加剤や他の熱可塑性樹脂を、押出機などを用いて溶融混練して溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂(または、その組成物)を調製する工程である。例えば、図1に示す直接紡糸延伸装置を用いて生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を製造する場合、ペレット状などの生分解性脂肪族ポリエステル樹脂、および必要に応じて前記添加剤や他の熱可塑性樹脂を、原料ホッパー1から押出機2に投入して生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を溶融混練する。
生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の溶融温度としては特に制限はなく、例えば、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点をT(単位:℃)とすると、(T)〜(T+80℃)が好ましく、(T+5℃)〜(T+50℃)がより好ましい。生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の溶融温度が前記下限未満になると、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の流動性が低下し、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が紡糸口金から吐出されにくく、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の形成が困難となる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が熱分解して、後述する紡糸工程で得られる未延伸糸の分子量保持率が低下する傾向にある。
このような溶融混練においては、押出機以外にも撹拌機や連続混練機などを用いることができるが、短時間での処理が可能であり、その後の吐出工程への円滑な移行が可能であるという観点から押出機を用いることが好ましい。
(b)吐出工程:
本発明にかかる吐出工程は、前記溶融工程で得られた溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸口金から吐出させる工程である。これにより、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が形成される。例えば、図1に示す直接紡糸延伸装置においては、溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を、押出機2からギアポンプ3を用いて定量しながら紡糸口金4に移送し、紡糸口金4の穴から生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を吐出させ、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を形成させる。前記紡糸口金4としては特に制限はなく、公知の紡糸口金を使用することができ、紡糸口金の穴数、穴径についても特に制限はない。
本発明にかかる生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸の製造方法において、溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の吐出温度(紡糸口金温度)T(単位:℃)は、下記式(I)で表される条件:
+5℃≦T≦T+40℃ (I)
(式(I)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
を満足する必要がある。
吐出温度Tが前記下限未満になると、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の流動性が低下し、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が紡糸口金4から吐出性が低下し、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の形成が困難となる。他方、吐出温度Tが前記上限を超えると、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が熱分解して、後述する紡糸工程で得られる未延伸糸の分子量保持率が低下する。その結果、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の靭性が低下する。
(c)冷却工程:
本発明にかかる冷却工程は、紡糸口金4から吐出された前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を冷却する工程である。このとき、紡糸口金4直下の雰囲気温度T(単位:℃)は、下記式(II)で表される条件:
110.5℃≦T≦T (II)
(式(II)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
を満足する必要がある。
雰囲気温度Tが前記下限未満になると、未延伸糸の伸長倍率λが高くなる。伸長倍率λが高い未延伸糸は高い延伸倍率で延伸することが困難であるため、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelを高くすることができず、得られる生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸のネットワーク延伸比λnetも高くすることができない。その結果、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の引張強度が低くなり、かつ靭性が低下する。他方、雰囲気温度Tが前記上限を超えると、後述する紡糸工程において、前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸する際に糸切れが発生するため、安定して未延伸糸を得ることが困難となり、目的とする高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して得ることができない。また、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の熱分解が起こり、未延伸糸の分子量保持率が低下する。
このような温度雰囲気は、例えば、図1に示す直接紡糸延伸装置においては、加熱機能を有する保温筒5(以下、「加熱マントル」という)を紡糸口金4の直下に装着し、必要に応じて加熱マントル5内を加熱することによって形成することができる。
本発明にかかる温度雰囲気においては、温度は必ずしも一定である必要はなく、温度分布が存在していてもよい。例えば、図1に示す直接紡糸延伸装置において、加熱マントル5内に、雰囲気温度Tが前記式(II)で表される条件を満足する雰囲気が形成されていれば、加熱マントル5内には温度分布が存在していてもよい。このような加熱マントル5内の温度(温度分布)は赤外線レーザー温度計などを用いて測定することができ、これにより、本発明にかかる温度雰囲気が加熱マントル5内に形成されていることが確認できる。
このような温度雰囲気の形成方法の一例としては、加熱マントル5内の最高温度が生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点T以下であり且つ加熱マントル5の出口付近の温度が110.5℃以上となるように加熱マントル5内を加熱する方法が挙げられる。なお、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法においては、加熱マントル5の出口付近の温度を必ずしも110.5℃以上とする必要はなく、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が本発明にかかる温度雰囲気中を通過する限り、加熱マントル5の出口付近の温度が100℃以下となっていてもよい。
加熱マントル5の設定温度としては、本発明にかかる温度雰囲気が形成される限り、特に制限はないが、例えば、加熱マントル5の温度を100℃に設定すると、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の移送方向に温度が低下する温度分布が形成されるため、紡糸口金出口から加熱マントル5の出口付近までの間に、110.5℃以上の温度雰囲気を形成することができない。このため、通常、加熱マントル5の温度は110℃以上、好ましくは120℃以上に設定する必要がある。
このように、紡糸口金4から前記温度雰囲気中に吐出された繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂は、引き取られながら前記温度雰囲気中を通過し、その後、冷却される。冷却方法としては特に制限はないが、簡便且つ生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が分解されにくいという観点から空冷が好ましい。また、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の引取速度としては特に制限はないが、後述する紡糸工程において、ドラフト率Rが所定の値となるように、吐出速度に応じて設定される。
(d)紡糸工程:
本発明にかかる紡糸工程は、前記冷却工程で冷却された繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる未延伸糸を得る工程である。本発明の生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸の製造方法において、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の引取速度(生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸の紡糸速度)は、下記式(1)で示されるドラフト率Rが下記式(III)で表される条件:
R=[紡糸速度(単位:m/分)]/[吐出速度(単位:m/分)] (1)
10≦R≦100 (III)
を満足するように設定する必要がある。なお、前記吐出速度(単位:m/分)は、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の溶融密度(g/cm)と紡糸口金の1ホールあたりの吐出量(g/分)から算出されるものである。
ドラフト率Rが前記上限を越えると、未延伸糸の伸長倍率λが高くなるため、後述する延伸工程においてこの未延伸糸を高い延伸倍率で延伸することができず、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelが低下する。その結果、生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、ネットワーク延伸比λnetが高くならず、引張強度が低くなり、靭性も低下する。なお、このようなドラフト率の上限としては、紡糸線上における未延伸糸の伸長倍率を抑制するという観点から、80以下が好ましく、50以下がより好ましい。
このようにして得られた生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸には、必要に応じて繊維用油剤を塗布した後、図1に示すように、そのまま、後述する延伸処理を施してもよいし、あるいは、糸ボビンなどに一度、巻き取った後、再度、引出しながら後述する延伸処理を施してもよい。
(未延伸糸の特性)
このようにして得られる本発明にかかる生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸は、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が75%以上(好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上)を満足するものである。この未延伸糸の分子量保持率については、前記溶融工程における溶融温度、前記吐出工程における吐出温度Tおよび前記冷却工程における前記雰囲気温度Tを、前記上限以下に設定することによって、前記条件を満足させることが可能となる。
また、本発明にかかる生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸は、前記式(2)で示される伸長倍率λが下記式(i)で表される条件:
1.0≦λ≦2.0 (i)
を満足するものである。この未延伸糸の伸長倍率λについては、前記冷却工程における前記雰囲気温度Tを前記下限以上に設定し、前記紡糸工程におけるドラフト率Rを前記範囲内に設定することによって、前記条件を満足させることが可能となる。
(延伸糸の製造方法)
本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、このようにして得られた生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸に、得られる延伸糸の未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelおよびネットワーク延伸比λnetが所定の条件を満足するように延伸処理を施すことによって得られるものである。
(e)延伸工程:
本発明にかかる延伸工程は、前記生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸を延伸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる延伸糸を得る工程である。延伸方法としては特に制限はなく、公知の方法を採用することができ、例えば、図1に示す直接紡糸延伸装置を用いて生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を製造する場合、前記紡糸工程で得られた未延伸糸を続けて延伸することによって本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を得ることができる。
本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法において、延伸温度および延伸倍率は、得られる延伸糸が所定の条件を満足するように適宜設定することができるが、例えば、延伸温度としては生分解性脂肪族ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上融点以下が好ましい。延伸温度が前記下限未満になると、高延伸倍率で延伸することが困難になる傾向にあり、他方、前記上限を超えると、糸が溶融して延伸できない傾向にある。また、延伸倍率としては3.0〜8.0が好ましく、4.0〜6.0がより好ましい。延伸倍率が前記下限未満になると、配向構造が十分に発達しないため、高強度を達成しにくい傾向にあり、他方、前記上限を超えると、糸が破断する傾向にある。
また、得られた生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸には、必要に応じて緩和処理を施すことが好ましく、緩和率としては1〜30%が好ましい。
(延伸糸の特性)
このようにして得られる本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、前記式(3)で示される前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelおよび前記式(4)で示されるネットワーク延伸比λnetが、それぞれ下記式(ii)および下記式(iii)で表される条件:
3.3≦λrel (ii)
3.5≦λnet≦20.0 (iii)
を満足するものである。前記相対的な延伸倍率λrelおよび前記ネットワーク延伸比λnetについては、前記冷却工程における前記雰囲気温度Tを前記下限以上に設定し、前記紡糸工程におけるドラフト率Rを前記範囲内に設定して、所定の伸長倍率λを有する未延伸糸を形成し、この未延伸糸を高い延伸倍率で延伸することによって、前記条件を満足させることが可能となる。
また、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する未延伸糸の分子量保持率が前記範囲にあり、且つ、未延伸糸の伸長倍率λ、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよび延伸糸のネットワーク延伸比λnetが前記(i)〜(iii)で表される条件を満足する生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、強度および靭性に優れたものであり、具体的には、下記式:
靭性=[引張強度(単位:cN/dtex)]×[引張伸度(単位:%)](1/2)
で定義される靭性が30以上となる。また、引張強度は5cN/dtex以上であることが好ましい。このような強度および靭性に優れた生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を用いることによって、高強度、高伸度、高靭性、易分解性を有する新たな繊維製品の設計が可能となる。
<カットファイバー>
本発明のカットファイバーは、上記のようにして製造された本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を切断することによって得られるものである。生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を切断する方法としては特に制限はなく、公知のカットファイバーの製造方法で用いられる切断方法を採用することができる。
以下、実施例および比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す直接紡糸延伸装置を用いて、直接紡糸延伸法によりPGA樹脂延伸糸を作製した。前記直接紡糸延伸装置の紡糸口金4の直下には、長さ150mm、内径100mmの温度制御可能な加熱マントル5を装着した。加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tを赤外線レーザー温度計を用いて測定したところ、210℃であった。
先ず、PGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、固有粘度:1.0dl/g、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)100質量部と熱安定剤((株)ADEKA製「アデカスタブAX−71」)0.03質量部とを含有するペレット状のPGA樹脂組成物(サイズ:径3mmφ×長さ3mm)を、原料ホッパー1からシリンダー径30mmφの一軸押出機2に投入し、210〜250℃で溶融させた。なお、前記押出機2のシリンダーの温度は210〜250℃に設定し、ヘッド温度、ギアポンプ温度およびスピンパック温度は250℃に設定した。
この溶融PGA樹脂組成物を、ギアポンプ容量2.2cc/rev.のギアポンプ3を回転数15rpmで用いて、紡糸口金4(56穴、孔径:0.40mm)から1穴あたり0.83g/分の吐出量で吐出させて繊維状のPGA樹脂組成物を形成した後、180℃に設定した加熱マントル5中を通過させた。その後、繊維状のPGA樹脂組成物を空冷し、得られたPGA樹脂未延伸糸に繊維用油剤丸菱油化工業(株)製「ケミロン1500」を塗布し、周速300m/分の第1引き取りローラー7で引き取り、さらに、64℃に設定した第2引き取りローラー8と90℃に設定した第3引き取りローラー9とを介して前記PGA樹脂未延伸糸を4.8倍に延伸した後、得られたPGA樹脂延伸糸を、前記第3引き取りローラー9と85℃に設定した第4引き取りローラー10とを介して1%緩和し、巻き取り機を用いてボビン11に巻き取った。なお、吐出速度(単位:m/分)を、PGA樹脂の溶融密度(g/cm)と紡糸口金の1ホールあたりの吐出量(g/分)から算出し、ドラフト率Rを、吐出速度(単位:m/分)と紡糸速度(単位:m/分)から下記式(1):
R=[紡糸速度]/[吐出速度] (1)
により算出したところ、R=64であった。
また、上記と同様にして第1引き取りローラー7で引き取ったPGA樹脂未延伸糸を、他の引き取りローラー7を介さずに、直接、巻き取り機を用いてボビンに巻き取った。
得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を以下の方法により測定した。その結果を表1に示す。
(1)紡糸性
紡糸口金から吐出させた樹脂が第1引き取りローラー7に引き取られるまでの状態を以下の基準で判定した。
A:糸切れは観察されず、安定的に製造可能であったもの。
B:60分間に部分的なものを含め、糸切れした回数が5回未満であり、安定した製造に問題があったもの。
C:60分間に部分的なものを含め、糸切れした回数が5回以上であり、製造性に非常に問題があったもの。
(2)分子量保持率
未延伸糸10mgを、濃度5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムのヘキサフルオロイソプロパノール溶液10mlに溶解した後、メンブレンフィルターでろ過して試料溶液を調製した。この試料溶液10μlをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(昭和電工(株)製「ShodexGPC−104」)に注入し、下記条件で未延伸糸の重量平均分子量を測定した。得られた未延伸糸の重量平均分子量と原料樹脂の重量平均分子量とから下記式:
分子量保持率(%)=MW/MW×100
により分子量保持率を算出した。ここで、MWは未延伸糸の重量平均分子量、MWは原料樹脂の重量平均分子量を示す。
<GPC測定条件>
・カラム:昭和電工(株)製「HFIP−806M」2本と昭和電工(株)製「HFIP−LG」(プレカラム)1本とを直列接続。
・検出器:示差屈折率(RI)検出計
・溶離液:濃度5mMのトリフルオロ酢酸ナトリウムのヘキサフルオロイソプロパノール溶液。
・カラム温度:40℃。
・溶離液流速:0.6ml/分。
・分子量の校正:分子量の異なる標準ポリメタクリル酸メチル(Polymer Laboratories社製)を用いて作成した分子量の検量線データを使用。
(3)単糸繊度
延伸糸100mを枠周1mの巻返し機にかせ上げし、絶乾質量Mを測定し、下記式:
単糸繊度(dtex)=100×M/H
により単糸繊度を算出した。ここで、Mは延伸糸の絶乾質量(g)、Hは紡糸口金の穴数(Hole)を示す。
(4)引張強度、引張伸度および靭性
タイヤコード用引っ掛けチャックを備えた精密万能試験機((株)エーアンドディー製「テンシロン」)に、長さ250mmの延伸糸を装着し、クロスヘッド速度300mm/分で引張試験を行い、延伸糸が破断したときの強度および伸度を測定した。この測定を5本の延伸糸について行い、その平均値を引張強度および引張伸度とした。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度50%RHに管理した。
また、延伸糸の靭性を下記式:
靭性=(引張強度)×(引張伸度)(1/2)
で定義した。
(5)ネットワーク延伸比
<乾熱収縮率>
先ず、100℃における未延伸糸の熱収縮率(乾熱収縮率)を求めた。未延伸糸100mを枠周1mの巻返し機にかせ上げし、得られたかせの一端を固定し、他端に20gの分銅をかけて、かせ長さLを測定した。次に、分銅を外し、100℃の乾熱炉中に吊り下げて30分間放置した後、室温まで冷却した。その後、再び、かせの一端を固定し、他端に20gの分銅をかけて、かせ長さLHTを測定し、下記式:
S=(L−LHT)/L×100
により100℃における未延伸糸の熱収縮率S(%)を算出した。ここで、Lは熱処理前のかせ長さ(m)、LHTは熱処理後のかせ長さ(m)を示す。
<未延伸糸の伸長倍率>
上記のようにして算出した100℃における未延伸糸の熱収縮率S(%)から下記式(2):
λ=1/(1−S/100) (2)
により未延伸糸の伸長倍率λを算出した。
<未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率>
タイヤコード用引っ掛けチャックを備えた精密万能試験機((株)エーアンドディー製「テンシロン」)に、長さ150mmの未延伸糸または長さ250mmの延伸糸を装着し、クロスヘッド速度300mm/分で引張試験を行い、未延伸糸または延伸糸が破断したときの強度および伸度を測定した。なお、測定環境は温度23℃、相対湿度50%RHに管理した。図2〜3には、それぞれ未延伸糸および延伸糸についての引張試験において得られた公称応力−歪曲線を示す。これらの公称応力−歪曲線を下記式:
εt=ln(εn+1)
σt=σn×(εn+1)
(前記式中、σnは公称応力(Stress)、εnは公称歪(Strain)、σtは真応力(True Stress)、εtは真歪(True Strain)を表す。)
を用いて、真応力−歪曲線に変換した。その結果を図4に示す。なお、図4中のλはεn+1である。
次に、図4中の延伸糸の真応力−歪曲線をx軸に平行にシフトさせ、破断点において、未延伸糸の真応力−歪曲線に重ね合わせた(図5)。なお、図4中のλはεn+1である。このときの延伸糸の真応力−歪曲線のシフト量(真歪の水平移動量)γshiftを求めた。このγshiftから下記式(3):
λrel=exp(γshift) (3)
により、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelを算出した。
<延伸糸のネットワーク延伸比>
前記式(2)〜(3)により算出したλおよびλrelから下記式(4):
λnet=λ×λrel (4)
により、延伸糸のネットワーク延伸比λnetを算出した。
(実施例2)
ギアポンプ3の回転数を20rpmに変更して溶融PGA樹脂組成物の1穴あたり吐出量を1.10g/分に変更し、第1引き取りローラー7の周速を200m/分に変更し、延伸倍率を5.0倍に変更した以外は実施例1と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは210℃であり、ドラフト率Rは32であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記条件を変更した以外は実施例1と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(実施例3)
前記PGA樹脂組成物の代わりにペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、固有粘度:1.4dl/g、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)を用い、スピンパック温度を245℃に変更し、加熱マントル5の設定温度を120℃に変更し、延伸倍率を4.8倍に変更した以外は実施例2と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例2と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(実施例4)
固有粘度が1.4dl/gのPGA樹脂の代わりに固有粘度が0.8dl/gのペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:17万、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)を用い、ギアポンプ3をギアポンプ容量が1.0cc/rev.のものに、紡糸口金4を穴数が24穴、孔径が0.25mmのものに、ギアポンプ3の回転数を5rpmに変更して溶融PGA樹脂の1穴あたり吐出量を0.29g/分に変更し、第1引き取りローラー7の周速を160m/分に変更し、延伸倍率を4.6倍に変更した以外は実施例3と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であり、ドラフト率Rは38であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例3と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(実施例5)
PGA樹脂の代わりにグリコール酸90質量部と乳酸10質量部との共重合体((株)クレハ製、重量平均分子量:22万、固有粘度:1.5dl/g、ガラス転移温度:40℃、融点:200℃。以下、「PGLLA樹脂」と略す)を用い、スピンパック温度を240℃に変更し、延伸倍率を5.0倍に変更した以外は実施例3と同様にしてPGLLA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であった。また、PGLLA樹脂未延伸糸についても、前記PGLLA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例3と同様にして作製した。得られたPGLLA樹脂未延伸糸およびPGLLA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(実施例6)
ギアポンプ3の回転数を15rpmに変更して溶融PGLLA樹脂の1穴あたり吐出量を0.92g/分に変更し、スピンパック温度を235℃に変更し、延伸倍率を5.2倍に変更した以外は実施例5と同様にしてPGLLA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であり、ドラフト率Rは43であった。また、PGLLA樹脂未延伸糸についても、前記PGLLA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例5と同様にして作製した。得られたPGLLA樹脂未延伸糸およびPGLLA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
固有粘度が1.4dl/gのPGA樹脂の代わりに固有粘度が1.0dl/gのペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)を用い、スピンパック温度を265℃に変更した以外は実施例3と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例3と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
(比較例2)
スピンパック温度を245℃に変更し、延伸倍率を2.7倍に変更した以外は比較例1と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は比較例1と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
(比較例3)
固有粘度が0.8dl/gのPGA樹脂の代わりに固有粘度が1.0dl/gのペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)を用い、加熱マントル5を装着せず、スピンパック温度を265℃に変更し、延伸倍率を3.3倍に変更した以外は実施例4と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは室温(23℃)であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例4と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
(比較例4)
ギアポンプ3の回転数を15rpmに変更して溶融PGA樹脂の1穴あたり吐出量を0.87g/分に変更し、スピンパック温度を245℃に変更し、第1引き取りローラー7の周速を200m/分に変更し、延伸倍率を2.3倍に変更した以外は比較例3と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは室温(23℃)であり、ドラフト率Rは16であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は比較例3と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
(比較例5)
固有粘度が0.8dl/gのPGA樹脂の代わりに固有粘度が1.0dl/gのペレット状のPGA樹脂((株)クレハ製、重量平均分子量:20万、ガラス転移温度:43℃、融点:220℃)を用い、第1引き取りローラー7の周速を900m/分に変更し、延伸倍率を2.8倍に変更した以外は実施例4と同様にしてPGA樹脂延伸糸を作製した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは200℃であり、ドラフト率Rは212であった。また、PGA樹脂未延伸糸についても、前記PGA樹脂を用い、前記条件を変更した以外は実施例4と同様にして作製した。得られたPGA樹脂未延伸糸およびPGA樹脂延伸糸の各種物性を実施例1と同様にして測定した。その結果を表2に示す。
(比較例6)
固有粘度が0.8dl/gのPGA樹脂の代わりに前記PGLLA樹脂(グリコール酸90質量部と乳酸10質量部との共重合体)を用い、スピンパック温度を260℃に変更し、加熱マントル5の設定温度を290℃に変更し、第1引き取りローラー7の周速を528m/分に変更した以外は実施例4と同様にしてPGLLA樹脂延伸糸の作製を試みたが、紡糸口金4から吐出された樹脂が引き取られる間に糸切れが発生し、安定してPGLLA樹脂未延伸糸を得ることが困難であったため、紡糸性Cと判断した。なお、加熱マントル5内の紡糸口金4直下の雰囲気温度Tは288℃であり、ドラフト率Rは124であった。
Figure 2012251277
Figure 2012251277
表1〜2に示した結果から明らかなように、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法(実施例1〜6)においては、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の分子量保持率が高く、所定の伸長倍率λを有する未延伸糸が得られ、これを延伸することにより、未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelおよびネットワーク延伸比λnetが高い生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸が得られることがわかった。そして、この延伸糸は、高い強度(5.0cN/dtex以上)および高い靭性(30以上)を有するものであることが確認された。
これに対して、未延伸糸の伸長倍率λ、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよび延伸糸のネットワーク延伸比λnetのすべてが所定の範囲内にあっても、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の吐出温度Tが高すぎる場合(比較例1)には、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の分子量保持率が低下するため、延伸糸の靭性は低くなった(30未満)。
また、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の分子量保持率が比較的高く、所定の伸長倍率λを有する未延伸糸であっても、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよび延伸糸のネットワーク延伸比λnetが低すぎる場合(比較例2)には、延伸糸の強度は低くなり(5.0cN/dtex未満)、靭性も低くなった(30未満)。
さらに、加熱マントルを使用しなかった場合(比較例3)には、未延伸糸の伸長倍率λが高くなった(2.0を超過)。また、ドラフト率Rを低くした場合(比較例4)でも、未延伸糸の伸長倍率λを低くすることができず、所定の伸長倍率λを有する未延伸糸を得ることはできなかった。そして、これらの未延伸糸は、高い延伸倍率で延伸することが困難であるため、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよび延伸糸のネットワーク延伸比λnetを高くすることができず、高い強度(5.0cN/dtex以上)および高い靭性(30以上)を有する生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を得ることはできなかった。
また、吐出温度Tや紡糸口金直下の雰囲気温度Tが所定の範囲内にあっても、ドラフト率Rが高すぎる場合(比較例5)には、未延伸糸の伸長倍率λが高くなった(2.0を超過)。この未延伸糸は、比較例3〜4の場合と同様に、高い延伸倍率で延伸することが困難であるため、未延伸糸に対する延伸糸の相対的な延伸倍率λrelおよび延伸糸のネットワーク延伸比λnetを高くすることができず、高い強度(5.0cN/dtex以上)および高い靭性(30以上)を有する生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を得ることはできなかった。
以上説明したように、本発明によれば、高強度且つ高靭性の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を安定して得ることが可能となる。したがって、本発明の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸は、高強度、高伸度、高靭性、易分解性を有する新たな繊維製品用材料として有用である。
1:原料ホッパー、2:押出機、3:ギアポンプ、4:紡糸口金(紡糸ノズル)、5:加熱マントル、6:油剤塗布装置、7:第1引き取りローラー、8:第2引き取りローラー、9:第3引き取りローラー、10:第4引き取りローラー、11:延伸糸用ボビン。

Claims (6)

  1. (A)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する分子量保持率が75%以上であり;
    (B)下記式(2)で示される伸長倍率λが下記式(i)で表される条件:
    λ=1/(1−S/100) (2)
    (式(2)中、Sは100℃における熱収縮率(単位:%)を表す。)
    1.0≦λ≦2.0 (i)
    を満足する生分解性脂肪族ポリエステル未延伸糸を延伸してなり、
    (C)下記式(3)で示される前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelが下記式(ii)で表される条件:
    λrel=exp(γshift) (3)
    (式(3)中、γshiftは未延伸糸と延伸糸の真応力−歪曲線を破断点で重ね合わせたときの延伸糸における真歪の水平移動量を表す。)
    3.3≦λrel (ii)
    を満足し;
    (D)下記式(4)で示されるネットワーク延伸比λnetが下記式(iii)で表される条件:
    λnet=λ×λrel (4)
    (式(4)中、λは前記未延伸糸の伸長倍率であり、λrelは前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率である。)
    3.5≦λnet≦20.0 (iii)
    を満足し;
    (E)引張強度(単位:cN/dtex)および引張伸度(単位:%)が下記式(iv)で表される条件:
    (引張強度)×(引張伸度)(1/2)≧30 (iv)
    を満足することを特徴とする生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸。
  2. 前記生分解性脂肪族ポリエステル樹脂が、グリコール酸の単独重合体およびグリコール酸繰り返し単位を50質量%以上含むポリグリコール酸共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸。
  3. 請求項1または2に記載の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を切断してなることを特徴とするカットファイバー。
  4. (a)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を溶融する溶融工程と、
    (b)前記溶融工程で得られた溶融状態の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸口金から吐出させて、繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を形成する吐出工程と、
    (c)前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を冷却する冷却工程と、
    (d)冷却後の前記繊維状の生分解性脂肪族ポリエステル樹脂を紡糸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる未延伸糸を得る紡糸工程と、
    (e)前記未延伸糸を延伸して、生分解性脂肪族ポリエステル樹脂からなる延伸糸を得る延伸工程とを含み、
    前記吐出工程において、吐出温度T(単位:℃)が下記式(I)で表される条件:
    +5℃≦T≦T+40℃ (I)
    (式(I)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
    を満足し;
    前記冷却工程において、紡糸口金直下の雰囲気温度T(単位:℃)が下記式(II)で表される条件:
    110.5℃≦T≦T (II)
    (式(II)中、Tは生分解性脂肪族ポリエステル樹脂の融点(単位:℃)を表す。)
    を満足し;
    前記紡糸工程において、下記式(1)で示されるドラフト率Rが下記式(III)で表される条件:
    R=[紡糸速度(単位:m/分)]/[吐出速度(単位:m/分)] (1)
    10≦R≦100 (III)
    を満足し;
    前記紡糸工程で得られる未延伸糸が、
    (A)生分解性脂肪族ポリエステル樹脂原料に対する前記未延伸糸の分子量保持率が75%以上であり;
    (B)下記式(2)で示される前記未延伸糸の伸長倍率λが下記式(i)で表される条件:
    λ=1/(1−S/100) (2)
    (式(2)中、Sは100℃における未延伸糸の熱収縮率(単位:%)を表す。)
    1.0≦λ≦2.0 (i)
    を満足するものであり;
    前記延伸工程で得られる延伸糸が、
    (C)下記式(3)で示される前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率λrelが下記式(ii)で表される条件:
    λrel=exp(γshift) (3)
    (式(3)中、γshiftは未延伸糸と延伸糸の真応力−歪曲線を破断点で重ね合わせたときの延伸糸における真歪の水平移動量を表す。)
    3.3≦λrel (ii)
    を満足し;
    (D)下記式(4)で示されるネットワーク延伸比λnetが下記式(iii)で表される条件:
    λnet=λ×λrel (4)
    (式(4)中、λは前記未延伸糸の伸長倍率であり、λrelは前記未延伸糸に対する相対的な延伸倍率である。)
    3.5≦λnet≦20.0 (iii)
    を満足し;
    (E)引張強度(単位:cN/dtex)および引張伸度(単位:%)が下記式(iv)で表される条件:
    (引張強度)×(引張伸度)(1/2)≧30 (iv)
    を満足するものであることを特徴とする生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法。
  5. 前記延伸工程において、前記未延伸糸を前記生分解性脂肪族ポリエステル樹脂のガラス転移温度以上の温度で加熱延伸することを特徴とする請求項4に記載の生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸の製造方法。
  6. 請求項4または5に記載の製造方法により得られる生分解性脂肪族ポリエステル延伸糸を切断する切断工程を含むことを特徴とするカットファイバーの製造方法。
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