JP2009062628A - 熱接着性長繊維 - Google Patents

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修二 宮崎
Shiro Ishibai
司郎 石灰
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Abstract

【課題】 ポリ乳酸系としてメッシュシートやネット等に用いても、長期使用に際して接着力の低下のない熱接着性長繊維を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸を芯成分、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、かつ、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルであって、芯成分より低融点で、かつ融点が130〜190℃の共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯鞘質量比が1:1〜7:1、切断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とする熱接着性長繊維。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリ乳酸を芯成分、芯成分より低融点の共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維であって、メッシュシートやネット等に用いると好適な熱接着性長繊維に関するものである。
従来、メッシュシート等の交点部の固定やターポリン用布帛等の通水性が重要視される用途では、塩化ビニル樹脂等の樹脂を用いて加工が行われている。
しかし、近年、塩化ビニル樹脂等は環境への影響が問題視され、樹脂加工を行わない加工方法が検討されるようになってきた。
その一つとして、鞘部が低融点成分であり、接着成分となる芯鞘型のポリエステル系熱接着性長繊維のみを用いて製編織したり、あるいは、他の通常のポリエステル繊維と一緒に用いて製編織した後、熱処理を行って鞘部の低融点成分を溶融又は軟化させて接着成分とし、交点部を固定したメッシュシートや網目形状を固定したネット等が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
また、近年、石油資源の減少や自然環境の温暖化が要因とされる災害が多発し、世界的規模で環境問題に対する取り組みが行われるようになってきた。そこで、石油を原料としない資源の再生が可能である植物を原料とする繊維、フィルム等の樹脂製品又はさとうきび等から得られたエタノールを自動車の燃料として用いる等脱石油による温暖化対策が行われるようになってきた。
このようなことから、近年、植物を原料としたポリマーであり汎用性に優れるポリ乳酸系の重合体を用いたバインダー繊維が多く用いられている(参考文献3参照)。しかしながら、このバインダー繊維は芯成分及び鞘成分ともにポリ乳酸を用いているため、メッシュシートやネット等に使用する場合、生分解や加水分解により接着力の低下が問題視され好ましくなかった。
したがって、ポリ乳酸系の熱接着性長繊維であって、メッシュシートやネット等に用い、長期に使用しても接着力が低下することなく、耐久性に優れたものが要望視されていた。
特開2001−271245号公報 特開2001−271270号公報 特許第3892748号公報
本発明は、上記の問題を解決し、ポリ乳酸系の熱接着性繊維としてメッシュシートやネット等に用い、長期に使用しても接着力の低下がなく、耐久性に優れた製品を得ることができる熱接着性長繊維を提供することを技術的な課題とするものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、ポリ乳酸を芯成分、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、かつ、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルであって、芯成分より低融点で、かつ融点が130〜190℃の共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯鞘質量比が1:1〜7:1、切断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とする熱接着性長繊維を要旨とするものである。
本発明の熱接着性繊維は、製編織した後、熱処理することにより、鞘成分の共重合ポリエステルが溶融して接着成分となることにより、メッシュシートやネット等の交点部や網目形状を固定するための樹脂加工と同様の加工を施すことができ、しかも、芯成分にポリ乳酸を使用しているので石油資源の減少を図ることができる。そして、十分に使用可能な高強度を有し、かつ優れた接着性を有しているため、長期に使用しても接着力の低下がなく、耐久性に優れた製品を得ることが可能となる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の熱接着性長繊維は、芯鞘構造を呈する複合繊維であって、鞘成分を溶融させて熱接着成分とし、芯成分は熱接着処理により溶融せず、主体繊維となるものである。
まず、芯成分について説明する。本発明で芯成分に用いるポリ乳酸としては、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との共重合体であるポリDL−乳酸、ポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)、ポリD−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリL−乳酸とヒドロキシカルボン酸との共重合体、ポリD−乳酸又はポリL−乳酸と脂肪族ジカルボン酸及び脂肪族ジオールとの共重合体、あるいはこれらのブレンド体が挙げられる。
そして、ポリ乳酸は、上記のようにL−乳酸とD−乳酸が単独で用いられているもの、もしくは併用されているものであるが、中でも融点が140℃以上であることが好ましい。
ポリ乳酸のホモポリマーであるL−乳酸やD−乳酸の融点は約180℃であるが、D−乳酸とL−乳酸との共重合体の場合、いずれかの成分の割合を10モル%程度とすると、融点はおよそ130℃程度となる。
さらに、いずれかの成分の割合を18モル%以上とすると、融点は120℃未満、融解熱は10J/g未満となって、ほぼ完全に非晶性の性質となる。このような非晶性のポリマーとなると、製造工程において特に熱延伸し難くなり、高強度の繊維が得られ難くなるという問題が生じたり、繊維が得られたとしても、耐熱性及び耐摩耗性に劣ったものとなるため好ましくない。
そこで、ポリ乳酸としては、ラクチドを原料として重合する時のL−乳酸やD−乳酸の含有割合で示されるL−乳酸とD−乳酸の含有比(モル比)であるL/D又はD/Lが、82/18以上のものが好ましく、中でも90/10以上、さらには95/5以上とすることが好ましい。
また、ポリ乳酸の中でも、上記したようなポリD−乳酸とポリL−乳酸との混合物(ステレオコンプレックス)は、融点が200〜230℃と高く、高温雰囲気下での強度も高くなり、特に好ましい。
そして、芯成分のポリ乳酸の相対粘度は1.5〜2.0が好ましく、相対粘度が1.5未満であると高強度が得られ難く、相対粘度が2.0を超えると鞘成分が低融点であるため延伸時に十分な熱処理が行えなくなり、熱収縮が大きくなり加工性が劣るようになる。
次に、鞘成分の共重合ポリエステルとしては、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、かつ、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルを用いる。
特にテレフタル酸成分、脂肪族ラクトン成分、エチレングリコール成分及び1,4−ブタンジオール成分からなる共重合ポリエステルは、比較的結晶化速度が速く、紡糸時や熱接着加工後の冷却の面からも好ましい。
なお、脂肪族ラクトン成分としては、炭素数4〜11のラクトンが好ましく、特に好ましいラクトンとしては、ε−カプロラクトン(ε−CL)が挙げられる。
鞘成分は、芯成分より低融点であり、融点が130〜190℃であることが必要であり、中でも140〜160℃であることが好ましい。鞘成分の融点が130℃より低いと、用途が限られるようになり、また、融点が190℃よりも高いと、熱接着加工時の加熱温度が高くなり、コスト面で不利益となるばかりでなく、熱接着温度が高くなると、芯成分が強度低下を起こすようになる。
そして、本発明においては、芯成分のポリ乳酸との融点差を10〜30℃程度とすることが好ましい。
また、鞘成分の相対粘度は1.35〜1.50とすることが好ましい。相対粘度が1.35より低いと、複合形態の斑が発生しやすく、また、1.50より高いと、熱接着加工時の溶融流動性が悪くなって、接着斑が発生しやすくなるので好ましくない。
本発明の熱接着性長繊維は、芯鞘質量比が1:1〜7:1であるが、好ましくは2:1〜6:1である。芯成分がこの範囲より小さくなると、高強度が得られ難くなり、また、大きくなると接着力の低下や複合形態の斑が発生しやすくなるので好ましくない。
次に、本発明の熱接着性長繊維の切断強度は、3.0cN/dtex以上であることが必要であり、好ましくは3.5cN/dtex以上である。切断強度が3.0cN/dtex未満であると、長期に使用しても接着力の低下がなく、耐久性に優れた製品を得ることが困難となる。また、用途が限られるようになるので好ましくない。一般にポリ乳酸は高強度の繊維が得られにくく、延伸操業面を考慮すると、切断強度は3.0〜4.5cN/dtexとするのが好ましい。
また、本発明の熱接着性長繊維の切断伸度は、長期に使用しても接着力の低下がなく、耐久性に優れた製品を得るためには、30〜40%とすることが好ましい。
本発明の熱接着性長繊維は、糸条繊度は150〜2000dtexが好ましく、単糸繊度は5〜20dtexが好ましい。
また、芯成分と鞘成分には、本来の性能を損なわない程度に必要に応じて艶消し剤、着色顔料、抗菌剤、耐熱剤等の各種添加剤が添加されていてもよい。
そして、本発明の熱接着性長繊維を使用してメッシュシートやネット等を製編織するに際しては、本発明の繊維をそのまま使用してもよいが、撚り等の後加工を施したり、他の繊維と混繊して用いてもよい。また、製編織するに際しては、本発明の繊維だけで布帛を形成してもよいが、用途や目的により組織の一部に用いたものでもよい。
なお、上記で製編織して得られたメッシュシートやネット用の原反は、例えば加熱ローラ接着加工装置で熱処理を行って、鞘成分の低融点成分である共重合ポリエステルを溶融又は軟化させ、交点部を固定したメッシュシートや網目形状を固定したネットを得るものである。
次に、本発明の熱接着性長繊維の製造方法について、一例を用いて説明する。
常用の溶融複合紡糸装置で製造することができるが、一旦未延伸糸で巻き取ると鞘成分の共重合ポリエステルが低融点であることと、ガラス転移点が低いため、解除性等の問題が発生しやすく、また、コスト面においても、一旦巻き取ることなく連続して延伸を行い、配向結晶化を促進させた後に巻き取るスピンドロー法で行うことが好ましい。
スピンドロー法における巻き取り速度は2000〜4000m/分程度が好ましく、巻き取り速度が2000m/分より遅いと生産性が劣り、4000m/分より速いと製糸性や強度が劣るようになりやすい。
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。なお、実施例における各物性値は、次の方法で測定した。
(a)相対粘度
フェノールと四塩化エタンとの等質量混合物を溶媒とし、濃度0.5g/dl、温度20℃で測定した。
(b)切断強度、切断伸度
JISL−1013に従い、島津製作所製オートグラフDSS−500を用い、つかみ間隔25cm、引っ張り速度30cm/分で測定した。
(c)融点
パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を使用し、昇温速度20℃/分で測定した。
実施例1
芯成分として、L−乳酸とD−乳酸の含有比であるL/Dが99.0/1.0であり、融点が168℃、相対粘度1.82であるポリ乳酸を用いた。
鞘成分として、テレフタル酸とエチレングリコールとのエステル化反応で得られたテレフタル酸成分とエチレングリコール成分とのモル比が、1:1.13のオリゴマーに、ε−カプロラクトンを酸成分に対して20モル%及び1,4−ブタンジオールをジオール成分に対して50モル%の割合で共重合した、相対粘度1.45、融点154℃の共重合ポリエステルを用いた。
そして、常用の溶融複合紡糸装置を用い、孔直径が0.5mmの芯鞘型の溶融複合紡糸口金を装着し、温度210℃、芯鞘質量比2:1として紡出した。紡糸した糸条を長さ15cm、温度200℃に加熱された加熱筒内を通過させた後、長さ40cmの環状吹き付け装置で、冷却風温度15℃、速度0.7m/秒で冷却した。
次に、油剤を付与して非加熱の第1ローラに引き取り、連続して温度90℃の第2ローラで1.02倍の引き揃えを行い、その後、温度130℃の第3ローラで4.8倍の延伸を行い、温度110℃の第4ローラで3%の弛緩処理を行って、1%のリラックスを掛けて速度3000m/分のワインダーで巻き取り、1110dtex/120フィラメントの同心丸断面形状の熱接着性長繊維を得た。
実施例2、比較例1
芯鞘質量比(芯:鞘)を表1に示す値に変更した以外は実施例1と同様に行った。
比較例2
鞘成分としてε−カプロラクトンを酸成分に対して45モル%とした相対粘度1.43、融点120℃の共重合ポリエステルを用い、第3ローラ温度105℃、第4ローラ温度90℃に変更した以外は、実施例1と同様に行った。
実施例1〜2、比較例1〜2で得られた熱接着性長繊維の切断強度、切断伸度の評価結果を表1に示す。
表1から明らかなように、実施例1〜2で得られた熱接着性長繊維は切断強度が高く、伸度も良好な値であり、延伸性にも優れていた。このため、長期に使用しても接着力の低下がなく、耐久性に優れた製品を得ることができるものであった。
一方、比較例1で得られた熱接着性長繊維は芯成分の質量比が大きいために、複合斑が大きくなり、延伸毛羽が多く発生し、延伸性に劣っていた。比較例2で得られた熱接着性長繊維は鞘成分の融点が130℃未満であり、延伸時の熱処理が不十分となったため切断強度が低いものであった。したがって、両繊維ともに耐久性に優れた製品を得ることができないものであった。

Claims (1)

  1. ポリ乳酸を芯成分、テレフタル酸成分、エチレングリコール成分を含有し、かつ、1,4−ブタンジオール成分、脂肪族ラクトン成分及びアジピン酸成分の少なくとも一成分を含有する共重合ポリエステルであって、芯成分より低融点で、かつ融点が130〜190℃の共重合ポリエステルを鞘成分とする芯鞘型複合繊維であって、芯鞘質量比が1:1〜7:1、切断強度が3.0cN/dtex以上であることを特徴とする熱接着性長繊維。
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