JP2009150013A - ポリ乳酸系不織布 - Google Patents

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Abstract

【課題】化石資源の使用量を削減し、また、環境に及ぼす負荷の低減を図るため、石油プラスチックに比較して強度が低い、生分解性のポリ乳酸系の樹脂を使用して、薄く、且つ、高強度が要求される農業資材、建築・土木資材、自動車部材等、各種産業資材に適用可能な不織布を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメント31からなるポリ乳酸系不織布であって、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントがそれぞれ一方向に配列したタテ繊維基材38と、ヨコ繊維基材とを相互に固着して形成される経緯繊維配列構造を有し、単位面積当たりの質量に対する引張り強度が、4×104[m2・s-2]以上、2×105[m2・s-2]以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、ポリ乳酸系不織布に関し、より詳しくは、強度を改善し実用価値を高め、環境に及ぼす負荷を軽減したポリ乳酸系不織布に関する。
ポリ乳酸に代表される植物等の生物を原料とするバイオプラスチックは、石油等の埋蔵化石資源を原料として合成される石油プラスチックとは異なり、生分解性であり地球環境保護の見地から好ましい。また、バイオプラスチックを利用することにより、枯渇する石油資源の消費量を削減することができる上、生物による二酸化炭素の吸収、廃棄時の焼却による大気への二酸化炭素の放出サイクルが短期間で行われるため、焼却による大気中の二酸化炭素濃度の増加率が緩和される。このため、石油プラスチックの代替えとして、バイオプラスチックの利用が検討されている。
これまでにポリ乳酸重合体を用いた不織布として、ポリ乳酸を主成分とする短繊維不織布(特許文献1)や、ポリ乳酸短繊維不織布の製造に有用なポリ乳酸重合体の短繊維(特許文献2)や、ポリ乳酸系重合体の芯と脂肪族ポリエステルの鞘との芯鞘構造の複合繊維をスパンボンド法により形成した不織布(特許文献3)等が報告されている。しかし、このような短繊維不織布は、繊維の溶融紡糸から不織布化までに多数の製造工程を要することから製造コストが高くなる。更に、得られた不織布の強度は低く、実用的ではない。また、スパンボンド法による不織布は、厚く、高強度のものは得られず、その用途は包装資材等に限定され、農業資材、建築・土木資材、自動車部材等の高強度が要求される用途には使用されていないのが現状である。
一方、本出願人は、高強度の産業資材、自動車資材等の分野で要請されている高強度で、耐久性に優れる不織布として、樹脂を紡糸して得られるフィラメントを一方向に配列させたものを、直交するように積層して得られる高強度の直交不織布(特許文献4、5)を開発している。しかしながら、これらの不織布には、高強度の熱可塑性樹脂の繊維が使用されており、ポリ乳酸系樹脂製等の石油プラスチックに比較して強度が低いバイオプラスチックのフィラメントの適用は困難である。
特開平07−126970号公報 特開平06−212511号公報 特開2007−84988号公報 特許第1573225号 特許第1672925号
本発明の課題は、化石資源の使用量を削減し、また、環境に及ぼす負荷の低減を図るため、石油プラスチックに比較して強度が低い、生分解性のポリ乳酸系の樹脂を使用して、薄く、且つ、高強度が要求される農業資材、建築・土木資材、自動車部材等、各種産業資材に適用可能な不織布を提供することにある。
本発明者らは、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物から紡糸したフィラメントを、一方向に並列させたフィラメント群を、延伸する際、適温範囲で、適切な負荷により延伸することにより、フィラメントやその絡み合いの強度より低い負荷により延伸させることができることの知見を得た。そして、フィラメントに損傷を与えることなくその絡み合いを温存してフィラメント自体を延伸し再配列させることにより、強度の増大と共に一方向に配向した繊維基材が得られることの知見を得た。そして一方向に配向した繊維基材を繊維が直交するように固着して経緯繊維配列構造を構成し、特定の比強度を持たせることにより、薄く、且つ、農業資材、建設・土木資材、自動車部材等、高強度が要請される各種産業資材として好適に使用できる不織布が得られることの知見を得て、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントがそれぞれ一方向に配列したタテ繊維基材と、ヨコ繊維基材とを相互に固着して形成される経緯繊維配列構造を有し、単位面積当たりの質量に対する引張り強度が、4×104[m2・s-2]以上、2×105[m2・s-2]以下であることを特徴とするポリ乳酸系不織布に関する。
また、本発明は、上記ポリ乳酸系不織布の製造方法であって、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントを縦方向に並列させたフィラメント群を延伸し配列させたタテ繊維基材と、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントを横方向に並列させたフィラメント群を延伸し配列させたヨコ繊維基材とを、連続供給して相互に固着して経緯繊維配列構造を形成することを特徴とするポリ乳酸系不織布の製造方法に関する。
本発明のポリ乳酸系不織布は、化石資源の使用量を削減し、また、環境に及ぼす負荷の低減を図るため、石油プラスチックに比較して強度が低い、生分解性のポリ乳酸系の樹脂を使用して、薄く、且つ、高強度が要求される農業資材、建築・土木資材、自動車部材等、各種産業資材に適用することができる。
本発明のポリ乳酸系不織布は、ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントからなる。本発明のポリ乳酸系不織布に用いる紡糸用樹脂組成物に含まれるポリ乳酸系重合体としては、融点が120℃以上のものが、高い結晶性を有し、得られる不織布において熱安定性、形状安定性が得られることから好ましい。また、廃棄処理する際に環境負荷の低減を図るため、特に、生分解性に優れたものが好ましい。
ポリ乳酸系重合体としては、ポリ乳酸の他、乳酸とエステル形成能を有するモノマーとの共重合体を挙げることができる。ポリ乳酸系重合体は、天然物抽出物やこれらの誘導体や変性体の他、バイオマス原料から得られるモノマー、オリゴマー、又はこれらの誘導体や変性体を用いて合成される縮重合物、又は、バイオマス原料以外を原料とする合成物であってもよい。
上記ポリ乳酸系重合体としては、具体的には、L−乳酸、又はD−乳酸を重合した、ポリL−乳酸、ポリD−乳酸、L−乳酸とD−乳酸の共重合体のポリ乳酸を挙げることができる。また、乳酸共重合体としては、乳酸とエステル形成能を有するヒドロキシカルボン酸、グリコール、ジカルボン酸等の共重合体を挙げることができる。エステル形成能を有するモノマーとしては、例えば、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシエナント酸、ヒドロキシカプリル酸、ヒドロキシペラルゴン酸、ヒドロキシカプリン酸等のヒロドキシカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のジカルボン酸、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ピナコール等のグリコール等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリ乳酸又は上記共重合体を合成するには、乳酸又は乳酸とエステル形成能を有するモノマーとの脱水重縮合によることができる。また、乳酸の環状2量体であるラクチド又はラクチドとヒドロキシカルボン酸等の環状物を、開環共重合して製造することもできる。
上記ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物は、ポリ乳酸系重合体の他、必要に応じて、上記ポリ乳酸系重合体の機能を阻害しない範囲において、その他の樹脂や、添加剤を含有してもよい。具体的には、可塑剤、艶消し剤、顔料、結晶核剤等を挙げることができる。
その他の樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンサクシネートのようなグリコールとジカルボン酸との重縮合体からなるポリアルキレンジカルボキシレートまたはこれらの共重合体が挙げられる。
これらのうち可塑剤は、ポリ乳酸系重合体として、ポリD−乳酸、ポリL−乳酸等のホモポリマーを用いる場合は、紡糸工程における紡糸性の改善と、得られるフィラメント並びに不織布の柔軟性の向上を図ることができるため、使用することが好ましい。
上記可塑剤としては、例えば、トリアセチレン、乳酸オリゴマー、ジオクリチルフタレート等を用いることができる。可塑剤の添加量としては、紡糸用樹脂組成物中、1〜30質量%が好ましく、より好ましくは5〜20質量%である。
結晶核剤は、紡糸工程におけるフィラメントの融着を抑制するため含有させることが好ましい。結晶核剤としては、タルク、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、酸化チタン等を挙げることができ、これらは、紡糸用樹脂組成物中、0.1〜3質量%の範囲で用いることが好ましい。
上記紡糸用樹脂組成物中、ポリ乳酸系重合体の含有量としては、80〜100質量%を挙げることができ、90〜100質量%であることが好ましい。
紡糸するフィラメントは、断面が円形に限らず、楕円、三角形、Y字型、星型等の異形を有していてもよい。断面が円形でなく楕円等の異形の場合、飛散工程におけるエア流を受け易く、エア流の供給量の低減を図ることができるため、好ましい。また、生産効率の向上を図るため、多数本のフィラメントを同時に紡出することが好ましい。紡糸工程における加熱温度は、溶融紡糸の場合は、紡糸用樹脂の溶融温度以上である、120〜300℃以下が好ましく、溶液型紡糸の場合は、例えば、150〜250℃以下の範囲が特に好ましい。
本発明のポリ乳酸系不織布は、上記紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントがそれぞれ一方向に配列したタテ繊維基材と、ヨコ繊維基材とを相互に固着した経緯繊維配列構造を有する。ポリ乳酸系不織布が経緯繊維配列構造を有することにより、石油プラスチックに比較して強度が低いポリ乳酸系の樹脂を用いた不織布であっても、強度が要求される分野において使用することができる。経緯繊維配列構造としては、タテ繊維基材とヨコ繊維基材の繊維が略直交する構造であり、例えば、30°〜150°をなすような構造も含まれる。
本発明のポリ乳酸系不織布におけるフィラメントは、繊度が0.1dTex以上、10dTex以下であることが好ましい。繊度が0.1dTex以上であれば、強度を有する不織布が得られる。10dTex以下であれば、成形時に均一な並列の制御が可能となる。「dTex」は、1000mのフィラメントの質量をg単位で示した値の単位であるTexの1/10の単位である。
繊度は、光学顕微鏡による観察により、100本の繊維の太さを求め、その平均値を繊維径とし、繊度に換算した値とする。
本発明のポリ乳酸系不織布は、単位面積当たりの質量(目付け)が、5g/m2以上、100g/m2以下であることが好ましい。
本発明のポリ乳酸系不織布の目付けに対する引張り強度(以下、比強度という。)は、4×104[m2・s-2]以上、2×105[m2・s-2]以下である。
比強度は、一定幅に対する不織布をサンプルとして測定した引張り強度と、目付けをそれぞれmks単位に換算し、引張り強度を目付けで除して求めることができる。ポリ乳酸系不織布の比強度が4×104[m2・s-2]以上であれば、実質的に産業資材等に用いることができる強度を有し、2×105[m2・s-2]以下であれば、製造を容易に行うことができる。
目付け及び引張強度は、JIS L 1906に準拠して測定する。
次に、ポリ乳酸系不織布の製造方法について、図1に示す不織布の製造装置を用いた製造方法の一例を説明する。図1に示す不織布の製造装置21は、主として、メルトブローンダイス24とコンベア25とを備える紡糸ユニット22と、延伸シリンダ26a,26b、引取ニップローラー27a,27b等を備える延伸ユニット23とで構成されている。メルトブローンダイス24は、先端(下端)に、紙面に対して垂直な方向に並べられた多数のノズル28を有している(図では1つのみ表示している。)。ギアポンプ(図示せず)から送入された溶融されたポリ乳酸系樹脂30がノズル28から押出されることで、多数のフィラメント31が形成される。各ノズル28の両側にはそれぞれエアー溜32a,32bが設けられている。ポリ乳酸系樹脂の融点以上に加熱された高圧加熱エアーは、これらエアー溜32a,32bに送入され、エアー溜32a,32bと連通してメルトブローンダイス24の先端に開口するスリット33a,33bから噴出される。これにより、ノズル28から押出されるフィラメント31の押出し方向とほぼ平行な高速気流が生じる。この高速気流により、ノズル28から押出されたフィラメント31はドラフト可能な溶融状態に維持され、高速気流の摩擦力によりフィラメントにドラフトが与えられ、フィラメントが細径化される。高速気流の温度は、フィラメントの紡糸温度よりも80℃以上、望ましくは120℃以上高くする。メルトブローンダイス24を用いてフィラメントを形成する方法では、高速気流の温度を高くすることにより、ノズル28から押出された直後のフィラメント31の温度をフィラメントの融点よりも十分に高くすることができるため、フィラメントの分子配向を小さくすることができる。
メルトブローンダイス24の下方にはコンベア25が配置されている。コンベア25は、駆動源(図示せず)により回転されるコンベアローラー29やその他のローラーに掛け回されており、コンベアローラー13の回転によりコンベア25を矢印D方向へ移動させ、フィラメント31を矢印D方向へ搬送するようになっている。
フィラメント31は、ノズル28の両側のスリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流した流れである高速気流に沿って流れる。高速気流は、スリット33a,33bから噴出された高圧加熱エアーが合流して、図中、下方に流れる。
メルトブローンダイス24の下方には、スプレーノズル35が設けられている。スプレーノズル35は、高速気流中へ霧状の水を噴霧するもので、これによりフィラメントが冷却され、急速に凝固される。スプレーノズル35bは図中、1個のみを図示しているが、実際には複数個設置される。スプレーノズル35から噴射される流体は、フィラメントを冷却することができるものであれば必ずしも水分等を含む必要はなく、冷エアーであってもよい。
メルトブローンダイス24の近傍の、スリット33a,33bによる高速気流が発生している領域には、楕円柱状ローラーを有する気流振動機構34が設けられている。気流振動機構34は、軸34aが高速気流と直交するように配置され、楕円柱状ローラーが矢印A方向に回転するように設置される。一般に、気体や液体の高速噴流近傍に壁が存在しているとき、噴流は壁面に沿って流れる傾向があり、これはコアンダ効果といわれる。気流振動機構34は、このコアンダ効果を利用して、鉛直方向に流れる高速気流をコンベアの移動方向に沿って往復運動をするようにその方向を変化させる。この高速気流の流れの方向の変動に伴い、フィラメントの落下方向が変動する。即ち、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向き(図面の上下方向)に一致するとき、フィラメント31はコンベア25に向けてほぼ鉛直に落下する。気流振動機構34が軸34aの周りを90度回転し、気流振動機構34の楕円形の長軸が高速気流の向きと直交するとき、フィラメント31の落下位置はコンベア25の移動方向Dに偏位し、偏位量はこのときが最大となる。気流振動機構34の回転に伴いフィラメントのコンベア上への落下位置は、コンベアの移動方向Dに沿って往復運動する。すなわち、凝固したフィラメント31は、コンベアの移動方向に沿う方向(縦方向)に振られ、部分的に折り畳まれて連続的に捕集され、縦方向に配列されたフィラメント群が形成される。
コンベア25上に捕集されたフィラメント群は、コンベア25の移動に伴い矢印D方向へ搬送され、延伸温度に加熱された延伸シリンダ26aと押えローラー36とにニップされ、延伸シリンダ26bに移される。その後、フィラメント群は、延伸シリンダ26bと押えゴムローラー37とにニップされて延伸シリンダ26bに移され、2つの延伸シリンダ26a,26bに密着される。このようにフィラメント群が延伸シリンダ26a,26bに密着しながら送られることで、フィラメント群は、縦方向に部分的に折り畳まれた状態のまま、隣接するフィラメント同士が融着したウェブとなる。
延伸シリンダ26a,26bに密着して送られることにより得られたウェブは、さらに、引取ニップローラー27a,27b(後段の引取ニップローラー27bはゴム製)で引き取られる。引取ニップローラー27a,27bの周速は延伸シリンダ26a,26bの周速よりも大きく、これによりウェブは縦方向に延伸され、タテ繊維基材38となる。このように、紡糸したウェブを縦方向に延伸することにより、フィラメントの配列性をさらに向上することができる。フィラメントが十分に急冷されることによって、延伸応力が小さく伸度が大きいフィラメントが形成される。これは、上述したようにスプレーノズル35から霧状の水を噴霧し、高速気流に霧状の液体を含ませることによって実現される。以上述べた方法で形成されたタテ繊維基材は、繊維の向きが一方向に揃えられている。
このようにしてフィラメントが一方向に配列したタテ繊維基材からヨコ繊維基材を作製し、これらをフィラメントの方向が互いに直交するように順次積層し固着する。タテ繊維基材とヨコ繊維基とを固着する方法としては、熱圧着、接着、機械的接合方法等によることができる。熱圧着方法としては、熱エンボスロールにより、例えば、100℃以上、200℃以下の温度に加熱し、圧着点を5点/inch以上、50点/inch以下等とする圧着方法が、柔軟な風合いが得られることから好ましい。接着方法としては、粉末やエマルジョンの接着剤を用いることができる。機械的接合方法としては、ニードルパンチ等の機械的接合方法を利用することもできる。
また、本発明のポリ乳酸系不織布は、特開2004−76237号公報に記載されるように、紡出したフィラメントをコンベアの移動方向に対し直交する方向に往復させて配列させてヨコ繊維基材を作製し、タテ繊維基材とヨコ繊維基材とを連続して供給して相互に積層し、順次固着して製造することもできる。
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
[実施例1]
ポリL−乳酸100質量部とタルク1質量部を押出機により溶融混練し、紡糸用樹脂組成物を調製した。これをギアポンプにより定量的に押出し、メルトフローダイスから紡出し、コンベアベルト上に、コンベアベルトの走行方向と同一方向に並列した、フィラメント群を形成した。得られたフィラメント群を、タテ方向に6倍に延伸し、巻き取り、タテ繊維基材を得た。目付けは10g/m2、繊度は光学顕微鏡の観察により、1dTex相当であった。
ポリL−乳酸100質量部とタルク1質量部を押出機により溶融混練し、ギアポンプにより定量的に押出し、メルトフローダイスから紡出し、コンベアベルト上に、コンベアベルトの走行方向と同一の方向に並列したフィラメント群を得た。得られたフィラメント群を、ヨコ方向に6.5倍に延伸した後、切断しヨコ繊維基材を得た。目付けは10g/m2、繊度は光学顕微鏡の観察により、1dTex相当であった。
得られたタテ繊維基材にヨコ繊維基材をフィラメントが相互に直交するように積層し、165℃に加熱したエンボスロールにより、圧着点密度50点/inchで熱圧着を行い、経緯繊維配列構造を有するポリ乳酸系不織布を得た。得られたポリ乳酸系不織布の目付けは、20g/m2(0.02kg/m2)、タテ方向の引張り強度は80N/50mm(1600N/m)、ヨコ方向の引張り強度は70N/50mm(1400N/m)であった。引張り強度を目付けで除して、タテ方向の比強度8×104[m2・s-2]、ヨコ方向の比強度7×104[m2・s-2]を得た。
[実施例2〜4]
紡糸用樹脂組成物として、表1に示すモノマー構成のポリ乳酸系重合体を用いた他は実施例1と同様にしてタテ繊維基材、ヨコ繊維基材を作製し、ポリ乳酸系不織布を作製した。得られたポリ乳酸系不織布の目付け、引張り強度を測定し、比強度を得た。結晶核剤のタルクは用いる重合体に対し1質量%の割合で使用した。結果を表1に示す。
[比較例]
実施例1と同様の紡糸用樹脂組成物を用い、スパンボンド法により長繊維不織布を作製した。紡糸温度は200℃、引取速度3500m/分、エンボス温度160℃とした。目付けは20g/m2とした。フィラメントの繊度は光学顕微鏡による観察により、1.5dTexを中心とするものであった。得られた不織布のタテ方向の引張り強度は34N/50mm、ヨコ方向の引張り強度は14N/50mmであった。引張り強度を目付けで除して、タテ方向の比強度3.4×104[m2・s-2]、ヨコ方向の比強度1.4×104[m2・s-2]であった。
Figure 2009150013
結果より、本発明のポリ乳酸系不織布は、経緯繊維配列構造を有し、比強度が大きく、地合いが均質であり、強度が要求される用途に好適であることが分かった。
本発明のポリ乳酸系不織布は、農業資材、建築・土木資材、自動車部材、インテリア、ブラインド、包装材料、テープ、日用雑貨、衛生資材等の各種分野における素材として利用することができ、化石資源の使用量を削減し、環境に及ぼす負荷の低減を図ることができる。
本発明のポリ乳酸系不織布の製造装置を示す概略構成図である。
符号の説明
30 ポリ乳酸系樹脂
31 フィラメント
38 タテ繊維基材

Claims (2)

  1. ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントがそれぞれ一方向に配列したタテ繊維基材と、ヨコ繊維基材とを相互に固着して形成される経緯繊維配列構造を有し、
    単位面積当たりの質量に対する引張り強度が、4×104[m2・s-2]以上、2×105[m2・s-2]以下であることを特徴とするポリ乳酸系不織布。
  2. ポリ乳酸系重合体を含む紡糸用樹脂組成物を紡糸したフィラメントの繊度が、0.1dTex以上、10dTex以下であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸系不織布。
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