JP2012251189A - 冷間工具鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】良好な耐食性を有し、析出硬化処理によって所定の耐摩耗性を得ることで、プラスチック成形品などをハイサイクルで大量に生産することを可能とする。
【解決手段】質量%で、C:1.10〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、断面において存在するMC型炭化物粒子の平均粒径が等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲である冷間工具鋼とする。
【選択図】図7

Description

本発明は、プラスチック成形品を作製する機械のスクリュ材等に使用される冷間工具鋼およびその製造方法に関する。
プラスチックの成形などの腐食雰囲気中で使用される装置部品は発生するガスにより激しい腐食摩耗を受ける。従来、このような箇所には構造用鋼にクロム鍍金や窒化処理などの表面処理を施したものや、JIS SKD11及びステンレス鋼SUS420あるいは析出硬化型17−4PHステンレス鋼などが用いられている。
しかし、表面処理をしたものは、皮膜の不均一性や母材との熱膨張差により使用中に剥離したりして、局部的な摩耗により加速的な損傷を受け、しばしば短期間で使用不能になる事が多い。他方、SKD11などのダイス鋼は耐食性が劣るため使用に耐えなく、17−4PH、SUS420ステンレス鋼は耐食性は優れるものの硬さが十分ではなく、強度及び耐摩耗性で問題がある。そこで、プラスチック成形品の生産性を高めるために、腐食されにくく、しかもプラスチック成形に伴う摩耗による損傷の少ない冷間工具鋼の開発が求められている。
また、セラミックス粉末、ガラス繊維で強化された熱可塑性樹脂などの摩耗性、腐食性の強い材料を加工する機械の部品には、工具鋼の使用あるいはステライト硬化肉盛又は硬質クロム鍍金を樹脂に接触する表面に施した材料の使用により、耐摩耗性及び耐食性の向上を図っていた。しかし、このような機械に使用されるスクリュなど複雑な形状を有する部品の表面に、ステライトを均一に肉盛することは困難であり、肉盛した材料が使用中に剥離したり、また製造コストが上昇するなど問題点が多い。また硬質クロム鍍金も剥離が問題となる。特にセラミックス粉末成形機用部品としては、耐摩耗性の点で全く不十分である。また、その他の工具鋼においても上記機械の部品として耐摩耗性、耐食性の両者を十分兼ね備えたものは見当たらない。
このような課題に対し、特許文献1及び2に記載されている合金鋼が使用されている。これらの合金鋼では、素地と比較して硬質なMo、W、Nb、Vを含有する炭化物を分布させ、耐摩耗性を高めている。
特開昭64−75653号公報 特開2006−283056号公報
しかし、特許文献1では、炭化物の面積率について限定しているものの、炭化物の種類については言及していない。炭化物には,M23型やMC型など金属元素と炭素の原子比が異なるいくつかのタイプが存在する。これらの硬さは、M23型では1500〜1600HVであるのに対し、MC型では2600〜3000HV(丸善出版 若い技術者のための機械・金属材料)であるように、炭化物のタイプによって硬さが大きく異なる。耐摩耗性向上のためには、素地に分布させる炭化物が硬いほど良いと考えられるので、炭化物の中で最も硬いMC型を多く分布させることが重要である。
一方、特許文献2では、MC型炭化物に注目しており、その最大粒子の直径を4μm以上15μm以下に限定している。本発明者らは、プラスチック成形用の機械部材などの寿命を延ばす目的で、冷間工具鋼について鋭意研究を重ねた結果、合金組成及び合金鋼中のMC型炭化物の平均粒径を限定することによって、従来の合金鋼よりも優れた耐摩耗性に加えて良好な耐食性が得られることを見出した。
すなわち、本発明の冷間工具鋼のうち、第1の本発明は、質量%で、C:1.10〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、断面において存在するMC型炭化物粒子の平均粒径が等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲であることを特徴とする。
第2の本発明の冷間工具鋼は、前記第1の本発明において、プラスチック成形機部品の材料として用いられることを特徴とする。
第3の本発明の冷間工具鋼の製造方法は、質量%で、C:1.10〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の粉末を圧密化した後、焼入れ、焼戻し処理を行って、断面において存在するMC型炭化物粒子の平均粒径を等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲とすることを特徴とする。
第4の本発明の冷間工具鋼は、前記第3の本発明において、1000℃〜1200℃の温度でγ化することを特徴とする。
第5の本発明の冷間工具鋼の製造方法は、前記第3または第4の本発明において、熱間静水圧プレスにより前記圧密化をした後、前記焼入れ前に、熱間加工および機械加工を施すことを特徴とする。
以下に、本発明の組成等の限定条件について説明する。なお、各成分の含有量は、V、Nb及びTiは原子%、それ以外は質量%で示している。
C:1.10〜2.00%
Cは、焼入れ焼戻しによるマルテンサイト鋼の必要な硬さを得るため、また合金炭化物の析出強化による必要な強度及び硬さを得るために所定量以上を含有させることが必要である。一方、Cの含有量の増加に伴い、マルテンサイト鋼としての過飽和固溶量が過剰となって靭性を低下させてしまうため、冷間工具鋼として必要とされる靭性を確保する観点からCの含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Cは1.10〜2.00%の範囲内とした。なお、同様の理由で下限を1.2%、上限を1.8%とするのが望ましい。
Cr:10.5〜12.5%
Crは、焼入れ性、耐食性及び破壊靭性を向上させる元素であり、冷間工具鋼として必要とされる焼入れ性及び耐摩耗性を確保する観点から、所定量以上を含有することが必要である。一方、過剰に含有すると、高温強度を極端に低下させてしまうことから、含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Crは10.5〜12.5%の範囲内とした。なお、同様の理由で下限を11%、上限を12%とするのが望ましい。
Si:0.6〜1.0%
Siは、鋼の溶製時において脱酸作用を有し、健全な鋼を得るために所定量以上を含有することが必要である。一方、過剰に含有すると、強度、靭性及び熱伝導率を低下させてしまう。そこで、冷間工具鋼として必要とされる強度、靭性及び熱伝導率を確保する観点からSiの含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Siは0.6〜1.0%の範囲内とした。なお、同様の理由で下限を0.8%とするのが望ましい。
Mn:0.4〜1.0%
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、冷間工具鋼として必要とされる焼入れ性を確保する観点から、所定量以上を含有することが必要である。一方、過剰に含有すると、軟化抵抗を低下させてしまう。更に、球状化焼なましに時間を要するため、製造性を低下させてしまう。そこで、冷間工具鋼の製造工程において許容出来得る軟化抵抗性及び製造性を確保する観点から、Mnの含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Mnは0.4〜1.0%の範囲内とした。なお、同様の理由で上限を0.8%とするのが望ましい。
Mo:0.5〜4.0%
Moは、高温強度及び耐食性を向上させる元素であり、冷間工具鋼として必要とされる高温強度及び耐食性を確保する観点から、所定量以上を含有させることが必要である。一方、過剰に含有すると、高温強度に対する変化はほとんどないものの、破壊靭性を低下させてしまうことから、冷間工具鋼としての破壊掛性を確保する観点から、含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Moは0.5〜4.0%の範囲内とした。なお、同様の理由で下限を0.7%、上限を2.0%とするのが望ましい。さらに上限を1.5%とするのが一層望ましい。
W:0.5〜4.0%
Wは、高温強度を向上させる元素であり、冷間工具鋼として必要とされる高温強度を確保する観点から、所定量以上を含有させることが必要である。一方、過剰に添加すると、高温強度に対する変化はほとんどないものの、破壊靭性を低下させてしまうことから、冷間工具鋼としての破壊靭性を確保する観点から、含有量の上限を求めた。故に、質量%で、Wは0.5〜5.0%の範囲内とした。なお、同様の理由で上限を2.0%とするのが望ましい。さらに上限を1.0%とするのが一層望ましい。
Ni:0.25〜4.0%
Niは、焼入れ性及び耐衝撃性を向上させる一方で、多量に含有すると焼なましに時間を要し、製造性を低下させてしまう。故に、質量%で、Niは0.25〜4.0%の範囲内とした。なお、同様の理由で下限を0.3%、上限を2.0%とするのが望ましい。さらに上限を0.8%とするのが一層望ましい。
Co:0.25〜4.0%
Coは、基地を強化して強度及び耐衝撃性を向上させるために含有する。多量に含有すると脆化させてしまうことから、質量%で、Coは0.25〜4.0%で添加する。なお、同様の理由で下限を1.0%、上限を3.0%とするのが望ましい。さらに下限を1.5%、上限を2.5%とするのが一層望ましい。
V、Nb及びTiは、炭化物生成元素であり、高い硬さのMC型炭化物を生成して耐摩耗性を向上させるために1種以上を含有させる。MC型炭化物の形成量が少ないと必要とされる耐摩耗性が得られない。一方、過剰に添加すると、MC型炭化物の形成量が多くなり耐摩耗性は著しく高めるが、あまりに多いと靭性と被削性の低下を招くため冷間工具鋼として必要とされる疲労強度及び耐衝撃性を確保する観点から、含有量の上限及び下限を求めた。故に、原子%でV、Nb、Tiを合計で1.2〜8.0%の範囲内で含有する。
なお、上記組成には不可避的不純物も含まれ得る。不可避的不純物は、より少ない方が好ましい。上記した冷間工具鋼としての特徴に影響を与えない範囲で不可避的不純物を許容し得るが、特に、影響の大きい不可避的不純物についてはその許容し得る上限値を定めることができる。より詳細には、P、S、Al、O及びNに関しては、下記の如く定めることができる。
Pは、介在物として粒界に析出して耐衝撃性を低下させ、更に、偏析の濃度勾配を大きくして異方性を悪化させるため、より少ない方が好ましい。故に、許容し得る上限値は、質量%で、0.025%以下である。
Sは、疲労破壊の起点となる介在物を多量に生成するため、より少ない方が好ましい。故に、許容し得る上限値は、質量%で、0.015%以下である。
Al、O及びNは、過剰に含有すると焼入れ硬さ及び靱性を低下させるため、より少ない方が好ましい。故に、許容し得る上限値は、質量%で、Alは0.1%以下、0は0.005%以下、及び、Nは0.025%以下である。
MC型炭化物粒径:0.2〜1.5μm
W、V、Nb、TiなどはMC型炭化物を形成する。この炭化物の平均粒径が等価円直径で0.2μm未満、または1.5μmを越えると十分な耐摩耗性が得られない。したがって、MC型炭化物の平均粒径を等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲内とする。
なお、等価円直径は、SEMを用いて観察した任意の断面におけるMC型炭化物の面積を画像解析ソフトにより測定し、同一の面積となる円の直径を算出することにより、求めることができる。
なお、本発明としては、MC型炭化物粒径は、平均で上記範囲内にあればよく、炭化物粒径自体の上限を定めるものではないが、大きすぎると摩耗時に炭化物が脱落しやすくなり、耐摩耗性に寄与しなくなることから、上限を3.5μmに定めるのが望ましい。
本発明によれば、耐摩耗性と耐食性の高い冷間工具鋼を得ることが出来るので、本冷間工具鋼を用いて製造された機械部品のプラスチック成形に伴う損傷を少なくすることができる。故に、プラスチック成形品を部材の寿命を延ばして大量に生産することが可能となる。
また、本発明の冷間工具鋼は、プラスチック成形機部品として使用する際に、過酷な成形条件下で高温における耐食性、耐摩耗性、靭性を有し、従来の冷間工具鋼の部品では達成できない長寿命の部品を提供することができる。
本発明の実施例に用いる砂摩耗試験機の模式図を示す。 同じく実施例における本発明鋼と比較鋼の摩耗体積と硬さを示す。 同じく、本発明鋼と比較鋼11及び12における摩耗体積とMC型炭化物の平均等価円直径の関係を示す。 同じく、本発明鋼と比較鋼11及び12の摩耗体積とMC型炭化物の面積率との関係を示す。 同じく、本発明鋼と比較鋼のリン酸環境下における腐食度を示す。 同じく比較鋼No.10で確認されたCr系のM23型炭化物の一例を示す図面代用写真である。 同じく、摩耗体積と腐食度で整理した結果を示す。
以下、この発明の一実施形態を説明する。
質量%で、C:1.20〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有する粉末を常法により用意する。本発明としては、該粉末の製造方法が特に限定されるものではない。該粉末としては例えば20メッシュ以下の大きさとする。
上記粉末を、Arなどの不活性ガス中で、例えば900〜1200℃、50〜200MPaの条件でHIP(熱間静水圧プレス)をする。なお、本発明としては、HIPによることなく、例えば、エレクトロスラグ再溶解法等の製造法を用いることができる。なお、製造に際しては、酸素混入を防止するために不活性ガス雰囲気や真空雰囲気で焼結、溶解などを行うことが可能である。
上記により得られた合金塊は、熱間加工や機械加工によって所望の形状に成形などすることができる。熱間加工、機械加工の条件や内容については本発明としては特に限定されるものではなく、例えば熱間加工として熱間鍛造、熱間圧延などを行うことができる。また、機械加工として切削などを行うことができる。
必要に応じて熱間加工や機械加工などを行った後、例えば、1000〜1200℃、1〜5時間の溶体化処理を行い、その後、450〜600℃で1〜20時間の焼戻しを2回行う。なお、2回目の焼戻し温度は、1回目と同等かそれ以下とする。上記溶体化処理によって合金鋼のγ(オーステナイト)化を行うことができる。
上記熱処理により、前記合金に含まれるMC型炭化物の平均粒径が、断面において等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲となるようにする。好ましくは最大粒径を3.5μm以下とする。MC型炭化物は、上記熱処理によって形成されるものであってもよく、また、MC型炭化物は、予め、粉末として炭化物を用意して成分中に混合してHIPしたものであってもよい。さらに、冷間工具鋼をエレクトロスラグ再溶解法により製造する際に、前記MC型炭化物のサイズ、形態を制御しつつ製造するものであってもよい。
要は、冷間工具鋼として最終的に上記MC型炭化物の粒径を有していればよい。
上記により得られた冷間工具鋼は、プラスチック成形機部品の材料として好適に利用することができる。本発明による冷間工具鋼からなるプラスチック成形機部品によれば、プラスチック成形品をハイサイクルで大量に生産できるのである。この冷間工具鋼は、二軸押出機、単軸押出機などのプラスチック押出成形機部品にも好適に利用することができる。
プラスチック成形機部品としては、スクリュ、スクリュヘッド、逆流防止リングなどが例示される。但し、本発明の冷間工具鋼の用途がこれらに限定されるものではない。
また、この冷間工具鋼には、成形材と接触する表面に、PVDなどの手法を用いてチタンなどを含有した硬質膜を施工し、より耐食性、耐摩耗性が向上した射出成形機用スクリュおよび組立部品としてもよい。
以下、この発明の一実施例を説明する。
表1に示す各成分組成を有する合金(残部Feとその他の不可避不純物)のそれぞれについてHIPにて焼結して3kgのインゴットを得た。その後、これに1150℃で3時間の溶体化処理を施した後に、525℃で4時間と500℃で6時間の2回の焼戻し処理を施して供試材を得た。
各供試材からは、10mm×20mm×40mmの直方体を切出して、硬さ、耐摩耗性、耐食性、MC型炭化物の粒径及び面積率を評価した。
硬さは、JISZ2244:2009ビッカース硬さ試験方法にて試験力20kgfで測定した。
耐摩耗性は、図1に示す砂摩耗試験機を用い、摩耗試験条件は、試験力:130N、回転速度:200rpm、回転数:2000回転、砂:表2に示すSiOを主成分とする平均粒径100μmの砂にて実施した。
なお、砂摩耗試験機は、ゴム1を被覆した車輪2に、てこ3でおもり4の応力を付加した試験片5を押圧し、回転する車輪2と試験片5との間にホッパ6に収容した砂7を供給して摩耗量を測定するものである。
耐食性は、1%リン酸煮沸中で試験時間1時間あたりの質量変化で評価を行った。走査型電子顕微鏡像中の楕円形状のMC型炭化物の等価円直径については、以下のように求めた。前述の直方体の中心付近を含む位置にて切断し、切断面を鏡面研磨した後にSEMを用いて3000倍で観察した数視野において認められる各々のMC型炭化物の面積を画像解析ソフトにより測定し、同一の面積となる円の直径を算出した。これを等価円直径とし、各試験片において平均値および最大値を求めた。また、面積率は、MC型炭化物の断面積の総和を求め、それを観察視野の面積で割った値を用いた。以上の結果を図2〜6、表3、4に示した。
図2及び表3に本発明鋼と比較鋼の摩耗体積と硬さを示すように、比較鋼の試験片No.10〜13と比較して前記した発明鋼である試験片No.2、3、5〜9では、硬さにほとんど相違はないものの、耐摩粍性において大幅な上昇が見られる。
図3は、試験片No.1〜9、11及び12における摩耗体積とMC型炭化物の平均等価円直径との関係を示したものである。なお、試験片No.10及び13ではMC型炭化物が確認されなかった。試験片No.11及び12の結果からMC型炭化物の平均等価円直径が0.2μm以下もしくは2μm以上において摩耗体積が著しく増大している。このことからMC型炭化物が小さすぎても大きすぎても耐摩粍性向上に寄与しないことがわかる。故にMC型炭化物の平均等価円直径は0.2〜1.5μmの範囲内とした。
また、表3に示したように、本発明鋼のMC型炭化物の等価円直径の最大値は0.75〜3.35μmであった。すなわち、特許文献2で制限しているMC型炭化物のサイズよりも、小さい範囲で良好な耐摩耗性が得られることを見出した。
図4は、試験片No.1〜9、11及び12において摩耗体積とMC型炭化物の面積率との関係を示したものである。試験片No.11及び12の結果からMC型炭化物の面積率が0.3%以下もしくは13.5%以上において摩耗体積が著しく増大している。試験片No.11においては、MC型炭化物が13.5%生成しているものの、前記記載の通り、MC型炭化物の平均等価円直径が2μmと粗大である為に摩耗体積が増大している。試験片No.12においては、MC型炭化物の面積率が0.3%でMC型炭化物の平均等価円直径が0.2μmと微細である為にMC型炭化物は耐摩耗性に寄与せず摩耗体積が増大している。
図5に示すように、比較鋼の試験片No.10〜13と比較して前記した成分範囲内にある本発鋼の試験片No.1〜9において耐食性において大幅な上昇が見られる。
図6の図面代用写真は走査型電子顕微鏡像であり、試験片No.10で確認されたCr系のM23型炭化物を含む組織を示している。
試験片No.10及び13では、このCr系の炭化物が晶析出することで基地中のCr固溶量が減少し、そのため耐食性が本発明鋼より劣っている。また試験片No.11は、Cが他の鋼種に比べ多量に添加されていることから、MC型炭化物以外にも、Cr系のM23型炭化物もNo.10と同様に生成しているため、基地中のCr固溶量が減少したことで耐食性が低下している。試験片No.12は、MC型炭化物生成元素の添加量が少ないことから、MC型炭化物の生成量が少なく、それによりCr系のM23型炭化物が比較的多く生成したことで耐食性が低下している。それに対し本発明鋼は、試験片No.2〜7、9では、MC型炭化物が十分に生成したことでCr系のM23型炭化物の生成が抑制され、それに伴い基地中のCr固溶量が高くなったため耐食性が向上している。
試験片No.1及び8は、Cr炭化物よりも安定なMC型炭化物形成元素であるV、Nb及びTiの合計値V+Nb+Ti(原子%)が、CとCrがNo.1及び8とほとんど変わらないNo.2〜6及び9より小さい。その為No.2〜6及び9よりCr系のMC型炭化物の生成量が多くなり、炭化物の生成にCrが消費された事で基地中のCr固溶量が減少し、No.2〜6及び9よりは耐食性は劣る。しかし、比較鋼でCとCrがほぼ同量であるNo.12よりはV+Nb+Ti(原子%)が多く添加されており、また図4の結果からもNo.12よりも若干多くのMC型炭化物が生成している事がわかる。その為、No.1及び8は、Cr系のM23型炭化物の生成量がNo.12より少なくなり、基地中のCr固溶量がNo.12より増加することで耐食性が向上している。
図7は、摩耗体積と腐食度で整理した結果である。特に発明鋼No.2、3、5〜7及び9は耐摩耗性と耐食性のバランスが良く、比較鋼No.10〜13と比較して優れている。
ここまで本発明による代表的実施例及びこれに基づく変形例を説明したが、本発明は必ずしもこれら実施例及び変形例に限定されるものではなく、当業者であれば、添付した特許請求の範囲を逸脱することなく種々の代替実施例及び改変例を見出すことができるであろう。
3 てこ
5 試験片
7 砂

Claims (5)

  1. 質量%で、C:1.10〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、断面において存在するMC型炭化物粒子の平均粒径が等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲であることを特徴とする冷間工具鋼。
  2. プラスチック成形機部品の材料として用いられることを特徴とする請求項1記載の冷間工具鋼。
  3. 質量%で、C:1.10〜2.00%、Cr:10.5〜12.5%、Si:0.6〜1.0%、Mn:0.4〜1.0%、Mo:0.5〜4.0%、W:0.5〜4.0%、Co:0.25〜4.0%、Ni:0.25〜4.0%を含有し、さらに、V、NbおよびTiの一種以上を原子%で合計1.2〜8.0%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成の粉末を圧密化した後、焼入れ、焼戻し処理を行って、断面において存在するMC型炭化物粒子の平均粒径を等価円直径で0.2〜1.5μmの範囲とすることを特徴とする冷間工具鋼の製造方法。
  4. 1000℃〜1200℃の温度でγ化することを特徴とする請求項3記載の冷間工具鋼製造方法。
  5. 熱間静水圧プレスにより前記圧密化をした後、前記焼入れ前に、熱間加工および機械加工を施すことを特徴とする請求項3または4記載の冷間工具鋼の製造方法。
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