JP2012250940A - C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物 - Google Patents

C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物 Download PDF

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恭子 小原
Akira Matsumori
昭 松森
Tomohiro Nishimura
知裕 西村
Michinori Obara
道法 小原
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Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science
Kumamoto University NUC
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Abstract

【課題】本発明は、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、インターフェロンα及びピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物、あるいは、ピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物であって、インターフェロンα投与を受けるC型肝炎患者に投与されることを特徴とする、前記組成物、に関する。
【選択図】なし

Description

本願発明は、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物に関する。
C型肝炎ウイルス
日本最大級の感染症、C型肝炎ウイルス感染者は、国内に150万人以上存在すると言われている。C型肝炎ウイルス(Hepatitis C Virus)(以下、「HCV」という。)は、1989年に、輸血後の非A非B型肝炎の主要な原因ウイルスとして発見された。HCVは、エンベロープを有する直径35−65nmの球状粒子の1本鎖プラス鎖型RNAウイルスであり、フラビウイルス科(Flaviviridae)のヘパチウイルス属(Hepacivirus)に属する。
HCVの伝播は血液を介して行われる。肝細胞の一部のリンパ球を標的細胞とし、宿主の免疫機構やインターフェロンからエスケープして持続感染を引き起こす。HCVの宿主免疫機構回避の機序はいまだ明らかではなく、免疫機構の発達した大人に感染した場合でも、持続感染が成立することが多い。HCV感染者の症状は、通常肝炎から始まり、上記持続感染により、多くの場合、慢性肝炎、肝硬変、肝細胞癌へと進展する。肝細胞癌まで進展した場合、手術により患部を摘出しても、非癌部で引き続き持続感染が起こるため、肝細胞癌再発の危険性は高い。
HCV感染者において、HCVの産生や増殖を抑制する方法、又はHCVを消失させる方法としては、従来、インターフェロン療法が有効とされている。症状の進展を抑制して肝細胞癌の発症を遅延させることを目的として、インターフェロンの少量継続投与が行われている。インターフェロン療法は、抗ウイルス薬であるリバビリンの併用により効果が高まる。さらに、ポリエチレングリコール(PEG)を用いたインターフェロンのPEG化(PEG化)などによって治療成績が改善することが報告されている。現在、行われているインターフェロン・リバビリン併用療法の例として下記のものが含まれる。
PEG−IFNα2a(ペガシス Pegasys(登録商標))+リバビリン(コペガス Copegus(登録商標))
PEG−IFNα2b(ペグイントロン Pegintron(登録商標))+リバビリン(レベトール Rebetol(登録商標))
インターフェロン療法を用いても約5割のHCV感染者は、依然として肝細胞癌発症の危険性を抱えたままである。また、インターフェロンは、脱毛、食欲不振、鬱、吐き気、腹痛、血小板減少などの副作用を生じる場合がある。強い副作用のため、治療を断念する患者も存在する。副作用が少なく効果の高いHCV治療法の開発が望まれていた。
ピクノジェノール
ピクノジェノールは、フランス海岸松の樹皮などの植物材料から抽出される成分であり、オリゴメリックプロアントシアニジン( プロアントシアニジン、シアニジン、プロシアニジンとも呼ばれる) を主成分とし、その他多種類の有機酸を含む、ポリフェノール化合物混合物である。「ピクノジェノール」の名称は、本来、スイスのホーファー・リサーチ社の登録商標であるが、現在は、一般に、フランス海岸松樹皮抽出物に対して使用されている。
ピクノジェノールは、強力な抗酸化作用及び抗炎症作用を有し、抗炎症剤、抗酸化剤、抗アレルギー剤、抗ウイルス剤として使用できることが知られている。例えば、非特許文献1は、ピクノジェノールが免疫不全ウイルス(HIV−1)の宿主細胞への結合を抑制するのみでなく、インビトロの条件下で、感受性細胞に移行した後の複製も抑制することを記載している。
また、心臓・循環器系に対する生理活性としては、冠動脈の拡張及び血流の増大作用、心筋への血流増大作用を有する。このことからさらに、末梢血管の血流増加作用、鬱血した心筋の血流改善、血管系不整脈の正常化等の作用を示す。その結果、穏やかな脈拍頻度に復する作用、虚血再環流による心障害保護などの活性を示す。特許文献1は、ピクノジェノールが、心筋組織の壊死及び心筋細胞浸潤などを抑制することに基づき、ピクノジェノールを含む心筋炎の予防、治療又は改善用組成物を記載している。しかしながら、当該特許文献には、ピクノジェノールによるHCV産生抑制作用に関する具体的な記載はない。
特許文献2は、ブルーベリー葉の抗HCV活性有効性分がプロシアニジンであることを特定したことに基づき、プロシアニジンからなる組成物を有効成分とするC型肝炎ウイルス複製抑制剤を記載している。プロシアニジンはピクノジェノールの主成分の1種である。しかしながら、当該文献には、インターフェロン療法においてピクノジェノールを併用することについて記載も示唆もしていない。
特開2005−239581 特開2010−59096
Jpn. J. Infect. Dis., 61, 279-285, 2008
インターフェロン療法によっても約5割のHCV感染者は、依然として肝細胞癌発症の危険性を抱えたままである。また、インターフェロンは、脱毛、食欲不振、鬱、吐き気、腹痛、血小板減少などの副作用を生じる場合がある。強い副作用のため、治療を断念する患者も存在する。
本願発明は、インターフェロンαの抗HCV効果を高め、インターフェロンの使用量を減少させるための組成物、及び方法を提供するものである。
本発明者らは、C型肝炎を予防、治療又は改善するための方法において、インターフェロンαとともに、ピクノジェノールを投与すると、インターフェロンαの効果が高まり、HCVの感染及び/又は複製が有効に抑制できることを見出し、本発明を想到した。
限定されるわけではないが、本発明は好ましくは以下の態様を含む。
[態様1]
インターフェロンα及びピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物。
[態様2]
ピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物であって、インターフェロンα投与を受けるC型肝炎患者に投与されることを特徴とする、前記組成物。
[態様3]
C型肝炎ウイルスの感染又は複製を抑制する、態様1又は2に記載の組成物。
[態様4]
さらにリバビリンを含む、あるいは、リバビリンとともに投与される、態様1ないし3に記載の組成物。
[態様5]
経口摂取される、態様1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。
[態様6]
医薬組成物又は食品組成物である、態様1ないし5に記載の組成物。
本発明において、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物が提供される。本願発明の組成物は、インターフェロン療法においてピクノジェノールを併用することにより、C型肝炎の予防、治療又は改善効果を相乗的に高めるものである。本明細書の例えば、実施例3、図7に記載の通り、ピクノジェノールをインターフェロンαと併用することで、HCV−レプリコン細胞を用いた、HCV複製活性測定において、インターフェロンによる抗HCV複製効果を約2倍増強することが判明した。これにより、インターフェロン使用量を半分にすることができる。
さらに、HCVの感染抑制効果については、ピクノジュノールの主成分であるプロシアニジンでIFNとの相加効果が観察された。
ピクノジェノールは、特に経口摂取の安全が確認されており、アンチエイジングサプリメントとして世界中で販売されている。本発明により、例えば、既に安全性の確認されたサプリメントであるピクノジェノールを用いてインターフェロン療法の効率化が期待できる。
図1は、ピクノジェノール処理(72時間)によるHCV−レプリコン細胞系R6に対する効果を示す。図1Aは、ルシフェラーゼ活性(RLU;Relative Luciferase unit)を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。未処理の場合の複製活性を100%とする。図1Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。未処理の場合の細胞活性を1とする。ピクノジェノールは実験に用いた50μg/mLの範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 対照として、インターフェロンα 1 IU/mL(IFN1)及び10 IU/mL(IFN10)で72時間処理した場合の効果も示した。 図2は、ピクノジェノール処理(72時間)によるHCV−レプリコン細胞系FLR3−1に対する効果を示す。図2Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。未処理の場合の複製活性を100%とする。図2Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。未処理の場合の細胞活性を1とする。ピクノジェノールは実験に用いた50μg/mLの範囲ではFLR3−1細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 対照として、インターフェロンα 1 IU/mL(IFN1)及び10IU/mL(IFN10)で72時間処理した場合の効果も示した。 図3は、ピクノジェノール処理によるHCV−レプリコン細胞系JFH−1に対する効果を示す。具体的には、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果を示した。未処理の場合の複製活性を100%とする。ピクノジェノールを10μg/mLの濃度で用いた場合でも、HCV複製活性は未処理の場合の70%保持されている。 対照として、インターフェロンα 10IU/mLで72時間処理した場合の効果も示した。 図4は、ピクノジェノール処理後のHCV−レプリコン細胞系R6、FLR3−1及びJFH−1における、HCV NS3タンパク質の発現をウエスタンブロット分析で調べた結果を示す。R6細胞及びFLR3−1細胞では、ピクノジェノールで72時間処理後、HCV NS3タンパク質の発現が有意に減少したが、JFH−1細胞では未処理の場合と比較して有意な減少は観察されなかった。 対照として、インターフェロンα 10IU/mLで72時間処理した場合の効果も示した。 図5は、R6細胞をピクノジェノール及びインターフェロンαで24時間処理した場合の効果を示す。 non:未処理 PG1、PG5、PG10、PG20:各々ピクノジェノール 1μg/mL、5μg/mL、10μg/mL及び20μg/mL IFN1、IFN5、IFN10:各々インターフェロンα 1IU/mL、5IU/mL、10IU/mL 図5Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。縦軸は未処理の場合のルシフェラーゼ活性を100%とする。PG5+IFN5で、各々単体で使用した場合よりも相乗的に強力なHCV複製抑制効果を示した。 図5Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。縦軸は未処理の場合の細胞活性を100%とする。ピクノジェノール、インターフェロンα及び双方の組み合わせは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 図6は、R6細胞をピクノジェノール及びインターフェロンαで48時間処理した場合の効果を示す。横軸及び縦軸は図5と同様である。 図6Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。PG5+IFN5で、各々単体で使用した場合よりも相乗的に強力なHCV複製抑制効果を示した。 図6Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。ピクノジェノール、インターフェロンα及び双方の組み合わせは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 図7は、R6細胞をピクノジェノール及びインターフェロンαで72時間処理した場合の効果を示す。横軸及び縦軸は図5と同様である。 図7Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。PG5+IFN5で、各々単体で使用した場合よりも相乗的に強力なHCV複製抑制効果を示した。 図7Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。ピクノジェノール、インターフェロンα及び双方の組み合わせは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 図7より5IU/mLのIFNα処理(IFN5)はHCV複製を47%抑制したのに対し、さらに、5μg/mLのピクノジェノールを加えた場合(IFN5+PG5)は、97%抑制した。 図8は、図5A、図6A及び図7Aに示したHCV複製活性を、24時間−72時間の処理時間の経時変化として示した図である。図8Aの縦軸は、ルシフェラーゼ活性(単位RLU)である。図8Bは、未処理の場合を100%として比較した図である。 図9は、図5A、図6A及び図7Aに示した細胞代謝活性を、24時間−72時間の処理時間の経時変化として示した図である。図9Aの縦軸は、450nmの吸光度である。図9Bは、未処理の場合を100%として比較した図である。 図10は、R6細胞におけるピクノジェノール、インターフェロンα及びリバビリンの併用(24時間)の相互作用を解析した結果を示す。RBV:リバビリン 図10Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。未処理の場合のルシフェラーゼ活性を100%とする。IFN 1 IU/mLで約IC50であり、RBV 5μg/mLでHCV複製活性は約80%に、そして、IFN 1+RBV5で約52%に抑制される。これに対し、IFN 1+RBV5+PG10で、HCV複製活性は約26%にまで抑制された。ピクノジェノールは特に、インターフェロン及びリバビリンとの併用により高い効果が期待される。 図10Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞代謝活性を調べた結果を示す。未処理の場合の細胞活性を100%とする。ピクノジェノール、インターフェロンα、リバビリンは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。 図11は、R6細胞におけるピクノジェノール、インターフェロンα及びリバビリンの併用(48時間)の相互作用を解析した結果を示す。RBV:リバビリン 図11Aは、ルシフェラーゼ活性を用いたレポーターアッセイによりHCV複製活性を調べた結果である。未処理の場合のルシフェラーゼ活性を100%とする。IFN 1 IU/mLでHCV複製活性は約36%に、RBV 5μg/mLで約53%に、そして、IFN 1+RBV5で約17%に抑制される。これに対し、IFN 1+RBV5+PG10で、HCV複製活性は約8%にまで抑制された。ピクノジェノールは特に、インターフェロン及びリバビリンとの併用により高い効果が期待される。 図11Bは、WST8を用いて細胞内脱水素酵素により還元されて生成する水溶性のホルマザンを450nmの吸光度で直接測定することにより細胞活性を調べた結果を示す。未処理の場合の細胞活性を100%とする。ピクノジェノール、インターフェロンα、リバビリンは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対してほぼ細胞毒性がないことが確認された。 図12は、HCV感染細胞におけるピクノジェノール、プロシアニジン及びインターフェロンαの感染抑制効果を示す。PS:プロシアニジン リアルタイム検出PCRを用いて細胞から抽出したRNA中のHCVのコピー数(図12)を調べた。図12に示されるように、IFN単独使用の場合と比較してもPS25(μg/mL)と併用した方が、細胞中のHCV−RNA量が約50%減少した。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
本発明は、インターフェロンα及びピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物に関する。
本発明は、また、ピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物であって、インターフェロンα投与を受けるC型肝炎患者に投与されることを特徴とする、前記組成物に関する。
ピクノジェノール
本発明における「ピクノジェノール」は、フランス海岸松(学名:PINUS PINASTER)と呼ばれる松の樹皮を溶媒を用いて抽出することにより得られる成分を指す。ピクノジェノールは、通常、オリゴメリックプロアントシアニジン(プロシアニジン(PS)、プロアントシアニジン、シアニジンとも称される)及び有機酸を含む混合物であり、原料及び抽出方法によりその組成は異なる。好ましくは、少なくとも50%はプロシアニジンを含む。
ピクノジェノールの抽出に用いられる溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールのようなアルコール;酢酸エチルエステルのような低級アルキルエステル;その他、エチルエーテル、アセトン、酢酸などの公知の水溶性溶媒を挙げることができる。ピクノジェノールは、特に、エタノールを用いて抽出されたものであることが好ましい。
ピクノジェノールは、上記の方法により得られた抽出液をそのまま用いてもよいが、この抽出液から、例えば、減圧乾燥、凍結乾燥等の公知の乾燥方法により得られた植物エキス乾燥物であってもよい。また、抽出液の濃縮物であってもよい。
またピクノジェノールは、ホーファー・リサーチ株式会社(商品名:Pycnogenol(登録商標))、株式会社東洋新薬(商品名:フラバンジェノール(登録商標)などから市販されており、市販品を使用してもよい。
さらに、本発明におけるピクノジェノールとインターフェロンαとの併用による効果は、ピクノジェノールの主成分であるプロシアニジンを使用した場合でも同様の効果が得られると考えられる(図12)。よって、本発明において「ピクノジェノール」の使用は、その主成分であるプロシアニジンを使用する態様を含む。
インターフェロンα
本発明は、C型肝炎の予防、治療又は改善のための方法において、インターフェロンαとともに、ピクノジェノールを投与すると、インターフェロンαの効果が高まり、HCVの感染及び/又は複製が有効に抑制できる、という発見に基づく。
インターフェロンαによる治療は周知であり、特に限定されない。限定されるわけではないが、インターフェロンαは好ましくはポリエチレングリコール(PEG)によりPEG化(ペグ化)されている。本発明の方法に使用しうるインターフェロンαの例として、PEG−IFNα2a(ペガシス Pegasys(登録商標))、PEG−IFNα2b(ペグイントロン Pegintron(登録商標))が含まれる。
インターフェロンαは一般には注射(皮下注射、皮内注射、筋肉内注射)により投与されることが多い。一方、ピクノジェノールは好ましくは経口投与される。よって、本発明において、ピクノジェノールは、好ましくはインターフェロンαとは別の組成物として投与される。あるいは、インターフェロンαとピクノジェノールの双方を含む組成物としてもよい。
リバビリン
本発明において、C型肝炎の予防、治療又は改善するための方法において、ピクノジェノールの投与により、インターフェロンαとリバビリンの併用による効果も高める。よって、本発明の組成物は、さらにリバビリンを含む、あるいは、リバビリンとともに投与される、ことが好ましい。
本明細書において、「リバビリン」とは、多数のウイルスに効果を示す抗ウイルス薬で、現在日本では、C型肝炎に対して認可されている。経口剤としてインターフェロン(注射)とともに用いる方法が標準的治療法である。
「リバビリン」は、IUPAC命名法による物質名が、1−[(2R、3R,4S、5R)−3,4−ジヒドロキシ−5−(ヒドロキシメチル)オキソラン−2−イル]−1H−1,2,4−トリアゾル−3−カルボキサミドであり、以下の式I構造を有する。
式I
リバビリンは、「コペガス Copegus(登録商標)」「レベトール Rebetol(登録商標)」などが市販されており、これらを使用することも可能である。
医薬組成物
本発明の組成物は、薬学的に許容される賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、付湿剤等と配合し、一般的な形態の製剤とされる。
賦形剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、乳糖、ショ糖、ブドウ糖等の各種の糖類;バレイショデンプン、コムギデンプン、トウモロコシデンプン等の各種デンプン類、;結晶セルロース等の各種セルロース類;無水リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム等の各種無機塩類等が挙げられる。
結合剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、結晶セルロース、プルラン、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、マクロゴール等が挙げられ
る。
崩壊剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、デンプン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。
潤沢剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などが挙げられる。
付湿剤としては、公知のものを広く使用でき、例えば、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、落花生油、大豆リン脂質、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。
製剤形態は、特に限定されず、例えば錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、トローチ剤、フラッシュメルト錠剤等の経口投与剤;外用剤(経皮パッチ、鼻腔内スプレー剤など)、座剤等の非経口投与剤等などの各種製剤形態を挙げることができる。好ましくは経口投与剤である。
製剤中のピクノジェノールの含有量は、投与対象の年齢、性別、症状、製剤の形態、投与経路、期待される効果などにより異なり一概に定めることはできないが、1日投与量が体重1kg当たり、0.1〜10mg程度となる量含まれていることが好ましく、1〜2mg/kg程度となる量含まれていることがより好ましい。例えば、1日3回投与する製剤であれば、1剤中にはこの3分の1の量が含まれていればよい。
また製剤とする場合の、組成物中のピクノジェノールの含有比率としては、例えば1〜15重量%程度、好ましくは5〜10重量%程度の比率を挙げることができる。
本明細書中の実施例においてピクノジェノールは50μg/mLの濃度で培養細胞に投与しても細胞毒性を有しないことが示された。よって、限定されるわけではないが、本発明の組成物は5μg/mLないし50μg/mLの濃度のピクノジェノールを含む。
さらに、本発明の実施例において、ピクノジェノールは特に1 IU/mLないし5 IU/mLの濃度のインターフェロンαと共投与された場合に、インターフェロンαを有するHCV感染及び複製抑制効果を示した。よって、限定されるわけではないが、本発明の組成物は、1 IU/mLないし5 IU/mLの濃度のインターフェロンαと共投与される。
食品組成物
また本発明の組成物は、ピクノジェノールを食品に添加した食品組成物であってもよい。
食品の種類は特に限定されず、例えば、飲料(炭酸飲料、清涼飲料、乳飲料、アルコール飲料、果汁飲料、茶類、栄養飲料、スープ等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、菓子類(ガム、キャンディー、クッキー、グミ、せんべい、ビスケット、ゼリー等)、パン、麺類、シリアル、調味料(ソース、ドレッシング等)等を例示できる。
本発明の食品組成物は、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品等として使用できる。
本発明の食品組成物には、必要に応じて、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘剤、安定剤、ゲル化剤、糊剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤(防ばい剤)、イーストフード、ガムベース、香料、酸味料、調味料、豆腐用凝固剤、乳化剤、pH調整剤、かんすい、膨脹剤、栄養強化剤等の食品衛生上許容される食品添加物を適宜添加してもよい。
食品組成物中のピクノジェノールの含有量は、対象の症状、年齢、性別、期待される効果などにより異なるが、1日摂取量が1〜300mg程度となる量含まれていることが好ましく、1日摂取量が50〜200mg程度となる量含まれていることがより好ましい。また食品組成物中のピクノジェノールの含有比率は、食品の種類によっても異なるが、固形食品の場合、0.01〜1重量%程度が好ましく挙げられ、0.02〜0.1重量%がより好ましく挙げられる。また液体食品の場合、10mg/100mL〜200mg/100mL(重量/容量)%程度が好ましく挙げられ、40〜100mg/mL(重量/容量)%がより好ましく挙げられる。
C型肝炎の予防、治療又は改善のための方法
本発明はまた、C型肝炎の予防、治療又は改善のための方法であって、インターフェロンα及びピクノジェノールを、必要な患者に投与することを含む、前記方法を提供する。
本発明はさらに、C型肝炎の予防、治療又は改善のための方法であって、ピクノジェノールを、インターフェロンα投与を受けるC型肝炎患者に投与することを含む、前記方法を提供する。
ピクノジェノール(及びインターフェロン)は、それ単独で投与することもできるが、上述した本発明の医薬組成物又は食品組成物の形態で投与することもできる。
ピクノジェノールの投与量は、投与対象の年齢、性別、症状、製剤の形態、投与経路、期待される効果などにより異なり一概に定めることはできないが、ピクノジェノール投与又は医薬組成物の形態で投与する場合、1日投与量を、体重1kg当たり、0.1〜10mg程度とすることが好ましく、50〜300mg程度とすることがより好ましい。また1日当たり1〜5回程度を、製剤形態に従った方法で投与すればよい。
また食品組成物の形態で投与する場合は、1日当たり1〜300mg程度を投与することが好ましく、50〜300mg程度を投与することがより好ましい。
C型肝炎ウイルスの感染抑制効果及び複製抑制効果
本発明の組成物は、C型肝炎の予防、治療又は改善のために使用されうる。理論に縛られるわけではないが、本発明の組成物によりインターフェロンαのC型肝炎ウイルスの感染抑制効果及び複製抑制効果が高められる。
本明細書において、HCV感染活性とは「HCVが細胞に感染する活性」を意味する。ウイルスの「感染」とは、限定されるわけではないが、ウイルスが細胞に吸着・侵入し、脱核して自身の核酸を細胞内に放出し、自身の核酸と同じものを合成する「複製」の段階を経て、翻訳段階でウイルス構成タンパク質を作り、それがウイルス粒子を形成した細胞外に出芽する、というライフサイクル全体を意味する。
HCVの感染活性は、限定されるわけではないが、例えば、本明細書の実施例5に記載の、HCV mRNA量又はゲノムDNA量の定量によりウイルスのコピー数を調べることによって測定できる。あるいは、その他にウイルスタンパク質のELISAによる定量等の公知の方法を用いて調べることができる。
本明細書において、HCV複製活性とは「細胞に感染したHCVが細胞内で複製する活性」を意味する。ウイルスの「複製」とは、限定されるわけではないが、ウイルスライフサイクルの1過程である、自身の核酸と同じものを合成する段階を意味する。HCVの複製活性は、限定されるわけではないが、例えば、本明細書の実施例1−4に記載の、HCVレプリコン細胞レポーターアッセイによるレポ−ターの活性(ルシフェラーゼ活性)を測定することによって測定することができる。
HCV複製活性は、HCVの感染活性と密接に関連しており、ウイルスRNA量の定量、ウイルスタンパク質の定量によって調べることもできる。
HCV複製活性の抑制(活性又は効果)とHCV感染活性の抑制(活性又は効果)を併せて、「抗HCV活性又は効果」と言うこともある。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲を限定するためのものではない。当業者は本明細書の記載に基づいて容易に本発明に修飾・変更を加えることができ、それらは本発明の技術的範囲に含まれる。
材料及び実験手法
本明細書の実施例は、特に言及しない限り、以下の材料及び実験手法を用いて行った。
1.細胞培養
遺伝子型1b型のHCVサブゲノム−レプリコン細胞系R6、FLR3−1及びJFH−1の3種の細胞系を構築した。具体的な作成方法は、Inoue et al., Hepatology 45, 921−8, 2007; Takano et al., J. Hepatol. In press)に記載の方法に従った。
これらの細胞を、ダルベッコの改変イーグル培地 GlutaMax I(DMEM−GlutaMaxI、Invitrogen、Carlsbad、CA)及び5%ウシ胎仔血清(Invitrogen)中、37℃(5% CO)で培養した。
2.試薬
ピクノジェノールは、松森 昭博士(世界心臓連合次期理事長、アジア太平洋心臓病学会次期理事長・科学諮問委員会委員長、アジアハートネットワーク副理事長、東京医科大学客員教授)より提供された。インターフェロンα(IFN)は、シグマ・アルドリッチ・ジャパン株式会社(Sigma−Aldrich Japan Inc.)より提供された。リバビリンは、和光純薬工業株式会社(Wako Pure Chemical Industries, Ltd.)より入手した。
3.HCVレプリコン細胞レポーターアッセイ
HCVのレプリコン細胞中での複製活性を調べるために、レポーターアッセイを行った。レポーターとしてはホタル(firefly)のルシフェラーゼを用いた。具体的手法は、Inoue et al., Hepatology 45, 921−8, 2007; Takano et al., J. Hepatol. In press)に記載の方法に従った。
細胞を96ウェルプレート(コースター型)に、(1×10細胞/ウェル)で播布した。37℃(5% CO)で24時間インキュベートとした後、培地を除き、培養培地中に各図に示された濃度のピクノジェノール、IFNα及び/又はリバビリンを投与した。24時間、48時間又は72時間後、Bright−Gloルシフェラーゼアッセイキット(Promega Madison、WI)を用いてルシフェラーゼ活性を調べた。ルシフェラーゼシグナルは、AccuFLFX Lumi 400 照度計(Aloka)を用いて3回測定し、対照に対する平均パーセンテージを得た。
ピクノジェノール、IFNα及び/又はリバビリンの各HCV−レプリコン細胞に対する細胞毒性は、WST−8細胞数カウントキット(同人堂、熊本、日本)を用いて測定した。
4.ウエスタンブロット分析
HCVレプリコン細胞(2×10)を60mm細胞培養ディッシュで培養した。細胞をピクノジェノール又はIFN(対照)で72時間処理した。細胞を回収し、RIPA緩衝液(1% SDS、0.5% Nonidet P−40、150mmol/L NaCl、0.5mmol/L EDTA、1 mmol ジチオスレイトール及び10mmol/L トリス)で溶解した。全タンパク質(30μg)を12%SDS−ポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、次いで、ポリビニリデンジフルオライド膜(Immobilon−P;ミリポア、ビレリカ、MA)に写した。HCVの非構造タンパク質3(NS3)を、ウサギ抗−NS3(R212)ポリクローナル抗体を用いて検出した。ウサギ抗−NS3(R212)ポリクローナル抗体は、財団法人東京都医学総合研究所の小原道法博士より提供された。
対照として、βアクチンを抗−アクチン モノクローナル抗体(Sigma、St.Lous、MO)を用いて検出した。
5.HCV mRNA量のqRT−PCRによる定量
リアルタイム逆転写PCRを用いて、HCV mRNAを定量した。ピクノジェノール、IFNα及び/又はリバビリンで処理したHCV−レプリコン細胞から、ISOGEN(登録商標) RNA抽出キットを用いてHCV RNAを抽出した。TaqMan化学に基くリアルタイム逆転写PCRを用いてHCV RNAを定量した。具体的には、GASTROENTEROLOGY 1999;116;636−643記載のプライマー、プローブ、手法に従い、HCVウイルスゲノムの定量を行った。
実施例1 ピクノジェノール処理によるHCV−レプリコン細胞系に対する効果
本実施例では、ピクノジェノール処理(72時間)によるHCV−レプリコン細胞系に対する効果を調べた。HCV−レプリコン細胞系としては、「1.細胞培養」で構築した細胞系R6、FLR3−1及びJFH−1を用いた。HCV複製活性及び細胞毒性は、「3.HCVレプリコン細胞レポーターアッセイ」に記載の方法を用いて調べた。
R6に対する結果を図1A及び図1Bに、FLR3−1に対する結果を図2A及び図2Bに、そして、JFH−1に対する結果を図3に示す。
実施例2 HCV−レプリコン細胞系における、HCV NS3タンパク質の発現
本実施例では、ピクノジェノール処理後のHCV−レプリコン細胞系R6、FLR3−1及びJFH−1における、HCV NS3タンパク質の発現をウエスタンブロット分析で調べた。具体的な手法は、「4.ウエスタンブロット分析」に記載した方法に従った。
結果を図4に示す。
R6細胞及びFLR3−1細胞では、ピクノジェノールで72時間処理後、HCV NS3タンパク質の発現が有意に減少したが、JFH−1細胞では未処理の場合と比較して有意な減少は観察されなかった。
実施例3 R6細胞をピクノジェノール及びインターフェロンαで処理した場合の効果
本実施例では、R6細胞をピクノジェノール及びインターフェロンαで24時間、48時間、及び72時間処理した場合の効果を示す。HCV複製活性及び細胞毒性は、「3.HCVレプリコン細胞レポーターアッセイ」に記載の方法を用いて調べた。
結果を図5−8に示す。24時間、48時間、72時間のいずれにおいても、PG5+IFN5で、各々単体で使用した場合よりも相乗的に強力なHCV複製抑制効果を示した。特に72時間の結果を示した図7から理解されるように、5IU/mLのIFNα処理(IFN5)はHCV複製を47%抑制したのに対し、さらに、5μg/mLのピクノジェノールを加えた場合(IFN5+PG5)は、97%抑制した)。
一方、ピクノジェノール、インターフェロンα及び双方の組み合わせは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。
実施例4 R6細胞をピクノジェノール、インターフェロンα及びリバビリンで処理した場合の効果
本実施例では、R6細胞をピクノジェノール、インターフェロンα及びリバビリンで24時間又は48時間処理した場合の効果を示す。HCV複製活性及び細胞毒性は、「3.HCVレプリコン細胞レポーターアッセイ」に記載の方法を用いて調べた。
結果を図10および図11に示す。HCV複製抑制に関し、ピクノジェノールは特に、インターフェロン及びリバビリンとの併用により高い効果を示した。ピクノジェノール、インターフェロンα、リバビリンは実験に用いた濃度範囲ではR6細胞に対する細胞毒性がないことが確認された。
実施例5 HCV感染細胞におけるピクノジェノール、プロシアニジン及びインターフェロンαの感染抑制効果
本実施例では、ピクノジェノール、プロシアニジン及びインターフェロン、並びにプロシアニジンとインターフェロンを併用した場合のHCV感染に対する抑制効果を調べた結果を示す。
HCV感染に用いた細胞の調製及び感染方法は、例えば、M.Satohらの“Monoclonal Antibody 2−152a Suppresses Hepatitis C Virus Infection Thorough Betaine/GABA Transporter−1”(The Journal of Infectious Diseases in press)等に記載の方法に従った。感染の定量の具体的手法は、「5.HCV mRNA量のqRT−PCRによる定量」に記載した方法に従った。
結果を図12に示す。

Claims (6)

  1. インターフェロンα及びピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物。
  2. ピクノジェノールを含む、C型肝炎の予防、治療又は改善用組成物であって、インターフェロンα投与を受けるC型肝炎患者に投与されることを特徴とする、前記組成物。
  3. C型肝炎ウイルスの感染又は複製を抑制する、請求項1又は2に記載の組成物。
  4. さらにリバビリンを含む、あるいは、リバビリンとともに投与される、請求項1ないし3に記載の組成物。
  5. 経口摂取される、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 医薬組成物又は食品組成物である、請求項1ないし5に記載の組成物。
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