JP2012250562A - 多層構造体、空気入りタイヤ用インナーライナー及び空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】ガスバリア性及び耐クラック性を両立させることが可能な多層構造体を提供する。
【解決手段】バリア層1とエラストマー層2とを合計7層以上備える多層構造体であって、前記バリア層1は一層の平均厚さが0.001〜10μmであり、前記エラストマー層2は一層の平均厚さが0.001〜40μmであり、前記バリア層1が、樹脂中に特定の第一軟質材料4を分散させた樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする多層構造体である。
【選択図】図1

Description

本発明は、多層構造体、該多層構造体を用いた空気入りタイヤ用インナーライナー及び該インナーライナーを備える空気入りタイヤに関し、特にはガスバリア性及び耐クラック性を両立させることが可能な多層構造体に関するものである。
従来、タイヤの内圧を保持するためにタイヤ内面に空気バリア層として配設されるインナーライナーには、ブチルゴムやハロゲン化ブチルゴム等を主原料とするゴム組成物が使用されている。しかしながら、これらブチル系ゴムを主原料とするゴム組成物は、空気バリア性が低いため、かかるゴム組成物をインナーライナーに使用した場合、インナーライナーの厚さを1mm前後とする必要があった。
一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体(以下、EVOHと略記することがある)は、ガスバリア性に優れることが知られている。該EVOHは、空気透過量が上記ブチル系のインナーライナー用ゴム組成物の100分の1以下であるため、100μm以下の厚さでも、タイヤの内圧保持性を大幅に向上させることができる。従って、EVOHをインナーライナーとして使用した場合、100μm以下の厚さでも使用可能であるため、タイヤ転動時の屈曲変形で破断し難く、また、クラックも生じ難くなる。そのため、空気入りタイヤの内圧保持性を改良するために、EVOHをタイヤのインナーライナーに用いることは有効であるといえる。例えば、特許文献1には、EVOHからなるインナーライナーを備えた空気入りタイヤが開示されている。
しかしながら、通常のEVOHをインナーライナーとして用いた場合、タイヤの内圧保持性を改良する効果が大きいものの、通常のEVOHはタイヤに通常用いられているゴムに比べ弾性率が大幅に高いため、屈曲時の変形で破断したり、クラックが生じることがあった。そのため、EVOHからなるインナーライナーを用いた場合、タイヤ使用前の内圧保持性は大きく向上するものの、タイヤ転動時に屈曲変形を受けた使用後のタイヤでは、内圧保持性が使用前と比べて低下することがあった。
特開平6−40207号公報
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、ガスバリア性及び耐クラック性を両立させることが可能な多層構造体を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる多層構造体を用いた空気入りタイヤ用インナーライナー及び該インナーライナーを備える空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、一層の平均厚さが特定の範囲内にあるバリア層及びエラストマー層を合計して一定の枚数以上備える多層構造体において、バリア層の少なくとも一層に、樹脂成分と相互作用する官能基を持ち、分子量が10000以下である軟質材料を分散させた樹脂組成物からなる層を適用することで、ガスバリア性及び耐クラック性を両立できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の多層構造体は、
バリア層とエラストマー層とを合計7層以上備える多層構造体であって、
前記バリア層は一層の平均厚さが0.001〜10μmであり、前記エラストマー層は一層の平均厚さが0.001〜40μmであり、
前記バリア層が、樹脂成分と相互作用する官能基を持ち、分子量が10000以下である第一軟質材料を分散させた樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする。
本発明の多層構造体の好適例において、前記第一軟質材料は、ガラス転移点が前記樹脂より低い。
本発明の多層構造体の他の好適例においては、前記第一軟質材料が、水酸基と反応可能な官能基を有する化合物である。
本発明の多層構造体の他の好適例において、前記第一軟質材料は、分子量が5000以下の化合物であり、さらに好ましくは分子量が2000以下の化合物であり、特に好ましくは分子量が1000以下の化合物である。
本発明の多層構造体の他の好適例においては、前記樹脂組成物における前記第一軟質材料の含有率が10〜60質量%である。
本発明の多層構造体の他の好適例において、前記第一軟質材料は、−30℃におけるヤング率が前記樹脂より低い。
本発明の多層構造体の他の好適例においては、前記エラストマー層が、エラストマー中に23℃におけるヤング率が該エラストマーより低い第二軟質材料を分散させたエラストマー組成物からなる層を少なくとも一層含む。
本発明の多層構造体の他の好適例においては、前記バリア層及び前記エラストマー層が、活性エネルギー線の照射により架橋されている。
また、本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーは、上記の多層構造体を用いたことを特徴とし、さらに、本発明の空気入りタイヤは、該インナーライナーを備えることを特徴とする。
本発明によれば、一層の平均厚さが特定の範囲内にあるバリア層及びエラストマー層を合計して一定の枚数以上備え、該バリア層の少なくとも一層に、樹脂成分と相互作用する官能基を持ち、分子量が10000以下である第一軟質材料を分散させた樹脂組成物からなる層を適用した、ガスバリア性及び耐クラック性を両立させることが可能な多層構造体を提供することができる。また、かかる多層構造体を用いた空気入りタイヤ用インナーライナー及び該インナーライナーを備える空気入りタイヤを提供することができる。
本発明の多層構造体の一例の断面図である。 本発明の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。
以下に、図を参照しながら、本発明の多層構造体を詳細に説明する。図1は、本発明の多層構造体の一例の断面図である。本発明の多層構造体は、図1に示されるように、バリア層1とエラストマー層2とを備えることを要し、バリア層1とエラストマー層2とを合計した層数は7層以上である。このような多層構造体であれば、ある層で発生したピンホールや割れ等の欠陥が隣接する層へ進展することを抑制できるため、多層構造体全体にわたる亀裂や破断を防ぐことができ、高いガスバリア性及び耐クラック性等の耐久性を維持することができる。また、上述の多層構造体によって奏される効果をさらに発揮するため、図1に示されるように、バリア層1とエラストマー層2とが交互に積層されているのが好ましく、さらに、エラストマー層2に比べてバリア層1の方が亀裂を生じやすいため、多層構造体の表面がエラストマー層2によって形成されているのが好ましい。従って、バリア層の層数は3層以上が好ましく、エラストマー層の層数は4層以上が好ましい。加えて、多層構造体のガスバリア性及び耐クラック性を十分に維持させる観点から、バリア層及びエラストマー層の合計層数は、7層以上であることを要し、11層以上であることが好ましく、15層以上であることがさらに好ましい。なお、バリア層及びエラストマー層の合計層数の上限は、特に限定されず、多層構造体の用途、厚さ等によって適宜選択される。
本発明の多層構造体において、バリア層1は一層の平均厚さが0.001〜10μmであり、エラストマー層2は一層の平均厚さが0.001〜40μmである。バリア層及びエラストマー層の一層の平均厚さを上記特定した範囲にすることで、多層構造体を構成する層の数を増やすことができ、全体の厚さは同じであるが層数の少ない多層構造体と比べて、多層構造体のガスバリア性及び耐クラック性を向上させることができる。
例えば、バリア層に用いる材料の一例としてポリスチレンが挙げられるが、ポリスチレンは脆性な材料として知られており、このポリスチレンからなる層は、室温において1.5%程度の伸びにより破断してしまうことがある。しかしながら、「Polymer,1993,vol.34(10),2148−2154」では、延性な材料からなる層とポリスチレンからなる層とを積層させ、さらにポリスチレンからなる層の一層の厚さを1μm以下とすることで、ポリスチレンからなる層が脆性から延性へ改質されることが報告されている。即ち、ポリスチレンのような脆性な材料からなる層であっても、該層の厚みを薄くすることで、靭性に改質できると考えられる。本発明者らはこのような考え方に着目し、優れたガスバリア性及び耐クラック性の両立を達成できる多層構造体を見出した。
上記バリア層は、一層の平均厚さの下限が、0.001μmであることを要し、0.005μmであることが好ましく、0.01μmであることがさらに好ましい。一方、一層の平均厚さの上限は、10μmであること要し、7μmが好ましく、5μmがより好ましく、3μmがさらに好ましく、1μmが一層好ましく、0.5μmがより一層好ましく、0.2μmがさらに一層好ましく、0.1μmが特に好ましく、0.05μmが最も好ましい。バリア層において一層の平均厚さが0.001μm未満では、均一な厚さで成形することが困難になり、多層構造体のガスバリア性及びクラック性が低下するおそれがある。一方、一層の平均厚さが10μmを超えると、多層構造体の厚さによっては多層構造体を構成するバリア層の数を十分に確保できなくなり、ガスバリア性及び耐クラック性が低下するおそれがあり、またバリア層に靭性を付与できない場合がある。なお、バリア層における一層の平均厚さとは、多層構造体を構成するバリア層の厚さの合計をバリア層の層数で除した値を指す。
上記エラストマー層は、同様の理由から、一層の平均厚さの下限が0.001μmであることを要し、0.005μmであることが好ましく、0.01μmであることがさらに好ましい。同様の理由から、エラストマー層における一層の平均厚さの上限は、40μmであることを要し、30μmであることが好ましく、20μmであることがさらに好ましい。なお、エラストマー層における一層の平均厚さとは、多層構造体を構成するエラストマー層の厚さの合計をエラストマー層の層数で除した値を指す。また、エラストマー層の合計厚さは、バリア層の合計厚さと同じか又はバリア層の合計厚さより厚い、即ちエラストマー層の合計厚さのバリア層の合計厚さに対する比(エラストマー層/バリア層)が1以上になるような厚さであることが好ましい。これにより、多層構造体が全層破断に至るまでの屈曲疲労特性が向上する。
本発明の多層構造体の厚さは、0.1〜1000μmの範囲が好ましく、0.5〜750μmの範囲がさらに好ましく、1〜500μmの範囲が一層好ましい。多層構造体の厚さが上記特定した範囲内にあれば、空気入りタイヤ用インナーライナーとして好適であり、またバリア層及びエラストマー層の一層の平均厚さを限定することとも相まって、ガスバリア性、耐クラック性等をさらに向上させることができる。
本発明の多層構造体は、バリア層及びエラストマー層が、活性エネルギー線の照射により架橋されていることが好ましい。活性エネルギー線の照射によりバリア層及びエラストマー層を架橋することで、積層される各層間の親和性が向上し高い接着性を発現することができる。その結果、多層構造体の層間接着性、延いてはガスバリア性及び耐クラック性を格段に向上させることができる。なお、上記活性エネルギー線は、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味し、具体例としては紫外線、γ線、電子線等が挙げられ、これらの中でも、層間接着性の向上効果の観点から、電子線が好ましい。活性エネルギー線として電子線を照射する場合、電子線源としては、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、又は直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を使用でき、加速電圧は通常100〜500kVで、照射線量は通常5〜600kGyの範囲である。また、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、波長190〜380nmの紫外線を含むものを照射するのがよい。紫外線源としては、特に制限はなく、例えば高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯等が用いられる。
本発明の多層構造体を構成するバリア層は、多層構造体にガスバリア性を付与するための層であり、樹脂からなる層又は樹脂がマトリクスとして存在する樹脂組成物からなる層であることが好ましく、本発明の多層構造体においては、バリア層が、樹脂中に、23℃におけるヤング率が該樹脂より低い第一軟質材料を分散させた樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを要する。なお、マトリクスとは、連続相を意味する。ここで、樹脂中に上記第一軟質材料を分散させることで、樹脂組成物の成膜性を向上でき、さらには、成膜してなる樹脂組成物層の低温硬さを小さくし、耐クラック性を向上させることができる。
なお、本発明の多層構造体を構成するバリア層は、上記第一軟質材料を樹脂中に分散させた樹脂組成物からなる層を一層以上含んでいればよく、図1に示されるように、全てのバリア層1が、樹脂3中に23℃におけるヤング率が該樹脂より低い第一軟質材料4を分散させた樹脂組成物からなる層であってもよい。なお、図中の第一軟質材料4は、実際には樹脂と相溶し、マクロには見えないが、本願では説明の便宜上、粒子のような形で示している。また、図中の符号3,4は、バリア層の最上層のみに付されている。
また、上記バリア層は、20℃及び65%RHでの空気透過度が、8.0×10−12cm3・cm/cm2・sec・cmHg以下であるのが好ましく、3.0×10−12〜3.0×10−13cm3・cm/cm2・sec・cmHgの範囲であるのがより好ましい。
上記バリア層に用いる樹脂としては、特に限定されるものではないが、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、ビニル系樹脂等が挙げられ、これらの中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エチレン−ビニルアルコール共重合体が好ましい。また、上記変性EVOHは、例えばEVOHにエポキシ化合物等を反応させて得られる化合物であり、通常のEVOHに比べて弾性率が低い。このため、バリア層の弾性率を低下させ、耐クラック性等の耐久性を向上させることもできる。なお、これらの樹脂は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、多層構造体のガスバリア性、溶融成形性及び層間接着性を向上させる観点から、エチレン含有量が3〜70モル%であることが好ましく、10〜60モル%であることがさらに好ましく、20〜55モル%であることが一層好ましく、25〜50モル%であることが特に好ましい。エチレン含有量が3モル%未満では、多層構造体の耐水性、耐熱水性、高湿度下でのガスバリア性及び溶融成形性が低下するおそれがあり、一方、70モル%を超えると、多層構造体のガスバリア性が低下するおそれがある。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、多層構造体のガスバリア性、耐湿性及び層間接着性を向上させる観点から、ケン化度が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが一層好ましく、99%以上であることが特に好ましい。一方、エチレン−ビニルアルコール共重合体のケン化度は、99.99%以下が好ましい。EVOHのケン化度が80%未満では、多層構造体の溶融成形性、ガスバリア性、耐着色性及び耐湿性が低下するおそれがある。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、ガスバリア性、耐屈曲性及び耐疲労性を得る観点から、メルトフローレート(MFR)が190℃、21.16kg荷重下で0.1〜30g/10分であることが好ましく、0.3〜25g/10分であることがさらに好ましい。
上記エチレン−ビニルアルコール共重合体は、1,2−グリコール結合構造単位の含有量G(モル%)が下記式:
G ≦ 1.58−0.0244×E
[式中、Gは1,2−グリコール結合構造単位の含有量(モル%)であり、EはEVOH中のエチレン単位含有量(モル%)であり、但し、E ≦ 64である]の関係を満たし、且つ、固有粘度が0.05〜0.2L/gの範囲であることが好ましい。このようなEVOHを用いることで、得られる多層構造体は、ガスバリア性の湿度依存性が小さくなり、良好な透明性及び光沢を有し、他の樹脂からなる層への積層も容易になる。なお、1,2−グリコール結合構造単位の含有量は、「S.Aniyaら,Analytical Science Vol.1,91(1985)」に記載された方法に準じて、EVOH試料をジメチルスルホキシド溶液とし、温度90℃における核磁気共鳴法によって測定されることができる。
上記変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、エチレン単位及びビニルアルコール単位の他に、他の繰り返し単位(以下、構造単位ともいう)、例えばこれらの単位から誘導した繰り返し単位を1種又は複数種有する重合体である。なお、変性EVOHの好適なエチレン含有量、ケン化度、メルトフローレート(MFR)、1,2−グリコール結合構造単位の含有量及び固有粘度は、上述のEVOHと同様である。
上記変性EVOHは、例えば下記に示す構造単位(I)及び(II)から選ばれる少なくとも一種の構造単位を有することが好ましく、該構造単位を全構造単位に対して0.5〜30モル%の割合で含有することがさらに好ましい。かかる変性EVOHであれば、樹脂又は樹脂組成物の柔軟性及び加工特性、並びに多層構造体の層間接着性、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。
Figure 2012250562
上記式(I)中、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は水酸基を表す。また、R、R及びRのうちの一対が結合していてもよい(但し、R、R及びRのうちの一対が共に水素原子の場合は除く)。また、上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、水酸基、カルボキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい。一方、上記式(II)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基又は水酸基を表す。また、RとR又はRとRは結合していてもよい(但し、RとR又はRとRが共に水素原子の場合は除く)。また、上記炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、水酸基、アルコキシ基、カルボキシ基又はハロゲン原子を有していてもよい。
上記変性EVOHにおいて、上記構造単位(I)及び/又は(II)の全構造単位に対する含有量の下限は、0.5モル%が好ましく、1モル%がより好ましく、1.5モル%がさらに好ましい。一方、上記変性EVOHにおいて、上記構造単位(I)及び/又は(II)の全構造単位に対する含有量の上限は、30モル%が好ましく、15モル%がより好ましく、10モル%がさらに好ましい。上記構造単位(I)及び/又は(II)を上記特定した割合で含有することで、樹脂又は樹脂組成物の柔軟性及び加工特性、並びに多層構造体の層間接着性、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。
上記構造単位(I)及び(II)において、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基、アルケニル基等が挙げられ、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基としてはシクロアルキル基、シクロアルケニル基等が挙げられ、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としてはフェニル基等が挙げられる。
上記構造単位(I)において、上記R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子、メチル基、エチル基、水酸基、ヒドロキシメチル基又はヒドロキシエチル基であることが好ましく、これらの中でも、それぞれ独立に水素原子、メチル基、水酸基又はヒドロキシメチル基であることがさらに好ましい。かかるR、R及びRであれば、多層構造体の延伸性及び熱成形性をさらに向上させることができる。
EVOH中に上記構造単位(I)を含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレンとビニルエステルとの共重合において、さらに構造単位(I)に誘導される単量体を共重合させる方法等が挙げられる。該構造単位(I)に誘導される単量体としては、例えば、プロピレン、ブチレン、ペンテン、ヘキセン等のアルケン;3−ヒドロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−ヒドロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−3−ヒドロキシ−1−ブテン、3−アシロキシ−4−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−アシロキシ−3−メチル−1−ブテン、3,4−ジアシロキシ−2−メチル−1−ブテン、4−ヒドロキシ−1−ペンテン、5−ヒドロキシ−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−1−ペンテン、4−アシロキシ−1−ペンテン、5−アシロキシ−1−ペンテン、4,5−ジアシロキシ−1−ペンテン、4−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5−ヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、4,5−ジヒドロキシ−3−メチル−1−ペンテン、5,6−ジヒドロキシ−1−ヘキセン、4−ヒドロキシ−1−ヘキセン、5−ヒドロキシ−1−ヘキセン、6−ヒドロキシ−1−ヘキセン、4−アシロキシ−1−ヘキセン、5−アシロキシ−1−ヘキセン、6−アシロキシ−1−ヘキセン、5,6−ジアシロキシ−1−ヘキセン等の水酸基やエステル基を有するアルケンが挙げられる。それらの中でも、共重合反応性、及び得られる多層構造体のガスバリア性の観点から、プロピレン、3−アシロキシ−1−プロペン、3−アシロキシ−1−ブテン、4−アシロキシ−1−ブテン、及び3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが好ましい。具体的には、プロピレン、3−アセトキシ−1−プロペン、3−アセトキシ−1−ブテン、4−アセトキシ−1−ブテン、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンがさらに好ましく、3,4−ジアセトキシ−1−ブテンが特に好ましい。なお、エステルを有するアルケンを用いる場合は、ケン化反応の際に、上記構造単位(I)に誘導される。
上記構造単位(II)において、R及びRは共に水素原子であることが好ましい。特に、R及びRが共に水素原子であり、上記R及びRのうちの一方が炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基で、他方が水素原子であることがより好ましい。構造単位(II)中の脂肪族炭化水素基は、アルキル基又はアルケニル基が好ましい。また、多層構造体のガスバリア性を特に重視する観点から、R及びRのうちの一方がメチル基又はエチル基で、他方が水素原子であることが好ましい。さらに、上記R及びRのうちの一方が(CHOHで表される置換基(但し、hは1〜8の整数である)で、他方が水素原子であることも好ましい。この(CHOHで表される置換基においては、hが1〜4の整数であることが好ましく、1又は2であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
また、EVOH中に上記構造単位(II)を含有させる方法としては、特に限定されるものではないが、ケン化反応によって得られたEVOHに一価エポキシ化合物を反応させる方法等が挙げられる。一価エポキシ化合物としては、下記式(III)〜(IX)で表される化合物が好適に挙げられる。
Figure 2012250562
上記式(III)〜(IX)中、R、R、R10、R11及びR12は、水素原子、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基(アルキル基又はアルケニル基等)、炭素数3〜10の脂環式炭化水素基(シクロアルキル基又はシクロアルケニル基等)又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基(フェニル基等)を表す。なお、R及びR又はR11及びR12は、同一であってもよく、異なっていてもよい。また、i、j、k、p及びqは、1〜8の整数を表す。
上記式(III)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、エポキシエタン(エチレンオキサイド)、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシヘプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−エチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、6−エチル−1,2−エポキシヘプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシヘプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、4,5−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−プロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン等が挙げられる。
上記式(IV)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、イソプロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、イソブチルグリシジルエーテル、tert−ブチルグリシジルエーテル、1,2−エポキシ−3−ペンチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘキシルオキシプロパン、1,2−エポキシ−3−ヘプチルオキシプロパン、1,2−エポキシ−4−フェノキシブタン、1,2−エポキシ−4−ベンジルオキシブタン、1,2−エポキシ−5−メトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−エトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−プロポキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ブトキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ペンチルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−ヘキシルオキシペンタン、1,2−エポキシ−5−フェノキシペンタン、1,2−エポキシ−6−メトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−エトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−プロポキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ブトキシヘキサン、1,2−エポキシ−6−ヘプチルオキシヘキサン、1,2−エポキシ−7−メトキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−エトキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−プロポキシヘプタン、1,2−エポキシ−7−ブトキシヘプタン、1,2−エポキシ−8−メトキシオクタン、1,2−エポキシ−8−エトキシオクタン、1,2−エポキシ−8−ブトキシオクタン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール等が挙げられる。
上記式(V)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールモノグリシジルエーテル、プロパンジオールモノグリシジルエーテル、ブタンジオールモノグリシジルエーテル、ペンタンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、ヘプタンジオールモノグリシジルエーテル、オクタンジオールモノグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記式(VI)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、3−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−プロペン、4−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ブテン、5−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ペンテン、6−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘキセン、7−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−ヘプテン、8−(2,3−エポキシ)プロポキシ−1−オクテン等が挙げられる。
上記式(VII)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−4−エチル−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−ヘプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−2−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−4−ノナノール、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール等が挙げられる。
上記式(VIII)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデカン等が挙げられる。
上記式(IX)で表される一価エポキシ化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデセン、1,2−エポキシシクロドデセン等が挙げられる。
上記一価エポキシ化合物の中では、炭素数が2〜8のエポキシ化合物が好ましい。特に、化合物の取り扱いの容易さ及びEVOHに対する反応性の観点から、一価エポキシ化合物の炭素数は、2〜6がより好ましく、2〜4がさらに好ましい。また、一価エポキシ化合物は、これらの式で表される化合物のうち式(III)又は(IV)で表される化合物であることが特に好ましい。具体的には、EVOHに対する反応性及び得られる多層構造体のガスバリア性の観点から、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、エポキシプロパン、エポキシエタン及びグリシドールが好ましく、これらの中でもエポキシプロパン及びグリシドールが特に好ましい。
本発明において、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、例えば、エチレンとビニルエステルとを重合してエチレン−ビニルエステル共重合体を得、該エチレン−ビニルエステル共重合体をケン化することにより得られる。また、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体は、上述のとおり、(1)エチレンとビニルエステルとの重合において、さらに構造単位(I)に誘導される単量体を共重合させたり、(2)ケン化反応によって得られたEVOHに対して一価エポキシ化合物を反応させることにより得られる。ここで、エチレン−ビニルアルコール共重合体及び変性エチレン−ビニルアルコール共重合体の重合方法は、特に限定されず、例えば溶液重合、懸濁重合、乳化重合、バルク重合のいずれであってもよい。また、連続式、回分式のいずれであってもよい。
上記重合に用いることができるビニルエステルとしては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等の脂肪酸ビニル等が挙げられる。
また、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を製造する場合、エチレン及びビニルエステルの他に、これら単量体と共重合し得る単量体を好ましくは少量で用いることがある。この共重合し得る単量体としては、上述の構造単位(I)に誘導される単量体に加えて、他のアルケン;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物、塩、モノアルキルエステル若しくはジアルキルエステル等;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド;ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸又はその塩;アルキルビニルエーテル類、ビニルケトン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。また、ビニルシラン化合物を単量体として用いることもでき、共重合体中に導入されるビニルシラン化合物の量は、0.0002モル%以上で且つ0.2モル%以下であることが好ましい。ビニルシラン化合物としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン等が挙げられる。これらビニルシラン化合物の中でも、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好ましい。
重合に使用できる溶媒は、エチレン、ビニルエステル及びエチレン−ビニルエステル共重合体を溶解し得る有機溶剤であれば特に限定されない。具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、tert−ブタノール等のアルコール;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。それらの中でも、反応後の除去分離が容易である点で、メタノールが特に好ましい。
重合に使用できる開始剤としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−シクロプロピルプロピオニトリル)等のアゾニトリル系開始剤;イソブチリルパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物系開始剤等が挙げられる。
重合温度は、通常20〜90℃程度であり、好ましくは40〜70℃である。重合時間は、通常2〜15時間程度であり、好ましくは3〜11時間である。重合率は、仕込みのビニルエステルに対して通常10〜90%程度であり、好ましくは30〜80%である。重合後の溶液中の樹脂分は、5〜85質量%程度であり、好ましくは20〜70質量%である。
所定時間の重合後又は所定の重合率に達した後、得られる共重合体溶液に必要に応じて重合禁止剤を添加し、未反応のエチレンガスを蒸発除去し、その後、未反応のビニルエステルを除去する。未反応のビニルエステルを除去する方法としては、例えば、ラシヒリングを充填した塔の上部から共重合体溶液を一定速度で連続的に供給し、塔の下部よりメタノール等の有機溶剤蒸気を吹き込み、塔頂部よりメタノール等の有機溶剤と未反応ビニルエステルの混合蒸気を留出させ、塔底部より未反応のビニルエステルを除去した共重合体溶液を取り出す方法等が採用される。
次に、上記共重合体溶液にアルカリ触媒を添加し、該溶液中に存在する共重合体をケン化する。ケン化方法は、連続式、回分式のいずれも可能である。上記アルカリ触媒としては、例えば水酸化ナトリム、水酸化カリウム、アルカリ金属アルコラート等が挙げられる。また、ケン化の条件は、例えば回分式の場合、共重合体溶液中のアルカリ触媒の濃度が10〜50質量%程度、反応温度が30〜65℃程度、触媒使用量がビニルエステル構造単位1モル当たり0.02〜1.0モル程度、ケン化時間が1〜6時間程度であることが好ましい。
ケン化反応後の(変性)EVOHは、アルカリ触媒、酢酸ナトリウムや酢酸カリウム等の副生塩類、その他不純物を含有するため、これらを必要に応じて中和、洗浄することにより除去することが好ましい。ここで、ケン化反応後の(変性)EVOHを、イオン交換水等の金属イオン、塩化物イオン等をほとんど含まない水で洗浄する際、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等を一部残存させてもよい。
上記バリア層に用いる軟質材料(第一軟質材料)は、樹脂成分と相互作用する官能基を持ち、分子量が10000以下であることを要し、5000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましい。上記軟質材料の分子量が10000以下であれば、樹脂中に軟質材料が均一に分散するようになり、また樹脂組成物の成膜性を向上させることもできるからであり、また、上記バリア層中の樹脂との絡み合いを強め、耐クラック性を向上させることができる。
なお、前記軟質材料が、重合体である場合、該軟質材料の分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を示す。
上記バリア層に用いる軟質材料(第一軟質材料)は、ガラス転移点(Tg)が、該バリア層に用いる樹脂より低いことが好ましい。前記バリア層中の樹脂と相溶して、前期バリア層のTgを下げることができるためである。
上記第一軟質材料は、樹脂成分と相互作用する官能基を有する化合物であることが好ましい。上記第一軟質材料が樹脂成分と相互作用する官能基を有することで、エラストマー中に軟質材料が均一に分散するようになり、また、軟質材料の平均粒子径を小さくすることもできる。
ここで、樹脂成分と相互作用する官能基としては、水酸基、カルボキシル基、カルボキシレート基、イソシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、アミノ基、ホウ素含有基の他、マレイン酸、無水マレイン酸及びアルコキシシランからなる群から選択される化合物で変性することにより導入される官能基等が挙げられる。ここで、上記官能基は、樹脂分子と直接反応できる、又は親和性の高いものに限られず、他の薬剤で予備反応させることにより、樹脂分子と反応できるような例も含まれる。なお、上記軟質材料は、かかる官能基を二種以上有してもよい。
上記ホウ素含有基としては、ボロン酸基又は水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基等が挙げられる。該ホウ素含有基のうち、ボロン酸基とは下記式(1)で示されるものである。
Figure 2012250562
また、水の存在下でボロン酸基に転化し得るホウ素含有基とは、水の存在下で加水分解を受けて上記式(1)で示されるボロン酸基に転化し得るホウ素含有基を指す。より具体的には、水単独、水と有機溶媒(トルエン、キシレン、アセトン等)との混合物、5%ホウ酸水溶液と該有機溶媒との混合物等を溶媒とし、室温〜150℃の条件下で10分〜2時間加水分解したときにボロン酸基に転化し得る官能基を意味する。このような官能基の代表例としては、下記式(2)で示されるボロン酸エステル基、下記式(3)で示されるボロン酸無水物基、下記式(4)で示されるボロン酸塩基等が挙げられる。
Figure 2012250562
Figure 2012250562
Figure 2012250562
ここで、X及びYは水素原子、脂肪族炭化水素基(炭素数1〜20の直鎖状もしくは分岐状アルキル基、又はアルケニル基等)、脂環式炭化水素基(シクロアルキル基、シクロアルケニル基等)、芳香族炭化水素基(フェニル基、ビフェニル基等)を表し、X及びYは同じであってもよいし異なっていてもよい。但し、X及びYが共に水素原子の場合は除かれる。また、XとYは結合していてもよい。またR、R及びRは上記X及びYと同様の水素原子、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基を表し、R、R及びRは同じでもよいし異なっていてもよい。またMはアルカリ金属を表す。さらに、上記のX、Y、R、R及びRは他の基、例えば水酸基、カルボキシル基、ハロゲン原子などを有していてもよい。
上記式(2)で示されるボロン酸エステル基の具体例としては、ボロン酸ジメチルエステル基、ボロン酸ジエチルエステル基、ボロン酸ジブチルエステル基、ボロン酸ジシクロヘキシルエステル基、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸ネオペンチルグリコールエステル基、ボロン酸カテコールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基、ボロン酸トリメチロールエタンエステル基、ボロン酸トリメチロールプロパンエステル基、ボロン酸ジエタノールアミンエステル基等が挙げられる。
また、上記式(4)で示されるボロン酸塩基としては、ボロン酸のアルカリ金属塩基等が挙げられる。具体的には、ボロン酸ナトリウム塩基、ボロン酸カリウム塩基等が挙げられる。
このようなホウ素含有基のうち、熱安定性の観点からボロン酸環状エステル基が好ましい。ボロン酸環状エステル基としては、例えば5員環又は6員環を含有するボロン酸環状エステル基が挙げられる。具体的には、ボロン酸エチレングリコールエステル基、ボロン酸プロピレングリコールエステル基、ボロン酸1,3−プロパンジオールエステル基、ボロン酸1,3−ブタンジオールエステル基、ボロン酸グリセリンエステル基等が挙げられる。
上記第一軟質材料は、樹脂組成物中で不都合な分離(滲出、ブルーム等)を起こさず、均質に混ざり合っている状態であることが好ましい。言い換えれば、上記第一軟質材料は、樹脂に対して相溶性があることが好ましい。
上記第一軟質材料には、特に耐クラック性向上の観点から、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレン−p−メチルスチレン、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム等のゴムの他、これらの水添ゴム(例えば、水素添加SBR)、変性ゴム(例えば、変性天然ゴム、臭素化−ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン等)、液状ゴム(即ち、低分子量ゴム)等を用いることができる。また、同様の観点から、上記第一軟質材料には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−ブテン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−クロロメチルスチレンブロック共重合体、ポリアミド等の重合体の他、これらの水添物、変性物等を用いることができる。より具体的には、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン等が挙げられる。なお、これらの軟質材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
また、樹脂との相溶性に優れ、ガラス転移点(Tg)を低下させる観点から、上記第一軟質材料として、既知の可塑剤を用いてもよい。ここで、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジトリデシルフタレート、トリオクチルメリレート等のフタル酸系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸系可塑剤;トリブチルシトレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、メチルアセチルリシノレート等の脂肪酸系可塑剤;エポキシ化大豆油、ジイソデシル-4,5-エポキシテロラヒドロフタレート等のエポキシ系可塑剤;N-ブチルベンゼンスルホンアミド等のアミド系可塑剤の他、塩素化パラフィンや、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。なお、これらの軟質材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
本発明の多層構造体において、上記樹脂組成物における第一軟質材料の含有率は、10〜30質量%であることが好ましい。軟質材料の含有率が10質量%未満では、成膜性及び耐クラック性の向上効果が十分に得られないおそれがあり、またバリア層の低温硬さを十分に小さくできない場合がある。一方、軟質材料の含有率が30質量%を超えると、軟質材料の含有量が多くなり過ぎ、成膜性を低下させる場合がある。
上記バリア層に用いる樹脂組成物には、ラジカル架橋剤を配合してもよい。樹脂組成物がラジカル架橋剤を含むことで、活性エネルギー線照射時の架橋効果を高め、多層構造体の層間接着性をさらに向上させることができる。また、ラジカル架橋剤が樹脂組成物中に存在しない場合と比べて、活性エネルギー線の照射量を少なくすることも可能である。樹脂組成物中のラジカル架橋剤の含有量は、架橋効果と経済性のバランスの観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜9質量%がさらに好ましく、0.1〜8質量%が一層好ましい。上記ラジカル架橋剤としては、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオフェニレングリコールジアクリレート等が挙げられる。なお、これらのラジカル架橋剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記バリア層に用いる樹脂組成物には、リン酸化合物、カルボン酸及びホウ素化合物から選ばれる1種又は複数種の化合物を配合してもよい。
具体的には、樹脂組成物中にリン酸化合物を含有することで、多層構造体の溶融成形時の熱安定性を改善することができる。リン酸化合物としては、特に限定されず、例えばリン酸、亜リン酸等の各種の酸やその塩等が挙げられる。リン酸塩は、例えば第1リン酸塩、第2リン酸塩、第3リン酸塩のいずれの形で含まれていてもよく、その対カチオン種としても特に限定されないが、アルカリ金属イオン又はアルカリ土類金属イオンが好ましい。特に、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素ナトリウム又はリン酸水素カリウムが、熱安定性改善効果が高い点で好ましい。
リン酸化合物の含有量(乾燥樹脂組成物中のリン酸化合物のリン酸根換算含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、30質量ppmがさらに好ましい。一方、リン酸化合物の含有量の上限としては、10,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、300質量ppmがさらに好ましい。リン酸化合物の含有量が1質量ppmより小さいと、溶融成形時の着色が激しくなるおそれがある。特に、熱履歴を重ねるときにその傾向が顕著であるため、樹脂組成物ペレットを成形して得られた成形物が回収性に乏しいものとなるおそれがある。一方、リン酸化合物の含有量が10,000質量ppmを超えると、成形時のゲル・ブツが発生し易くなるおそれがある。
また、樹脂組成物中にカルボン酸を含有することで、樹脂組成物のpHを制御し、ゲル化を防止して熱安定性を改善する効果が得られる。カルボン酸としては、25℃におけるpKaが3.5以上であるものが好ましい。25℃におけるpKaが3.5未満であるシュウ酸、コハク酸、安息香酸、クエン酸のようなカルボン酸を含有すると、樹脂組成物のpHの制御が困難となり、耐着色性や層間接着性が十分に得られないおそれがある。かかるカルボン酸としては、コストなどの観点から、酢酸又は乳酸が特に好ましい。
カルボン酸の含有量(乾燥樹脂組成物中のカルボン酸の含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、50質量ppmがさらに好ましい。一方、カルボン酸の含有量の上限としては、10,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。カルボン酸の含有量が1質量ppmより小さいと、溶融成形時に着色が起こるおそれがある。一方、カルボン酸の含有量が10,000質量ppmを超えると、層間接着性が不充分となるおそれがある。
さらに、樹脂組成物中にホウ素化合物を含有することで、熱安定性の向上効果が得られる。詳細には、例えば(変性)EVOHのような樹脂にホウ素化合物を添加した場合、(変性)EVOHとホウ素化合物との間にキレート化合物が生成すると考えられ、かかる(変性)EVOHを用いることによって、通常の(変性)EVOHよりも熱安定性を改善し、機械的性質を向上させることが可能である。ホウ素化合物としては、特に限定されるものではなく、例えばホウ酸類、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ酸類等が挙げられる。具体的には、ホウ酸類としては、例えばオルトホウ酸(HBO)、メタホウ酸、四ホウ酸等が挙げられ、ホウ酸エステルとしては、例えばホウ酸トリエチル、ホウ酸トリメチル等が挙げられ、ホウ酸塩としては、上記各種ホウ酸類のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、ホウ砂等が挙げられる。これらの中でもオルトホウ酸が好ましい。
ホウ素化合物の含有量(乾燥樹脂組成物中のホウ素化合物のホウ素換算含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、10質量ppmがより好ましく、50質量ppmがさらに好ましい。一方、ホウ素化合物の含有量の上限としては、2,000質量ppmが好ましく、1,000質量ppmがより好ましく、500質量ppmがさらに好ましい。ホウ素化合物の含有量が1質量ppmより小さいと、ホウ素化合物を添加することによる熱安定性の改善効果が得られないおそれがある。一方、ホウ素化合物の含有量が2,000質量ppmを超えると、ゲル化しやすく、成形不良となるおそれがある。
上記リン酸化合物、カルボン酸又はホウ素化合物を樹脂組成物に含有させる方法は、特に限定されるものではなく、例えば樹脂組成物のペレット等を調製する際に樹脂組成物に添加して混練する方法が好適に採用される。この樹脂組成物に添加する方法も、特に限定されないが、乾燥粉末として添加する方法、溶媒を含浸させたペースト状で添加する方法、液体に懸濁させた状態で添加する方法、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法等を例示できる。これらの中でも、均質に分散させる観点から、溶媒に溶解させて溶液として添加する方法が好ましい。これらの方法に用いられる溶媒は特に限定されないが、添加剤の溶解性、コスト的メリット、取り扱いの容易性、作業環境の完全性等の観点から水が好適に用いられる。これらの添加の際、後述する金属塩やその他の添加剤等を同時に添加することができる。
また、リン酸化合物、カルボン酸又はホウ素化合物を含有させる他の方法としては、それらの物質が溶媒中に溶解した溶液に、押出機等により得られた樹脂組成物のペレット又はストランドを浸漬させる方法も、該物質を均質に分散させることができる点で好ましい。この方法においても、溶媒としては、同様の理由で水が好適に用いられる。この溶液に、後述する金属塩を溶解させることで、リン酸化合物等と同時に金属塩を含有させることができる。
上記バリア層に用いる樹脂組成物には、分子量1,000以下の共役二重結合を有する化合物を配合してもよい。かかる化合物を含有することによって、樹脂組成物の色相が改善され、外観の良好な多層構造体を製造することができる。かかる化合物としては、例えば2個の炭素−炭素二重結合と3個の炭素−炭素単結合とが交互に繋がった構造を有する共役ジエン化合物、3個の炭素−炭素二重結合と4個の炭素−炭素単結合とが交互に繋がった構造を有する共役トリエン化合物(好ましくは2,4,6−オクタトリエン)、4個以上の炭素−炭素二重結合と5個以上の炭素−炭素単結合とが交互に繋がった構造を有する共役ポリエン化合物等が挙げられる。また、共役二重結合を有する化合物には、共役二重結合が1分子中に独立して複数組あってもよく、例えば桐油のように共役トリエンが同一分子内に3個ある化合物も含まれる。
上記共役二重結合を有する化合物は、例えばカルボキシ基及びその塩、水酸基、エステル基、カルボニル基、エーテル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、シアノ基、ジアゾ基、ニトロ基、スルホン基、スルホキシド基、スルフィド基、チオール基、スルホン酸基及びその塩、リン酸基及びその塩、フェニル基、ハロゲン原子、非共役二重結合、三重結合等の共役二重結合以外の各種官能基を有していてもよい。かかる官能基は、共役二重結合中の炭素原子に直接結合されていてもよく、共役二重結合から離れた位置に結合されていてもよい。また、上記官能基中の多重結合は、共役二重結合と共役可能な位置にあってもよく、例えばフェニル基を有する1−フェニルブタジエンやカルボキシ基を有するソルビン酸等も、ここでいう共役二重結合を有する化合物に含まれる。
上記共役二重結合を有する化合物の具体例としては、例えば2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1,3−ジフェニル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、4−メチル−1,3−ペンタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン、ソルビン酸、ミルセン等が挙げられる。
上記共役二重結合を有する化合物における共役二重結合とは、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、ソルビン酸のような脂肪族同士の共役二重結合のみならず、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、1,3−ジフェニル−1−ブテンのような脂肪族と芳香族との共役二重結合も含まれる。但し、外観がより優れた多層構造体を得る観点から、上記脂肪族同士の共役二重結合を含む化合物が好ましく、またカルボキシ基及びその塩、水酸基等の極性基を有する共役二重結合を含む化合物も好ましい。さらに極性基を有し且つ脂肪族同士の共役二重結合を含む化合物が特に好ましい。
上記共役二重結合を有する化合物の分子量としては、1,000以下が好ましい。分子量が1,000を超えると、多層構造体の表面平滑性、押出安定性等が悪化するおそれがある。
上記樹脂組成物における上記分子量が1,000以下の共役二重結合を有する化合物の含有量の下限としては、該化合物の添加により奏される効果を向上させる観点から、0.1質量ppmが好ましく、1質量ppmがより好ましく、3質量ppmがさらに好ましく、5質量ppmが特に好ましい。一方、かかる化合物の含有量の上限としては、該化合物の添加により奏される効果を向上させる観点から、3,000質量ppmが好ましく、2,000質量ppmがより好ましく、1,500質量ppmがさらに好ましく、1,000質量ppmが特に好ましい。
上記共役二重結合を有する化合物の樹脂組成物中への添加方法としては、特に限定されるものではないが、樹脂が(変性)EVOHである場合、重合後で且つケン化前にかかる化合物を添加する手法が、表面平滑性と押出安定性を改善する点で好ましい。この理由は必ずしも明らかではないが、共役二重結合を有する化合物が、ケン化前及び/又はケン化反応中の(変性)EVOHの変質を防止する作用を有することに基づくものと考えられる。
上記バリア層に用いる樹脂組成物には、上記樹脂、軟質材料、電子線架橋剤、ラジカル架橋剤、リン酸化合物、カルボン酸、ホウ素化合物、共役二重結合を有する化合物の他に、後述する金属塩、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤等の多種多様な添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。なお、上記樹脂組成物中の樹脂以外の添加剤の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
また、上記樹脂又は樹脂組成物は、温度210℃及び剪断速度10/秒での溶融粘度(η1A)が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下、温度210℃及び剪断速度1,000/秒での溶融粘度(η2A)が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下であり、且つ、これらの溶融粘度比(η2A/η1A)が下記式(1A)を満たすことが好ましい。
−0.8≦(1/2)log10(η2A/η1A)≦−0.1 ・・・(1A)
溶融粘度(η1A)が1×10Pa・sより小さいと、溶融共押出しラミネートや溶融押出しなどによる押出し製膜時にネックインや膜揺れが著しくなり、得られる多層構造体や積層前のバリア層の厚み斑や幅の縮小が大きくなって、均質で目的寸法どおりの多層構造体を得ることができなくなるおそれがある。一方、溶融粘度(η1A)が1×10Pa・sを超えると、特に100m/分を超えるような高速引き取り条件下で溶融共押出しラミネートや溶融押出成形を行う場合に膜切れが起こり易くなり、高速成膜性が顕著に損なわれ、またダイスウエルが起こり易くなって薄肉の多層構造体や積層前のバリア層を得るのが困難になるおそれがある。
また、溶融粘度(η2A)が、1×10Pa・sより小さいと、溶融共押出しラミネートや溶融押出などによる押出し成膜時にネックインや膜揺れが著しくなって、得られる多層構造体や積層する前のバリア層の厚み斑や幅の縮小が大きくなるおそれがある。一方、溶融粘度(η2A)が、1×10Pa・sを超えると、押出機に加わるトルクが高くなりすぎ、押出し斑やウェルドラインが発生し易くなるおそれがある。
上記溶融粘度比(η2A/η1A)から算出される(1/2)log10(η2A/η1A)の値が−0.8より小さいと、溶融共押出しラミネートや溶融押出などによる押出し成膜時に膜切れを生じ易くなって高速成膜性が損なわれるおそれがある。一方、(1/2)log10(η2A/η1A)の値が−0.1を超えると、溶融共押出しラミネートや溶融押出による押出し成膜時にネックインや膜揺れが起こって、得られる多層構造体や積層前のバリア層に厚み斑や幅の縮小などを生じるおそれがある。かかる観点から、この(1/2)log10(η2A/η1A)の値は、−0.6以上であることがより好ましく、−0.2以下であることがより好ましい。なお、上記式における(1/2)log10(η2A/η1A)の値は、溶融粘度を縦軸とし、剪断速度を横軸とする両自然対数グラフにおける溶融粘度(η1A)及び溶融粘度(η2A)の2点を結ぶ直線の傾きとして求められる。
上記樹脂又は樹脂組成物は、樹脂又は樹脂組成物の融点より10〜80℃高い温度の少なくとも1点における溶融混練時間とトルクの関係において、粘度挙動安定性(M100/M20、但しM20は混練開始から20分後のトルク、M100は混練開始から100分後のトルクを表す)の値が0.5〜1.5の範囲であることが好ましい。粘度挙動安定性の値は1に近いほど粘度変化が少なく、熱安定性(ロングラン性)に優れていることを示す。
本発明の多層構造体を構成するエラストマー層は、エラストマーからなる層又はエラストマーがマトリクスとして存在するエラストマー組成物からなる層であり、本発明の多層構造体において、エラストマー層は、エラストマー中に23℃におけるヤング率が該エラストマーより低い第二軟質材料を分散させたエラストマー組成物からなる層を少なくとも一層含むことが好ましい。なお、マトリクスとは、連続相を意味する。ここで、エラストマー中に上記第二軟質材料を分散させることで、エラストマー組成物の成膜性を向上でき、さらには、成膜してなるエラストマー組成物層の低温硬さを小さくし、低温時の耐クラック性を大幅に向上させることができる。
なお、本発明の多層構造体を構成するエラストマー層は、特に限定されるものではないが、図1に示されるように、全てのエラストマー層2が、エラストマー5中に23℃におけるヤング率が該エラストマーより低い第二軟質材料6を分散させたエラストマー組成物からなる層であってもよい。なお、図中の第二軟質材料6は、実際には樹脂と相溶し、マクロには見えないが、本願では説明の便宜上、粒子のような形で示している。また、図中の符号5,6は、エラストマー層の最下層のみに付されている。
なお、本発明の多層構造体を構成するエラストマー層は、20℃及び65%RHでの空気透過度が、通常3.0×10−11cm3・cm/cm2・sec・cmHgを超えるが、3.0×10−9〜3.0×10−11cm3・cm/cm2・sec・cmHgの範囲であるのが好ましい。
上記エラストマー層に用いるエラストマーとしては、特に限定されるものではないが、既知の熱可塑性エラストマー(TPE)から選択されるのが好ましい。上記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリジエン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、フッ素樹脂系熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらの中でも、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好ましい。なお、これらの熱可塑性エラストマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、芳香族ビニル系重合体ブロック(ハードセグメント)と、ゴムブロック(ソフトセグメント)とを有し、芳香族ビニル系重合体部分が物理架橋を形成して橋かけ点となり、一方、ゴムブロックがゴム弾性を付与する。該ポリスチレン系熱可塑性エラストマーは、分子中のソフトセグメントの配列様式により分けることができ、例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)等が挙げられ、さらにはポリブタジエンとブタジエン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体を水添して得られる結晶性ポリエチレンとエチレン/ブチレン−スチレンランダム共重合体とのブロック共重合体や、ポリブタジエン又はエチレン−ブタジエンランダム共重合体とポリスチレンとのブロック共重合体を水添して得られる、例えば、結晶性ポリエチレンとポリスチレンとのジブロック共重合体等も含まれる。これらの中でも、機械的強度、耐熱安定性、耐候性、耐薬品性、ガスバリア性、柔軟性、加工性等のバランスの面から、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)及びスチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)が好適である。
上記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーには、ハードセグメントとしてポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィンブロックを、ソフトセグメントとしてエチレン−プロピレン−ジエン共重合体等のゴムブロックを備える熱可塑性エラストマー等が含まれる。なお、かかる熱可塑性エラストマーには、ブレンド型とインプラント化型がある。また、上記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、無水マレイン酸変性エチレン−ブテン−1共重合体、無水マレイン酸変性エチレン−プロピレン共重合体、ハロゲン化ブチル系ゴム、変性ポリプロピレン、変性ポリエチレン等を挙げることもできる。
上記ポリジエン系熱可塑性エラストマーとしては、1,2−ポリブタジエン系TPE及びトランス1,4−ポリイソプレン系TPE、水添共役ジエン系TPE、エポキシ化天然ゴム等を挙げることができる。なお、1,2−ポリブタジエン系TPEは、分子中に1,2−結合を90%以上含むポリブタジエンであって、ハードセグメントとして結晶性のシンジオタクチック1,2−ポリブタジエンと、ソフトセグメントとして無定形1,2−ポリブタジエンとからなる。また、トランス1,4−ポリイソプレン系TPEは、分子中に98%以上のトランス1,4構造を有するポリイソプレンであって、ハードセグメントとしての結晶性トランス1,4セグメントと、ソフトセグメントとしての非結晶性トランス1,4セグメントからなる。
上記ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー(TPVC)は、一般に、以下に示す3種類に大別される。
・タイプ1:高分子量ポリ塩化ビニル(PVC)/可塑化ポリ塩化ビニル(PVC)ブレンド型TPVC
ハードセグメントに高分子量のPVCを用いて、ソフトセグメントに可塑剤で可塑化されたPVCを用いてなる熱可塑性エラストマーである。なお、ハードセグメントに高分子量のPVCを用いることで、微結晶部分にて架橋点の働きを持たせている。
・タイプ2:部分架橋PVC/可塑化PVCブレンド型TPVC
ハードセグメントに部分架橋又は分岐構造を導入したPVCを、ソフトセグメントに可塑剤で可塑化されたPVCを用いてなる熱可塑性エラストマーである。
・タイプ3:PVC/エラストマーアロイ型TPVC
ハードセグメントにPVCを、ソフトセグメントに部分架橋ニトリルブタジエンゴム(NBR)等のゴム又はポリウレタン系TPE、ポリエステル系TPE等のTPEを用いてなる熱可塑性エラストマーである。
上記塩素化ポリエチレン系熱可塑性エラストマーは、水性懸濁液又は四塩化炭素のような溶媒中でポリエチレンを塩素ガスと反応させて得られる軟質樹脂であり、ハードセグメントには結晶性ポリエチレンブロックが、ソフトセグメントには塩素化ポリエチレン(CPE)ブロックが用いられる。なお、CPEブロックには、ポリエチレン及び塩素化ポリエチレンの両成分がマルチブロック又はランダム構造の混合物として混在している。
上記ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPEE)は、分子中のハードセグメントとしてポリエステルを、ソフトセグメントとしてガラス転移温度(Tg)の低いポリエーテル又はポリエステルを用いたマルチブロックコポリマーである。TPEEは、分子構造の違いによって次のようなタイプに分けることができ、ポリエステル・ポリエーテル型TPEEとポリエステル・ポリエステル型TPEEが主流を占めている。
(1)ポリエステル・ポリエーテル型TPEE
一般には、ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとしてポリエーテルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(2)ポリエステル・ポリエステル型TPEE
ハードセグメントとして芳香族系結晶性ポリエステルを、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
(3)液晶性TPEE
ハードセグメントとして剛直な液晶分子を、ソフトセグメントとして脂肪族系ポリエステルを用いた熱可塑性エラストマーである。
上記ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)は、ハードセグメントとしてポリアミドを、ソフトセグメントとしてTgの低いポリエーテル又はポリエステルを用いたマルチブロックコポリマーである。ハードセグメントを構成するポリアミド成分は、ナイロン6,66,610,11,12等から選択され、ナイロン6、ナイロン12が主体を占めている。ソフトセグメントの構成物質には、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール等の長鎖ポリオールが用いられる。ポリエーテルポリオールの代表例には、ジオールポリ(オキシテトラメチレン)グリコール(PTMG)、ポリ(オキシプロピレン)グリコール等が挙げられ、ポリエステルポリオールの代表例には、ポリ(エチレンアジペート)グリコール、ポリ(ブチレン−1,4アジペート)グリコール等が挙げられる。
上記フッ素樹脂系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてフッ素樹脂を、ソフトセグメントとしてフッ素ゴムからなるABA型ブロックコポリマーである。ハードセグメントを構成するフッ素樹脂には、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が用いられ、ソフトセグメントを構成するフッ素ゴムには、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等が用いられる。より具体的には、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、四フッ化エチレン−パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、ホスファゼン系フッ素ゴムや、フルオロポリエーテル、フルオロニトロソゴム、パーフルオロトリアジンを含むもの等が挙げられる。なお、フッ素樹脂系TPEは、他のTPEと同じようにミクロ相分離して、ハードセグメントが架橋点を形成している。
上記ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)は、(1)ハードセグメントとして短鎖グリコールとイソシアネートとの反応で得られるポリウレタンと、(2)ソフトセグメントとして長鎖グリコールとイソシアネートとの反応で得られるポリウレタンとからなる直鎖状のマルチブロックコポリマーである。ここで、ポリウレタンとは、イソシアネート(−NCO)とアルコール(−OH)との重付加反応(ウレタン化反応)で得られるウレタン結合(−NHCOO−)を有する化合物の総称である。本発明の多層構造体においては、エラストマー層を形成するエラストマーがTPUであれば、該エラストマー層を積層することで、延伸性及び熱成形性を向上させることができる。また、かかる多層構造体では、エラストマー層とバリア層との層間接着性を向上できるため、耐クラック性等の耐久性が高く、多層構造体を変形させて使用しても、ガスバリア性及び延伸性を維持することができる。
上記TPUは、高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート、鎖伸長剤等から構成される。該高分子ポリオールは、複数の水酸基を有する物質であり、重縮合、付加重合(例えば開環重合)、重付加等によって得られる。高分子ポリオールとしては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はこれらの共縮合物(例えばポリエステル−エーテル−ポリオール)等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールが好ましく、ポリエステルポリオールが特に好ましい。なお、これらの高分子ポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、上記ポリエステルポリオールは、例えば、常法に従い、ジカルボン酸、そのエステル、その無水物等のエステルを形成し得る化合物と低分子ポリオールとを直接エステル化反応若しくはエステル交換反応によって縮合させるか、又はラクトンを開環重合することにより製造されることができる。
上記ポリエステルポリオールの生成に使用できるジカルボン酸としては、特に限定されず、ポリエステルの製造において一般的に使用されるジカルボン酸が挙げられる。該ジカルボン酸として、具体的には、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、メチルコハク酸、2−メチルグルタル酸、トリメチルアジピン酸、2−メチルオクタン二酸、3,8−ジメチルデカン二酸、3,7−ジメチルデカン二酸等の炭素数4〜12の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。これらのジカルボン酸は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、炭素数が6〜12の脂肪族ジカルボン酸が好ましく、アジピン酸、アゼライン酸又はセバシン酸が特に好ましい。これらジカルボン酸は、水酸基とより反応し易いカルボニル基を有しており、バリア層との層間接着性を大幅に向上させることができる。
上記ポリエステルポリオールの生成に使用できる低分子ポリオールとしては、特に限定されず、ポリエステルの製造において一般的に使用される低分子ポリオールが挙げられる。該低分子ポリオールとして、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−メチル−1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール等の炭素数2〜15の脂肪族ジオール;1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、シクロオクタンジメタノール、ジメチルシクロオクタンジメタノール等の脂環式ジオール;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香族2価アルコール等が挙げられる。これらの低分子ポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、2,7−ジメチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、2,8−ジメチル−1,9−ノナンジオール等の側鎖にメチル基を有する炭素数5〜12の脂肪族ジオールが好ましい。かかる脂肪族ジオールを用いて得たポリエステルポリオールは、水酸基との反応が起こり易く、バリア層との層間接着性を大幅に向上させることができる。さらに、上記低分子ポリオールと共に、少量の3官能以上の低分子ポリオールを併用することができる。3官能以上の低分子ポリオールとしては、例えばトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、グリセリン、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。
上記ポリエステルポリオールの生成に使用できるラクトンとしては、例えばε−カプロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン等を挙げることができる。
上記ポリエーテルポリオールとしては、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(メチルテトラメチレン)グリコール等が挙げられる。これらのポリエーテルポリオールは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコールが好ましい。
上記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,10−デカンジオール等の炭素数2〜12の脂肪族ジオール又はこれらの混合物を炭酸ジフェニル又はホスゲン等の作用により縮重合して得られる化合物が好適に挙げられる。
上記高分子ポリオールは、数平均分子量の下限が、500であるのが好ましく、600であるのがより好ましく、700であるのがさらに好ましい。一方、高分子ポリオールの数平均分子量の上限は、8,000が好ましく、5,000がより好ましく、3,000がさらに好ましい。高分子ポリオールの数平均分子量が上記下限より小さいと、有機ポリイソシアネートとの相溶性が高過ぎ、得られるTPUの弾性が乏しくなるため、得られる多層構造体の延伸性等の力学的特性や熱成形性が低下するおそれがある。一方、高分子ポリオールの数平均分子量が上記上限を超えると、有機ポリイソシアネートとの相溶性が低下して、重合過程での混合が困難になり、その結果、ゲル状物の塊の発生等により安定したTPUが得られなくなるおそれがある。なお、高分子ポリオールの数平均分子量は、JIS−K−1577に準拠して測定し、水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
上記有機ポリイソシアネートとしては、特に限定されるものではなく、TPUの製造に一般的に使用される公知の有機ジイソシアネートが使用できる。該有機ジイソシアネートとしては、例えば4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環式ジイソシアネート等を挙げることができる。これらの中でも、得られる多層構造体の強度及び耐屈曲性が向上できる観点から、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートが好ましい。これらの有機ポリイソシアネートは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記鎖伸長剤としては、特に限定されず、TPUの製造に一般的に使用される公知の鎖伸長剤が使用でき、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量300以下の低分子化合物が好適に使用される。鎖伸長剤としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4−シクロヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、得られる多層構造体の延伸性及び熱成形性がさらに向上できる観点から、1,4−ブタンジオールが特に好ましい。これらの鎖伸長剤は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
上記TPUの製造方法としては、上記高分子ポリオール、有機ポリイソシアネート及び鎖伸長剤を使用し、公知のウレタン化反応技術を利用する製造方法が挙げられ、プレポリマー法及びワンショット法のいずれを用いてもよい。特には、実質的に溶媒の不存在下にて溶融重合を行うことが好ましく、多軸スクリュー型押出機を用いた連続溶融重合を行うことがさらに好ましい。
上記TPUは、高分子ポリオールと鎖伸長剤との合計質量に対する有機ポリイソシアネートの質量の比[イソシアネート/(高分子ポリオール+鎖伸長剤)]が、1.02以下であることが好ましい。該比が1.02を超えると、成形時の長期運転安定性が悪化するおそれがある。
また、上記第二軟質材料の好適な実施態様、及び第二軟質材料のエラストマー組成物中での好適な含有量は、上記バリア層に用いる第一軟質材料の場合と同様である。即ち、上記第二軟質材料は、ガラス転移点がエラストマーより低いことが好ましい。また、上記第二軟質材料は、水酸基と反応可能な官能基を有する化合物であることが好ましく、水酸基と反応可能な官能基の具体例は、第一軟質材料の場合と同じである。また、上記第二軟質材料は、好ましくは分子量が1万以下の化合物であり、さらに好ましくは分子量が5000以下の化合物であり、一層好ましくは分子量が2000以下の化合物であり、特に好ましくは分子量が1000以下の化合物である。さらに、上記第二軟質材料は、エラストマーに対して相溶性があることが好ましい。またさらに、上記エラストマー組成物における第二軟質材料の含有率は、10〜30質量%であることが好ましい。
具体的に、上記第二軟質材料としては、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、天然ゴム(NR)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレン−p−メチルスチレン、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、エチレン−ブテンゴム、エチレン−オクテンゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリルゴム(ACM)、ニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム等のゴムの他、これらの水添ゴム(例えば、水素添加SBR)、変性ゴム(例えば、変性天然ゴム、臭素化−ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)、臭素化イソブチレン−p−メチルスチレン等)、液状ゴム(即ち、低分子量ゴム)等を用いることができる。また、同様の観点から、上記第二軟質材料には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−ブテン共重合体、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−イソブチレン−クロロメチルスチレンブロック共重合体、ポリアミド等の重合体の他、これらの水添物、変性物等を用いることができる。より具体的には、無水マレイン酸変性水素添加スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体及び無水マレイン酸変性超低密度ポリエチレン等が挙げられる。なお、これらの軟質材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
さらに、上記第二軟質材料として、既知の可塑剤を用いてもよい。ここで、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート(DOP)、ジトリデシルフタレート、トリオクチルメリレート等のフタル酸系可塑剤;トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート等のリン酸系可塑剤;トリブチルシトレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート、メチルアセチルリシノレート等の脂肪酸系可塑剤;エポキシ化大豆油、ジイソデシル-4,5-エポキシテロラヒドロフタレート等のエポキシ系可塑剤;N-ブチルベンゼンスルホンアミド等のアミド系可塑剤の他、塩素化パラフィンや、ひまわり油等が挙げられる。なお、これらの軟質材料は、一種単独で用いてもよいし、二種以上をブレンドして用いてもよい。
上記エラストマー組成物には、樹脂組成物の場合と同様の理由から、ラジカル架橋剤を配合してもよい。同様に、エラストマー組成物中のラジカル架橋剤の含有量は、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜9質量%がさらに好ましく、0.1〜8質量%が一層好ましい。上記ラジカル架橋剤の具体例は、上記した通りである。
上記エラストマー組成物には、上記エラストマー、軟質材料、ラジカル架橋剤の他に、後述する金属塩、熱安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤等の多種多様な添加剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して配合することができる。なお、上記エラストマー組成物中のエラストマー以外の添加剤の含有量は、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
上記エラストマー又はエラストマー組成物は、上記樹脂又は樹脂組成物の場合と同様の理由から、温度210℃及び剪断速度10/秒での溶融粘度(η1B)が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下、温度210℃及び剪断速度1,000/秒での溶融粘度(η2B)が1×10Pa・s以上1×10Pa・s以下であり、かつ、これらの溶融粘度比(η2B/η1B)が下記式(1B)を満たすことが好ましい。
−0.8≦(1/2)log10(η2B/η1B)≦−0.1 ・・・(1B)
同様に、上記溶融粘度比(η2B/η1B)から算出される(1/2)log10(η2B/η1B)の値は、−0.6以上であることがより好ましく、−0.2以下であることがより好ましい。
上記エラストマー又はエラストマー組成物は、エラストマー又はエラストマー組成物の融点より10〜80℃高い温度の少なくとも1点における溶融混練時間とトルクの関係において、粘度挙動安定性(M100/M20、但しM20は混練開始から20分後のトルク、M100は混練開始から100分後のトルクを表す)の値が0.5〜1.5の範囲であることが好ましい。粘度挙動安定性の値は1に近いほど粘度変化が少なく、熱安定性(ロングラン性)に優れていることを示す。
また、樹脂又は樹脂組成物の粘度とエラストマー又はエラストマー組成物の粘度との関係に関し、温度210℃及び剪断速度1,000/秒での樹脂又は樹脂組成物の溶融粘度(η2A)に対するエラストマー又はエラストマー組成物の溶融粘度(η2B)の比(η2B/η2A)の下限としては、0.3が好ましく、0.4がより好ましく、0.5がさらに好ましい。一方、樹脂又は樹脂組成物の溶融粘度(η2A)に対するエラストマー又はエラストマー組成物の溶融粘度(η2B)の比(η2B/η2A)の上限としては、2が好ましく、1.5がより好ましく、1.3がさらに好ましい。該溶融粘度比(η2B/η2A)を上記特定した範囲内にすることで、多層構造体の多層共押出法による成形において、外観が良好となり、また、バリア層とエラストマー層間の接着が良好となって多層構造体の耐久性を向上させることができる。
本発明の多層構造体は、隣接する層(例えば、隣接するバリア層とエラストマー層)の少なくとも一方の層に、金属塩を含むことが好ましい。この場合、多層構造体の層間接着性が大幅に向上でき、該多層構造体は、優れた耐久性を有する。金属塩の含有により層間接着性を向上できる理由としては、必ずしも明らかでないが、例えばバリア層を構成する樹脂とエラストマー層を構成するエラストマー間で起こる結合生成反応が、金属塩の存在により加速されること等が考えられる。かかる結合生成反応の具体例としては、TPUのカーバメート基とEVOHの水酸基との間で起こる水酸基交換反応や、TPU中の残存イソシアネート基へのEVOHの水酸基の付加反応等が考えられる。
上記金属塩としては、特に限定されるものではないが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又は周期律表の第4周期に属する遷移金属塩が、層間接着性をより高める観点から好ましい。これらの中でも、アルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩がさらに好ましく、アルカリ金属塩が特に好ましい。
上記アルカリ金属塩としては、特に限定されないが、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム等の脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、リン酸塩、金属錯体等が挙げられる。アルカリ金属塩として、具体的には、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸のナトリウム塩等が挙げられる。これらの中でも、酢酸ナトリム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウムが、入手容易である点から特に好ましい。
上記アルカリ土類金属塩としては、特に限定されないが、例えば、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ベリリウム等の酢酸塩又はリン酸塩が挙げられる。これらの中でも、マグネシウム又はカルシウムの酢酸塩又はリン酸塩が、入手容易である点から特に好ましい。かかるアルカリ土類金属塩を含有させると、溶融成形時における熱劣化した樹脂の成形機のダイへの付着量を低減できるという利点もある。
上記周期律表の第4周期に属する遷移金属の金属塩としては、特に限定されないが、例えばチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛等のカルボン酸塩、リン酸塩、アセチルアセトナート塩等が挙げられる。
上記金属塩の含有量(多層構造体中の金属元素換算の含有量)の下限としては、1質量ppmが好ましく、5質量ppmがより好ましく、10質量ppmがさらに好ましく、20質量ppmが特に好ましい。一方、該金属塩の含有量の上限としては、10,000質量ppmが好ましく、5,000質量ppmがより好ましく、1,000質量ppmがさらに好ましく、500質量ppmが特に好ましい。金属塩の含有量が1質量ppmより小さいと、層間接着性の向上効果が低くなるおそれがある。一方、金属塩の含有量が10,000質量ppmを超えると、多層構造体の外観が悪化するおそれがある。
バリア層を形成する樹脂組成物又はエラストマー層を形成するエラストマー組成物に上記金属塩を含有する方法としては、特に限定されるものではなく、上述のような樹脂組成物中にリン酸化合物等を含有する方法と同様の方法が採用できる。
本発明の多層構造体は、隣接する層(例えば、バリア層同士、エラストマー層同士及びバリア層とエラストマー層)の剥離抗力が、層間接着性の観点から、好ましくは25N/25mm以上であり、より好ましくは27N/25mm以上であり、さらに好ましくは30N/25mm以上である。ここで、剥離抗力とは、JIS K 6854に準拠し、23℃、50%RH雰囲気下、引張り速度50mm/分でのT型剥離試験によって測定される値である。
本発明の多層構造体の製造方法としては、バリア層とエラストマー層とが良好に積層・接着可能な方法であれば特に限定されるものではなく、例えば共押出し、はり合わせ、コーティング、ボンディング、付着等の公知の方法が挙げられる。本発明の多層構造体の製造方法の具体例としては、(1)EVOHを含む樹脂組成物とエラストマーを含むエラストマー組成物とを準備し、これら組成物を用いた多層共押出法によりバリア層及びエラストマー層を有する多層構造体を製造する方法や、(2)EVOHを含む樹脂組成物とエラストマーを含むエラストマー組成物とを準備し、これらを用いて複数の積層体を作製し、次いで複数の積層体を例えば接着剤により重ね合わせ、これを延伸することで、バリア層及びエラストマー層を有する多層構造体を製造する方法等が挙げられる。これらの中でも、生産性が高く、層間接着性に優れる観点から、上記(1)の手法が好ましい。
上記多層共押出法においては、バリア層を形成する樹脂又は樹脂組成物とエラストマー層を形成するエラストマー又はエラストマー組成物とが、加熱溶融され、異なる押出機やポンプからそれぞれの流路を通って押出ダイに供給され、押出ダイから多層に押し出された後に積層接着することで、本発明の多層構造体が形成される。この押出ダイとしては、例えばマルチマニホールドダイ、フィールドブロック、スタティックミキサー等を用いることができる。
また、本発明の多層構造体は、バリア層及びエラストマー層からなる積層体の両面又は片面に、該積層体を支持するための支持層が積層されてもよい。上記支持層としては、特に限定されず、例えば支持層として通常使用される合成樹脂層等が使用できる。なお、支持層のバリア層又はエラストマー層への積層方法としては、特に限定されず、例えば、接着剤による接着方法や押出ラミネート法等が挙げられる。
次に、図を参照しながら、本発明の空気入りタイヤ用インナーライナー及び本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。本発明の空気入りタイヤ用インナーライナーは、上述の多層構造体を用いたことを特徴とし、本発明の空気入りタイヤは、該インナーライナーを備えることを特徴とする。図2は、本発明の空気入りタイヤの一例の部分断面図である。図2に示すタイヤは、一対のビード部7及び一対のサイドウォール部8と、両サイドウォール部8に連なるトレッド部9とを有し、上記一対のビード部7間にトロイド状に延在して、これら各部7,8,9を補強するカーカス10と、該カーカス10のクラウン部のタイヤ半径方向外側に配置された2枚のベルト層からなるベルト11とを備え、さらに、該カーカス10の内側のタイヤ内面にはインナーライナー12が配置されている。
図示例のタイヤにおいて、カーカス10は、上記ビード部7内に夫々埋設した一対のビードコア13間にトロイド状に延在する本体部と、各ビードコア13の周りでタイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス10のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
また、図示例のタイヤにおいて、ベルト11は、2枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいては、ベルト11を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではない。ここで、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成するコードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト11を構成する。さらに、図示例のタイヤは、上記ベルト11のタイヤ半径方向外側でベルト11の全体を覆うように配置されたベルト補強層14を備えるが、本発明のタイヤは、ベルト補強層14を有していなくてもよいし、他の構造のベルト補強層を備えることもできる。ここで、ベルト補強層14は、通常、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列したコードのゴム引き層からなる。
本発明の空気入りタイヤは、インナーライナー12に上述した多層構造体を適用し、常法により製造することができる。なお、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
(合成例1:EVOH)
冷却装置及び攪拌機を有する重合槽に、酢酸ビニル20000質量部、メタノール1020質量部、重合開始剤として2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)3.5質量部を仕込み、攪拌しながら窒素置換した後、エチレンを導入し、内温60℃、エチレン圧力5.9MPaに調節し、4時間その温度及び圧力を保持し、攪拌しながら重合を行った。次いで、ソルビン酸(SA)10質量部(仕込み酢酸ビニルに対して0.0005質量%)をメタノールに溶解して、1.5質量%ソルビン酸のメタノール溶液を調製し、これを添加した。重合率は、仕込み酢酸ビニルに対して30%であった。重合後に得られる共重合反応液を、ラシヒリングを充填した塔に供給し、塔下部からのメタノール蒸気の導入により未反応酢酸ビニルを塔頂より除去し、その後、共重合体の40質量%のメタノール溶液を得た。該共重合体は、エチレン単位含有量が44モル%で、酢酸ビニル単位含有量が56モル%であった。
得られた共重合体のメタノール溶液をケン化反応器に導入し、次いで水酸化ナトリウム/メタノール溶液(85g/L)を共重合体中の酢酸ビニル成分に対して0.5当量となるように添加し、さらにメタノールを添加して、溶液中の共重合体濃度が15質量%になるように調整した。反応器内温度を60℃に昇温し、反応器内に窒素ガスを吹き込みながら5時間反応を行った。その後、反応溶液を酢酸で中和し、反応を停止させ、内容物を反応器より取り出し、常温にて放置したところ、粒子状のEVOHが析出した。析出後の粒子を遠心分離機で脱液し、さらに大量の水を加え脱液するという操作を繰り返し行い、ケン化度99.5%のEVOHを得た。
得られたEVOHを、酢酸、リン酸及びオルトホウ酸(OBA)を含む水溶液(水溶液1L中、酢酸0.3g、リン酸0.06g、オルトホウ酸0.35gを溶解)により浴比20で処理し、乾燥後、押出機にてペレット化し、EVOHペレットを得た。EVOHペレットのMFRは4.6g/10分(190℃、21.18N荷重下)であった。また、ペレットの酢酸含有量は90質量ppm、リン酸化合物含有量はリン酸根換算で43質量ppm、ホウ素化合物の含有量はホウ素換算値で260質量ppmであった。
(合成例2:エポキシプロパンで変性したEVOH)
加圧反応層に、エチレン含量44モル%、ケン化度99.9%のエチレン−ビニルアルコール共重合体2重量部およびN−メチル−2−ピロリドン8重量部を仕込み、120℃で、2時間加熱攪拌することにより、エチレン−ビニルアルコール共重合体を完全に溶解させた。
これにエポキシ化合物としてエポキシプロパン0.4重量部を添加後、160℃で4時間加熱した。
加熱終了後、蒸留水100重量部に析出させ、多量の蒸留水で充分にN−メチル−2−ピロリドンおよび未反応のエポキシプロパンを洗浄し、変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を得た。
さらに、得られた変性エチレン−ビニルアルコール共重合体を粉砕機で粒子径2mm程度に細かくした後、再度大量の蒸留水で充分に洗浄した。
洗浄後の粒子を8時間室温で真空乾燥した後、2軸押出機を用いて200℃で溶融し、ペレット化した。
(合成例3:グリシドールで変性したEVOH)
エポキシプロパンに代えてグリシドールを用いたこと以外は、上記合成例2と同様にして、グリシドールで変性したエチレン−ビニルアルコール共重合体(変性EVOH)を含むペレットを得た。
(例1、3〜6、8〜16及び18〜31)
表1〜11に示すバリア層及びエラストマー層を形成するための樹脂、樹脂組成物、エラストマー及びエラストマー組成物を準備し、バリア層及びエラストマー層が表1〜11に示す層数で交互に積層された多層構造体が形成されるように、210℃の溶融物を共押出機からフィードブロックへ供給し、フィードブロックから溶融物を押し出し合流させ、多層構造体を作製した。溶融物は、フィードブロック内にて各層の流路を表面側から中央側に向かうにつれ徐々に厚くなるように変化させることにより、多層構造体の各層の厚さが均一になるようにフィードブロックから押し出された。
また、隣接するバリア層とエラストマー層の層厚さがほぼ同じになるようにスリットの形状を設計した。このようにして得られた合計25層の多層構造体を、表面温度25℃に保たれ静電印加したキャスティングドラム上で急冷固化した。急冷固化して得られたキャストフィルムを離型紙上に圧着し巻取りを行った。なお、溶融物を合流してからキャスティングドラム上で急冷固化されるまでの時間が約4分となるように流路形状及び総吐出量を設定した。
上記のようにして得られたキャストフィルムに関して、DIGITAL MICROSCOPE VHX−900(KEYENCE製)又は電子顕微鏡VE−8800(KEYENCE製)による断面観察を行い、各層の平均厚さ及び多層構造体の厚さを求めた。結果を表1〜11に示す。
次いで、このキャストフィルムに対し、電子線加速機[日新ハイボルテージ(株)製、キュアトロンEB200−100]を用い、加速電圧200kVにて表1〜表11に示す照射線量の電子線を照射して、架橋された多層フィルムを得た。
(例2)
上記合成例2で得られた変性EVOHを用いて、厚さが6μmの単層フィルムを常法に従って作製した。また、得られた単層フィルムに対し、電子線加速機[日新ハイボルテージ(株)製、キュアトロンEB200−100]を用いて、加速電圧200kV、照射線量200kGyの電子線を照射した。
(例9)
上記合成例1で得られたEVOHを用いて、厚さが6μmの単層フィルムを常法に従って作製した。また、得られた単層フィルムに対し、電子線加速機[日新ハイボルテージ(株)製、キュアトロンEB200−100]を用いて、加速電圧200kV、照射線量200kGyの電子線を照射した。
(例17)
ナイロン[東レ社製,CM1061]を用いて、厚さが6μmの単層フィルムを常法に従って作製した。また、得られた単層フィルムに対し、電子線加速機[日新ハイボルテージ(株)製、キュアトロンEB200−100]を用いて、加速電圧200kV、照射線量200kGyの電子線を照射した。
次に、上記のようにして作製した多層フィルム及び単層フィルムのガスバリア性、耐クラック性、低温ドラム走行試験後の亀裂の有無、及び内圧保持性を下記の方法で評価した。結果を表1〜11に示す。また、表中のヤング率、ガラス転移点及び空気透過度の測定方法を以下に示す。
(1)ガスバリア性
上記フィルムを、20℃、65%RHで5日間調湿した。得られた調湿済みのフィルムを2枚使用して、GTRテック社製GTR−30Xを用い、20℃、65%RHの条件下で空気透過度を測定し、その平均値を求めた。結果については、比較例1の平均値を100として指数表示し、指数値が低い程、ガスバリア性に優れる。
(2)耐クラック性
21cm×30cmにカットされたフィルムを50枚作製し、それぞれのフィルムを0℃で7日間調湿した後、ASTM F 392−74に準拠して、理学工業(株)製ゲルボフレックステスターを使用し、屈曲回数50回、75回、100回、125回、150回、175回、200回、225回、250回、300回、400回、500回、600回、700回、800回、1000回、1500回屈曲させた後、ピンホールの数を測定した。それぞれの屈曲回数において、測定を5回行い、その平均値をピンホール個数とした。屈曲回数(P)を横軸に、ピンホール数(N)を縦軸に取り、上記測定結果をプロットし、ピンホール数が1個の時の屈曲回数(Np1)を外挿により求め、有効数字2桁とした。但し、1500回の屈曲でピンホールが観察されないフィルムについては、以降500回おきに屈曲回数を増やし、ピンホールが見られた屈曲回数をNp1とした。
上記手法により得られた屈曲回数について、実施例3〜5については比較例1の屈曲回数、比較例2、7、実施例8〜15については比較例6の屈曲回数、比較例17及び実施例18〜31については比較例16の屈曲回数を、それぞれ100としたときの指数によって示す。なお、指数値については、大きいほど屈曲回数が多く、耐クラック性が高いことを示す。
(3)低温ドラム走行試験後の亀裂の有無
上記フィルムをインナーライナーとして用いて、図2に示す構造の空気入りタイヤ(195/65R15)を常法に従って作製した。次いで、該タイヤを、−30℃の雰囲気の中、空気圧140kPaで、80km/hの速度に相当する回転ドラム上に加重6kNで押し付けて10,000km走行させた。ドラム走行後のタイヤのインナーライナー外観を目視観察して、亀裂の有無を評価した。
(4−1)内圧保持性(例1〜5)
上記タイヤを、室温にて、空気圧140kPaで、80km/hの速度に相当する回転ドラム上に加重6kNで押し付けて10,000km走行させた。そして、走行させたタイヤ(試験タイヤ)を6JJ×15のリムに装着した後、内圧を240kPaとし、3ヶ月間放置した。3ヶ月後の内圧を測定し、下記式:
内圧保持性=((240−b)/(240−a))×100
[式中、aは試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)、bは比較例1の試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)である]を用いて内圧保持性を評価した。比較例1の値を100として他の値を指数化した。指数値が大きい程、内圧保持性に優れる。
(4−2)内圧保持性(例6〜15)
上記タイヤを、室温にて、空気圧140kPaで、80km/hの速度に相当する回転ドラム上に加重6kNで押し付けて10,000km走行させた。そして、走行させたタイヤ(試験タイヤ)を6JJ×15のリムに装着した後、内圧を240kPaとし、3ヶ月間放置した。3ヶ月後の内圧を測定し、下記式:
内圧保持性=((240−b)/(240−a))×100
[式中、aは試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)、bは比較例8の試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)である]を用いて内圧保持性を評価した。比較例6の値を100として他の値を指数化した。指数値が大きい程、内圧保持性に優れる。
(4−3)内圧保持性(例16〜30)
上記タイヤを、室温にて、空気圧140kPaで、80km/hの速度に相当する回転ドラム上に加重6kNで押し付けて10,000km走行させた。そして、走行させたタイヤ(試験タイヤ)を6JJ×15のリムに装着した後、内圧を240kPaとし、3ヶ月間放置した。3ヶ月後の内圧を測定し、下記式:
内圧保持性=((240−b)/(240−a))×100
[式中、aは試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)、bは比較例31の試験タイヤの3ヶ月後の内圧(kPa)である]を用いて内圧保持性を評価した。比較例16の値を100として他の値を指数化した。指数値が大きい程、内圧保持性に優れる。
(23℃におけるヤング率の測定方法)
東洋精機社製二軸押出機によって、下記押出条件で製膜し、厚さ20μmの単層フィルムを作製した。次いで、該フィルムを用いて、幅15mmの短冊状の試験片を作製し、23℃、50%RHの条件下で恒温室内に1週間放置した後、株式会社島津製作所製オートグラフ[AG−A500型]を用いて、チャック間隔50mm、引張速度50mm/分の条件で、23℃、50%RHにおけるS−Sカーブ(応力−歪み曲線)を測定し、S−Sカーブの初期傾きからヤング率を求めた。
スクリュー:20mmφ、フルフライト
シリンダー、ダイ温度設定:C1/C2/C3/ダイ=200/200/200/200(℃)
Figure 2012250562
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*1 ペレット100質量部に対して添加される軟質材料の質量部を示す.
*2 (株)クラレ製,クラミロン.
*3 (株)花王製,カポックスS−6.
*7 Sartomer社製,Ricon 130MA8.
*9 三和化学社製,Sunmide550.
*15 宇部興産社製,UBESTA XPA,ポリアミドエラストマー.
*16 三井化学社製,タフマーMH7010,無水マレイン酸変性エチレン−ブテン−1共重合体エラストマー.
*19 JSR社製,ダイナロン4630P,変性スチレン系エラストマー.
*20 東レ社製,CM1061.
*21 DAICEL EVONIK社製,E40−S1.
*22 JSR社製,ダイナロン8630P,変性スチレン系エラストマー.
*22 (株)旭化成ケミカルズ社製,F216.
*24 Mu−ang.Mai Guthrie Public Company製,EPOXY PRENE25,エポキシ化天然ゴム.
*25 Iran Petrochemical社製,PARS.
表1〜7の結果から、実施例の多層構造体は、比較例の多層構造体と比べて、ガスバリア性及び耐クラック性を両立できることが分かる。また、実施例の多層構造体は、低温での耐久性にも優れる。
1 バリア層
2 エラストマー層
3 樹脂
4 第一軟質材料
5 エラストマー
6 第二軟質材料
7 ビード部
8 サイドウォール部
9 トレッド部
10 カーカス
11 ベルト
12 インナーライナー
13 ビードコア

Claims (12)

  1. バリア層とエラストマー層とを合計7層以上備える多層構造体であって、
    前記バリア層は一層の平均厚さが0.001〜10μmであり、前記エラストマー層は一層の平均厚さが0.001〜40μmであり、
    前記バリア層が、樹脂成分と相互作用する官能基を持ち、分子量が10000以下である第一軟質材料を分散させた樹脂組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする多層構造体。
  2. 前記第一軟質材料は、ガラス転移点が前記樹脂より低いことを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  3. 前記第一軟質材料が、水酸基と反応可能な官能基を有する化合物であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  4. 前記第一軟質材料は、分子量が5000以下の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  5. 前記第一軟質材料は、分子量が2000以下の化合物であることを特徴とする請求項4に記載の多層構造体。
  6. 前記第一軟質材料は、分子量が1000以下の化合物であることを特徴とする請求項5に記載の多層構造体。
  7. 前記樹脂組成物における前記第一軟質材料の含有率が10〜60質量%であることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  8. 前記第一軟質材料は、−30℃におけるヤング率が前記樹脂より低いことを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  9. 前記エラストマー層が、エラストマー中に23℃におけるヤング率が該エラストマーより低い第二軟質材料を分散させたエラストマー組成物からなる層を少なくとも一層含むことを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  10. 前記バリア層及び前記エラストマー層が、活性エネルギー線の照射により架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の多層構造体。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の多層構造体を用いた空気入りタイヤ用インナーライナー。
  12. 請求項11に記載の空気入りタイヤ用インナーライナーを備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
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