JP2012250351A - スクライブ方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】脆性材料基板に良好なスクライブラインを形成することができるスクライブ方法を提供する。
【解決手段】本手法では、ヘッド部の動作によって、ダイヤモンドポイントの外面のうち、角丸面67が、脆性材料基板4に接触させられる。そして、脆性材料基板4と接触する角丸面67から脆性材料基板4に、力(スクライブ荷重)が付与される。続いて、ダイヤモンドポイントの角丸面67が脆性材料基板4に接触させられ状態で、ダイヤモンドポイント60が脆性材料基板4に対して相対的に移動させられる。
【選択図】図7

Description

ダイヤモンド含有物のツールにより、脆性材料基板上にスクライブラインを形成するスクライブ方法に関する。
ガラス基板上にスクライブラインを形成するために、ダイヤモンドポイントまたはダイヤモンドホイールによってガラス基板を切削する技術が、従来より知られている(例えば、特許文献1)。
特開2010−085791号公報
このように、特許文献1の技術では、ガラス基板が切削されるため、スクライブライン付近に切り屑が発生するという問題が生ずる。そして、特許文献1の技術では、場合によっては、スクライブされた断面にマイクロクラック(細かい亀裂)が発生するという問題が生ずる。
そこで、本発明では、脆性材料基板に良好なスクライブラインを形成することができるスクライブ方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、ダイヤモンド含有物のツールにより、脆性材料基板上にスクライブラインを形成する方法であって、(a)前記ツールの外面のうち前記脆性材料基板と接触する角丸面から、前記脆性材料基板に力を付与する工程と、(b)前記工程(a)により前記ツールの前記角丸面を前記脆性材料基板に接触させた状態で、前記ツールを前記脆性材料基板に対して相対的に移動させる工程とを備え、前記角丸面は、曲面形状を有するとともに、前記工程(b)により、前記ツールと前記脆性材料基板とが接触させられつつ、前記ツールが前記脆性材料基板に対して移動させられる場合、前記角丸面は、下向きに凸とされることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のスクライブ方法において、前記ツールは、ダイヤモンドポイントであること特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1に記載のスクライブ方法において、前記ツールは、スクライビングホイールであること特徴とする。
請求項1から請求項3に記載の発明において、ダイヤモンド含有物のツールの外面のうち、脆性材料基板と接触する角丸面は、曲面形状とされている。また、工程(b) により、ツールと脆性材料基板とが接触しつつ、ツールが脆性材料基板に対して移動させられる場合、ツールの角丸面は、下向きに凸の状態とされる。
これにより、ツールは、角丸面と接触する脆性材料基板の接触部を切削することなく、この接触部に大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。そして、この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板にスクライブラインおよび垂直クラックが形成される。そのため、スクライブライン付近に切り屑およびマイクロクロックが発生することを防止でき、脆性材料基板を良好にスクライブできる。
本発明の第1および第2の実施の形態におけるスクライブ装置の全体構成の一例を示す正面図である。 本発明の第1および第2の実施の形態におけるスクライブ装置の全体構成の一例を示す側面図である。 ヘッド部付近の構成の一例を示す正面図である。 ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。 ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。 第1の実施の形態におけるダイヤモンドポイントの構成の一例を示す側面図である。 第1の実施の形態における刃部の形状の一例を示す正面図である。 図7における刃部の稜線を説明するための正面図である。 角丸面を有しない刃部の形状の一例を示す正面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイール付近の構成の一例を示す正面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイール付近の構成の一例を示す下面図である。 キャスター効果を説明するための下面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイールの一例を示す側面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイールの一例を示す正面図である。 図14の符号Aにおける部分拡大図である。 スクライブされた脆性材料基板の端面強度を評価するための試験方法を説明するための図である。 実施例1および比較例1の試験条件を説明するための図である。 実施例1および比較例1の試験結果を示す図である。 図7に示す刃部によりスクライブされた脆性材料基板の写真である。 図9に示す刃部によりスクライブされた脆性材料基板の写真である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1.1.スクライブ装置の構成>
図1および図2は、それぞれ第1の実施の形態におけるスクライブ装置1の全体構成の一例を示す正面図および側面図である。スクライブ装置1は、例えばガラス基板またはセラミックス基板等のように、脆性材料で形成された基板(以下、単に、「脆性材料基板」とも呼ぶ)4の表面に、スクライブライン(切りすじ:縦割れ)を入れる装置である。
図1および図2に示すように、スクライブ装置1は、主として、保持ユニット10と、スクライブユニット20と、撮像部ユニット80と、制御ユニット90と、を有している。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく、必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。
ここで、第1および第2の実施の形態において、
(1)スクライブ装置1(第2の実施の形態の場合は、スクライブ装置100)により、脆性材料基板4の表面にスクライブラインSLおよび垂直クラックK(後述する図7および図10参照)が形成され(スクライブ工程)、
(2)次に、応力付与により垂直クラックKがさらに伸展させられ、脆性材料基板4が切断される(ブレーク工程)、
手法を、「割断」と呼ぶ。
一方、スクライブ工程のみによって(すなわち、ブレーク工程を実行することなく)、垂直クラックKを脆性材料基板4のスクライブラインSLの主面から逆側の主面まで伸展させ、脆性材料基板4を切断する手法を、「分断」と呼ぶ。
また、本実施の形態のスクライブ方法により割断または分断可能な脆性材料基板4の材質の例としては、ガラス、セラミック、シリコン、またはサファイア等が挙げられる。特に近年、通信機器関連の高周波モジュールに用いる基板として、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)から、比較的加工のしやすいLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)への移行が加速している。そのため、本実施の形態のスクライブ方法は、益々有効に用いられることになる。
保持ユニット10は、脆性材料基板4を保持しつつ移動させることによって、脆性材料基板4をスクライブユニット20に対して移動させる。図1に示すように、保持ユニット10は、基部10a上に設けられており、主として、テーブル11と、ボールねじ機構12と、モータ13と、を有している。
ここで、基部10aは、例えば略直方体状の石定盤により形成されており、その上面(保持ユニット10と対向する面)は、平坦加工されている。これにより、基部10aの熱膨張を低減でき、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を良好に移動させることができる。
テーブル11は、載置された脆性材料基板4を吸着保持する。また、テーブル11は、保持された脆性材料基板4を、矢印AR1方向(X軸プラスまたはマイナス方向:以下、単に、「進退方向」とも呼ぶ)に進退させるとともに、矢印R1方向に回転させる。図1および図2に示すように、テーブル11は、主として、吸着部11aと、回転台11bと、移動台11cと、を有している。
吸着部11aは、回転台11bの上側に設けられている。図1および図2に示すように、吸着部11aの上面には、脆性材料基板4が載置可能とされている。また、吸着部11aの上面には、複数の吸着溝(図示省略)が格子状に配置されている。したがって、脆性材料基板4が載置された状態で、各吸着溝内の雰囲気が排気(吸引)されることによって、脆性材料基板4は、吸着部11aに対して吸着される。
回転台11bは、吸着部11aの下側に設けられており、Z軸と略平行な回転軸11dを中心に吸着部11aを回転させる。また、移動台11cは、回転台11bの下側に設けられており、進退方向に沿って、吸着部11aおよび回転台11bを移動させる。
したがって、テーブル11に吸着保持された脆性材料基板4は、矢印AR1方向に進退させられるとともに、吸着部11aの進退動作にともなって移動する回転軸11dを中心に回転させられる。
ボールねじ機構12は、テーブル11の下側に配置されており、テーブル11を矢印AR1方向に進退させる。図1および図2に示すように、ボールねじ機構12は、主として、送りネジ12aと、ナット12bと、を有している。
送りネジ12aは、テーブル11の進退方向に沿って延びる棒体である。送りネジ12aの外周面には、螺旋状の溝(図示省略)が設けられている。また、送りネジ12aの一端は支持部14aにより、送りネジ12aの他端は支持部14bにより、それぞれ回転可能に支持されている。さらに、送りネジ12aは、モータ13と連動連結されており、モータ13が回転すると、その回転方向に送りネジ12aが回転する。
ナット12bは、送りネジ12aの回転にしたがい、不図示のボールの転がり運動によって、矢印AR1方向に進退する。図1および図2に示すように、ナット12bは、移動台11cの下部に固定されている。
したがって、モータ13が駆動させられ、モータ13の回転力が送りネジ12aに伝達されると、ナット12bは、矢印AR1方向に進退する。その結果、ナット12bが固定されているテーブル11は、ナット12bと同様に矢印AR1方向に進退する。
一対のガイドレール15、16は、進行方向におけるテーブル11の移動を規制する。図2に示すように、一対のガイドレール15、16は、基部10a上において、矢印AR2方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
複数(本実施の形態では2つ)の摺動部17(17a、17b)は、ガイドレール15に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部17(17a、17b)は、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
複数(本実施の形態では2つ:ただし、図示の都合上、摺動部18aのみ記載)の摺動部18は、ガイドレール16に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部18は、摺動部17(17a、17b)と同様に、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
このように、モータ13の回転力がボールねじ機構12に付与されると、テーブル11は、一対のガイドレール15、16に沿って移動する。そのため、進退方向におけるテーブル11の直進性を確保することができる。
スクライブユニット20は、ダイヤモンドポイント60(後述する図3参照)を用いることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成する。図1および図2に示すように、スクライブユニット20は、主として、ヘッド部30と、駆動部70と、を有している。
ヘッド部30は、保持されたダイヤモンドポイント60から脆性材料基板4の表面に対し、押圧力(以下、単に、「スクライブ荷重」とも呼ぶ)を付与する。また、ヘッド部30は、ダイヤモンドポイント60の刃部61(図3参照)を、脆性材料基板4に対し、接触かつ移動させることによって、脆性材料基板4上にスクライブラインを形成する。なお、ヘッド部30の詳細な構成については、後述する。
駆動部70は、ヘッド部30に保持されたダイヤモンドポイント60を矢印AR2方向(Y軸プラスまたはマイナス方向)に沿って往復移動させる。図2に示すように、駆動部70は、主として、支柱71と、レール72と、モータ73と、を有している。
複数(本実施の形態では2本)の支柱71(71a、71b)は、基部10aから上下方向(Z軸方向)に延びる。図2に示すように、各ガイドレール72は、支柱71a、71bの間に挟まれた状態で、これら支柱71a、71bに対して固定される。
複数(本実施の形態では2本)のガイドレール72は、加工方向におけるヘッド部30の移動を規制する。図2に示すように、複数のガイドレール72は、上下方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
モータ73は、不図示の送り機構(例えば、ボールねじ機構)と連動連結されている。これにより、モータ73が回転すると、ヘッド部30は、複数のガイドレール72に沿って矢印AR2方向に往復する。
撮像部ユニット80は、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を撮像する。図2に示すように、撮像部ユニット80は、複数のカメラ85(85a、85b)を有している。
複数(本実施の形態では2台)のカメラ85(85a、85b)は、図1および図2に示すように、保持ユニット10の上方に配置されている。各カメラ85(85a、85b)は、脆性材料基板4上に形成された特徴的な部分(例えば、アライメントマーク(図示省略))の画像を撮像する。そして、各カメラ85(85a、85b)により撮像された画像に基づいて、脆性材料基板4の位置および姿勢が求められる。
制御ユニット90は、スクライブ装置1の各要素の動作制御、およびデータ演算を実現する。図1および図2に示すように、制御ユニット90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。
RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。CPU(Central Processing Unit)93は、ROM91のプログラム91aに従った制御(例えば、駆動部70によるホルダ31の往復動作、および昇降部50によるホルダ31(後述する図3参照)の昇降動作等の制御)、および種々のデータ演算処理等を実行する。
<1.2.ヘッド部の構成>
図3は、ヘッド部30付近の構成の一例を示す正面図である。図4および図5のそれぞれは、ホルダ揺動部34付近の構成の一例を示す側面図である。図3から図5に示すように、ヘッド部30は、主として、ホルダ31と、ホルダ揺動部34と、ホルダジョイント35と、昇降部50と、ダイヤモンドポイント60と、を有している。
ホルダ31は、ヘッド部30にダイヤモンドポイント60を固定する。図3から図5に示すように、ダイヤモンドポイント60の刃部61が脆性材料基板4側となるように、ダイヤモンドポイント60の把持部62を把持する。
ダイヤモンドポイント60は、脆性材料基板4に対して移動させられることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成するツール(工具)である。なお、ダイヤモンドポイント60の詳細な構成については、後述する。
ホルダ揺動部34は、ダイヤモンドポイント60の刃部61を、揺動軸36a、および/または、回転軸38aを中心に揺動させる。図4および図5に示すように、ホルダ揺動部34は、主として、ホルダジョイント35と、ホルダ取付ブロック40と、を有している。
ホルダジョイント35は、ホルダ31およびホルダ取付ブロック40を連動連結する。図3から図5に示すように、ホルダジョイント35は、旋回部38の下端に固定されており、主として、取付片36と、旋回部38と、を有している。
取付片36は、ホルダジョイント35の下部にホルダ31を取り付けるための取付要素である。図3から図5に示すように、取付片36は、ホルダジョイント35の下端に設けられており、取付片36の形状は、側面視略L字状とされている。
また、図3から図5に示すように、取付片36は、揺動軸36aを有している。揺動軸36aは、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)と略垂直な方向(矢印AR4方向:以下、単に、「軸心方向」とも呼ぶ)に延びる。そして、ホルダ31は、取付片36に設けられた揺動軸36aを中心に揺動する。
旋回部38は、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)に沿った回転軸38aを中心に回転可能とされている。図3に示すように、旋回部38は、ベアリング46、47の内径面と対向するように、挿入されている。
ホルダ取付ブロック40は、上述のようにホルダジョイント35を回動可能に支持する。図3に示すように、ホルダ取付ブロック40は、ホルダジョイント35の取付片36の上方、およびホルダ31の上方に設けられており、主として、ベアリング46、47と、固定部49と、を有している。
ベアリング46、47は、取付ブロック本体40a内に、かつ、上からこの順番に、配置されている。ベアリング46、47は、ホルダジョイント35の旋回部38を軸支する。
固定部49は、ベアリング46、47により回動自在にされた旋回部38を、ホルダ取付ブロック40に対して固定する。これにより、回転軸38a周りにおけるホルダジョイント35の回動角が設定できる。
なお、固定部49としては、例えば、ネジ等の締結部材が用いられても良い。また、ベアリングの個数は2つに限定されず、例えば、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
昇降部50は、ホルダ31を保持ユニット10と近接する方向に移動させることによって、ホルダ31に固定されたダイヤモンドポイント60の刃部61を脆性材料基板4に突き当てる。図3に示すように、昇降部50は、主として、シリンダ51と、伝達部52と、を有している。
シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40側に上下方向(Z軸プラスまたはマイナス方向)に沿った駆動力を付与する駆動力供給源である。図3に示すように、シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40の上方に配置されており、主として、本体部51aと、ロッド51bと、を有している。
ロッド51bは、本体部51aに対して進退可能とされている。図3に示すように、ロッド51bの下端は、伝達部52に連結されている。したがって、シリンダ51が駆動し、ロッド51bが本体部51aから進出することによって、伝達部52は、ロッド51bの下端により下方向に押し下げられる。
伝達部52は、シリンダ51およびホルダ取付ブロック40の間に設けられており、シリンダ51からの駆動力をホルダ取付ブロック40に伝達する。
ガイド機構53は、図3に示すように、主として、ガイドレール53aと、ガイドレール53aに沿って上下方向に摺動自在とされたガイドブロック53bと、を有している。また、取付プレート54は、ガイド機構53およびホルダ取付ブロック40の間に挟まれた板材である。ホルダ取付ブロック40は、取付プレート54を介してガイドブロック53bに固定されている。これにより、ホルダ取付ブロック40に上下方向に沿った駆動力が付与されると、ガイド機構53は、ガイドブロック53bの昇降方向に沿ってホルダ取付ブロック40をガイドする。
回転軸56は、図3から図5に示すように、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)と略垂直であり、かつ、取付片36に設けられた揺動軸36aと略垂直な方向に延びる。これにより、回転軸56周りにおけるホルダ取付ブロック40の回転角が設定できる。そのため、ホルダ31に固定されたダイヤモンドポイント60の姿勢がYZ平面内で調整できる。
<1.3.ダイヤモンドポイントの構成>
図6は、ダイヤモンドポイント60の構成の一例を示す側面図である。図7は、ダイヤモンドポイント60の刃部61の形状の一例を示す正面図である。図8は、図7における刃部61の稜線66を説明するための正面図である。図6に示すように、ダイヤモンドポイント60は、主として、刃部61と、把持部62と、を有している。
把持部62は、図6に示すように、一端62aに刃部61が設けられた円柱状または角柱状の棒体である。ホルダ31により把持部62が把持されることによって、ダイヤモンドポイント60は、ヘッド部30に取り付けられる。
ここで、本実施の形態において、把持部62の直径は、好ましくは2〜6(mm)であり、把持部62の長さは、好ましくは10〜70(mm)である。
刃部61は、ダイヤモンド含有物により成形されている。刃部61が脆性材料基板4に突き当てられることによって、脆性材料基板4にスクライブラインが形成される。図7および図8に示すように、刃部61は、四角錐台形状を有しており、主として、先端面64と、複数の斜面65(65a〜65d)と、複数の角丸面67(67a〜67d:ただし、角丸面67dは図示の都合上省略)と、を有している。そして、隣接する2つの斜面65により、刃部61の稜線66が形成されている。
複数の斜面65(65a〜65d)は、図7および図8に示すように、四角錐台形状とされた刃部61の側面を形成する。各斜面65(65a〜65d)は、台形状の平面とされている。
複数の角丸面67(67a〜67d)は、先端面64の各角部に形成されており、曲面形状を有している。また、各角丸面67は、複数の斜面65のうち対応する隣接斜面65と、先端面64と、に囲まれている。例えば、図7に示すように、角丸面67aは、互いに隣接する斜面65a、65bと、先端面64と、に囲繞されている。
ここで、本実施の形態において、刃部61の各稜線66は、2つの隣接する斜面65の間に形成された直線部68と、この隣接する斜面65のそれぞれと接続する角丸面67上に位置しており、直線部68および先端面64を接続する曲線部69と、を有している。
例えば、図7および図8に示すように、稜線66bは、直線部68bおよび曲線部69bを有している。直線部68bは、隣接する斜面65a、65dの間に形成された線分である。一方、曲線部69bは、直線部68bおよび先端面64を接続する円弧状の曲線である。
また、図8に示すように、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きの絶対値は、先端面64に対する曲線部69の傾きの絶対値(すなわち、曲線部69上の各位置における接線の傾きの絶対値)より大きくなるように設定されている。
なお、本実施の形態において、把持部62との取付位置付近(先端面64と逆側に位置する四角錐台の底面)における刃部61の大きさは、好ましくは0.5mm角〜3.0mm角(さらに好ましくは、0.8mm角〜2.0mm角)である。
<1.4.刃部に含まれる材料>
上述のように、刃部61はダイヤモンド含有物により成形されている。このダイヤモンド含有物の一例として、焼結ダイヤモンド、多結晶体ダイヤモンド、天然単結晶ダイヤモンド、および合成単結晶ダイヤモンドが挙げられる。以下では、特に、焼結ダイヤモンドおよび多結晶体ダイヤモンドを説明する。
<1.4.1.焼結ダイヤモンド>
刃部61の成形に用いられる焼結ダイヤモンドは、ダイヤモンド粒子と、残部の結合相と、を有しており、隣り合うダイヤモンド粒子同士が互いに結合していることが好ましい。隣り合うダイヤモンド粒子同士が互いに結合していることによって、優れた耐摩耗性及び強度が得られる。
ここでは、焼結ダイヤモンドに含まれる材料のうち、ダイヤモンド粒子、並びに結合相に含まれる結合材および添加剤について、説明する。
ダイヤモンド粒子の平均粒子径は、好ましくは、0.1〜5.0(μm)(さらに好ましくは、0.5〜1.0(μm))の範囲である。
ここで、ダイヤモンドの平均粒子径が0.6μm未満となる場合、ダイヤモンド粒界においてクラックが伝播し易くなる。そのため、ダイヤモンドポイント60の寿命が短くなるという問題が生ずる。
焼結ダイヤモンド中におけるダイヤモンドの含有量は、好ましくは、65.0〜75.0(重量%)(さらに好ましくは、68.0〜72.0(重量%):83.0〜88.0(容量%))の範囲である。ここで、ダイヤモンドの含有量が68.0重量%未満の場合、焼結ダイヤモンドの耐摩耗性が低下する。
添加剤としては、例えば、タングステン、チタン、ニオブ、タンタルより選ばれる少なくとも1種以上の元素の超微粒子炭化物が好適に使用される。
ここで、焼結ダイヤモンド中における超微粒子炭化物の含有量は、好ましくは、3.0〜10.0(重量%)の範囲である。
さらに好ましくは、超微粒子炭化物の含有量は、6.0〜8.0(重量%)の範囲であり、超微粒子炭化物は、1.0〜4.0(重量%)の炭化チタンと、残部の炭化タングステンと、を含む。これにより、焼結過程におけるダイヤモンドの溶融−凝固時において、ダイヤモンド粒子の異常粒成長を抑制することができる。そのため、さらに耐捩り強度特性を向上させることができる。
結合材としては、通常、鉄族元素が好適に使用される。鉄族元素としては、例えばコバルト、ニッケル、鉄等が挙げられ、この中でもコバルトが好適である。また、焼結ダイヤモンド中における結合材の含有量は、好ましくは、ダイヤモンドおよび超微粒子炭化物の残部であり、さらに好ましくは、20〜25(重量%)の範囲である。
なお、本実施の形態における「重量%」は、EDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)により行われた元素分析に基づいて、求められている。一方、「容量%」は、空孔を含む焼結ダイヤモンドの全体積に対するダイヤモンド粒子の合計体積の割合をいう。
<1.4.2.多結晶体ダイヤモンド>
また、刃部61の成形に用いられる多結晶体ダイヤモンドは、微細な結晶粒組織、または非晶質を有するグラファイト型炭素物質を出発物質として、超高圧高温下で直接的にダイヤモンドに変換焼結されたものである。また、多結晶体ダイヤモンドは、実質的にダイヤモンドのみからなるものであり、多結晶体ダイヤモンドには、意図的に他の物質が添加されていない。
微細な結晶粒組織を有するグラファイト型炭素物質としては、例えば、平均粒子径0.5〜1(μm)のダイヤモンド粒子が、挙げられる。また、非晶質を有するグラファイト型炭素物質としては、アモルファスカーボン(amorphous Carbon:a−G)、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT)、またはフラーレンC60が、挙げられる。
<1.5.スクライブ方法>
ここでは、ダイヤモンド含有物のツールの一例として挙げられるダイヤモンドポイント60により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLを形成する手法を、図1、図2、および図7を参照しつつ説明する。
本手法では、ヘッド部30の動作によって、ダイヤモンドポイント60の外面のうち、角丸面67が、脆性材料基板4に接触させられる。そして、脆性材料基板4と接触する角丸面67から脆性材料基板4に、力(スクライブ荷重)が付与される。
続いて、ダイヤモンドポイント60の角丸面67が脆性材料基板4に接触させられ状態で、ダイヤモンドポイント60が脆性材料基板4に対して相対的に移動させられる。この場合において、X軸方向(矢印AR1方向:図1参照)には、ダイヤモンドポイント60が、Y軸方向(矢印AR2方向:図2参照)には、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10が、それぞれ移動させられる。
これにより、脆性材料基板4の表面には、ダイヤモンドポイント60の刃部61(図7参照)の軌跡に応じたスクライブラインSLが形成される。また、脆性材料基板4には、スクライブラインSLから垂直方向(Z軸方向)に延びる垂直クラックKが形成される。
ここで、ダイヤモンドポイント60と脆性材料基板4とが接触させられつつ、ダイヤモンドポイント60が脆性材料基板4に対して移動させられる場合、脆性材料基板4と接触する角丸面67は、図7に示すように、下向きに凸とされる。
また、スクライブ荷重は、好ましくは、0.3〜3.0(N)(さらに好ましくは、0.5〜2.5(N))の範囲である。また、脆性材料基板4に対するダイヤモンドポイント60の移動速度は、通常、50〜1200(mm/sec)、好ましくは、100〜800(mm/sec)の範囲である。なお、スクライブ荷重および移動速度の具体的な値は、脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<1.6.スクライブ原理>
図9は、角丸面を有しない刃部の形状の一例を示す正面図である。ここでは、図7および図9を参照しつつ、刃部61に角丸面67が成形されていない場合に形成されるスクライブラインSLおよび垂直クラックKと比較することによって、刃部61に角丸面67が成形されている場合におけるスクライブ原理を説明する。
まず、刃部61に角丸面67が成形されていない場合において、刃部61の稜線66により形成されるスクライブラインSLおよび垂直クラックKについて検討する。
図9に示すように、刃部61の稜線66が脆性材料基板4と接触させられた状態で、刃部61から脆性材料基板4に力が付与されつつ、刃部61が脆性材料基板4に対して移動させられると、脆性材料基板4が切削され、脆性材料基板4上にスクライブラインSLが形成される。また、刃部61から脆性材料基板4に付与される力によって、このスクライブラインSLから垂直方向に伸展する垂直クラックKが、脆性材料基板4に形成される。
このように、刃部61に角丸面67が成形されておらず、刃部61の稜線66によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される場合、スクライブラインSL付近の脆性材料基板4が切削される。その結果、脆性材料基板4の切り屑が発生するという問題が生じる。また、場合によってはスクライブラインSL付近(スクライブされた断面)にマイクロクラックが発生するという問題も生ずる。
次に、刃部61に角丸面67が成形されている場合において、刃部61の曲線部69により形成されるスクライブラインSLおよび垂直クラックKについて検討する。
図7に示すように、曲線部69の形状は、直線部68の形状と比較してなだらかである。すなわち、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きの絶対値は、先端面64に対する曲線部69の傾きの絶対値より大きくなるように設定されている。
これにより、刃部61の稜線66により脆性材料基板4が切削される場合(図9参照)と同等な力が、刃部61の角丸面67から脆性材料基板4に付与される場合であっても、脆性材料基板4は切削されない。
すなわち、刃部61の曲線部69が、脆性材料基板4と接触させられた状態で、刃部61から上述の同等な力(場合によっては、同等以上の力)が付与されと、角丸面67と接触する脆性材料基板4の接触部4aには、圧縮応力(スクライブラインSLの両側からスクライブラインSLに向かう応力)が発生する。続いて、刃部61が接触部4aから離隔する方向に移動させられると、この接触部4aには引張応力が発生する。そして、この接触部4aが刃部61の移動方向に沿って移動し、各接触部4aで圧縮応力および引張応力が発生することによって、トリガークラックを起点としたスクライブラインSLおよび垂直クラックKが脆性材料基板4に形成される。
このように、刃部61に角丸面67が成形されている場合、脆性材料基板4は切削されず、角丸面67から脆性材料基板4に大きなスクライブ荷重が付与できる。すなわち、刃部61に角丸面67が成形されており、刃部61の曲線部69によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される場合、刃部61の直線部68により形成される場合よりも大きな圧縮応力および引張応力を接触部4aに発生させることができる。そのため、切り屑およびマイクロクロックの発生を防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。
<1.7.本実施の形態のダイヤモンドポイントの利点>
以上のように、本実施の形態のダイヤモンドポイント60、およびこのダイヤモンドポイント60を有するスクライブ装置1において、刃部61は、図7および図8に示すように、先端面64と、複数の斜面65と、各々が曲面形状とされた複数の角丸面67と、を有している。
また、刃部61の各稜線66は、複数の斜面65のうち対応する2つの隣接斜面の間に形成された直線部68と、この2つの隣接斜面のそれぞれと接続する角丸面67上に位置しており、直線部68および先端面64を接続する曲線部69と、を有している。さらに、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きの絶対値は、先端面64に対する曲線部69の傾きの絶対値より大きくなるように設定されている。
また、ダイヤモンドポイント60により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLが形成される場合、脆性材料基板4と接触する角丸面67は、下向きに凸の状態とされる。
これにより、刃部61の角丸面67から脆性材料基板4に力が付与される場合、ダイヤモンドポイント60は、角丸面67と接触する脆性材料基板4の接触部4a(図7参照)を切削することなく、この接触部4aに大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。そして、この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板4にスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される。
そのため、ダイヤモンドポイント60は、スクライブラインSL付近に切り屑およびマイクロクロックが発生することを防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。また、ダイヤモンドポイント60の寿命を向上させることができる。
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1および第2の実施の形態のスクライブ装置1、100は、対応するスクライブユニット20、120の構成が互いに異なる点を除いては、同様な構成を有する。そこで、以下では、この相違点を中心に説明する。
なお、スクライブ装置1、100で同様な構成要素には、同一符号が付されており、この同一符号が付された構成要素は、第1の実施の形態で説明済みである。そのため、以下では、この同一符号に対応する構成要素の説明が、省略されている。
<2.1.スクライブ装置の構成>
図10および図11は、スクライビングホイール160付近の構成の一例を示す正面図および下面図である。図12は、キャスター効果を説明するための下面図である。以下では、図1、図2、および図10から図12を参照しつつ、スクライブ装置100の構成を説明する。
スクライブ装置100は、第1の実施の形態のスクライブ装置1と同様に、脆性材料基板4にスクライブラインを入れる装置である。図1および図2に示すように、スクライブ装置100は、主として、保持ユニット10と、スクライブユニット120と、撮像部ユニット80と、制御ユニット190と、を備えている。
保持ユニット10は、脆性材料基板4を保持しつつ移動させることによって、脆性材料基板4をスクライブユニット120に対して移動させる。図1に示すように、保持ユニット10は、基部10a上に設けられており、主として、テーブル11と、ボールねじ機構12と、モータ13と、を有している。
スクライブユニット120は、スクライビングホイール160を、脆性材料基板4に対し、圧接転動させることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成する。図1および図2に示すように、スクライブユニット120は、主として、ヘッド部130と、駆動部170と、を有している。
ヘッド部130は、保持されたスクライビングホイール160から脆性材料基板4の表面に対し、スクライブ荷重を付与する。図10に示すように、ヘッド部130は、ホルダ131を有している。また、ホルダ131は、スクライビングホイール160を回転自在に保持する要素である。図10に示すように、ホルダ131は、主として、ピン136と、支持枠体137と、旋回部138と、を有している。
ピン136は、スクライビングホイール160を貫通する貫通孔160aに、挿入された状態で固定された棒体である。ここで、貫通孔160aは、図10および図11に示すように、X軸と略平行な回転軸160bに沿って延びている。
支持枠体137は、図10に示すように、貫通孔160aの両開口(両端)を覆うように配置された構造物である。貫通孔160aの両端から突出するピン136は、支持枠体137に対して、回転可能に設置されている。したがって、ピン136に固定されたスクライビングホイール160は、支持枠体137に対して回転自在とされている。
旋回部138は、図10に示すように、支持枠体137の上部に設けられており、Z軸と略平行な回転軸138aを中心に支持枠体137を回転させる。図11に示すように、下面から見た旋回部138の回転軸138aの位置と、脆性材料基板4における保持ユニット10の設置位置160cとは、ズレている。
これにより、スクライビングホイール160の進行方向が、図12に示すように、矢印AR5(2点鎖線)方向から矢印AR6(実線)方向に変化すると、キャスター効果によりスクライビングホイール160には、回転軸138a周りのトルクが働く。そのため、スクライビングホイール160は矢印R2方向に回動し、スクライビングホイール160の位置は2点鎖線位置から実線位置に変化する。
このように、スクライビングホイール160の進行方向が変化して、スクライビングホイール160の姿勢が進行方向に対して角度θ1だけズレた場合であっても、スクライビングホイール160に矢印R2方向のトルクが働く。その結果、スクライビングホイール160の姿勢と、スクライビングホイール160の進行方向が略平行となるように、スクライビングホイール160が旋回する。
駆動部170は、ヘッド部130に保持されたスクライビングホイール160を矢印AR2方向に往復させる。図2に示すように、駆動部170は、主として、支柱71と、ガイドレール72と、モータ73と、を有している。
制御ユニット190は、スクライブ装置100の各要素の動作制御、およびデータ演算を実現する。図1および図2に示すように、制御ユニット190は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
<2.2.スクライビングホイールの構成>
図13および図14は、スクライビングホイール160の構成の一例を示す側面図および正面図である。図15は、図14の符号Aにおける部分拡大図である。スクライビングホイール160は、第1の実施の形態の刃部61と同様なダイヤモンド含有物(例えば、焼結ダイヤモンドまたや多結晶体ダイヤモンド)により成形されている。スクライビングホイール160は、脆性材料基板4に対して移動させられることによって、脆性材料基板4上にスクライブラインを形成するツールである。
図10ないし図14に示すように、スクライビングホイール160は、2つの円錐台の下底面(ただし、下底面は上底面より面積が大きい)が互いに対向するように配置されたものであり、略円盤形状(算盤珠形状)を有している。図13および図14に示すように、スクライビングホイール160は、主として、本体部161と、刃162と、を有している。
本体部161は、図13および図14に示すように、円盤状とされており、本体部161の中心付近には、回転軸160bに沿って本体部161を貫通する貫通孔160aが設けられている。また、本体部161の外周には、円環状の本体部161が設けられている。
刃162は、図13に示すように、回転軸160bを中心とした同心円状の内周および外周により形成される円環状体である。図14に示すように、刃162は、正面視V字状とされている。回転軸160bに沿った刃162の厚さTb(図14参照)は、回転軸160b側から刃先162aに向かうに従って、徐々に小さくなる。
刃先162aは、刃162の最外周部(すなわち、刃162のうち、回転軸160bからの距離が最大となり、刃162の厚さTbが最小となる部分)に沿って設けられている。図15に示すように、刃先162aは、主として、複数の斜面165(165a、165b)と、角丸面167と、を有している。
なお、図13に示すように、刃先162aの各部分には、意図して形成された凹凸がなく、刃先162aの各部分と回転軸160bとの距離は、同一となる。
複数(本実施の形態では2つ)の斜面165(165a、165b)は、図15に示すように、刃162の側面を形成する。また、角丸面167は、図15に示すように、斜面165(165a、165b)のそれぞれと接続されている。
<2.3.スクライビングホイールの寸法>
ここで、スクライビングホイール160の外径Dm(図14参照)は、通常、1〜10(mm)、好ましくは、1〜5(mm)(さらに好ましくは、1〜3(mm))の範囲である。スクライビングホイール160の外径Dmが1mmより小さい場合には、スクライビングホイール160の取り扱い性および耐久性が低下する。一方、スクライビングホイール160の外径Dmが5mmより大きい場合には、スクライブ時の垂直クラックKが脆性材料基板4に対して深く形成されないことがある。
また、スクライビングホイール160の厚さTh(図14参照)は、好ましくは、0.5〜1.2(mm)(さらに好ましくは、0.5〜1.1(mm))の範囲である。スクライビングホイール160の厚さThが0.5mmより小さい場合には、加工性および取り扱い性が低下することがある。一方、スクライビングホイール160の厚さThが12mmより大きい場合には、スクライビングホイール160の材料および製造のためのコストが高くなる。
また、刃162の刃先角θ2(図14参照)は、通常鈍角であり、好ましくは、90<θ2≦160(deg)(さらに好ましくは、100≦θ2≦140(deg))の範囲である。なお、刃先角θ2の具体的角度は、切断する脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<2.4.スクライビングホイールの成形手法>
ここでは、焼結ダイヤモンドまたは多結晶体ダイヤモンドからスクライビングホイール160を成形する手法について説明する。まず、本成形手法では、まず、好適厚さ(0.5〜1.2(mm))とされた多結晶体ダイヤモンドから、所望の半径となる円盤が切り取られる。
次に、回転軸160bに沿った刃162の厚さTbが回転軸160b側から刃先162aに向かうに従って徐々に小さくなるように、円盤の周縁部が削られる。これにより、円盤の周縁部に、正面視V字状の刃162が形成される。
<2.5.スクライブ方法>
ここでは、ダイヤモンド含有物のツールの一例として挙げられるスクライビングホイール160により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLを形成する手法を、図1、図2、および図15を参照しつつ、説明する。
本手法では、ヘッド部130の動作によって、スクライビングホイール160の外面のうち、角丸面167が、脆性材料基板4に接触させられる。そして、脆性材料基板4と接触する角丸面167から脆性材料基板4に、力(スクライブ荷重)が付与される。
続いて、スクライビングホイール160の角丸面167が脆性材料基板4に接触させられ状態で、スクライビングホイール160が脆性材料基板4に対して相対的に移動させられる。この場合において、X軸方向(矢印AR1方向:図1参照)には、スクライビングホイール160が、Y軸方向(矢印AR2方向:図2参照)には、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10が、それぞれ移動させられる。
これにより、スクライビングホイール160が脆性材料基板4上を回転させられ、刃先162aの角丸面167(図15参照)の軌跡に応じたスクライブラインSLが、脆性材料基板4上に形成される。また、脆性材料基板4には、スクライブラインSLから垂直方向(Z軸方向)に延びる垂直クラックKが形成される。
ここで、スクライブ荷重は、好ましくは、3〜30(N)(さらに好ましくは、5〜20(N))の範囲である。また、脆性材料基板4に対するスクライビングホイール160の移動速度は、通常、50〜1200(mm/sec)、好ましくは、50〜300(mm/sec)の範囲である。なお、スクライブ荷重および移動速度の具体的な値は、脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<2.6.スクライブ原理>
本実施の形態のスクライビングホイール160の刃先162aには、図15に示すように、角丸面167が成形されている。これにより、第1の実施の形態と同様に、脆性材料基板4は切削されず、刃先162aの角丸面167から脆性材料基板4に大きなスクライブ荷重が付与できる。すなわち、刃先162aに角丸面167が成形されており、この角丸面167によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される場合、大きな圧縮応力および引張応力を接触部4aに発生させることができる。そのため、切り屑およびマイクロクロックの発生を防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。
<2.7.本実施の形態におけるスクライビングホイールの利点>
以上のように、本実施の形態のスクライビングホイール160、およびこのスクライビングホイール160を有するスクライブ装置100において、図14に示すように、刃162の厚さTbは、本体部161の中心から刃先162aに向かって小さくなる。
また、図15に示すように、刃先162aは、刃162の側面を形成する2つの斜面165(165a、165b)のそれぞれと接続された角丸面167を有している。さらに、角丸面167は、曲面形状を有している。
これにより、刃先162aの角丸面167から脆性材料基板4に力が付与される場合、スクライビングホイール160は、角丸面167と接触する脆性材料基板4の接触部4a(図10参照)を切削することなく、この接触部4aに大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。そして、この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板4にスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される。
そのため、スクライビングホイール160は、第1の実施の形態のダイヤモンドポイント60と同様に、スクライブラインSL付近に切り屑およびマイクロクロックが発生することを防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。また、スクライビングホイール160の寿命を向上させることができる。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
(1)第1の実施の形態において、刃部61は、四角錐台形状を有するものとして説明したが、これに限定されるものでない。例えば、刃部61は、三角錐台形状を有するものであっても良いし、n角錐台形状(ただし、nは、5以上の整数)を有するものであっても良い。さらに、刃部61は、m角錐形状(ただし、mは、3以上の整数)を有するものであっても良い。
(2)また、第1および第2の実施の形態では、駆動部70、170の送り機構としてボールねじを使用したものが採用されているが(図2参照)、これに限定されるものでない。例えば、リニアモータ(リニアレール)等が送り機構として採用されても良い。
(3)さらに、第1の実施の形態においては駆動部70が、第2の実施の形態においては駆動部170が、それぞれヘッド部30、130を保持ユニット10に対して移動させるものとして説明したが、ヘッド部30、130の移動態様はこれに限定されるものでない。
例えば、ヘッド部30、130が固定され、保持ユニット10が矢印AR1方向(図1参照)に移動させられても良い。また、保持ユニット10が固定され、ヘッド部30、130がそれぞれ駆動部70、170により矢印AR2方向(図2参照)に移動させられても良い。さらに、ヘッド部30および保持ユニット10の両者が移動させられても良い。
このように、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10と、ダイヤモンドポイント60を把持するヘッド部30またはスクライビングホイール160を把持するヘッド部130と、は、少なくとも一方が他方に対して相対的に移動できれば十分である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
<実施例1>
図16は、スクライブされた脆性材料基板4の端面強度を評価するための試験方法を説明するための図である。図17は、実施例1および比較例1の試験条件を示す図である。図18は、実施例1および比較例1の試験結果を示す図である。図19は、角丸面67を有する刃部61(図7参照)によりスクライブされた脆性材料基板4の写真である。図20は、角丸面を有しない刃部(図9参照)によりスクライブされた脆性材料基板4の写真である。
ここで、実施例1では、スクライブされた脆性材料基板4の端面強度を評価する試験として、4点曲げ試験が採用されている。また、図16および図17に示すように、本試験では、上部支点95(95a、95b)間距離D1が10.0(mm)とされ、下部支点96(96a、96b)間距離D2が20.0mmとされ、スクライブ面を下向きにされた状態で、長辺側が矢印AR7方向に曲げられる。
図18に示すように、実施例1の破壊荷重の平均値は、比較例1の破壊荷重の平均値の約3倍となっている。すなわち、実施例1によりスクライブされた脆性材料基板4は、比較例1によりスクライブされた脆性材料基板4と比較して、強度が向上した。
また、比較例1(図20参照)では、スクライブラインSL付近に切り屑が発生しているが、実施例1では、スクライブラインSL付近に切り屑が発生していない。このように、実施例1では、比較例1と比較して脆性材料基板4に対して良好なスクライブが実行できた。
1、100 スクライブ装置
4 脆性材料基板
4a 接触部
10 保持ユニット
20、120 スクライブユニット
30、130 ヘッド部
60 ダイヤモンドポイント
61 刃部
62 把持部
64 先端面
65(65a〜65d) 斜面
66(66a〜66c) 稜線
67(67a〜67c) 角丸面
68(68b、68c) 直線部
69(69b、69c) 曲線部
70、170 駆動部
80 撮像部ユニット
90、190 制御ユニット
160 スクライビングホイール
161 本体部
162 刃
162a 刃先
165(165a、165b) 斜面
167 角丸面
K 垂直クラック
SL スクライブライン
ダイヤモンド含有物のツールにより、脆性材料基板上にスクライブラインを形成するスクライブ方法に関する。
ガラス基板上にスクライブラインを形成するために、ダイヤモンドポイントまたはダイヤモンドホイールによってガラス基板を切削する技術が、従来より知られている(例えば、特許文献1)。
特開2010−085791号公報
このように、特許文献1の技術では、ガラス基板が切削されるため、スクライブライン付近に切り屑が発生するという問題が生ずる。そして、特許文献1の技術では、場合によっては、スクライブされた断面にマイクロクラック(細かい亀裂)が発生するという問題が生ずる。
そこで、本発明では、脆性材料基板に良好なスクライブラインを形成することができるスクライブ方法を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するため、請求項1の発明は、ダイヤモンド含有物からなる刃部を備えるツールによって脆性材料基板上にスクライブラインを形成する方法であって、(a)前記刃部を前記脆性材料基板と接触させることによって、前記ツールから前記脆性材料基板に力を付与する工程と、(b)前記ツールの前記刃部を前記脆性材料基板に接触させた状態で、前記ツールを前記脆性材料基板に対して相対的に移動させることによって、前記脆性材料基板にスクライブラインを形成する工程と、を備え、前記刃部の外面が曲面形状の角丸面を有し、前記工程(a)においては、前記角丸面を前記脆性材料基板と接触させることによって、前記ツールから前記脆性材料基板に力を付与し、前記工程(b)においては、前記角丸面が下向きに凸となる状態を保って前記ツールを前記脆性材料基板に対して相対的に移動させる、ことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のスクライブ方法において、前記ツールが、円柱状または角柱状の棒体である把持部の一端に前記刃部が設けられたダイヤモンドポイントであることを特徴とする
また、請求項3の発明は、請求項2に記載のスクライブ方法において、前記ダイヤモンドポイントとして、前記刃部が、先端面と、各々が前記先端面と接続する複数の斜面と、各々が、前記複数の斜面のうちの2つである隣接斜面と前記先端面とに囲まれた、複数の前記角丸面と、を有し、前記刃部の各稜線が、前記2つの隣接斜面の交線である直線部と、前記2つの隣接斜面のそれぞれと接続する角丸面上に位置しており、前記直線部および前記先端面に接続する曲線部と、を有するとともに、前記刃部の各稜線において、前記先端面に対する前記直線部の傾きは、前記先端面が水平であるときに前記先端面に対する前記曲線部の傾きよりも大きくなるように設定されている、ダイヤモンドポイントを用いることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項3に記載のスクライブ方法において、前記ダイヤモンドポイントとして、前記ダイヤモンド含有物が、多結晶体ダイヤモンドであり、前記多結晶体ダイヤモンドが、微細な結晶粒組織または非晶質、を有するグラファイト型炭素物質を出発物質として、超高圧高温下で直接的にダイヤモンドに変換焼結されており、実質的にダイヤモンドのみからなる、ダイヤモンドポイントを用いることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項3に記載のスクライブ方法において、前記ダイヤモンドポイントとして、前記ダイヤモンド含有物が、65.0重量%〜75.0重量%の含有量のダイヤモンドと、3.0重量%〜10.0重量%の含有量の超微粒子炭化物と、残部の結合材と、を含む焼結ダイヤモンドであり、前記ダイヤモンドの平均粒子径が0.1μm〜5.0μmであり、前記結合材がコバルトを主成分とする鉄系金属である、ダイヤモンドポイントを用いることを特徴とする。
また、請求項6の発明は、請求項5に記載のスクライブ方法において、前記ダイヤモンドポイントとして、前記焼結ダイヤモンドにおける前記超微粒子炭化物の含有量が6.0重量%〜8.0重量%であり、前記超微粒子炭化物が、1.0重量%〜4.0重量%の炭化チタンと、残部の炭化タングステンと、を含む、ダイヤモンドポイントを用いることを特徴とする。
また、請求項の発明は、請求項1に記載のスクライブ方法において、前記ツールが、円盤状の本体部の外周に前記刃部が設けられたスクライビングホイールであることを特徴とする。
請求項1から請求項に記載の発明において、ダイヤモンド含有物からなる刃部を備えるツールのうち、脆性材料基板と接触する刃部の角丸面は、曲面形状とされている。また、工程(b) により、ツールと脆性材料基板とが接触しつつ、ツールが脆性材料基板に対して移動させられる場合、刃部の角丸面は、下向きに凸の状態とされる。
請求項1から請求項7に記載の発明によれば、ツールを脆性材料基板に接触させつつ移動させると、ツールの角丸面と接触する脆性材料基板の接触部を切削することなく、この接触部に大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板にスクライブラインおよび垂直クラックが形成される。これにより、スクライブライン付近に切り屑およびマイクロクラックが発生することを防止でき、脆性材料基板を良好にスクライブできる。
本発明の第1および第2の実施の形態におけるスクライブ装置の全体構成の一例を示す正面図である。 本発明の第1および第2の実施の形態におけるスクライブ装置の全体構成の一例を示す側面図である。 ヘッド部付近の構成の一例を示す正面図である。 ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。 ホルダ揺動部付近の構成の一例を示す側面図である。 第1の実施の形態におけるダイヤモンドポイントの構成の一例を示す側面図である。 第1の実施の形態における刃部の形状の一例を示す正面図である。 図7における刃部の稜線を説明するための正面図である。 角丸面を有しない刃部の形状の一例を示す正面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイール付近の構成の一例を示す正面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイール付近の構成の一例を示す下面図である。 キャスター効果を説明するための下面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイールの一例を示す側面図である。 第2の実施の形態におけるスクライビングホイールの一例を示す正面図である。 図14の符号Aにおける部分拡大図である。 スクライブされた脆性材料基板の端面強度を評価するための試験方法を説明するための図である。 実施例1および比較例1の試験条件を説明するための図である。 実施例1および比較例1の試験結果を示す図である。 図7に示す刃部によりスクライブされた脆性材料基板の写真である。 図9に示す刃部によりスクライブされた脆性材料基板の写真である。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<1.第1の実施の形態>
<1.1.スクライブ装置の構成>
図1および図2は、それぞれ第1の実施の形態におけるスクライブ装置1の全体構成の一例を示す正面図および側面図である。スクライブ装置1は、例えばガラス基板またはセラミックス基板等のように、脆性材料で形成された基板(以下、単に、「脆性材料基板」とも呼ぶ)4の表面に、スクライブライン(切りすじ:縦割れ)を入れる装置である。
図1および図2に示すように、スクライブ装置1は、主として、保持ユニット10と、スクライブユニット20と、撮像部ユニット80と、制御ユニット90と、を有している。なお、図1および以降の各図には、それらの方向関係を明確にすべく、必要に応じて適宜、Z軸方向を鉛直方向とし、XY平面を水平面とするXYZ直交座標系が付されている。
ここで、第1および第2の実施の形態において、
(1)スクライブ装置1(第2の実施の形態の場合は、スクライブ装置100)により、脆性材料基板4の表面にスクライブラインSLおよび垂直クラックK(後述する図7および図10参照)が形成され(スクライブ工程)、
(2)次に、応力付与により垂直クラックKがさらに伸展させられ、脆性材料基板4が切断される(ブレーク工程)、
手法を、「割断」と呼ぶ。
一方、スクライブ工程のみによって(すなわち、ブレーク工程を実行することなく)、垂直クラックKを脆性材料基板4のスクライブラインSLの主面から逆側の主面まで伸展させ、脆性材料基板4を切断する手法を、「分断」と呼ぶ。
また、本実施の形態のスクライブ方法により割断または分断可能な脆性材料基板4の材質の例としては、ガラス、セラミック、シリコン、またはサファイア等が挙げられる。特に近年、通信機器関連の高周波モジュールに用いる基板として、HTCC(High Temperature Co-fired Ceramics)から、比較的加工のしやすいLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)への移行が加速している。そのため、本実施の形態のスクライブ方法は、益々有効に用いられることになる。
保持ユニット10は、脆性材料基板4を保持しつつ移動させることによって、脆性材料基板4をスクライブユニット20に対して移動させる。図1に示すように、保持ユニット10は、基部10a上に設けられており、主として、テーブル11と、ボールねじ機構12と、モータ13と、を有している。
ここで、基部10aは、例えば略直方体状の石定盤により形成されており、その上面(保持ユニット10と対向する面)は、平坦加工されている。これにより、基部10aの熱膨張を低減でき、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を良好に移動させることができる。
テーブル11は、載置された脆性材料基板4を吸着保持する。また、テーブル11は、保持された脆性材料基板4を、矢印AR1方向(X軸プラスまたはマイナス方向:以下、単に、「進退方向」とも呼ぶ)に進退させるとともに、矢印R1方向に回転させる。図1および図2に示すように、テーブル11は、主として、吸着部11aと、回転台11bと、移動台11cと、を有している。
吸着部11aは、回転台11bの上側に設けられている。図1および図2に示すように、吸着部11aの上面には、脆性材料基板4が載置可能とされている。また、吸着部11aの上面には、複数の吸着溝(図示省略)が格子状に配置されている。吸着部11aの上面に脆性材料基板4が載置された状態で、各吸着溝内の雰囲気が排気(吸引)されることによって、脆性材料基板4は、吸着部11aに対して吸着される。
回転台11bは、吸着部11aの下側に設けられており、Z軸と略平行な回転軸11dを中心に吸着部11aを回転させる。また、移動台11cは、回転台11bの下側に設けられており、進退方向に沿って、吸着部11aおよび回転台11bを移動させる。
これにより、テーブル11に吸着保持された脆性材料基板4は、矢印AR1方向に進退させられるとともに、吸着部11aの進退動作にともなって移動する回転軸11dを中心に回転させられる。
ボールねじ機構12は、テーブル11の下側に配置されており、テーブル11を矢印AR1方向に進退させる。図1および図2に示すように、ボールねじ機構12は、主として、送りネジ12aと、ナット12bと、を有している。
送りネジ12aは、テーブル11の進退方向に沿って延びる棒体である。送りネジ12aの外周面には、螺旋状の溝(図示省略)が設けられている。また、送りネジ12aの一端は支持部14aにより、送りネジ12aの他端は支持部14bにより、それぞれ回転可能に支持されている。さらに、送りネジ12aは、モータ13と連動連結されており、モータ13が回転すると、その回転方向に送りネジ12aが回転する。
ナット12bは、送りネジ12aの回転にしたがい、不図示のボールの転がり運動によって、矢印AR1方向に進退する。図1および図2に示すように、ナット12bは、移動台11cの下部に固定されている。
これにより、モータ13が駆動させられ、モータ13の回転力が送りネジ12aに伝達されると、ナット12bは、矢印AR1方向に進退する。その結果、ナット12bが固定されているテーブル11は、ナット12bと同様に矢印AR1方向に進退する。
一対のガイドレール15、16は、進行方向におけるテーブル11の移動を規制する。図2に示すように、一対のガイドレール15、16は、基部10a上において、矢印AR2方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
複数(本実施の形態では2つ)の摺動部17(17a、17b)は、ガイドレール15に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部17(17a、17b)は、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
複数(本実施の形態では2つ:ただし、図示の都合上、摺動部18aのみ記載)の摺動部18は、ガイドレール16に沿って矢印AR1方向に摺動自在とされている。図1および図2に示すように、各摺動部18は、摺動部17(17a、17b)と同様に、移動台11cの下部において、矢印AR1方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
以上の構成を有することで、保持ユニット10においては、モータ13の回転力がボールねじ機構12に付与されると、テーブル11、一対のガイドレール15、16に沿って移動する。そのため、進退方向におけるテーブル11の直進性を確保することができる。
スクライブユニット20は、ダイヤモンドポイント60(後述する図3参照)を用いることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成する。図1および図2に示すように、スクライブユニット20は、主として、ヘッド部30と、駆動部70と、を有している。
ヘッド部30は、保持されたダイヤモンドポイント60から脆性材料基板4の表面に対し、押圧力(以下、単に、「スクライブ荷重」とも呼ぶ)を付与する。また、ヘッド部30は、ダイヤモンドポイント60の刃部61(図3参照)を脆性材料基板4に対し接触させた状態でダイヤモンドポイント60を移動させることによって、脆性材料基板4上にスクライブラインを形成する。なお、ヘッド部30の詳細な構成については、後述する。
駆動部70は、ヘッド部30に保持されたダイヤモンドポイント60を矢印AR2方向(Y軸プラスまたはマイナス方向)に沿って往復移動させる。図2に示すように、駆動部70は、主として、支柱71と、レール72と、モータ73と、を有している。
複数(本実施の形態では2本)の支柱71(71a、71b)は、基部10aから上下方向(Z軸方向)に延びる。図2に示すように、各ガイドレール72は、支柱71a、71bの間に挟まれた状態で、これら支柱71a、71bに対して固定される。
複数(本実施の形態では2本)のガイドレール72は、加工方向におけるヘッド部30の移動を規制する。図2に示すように、複数のガイドレール72は、上下方向に所定距離だけ隔てて固定されている。
モータ73は、不図示の送り機構(例えば、ボールねじ機構)と連動連結されている。これにより、モータ73が回転すると、ヘッド部30は、複数のガイドレール72に沿って矢印AR2方向に往復する。
撮像部ユニット80は、保持ユニット10に保持された脆性材料基板4を撮像する。図2に示すように、撮像部ユニット80は、複数のカメラ85(85a、85b)を有している。
複数(本実施の形態では2台)のカメラ85(85a、85b)は、図1および図2に示すように、保持ユニット10の上方に配置されている。各カメラ85(85a、85b)は、脆性材料基板4上に形成された特徴的な部分(例えば、アライメントマーク(図示省略))の画像を撮像する。そして、各カメラ85(85a、85b)により撮像された画像に基づいて、脆性材料基板4の位置および姿勢が求められる。
制御ユニット90は、スクライブ装置1の各要素の動作制御、およびデータ演算を実現する。図1および図2に示すように、制御ユニット90は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
ROM(Read Only Memory)91は、いわゆる不揮発性の記憶部であり、例えば、プログラム91aが格納されている。なお、ROM91としては、読み書き自在の不揮発性メモリであるフラッシュメモリが使用されてもよい。
RAM(Random Access Memory)92は、揮発性の記憶部であり、例えば、CPU93の演算で使用されるデータが格納される。CPU(Central Processing Unit)93は、ROM91のプログラム91aに従った制御(例えば、駆動部70によるホルダ31の往復動作、および昇降部50によるホルダ31(後述する図3参照)の昇降動作等の制御)、および種々のデータ演算処理等を実行する。
<1.2.ヘッド部の構成>
図3は、ヘッド部30付近の構成の一例を示す正面図である。図4および図5のそれぞれは、ホルダ揺動部34付近の構成の一例を示す側面図である。図3から図5に示すように、ヘッド部30は、主として、ホルダ31と、ホルダ揺動部34と、ホルダジョイント35と、昇降部50と、ダイヤモンドポイント60と、を有している。
ホルダ31は、ヘッド部30にダイヤモンドポイント60を固定する。図3から図5に示すように、ホルダ31は、ダイヤモンドポイント60の刃部61が脆性材料基板4側となるように、ダイヤモンドポイント60の把持部62を把持する。
ダイヤモンドポイント60は、脆性材料基板4に対して移動させられることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成するツール(工具)である。なお、ダイヤモンドポイント60の詳細な構成については、後述する。
ホルダ揺動部34は、ダイヤモンドポイント60の刃部61を、揺動軸36a、および/または、回転軸38aを中心に揺動させる。図4および図5に示すように、ホルダ揺動部34は、主として、ホルダジョイント35と、ホルダ取付ブロック40と、を有している。
ホルダジョイント35は、ホルダ31およびホルダ取付ブロック40を連動連結する。図3から図5に示すように、ホルダジョイント35は、旋回部38の下端に固定されており、主として、取付片36と、旋回部38と、を有している。
取付片36は、ホルダジョイント35の下部にホルダ31を取り付けるための取付要素である。図3から図5に示すように、取付片36は、ホルダジョイント35の下端に設けられており、取付片36の形状は、側面視略L字状とされている。
また、図3から図5に示すように、取付片36は、揺動軸36aを有している。揺動軸36aは、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)と略垂直な方向(矢印AR4方向:以下、単に、「軸心方向」とも呼ぶ)に延びる。そして、ホルダ31は、取付片36に設けられた揺動軸36aを中心に揺動する。
旋回部38は、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)に沿った回転軸38aを中心に回転可能とされている。図3に示すように、旋回部38は、ベアリング46、47の内径面と対向するように、挿入されている。
ホルダ取付ブロック40は、上述のようにホルダジョイント35を回動可能に支持する。図3に示すように、ホルダ取付ブロック40は、ホルダジョイント35の取付片36の上方、およびホルダ31の上方に設けられており、主として、ベアリング46、47と、固定部49と、を有している。
ベアリング46、47は、取付ブロック本体40a内に、かつ、上からこの順番に、配置されている。ベアリング46、47は、ホルダジョイント35の旋回部38を軸支する。
固定部49は、ベアリング46、47により回動自在にされた旋回部38を、ホルダ取付ブロック40に対して固定する。これにより、回転軸38a周りにおけるホルダジョイント35の回動角が設定できる。
なお、固定部49としては、例えば、ネジ等の締結部材が用いられても良い。また、ベアリングの個数は2つに限定されず、例えば、1つであっても良いし、3つ以上であっても良い。
昇降部50は、ホルダ31を保持ユニット10と近接する方向に移動させることによって、ホルダ31に固定されたダイヤモンドポイント60の刃部61を脆性材料基板4に突き当てる。図3に示すように、昇降部50は、主として、シリンダ51と、伝達部52と、を有している。
シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40側に上下方向(Z軸プラスまたはマイナス方向)に沿った駆動力を付与する駆動力供給源である。図3に示すように、シリンダ51は、ホルダ取付ブロック40の上方に配置されており、主として、本体部51aと、ロッド51bと、を有している。
ロッド51bは、本体部51aに対して進退可能とされている。図3に示すように、ロッド51bの下端は、伝達部52に連結されている。したがって、シリンダ51が駆動し、ロッド51bが本体部51aから進出することによって、伝達部52は、ロッド51bの下端により下方向に押し下げられる。
伝達部52は、シリンダ51およびホルダ取付ブロック40の間に設けられており、シリンダ51からの駆動力をホルダ取付ブロック40に伝達する。
ガイド機構53は、図3に示すように、主として、ガイドレール53aと、ガイドレール53aに沿って上下方向に摺動自在とされたガイドブロック53bと、を有している。また、取付プレート54は、ガイド機構53およびホルダ取付ブロック40の間に挟まれた板材である。ホルダ取付ブロック40は、取付プレート54を介してガイドブロック53bに固定されている。これにより、ホルダ取付ブロック40に上下方向に沿った駆動力が付与されると、ガイド機構53は、ガイドブロック53bの昇降方向に沿ってホルダ取付ブロック40をガイドする。
回転軸56は、図3から図5に示すように、ダイヤモンドポイント60の延伸方向(矢印AR3方向)と略垂直であり、かつ、取付片36に設けられた揺動軸36aと略垂直な方向に延びる。これにより、回転軸56周りにおけるホルダ取付ブロック40の回転角が設定できる。ゆえに、ホルダ31に固定されたダイヤモンドポイント60の姿勢がYZ平面内で調整できる。
<1.3.ダイヤモンドポイントの構成>
図6は、ダイヤモンドポイント60の構成の一例を示す側面図である。図7は、ダイヤモンドポイント60の刃部61の形状の一例を示す正面図である。図8は、図7における刃部61の稜線66を説明するための正面図である。図6に示すように、ダイヤモンドポイント60は、主として、刃部61と、把持部62と、を有している。
ダイヤモンドポイント60は、図6に示すように、円柱状または角柱状の棒体である把持部62の一端62aに刃部61が設けられたものである。ホルダ31により把持部62が把持されることによって、ダイヤモンドポイント60は、ヘッド部30に取り付けられる。
ここで、本実施の形態において、把持部62の直径は、2mm〜6mmであるのが好ましく、把持部62の長さは、10mm〜70mmであるのが好ましい
刃部61は、ダイヤモンド含有物により成形されている。刃部61が脆性材料基板4に突き当てられることによって、脆性材料基板4にスクライブラインが形成される。図7および図8に示すように、刃部61は、四角錐台状成しており、主として、先端面64と、複数の斜面65(65a〜65d)と、複数の角丸面67(67a〜67d:ただし、角丸面67dは図示の都合上省略)と、を有している。そして、隣接する2つの斜面65により、刃部61の稜線66が形成されている。
複数の斜面65(65a〜65d)は、図7および図8に示すように、四角錐台状である刃部61の側面を形成する。各斜面65(65a〜65d)は、台形状の平面とされている。
複数の角丸面67(67a〜67d)は、先端面64の各角部に形成されており、曲面状を成している。また、各角丸面67は、複数の斜面65のうち対応する隣接斜面65と、先端面64と、に囲まれている。例えば、図7に示すように、角丸面67aは、互いに隣接する斜面65a、65bと、先端面64と、に囲繞されている。
ここで、本実施の形態において、刃部61の各稜線66は、2つの隣接する斜面65の間に形成された線分である(2つの隣接する斜面65の交線である)直線部68と、この隣接する斜面65のそれぞれと接続する角丸面67上に位置しており、直線部68および先端面64接続する曲線部69と、を有している。
例えば、図7および図8に示すように、稜線66bは、直線部68bおよび曲線部69bを有している。直線部68bは、隣接する斜面65a、65dの間に形成された線分(斜面65a、65dの交線)である。一方、曲線部69bは、直線部68bおよび先端面64接続する円弧状の曲線である。
また、図8に示すように、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きは、先端面64が水平であるときに先端面64に対する曲線部69の傾き(すなわち、曲線部69上の各位置における接線の傾き)より大きくなるように設定されている。
なお、本実施の形態において、把持部62の取付位置付近(先端面64と逆側に位置する四角錐台の底面)における刃部61の大きさは、0.5mm角〜3.0mm角であるのが好ましく、0.8mm角〜2.0mm角であるのがさらに好ましい
<1.4.刃部に含まれる材料>
上述のように、刃部61はダイヤモンド含有物により成形されている。このダイヤモンド含有物の一例として、焼結ダイヤモンド、多結晶体ダイヤモンド、天然単結晶ダイヤモンド、および合成単結晶ダイヤモンドが挙げられる。以下では、特に、焼結ダイヤモンドおよび多結晶体ダイヤモンドを説明する。
<1.4.1.焼結ダイヤモンド>
刃部61の成形に用いられる焼結ダイヤモンドは、ダイヤモンド粒子と、残部の結合相と、を有しており、隣り合うダイヤモンド粒子同士が互いに結合していることが好ましい。隣り合うダイヤモンド粒子同士が互いに結合していることによって、優れた耐摩耗性及び強度が得られる。
ここでは、焼結ダイヤモンドに含まれる材料のうち、ダイヤモンド粒子、並びに結合相に含まれる結合材および添加剤について、説明する。
ダイヤモンド粒子は、その平均粒子径が0.1μm〜5.0μmであるのが好ましく、0.5μm〜1.0μmであるのがさらに好ましい
ここで、ダイヤモンドの平均粒子径が0.6μm未満となる場合、ダイヤモンド粒界においてクラックが伝播し易くなる。そのため、ダイヤモンドポイント60の寿命が短くなるという問題が生ずる。
好ましくは、焼結ダイヤモンド中におけるダイヤモンドの含有量は、65.0重量%〜75.0重量%(さらに好ましくは、68.0重量%〜72.0重量%:83.0容量%〜88.0容量%)である。ここで、ダイヤモンドの含有量が68.0重量%未満の場合、焼結ダイヤモンドの耐摩耗性が低下する。
添加剤としては、例えば、タングステン、チタン、ニオブ、タンタルより選ばれる少なくとも1種以上の元素の超微粒子炭化物が好適に使用される。
好ましくは、焼結ダイヤモンド中における超微粒子炭化物の含有量は、3.0重量%〜10.0重量%である。
さらに好ましくは、超微粒子炭化物の含有量は、6.0重量%〜8.0重量%であり、超微粒子炭化物は、1.0重量%〜4.0重量%の炭化チタンと、残部の炭化タングステンと、を含む。これにより、焼結過程におけるダイヤモンドの溶融−凝固時において、ダイヤモンド粒子の異常粒成長を抑制することができる。そのため、さらに耐捩り強度特性を向上させることができる。
結合材としては、通常、鉄族元素が好適に使用される。鉄族元素としては、例えばコバルト、ニッケル、鉄等が挙げられ、この中でもコバルトが好適である。また、好ましくは、結合材は、焼結ダイヤモンド中においてダイヤモンドおよび超微粒子炭化物の残部であり、さらに好ましくは、その含有量は20重量%〜25重量%である。
なお、本実施の形態における「重量%」で表される含有量は、EDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)により行われた元素分析に基づいて、求められている。一方、「容量%」で表される含有量は、空孔を含む焼結ダイヤモンドの全体積に対するダイヤモンド粒子の合計体積の割合をいう。
<1.4.2.多結晶体ダイヤモンド>
また、刃部61の成形に用いられる多結晶体ダイヤモンドは、微細な結晶粒組織、または非晶質を有するグラファイト型炭素物質を出発物質として、超高圧高温下で直接的にダイヤモンドに変換焼結されたものである。また、多結晶体ダイヤモンドは、実質的にダイヤモンドのみからなるものであり、多結晶体ダイヤモンドには、意図的に他の物質が添加されていない。
微細な結晶粒組織を有するグラファイト型炭素物質としては、例えば、平均粒子径0.5μm〜1μmのダイヤモンド粒子が、挙げられる。また、非晶質を有するグラファイト型炭素物質としては、アモルファスカーボン(amorphous Carbon:a−G)、カーボンナノチューブ(Carbon Nanotube:CNT)、またはフラーレンC60が、挙げられる。
<1.5.スクライブ方法>
ここでは、ダイヤモンド含有物のツールの一例として挙げられるダイヤモンドポイント60により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLを形成する手法を、図1、図2、および図7を参照しつつ説明する。
本手法では、ヘッド部30の動作によって、ダイヤモンドポイント60の外面のうち、角丸面67が、脆性材料基板4に接触させられる。そして、脆性材料基板4と接触する角丸面67から脆性材料基板4に、力(スクライブ荷重)が付与される。
続いて、ダイヤモンドポイント60の角丸面67が脆性材料基板4に接触させられ状態で、ダイヤモンドポイント60が脆性材料基板4に対して相対的に移動させられる。この場合において、X軸方向(矢印AR1方向:図1参照)には、ダイヤモンドポイント60が、Y軸方向(矢印AR2方向:図2参照)には、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10が、それぞれ移動させられる。
これにより、脆性材料基板4の表面には、ダイヤモンドポイント60の刃部61(図7参照)の軌跡に応じたスクライブラインSLが形成される。また、脆性材料基板4には、スクライブラインSLから垂直方向(Z軸方向)に延びる垂直クラックKが形成される。
ここで、ダイヤモンドポイント60と脆性材料基板4とが接触させられつつ、ダイヤモンドポイント60が脆性材料基板4に対して移動させられる場合、脆性材料基板4と接触する角丸面67は、図7に示すように、下向きに凸とされる。
また、スクライブ荷重は、0.3〜3.0Nに設定されるのが好ましく、0.5〜2.5Nに設定されるのがより好ましい。また、脆性材料基板4に対するダイヤモンドポイント60の移動速度は、通常、50mm/sec〜1200mm/secに設定され、好ましくは、100mm/sec〜800mm/secに設定される。なお、スクライブ荷重および移動速度の具体的な値は、脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<1.6.スクライブ原理>
ここでは、図7および図9を参照しつつ、刃部61に角丸面67が成形されている場合におけるスクライブ原理を、刃部61に角丸面67が成形されていない場合と比較しつつ説明する。図9は、刃部61が角丸面67を有さず、稜線66の直線部68が先端面64の角部にまで達する形状を有する場合(稜線66が曲線部69を有さない場合)の、刃部61の正面図である。
まず、刃部61に角丸面67が成形されていない場合スクライブラインSLおよび垂直クラックKの形成態様について説明する。
係る場合、図9に示すように、刃部61の稜線66が脆性材料基板4と接触させられた状態で、刃部61から脆性材料基板4に力が付与されつつ、刃部61が脆性材料基板4に対して移動させられると、脆性材料基板4が直線部68のみからなる刃部61の稜線66によって切削されつつ、脆性材料基板4上にスクライブラインSLが形成される。また、刃部61から脆性材料基板4に付与される力によって、このスクライブラインSLから垂直方向に伸展する垂直クラックKが、脆性材料基板4に形成される。
すなわち、刃部61が角丸面67を有さない場合、スクライブラインSL付近の脆性材料基板4が切削される。その結果、脆性材料基板4の切り屑が発生するという問題が生じる。また、場合によってはスクライブラインSL付近(スクライブされた断面)にマイクロクラックが発生するという問題も生ずる。
次に、刃部61に角丸面67が成形されている場合スクライブラインSLおよび垂直クラックKの形成態様について説明する。
図7に示すように、曲線部69の形状は、直線部68の形状と比較してなだらかである。すなわち、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きは、先端面64に対する曲線部69の傾きより大きくなるように設定されている。
これにより、刃部61が角丸面67を有さない場合(図9参照)において脆性材料基板4が切削される大きさの力と同等の力が、刃部61の角丸面67から脆性材料基板4に付与される場合であっても、脆性材料基板4は切削されない。
すなわち、刃部61に角丸面67が成形されている場合、刃部61の曲線部69が、脆性材料基板4と接触させられた状態で、刃部61から上述の同等な力(場合によっては、同等以上の力)が付与されと、角丸面67と接触する脆性材料基板4の接触部4aには、圧縮応力(スクライブラインSLの両側からスクライブラインSLに向かう応力)が発生する。続いて、刃部61が接触部4aから離隔する方向に移動させられると、この接触部4aには引張応力が発生する。そして、この接触部4aが刃部61の移動方向に沿って移動し、各接触部4aで圧縮応力および引張応力が発生することによって、トリガークラックを起点としたスクライブラインSLおよび垂直クラックKが脆性材料基板4に形成される。
このように、刃部61に角丸面67が成形されている場合、脆性材料基板4は切削されず、角丸面67から脆性材料基板4に大きなスクライブ荷重が付与できる。すなわち、刃部61に角丸面67が成形されている場合、刃部61の稜線66の曲線部69によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成されるので、刃部61の稜線66が曲線部69を有しておらず直線部68によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される場合よりも大きな圧縮応力および引張応力を接触部4aに発生させることができる。そのため、切り屑およびマイクロクラックの発生を防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。
<1.7.本実施の形態のダイヤモンドポイントの利点>
以上のように、本実施の形態のスクライブ装置1に備わるダイヤモンドポイント60おいて、刃部61は、図7および図8に示すように、先端面64と、複数の斜面65と、各々が曲面形状とされた複数の角丸面67と、を有している。
また、刃部61の各稜線66は、複数の斜面65のうち対応する2つの隣接斜面の間に形成された直線部68と、この2つの隣接斜面のそれぞれと接続する角丸面67上に位置しており、直線部68および先端面64を接続する曲線部69と、を有している。さらに、刃部61の各稜線66において、先端面64に対する直線部68の傾きは、先端面64に対する曲線部69の傾きより大きくなるように設定されている。
また、ダイヤモンドポイント60により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLが形成される場合、脆性材料基板4と接触する角丸面67は、下向きに凸の状態とされる。
これにより、刃部61の角丸面67から脆性材料基板4に力が付与される場合、ダイヤモンドポイント60は、角丸面67と接触する脆性材料基板4の接触部4a(図7参照)を切削することなく、この接触部4aに大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。そして、この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板4にスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される。
ゆえに、ダイヤモンドポイント60は、スクライブラインSL付近に切り屑およびマイクロクラックが発生することを防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。また、ダイヤモンドポイント60の寿命を向上させることができる。
<2.第2の実施の形態>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。第1および第2の実施の形態のスクライブ装置1、100は、対応するスクライブユニット20、120の構成が互いに異なる点を除いては、同様な構成を有する。そこで、以下では、この相違点を中心に説明する。
なお、スクライブ装置1、100で同様な構成要素には、同一符号が付されており、この同一符号が付された構成要素は、第1の実施の形態で説明済みである。そのため、以下では、この同一符号に対応する構成要素の説明が、省略されている。
<2.1.スクライブ装置の構成>
図10および図11は、スクライビングホイール160付近の構成の一例を示す正面図および下面図である。図12は、キャスター効果を説明するための下面図である。以下では、図1、図2、および図10から図12を参照しつつ、スクライブ装置100の構成を説明する。
スクライブ装置100は、第1の実施の形態のスクライブ装置1と同様に、脆性材料基板4にスクライブラインを入れる装置である。図1および図2に示すように、スクライブ装置100は、主として、保持ユニット10と、スクライブユニット120と、撮像部ユニット80と、制御ユニット190と、を備えている。
保持ユニット10は、脆性材料基板4を保持しつつ移動させることによって、脆性材料基板4をスクライブユニット120に対して移動させる。図1に示すように、保持ユニット10は、基部10a上に設けられており、主として、テーブル11と、ボールねじ機構12と、モータ13と、を有している。
スクライブユニット120は、スクライビングホイール160を、脆性材料基板4に対し、圧接転動させることによって、脆性材料基板4にスクライブラインを形成する。図1および図2に示すように、スクライブユニット120は、主として、ヘッド部130と、駆動部170と、を有している。
ヘッド部130は、保持されたスクライビングホイール160から脆性材料基板4の表面に対し、スクライブ荷重を付与する。図10に示すように、ヘッド部130は、ホルダ131を有している。また、ホルダ131は、スクライビングホイール160を回転自在に保持する要素である。図10に示すように、ホルダ131は、主として、ピン136と、支持枠体137と、旋回部138と、を有している。
ピン136は、スクライビングホイール160を貫通する貫通孔160aに、挿入された状態で固定された棒体である。ここで、貫通孔160aは、図10および図11に示すように、X軸と略平行な回転軸160bに沿って延びている。
支持枠体137は、図10に示すように、貫通孔160aの両開口(両端)を覆うように配置された構造物である。貫通孔160aの両端から突出するピン136は、支持枠体137に対して、回転可能に設置されている。したがって、ピン136に固定されたスクライビングホイール160は、支持枠体137に対して回転自在とされている。
旋回部138は、図10に示すように、支持枠体137の上部に設けられており、Z軸と略平行な回転軸138aを中心に支持枠体137を回転させる。図11に示すように、鉛直下方から見た旋回部138の回転軸138aの位置と、脆性材料基板4における保持ユニット10の接地位置160cとは、ズレている。
そのため、スクライビングホイール160の進行方向が、図12に示すように、矢印AR5(2点鎖線)方向から矢印AR6(実線)方向に変化すると、キャスター効果によりスクライビングホイール160には、回転軸138a周りのトルクが働く。これにより、スクライビングホイール160は矢印R2方向に回動し、スクライビングホイール160の位置は2点鎖線位置から実線位置に変化する。
このように、本実施の形態に係るスクライブ装置100においては、スクライビングホイール160の進行方向が変化して、スクライビングホイール160の姿勢が進行方向に対して角度θ1だけズレた場合であっても、スクライビングホイール160に矢印R2方向のトルクが働く。その結果、スクライビングホイール160の姿勢と、スクライビングホイール160の進行方向が略平行となるように、スクライビングホイール160が旋回する。
駆動部170は、ヘッド部130に保持されたスクライビングホイール160を矢印AR2方向に往復させる。図2に示すように、駆動部170は、主として、支柱71と、ガイドレール72と、モータ73と、を有している。
制御ユニット190は、スクライブ装置100の各要素の動作制御、およびデータ演算を実現する。図1および図2に示すように、制御ユニット190は、主として、ROM91と、RAM92と、CPU93と、を有している。
<2.2.スクライビングホイールの構成>
図13および図14は、スクライビングホイール160の構成の一例を示す側面図および正面図である。図15は、図14の符号Aにおける部分拡大図である。スクライビングホイール160は、第1の実施の形態の刃部61と同様ダイヤモンド含有物(例えば、焼結ダイヤモンドまたや多結晶体ダイヤモンド)により成形されている。スクライビングホイール160は、脆性材料基板4に対して移動させられることによって、脆性材料基板4上にスクライブラインを形成するツールである。
図10ないし図14に示すように、スクライビングホイール160は、2つの円錐台の下底面(ただし、下底面は上底面より面積が大きい)が互いに対向するように配置されたものであり、略円盤状(算盤珠状)を成している。図13および図14に示すように、スクライビングホイール160は、主として、本体部161と、刃162と、を有している。
本体部161は、図13および図14に示すように、スクライビングホイール160のうち外周部分に備わる刃部162を除く円盤状の部位であり、本体部161の中心付近には、回転軸160bに沿って本体部161を貫通する貫通孔160aが設けられている。また、本体部161の外周には、円環状の刃162が設けられている。
162は、図13に示すように、スクライビングホイール160の外周部分である。図14に示すように、刃162は、正面視V字状とされている。刃部162においては、回転軸160bに沿った方向の厚さTb(図14参照)、回転軸160b側から刃先162aに向かうに従って、徐々に小さくなる。
刃先162aは、刃162の最外周部(すなわち、刃162のうち、回転軸160bからの距離が最大となり、刃162の厚さTbが最小となる部分)に沿って設けられている。図15に示すように、刃先162aは、主として、複数の斜面165(165a、165b)と、角丸面167と、を有している。
なお、図13に示すように、刃先162aには、意図して形成された凹凸がな
複数(本実施の形態では2つ)の斜面165(165a、165b)は、図15に示すように、刃162の側面を形成する。また、角丸面167は、図15に示すように、斜面165(165a、165b)のそれぞれと接続されている。
<2.3.スクライビングホイールの寸法>
ここで、スクライビングホイール160の外径Dm(図14参照)は、通常、1mm〜10mmであり、好ましくは、1mm〜5mm(さらに好ましくは、1mm〜3mm)である。スクライビングホイール160の外径Dmが1mmより小さい場合には、スクライビングホイール160の取り扱い性および耐久性が低下する。一方、スクライビングホイール160の外径Dmが5mmより大きい場合には、スクライブ時の垂直クラックKが脆性材料基板4に対して深く形成されないことがある。
また、スクライビングホイール160の厚さTh(図14参照)は、0.5mm〜1.2mmであるのが好ましく、0.5mm〜1.1mmであるのがさらに好ましい。スクライビングホイール160の厚さThが0.5mmより小さい場合には、加工性および取り扱い性が低下することがある。一方、スクライビングホイール160の厚さThが12mmより大きい場合には、スクライビングホイール160の材料および製造のためのコストが高くなる。
また、刃162の刃先角θ2(図14参照)は、通常鈍角であり、好ましくは、90deg<θ2≦160deg(さらに好ましくは、100deg≦θ2≦140deg)である。なお、刃先角θ2の具体的な値は、切断する脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<2.4.スクライビングホイールの成形手法>
ここでは、焼結ダイヤモンドまたは多結晶体ダイヤモンドからスクライビングホイール160を成形する手法について説明する。本成形手法では、まず、好適厚さ(0.5mm〜1.2mm多結晶体ダイヤモンドから、所望の半径円盤が切り取られる。
次に、回転軸160bに沿った刃162の厚さTbが回転軸160b側から刃先162aに向かうに従って徐々に小さくなるように、円盤の周縁部が削られる。これにより、円盤の周縁部に、正面視V字状の刃162が形成される。
<2.5.スクライブ方法>
ここでは、ダイヤモンド含有物のツールの一例として挙げられるスクライビングホイール160により、脆性材料基板4上にスクライブラインSLを形成する手法を、図1、図2、および図15を参照しつつ、説明する。
本手法では、ヘッド部130の動作によって、スクライビングホイール160の外面のうち、角丸面167が、脆性材料基板4に接触させられる。そして、脆性材料基板4と接触する角丸面167から脆性材料基板4に、力(スクライブ荷重)が付与される。
続いて、スクライビングホイール160の角丸面167が脆性材料基板4に接触させられ状態で、スクライビングホイール160が脆性材料基板4に対して相対的に移動させられる。この場合において、X軸方向(矢印AR1方向:図1参照)には、スクライビングホイール160が、Y軸方向(矢印AR2方向:図2参照)には、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10が、それぞれ移動させられる。
これにより、スクライビングホイール160が脆性材料基板4上を回転させられ、刃先162aの角丸面167(図15参照)の軌跡に応じたスクライブラインSLが、脆性材料基板4上に形成される。また、脆性材料基板4には、スクライブラインSLから垂直方向(Z軸方向)に延びる垂直クラックKが形成される。
ここで、スクライブ荷重は、3N〜30Nに設定されるのが好ましく、5N〜20Nに設定されるのがさらに好ましい。また、脆性材料基板4に対するスクライビングホイール160の移動速度は、通常、50mm/sec〜1200mm/secに設定され、好ましくは、50mm/sec〜300mm/secに設定される。なお、スクライブ荷重および移動速度の具体的な値は、脆性材料基板4の材質、および/または、厚さ等から適宜設定される。
<2.6.スクライブ原理>
本実施の形態のスクライビングホイール160の刃先162aには、図15に示すように、角丸面167が成形されている。これにより、第1の実施の形態と同様に、脆性材料基板4切削することなく、刃先162aの角丸面167から脆性材料基板4に大きなスクライブ荷重付与できる。すなわち、刃先162aに角丸面167が成形されており、この角丸面167によりスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される場合、大きな圧縮応力および引張応力を接触部4aに発生させることができる。これにより、切り屑およびマイクロクラックの発生を防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。
<2.7.本実施の形態におけるスクライビングホイールの利点>
以上のように、本実施の形態のスクライブ装置100に備わるスクライビングホイール160、図14に示すように、厚さTb本体部161の中心から刃先162aに向かって小さくなる刃部162を有している
また、図15に示すように、刃部162の刃先162aは、刃162の側面を形成する2つの斜面165(165a、165b)のそれぞれと接続された角丸面167を有している。さらに、角丸面167は、曲面形状を有している。
これにより、刃先162aの角丸面167から脆性材料基板4に力が付与される場合、スクライビングホイール160は、角丸面167と接触する脆性材料基板4の接触部4a(図10参照)を切削することなく、この接触部4aに大きな圧縮応力および引張応力を発生させることができる。そして、この圧縮応力および引張応力によって、脆性材料基板4にスクライブラインSLおよび垂直クラックKが形成される。
ゆえに、スクライビングホイール160は、第1の実施の形態のダイヤモンドポイント60と同様に、スクライブラインSL付近に切り屑およびマイクロクラックが発生することを防止でき、脆性材料基板4を良好にスクライブできる。また、スクライビングホイール160の寿命を向上させることができる。
<3.変形例>
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく様々な変形が可能である。
(1)第1の実施の形態において、刃部61は、四角錐台状成すものとして説明したが、刃部61の形状は、これに限定されるものでない。例えば、刃部61は、三角錐台状成すものであっても良いし、n角錐台状(ただし、nは、5以上の整数)を有するものであっても良い。さらに、刃部61は、m角錐状(ただし、mは、3以上の整数)を成すものであっても良い。
(2)また、第1および第2の実施の形態では、駆動部70、170の送り機構としてボールねじを使用したものが採用されているが(図2参照)、送り機構はこれに限定されるものでない。例えば、リニアモータ(リニアレール)等が送り機構として採用されても良い。
(3)さらに、第1の実施の形態においては駆動部70が、第2の実施の形態においては駆動部170が、それぞれヘッド部30、130を保持ユニット10に対して移動させるものとして説明したが、ヘッド部30、130の移動態様はこれに限定されるものでない。
例えば、ヘッド部30、130が固定され、保持ユニット10が矢印AR1方向(図1参照)に移動させられても良い。また、保持ユニット10が固定され、ヘッド部30、130がそれぞれ駆動部70、170により矢印AR2方向(図2参照)に移動させられても良い。さらに、ヘッド部30および保持ユニット10の両者が移動させられても良い。
このように、脆性材料基板4を保持する保持ユニット10と、ダイヤモンドポイント60を把持するヘッド部30またはスクライビングホイール160を把持するヘッド部130と、は、少なくとも一方が他方に対して相対的に移動できれば十分である。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
<実施例1および比較例1
図16は、スクライブされた脆性材料基板4の端面強度を評価するための試験方法を説明するための図である。図17は、実施例1および比較例1の試験条件を示す図である。図18は、実施例1および比較例1の試験結果を示す図である。図19は、実施例1の、角丸面67を有する刃部61(図7参照)によりスクライブされた脆性材料基板4の写真である。図20は、比較例1の、角丸面を有しない刃部(図9参照)によりスクライブされた脆性材料基板4の写真である。
施例1および比較例1では、スクライブされた脆性材料基板4の端面強度を評価する試験として、4点曲げ試験を採用している。図16および図17に示すように、本試験では、上部支点95(95a、95b)間距離D1が10.0mmとされ、下部支点96(96a、96b)間距離D2が20.0mmとされ、スクライブ面を下向きにされた状態で、長辺側が矢印AR7方向に曲げられる。
図18に示すように、実施例1の破壊荷重の平均値は、比較例1の破壊荷重の平均値の約3倍となったこれは、実施例1によりスクライブされた脆性材料基板4は、比較例1によりスクライブされた脆性材料基板4と比較して、強度が高いことを示している
また、比較例1(図20参照)では、スクライブラインSL付近に切り屑が発生しているが、実施例1では、スクライブラインSL付近に切り屑が発生していない。これは、実施例1の方が、比較例1よりも脆性材料基板4に対して良好なスクライブが実行できることを示している
1、100 スクライブ装置
4 脆性材料基板
4a 接触部
10 保持ユニット
20、120 スクライブユニット
30、130 ヘッド部
60 ダイヤモンドポイント
61 刃部
62 把持部
64 先端面
65(65a〜65d) 斜面
66(66a〜66c) 稜線
67(67a〜67c) 角丸面
68(68b、68c) 直線部
69(69b、69c) 曲線部
70、170 駆動部
80 撮像部ユニット
90、190 制御ユニット
160 スクライビングホイール
161 本体部
162 刃
162a 刃先
165(165a、165b) 斜面
167 角丸面
K 垂直クラック
SL スクライブライン

Claims (3)

  1. ダイヤモンド含有物のツールにより、脆性材料基板上にスクライブラインを形成する方法であって、
    (a) 前記ツールの外面のうち前記脆性材料基板と接触する角丸面から、前記脆性材料基板に力を付与する工程と、
    (b) 前記工程(a) により前記ツールの前記角丸面を前記脆性材料基板に接触させた状態で、前記ツールを前記脆性材料基板に対して相対的に移動させる工程と、
    を備え、
    前記角丸面は、曲面形状を有するとともに、
    前記工程(b) により、前記ツールと前記脆性材料基板とが接触させられつつ、前記ツールが前記脆性材料基板に対して移動させられる場合、前記角丸面は、下向きに凸とされることを特徴とするスクライブ方法。
  2. 請求項1に記載のスクライブ方法において、
    前記ツールは、ダイヤモンドポイントであること特徴とするスクライブ方法。
  3. 請求項1に記載のスクライブ方法において、
    前記ツールは、スクライビングホイールであること特徴とするスクライブ方法。
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