JP2012249619A - 海洋プランクトン由来発光タンパク質 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】海洋プランクトン由来の新規な発光タンパク質(ルシフェラーゼ)とその遺伝子群、並びにそれらより推測された発光タンパク質活性を有する祖先発光タンパク質及びその祖先発光タンパク質をコードする遺伝子に関する。海洋プランクトンがCalanoida目、Augaptiloidea上科、Metridinidae科、Lucicutiidae科、Heterorhabdidae科に属する動物プランクトンのアミノ酸配列から推測されるその祖先ルシフェラーゼタンパク質の完全長アミノ酸配列、塩基配列も記載する。
【選択図】図1
Description
項1. 配列番号22若しくは配列番号24のアミノ酸配列、または、1又は複数のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入された改変アミノ酸配列を有することを特徴とする発光タンパク質。
項2. 配列番号1〜21のいずれかアミノ酸配列を有する項1に記載の発光タンパク質。
項3. 項1または2に記載の発光タンパク質をコードするDNAまたはその相補鎖。
1.アミノ酸配列及び塩基配列
海洋に棲息する動物性プランクトンより、発光プランクトンを探索した。具体的には、北海道大学大学院水産科学研究院の山口篤准教授(産総研客員研究員)と共同で、附属練習船おしょろ丸に乗船し、函館湾沖、親潮域で採取された海洋中に存在する、動物性プランクトンの分類を進める過程で、数多くの発光プランクトンを採取した。更に、これら発光プランクトンのうち、分類学的に節足動物門(Arthropoda)カイアシ亜綱(Copepoda)に属する動物性プランクトンであって、体外に分泌発現型の発光タンパク質を発現しているものを選別した。この動物プランクトン採集で見出された、分泌型の発光タンパク質を発現しているカイアシ亜綱(Copepoda)の分類を試み、Calanoida目、Augaptiloidea上科に属するMetridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科のプランクトンの同定を行った。さらにMetridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科プランクトン由来のルシフェラーゼタンパク質について、それをコードする遺伝子の塩基配列の特定と、推定アミノ酸配列の決定を試みた。先ず、Metridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科プランクトンから、全RNAを抽出し、含まれるmRNAを精製し、逆転写酵素を用い、定法に従って、対応するcDNAを合成した。これまでに報告されているMetridinidae科プランクトン由来のルシフェラーゼ遺伝子の配列を参考にPCR法によりcDNAより部分配列の増幅を行った。その結果、約250塩基のルシフェラーゼ遺伝子の部分配列を得た。次にその塩基配列をもとに、cDNA全長の増幅と塩基配列解析を行い、目的とするMetridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科プランクトン由来のルシフェラーゼタンパク質の配列を解明した。このMetridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科プランクトン由来のルシフェラーゼタンパク質の完全長アミノ酸配列をアライメントして、コンピュータプログラム(MEGA5)を用いて分子量15 kDaおよび13.8 kDaの祖先ルシフェラーゼタンパク質配列を予測し、ルシフェラーゼタンパク質をコードする遺伝子配列を人工遺伝子合成して、大腸菌およびほ乳類培養細胞において発現させ、そのルシフェラーゼ機能を確認するに至った。
カイアシ類Metridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科のプランクトン体内でのタンパク質の発現に伴い、残留している多種のmRNAのうち、当該ルシフェラーゼの遺伝子を選別することを試みた。具体的には、mRNAよりcDNAライブラリーを作製し、このcDNAライブラリーからPCR法によりルシフェラーゼ遺伝子の部分配列および全長配列の取得を行った。
まず、本発明のルシフェラーゼの起源である動物性発光プランクトンは、函館湾沖、水深50〜1000mから採取された親潮域深層水中に見出された、Calanoida目、Augaptiloidea上科に属するプランクトンである。代表的な発光プランクトンMetridia okhotensisの形態は、図3(a)に示すように、紫外線照射下において、蛍光顕微鏡により観察すると発光基質を含む分泌腺が青緑色に見える。また、白色光下で顕微鏡観察すると、図3(b)に示すように、Metridia okhotensisのプランクトンの体内は透明から若干白色がかって観察される。本発明でルシフェラーゼ遺伝子のクローニングを行ったプランクトンはMetridinidae(メトリディニダエ科)に属するものとして、Metridia okhotensis、Metridia curticauda、Metridia asymmetrica、Pleuromamma abdominalis、Pleuromamma scutullata、Pleuromamma xiphias、Lucicutiidae(ルチクチイダエ科)に属するものとしてLucicutia ovaliformis、またHeterorhabdidae(ヘテロハブディダエ科)に属するものとして、Heterorhabdus tanneri、Heterostylites majorの計5属9種である。これらの動物プランクトンの詳細な分類学上の同定では、Metazoa(動物界)、Arthropoda(節足動物門)、Crustacea(甲殻亜門)、Maxillopoda(アゴアシ綱)、Copepoda(カイアシ亜綱)、Neocopepoda(カイアシ下網)、Gymnoplea(前脚類)、Calanoida(カラヌス目)、Metridinidae(メトリディニダエ科)もしくはLucicutiidae(ルチクチイダエ科)もしくはHeterorhabdidae科(ヘテロハブディダエ科)となる。
Metridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科プランクトンより、市販のRNA抽出試薬;RNeasy Mini kit(Qiagen社製)を用いて全RNAを抽出し、次いで、市販の精製キット;Oligotex-dT30 <SUPER> mRNA Purification kit(Takara Bio社製)を用いてPoly(A)+mRNAの精製を行った。更に、精製済みのmRNAから、市販のcDNA調製キット:SMART RACE cDNA増幅キット(Takara Bio社製)を利用して、それぞれ5’末端側増幅用および3’末端側増幅用cDNAの合成をおこなった。
Metridinidae科、Lucicutiidae科またはHeterorhabdidae科のプランクトン由来のルシフェラーゼをコードする遺伝子クローニング工程においては、mRNAから調製されるcDNAを鋳型として、前記上流側混合プライマー二種と下流側混合プライマー二種とを組み合わせた、計4種のPCR用プライマー対についてPCR反応を行った。
White luc UP1 (26 mer:16種の混合プライマー)
5’-GGC TGC ACY AGG GGA TGY CTK ATM TC-3’
(Y=T, C;K=G, T;M=A, C)
White luc UP2 (26 mer:16種の混合プライマー)
5’-GCT ATT GTT GAY ATY CCY GAR AT-3’
(Y=T, C;R=G, A)
White luc LP2 (26 mer:16種の混合プライマー)
5’-TC AAG TTG WTC AAT RAA YTG YTC CAT-3’
(W=A, T;R=G, A;Y=T, C)
White luc LP1 (23 mer:12種の混合プライマー)
5’-AC ATT GGC AAG ACC YTT VAG RCA-3’
(Y=T, C;V=A, G, C;R=G, A)
選別されたクローンから、以下の手順で、導入されているプラスミドベクターの精製を行う。
プラスミドベクター中に挿入されている、cDNA断片(PCR産物)を、以下の手順で塩基配列解析用の核酸鎖伸長反応産物を調製する。
ほ乳類培養細胞発現用ベクターpcDNA3.2 V5-His TOPO(Invitrogen社製)中へ上記で得られたカイアシ類由来ルシフェラーゼ遺伝子のコード領域を挿入する。プラスミドpcDNA3.2 V5-His TOPOのクローニング・サイト中に各遺伝子が挿入されていることをシーケンスにより確認する。作製したほ乳類培養細胞発現ベクターのうち、MoLuc1, MoLuc2, MaLuc1, PsLuc1, PaLuc1, PaLuc2, PxLuc1-7, PxLuc1-8, LoLuc1-1, LoLuc1-3を代表として培養細胞で遺伝子発現させた。精製済みのヒト細胞発現ベクターを、HEK293細胞中に、Lipofectamine 2000 (Invitrogen社製)を用いて遺伝子導入した。宿主のHEK293細胞は、10 mL血清添加培地(MEM+10% FBS+Penicillin/streptomycin)を用いて、100 mm dish上で、95%コンフルエントな状態まで培養されたものを利用する。まずプラスミド溶液(DNA濃度:1 μg/μL)24 μLを1.5 mLの無血清Opti-MEM培地に懸濁したものと、Lipofectamine 2000 60 μLを同様に1.5 mLの無血清Opti-MEM培地に懸濁したものを用意する。この2液を混合して室温にて20分間インキュベートする。この混合液全量を100 mm dish上の細胞培地中に添加して、均一になるように軽く撹拌する。トランスフェクション処理後、HEK293細胞は、5%CO2下、37℃にて48時間以上インキュベーションし、導入遺伝子の発現を行う。
カイアシ類由来ルシフェラーゼの祖先遺伝子の推測
Metridinidae科、Lucicutiidae科およびHeterorhabdidae科プランクトン由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列を、それぞれの科ごとにタンパク質配列データの分子進化・系統学的解析を行うためのソフトウェアMEGA5にて解析を行った。まずアミノ酸配列をもとに多重配列アライメントをClustalWを用いて行った。この多重配列アライメントデータをもとにMaximum likelihood法により系統樹を再構成し、MEGA5の祖先配列推測機能を用いて、祖先遺伝子の配列推定を行った。具体的にはMetridinidae科およびLucicutiidae科のプランクトンに由来する15種のルシフェラーゼのアミノ酸配列から推定したその祖先遺伝子のアミノ酸配列として137アミノ酸からなるaCopLuc43と、Heterorhabdidae科プランクトンに由来する6種のルシフェラーゼのアミノ酸配列から推定したその祖先遺伝子のアミノ酸配列として132アミノ酸からなるaCopLuc48を決定した。Metridinidae科およびLucicutiidae科の共通祖先遺伝子を推測したのは、この2つの科から見いだされたルシフェラーゼのアミノ酸配列が、Heterorhabdidae科由来のものと比較して相同性が高かったからである。このaCopLuc43のアミノ酸配列を、クローニングしたMetridinidae科およびLucicutiidae科のプランクトンに由来する15種のルシフェラーゼとアライメントしたところ(図1)、15種のルシフェラーゼのアミノ酸配列中に強く保存されているアミノ酸残基Cys-X(3)-Cys-Leu-X(2)-Leu-X(4)-Cys-X(8)-Pro-X-Arg-Cys (X, アミノ酸)の並び方に合致しない領域を発見したため、aCopLuc43のアミノ酸配列をコードする塩基配列を人工合成した後、当該部位(配列番号23の91番目と92番目)に変異を導入して、この法則に合致したクローン、aCopLuc43mut (配列番号22)を作成した。
Metridinidae科、Lucicutiidae科およびHeterorhabdidae科プランクトン由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列の解析により得られたカイアシ類ルシフェラーゼの祖先遺伝子aCopLuc43, aCopLuc43mutおよびaCopLuc48のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、大腸菌で使用されるコドン頻度に最適化して、オペロンバイオテクノロジー社の人工遺伝子合成サービスを利用して合成した。このプラスミドベクターをNdeIおよびBamHIにて制限酵素処理し、そのインサートDNA断片を1.6%アガロースゲル上で泳動し、目的分子量の制限酵素断片を確認し、ゲル切片からMontageゲル抽出キット(Millipore社製)とMinElute PCR purification kit(Qiagen社製)を用いた前述の方法でDNAを回収した。
(1% N-Z-amine, 0.5% Yeast extract, 25 mM Na2HPO4, 25 mM KH2PO4, 50 mM NH4Cl, 5 mM Na2SO4, 2 mM MgSO4, 0.5% glycerol, 0.05% glucose, 0.2% lactose)
培養後7,000 rpm、10分間の遠心を行って大腸菌を沈殿させ、上清培地を除いた後、1 mLの溶解バッファー(20 mM Tris-HCl (pH8.0), 10 mM MgCl2)に再懸濁した。この懸濁液を氷上で10秒間超音波破砕を行い、15,000 rpm で5分間遠心した。上清を可溶性組換えタンパク質を含む画分として回収し、その活性を測定したところ発光活性が認められた(図5)。
カイアシ類由来ルシフェラーゼの祖先遺伝子のヒト細胞による発現
Metridinidae科、Lucicutiidae科およびHeterorhabdidae科プランクトン由来ルシフェラーゼのアミノ酸配列の解析により得られたカイアシ類ルシフェラーゼの祖先遺伝子aCopLuc43mutおよびaCopLuc48のアミノ酸配列をコードする塩基配列を、ほ乳類培養細胞発現用ベクターpcDNA3.2 V5-His TOPO中へ挿入する。精製済みのヒト細胞発現ベクターを、ヒト培養細胞HEK293に遺伝子導入・発現させ、祖先遺伝子の発光活性を測定した。100 mm dishにてHEK293細胞を培養した。カイアシ類由来ルシフェラーゼの祖先遺伝子の発現ベクターのLipofectamine 2000 (Invitrogen社製)によるトランスフェクション処理後、細胞は5%CO2下、37℃にて72時間インキュベーションし、導入遺伝子の発現を行った。この結果、細胞内画分において発光活性が認められた(図6)。ルシフェラーゼ活性の測定法は、後述する「カイアシ類由来ルシフェラーゼ活性の測定」に記載した。
カイアシ類ルシフェラーゼの活性測定には以下の方法を用いた。1μg/μLに調製した発光基質セレンテラジン(coelenterazine)のメタノール溶液より1 μLをとって、1 mLの基質希釈用バッファー(20 mM Tris-HCl, pH8.0, 50 mM MgCl2)で希釈した。希釈後の発光基質液は氷上に保持した。カイアシ類ルシフェラーゼを発現するプラスミドベクターを導入されたHEK293細胞からの培養上清または大腸菌破砕液5 μLをポリスチレン製テストチューブに分取して、ルミノメーターLB9506(ベルトールド社製)の測定部にセットし、10 μLの上記希釈発光基質を添加した後、直ちに測定を開始した。発光の測定は10秒間行った。発光が強すぎて測定限界を超えた場合は、試料希釈バッファー(20 mM Tris-HCl, pH8.0, 10 mM MgCl2)にて10倍希釈を行って、同様に測定した。得られた発光値をルミノメーターに附属のプリンターに出力した後、次の試料の測定に移った。
Claims (3)
- 配列番号22若しくは配列番号24のアミノ酸配列、または、1又は複数のアミノ酸が置換、付加、欠失又は挿入された改変アミノ酸配列を有することを特徴とする発光タンパク質。
- 配列番号1〜21のいずれかアミノ酸配列を有する請求項1に記載の発光タンパク質。
- 請求項1または2に記載の発光タンパク質をコードするDNAまたはその相補鎖。
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