JP2012248375A - 有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法および有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係る有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、一対のリップ21、22と当該一対のリップ21、22の間に形成されるスリット状の吐出口31とを備えたダイコーター1が、基材に対し相対的に移動するとともに、前記吐出口31から塗布液Lを塗布することにより塗布層4を形成する塗布層形成工程を有し、前記塗布層形成工程は、前記一対のリップ21、22のうち、前記塗布層4が形成されている側のリップ22の前記基材2表面に対向する面が前記吐出口31から離れるに従い前記基材2から遠ざかるように傾斜し、当該傾斜の角度θが前記吐出口31に対向する前記基材2表面に対し10〜80°に設定された前記ダイコーター1を用いて、前記塗布液Lを塗布するものであることを特徴とする。
【選択図】図2
Description
しかし、当該方法は、高温処理や真空プロセスが必要になることから製造コストが高くなるとともに、連続製造が困難であるため製造効率が低いといった欠点が存在する。
また、ウエットプロセスのうちスピンコート法は、例えば、同じ溶媒からなる塗布液を用いて2つの層を形成させようとした場合、2層目の塗布液が、既に形成された1層目の層を溶かしながら広がってしまうため、同じ溶媒からなる塗布液を用いて層を複数形成させることは困難である。
例えば、特許文献3には、ダイコーターを使用し塗布液を塗布する塗布方法であって、ダイコーターの塗布液の吐出口の圧力を負圧あるいはゼロの状態にすることを特徴とする塗布方法が開示されている。ここで、特許文献3で使用されているダイコーターは、基材に対向する一対のリップが、基材表面と平行となるように構成されている。
例えば、Gapを広く設定しすぎてしまう(つまり、キャピラリー数が大きくなってしまう)と、ダイコーターと被塗布体との間に形成される液溜まりの幅が狭くなり、その結果、塗布幅が狭くなり、均一な塗布層が形成されなくなる。
一方、Gapを狭く設定しすぎてしまう(つまり、キャピラリー数が小さくなってしまう)と、ダイコーターと被塗布体との間に形成される液溜まりの形状が安定せず、その結果、塗布ムラや塗布スジが発生してしまう。
つまり、特許文献3に開示された技術は、塗布ムラや塗布スジ等の塗布故障が発生し易いことから、塗布性の向上という点において改善する余地が存在していた。
まず、本発明に係る有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子の各構成要素の詳細について、順次説明する。
本発明に係る有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)陽極/発光層/陰極
(ii)陽極/発光層/電子輸送層/陰極
(iii)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
(iv)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極
(v)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極
なお、本発明に係る有機EL素子の塗布層とは、塗布液を塗布することにより形成される層であり、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層である。
本発明に係る有機EL素子の発光層は、電極または電子輸送層、正孔輸送層から注入されてくる電子及び正孔が再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層の層内であっても発光層と隣接層との界面であってもよい。
発光層の膜厚は、特に制限されないが、形成する膜の均質性や発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、且つ駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、2〜200nmの範囲に調整することが好ましく、更に好ましくは5〜100nmの範囲に調整される。
以下、発光層に含まれる発光ホスト(以下、適宜、発光ホスト化合物ともいう)、発光ドーパントについて説明する。
本発明に係る発光ホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での発光ホスト化合物の体積比が50%以上であることが好ましい。
そして、本発明に係る発光ホスト化合物としては、公知の発光ホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。発光ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後記する発光材料を複数種用いることで異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
さらに、本発明に係る発光ホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知の発光ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
本発明に係る発光ホスト化合物は、カルバゾール誘導体であることが好ましく、カルバゾール誘導体であってジベンゾフラン化合物であることがより好ましい。例えば、以下の化合物である。
本発明に係る発光ドーパントとしては、蛍光ドーパント、リン光ドーパントを用いることができるが、より発光効率の高い有機EL素子を得る観点からは、前記の発光ホストを含有すると同時にリン光ドーパントを含有することが好ましい。
本発明に係るリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義される。なお、本発明に係るリン光ドーパントの好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
前記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて前記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送される発光ホスト上でキャリアの再結合が起こって発光ホストの励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こり、リン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーは発光ホストの励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明に係るリン光ドーパントは、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
ただし、本発明に係るリン光ドーパントは、フェニルイミダゾール錯体であることが好ましい。例えば、以下のD−1のような化合物である。また、以下のD−2、D−3のような化合物を組み合わせて含有させてもよい。
本発明に係る有機EL素子においては、注入層は必要に応じて設けることができる。注入層としては正孔注入層と電子注入層があり、上記の如く陽極と発光層または正孔輸送層の間、及び陰極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
本発明でいう注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と有機層間に設けられる層で、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
電子注入層は、例えば、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的には、ストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属バッファー層、フッ化リチウムに代表されるアルカリ金属化合物バッファー層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物バッファー層、酸化アルミニウムに代表される酸化物バッファー層等が挙げられる。本発明においては、上記バッファー層(注入層)はごく薄い膜であることが望ましく、フッ化カリウム、フッ化ナトリウムが好ましい。
注入層の膜厚は0.1nm〜5μm程度、好ましくは0.1〜100nm、さらに好ましくは0.5〜10nm、最も好ましくは0.5〜4nmである。
正孔輸送層を構成する正孔輸送材料としては、上記正孔注入層で適用するのと同様の化合物を使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。例えば、以下の化合物である。
電子輸送層とは電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層または複数層設けることができる。
従来、単層の電子輸送層、及び複数層とする場合は発光層に対して陰極側に隣接する電子輸送層に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、陰極より注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、その材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、例えば、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、トリゾール誘導体、シロール誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジン誘導体、8−キノリノール誘導体等の金属錯体等が挙げられる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。
これらの中でもカルバゾール誘導体、アザカルバゾール誘導体、ピリジン誘導体等が本発明では好ましく、カルバゾール誘導体であってジベンゾフラン化合物であることがより好ましい。例えば、以下の化合物である。
有機EL素子を構成する陽極としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO2、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In2O3−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましい。さらに膜厚は材料にもよるが、1μm以下、通常は、10〜1000nmの範囲であり、好ましくは10〜200nmの範囲で選ばれる。
陰極としては仕事関数の小さい(4eV以下)金属(電子注入性金属と称する)、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属等が挙げられる。これらの中で、電子注入性及び酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、例えば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al2O3)混合物、リチウム/アルミニウム混合物、アルミニウム等が好適である。
また、陰極としてのシート抵抗は数百Ω/□以下が好ましく、膜厚は通常10nm〜5μm、好ましくは50〜200nmの範囲で選ばれる。なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記金属を1〜20nmの膜厚で作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に形成することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する有機EL素子を作製することができる。
本発明に係る有機EL素子の基材(以下、適宜、基板ともいう)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また透明であっても不透明であってもよい。基材側から光を取り出す場合には、基材は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な基材としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。リジットな基材よりもフレキシブルな基材において、高温保存安定性や色度変動を抑制する効果が大きく現れるため、特に好ましい基材は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な可撓性を備えた樹脂フィルムである。
なお、以下の説明において、「先端、基端」、「前(上流側)、後(下流側)」、「左、右」を表現するときは、各図面に示す方向を基準としている。
図1および図2に示すように、ダイコーター1は、被塗布体Tに対向する位置に設けられた吐出口31から塗布液Lを吐出することにより、バックアップロール5により搬送される被塗布体Tの表面に塗布液Lを塗布する装置である。
なお、被塗布体Tは、ここでは、基材2、電極3から構成されているが(図3参照)、被塗布体Tとして電極3の表面にさらに正孔注入層(図示せず)等が形成されていてもよい。
なお、上流側リップ21とは、塗布層4が形成されていない側のリップのことであり、下流側リップ22とは、塗布層4が形成されている側のリップのことである(図2参照)。
なお、「基材2から遠ざかるように傾斜し」とは、詳細には、吐出口31の前後方向における中心に対向する基材2表面(被塗布体Tを構成する基材2の表面)の点Xの接平面Pから遠ざかるように傾斜し、という意味である。また、「吐出口31に対向する基材2表面に対し」とは、詳細には、吐出口31の前後方向における中心に対向する基材2表面(被塗布体Tを構成する基材2の表面)の点Xの接平面Pに対し、という意味である(図2参照)。
図3(b)に示すように、ダイコーター1内を基端から先端に流れ、吐出口31から吐出された塗布液Lの大半は、そのまま先端方向、つまり被塗布体T表面に向かって流れる。そして、下流側リップ22の後方(下流側)が、ダイコーター1の基端側に近づくように傾斜しているため、下流側リップ22の表面に接触して流れる塗布液Lの量は少なくなる。その結果、下流側リップ22と被塗布体Tとの間に形成される液溜まりBは、前後方向の幅が狭くなる。したがって、ダイコーター1と基材2との間隔(Gap)を狭く設定した場合であっても、この液溜まりBは潰されにくく形状が安定しているため、塗布ムラ等の不具合が生じ難くなる。つまり、このダイコーター1を用いた製造方法によれば、塗布性を向上させることができる。
ここで、下流側リップ22の傾斜の角度θが10°未満である場合は、下流側リップ22と被塗布体Tとの間に形成される液溜まりBの前後方向の幅が十分に小さくならず、塗布性が向上しない。一方、下流側リップ22の傾斜の角度θが80°を超える場合は、液溜まりBが適切に形成されず、塗布性が向上しない。
また、下流側リップ22は、必ずしも平面を呈していなくてもよく、略平面を呈してもよい。例えば、ダイコーター1の長手方向(左右方向)に直交する断面において、下流側リップ22の幅W22方向中央部が外側に若干突出するような外向きアール状を呈していてもよいし、下流側リップ22の幅W22方向中央部が内側に若干突出するような内向きアール状を呈していてもよい。
上流側リップ21が前記のように形成されることにより、上流側リップ21と被塗布体Tとの間に形成される液溜まりBは、塗布液Lの塗布中に液溜まりBの前方端部が大きく前後することなく形状を安定に保つこととなる。したがって、このダイコーター1を用いた製造方法によれば、下流側リップ22を特定することにより奏する塗布性の向上という効果を確保することができる。
なお、上流側リップ21の幅W21は、前記効果を奏するために、0.05〜10mmであることが好ましく、更には、0.1〜5mmであることが好ましい。一方、上流側リップ21の左右方向における長さは、下流側リップ22と同様、特に制限されず、被塗布体Tの左右方向における長さと略同一に設定すればよい。
ダイコーターの変形例について、図3(c)を参照して説明する。
ダイコーター10は、上流側リップ21と下流側リップ22との間に仕切り板41を有しており、当該仕切り板41は、吐出口31の延在方向に平行であるとともに吐出口31を分割するように設けられる。言い換えると、当該仕切り板41は、上流側ブロック11と下流側ブロック12との間に、両側に隙間を形成するように設けられる。
また、1度の塗布層形成工程により塗布層4(4a、4b)を形成することができるため、2種の塗布液La、Lbの境界領域(界面)において、塗布液La、Lb同士が混ざることとなる。したがって、例えば、発光ドーパント濃度が異なる2種の発光層用の塗布液La、Lbを使用した場合、当該境界領域(界面)において発光ドーパントの拡散が進み、発光ドーパントの濃度勾配がつき易くなる。
仕切り板41の先端部41b、41c、41dが尖状を呈することにより、2種の塗布液La、Lbが分割吐出口31a、32bにおいてスムーズに合流するため、適切な形状の液溜まりBが形成される。
ダイコーター1による塗布液Lの塗布方法について、図2、3(b)を参照して説明する。
まず、ダイコーター1の基端側に設けられた塗布液供給装置(図示せず)から塗布液供給管51を通してダイコーター1内部に塗布液Lが供給される。そして、塗布液Lは、上流側ブロック11と下流側ブロック12との間に設けられるマニホールド61に供給される。なお、マニホールド61は、左右方向に延在するとともに、左右方向に延在する吐出口31と連通している。そして、マニホールド61で左右方向に溜められた塗布液Lは、上流側ブロック11と下流側ブロック12との間を先端側に向けて流れ、上流側リップ21と下流側リップ22との間の吐出口31から吐出される。そして、塗布液Lは、上流側リップ21および下流側リップ22と被塗布体Tとの間で、液溜まりBを形成させつつ、バックアップロール5が回転することにより移動する被塗布体Tの表面に塗布層4を形成することとなる。
なお、移動速度は製造効率の向上という観点から、5m/min以上がより好ましく、ダイコーター1または基材2の移動の安定性という観点から、10m/min以下が好ましい。
ここで、塗布層4のウエット膜厚(hw)とは、乾燥後の膜厚ではなく、ダイコーター1により形成された直後の膜厚であり、「ウエット膜厚=塗布液供給量/(塗布幅×ダイコーターの基材に対する相対的な移動速度)」で算出することもできる(なお、ここでの塗布液供給量とは、単位時間あたりに供給する塗布液の体積量である)。
所定間隔(Gap)とウエット膜厚(hw)との関係を、前記のように規定することにより、塗布性の向上という効果を適切に発揮させることができる。
本発明の一実施形態に係る有機EL素子の製造方法は、塗布層形成工程を有する製造方法であり、この塗布層形成工程とは、前記したダイコーター1を用いて、塗布液Lを塗布することにより塗布層4を形成する工程である。
本発明の一実施形態に係る有機EL素子の製造方法について、陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極からなる有機EL素子を製造する場合を一例とし、図4を参照して説明する。
なお、フォトリソグラフィー法で所望の形状パターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合(100μm以上程度)は、前記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。また、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式等湿式成膜法を用いることもできる。
これら各層の形成方法としては、まず、前記したダイコーター1を用いて、前記した塗布方法により塗布液Lを塗布することにより塗布層4を形成する(塗布層形成工程)。その後、塗布層4を乾燥させて、前記した各層の膜厚とする。なお、乾燥方法については、特に制限されず、例えば、塗布液Lを塗布後5秒後に0.5m/secの窒素送風で乾燥させ120℃で30分間保持するという方法である。
なお、これらS2〜S6工程のうち、少なくとも1工程を前記塗布層形成工程とすればよく、残りの工程では、従来公知の成膜方法(例えば、蒸着法、インクジェット法、スピンコート法)により各層を形成させればよい。
ここで、電子輸送層は、塗布層4として形成されていればよいため、前記塗布層形成工程により形成されていてもよく、従来公知の塗布方法(例えば、インクジェット法、スピンコート法)で形成されていてもよい。
ここで、第1発光層は、塗布層4として形成されていればよいため、前記塗布層形成工程により形成されていてもよく、従来公知の塗布方法(例えば、インクジェット法、スピンコート法)で形成されていてもよい。
加えて、この有機EL素子の製造方法によれば、塗布性が向上する、つまり、当該製造方法で製造した有機エレクトロルミネッセンス素子の輝度ムラが少なくなるとともに、量子効率、発光寿命といった性能も向上させることができる。
ここで、第1発光層は、塗布層4として形成されていればよいため、前記塗布層形成工程により形成されていてもよく、従来公知の塗布方法(例えば、インクジェット法、スピンコート法)で形成されていてもよい。
そして、加熱処理後に密着封止あるいは封止部材と電極、基材とを接着剤で接着することで有機EL素子を作製する。
本発明に係る有機EL素子の製造方法は、図2に示すように、バックアップロール5により搬送される被塗布体Tに対し塗布液Lを塗布するロールtoロールのプロセスに適用することが可能であるほか、テーブル上に設置された被塗布体Tに対し塗布液Lを塗布するテーブルコーターに適用することも可能である。
本発明に係る有機EL素子は、表示デバイス、ディスプレイ、各種発光光源として用いることができる。発光光源として、例えば、家庭用照明、車内照明、時計や液晶用のバックライト、看板広告、信号機、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源、さらには表示装置を必要とする一般の家庭用電気器具等広い範囲の用途が挙げられるが、特にカラーフィルターと組み合わせた液晶表示装置のバックライト、照明用光源としての用途に有効に用いることができる。
なお、実施例1〜3において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
(1)サンプル101の作製
陽極として150mm×150mm×1.1mmのガラス基板上に、ITO(インジウムチンオキシド)を150nm製膜した基板(NHテクノグラス製NA45)にパターニングを行った後、このITO透明電極を設けた基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った。この基板上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)−ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer製、Baytron P Al 4083)を純水で70%に希釈した溶液を3000rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、200℃にて1時間乾燥し、膜厚30nmの第1正孔輸送層を設けた。
この基板を、窒素ガス(グレードG1)を用いた窒素雰囲気下に移し、前記正孔輸送材料であるHT−1化合物(Mw=80,000)をクロロベンゼンに0.5%溶解した溶液を、1500rpm、30秒でスピンコート法により製膜した後、160℃で30分間保持し、膜厚30nmの第2正孔輸送層とした。
次に、下記発光層組成物1を、表1に記載の形状の一対のリップを有するダイコーター(仕切り板は有さない)を用いて、表1に記載の塗布条件(Gap:500μm、塗布スピードCS:1m/min)で塗布液の膜厚(ウエット膜厚)が5.3μmになるように吐出し、塗布後5秒後に0.5m/秒の窒素送風で乾燥させたのち120℃で30分間保持し、膜厚40nmの発光層(第1発光層)を形成した。
(発光層組成物1)
発光ホスト(H−A) 0.69質量部
青色ドーパント(D−1) 0.30質量部
緑色ドーパント(D−2) 0.005質量部
赤色ドーパント(D−3) 0.005質量部
酢酸イソプロピル 100質量部
次に、下記発光層組成物2を、表1に記載の形状の一対のリップを有するダイコーター(仕切り板は有さない)を用いて、表1に記載の塗布条件(Gap:500μm、塗布スピードCS:1m/min)で塗布液の膜厚(ウエット膜厚)が5.3μmになるように吐出し、塗布後5秒後に0.5m/秒の窒素送風で乾燥させたのち120℃で30分間保持し、膜厚40nmの発光層(第2発光層)を形成した。
(発光層組成物2)
発光ホスト(H−A) 0.89質量部
青色ドーパント(D−1) 0.10質量部
緑色ドーパント(D−2) 0.005質量部
赤色ドーパント(D−3) 0.005質量部
酢酸イソプロピル 100質量部
続いて、基板を大気に曝露することなく真空蒸着装置へ取り付けた。また、モリブデン製抵抗加熱ボートにフッ化ナトリウムおよびフッ化カリウムを入れたものを真空蒸着装置に取り付け、真空槽を4×10−5Paまで減圧した後、前記ボートに通電して加熱してフッ化ナトリウムを0.02nm/秒で前記電子輸送層上に膜厚1nmの薄膜を形成し、続けて同様にフッ化カリウムを0.02nm/秒でフッ化ナトリウム上に膜厚1.5nmの電子注入層を形成した。
引き続き、アルミニウム100nmを蒸着して陰極を形成し、「サンプル101(有機EL素子)」を作製した。
サンプル102〜106の作製において、第1発光層、第2発光層を形成する際に、表1に記載の形状のリップを有するダイコーターを用いた。
それ以外は、サンプル101と同様にして、「サンプル102〜106(有機EL素子)」を作製した。
なお、表中の「下流側リップ幅(基材と平行となる幅)」とは、詳細には、図2の接平面Pと平行となる下流側リップの幅である。また、表中の「下流側リップの角度」とは、詳細には図2のθである。また、表中の「CS」とは、塗布スピードであり、ダイコーターの基材に対する相対的な移動速度のことである。
以上のようにして得られたサンプル101〜106の発光層中に含まれる発光ドーパントの濃度分布を、TOF−SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)により分析し、膜厚方向でのIr分布を測定した。
得られた結果は表2に示す通りで、サンプル101〜106では、陽極側が最もドーパント濃度が高く、陰極側に向かって連続的に発光ドーパントの濃度が減少していた。
作製したサンプルについて、下記のようにして外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
(1)外部取り出し量子効率
作製したサンプルに対し、2.5mA/cm2定電流を印加したときの外部取り出し量子効率(%)を測定した。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング製)を用いた。
なお、量子効率は、サンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。
作製したサンプルに対し、正面輝度1000cd/m2となるような電流を与え、連続駆動した。正面輝度が初期の半減値(500cd/m2)になるまでに掛かる時間(発光寿命)を求めた。測定には分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタセンシング社製)を用いた。
なお、発光寿命は、サンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。
作製したサンプルに対し、2.5mA/cm2定電流を印加したときの発光面内輝度分布をPrometric(サイバネットシステム社製)で測定した。
なお、輝度分布は、発光面を均等に40分割したときの各輝度の標準偏差で表わした。数値が低いほど、輝度ムラが少ないことを表す。なお、輝度ムラが少ないということは、塗布ムラが少ないということでもあり、つまり、塗布性に優れていると判断することができる。
表2に記載の結果より明らかなように、下流側リップ角度が10〜80°であるダイコーターを用いて製造したサンプル103、104、105は、量子効率、発光寿命特性に優れ、発光面積内の輝度ムラが少なく発光デバイスとして優れていることがわかる。
(1)サンプル201〜203の作製
サンプル201〜203の作製において、第1発光層、第2発光層を形成する際に、表3に記載の塗布条件(塗布スピード)により塗布を行った。
それ以外は、実施例1のサンプル101と同様にして、「サンプル201〜203(有機EL素子)」を作製した。
(2)サンプル204〜206の作製
サンプル204〜206の作製において、第1発光層、第2発光層を形成する際に、表3に記載の塗布条件(塗布スピード)により塗布を行った。
それ以外は、実施例1のサンプル103と同様にして、「サンプル204〜206(有機EL素子)」を作製した。
(1)評価内容
以上のようにして作製したサンプル201〜206について、実施例1同様に、外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
なお、外部取り出し量子効率、発光寿命は実施例1のサンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。結果を表4に示す。
表4に記載の結果より明らかなように、下流側リップ角度が0°であるダイコーターを用いて製造したサンプル101、201、202、203は、塗布速度が上昇するに従い、輝度ムラ(塗布性)が低下し、量子効率、発光寿命も低下している。
一方、下流側リップ角度が30°であるダイコーターを用いて製造したサンプル103、204、205、206は、塗布速度が上昇しても、輝度ムラ(塗布性)、量子効率、発光寿命の低下は確認できない。
特に、塗布速度が2m/min以上において、両者の差異は大きくなり本発明を適用する効果が大きいことがわかる。
(1)サンプル301〜303の作製
サンプル301〜303の作製において、第1発光層、第2発光層を形成する際に、表5に記載の塗布条件(Gap/hw、Gap)により塗布を行った。
それ以外は、実施例1のサンプル101と同様にして、「サンプル301〜303(有機EL素子)」を作製した。
(2)サンプル304〜306の作製
サンプル304〜306の作製において、第1発光層、第2発光層を形成する際に、表5に記載の塗布条件(Gap/hw、Gap)により塗布を行った。
それ以外は、実施例1のサンプル104と同様にして、「サンプル304〜306(有機EL素子)」を作製した。
(1)評価内容
以上のようにして作製したサンプル301〜306について、実施例1同様に、外部取り出し量子効率、発光寿命及び発光面内輝度ムラを評価した。
なお、外部取り出し量子効率、発光寿命は実施例1のサンプル101の測定値を100としてこれに対する相対値で表した。結果を表6に示す。
表6に記載の結果より明らかなように、下流側リップ角度が0°であるダイコーターを用いて製造したサンプル101、301、302、303は、キャピラリー数であるGap/hwが小さくなるに従い、輝度ムラ(塗布性)が低下し、量子効率、発光寿命も低下している。
一方、下流側リップ角度が50°であるダイコーターを用いて製造したサンプル104、304、305、306は、Gap/hwが小さくなっても、輝度ムラ(塗布性)、量子効率、発光寿命の大幅な低下は確認できない。そして、Gap/hwが15以上の場合、輝度ムラ(塗布性)、量子効率、発光寿命の点において優れた効果を奏することがわかる。
なお、Gap/hwが15未満の場合、両者の差異は大きくなり本発明を適用する効果が大きいこともわかる。
2 基材(被塗布体)
3 電極(被塗布体)
4、4a、4b 塗布層
5 バックアップロール
10 ダイコーター(変形例)
11 上流側ブロック
12 下流側ブロック
21 上流側リップ(リップ)
22 下流側リップ(リップ)
31 吐出口
31a、32b 分割吐出口
41 仕切り板
51 塗布液供給管
61 マニホールド
100 ダイコーター(従来例)
B 液溜まり
L、La、Lb 塗布液
P 基材表面の点Xの接平面
T 被塗布体
W21 上流側リップの幅
W22 下流側リップの幅
W31 吐出口の幅
Claims (8)
- 基材に対し積層するように設けられるとともに、塗布液を塗布することにより形成される塗布層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、
一対のリップと当該一対のリップの間に形成されるスリット状の吐出口とを備えたダイコーターが、基材表面と所定間隔を保ちながら前記吐出口の延在方向と直交する方向に前記基材に対し相対的に移動するとともに、前記吐出口から前記塗布液を塗布することにより前記塗布層を形成する塗布層形成工程を有し、
前記塗布層形成工程は、前記一対のリップのうち、前記塗布層が形成されている側のリップの前記基材表面に対向する面が前記吐出口から離れるに従い前記基材から遠ざかるように傾斜し、当該傾斜の角度が前記吐出口に対向する前記基材表面に対し10〜80°に設定された前記ダイコーターを用いて、前記塗布液を塗布するものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。 - 前記塗布層形成工程は、前記基材に対し積層するように少なくとも1層の塗布層が形成された後に行われることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記少なくとも1層の塗布層は発光層であるとともに、前記塗布層形成工程において形成する前記塗布層は発光層であることを特徴とする請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記塗布層形成工程は、前記ダイコーターの前記基材に対する相対的な移動速度が2m/min以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記塗布層形成工程は、前記所定間隔(Gap)と、前記塗布層形成工程において形成する前記塗布層のウエット膜厚(hw)とが、Gap/hw≧15となることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記塗布層形成工程において形成する前記塗布層と、当該塗布層に積層方向に隣接して既に形成されている塗布層とは、同じ溶媒からなる塗布液を用いて形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 前記塗布層形成工程において使用する前記ダイコーターが、前記吐出口の延在方向に平行となるように設けられるとともに前記吐出口を分割する1つ以上の仕切り板を有しており、前記吐出口が分割されて形成された2つ以上の分割吐出口からそれぞれ異なる塗布液が吐出することにより、2種以上の塗布液が積層するように構成した前記塗布層を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
- 請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法で製造されたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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