JP2012246183A - 熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法、熱線遮蔽微粒子含有組成物、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物を用いた熱線遮蔽膜、当該熱線遮蔽膜を用いた熱線遮蔽合わせ透明基材、および、それらの製造方法 - Google Patents
熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法、熱線遮蔽微粒子含有組成物、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物を用いた熱線遮蔽膜、当該熱線遮蔽膜を用いた熱線遮蔽合わせ透明基材、および、それらの製造方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】一般式MyWOZで示されかつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを、沸点120℃以下の有機溶剤に分散して分散液を得る第1工程と、第1工程で得られた分散液に可塑剤を混合して混合物を得る第2工程と、第2工程で得られた混合物を乾燥して熱線遮蔽微粒子含有組成物とし、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物に残留する前記有機溶剤の含有率を5質量%以下にする第3工程とを、有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法を提供する。
【選択図】なし
Description
第1の課題は、特許文献1〜4に記載された従来の技術に係る合わせガラスでは、上述したように、いずれも高い可視光透過率が求められたときの熱線遮蔽機能が十分でないことである。さらに透明基材の曇り具合を示すヘイズ値は、車両用窓材で1%以下、建築用窓材で3%以下とする必要があるのに対し、例えば、特許文献5に記載された熱線遮蔽用合わせガラスにおいても、未だ改善の余地を有していた。
そして、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物をポリビニルブチラール樹脂と混練し、かつ、押出成形法、カレンダー成形法等公知の方法により、フィルム状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外域に強い吸収をもつような熱線遮蔽合わせガラス用熱線遮蔽中間膜の作製が可能となることを見出すに至った。本発明はこのような技術的発見に基づき完成されたものである。
一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示されかつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを、沸点120℃以下の有機溶剤に分散して分散液を得る第1工程と、
第1工程で得られた分散液に可塑剤を混合して混合物を得る第2工程と、
第2工程で得られた混合物を乾燥して熱線遮蔽微粒子含有組成物とし、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物に残留する前記有機溶剤の含有率を5質量%以下にする第3工程とを、有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法である。
第2の発明は、
前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種であることを特徴とする第1の発明記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法である。
第3の発明は、
前記可塑剤が、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする第1または第2の発明記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法である。
第4の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする第1〜第3の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法である。
第5の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする第1〜第4の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法である。
第6の発明は、
第1〜第5の発明のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法で製造されることを特徴とする熱線遮蔽微粒子含有組成物である。
第7の発明は、
一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示されかつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含有し、沸点120℃以下の有機溶剤の含有率(残留率)が0質量%を超え0.06質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽膜である。
第8の発明は、
前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種であることを特徴とする第7または第8発明記載の熱線遮蔽膜である。
第9の発明は、
前記可塑剤が、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする第7または第8発明記載の熱線遮蔽膜である。
第10の発明は、
前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする第7〜第9発明のいずれかに記載の熱線遮蔽膜である。
第11の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤を混練し、フィルム状に成形することにより製造されたことを特徴とする第7〜第10発明のいずれかに記載の熱線遮蔽膜である。
第12の発明は、
前記熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤を混練した後にフィルム状に成形することを特徴とする第11の発明記載の熱線遮蔽膜の製造方法である。
第13の発明は、
第7〜第11発明記載の熱線遮蔽膜が二枚の透明基材の間に存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材である。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物は、熱線遮蔽機能を有する微粒子、分散剤、有機溶剤、およびカルボン酸の金属塩、さらに所望によりその他の添加剤を含有している。
以下、熱線遮蔽微粒子含有組成物の各々の成分について説明する。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物に用いられる熱線遮蔽機能を有する微粒子は、複合タングステン酸化物微粒子である。複合タングステン酸化物微粒子は、近赤外線領域、特に波長1000nm以上の光を大きく吸収するため、その透過色調はブルー系の色調となるものが多い。
当該複合タングステン酸化物微粒子の粒子径は、その使用目的によって適宜選定することができる。例えば、透明性を保持した応用に使用する場合は、当該複合タングステン酸化物微粒子は、40nm以下の分散粒子径を有していることが好ましい。40nmよりも小さい分散粒子径であれば、散乱により光を完全に遮蔽することが無く、可視光領域の視認性を保持し、同時に効率よく透明性を保持することができるからである。
以下、熱線遮蔽機能を有する微粒子である複合タングステン酸化物微粒子およびその製造方法についてさらに説明する。
一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示され、かつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子としては、Cs0.33WO3、Rb0.33WO3、K0.33WO3、Ba0.33WO3などを挙げることができるが、y、zが上記の範囲に収まるものであれば、有用な熱線遮蔽特性を得ることができる。添加元素Mの添加量は、0.1以上0.5以下が好ましく、さらに好ましくは0.33付近である。これは六方晶の結晶構造から理論的に算出される値が0.33であり、この前後の添加量で好ましい光学特性が得られるからである。また、Zの範囲については、2.2≦z≦3.0が好ましい。これは、MyWOZで表記される複合タングステン酸化物材料においても、上述したWOxで表記されるタングステン酸化物材料と同様の機構が働くのに加え、z≦3.0においても、上述した元素Mの添加による自由電子の供給があるためである。尤も、光学特性の観点から、より好ましくは2.45≦z≦3.00である。
一般式MyWOZ表記される複合タングステン酸化物微粒子は、タングステン化合物出発原料を不活性ガス雰囲気または還元性ガス雰囲気中で熱処理して得ることができる。
まず、タングステン化合物出発原料について説明する。
タングステン化合物出発原料には、三酸化タングステン粉末、ニ酸化タングステン粉末、または酸化タングステンの水和物、または、六塩化タングステン粉末、またはタングステン酸アンモニウム粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させた後乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、または、六塩化タングステンをアルコール中に溶解させたのち水を添加して沈殿させこれを乾燥して得られるタングステン酸化物の水和物粉末、またはタングステン酸アンモニウム水溶液を乾燥して得られるタングステン化合物粉末、金属タングステン粉末、から選ばれた、いずれか1種類以上であることが好ましい。
まず、不活性ガス雰囲気中における熱処理条件としては、650℃以上が好ましい。650℃以上で熱処理された出発原料は、十分な近赤外線吸収力を有し熱線遮蔽微粒子として効率が良い。不活性ガスとしてはAr、N2等の不活性ガスを用いることがよい。
また、還元性雰囲気中における熱処理条件としては、出発原料を、まず還元性ガス雰囲気中にて100℃以上650℃以下で熱処理し、次いで不活性ガス雰囲気中にて650℃以上1200℃以下の温度で熱処理することが良い。この時の還元性ガスは、特に限定されないが、H2が好ましい。そして、還元性ガスとしてH2を用いる場合は、還元性雰囲気の組成として、例えば、Ar、N2等の不活性ガスにH2を体積比で0.1%以上を混合することが好ましく、さらに好ましくは0.2%以上混合したものである。H2が体積比で0.1%以上であれば効率よく還元を進めることができる。
水素で還元された出発原料粉末は、マグネリ相を含み、良好な熱線遮蔽特性を示す。従って、この状態でも熱線遮蔽微粒子として使用可能である。
当該粉体色を有する複合タングステン酸化物微粒子を用いることで、優れた光学特性を有する熱線遮蔽膜を得ることが出来る。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物に用いられる分散剤は、示差熱熱質量同時測定装置(以下、TG−DTAと記載する場合がある。)で測定される熱分解温度が200℃以上あって、ウレタン、アクリル、スチレン主鎖を有する分散剤が好ましい。ここで、熱分解温度とはTG−DTA測定において、分散剤の分解により質量減少が始まる温度である。熱分解温度が200℃以上であれば、ポリビニルアセタール樹脂との混練時に当該分散剤が分解することがないからである。これによって、分散剤の分解に起因した熱線遮蔽膜の褐色着色、可視光透過率の低下、本来の光学特性が得られない事態を回避出来るからである。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物に用いられる有機溶剤は、120℃以下の沸点を持つものが好ましく使用される。沸点が120℃以下であれば、乾燥工程、特に減圧乾燥で除去することが容易である。この結果、減圧乾燥の工程で除去することが迅速に進み、熱線遮蔽微粒子含有組成物の生産性に寄与するからである。さらに、減圧乾燥の工程が容易かつ十分に進行するので、本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物中に過剰な有機溶剤が残留するのを回避できる。この結果、熱線遮蔽膜成形時に気泡の発生などの不具合が発生することを回避できる。具体的には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールが挙げられるが、沸点が120℃以下で熱線遮蔽機能を発揮する微粒子を均一に分散可能なものであれば、任意に選択できる。
本発明に係るポリビニルアセタール樹脂を主成分とした熱線遮蔽膜に用いられる可塑剤は、一価アルコールと有機酸エステルとの化合物である可塑剤や、多価アルコール有機酸エステル化合物等のエステル系である可塑剤、有機リン酸系可塑剤等のリン酸系である可塑剤が挙げられ、いずれも室温で液状であることが好ましい。特に、多価アルコールと脂肪酸から合成されたエステル化合物である可塑剤が好ましい。
なかでも、トリエチレングリコールジヘキサネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−オクタネート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネート等のトリエチレングリコールの脂肪酸エステルが好適である。さらにこれらの中でもトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート、トリエチレングリコールジ−2−エチルヘキサネートがより好適である。トリエチレングリコールの脂肪酸エステルは、ポリビニルアセタール樹脂との相溶性や耐寒性など様々な性質をバランスよく備えており、加工性、経済性にも優れている。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物は、熱線遮蔽機能を有する微粒子と、分散剤とを、有機溶剤に分散して分散液を得る第1工程、第1工程を経て得られた分散液に、可塑剤を混合する第2工程、第2工程にて得られた混合物から有機溶剤の残留量が5質量%以下となるまで、有機溶剤を除去する第3工程を経て製造される。
以下、熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法に係る各製造工程について説明する。
熱線遮蔽機能を有する微粒子である複合タングステン酸化物微粒子と分散剤とを、有機溶剤に分散して分散液を得る工程である。
複合タングステン酸化物微粒子の有機溶剤への分散方法は、当該微粒子が均一に有機溶剤に分散する方法であれば任意に選択できる。例としては、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、超音波分散などの方法を用いることが出来る。尤も、分散液中の複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径で40nm以下に分散する分散方法を採ることが望ましい。平均粒径が40nm以下であれば、加工後の熱線遮蔽膜のヘイズ等の光学特性がより望ましく向上するからである。当該第1工程で分散液中の複合タングステン酸化物の平均粒径を40nm以下とすることで、その後、第2工程において可塑剤を添加混合し、第3工程にて有機溶剤を除去しても当該平均粒径は保たれる。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法の第1工程で分散液を得た後に、第2工程で可塑剤を混合する。前記可塑剤の混合方法は、公知の混合方法を用いればよい。第2工程で可塑剤を添加するのは、分散工程である第1工程において、複合タングステン酸化物微粒子の分散に影響を与えない為である。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物を得るための乾燥工程は、有機溶剤の除去のために行われる工程である。当該工程は、得られた混合物を減圧乾燥する方法が好ましい。具体的には、減圧乾燥法では、上記混合物を攪拌しながら減圧乾燥して、熱線遮蔽微粒子含有組成物と有機溶剤成分とを分離する。減圧乾燥に用いる装置としては、真空攪拌型の乾燥機があげられるが、上記機能を有する装置であれば良く、特に限定されない。また、乾燥工程の減圧の圧力は適宜選択される。
尤も、熱線遮蔽微粒子含有組成物に残留する有機溶剤が5質量%を超えたとしても、後述するポリビニルアセタール樹脂との混合比を制御することで熱線遮蔽膜に残留する有機溶剤の量を0.06質量%以下に抑えることが出来るようにも思える。
しかしながら、熱線遮蔽微粒子含有組成物中の有機溶剤が5質量%を超えた場合、熱線遮蔽膜に残留する有機溶剤含有率を0.06質量%以下に抑えるには、熱線遮蔽膜への熱線遮蔽微粒子含有組成物の添加量を削減(または、ポリビニルアセタール樹脂の添加量を増加)しながら、複合タングステン酸化物微粒子の添加量は確保する必要がある。その為、熱線遮蔽微粒子含有組成物製造に用いられる前記分散液中の複合タングステン酸化物微粒子の含有率が50質量%を超えてしまい凝集を起こし易くなる。
そこで、当該分散液中の複合タングステン酸化物微粒子の凝集を回避し、熱線遮蔽膜中の複合タングステン酸化物の分散を保ち、光学特性を発揮させる為には、熱線遮蔽微粒子含有組成物に残留する有機溶剤を5質量%以下とすることが求められる。
以上、説明したように本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物は、上述した第1〜3工程を採って製造される。
これに対し従来技術では、複合タングステン酸化物微粒子をポリビニルアセタール樹脂に直接混錬する方法が採られていた。この結果、ポリビニルアセタール樹脂中において、複合タングステン酸化物微粒子を微粒子として分散することが難しく凝集を生じて、可視光の鮮明な透明性を実現出来なかった。この為、製造される熱線遮蔽合わせ透明基材において光学特性を満足することが難しかった。
しかしながら、当該構成を採ることで、第1工程で分散液中の複合タングステン酸化物の平均粒径を40nm以下に出来、さらにその後、第2工程において可塑剤を添加混合し、第3工程にて有機溶剤を除去して得られた熱線遮蔽微粒子含有組成物においても当該平均粒径が保たれることを知見した。そして、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂とを混錬することで、得られた熱線遮蔽膜のヘイズ等の光学特性が大きく向上した。
本発明に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物へは、さらに、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、必要に応じて任意の色調を与えるための、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料を添加しても良い。また、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の有機紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加剤として添加することができる。
本発明に係る熱線遮蔽膜は、上述した熱線遮蔽微粒子含有組成物と、ポリビニルアセタール樹脂と、所望によりその他の可塑剤、添加剤や接着力調整剤とを混合し、混練した後、押出成形法、カレンダー成形法等の公知の方法により、例えば、フィルム状に成形することによって得られる。本発明の熱線遮蔽膜の前記有機溶剤の含有率(残留率)は、0.06質量%以下である。
以下、ポリビニルアセタール樹脂、可塑剤、接着力調整剤、さらに、熱線遮蔽膜の製造方法について説明する。
ポリビニルアセタール樹脂としては、ポリビニルブチラール樹脂が特に好ましい。
また、熱線遮蔽膜の物性を考慮した上で、アセタール化度が異なる複数のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。更に、アセタール化時に複数種類のアルデヒドを組み合わせて反応させた共ポリビニルアセタール樹脂も用いることができる。上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は60%、好ましい上限は75%である。
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドによりアセタール化することにより調製することができる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。重合度が200以上であると、得られる熱線遮蔽合わせ透明基材の貫通への耐性が保持され、熱線遮蔽合わせ透明基材の安全性が保たれる。一方、重合度が3000以下であれば、樹脂膜の成形性が良く、また、樹脂膜の剛性が大きくなり過ぎず、加工性が保たれる。
本発明に係る熱線遮蔽膜は、上記熱線遮蔽微粒子含有組成物と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを混合し混練した後、押出成形法、カレンダー成形法等の、公知の方法によりフィルム状に成形することによって得られる。なお、予め可塑剤と混錬されたポリビニルアセタール樹脂と上記熱線遮蔽微粒子含有組成物と混錬しても良い。このように可塑剤と熱線遮蔽微粒子含有組成物のポリビニルアセタール樹脂への混錬が別々な場合には、熱線遮蔽膜に含まれる全可塑剤含有率に留意する必要がある。
本発明に係る熱線遮蔽膜は、上記熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂と可塑剤とを混錬して得る。ところが、上記熱線遮蔽微粒子含有組成物には、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールをはじめとする沸点が120℃以下の有機溶剤が5質量%以下含有されている。そのため、本発明に係る熱線遮蔽膜は、沸点120℃以下の有機溶剤を含有することとなる。ここで、熱線遮蔽膜はトルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールをはじめとする沸点120℃以下の有機溶剤をできる限り含まないことが望ましい。しかし本発明に係る熱線遮蔽膜は、不可避的に熱線遮蔽微粒子含有組成物由来の、沸点120℃以下の有機溶剤を含むこととなる。
本発明に係る熱線遮蔽膜中の沸点120℃以下の有機溶剤の含有率が0.06質量%以下であるならば、熱線遮蔽中間膜に微細な気泡が生じることがなく、熱線遮蔽中間膜が曇りガラス状となって可視光透過率を低下させるという問題を回避出来る。
熱線遮蔽膜の物性を考慮し、上記熱線遮蔽微粒子含有組成物に用いた可塑剤や、それ以外の可塑剤を、本発明に係る熱線遮蔽膜へさらに添加しても良い。
上述した以外の可塑剤の例として、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の多塩基性カルボン酸と、炭素数4〜8の直鎖又は分岐構造を有するアルコールとのエステル化合物や、リン酸系可塑剤を挙げることが出来る。
熱線遮蔽膜へのこれら可塑剤の全添加量は、熱線遮蔽膜の物性を考慮して添加量を定めればよいが、望ましい全添加量は10質量%〜70質量%である。
本発明に係る熱線遮蔽膜へ、接着力調整剤を含有させることも好ましい。
当該接着力調整剤としては、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩が好適に用いられる。上記塩を構成する相手方の酸としては、例えば、オクチル酸、ヘキシル酸、酪酸、酢酸、蟻酸等のカルボン酸、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられる。
アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩の中でも、炭素数2〜16のカルボン酸マグネシウム塩及び炭素数2〜16のカルボン酸カリウム塩が更に好ましい。
本発明に係る熱線遮蔽膜へは、さらに、一般的な添加剤を配合することも可能である。例えば、必要に応じて任意の色調を与えるための、アゾ系染料、シアニン系染料、キノリン系、ペリレン系染料、カーボンブラック等、一般的に熱可塑性樹脂の着色に利用されている染料、顔料を添加しても良い。また、ヒンダードフェノール系、リン系等の安定剤、離型剤、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチル酸系、HALS系、トリアゾール系、トリアジン系等の有機紫外線吸収剤、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等の無機紫外線吸収剤、カップリング剤、界面活性剤、帯電防止剤等を添加剤として添加することができる。
本発明に係る熱線遮蔽合わせ透明基材は、熱線遮蔽膜を存在させた無機ガラスや透明樹脂を初めとする透明基材を、公知の方法で張り合わせ一体化するよって得られる。得られた熱線遮蔽合わせガラスは、主に自動車のフロントガラスや建物の窓として使用することが出来る。
用途によっては、熱線遮蔽膜単体として使用すること、ガラスや透明樹脂等の透明基材の片面または両面に熱線遮蔽膜を存在させて使用することも、勿論可能である。
以上、詳細に説明したように、熱線遮蔽成分として複合タングステン酸化物微粒子と分散剤とを、沸点120℃以下の有機溶剤に分散して得られる分散液に、可塑剤を混合した後、減圧乾燥法を用いて該有機溶剤を5質量%以下まで除去することにより、熱線遮蔽微粒子含有組成物を得ることが出来た。そして、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤を混練し、かつ、公知の方法により、フィルム状に成形することによって、可視光領域に透過率の極大を持つと共に近赤外域に強い吸収をもつような熱線遮蔽合わせ透明基材用の熱線遮蔽膜の作製が可能となった。
但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、各実施例における複合タングステン酸化物微粒子の粉体色(10°視野、光源D65)、および、熱線遮蔽合わせガラスの可視光透過率並びに日射透過率は、(株)日立製作所製の分光光度計U−4000を用いて測定した。
尚、当該日射透過率は、熱線遮蔽合わせガラスの熱線遮蔽性能を示す指標である。
また、ヘイズ値は村上色彩技術研究所(株)社製HR−200を用い、JISK7105に基づいて測定した。
H2WO450gとCs(OH)218.7g(Cs/W(モル比)=0.33相当)とを、メノウ乳鉢で十分混合して混合粉末とした。当該混合粉末を、N2ガスをキャリアーとした5%H2ガス供給の雰囲気下で加熱し、600℃の温度で1時間の還元処理を行った後、N2ガス雰囲気下で800℃、30分間焼成して微粒子(以下、微粒子aと略称する。)からなる粉体を得た。微粒子aの組成式はCs0.33WO3であり、粉体色のL*が35.2745、a*が1.4918、b*が−5.3118であった。
次に、微粒子a20質量%と、官能基としてアミンを含有する基を有するアクリル系分散剤(アミン価15mgKOH/g、熱分解温度230℃)、(以下、分散剤aと略称する。)10質量%と、メチルイソブチルケトン70質量%とを秤量し、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーに装填し、6時間粉砕・分散処理することによって複合タングステン酸化物微粒子分散液(以下、A液と略称する。)を調製した。
合わせガラスAの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.8%のときの日射透過率は40.2%で、ヘイズ値は0.3%であった。この結果を表1に示した。
有機溶剤としてメチルエチルケトンを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物(以下、組成物Bと略称する。)を得た。ここで、組成物Bの残留メチルエチルケトン量を乾量式水分計で測定したところ、3.1質量%であった。また、組成物B内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ、21nmであった。
合わせガラスBの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.5%のときの日射透過率は39.8%で、ヘイズ値は0.4%であった。この結果を表1に示した。
微粒子a20質量%と、メチルトリメトキシシラン10質量%と、エタノール70質量%とを秤量し、0.3mmφZrO2ビーズを入れたペイントシェーカーで6時間粉砕・分散処理することによって複合タングステン酸化物微粒子分散液を調製した。当該複合タングステン酸化物微粒子分散液からスプレードライヤーを用いてメチルイソブチルケトンを除去し、シラン化合物にて表面処理を施した複合タングステン酸化物微粒子(以下、微粒子cと略称する。)を得た。
合わせガラスCの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.9%のときの日射透過率は40.7%で、ヘイズ値は0.6%であった。この結果を表1に示した。
有機溶剤としてメチルイソブチルケトンに代えて、トルエンを使用した以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物(以下、組成物Dと略称する。)を得た。ここで、組成物Dの残留トルエン量を乾量式水分計で測定したところ、2.8質量%であった。また、組成物D内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ、22nmであった。
合わせガラスDの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.1%のときの日射透過率は39.5%で、ヘイズ値は0.4%であった。この結果を表1に示した。
可塑剤としてとしてトリエチレングリコールジ−2−エチルブチレート(以下、可塑剤eと略称する。)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物(以下、組成物Eと略称する。)を得た。ここで、組成物Eの残留メチルイソブチルケトン量を乾量式水分計で測定したところ、3.3質量%であった。また、組成物E内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ、22nmであった。
合わせガラスEの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.3%のときの日射透過率は39.6%で、ヘイズ値は0.4%であった。この結果を表1に示した。
水13.5gにRbNO38.8gを溶解し、これをH2WO445.3gに添加(Rb/W=0.33相当)して十分攪拌した後、乾燥した。当該乾燥物を、N2ガスをキャリアーとした2%H2ガスを供給しながら加熱し、800℃の温度で30分間焼成した後、同温度でN2ガス雰囲気下800℃で90分間焼成して微粒子(以下、微粒子fと略称する。)を得た。
微粒子fの組成式は、Rb0.33WO3であり、粉体色のL*が36.3938、a*が−0.2385、b*が−3.8318であった。
合わせガラスFの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率75.1%のときの日射透過率は42.3%で、ヘイズ値は0.4%であった。この結果を表1に示した。
分散剤として官能基としてカルボキシル基を官能基として有するアクリル−スチレン共重合体系分散剤(以下、分散剤gと略称する。)を使用した以外は、実施例1と同様にして実施例7に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物(以下、組成物Gと略称する。)を得た。ここで、組成物Gの残留メチルイソブチルケトン量を乾量式水分計で測定したところ、3.6質量%であった。また、組成物G内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ、21nmであった。
合わせガラスGの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率74.5%のときの日射透過率は39.9%で、ヘイズ値は0.4%であった。この結果を表1に示した。
減圧乾燥が行える真空攪拌型乾燥機を使用せず、常圧80℃で6時間攪拌してメチルイソブチルケトンを除去した以外は実施例1と同様にして比較例1に係る熱線遮蔽微粒子含有組成物(以下、組成物Hと略称する。)を得た。ここで、組成物Hの残留メチルイソブチルケトン量を乾量式水分計で測定したところ、7.8質量%であった。また、組成物E内におけるタングステン酸化物微粒子の分散平均粒子径を日機装製マイクロトラック粒度分布計で測定したところ、65nmであった。次に、得られた組成物Hを使用した以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る熱線遮蔽合わせガラス用熱線遮蔽中間膜(以下、中間膜Hと略称する。)を得た。
使用した組成物Hの残留トルエンが7.8質量%と多いため、ポリビニルブチラール樹脂との混練時に残留メチルイソブチルケトンが十分に取り除けず、中間膜H内に気泡が見られ、外観が良くなかった。なお、中間膜Hの有機溶剤の含有量は、仕込み組成と組成物Hの残留メチルイソブチルケトン量から算出して0.117質量%であった。
合わせガラスHの光学特性は、表1に示すように、可視光透過率72.8%のときの日射透過率は39.7%で、ヘイズ値は1.9%であった。これは、真空攪拌型乾燥機を使用せずに、常圧で長時間加熱してメチルイソブチルケトンを除去したため、微粒子の凝集が起こり、ヘイズが高くなり透明性が損なわれたものと考えられる。この結果を表1に示した。
実施例1〜7においては、真空型攪拌乾燥機を使用することで、熱線遮蔽微粒子含有組成物中における有機溶剤残留量を5質量%以下の範囲にしている。このため、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物から製造した中間膜内に気泡なく、外観が良い合わせガラスA〜Gが得られている。また、真空型攪拌乾燥機を使用することで、短時間で有機溶剤を除去することが可能となり、長時間過熱することによる、熱線遮蔽微粒子含有組成物内における微粒子の凝集を防ぐことが出来た。この結果、該熱線遮蔽微粒子含有組成物から製造した中間膜を用いて、ヘイズの低い透明な合わせガラスA〜Gが得られた。
Claims (13)
- 一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示されかつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、分散剤とを、沸点120℃以下の有機溶剤に分散して分散液を得る第1工程と、
第1工程で得られた分散液に可塑剤を混合して混合物を得る第2工程と、
第2工程で得られた混合物を乾燥して熱線遮蔽微粒子含有組成物とし、当該熱線遮蔽微粒子含有組成物に残留する前記有機溶剤の含有率を5質量%以下にする第3工程とを、有することを特徴とする熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法。 - 前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法。
- 前記可塑剤が、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1または2記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、Si、Ti、Zr、Alの1種類以上を含有する化合物によって表面処理されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法。
- 請求項1から5に記載の熱線遮蔽微粒子含有組成物の製造方法で製造されることを特徴とする熱線遮蔽微粒子含有組成物。
- 一般式MyWOZ(但し、Mは、Cs、Rb、K、Tl、In、Ba、Li、Ca、Sr、Fe、Sn、Al、Cuから選択される1種類以上の元素、0.1≦y≦0.5、2.2≦z≦3.0)で示されかつ六方晶の結晶構造を持つ複合タングステン酸化物微粒子と、ポリビニルアセタール樹脂と、可塑剤とを含有し、沸点120℃以下の有機溶剤の含有率(残留率)が0質量%を超え0.06質量%以下であることを特徴とする熱線遮蔽膜。
- 前記有機溶剤が、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、イソプロピルアルコール、エタノールから選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項7記載の熱線遮蔽膜。
- 前記可塑剤が、トリエチレングリコールの脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項7または8記載の熱線遮蔽膜。
- 前記複合タングステン酸化物微粒子が、平均粒径40nm以下の微粒子であることを特徴とする請求項7〜9のいずれかに記載の熱線遮蔽膜。
- 前記熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤を混練し、フィルム状に成形することにより製造されたことを特徴とする請求項7〜10に記載の熱線遮蔽膜。
- 前記熱線遮蔽微粒子含有組成物とポリビニルアセタール樹脂と前記可塑剤を混練した後にフィルム状に成形することを特徴とする請求項11に記載の熱線遮蔽膜の製造方法。
- 請求項7〜11に記載の熱線遮蔽膜が二枚の透明基材の間に存在していることを特徴とする熱線遮蔽合わせ透明基材。
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