しかしながら、上記特許文献1のマルチバンド対応のMIMOアンテナ(マルチアンテナ装置)では、スイッチング制御により、各アンテナ素子の全長を切り替えて異なるバンド(周波数帯)に対応可能である一方、アンテナ素子間の相互結合を小さくするためにアンテナ素子間の距離を大きく広げる必要があるので、MIMOアンテナ(マルチアンテナ装置)を小型化することができないという問題点がある。
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することが可能なマルチバンド対応のマルチアンテナ装置、および、そのようなマルチバンド対応のマルチアンテナ装置を備えた通信機器を提供することである。
課題を解決するための手段および発明の効果
上記目的を達成するために、本願発明者が鋭意検討した結果、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子を設けることによって、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができ、その結果、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することができることを見い出した。なお、上記構成によりアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるという効果は、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
すなわち、この発明の第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置は、第1周波数帯および第2周波数帯に対応する第1アンテナ素子と、第1周波数帯および第2周波数帯に対応する第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置され、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子とを備える。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置では、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子を設けることによって、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の間の相互結合を小さくすることができるので、その分、アンテナ素子間の距離を小さくすることができ、その結果、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置を小型化することができる。したがって、このマルチバンド対応のマルチアンテナ装置は、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することができる。
また、1つの無給電素子を第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振するように構成することによって、第1周波数帯に対応する周波数で共振する無給電素子と、第2周波数帯に対応する周波数で共振する無給電素子とを互いに別個に設ける場合に比べて、無給電素子の配置スペースが大きくなるのを抑制することができる。さらに、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子を、共に、第1周波数帯および第2周波数帯に対応するように構成することによって、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)が第1周波数帯および第2周波数帯の両方に兼用されるので、周波数帯毎に異なるアンテナ素子を設ける場合に比べて、より小さいスペースにアンテナ素子を配置することができる。これらにより、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置をより小型化することができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、無給電素子は、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間において、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の両方に電磁界結合可能な位置に配置されている。なお、本願において、電磁界結合とは、静電結合および磁界結合の両方を含む広い概念である。このように構成すれば、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する無給電素子を、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の両方に電磁界結合させてアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、非接地である。このように構成すれば、無給電素子を所定の接地面に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。
この場合、好ましくは、無給電素子は、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子により第1周波数帯に対応して出力される電波の波長λ1の略1/2の電気長を有する第1経路と、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子により第2周波数帯に対応して出力される電波の波長λ2の略1/2の電気長を有する第2経路とが形成されるように構成されている。このように構成すれば、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方において、非接地の1つの無給電素子を容易に共振させることができる。
上記無給電素子に第1経路と第2経路とが形成される構成において、好ましくは、無給電素子は、本体部と本体部から分岐される分岐部とを含み、第1経路は本体部により構成され、第2経路は本体部の一部と分岐部とにより構成されている。このように構成すれば、無給電素子の本体部が第1経路および第2経路の両方に兼用されるので、第1経路および第2経路をそれぞれ別個の部分により形成する場合に比べて、無給電素子を小型化することができ、その結果、マルチアンテナ装置のさらなる小型化を図ることができる。
上記無給電素子が本体部と分岐部とを含む構成において、好ましくは、分岐部は、本体部の全長の略1/2の位置から分岐しており、無給電素子は、本体部により構成されるとともに波長λ1の略1/2の電気長を有する第1経路と、本体部の第1アンテナ素子側の部分と分岐部とにより構成されるとともに波長λ2の略1/2の電気長を有する第2経路と、本体部の第2アンテナ素子側の部分と分岐部とにより構成されるとともに第2経路と略同じ波長λ2の略1/2の電気長を有する第3経路とが形成されるように構成されている。このように構成すれば、第1経路により、第1周波数帯に対応する周波数において容易に無給電素子を共振させることができるとともに、第1アンテナ素子側の第2経路および第2アンテナ素子側の第3経路により、それぞれ、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子から出力される電波に対して効果的に無給電素子を共振させることができる。
上記分岐部が本体部の全長の略1/2の位置から分岐する構成において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、高周波電力が供給される第1アンテナ素子および第2アンテナ素子のそれぞれの給電点どうしを結ぶ直線に垂直でかつ給電点間の中点を通る基準直線に対して、互いに略線対称な形状に形成されており、無給電素子の本体部は、基準直線に対して略線対称な形状に形成されている。このように構成すれば、アンテナ素子および無給電素子の本体部のそれぞれがバランスよく配置されるので、アンテナ素子間の相互結合を小さくしながら利得のばらつきを抑制することができる。
上記本体部が基準直線に対して略線対称な形状に形成された構成において、好ましくは、分岐部は、基準直線に対して略線対称な形状に形成された本体部の全長の略1/2の位置から分岐するとともに、屈曲または湾曲した形状に形成されている。このように構成すれば、分岐部の屈曲または湾曲した形状により、分岐部に必要な長さを容易に確保することができるので、分岐部の配置スペースが広がるのを抑制することができる。また、分岐部を直線状に形成する場合に比べて、無給電素子の共振点の位置を所望の周波数に合わせる調整をし易くすることができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子および無給電素子は、共に、複数の位置で屈曲または湾曲した形状に形成されている。このように構成すれば、アンテナ素子および無給電素子の屈曲または湾曲した形状により、アンテナ素子および無給電素子のそれぞれに必要な長さを容易に確保することができるので、アンテナ素子および無給電素子の配置スペースが広がるのを抑制することができ、その結果、マルチアンテナ装置をより小型化することができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、無給電素子は、複数の面に跨って配置されている。このように構成すれば、無給電素子を平面的に見て異なる面に重なるように配置することができるので、平面的に見て、無給電素子をより小さいスペースに配置することができる。これにより、平面的に見て、マルチアンテナ装置を小型化することができる。また、無給電素子を異なる面に配置することができるので、機器内構成の配置の自由度の向上を図ることができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、共に、第1周波数帯および第2周波数帯に加えて、第3周波数帯に対応しており、無給電素子は、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数に加えて、第3周波数帯に対応する周波数でも共振するように構成されている。このように構成すれば、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することが可能なトリプルバンドに対応したマルチアンテナ装置を得ることができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子側および第2アンテナ素子側のそれぞれにおいて、アンテナ素子と高周波電力が供給される給電点との間に配置され、高周波電力の第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数において、インピーダンス整合を図るための整合回路をさらに備える。このように構成すれば、整合回路により、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数においてインピーダンス整合を図ることができるので、マルチアンテナ装置の小型化を図りながらアンテナ素子を介して伝達されるエネルギの伝達損失を軽減することができる。
上記第1の局面によるマルチバンド対応のマルチアンテナ装置において、好ましくは、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子は、モノポールアンテナを含む。このように構成すれば、ダイポールアンテナに比べて小型のモノポールアンテナを用いたマルチバンド対応のマルチアンテナ装置を小型化することができる。
この発明の第2の局面によるマルチバンド対応の通信機器は、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置を備える通信機器であって、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置は、第1周波数帯および第2周波数帯に対応する第1アンテナ素子と、第1周波数帯および第2周波数帯に対応する第2アンテナ素子と、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に配置され、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子とを含む。
この発明の第2の局面によるマルチバンド対応の通信機器では、上記のように、第1アンテナ素子と第2アンテナ素子との間に、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子を設けることによって、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子の間の相互結合を小さくすることができるので、その分、アンテナ素子間の距離を小さくすることができ、その結果、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置を小型化することができる。これにより、そのようなマルチバンド対応のマルチアンテナ装置を備えた通信機器自体の小型化も図ることができる。したがって、この通信機器は、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することができる。特に、携帯電話のように小型化が望まれる通信機器において本発明はより有効である。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
(第1実施形態)
まず、図1および図2を参照して、本発明の第1実施形態による携帯電話機100の構成について説明する。なお、第1実施形態では、本発明のマルチアンテナ装置10を、通信機器としての携帯電話機100に適用した例について説明する。
本発明の第1実施形態による携帯電話機100は、図1に示すように、表示画面部1と操作部2とを備えている。また、携帯電話機100の筐体内部には、通信部3とマルチバンド対応のマルチアンテナ装置10とが設けられている。
表示画面部1は、液晶ディスプレイからなり、画像を表示可能に構成されている。操作部2は、複数のボタンからなり、ユーザの操作を受付可能に構成されている。通信部3は、マルチアンテナ装置10により送受信される電波を用いて通信を行うように構成されている。
マルチアンテナ装置10は、複数のアンテナ素子を用いて所定の周波数において多重の入出力が可能なMIMO(Multiple−Input Multiple−Output)通信用に構成されている。また、マルチアンテナ装置10は、1.5GHz帯および2.0GHz帯の2つの異なるバンド(周波数帯)に対応している。なお、1.5GHz帯は、本発明の「第1周波数帯」の一例であり、2.0GHz帯は、本発明の「第2周波数帯」の一例である。
マルチアンテナ装置10は、図2に示すように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12と、2つのアンテナ素子11および12の間に配置される1つの無給電素子13と、接地面14とを含んでいる。さらに、マルチアンテナ装置10は、第1アンテナ素子11に高周波電力を供給するための第1給電点15と、第2アンテナ素子12に高周波電力を供給するための第2給電点16と、インピーダンス整合を図るための第1整合回路17および第2整合回路18とを含んでいる。なお、第1給電点15および第2給電点16は、本発明の「給電点」の一例であり、第1整合回路17および第2整合回路18は、本発明の「整合回路」の一例である。
第1アンテナ素子11は、無給電素子13のX1方向側に配置されるとともに、第2アンテナ素子12は、無給電素子13のX2方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12は、共に、図示しない基板の表側の表面上に設けられている。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12は、第1給電点15と第2給電点16とを結ぶ直線に垂直で、かつ、第1給電点15および第2給電点16間の中点を通る基準直線に対して互いに略線対称な形状に形成されている。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、薄板形状を有している。また、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、モノポールアンテナである。具体的には、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)は、マルチアンテナ装置10が対応する1.5GHzの波長λ1の約1/4の電気長を有する第1周波数帯対応部111(121)と、2.0GHzの波長λ2の約1/4の電気長を有する第2周波数帯対応部112(122)とを含んでいる。なお、1.5GHzの真空中の波長は200mmであり、2.0GHzの真空中の波長は150mmである。また、電気長とは、真空中の1波長ではなく、アンテナを構成する導体上を進む信号の1波長を基準とした長さである。第1周波数帯対応部111(121)および第2周波数帯対応部112(122)は、共に、一方端部が開放されているとともに、他方端部が第1給電点15(第2給電点16)を介して接地面14に接地されている。また、第1周波数帯対応部111(121)および第2周波数帯対応部112(122)は、互いに一体的に形成されている。
第1周波数帯対応部111(121)は、第1給電点15(第2給電点16)に接続される給電接続部分111a(121a)と、給電接続部分111a(121a)に連結される本体部分111b(121b)とを有している。第1周波数帯対応部111(121)の給電接続部分111a(121a)は、第1給電点15(第2給電点16)からY1方向に延びるように直線形状に形成されている。すなわち、第1アンテナ素子11の給電接続部分111aと第2アンテナ素子12の給電接続部分121aとは、互いに平行に配置されている。
本体部分111b(121b)は、給電接続部分111a(121a)の第1給電点15(第2給電点16)が設けられる側とは反対側(Y1方向側)の端部に連結されている。また、本体部分111b(121b)は、第2周波数帯対応部112(122)に対して第1給電点15(第2給電点16)が配置される側(Y2方向側)とは反対側(Y1方向側)に配置されている。また、本体部分111b(121b)は、X方向(第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が互いに対向する方向)において複数の位置で折り返しながらY1方向に延伸するように構成されている。すなわち、本体部分111b(121b)は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、本体部分111b(121b)の全長は、給電接続部分111a(121a)の全長よりも長くなるように構成されている。
第2周波数帯対応部112(122)は、Y方向(第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が互いに対向する方向に直交する方向)において複数の位置で折り返しながら外側(無給電素子13が配置される側とは反対側)に延伸するように構成されている。すなわち、第2周波数帯対応部112(122)は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、第2周波数帯対応部112(122)は、第1周波数帯対応部111(121)の給電接続部分111a(121a)の外側に配置されている。また、第2周波数帯対応部112(122)は、第1周波数帯対応部111(121)の本体部分111b(121b)のY2方向側で本体部分111b(121b)に隣接するように配置されている。また、第2周波数帯対応部112(122)は、第1周波数帯対応部111(121)の給電接続部分111a(121a)と本体部分111b(121b)とにより囲まれた領域に配置されている。また、第2周波数帯対応部112(122)の外側端部は、第1周波数帯対応部111(121)の本体部分111b(121b)の外側端部と面一となるように配置されている。
無給電素子13は、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が互いに対向する領域に配置されている。また、無給電素子13は、接地面14に接地されない非接地状態で設けられている。また、無給電素子13は、1.5GHz帯に対応する周波数(1.5GHz近傍の周波数)および2.0GHz帯に対応する周波数(2.0GHz近傍の周波数)の両方で共振するように構成されている。また、無給電素子13は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、無給電素子13は、本体部131と、本体部131から分岐する分岐部132とを含んでいる。
本体部131は、平面的に見て、略C字形状に形成されている。詳細には、本体部131は、図2に示すように、基板の表側において、第1アンテナ素子11と結合可能な距離を隔てて配置された第1結合部131aと、第2アンテナ素子12と結合可能な距離を隔てて配置された第2結合部131bと、第1結合部131aおよび第2結合部131bを互いに接続する接続部131cとを有している。第1結合部131a、第2結合部131bおよび接続部131cは、共に、基板の表側の表面上に設けられている。なお、第1実施形態において、結合とは、静電結合および磁界結合の両方の結合を含む概念の電磁界結合である。
第1結合部131aおよび第2結合部131bは、共に、Y方向に延びる部分とそのY2方向側の端部からX方向に延びる部分とにより略L字形状に形成されている。また、第1結合部131a(第2結合部131b)は、Y方向に延びる部分が第1アンテナ素子11の本体部分111b(第2アンテナ素子12の本体部分121b)に対向するように配置されている。また、第1結合部131a(第2結合部131b)は、Y方向に延びる部分が第1アンテナ素子11の給電接続部分111a(第2アンテナ素子12の給電接続部分121a)にも対向するように配置されている。
接続部131cは、第1結合部131aのY1方向側の端部と第2結合部131bのY1方向側の端部とを接続するように構成されている。また、接続部131cは、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12の一方側から他方側に向かって直線状に延びる(X方向に延びる)ように形成されている。
このような構成により、本体部131は、第1結合部131aのX方向に延びる部分のX2方向側の端部(先端部)から、接続部131cを通って第2結合部131bのX方向に延びる部分のX1方向側の端部(先端部)に至る第1経路を構成している。第1経路は、第1周波数帯対応部111(121)が対応する1.5GHzの波長λ1の約1/2の電気長を有している。これにより、無給電素子13は、1.5GHz帯に対応する周波数(1.5GHz近傍の周波数)で共振される。また、本体部131は、上記基準直線に対して線対称な形状に形成されている。
無給電素子13の分岐部132は、本体部131の全長の略1/2の位置から分岐している。すなわち、分岐部132は、基板の表側の表面上に配置され、本体部131の接続部131cの略中央位置から分岐している。また、分岐部132は、本体部131により囲まれた領域内に配置されている。また、分岐部132は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、分岐部132は、上記基準直線に対して非対称形状に形成されている。
また、分岐部132および本体部131は、第1結合部131aのX方向に延びる部分のX2方向側の端部(先端部)から、接続部131cを通って分岐部132の先端部に至る第2経路を構成している。また、分岐部132および本体部131は、第2結合部131bのX方向に延びる部分のX1方向側の端部(先端部)から、接続部131cを通って分岐部132の先端部に至る第3経路を構成している。すなわち、第2経路は、分岐部132と本体部131の第1アンテナ素子11側の部分とにより構成され、第3経路は、分岐部132と本体部131の第2アンテナ素子12側の部分とにより構成されている。また、第2経路および第3経路は、共に、第2周波数帯対応部112(122)が対応する2.0GHzの波長λ2の約1/2の電気長を有している。これにより、無給電素子13は、2.0GHz帯に対応する周波数(2.0GHz近傍の周波数)で共振される。
第1給電点15(第2給電点16)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)のY2方向側の端部に配置されている。また、第1給電点15(第2給電点16)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)と図示しない給電線とを接続している。
第1整合回路17(第2整合回路18)は、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)と第1給電点15(第2給電点16)との間に配置されている。また、第1整合回路17(第2整合回路18)は、マルチアンテナ装置10が対応する1.5GHzおよび2.0GHzにおいて、インピーダンス整合を図るように構成されている。具体的には、図4に示すように、第1整合回路17(第2整合回路18)は、インダクタ(コイル)およびキャパシタ(コンデンサ)により構成されたπ型の整合回路(πマッチ)により構成されている。
第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12との間に、1.5GHz帯に対応する周波数および2.0GHz帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子13を設けることによって、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができる。また、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12の間の相互結合を小さくすることができるので、その分、アンテナ素子間の距離を小さくすることができ、その結果、マルチバンド対応のマルチアンテナ装置10を小型化することができる。これにより、そのようなマルチバンド対応のマルチアンテナ装置10を備えた携帯電話機100自体の小型化も図ることができる。したがって、この携帯電話機100は、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することができる。特に、第1実施形態の携帯電話機100のように小型化が望まれる通信機器において本発明はより有効である。なお、上記構成によりアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるという効果は、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
また、1つの無給電素子13を1.5GHz帯に対応する周波数および2.0GHz帯に対応する周波数の両方で共振するように構成することによって、1.5GHz帯に対応する周波数で共振する無給電素子と、2.0GHz帯に対応する周波数で共振する無給電素子とを互いに別個に設ける場合に比べて、無給電素子の配置スペースが大きくなるのを抑制することができる。さらに、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を、共に、1.5GHzおよび2.0GHzに対応するように構成することによって、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)が1.5GHzおよび2.0GHzの両方に兼用されるので、周波数帯毎に異なるアンテナ素子を設ける場合に比べて、より小さいスペースにアンテナ素子を配置することができる。これらにより、マルチアンテナ装置10をより小型化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、無給電素子13を非接地で設ける。このように構成すれば、無給電素子13を接地面14に接地させる必要がないので、配線パターン設計の自由度が低下するのを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12により1.5GHz帯に対応して出力される電波の波長λ1の略1/2の電気長を有する第1経路と、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12により2.0GHz帯に対応して出力される電波の波長λ2の略1/2の電気長を有する第2経路とが形成されるように非接地の無給電素子13を構成する。このように構成すれば、1.5GHz帯に対応する周波数および2.0GHz帯に対応する周波数の両方において、非接地の1つの無給電素子13を容易に共振させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1経路を本体部131により構成するとともに、第2経路を本体部131の一部と分岐部132とにより構成する。このように構成すれば、無給電素子13の本体部131が第1経路および第2経路の両方に兼用されるので、第1経路および第2経路をそれぞれ別個の部分により形成する場合に比べて、無給電素子13を小型化することができ、その結果、マルチアンテナ装置10のさらなる小型化を図ることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、本体部131により構成されるとともに波長λ1の略1/2の電気長を有する第1経路と、本体部131の第1アンテナ素子11側の部分(第1結合部131aおよび接続部131c)と分岐部132とにより構成されるとともに波長λ2の略1/2の電気長を有する第2経路と、本体部131の第2アンテナ素子12側の部分(第2結合部131bおよび接続部131c)と分岐部132とにより構成されるとともに第2経路と略同じ波長λ2の略1/2の電気長を有する第3経路とが形成されるように無給電素子13を構成する。このように構成すれば、第1経路により、1.5GHz帯に対応する周波数において容易に無給電素子13を共振させることができるとともに、第1アンテナ素子11側の第2経路および第2アンテナ素子12側の第3経路により、それぞれ、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12から出力される電波に対して効果的に無給電素子13を共振させることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を、第1給電点15および第2給電点16を結ぶ直線に垂直でかつ給電点間の中点を通る基準直線に対して互いに略線対称な形状に形成するとともに、無給電素子13の本体部131を上記基準直線に対して線対称な形状に形成する。このように構成すれば、アンテナ素子11、12および無給電素子13の本体部131のそれぞれがバランスよく配置されるので、アンテナ素子間の相互結合を小さくしながら利得のばらつきを抑制することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、上記基準直線に対して線対称な形状に形成された本体部131の全長の略1/2の位置から分岐部132を分岐させるとともに、分岐部132を屈曲した形状に形成する。このように構成すれば、分岐部132の屈曲した形状により、分岐部132に必要な長さを容易に確保することができるので、分岐部132の配置スペースが広がるのを抑制することができる。また、分岐部132を直線状に形成する場合に比べて、無給電素子13の共振点の位置を所望の周波数に合わせる調整をし易くすることができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12および無給電素子13を、共に、複数の位置で屈曲した形状に形成する。このように構成すれば、アンテナ素子11、12および無給電素子13の屈曲した形状により、アンテナ素子11、12および無給電素子13のそれぞれに必要な長さを容易に確保することができるので、アンテナ素子11、12および無給電素子13の配置スペースが広がるのを抑制することができ、その結果、マルチアンテナ装置10を小型化することができる。
また、第1実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子11と第1給電点15との間に、1.5GHzおよび2.0GHzにおいてインピーダンス整合を図るための第1整合回路17を設けるとともに、第2アンテナ素子12と第2給電点16との間に、1.5GHzおよび2.0GHzにおいてインピーダンス整合を図るための第2整合回路18を設ける。このように構成すれば、第1整合回路17(第2整合回路18)により、1.5GHzおよび2.0GHzにおいてインピーダンス整合を図ることができるので、マルチアンテナ装置10の小型化を図りながらアンテナ素子を介して伝達されるエネルギの伝達損失を軽減することができる。
また、第1実施形態では、第1周波数帯対応部111(121)および第2周波数帯対応部112(122)を互いに一体的に形成することによって、スイッチング素子を用いて各アンテナ素子の全長を切り替えることにより第1周波数帯および第2周波数帯に対応する構成とは異なり、スイッチング素子を制御する専用のスイッチング制御部を設ける必要がないので、回路構成が複雑になるのを抑制することができ、その結果、アンテナに必要なスペースを小型化することができる。
なお、第1実施形態では、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12および無給電素子13の全てを、基板の表側の表面上に設ける構成を示したが、本発明はこれに限らない。本発明では、たとえば、無給電素子13を基板の表側の表面上から裏側の表面上に跨って配置してもよい。次に、この構成について説明する。
図3に示すように、本体部131は、基板の裏側において、第1結合部131aに平面的に見て重なるように配置された第1裏側部131dと、第2結合部131bに平面的に見て重なるように配置された第2裏側部131eとを有している。第1裏側部131dおよび第2裏側部131eは、共に、基板の裏側の表面上に設けられている。すなわち、本体部131は、基板の表側の表面と裏側の表面とに跨って設けられている。
第1裏側部131d(第2裏側部131e)は、第1結合部131a(第2結合部131b)のX方向に延びる部分のX2方向側(X1方向側)の端部に接続されている。また、第1裏側部131d(第2裏側部131e)は、平面的に見て、第1結合部131a(第2結合部131b)に重なるように略L字形状に形成されている。具体的には、第1裏側部131d(第2裏側部131e)は、Y方向に延びる部分とそのY2方向側の端部からX方向に延びる部分とにより略L字形状に形成されている。
そして、この構成では、第1裏側部131dのY1方向側の先端部から、第1結合部131a、接続部131cおよび第2結合部131bを順に通って第2裏側部131eのY1方向側の先端部に至る経路が第1経路となる。第1経路は、第1周波数帯対応部111(121)が対応する1.5GHzの波長λ1の約1/2の電気長を有している。
また、第1裏側部131dのY1方向側の先端部から、第1結合部131aおよび接続部131cを順に通って分岐部132の先端部に至る経路が第2経路となる。また、第2裏側部131eのY1方向側の先端部から、第2結合部131bおよび接続部131cを順に通って分岐部132の先端部に至る経路が第3経路となる。すなわち、第2経路は、分岐部132と本体部131の第1アンテナ素子11側の部分とにより構成され、第3経路は、分岐部132と本体部131の第2アンテナ素子12側の部分とにより構成されている。また、第2経路および第3経路は、共に、第2周波数帯対応部112(122)が対応する2.0GHzの波長λ2の約1/2の電気長を有している。
このように、無給電素子13を、基板の表側の表面および裏側の表面に跨って配置することによって、無給電素子13を平面的に見て異なる面に重なるように配置することができるので、平面的に見て、無給電素子13をより小さいスペースに配置することができる。また、無給電素子13を異なる面に配置することができるので、機器内構成の配置の自由度の向上を図ることができる。
次に、第1実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図2に示した第1実施形態に対応するマルチバンド対応のマルチアンテナ装置10と、図5に示した比較例によるマルチアンテナ装置110とを比較した。
第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、給電点における離間距離D1が32mmになるように第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を配置した。また、このシミュレーションでは、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、無給電素子13を厚さ1mmのガラスエポキシ基板上に配置し、その基板を真空中に設ける構成にした。また、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、無給電素子13は共に厚さ0mmの導体で構成した。なお、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10は、上記のとおり、1.5GHzおよび2.0GHzの両方に対応している。
図5に示すように、比較例によるマルチアンテナ装置110では、非接地の無給電素子13を設ける第1実施形態によるマルチアンテナ装置10とは異なり、2つのアンテナ素子11および12の間に無給電素子を設けない構成にした。また、比較例によるマルチアンテナ装置110では、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様に、給電点における離間距離D2が32mmになるように第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12を配置した。また、比較例によるマルチアンテナ装置110の他の構成は、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様である。
次に、図6および図7を参照して、比較例によるマルチアンテナ装置110および第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10のSパラメータの特性について説明する。ここで、図6および図7に示すSパラメータのうちのS11(S22)は、アンテナ素子の反射係数を意味し、SパラメータのうちのS21(S12)は、2つのアンテナ素子間の相互結合の強さを意味する。また、図6および図7では、横軸に周波数をとり、縦軸にS11(S22)およびS21(S12)の大きさ(単位:dB)をとっている。
まず、比較例によるマルチアンテナ装置110では、図6に示すように、1.5GHzにおいて、S11(S22)が約−13dBであり、S21(S12)が約−9.5dBであった。また、比較例によるマルチアンテナ装置110では、2.0GHz付近の共振点は1.8GHzで、そこのS11(S22)が約−25dBであり、S21(S12)が約−12dBであった。これに対して、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、図7に示すように、1.5GHzにおいて、S11(S22)が約−16dBであり、S21(S12)が約−24dBであった。また、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、2.0GHzにおいて、S11(S22)が約−25dB以下であり、S21(S12)が約−21dBであった。なお、比較例によるマルチアンテナ装置110と第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10とで共振点がずれているのは、無給電素子とアンテナ素子との間の電磁界結合の有無により生じていると考えられる。また、比較例によるマルチアンテナ装置110および第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10の両方において、アンテナ素子の反射係数を意味するS11とS22とが少しずれているのは、第1アンテナ素子11および第2アンテナ素子12が基準直線に対して互いに略線対称の形状に形成されているものの若干の差異があり、その差異に起因して生じたものだと考えられる。
この結果、比較例によるマルチアンテナ装置110よりも第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10の方が、1.5GHzおよび2.0GHzの両方において、2つのアンテナ素子間の相互結合の強さ(大きさ)を意味するS21(S12)の値が小さいので、非接地の無給電素子13を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることを確認した。また、比較例によるマルチアンテナ装置110では、図6に示すように、S21(S12)の値が急激に低下する部分(谷部)が1.5GHzおよび2.0GHzの間の領域に1つしか生じないのに対して、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、図7に示すように、S21(S12)の値が急激に低下する部分(谷部)が1.5GHzの近傍および2.0GHzの近傍の両方で生じている。すなわち、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、1.5GHzおよび2.0GHzにおいて、S21(S12)の値が低減されている。なお、S21(S12)の値が−10dB以下であれば、アンテナ素子間の相互結合は微小であると考えられる。
1.5GHzにおいてS21(S12)の値が低減された理由としては、第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10では、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)の第1周波数帯対応部111(121)において、他方のアンテナ素子を流れる電流に起因する直接的な結合と、第1経路を有する無給電素子13を流れる電流に起因する間接的な結合とが生じることによって、アンテナ素子間の相互結合が打ち消されたためであると考えられる。また、2.0GHzにおいてS21(S12)の値が低減された理由としては、第1アンテナ素子11(第2アンテナ素子12)の第2周波数帯対応部112(122)において、他方のアンテナ素子を流れる電流に起因する直接的な結合と、第2経路(第3経路)を有する無給電素子13を流れる電流に起因する間接的な結合とが生じることによって、アンテナ素子間の相互結合が打ち消されたためであると考えられる。
(第2実施形態)
次に、図8を参照して、本発明の第2実施形態による携帯機器200(図1参照)のマルチアンテナ装置20について説明する。この第2実施形態では、無給電素子13の本体部131が平面的に見て略C字形状に形成された上記第1実施形態と異なり、無給電素子23の本体部231をY方向において折り返しながらX方向に延伸するように形成する構成について説明する。なお、第2実施形態では、本発明のマルチアンテナ装置20を、通信機器としての携帯電話機200に適用した例について説明する。
本発明の第2実施形態による携帯機器200(図1参照)のマルチバンド対応のマルチアンテナ装置20は、複数のアンテナ素子を用いて所定の周波数において多重の入出力が可能なMIMO通信用に構成されている。また、マルチアンテナ装置20は、1.5GHz帯および2.0GHz帯の2つの異なるバンド(周波数帯)に対応している。なお、1.5GHz帯は、本発明の「第1周波数帯」の一例であり、2.0GHz帯は、本発明の「第2周波数帯」の一例である。
マルチアンテナ装置20は、図8に示すように、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22と、2つのアンテナ素子21および22の間に配置される無給電素子23と、接地面14とを含んでいる。さらに、マルチアンテナ装置20は、第1アンテナ素子21に高周波電力を供給するための第1給電点15と、第2アンテナ素子22に高周波電力を供給するための第2給電点16とを含んでいる。また、第1アンテナ素子21、第2アンテナ素子22および無給電素子23は、共に、図示しない基板の表側の表面上に設けられている。
第1アンテナ素子21は、無給電素子23のX1方向側に配置されるとともに、第2アンテナ素子22は、無給電素子23のX2方向側に配置されている。また、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22は、第1給電点15と第2給電点16とを結ぶ直線に垂直で、かつ、第1給電点15および第2給電点16間の中点を通る基準直線に対して互いに略線対称な形状に形成されている。また、第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)は、薄板形状を有している。また、第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)は、モノポールアンテナである。具体的には、第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)は、マルチアンテナ装置20が対応する1.5GHzの波長λ1の約1/4の電気長を有する第1周波数帯対応部211(221)と、2.0GHzの波長λ2の約1/4の電気長を有する第2周波数帯対応部212(222)とを含んでいる。第1周波数帯対応部211(221)および第2周波数帯対応部212(222)は、共に、一方端部が開放されているとともに、他方端部が第1給電点15(第2給電点16)を介して接地面14に接地されている。また、第1周波数帯対応部211(221)および第2周波数帯対応部212(222)は、互いに一体的に形成されている。
第1周波数帯対応部211(221)は、第1給電点15(第2給電点16)に接続される給電接続部分211a(221a)と、給電接続部分211a(221a)に連結される本体部分211b(221b)とを有している。第1周波数帯対応部211(221)の給電接続部分211a(221a)は、第1給電点15(第2給電点16)からY1方向に延びるように直線形状に形成されている。すなわち、第1アンテナ素子21の給電接続部分211aと第2アンテナ素子22の給電接続部分221aとは、互いに平行に配置されている。本体部分211b(221b)は、給電接続部分211a(221a)の第1給電点15(第2給電点16)が設けられる側とは反対側(Y1方向側)の端部に連結されている。また、本体部分211b(221b)は、第2周波数帯対応部212(222)に対して第1給電点15(第2給電点16)が配置される側(Y2方向側)とは反対側(Y1方向側)に配置されている。また、本体部分211b(221b)は、X方向において複数の位置で折り返しながらY1方向に延伸するように構成されている。すなわち、本体部分211b(221b)は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、本体部分211b(221b)のX方向の内側端部(無給電素子23が配置される側の端部)は、給電接続部分211a(221a)の内側端部と面一となるように配置されている。また、本体部分211b(221b)の全長は、給電接続部分211a(221a)の全長よりも長くなるように構成されている。
第2周波数帯対応部212(222)は、Y方向において複数の位置で折り返しながら外側(無給電素子23が配置される側とは反対側)に延伸するように構成されている。すなわち、第2周波数帯対応部212(222)は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、第2周波数帯対応部212(222)は、第1周波数帯対応部211(221)の給電接続部分211a(221a)の外側に配置されている。また、第2周波数帯対応部212(222)は、第1周波数帯対応部211(221)の本体部分211b(221b)のY2方向側で本体部分211b(221b)に隣接するように配置されている。また、第2周波数帯対応部212(222)は、第1周波数帯対応部211(221)の給電接続部分211a(221a)と本体部分211b(221b)とにより囲まれた領域に配置されている。また、第2周波数帯対応部212(222)の外側端部は、第1周波数帯対応部211(221)の本体部分211b(221b)の外側端部と面一となるように配置されている。
無給電素子23は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22の間において、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22のY1方向側の端部を結ぶ直線と、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22のY2方向側の端部を結ぶ直線との間の領域に配置されている。すなわち、無給電素子23は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22が互いに対向する領域内に配置されている。また、無給電素子23は、接地面14に接地されない非接地状態で設けられている。また、無給電素子23は、1.5GHz帯に対応する周波数(1.5GHz近傍の周波数)および2.0GHz帯に対応する周波数(2.0GHz近傍の周波数)の両方で共振するように構成されている。また、無給電素子23は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、無給電素子23は、本体部231と、本体部231から分岐する分岐部232とを含んでいる。
本体部231は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。具体的には、本体部231は、Y方向において複数の位置で折り返しながらX方向(第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22が互いに対向する方向)に延伸するように形成されている。また、本体部231は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22の両方に結合可能な距離を隔てて配置されている。また、本体部231は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22のそれぞれの本体部分211b、221bの間で本体部分211b、221bに対応する領域に配置されている。また、本体部231の第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)側の端部は、Y方向に延びるように形成されており、第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)に対向している。具体的には、本体部231の第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)側の端部は、第1アンテナ素子21の本体部分211b(第2アンテナ素子22の本体部分221b)に対向するように配置されている。また、本体部231の第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)側の端部は、第1アンテナ素子21の給電接続部分211a(第2アンテナ素子22の給電接続部分221a)にも対向するように配置されている。また、本体部231は、X1方向側の端部からX2方向側の端部に至る第1経路を構成している。第1経路は、第1周波数帯対応部211(221)が対応する1.5GHzの波長λ1の約1/2の電気長を有している。これにより、無給電素子23は、1.5GHz帯に対応する周波数(1.5GHz近傍の周波数)で共振される。また、本体部231は、上記基準直線に対して線対称な形状に形成されている。なお、第2実施形態において、結合とは、静電結合および磁界結合の両方の結合を含む概念の電磁界結合である。
無給電素子23の分岐部232は、本体部231の全長の略1/2の位置から分岐している。また、分岐部232は、本体部231のY2方向側に配置されている。具体的には、分岐部232は、第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22のそれぞれの第2周波数帯対応部212、222の間で第2周波数帯対応部212、222に対応する領域に配置されている。また、分岐部232は、複数の位置で屈曲した形状に形成されている。また、分岐部232は、上記基準直線に対して非対称形状に形成されている。
また、分岐部232および本体部231は、本体部231のX1方向側の端部から分岐部232の先端部に至る第2経路を構成している。また、分岐部232および本体部231は、本体部231のX2方向側の端部から分岐部232の先端部に至る第3経路を構成している。すなわち、第2経路は、分岐部232と本体部231の第1アンテナ素子21側の部分とにより構成され、第3経路は、分岐部232と本体部231の第2アンテナ素子22側の部分とにより構成されている。また、第2経路および第3経路は、共に、第2周波数帯対応部212(222)が対応する2.0GHzの波長λ2の約1/2の電気長を有している。これにより、無給電素子23は、2.0GHz帯に対応する周波数(2.0GHz近傍の周波数)で共振される。
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
第2実施形態では、上記のように、第1アンテナ素子21と第2アンテナ素子22との間に、1.5GHz帯に対応する周波数および2.0GHz帯に対応する周波数の両方で共振する1つの無給電素子23を設けることによって、上記第1実施形態と同様に、アンテナ素子間の相互結合を小さくすることができ、その結果、アンテナ素子間の距離を小さくしてマルチバンド対応のマルチアンテナ装置20を小型化することができる。すなわち、無給電素子23の本体部231をY方向において折り返しながらX方向(第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22が互いに対向する方向)に延伸するように形成した第2実施形態の構成でも、上記第1実施形態と同様に、アンテナ素子間の距離を小さくしてマルチバンド対応のマルチアンテナ装置20を小型化することができる。なお、上記構成によりアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができるという効果は、後述する本願発明者のシミュレーションにより確認済みである。
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
次に、第2実施形態の効果を確認するために行ったシミュレーションの結果について説明する。このシミュレーションでは、図8に示した第2実施形態に対応するマルチバンド対応のマルチアンテナ装置20と、図5に示した比較例によるマルチアンテナ装置110とを比較した。
第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20では、給電点における離間距離D3が35.5mmになるように第1アンテナ素子21および第2アンテナ素子22を配置した。なお、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20は、1.5GHzおよび2.0GHzの両方に対応している。また、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20の他の構成は、上記第1実施形態に対応するマルチアンテナ装置10と同様である。
次に、図6および図9を参照して、比較例によるマルチアンテナ装置110および第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20のSパラメータの特性について説明する。
まず、比較例によるマルチアンテナ装置110では、上記のとおり、1.5GHzにおいて、S11(S22)が約−13dBであり、S21(S12)が約−9.5dBであった。また、比較例によるマルチアンテナ装置110では、2.0GHz付近の共振点は1.8GHzで、そこのS11(S22)が約−25dBであり、S21(S12)が約−12dBであった。これに対して、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20では、図9に示すように、1.5GHzにおいて、S11(S22)が約−17dBであり、S21(S12)が約−18dBであった。また、第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20では、2.0GHz付近の共振点は1.95GHzで、そこのS11(S22)が約−13dBであり、S21(S12)が約−58dBであった。なお、比較例によるマルチアンテナ装置110と第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20とで共振点がずれているのは、無給電素子とアンテナ素子との間の電磁界結合の有無により生じていると考えられる。
この結果、比較例によるマルチアンテナ装置110よりも第2実施形態に対応するマルチアンテナ装置20の方が、1.5GHzおよび2.0GHzの両方において、2つのアンテナ素子間の相互結合の強さ(大きさ)を意味するS21(S12)の値が小さいので、非接地の無給電素子23を設けることによってアンテナ素子間の相互結合を小さくすることができることを確認した。
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
たとえば、上記第1および第2実施形態では、本発明のマルチアンテナ装置を携帯電話機に適用する例について説明したが、本発明はこれに限られない。たとえば、本発明のマルチアンテナ装置を、PDA(Personal Digital Assistant)やノートパソコン、無線ルータなど携帯電話機以外の通信機器に適用してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、マルチアンテナ装置の一例として、MIMO通信用のマルチアンテナ装置を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、ダイバシティなどMIMO以外の形式に対応するマルチアンテナ装置であってもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子を共に基板の表側の表面上(同一平面内)に設ける例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子を互いに異なる面に設けてもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、第1周波数帯対応部の本体部分と第2周波数帯対応部とを互いにY方向に隣接するように配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1周波数帯対応部の本体部分と第2周波数帯対応部とを互いにX方向に隣接するように配置してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、マルチアンテナ装置を1.5GHz帯および2.0GHz帯の異なる2つの周波数帯に対応するように構成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、1.5GHz帯および2.0GHz帯以外の2つの周波数帯に対応するように構成してもよい。また、本発明では、3つ以上の周波数帯に対応するように構成してもよい。
たとえば、本発明のマルチアンテナ装置を第1周波数帯、第2周波数帯および第3周波数帯の3つの周波数帯に対応するように構成する場合、図10に示すように、第1アンテナ素子31および第2アンテナ素子32の間に、第1周波数帯に対応する周波数、第2周波数帯に対応する周波数および第3周波数帯に対応する周波数のいずれの周波数でも共振する無給電素子33を設ける。この場合、無給電素子33に、本体部331と、第1分岐部332と、第2分岐部333とを設ける。また、本体部331の第1アンテナ素子21(第2アンテナ素子22)側の部分を、Y方向に延びるように形成するとともに、第1アンテナ素子31(第2アンテナ素子32)に対向するように配置する。そして、本体部331により、第1周波数帯に対応する波長の略1/2の電気長を有する第1経路を構成し、本体部331の一部と第1分岐部332とにより、第2周波数帯に対応する波長の略1/2の電気長を有する第2経路(第3経路)を構成するとともに、本体部331の一部と第2分岐部333とにより、第3周波数帯に対応する波長の略1/2の電気長を有する第4経路(第5経路)を構成することが好ましい。このように構成すれば、アンテナ素子間の距離を小さくして小型化することが可能なトリプルバンドに対応したマルチアンテナ装置を得ることができる。なお、第1分岐部332および第2分岐部333は、共に、本発明の「分岐部」の一例である。
また、本発明では、上記第1および第2実施形態で示した形状の無給電素子に限らず、たとえば、図11〜図13に示すように、第1周波数帯に対応する周波数および第2周波数帯に対応する周波数の両方で共振する無給電素子であれば、上記第1および第2実施形態で示した無給電素子以外の形状であってもよい。この場合、無給電素子を、互いに異なる電気長を有する第1経路および第2経路が形成されるように構成する。また、図13の無給電素子において、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)側の部分は、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)に対向するように配置されている。また、図11〜図13の無給電素子は、少なくともアンテナ素子と結合する部分を有している。
また、上記第1および第2実施形態では、第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)の一例として、モノポールアンテナからなる第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ダイポールアンテナなどモノポールアンテナ以外の第1アンテナ素子(第2アンテナ素子)であってもよい。
また、上記第1実施形態では、本発明の整合回路の一例として、π型の整合回路(πマッチ)を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、インピーダンス整合を図るためにT型の整合回路(Tマッチ)(図14参照)を設けてもよいし、L型の整合回路(Lマッチ)(図15参照)を設けてもよい。また、π型の整合回路やT型の整合回路、L型の整合回路は、インダクタ(コイル)またはキャパシタ(コンデンサ)の一方のみにより構成してもよいし、インダクタおよびキャパシタの両方により構成してもよい。
また、上記第2実施形態では、無給電素子の本体部を、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子のそれぞれの本体部分の間で本体部分に対応する領域に配置するとともに、分岐部を、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子のそれぞれの第2周波数帯対応部の間で第2周波数帯対応部に対応する領域に配置する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、分岐部を、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子のそれぞれの本体部分の間で本体部分に対応する領域に配置し、本体部を、第1アンテナ素子および第2アンテナ素子のそれぞれの第2周波数帯対応部の間で第2周波数帯対応部に対応する領域に配置してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子および無給電素子を、共に、屈曲した形状に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子および無給電素子を湾曲した形状に形成してもよいし、屈曲および湾曲を組み合わせた形状に形成してもよい。
また、上記第1および第2実施形態では、各アンテナ素子の第1周波数帯対応部および第2周波数帯対応部を互いに一体的に形成する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図16および図17に示すように、アンテナ素子にスイッチング素子を設けることにより、アンテナ素子の全長を切り替えて第1周波数帯および第2周波数帯に対応するように構成してもよい。また、図16および図17の無給電素子において、一方のアンテナ素子(他方のアンテナ素子)側の部分は、一方のアンテナ素子(他方のアンテナ素子)に対向するように配置されている。