JP2012240865A - 単結晶引き上げ装置および単結晶引き上げ装置の制御方法 - Google Patents

単結晶引き上げ装置および単結晶引き上げ装置の制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】るつぼの外表面の溶融やるつぼからの原料融液のあふれを発生から短い時間において検出できる単結晶引き上げ装置等を提供する。
【解決手段】単結晶引き上げ装置1は、アルミナ融液300を保持するるつぼ20を取り囲むように設けられ、るつぼ20を壁部22から加熱する上部ヒータ30と、るつぼ20の下方に設けられ、るつぼ20を鉛直方向に投影した像の内側にあって、底部21に対向する対向部と、るつぼ20を鉛直方向に投影した像の外側にはみ出した周辺部とを備え、るつぼ20を底部21から加熱する下部ヒータ35と、アルミナ融液300からサファイアインゴット200を引き上げる引き上げ棒40と、下部ヒータ35に流れる電流または電圧を計測する計測部96と、計測部96の計測した電流または電圧に基づいて、るつぼ20から下部ヒータ35上への落下物の有無を判断する判断部97とを備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、単結晶引き上げ装置および単結晶引き上げ装置の制御方法に関する。
チョクラルスキー法(Cz法)を用いた単結晶引き上げ装置では、るつぼ内に収容され、るつぼを介して加熱される原料融液から、目的とする材料の単結晶の引き上げが行われる。
特許文献1には、チャンバ内に設置した坩堝に、サファイア原料粉末を装入して、加熱ヒータを用いた直接加熱方式により加熱溶融し、原料融液から成長結晶を引き上げるサファイア単結晶の育成方法であって、坩堝として、イリジウムを含まない耐熱性坩堝を用いるとともに、サファイア原料粉末を加熱溶融する際に、雰囲気ガスを予め不活性ガスで置換し、引き続き、チャンバ内に実質的に酸素が存在しない状態を維持するのに十分な量の不活性ガスを流通するサファイア単結晶の育成方法が記載されている。
特開2008−7354号公報
ところで、チョクラルスキー法によって結晶を引き上げる方法において、るつぼの融点と原料の融点とが近い場合、原料を溶融するためにるつぼを加熱する際、るつぼの外表面が融点を超えて加熱されて溶融することがある。また、るつぼ内の原料融液が、突沸などにより、るつぼからあふれ出ることがある。るつぼ外表面の溶融または原料融液のるつぼからのあふれを放置すると、単結晶引き上げ装置に損傷を与えてしまう。よって、るつぼの外表面の溶融や、るつぼからの原料融液のあふれを、発生から短い時間において検出することが求められている。
本発明は、るつぼの外表面の溶融やるつぼからの原料融液のあふれを発生から短い時間において検出できる単結晶引き上げ装置等を提供することを目的とする。
かかる目的のもと、本発明が適用される単結晶引き上げ装置は、上方に開口を有し、原料を熱により融解した融液を保持するるつぼの壁部を外から取り囲むように設けられ、電流により発熱してるつぼを壁部から加熱する第1の発熱体と、るつぼの底部の下方に設けられ、るつぼを鉛直方向に投影した像の内側にあってるつぼの底部に対向する対向部と、るつぼを鉛直方向に投影した像の外側にはみ出した周辺部とを備え、電流により発熱してるつぼを底部から加熱する第2の発熱体と、るつぼに保持された融液から単結晶を引き上げる引き上げ部と、第2の発熱体に流れる電流または電流を供給する端子間の電圧を計測する計測部と、計測部の計測した電流または電圧に基づいて、るつぼから第2の発熱体上への落下物の有無を判断する判断部とを備えている。
このような単結晶引き上げ装置において、第2の発熱体は、電流が流れる経路が周辺部と対向部との境界を横切るように周辺部と対向部とにおいて折れ曲げられて構成された部分を備えることを特徴とすることができる。
また、るつぼの底部の面積より小さい面積の表面を備え、表面でるつぼを支持する支持部材をさらに備え、第2の発熱体の対向部の少なくとも一部は、支持部材を鉛直方向に投影した像の内側に含まれることを特徴とすることができる。
さらに、第2の発熱体は、電流が流れる経路が支持部材を第2の発熱体上に鉛直方向に投影した像の輪郭を横切る部分を備えることを特徴とすることができる。
さらにまた、第2の発熱体は、炭素または炭素を含む材料で構成されていることを特徴とすることができる。
そして、るつぼは、高融点金属で構成されていることを特徴とすることができる。なお、るつぼは、モリブデン、タングステン、イリジウム、白金、タンタルまたはこれらを含む合金で構成されていることを特徴としてもよい。
そしてまた、融液は酸化アルミニウムを融解したアルミナ融液であって、単結晶がサファイア単結晶であることを特徴とすることができる。
また、他の観点から捉えると、単結晶引き上げ装置の制御方法は、上方に開口を有し、原料を融解した融液を保持するるつぼの壁部を外から取り囲む第1の発熱体と、るつぼの底部の下方に設けられた第2の発熱体とに電流を流してるつぼを加熱する加熱工程と、るつぼ内の融液から単結晶を引き上げる引き上げ工程と、第2の発熱体に流れる電流または電流を供給する端子間の電圧を計測する計測工程と、第2の発熱体に流れる電流または電流を供給する端子間の電圧に基づいて、るつぼから第2の発熱体上に落下物があったと判断する判断工程とを含んでいる。
このような単結晶引き上げ装置の制御方法において、第2の発熱体は、るつぼを鉛直方向に投影した像の内側にあってるつぼの底部に対向する対向部と、るつぼを鉛直方向に投影した像の外側にはみ出した周辺部とを備えることを特徴とすることができる。
また、第2の発熱体に流れる電流および電流を供給する端子間の電圧から第2の発熱体の抵抗値を算出し、抵抗値と予め定められた時間前に算出された抵抗値との差が、予め定められたしきい値を超える場合に、るつぼから第2の発熱体上に落下物があったと判断することを特徴とすることができる。
さらに、第2の発熱体の抵抗値の算出を予め定められた時間間隔で繰り返し行い、予め定められた回数連続して予め定められた時間前に算出された抵抗値との差が予め定められたしきい値を超える場合に、るつぼから第2の発熱体上に落下物があったと判断することを特徴とすることができる。
さらにまた、第2の発熱体に供給される電力が予め定められた電力を超えるまでは、るつぼからの落下物の有無を判断しないことを特徴とすることができる。
そして、第1の発熱体または第2の発熱体によるるつぼの加熱の開始から予め定められた時間においては、るつぼからの落下物の有無を判断しないことを特徴とすることができる。
そしてまた、るつぼから落下物があったと判断されたときに、単結晶を融液から引き抜く引き抜き工程をさらに備えることを特徴とすることができる。
さらに、るつぼから落下物があったと判断されたとき、第1の発熱体または第2の発熱体に電流の供給を停止する電流供給停止工程をさらに備えることを特徴とすることができる。
本発明によれば、るつぼの外表面の溶融やるつぼからの原料融液のあふれを発生から短い時間において検出できる単結晶引き上げ装置等を提供することができる。
本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置の構成の一例を説明するための図である。 単結晶引き上げ装置を用いて製造されるサファイアインゴットの構成の一例を説明する図である。 下部ヒータの構成の一例を示す断面図および平面図である。 下部ヒータに落下物が落下した状態の一例を示す図である。 下部ヒータに落下物が落下した状態の他の一例を示す図である。 単結晶引き上げ装置を用いて、サファイアインゴットを製造する方法(製造方法)を説明するためのフローチャートである。 判断部による落下物の有無を判断する方法の一例を説明するフローチャートである。 サファイアインゴットの製造において、判断部が「落下物有」と判断しなかった場合の、下部ヒータの抵抗値R、下部ヒータの電力Pおよび抵抗値変化ΔRを時間に対して示す図である。 サファイアインゴットの製造において、判断部が「落下物有」と判断した場合の、下部ヒータの抵抗値R、下部ヒータの電力Pおよび抵抗値変化ΔRを時間に対して示した図である。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
[単結晶引き上げ装置1]
図1は、本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置1の構成の一例を説明するための図である。
この単結晶引き上げ装置1は、単結晶の一例としてのサファイア単結晶からなる柱状のサファイアインゴット200を成長させるための加熱炉10を有している。この加熱炉10は、円柱状の外形を有し、その内部には円柱状の空間が形成された断熱容器11を備えている。そして、断熱容器11は、ジルコニア製、カーボン製、モリブデン製などの断熱材からなる部品を組み立てることで構成されている。また、加熱炉10は、内部の空間に断熱容器11を収容するチャンバ14をさらに備えている。さらに、加熱炉10は、チャンバ14の側面に貫通形成され、チャンバ14の外部からチャンバ14を介してガスを供給するガス供給管12と、同じくチャンバ14の側面に貫通形成され、チャンバ14を介して外部にガスを排出するガス排出管13とを備えている。
また、断熱容器11の内側下方には、円板状の外形を有する支持部材の一例としての支持台15が、一方の面(表面)が上方を向くように配置されている。この支持台15は、例えばモリブデンにて構成されている。
さらに、支持台15の他方の面(裏面)に固定され、断熱容器11およびチャンバ14のそれぞれの底部に設けられた貫通孔を介して、一端部がチャンバ14の外部に引き出された支持棒16が設けられている。支持棒16は軸の回りに回転が可能となるように取り付けられている。また、支持棒16とチャンバ14の貫通孔との間には、図示しないシール材が設けられている。
また、断熱容器11の内側下方であって、且つ支持台15上には、原料である酸化アルミニウムを融解してなる融液の一例としてのアルミナ融液300を収容するるつぼ20が、鉛直上方に向かって開口するように配置されている。なお、支持台15の表面は、るつぼ20の底面より小さく設定されている。すなわち、るつぼ20は、底部21の中央部が支持台15に接触している。
すなわち、るつぼ20は支持台15によって支持され、支持台15は支持棒16によって支持されている。そして、支持棒16は、チャンバ14の外側に設けられた、支持棒16を回転させる回転機構(不図示)によって支持されている。るつぼ20と支持台15とは、支持棒16の回転とともに矢印C方向に回転するようになっている。なお、矢印Cと逆方向に回転してもよい。
るつぼ20は、本実施の形態では金属製であって、構成材料はモリブデンである。なお、るつぼ20は、タングステン、イリジウム、白金、タンタル、これらを含む合金または、モリブデンを含む合金であってもよい。また、るつぼ20は、融点が融液(本実施の形態では、アルミナ融液300)の融点以上である高融点金属であってもよい。
さらに、加熱炉10は、断熱容器11の側面内側とるつぼ20の壁部22の外側との間に、るつぼ20の壁部22に対向し、るつぼ20の壁部22を取り巻くように設けられた第1の発熱体の一例としての上部ヒータ30を備えている。
上部ヒータ30は、一例として黒鉛(グラファイト)などの炭素(C)または炭素(C)を含む材料で構成されたカーボンヒータであって、電流を流すこと(通電)により発熱し、輻射熱により、るつぼ20を壁部22から加熱する。上部ヒータ30は、電流が流れる経路が、るつぼ20の壁部22を取り巻くようにらせん状に構成されてもよく、るつぼ20の壁部22の上端部と下端部とで交互に折り返すように構成されていてもよい。なお、上部ヒータ30に電流を供給するため、チャンバ14および断熱容器11を貫通して複数の配線が設けられているが、図1においては、これらの配線の記載を省略している。
なお、図1では、上部ヒータ30の上端がるつぼ20の壁部22の上端より上側にあるように表記しているが、上部ヒータ30の上端とるつぼ20の壁部22の上端とが一致してもよく、上部ヒータ30の上端がるつぼ20の壁部22の上端より下側にあってもよい。同様に、図1では、上部ヒータ30の下端がるつぼ20の壁部22の下端より下側にあるように表記しているが、上部ヒータ30の下端とるつぼ20の壁部22の下端とが一致してもよく、上部ヒータ30の下端がるつぼ20の壁部22の下端より上側にあってもよい。上部ヒータ30によりるつぼ20が効率よく加熱できればよい。
さらまた、加熱炉10は、るつぼ20の底部21と断熱容器11の内側底部との間に、るつぼ20の底部21に対向するように設けられた第2の発熱体の一例としての下部ヒータ35を備えている。なお、下部ヒータ35の外形は、後述するように、微細に見ると複雑であるが、大まかに捉えると中央部がくり抜かれた円板状(後述する図3(b)参照。外周K1、内周K2。)である。中央部のくり抜かれた部分が開口部35aであって、支持棒16は、この開口部35aに通されている。そして、下部ヒータ35の外周K1は、るつぼ20を下部ヒータ35に鉛直方向から投影した像(るつぼ20の投影像)の外側に位置し、下部ヒータ35の内周K2は、支持台15を下部ヒータ35に鉛直方向から投影した像(支持台15の投影像)の内側になるように構成されている。
このように構成されている理由については、後述する。
下部ヒータ35は、上部ヒータ30と同様に、炭素(C)で構成されたカーボンヒータであって、通電により発熱し、輻射熱によりるつぼ20を底部21から加熱する。前述したように、支持台15がるつぼ20の底部21と接する面積を、るつぼ20の底部21の面積より小さくして、下部ヒータ35からの輻射熱により、るつぼ20の底部21が効率よく加熱されるようになっている。なお、下部ヒータ35に電流を供給するため、チャンバ14および断熱容器11を貫通して複数の配線が設けられているが、図1においては、これらの配線の記載を省略している。
下部ヒータ35の詳細は、後述する。
さらにまた、加熱炉10は、断熱容器11およびチャンバ14のそれぞれの上面に設けられた貫通孔を介して上方から下方に伸びる引き上げ棒40を備えている。この引き上げ棒40は、鉛直方向(矢印A方向)への移動および軸を中心とする回転(矢印B方向)が可能となるように取り付けられている。なお、チャンバ14に設けられた貫通孔と引き上げ棒40との間には、図示しないシール材が設けられている。そして、引き上げ棒40の鉛直下方側の端部には、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210(後述する図2参照)を装着、保持させるための保持部材41が取り付けられている。
また、単結晶引き上げ装置1は、引き上げ棒40を鉛直上方に引き上げるための引き上げ駆動部50および引き上げ棒40を回転させるための引き上げ棒回転駆動部60を備えている。ここで、引き上げ駆動部50はモータ等で構成されており、引き上げ棒40の引き上げ速度を調整できるようになっている。また、引き上げ棒回転駆動部60もモータ等で構成されており、引き上げ棒40の回転速度を調整できるようになっている。
さらに、単結晶引き上げ装置1は、ガス供給管12を介してチャンバ14の内部にガスを供給するガス供給部70を備えている。本実施の形態において、ガス供給部70は、例えばアルゴン等の不活性ガスを供給することができる。また、ガス供給部70は、必要に応じて、アルゴン等の不活性ガスに加えて酸素を供給することもできる。そして、ガス供給部70は、例えばアルゴンと酸素との混合比を可変することで混合ガス中の酸素の濃度を調整したり、あるいは、チャンバ14の内部に供給する混合ガスの流量を調整したりすることも可能となっている。
一方、単結晶引き上げ装置1は、ガス排出管13を介してチャンバ14の内部からガスを排出する排気部80を備えている。排気部80は例えば真空ポンプ等を備えており、チャンバ14内の減圧や、ガス供給部70から供給されたガスの排気をすることが可能となっている。
さらにまた、単結晶引き上げ装置1は、上部ヒータ30に電流を供給する上部ヒータ電源90を備えている。上部ヒータ電源90は、上部ヒータ30への電流の供給の有無および供給する電流量を設定できるようになっている。
そして、単結晶引き上げ装置1は、下部ヒータ35に電流を供給する下部ヒータ電源95を備えている。下部ヒータ電源95は、下部ヒータ35に流れる電流または/および下部ヒータ35に電流が供給される端子間の電圧を計測する計測部96を介して、下部ヒータ35に接続されている。そして、判断部97は、計測部96によって計測された電流と電圧とに基づいて、るつぼ20から下部ヒータ35上への落下物の有無を判断する。落下物の有無を判断する方法については後述する。
そして、単結晶引き上げ装置1は、支持棒16を回転させて、支持台15に支持されたるつぼ20を回転させるるつぼ回転駆動部110を備えている。るつぼ回転駆動部110もモータ等で構成されており、るつぼ20の回転速度を調整できるようになっている。
さらに、単結晶引き上げ装置1は、引き上げ棒40を介して引き上げ棒40の下部側に成長するサファイアインゴット200の重量を検出する重量検出部120を備えている。この重量検出部120は、例えば重量センサ等を含んで構成されている。
そして、単結晶引き上げ装置1は、上述した引き上げ駆動部50、引き上げ棒回転駆動部60、ガス供給部70、排気部80、上部ヒータ電源90、下部ヒータ電源95、判断部97を制御する制御部100を備えている。また、制御部100は、重量検出部120から出力される重量信号に基づき、引き上げられるサファイアインゴット200の結晶直径の計算を行い、上部ヒータ電源90および下部ヒータ電源95にフィードバックする。さらに、制御部100は、判断部97がるつぼ20から下部ヒータ35上へ落下物が有ったことを判断したときに、引き上げ中のサファイアインゴット200を引き抜くとともに、単結晶引き上げ装置1が損傷することを抑制するように制御する。
なお、本実施の形態においては、引き上げ棒40、引き上げ駆動部50および引き上げ棒回転駆動部60によって引き上げ部が構成されている。
[サファイアインゴット200]
図2は、単結晶引き上げ装置1を用いて製造されるサファイアインゴット200の構成の一例を説明する図である。
このサファイアインゴット200は、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210と、種結晶210の下部に延在しこの種結晶210と一体化した肩部220と、肩部220の下部に延在し肩部220と一体化した胴部230と、胴部230の下部に延在し胴部230と一体化した尾部240とを備えている。そして、このサファイアインゴット200においては、上方すなわち種結晶210側から下方すなわち尾部240側に向けてc軸方向にサファイアの単結晶が成長している。
ここで、肩部220は、種結晶210側から胴部230側に向けて、徐々にその直径が拡大していく形状を有している。また、胴部230は、上方から下方に向けてその直径がほぼ同じとなるような形状を有している。なお、胴部230の直径は、所望とするサファイア単結晶のウエハの直径よりもわずかに大きな値に設定される。そして、尾部240は、上方から下方に向けて徐々にその直径が縮小していくことにより、上方から下方に向けて凸状となる形状を有している。なお、図2には、尾部240が胴部230の下方に突出する凸状の形状を有している例を示しているが、製造条件を異ならせた場合には、図2に破線で示すように胴部230の下方において凹む凹状の形状を有していることもある。
なお、本実施の形態において、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200を製造しているのは、次の理由による。
一般的に、GaN系デバイス、青色LED、トランジスタ等の基板材料や液晶プロジェクタの偏光子の保持部材等では、サファイア単結晶のc軸に垂直な面((0001)面)が主面となるように、インゴットから切り出されたウエハが用いられることが多い。したがって、歩留まりの観点からすれば、c軸方向に結晶成長させたサファイア単結晶のインゴットをウエハの切り出しに用いることが好ましい。このため、本実施の形態では、このような後工程での利便性を考慮し、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200の製造を行っている。
ただし、図1に示す単結晶引き上げ装置1は、c軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200だけでなく、例えばa軸方向に結晶成長させたサファイアインゴット200を引き上げることも可能である。また、サファイアに限らず、各種の酸化物単結晶を引き上げることも可能であり、さらには酸化物以外の単結晶を引き上げることも可能である。
[下部ヒータ35]
図3は、下部ヒータ35の構成の一例を示す断面図および平面図である。図3(a)は、下部ヒータ35の断面図である。なお、図3(a)には、下部ヒータ35に加えて、るつぼ20、支持台15および支持棒16を示している。図3(a)により、これらの位置関係が分かる。図3(b)は、下部ヒータ35を上方(るつぼ20側)から見た平面図を示している。なお、図3(a)は、図3(b)のIIIA−IIIA線での断面図である。
まず、下部ヒータ35の形状を説明する。
図3(b)に示すように、下部ヒータ35の形状は、微細に見ると複雑な形状であるが、大まかに捉えると中央部がくり抜かれた円板状であって、外周K1と内周K2とで囲まれている。図3(b)では、外周K1と内周K2とは同心円である。なお、後述する端子部35bおよび端子部35cは、それぞれの一部が外周K1からはみ出している。
開口部35aは中央部のくり抜かれた部分であって、支持棒16がこの開口部35aに通されている。
そして、下部ヒータ35は、外周K1と内周K2との間が、るつぼ20を下部ヒータ35上に鉛直方向に投影した像(るつぼ20の投影像)の輪郭線である境界L1と、支持台15を下部ヒータ35上に鉛直方向に投影した像(支持台15の投影像)の輪郭線である境界L2とで区切られた3つの領域(領域I、領域II、領域III)に分かれている。領域Iは外周K1から境界L1までの領域、領域IIは境界L1から境界L2までの領域、領域IIIは境界L2から内周K2までの領域である。
すなわち、下部ヒータ35の外周K1は、るつぼ20の投影像の輪郭線である境界L1より大きく、下部ヒータ35の外側はるつぼ20の投影像からはみ出している。ここで、下部ヒータ35のるつぼ20からはみ出した領域Iを下部ヒータ35の周辺部と表記する。
一方、下部ヒータ35の内周K2は、支持台15の投影像の輪郭線である境界L2より小さく、下部ヒータ35は支持台15の下にもぐりこんでいる。すなわち、下部ヒータ35は、領域IIにおいて、るつぼ20の底部21に対向し、領域IIIにおいて、支持台15の裏面に対向している。なお、ここでは、領域IIと領域IIIとをまとめて、下部ヒータ35がるつぼ20の底部21と対向する対向部と表記する。
よって、境界L1は、周辺部と対向部との境界である。
なお、本実施の形態では、境界L1および境界L2も、外周K1および内周K2と同様の同心円である。
さらに、下部ヒータ35は、外周K1の直径の両端の位置に、端子部35bと端子部35cとを備えている。端子部35bおよび端子部35cには、それぞれ貫通孔が設けられている。そして、それぞれの貫通孔に、例えば炭素(C)で構成されたボルト状の接続部材が挿入されるようになっている。そして、接続部材は配線に接続され、下部ヒータ電源95から下部ヒータ35に電流が供給されるようになっている。
下部ヒータ35には、端子部35bと端子部35cとの間を結ぶように電流が流れる経路(電流経路)が設けられている。電流経路は、内周K2(外周K1)の中心から放射状に設けられた複数の中間部Dと、領域Iまたは領域IIIにおいて隣接する中間部Dを相互に接続する接続部U1および接続部U2とを備えている。接続部U1は領域Iにおいて隣接する中間部Dを接続し、接続部U2は領域IIIにおいて隣接する中間部Dを接続する。なお、接続部U1と接続部U2とは、隣接する中間部Dのすべての間に設けられているのではなく、一つ置きに表れるようになっている。
なお、下部ヒータ35がカーボンヒータである場合、端子部35b、35c、中間部D、接続部U1、U2は、一体として構成され、いずれにおいても発熱する。
以上説明したように、中間部Dは、領域Iと領域IIとの境界L1と、領域IIと領域IIIとの境界L2とを横切るように設けられている。このことにより、隣接する中間部D間の間隙Sも、境界L1と境界L2とを共に横切るように設けられている。そして、電流経路は、領域Iにおいて接続部U1により、領域IIIにおいて接続部U2により接続されている。すなわち、電流経路は、境界L1と境界L2とを横切るように設けられ、領域I(周辺部)と領域III(対向部)において折り曲げられるように構成されている。
図3(b)に示す下部ヒータ35では、電流経路は、端子部35bから、下部ヒータ35の右半分を通る経路と左半分を通る経路との2つの経路に分かれ、端子部35cで合流する。なお、本実施の形態では、2つの電流経路が端子部35bと端子部35cとを共通にして設けられているが、電流経路が2つの端子(端子部35bと端子部35c)を接続するように設けられた1つの経路であってもよく、電流経路が3つ以上の端子の間に設けられた3つ以上の経路であってもよい。
ここでは、中間部Dは、下部ヒータ35の中心から放射状に設けられているとしたが、放射状でなくともよく、境界L1および/または境界L2に対して斜めに交差する線状であってもよい。また、中間部Dは、境界L1および/または境界L2に対して直交または斜めに交差する曲線状であってもよい。なお、中間部Dは、境界L1と境界L2とを横切るように設けられ、これにより、隣接する中間部D間の間隙Sも境界L1と境界L2とを横切るように設けられていることが好ましい。
次に、中間部Dおよび間隙Sが境界L1および境界L2をともに横切るように設けられる理由を説明する。
本実施の形態では、るつぼ20の外表面が溶解し、溶解したるつぼ20の構成材料がるつぼ20の外表面から滴り落ちたり、アルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出たりしたとき、溶解したるつぼ20の構成材料またはあふれたアルミナ融液300が下部ヒータ35上に滴り落ちるようにしている。以下では、溶解したるつぼ20の構成材料またはあふれたアルミナ融液300を落下物と表記する。
はじめに、るつぼ20の外表面の溶解において、溶解した部分が壁部22である場合について説明する。
溶解したるつぼ20の構成材料が壁部22の外側を伝って流れ、壁部22の鉛直下方に落ちていくとすると、溶解したるつぼ20の構成材料は、図3(a)の矢印E1に示すように、下部ヒータ35の境界L1上またはその近傍に落ちる。
また、溶解したるつぼ20の構成材料が壁部22の外側を伝って流れたのち、底部21の外側を伝って底部21の下に回りこみ、底部21から鉛直下方に落下する。すると、図3(a)の矢印E2に示すように、下部ヒータ35の領域II内に落ちる。るつぼ20の底部21と壁部22との境界は、緩やかな曲線(カーブ)となっているため、壁部22の外側から底部21の外側を伝って底部21の下に回りこむことがありうる。
さらに、溶解したるつぼ20の構成材料が壁部22の外側を伝って流れたのち、底部21の外側を伝って底部21の下に回りこみ、支持台15の側面に達することもあるうる。このときは、溶解したるつぼ20の構成材料は、図3(a)の矢印E3に示すように、支持台15の側面から鉛直下方に落下する。このとき、溶解したるつぼ20の構成材料は、下部ヒータ35の境界L2上またはその近傍に落ちる。
ここで、溶解したるつぼ20の構成材料が支持台15の側面から支持台15の裏面に回りこみ、支持棒16に伝っていくことが考えられる。しかし、支持台15の断面形状を長方形としておけば、溶解したるつぼ20の構成材料が支持台15の裏側に回りこむことが抑制できる。
なお、矢印E1、E2、E3で示した落下の状態が同時に発生することもありうる。
そして、るつぼ20の外表面の溶解において、溶解した部分が底部21である場合においても、溶解したるつぼ20の構成材料が下部ヒータ35上に落下する状態は、上記の矢印E2または/および矢印E3で示したと同様になる。
次に、アルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出た場合を説明する。
この場合は、るつぼ20の外表面の溶解において、溶解した部分が壁部22である場合と同様となる。つまり、あふれたアルミナ融液300は、るつぼ20の壁部22の外側を伝って流れる。そして、溶解したるつぼ20の構成材料と同様に、あふれたアルミナ融液300が落下する状態は、矢印E1、E2、E3で示す状態のいずれか、またはこれらのいくつかが同時に生じた状態となる。
以上説明したように、るつぼ20の外表面の溶解した場合およびアルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出た場合において、るつぼ20からの落下物は、下部ヒータ35の境界L1の近傍、境界L2の近傍および境界L1と境界L2とで挟まれた領域IIに落下する。
図4は、下部ヒータ35に落下物401が落下した状態の一例を示す図である。
落下物401は、下部ヒータ35において、3つの中間部D上と2つの間隙S上に留まっている。落下物401が下部ヒータ35の構成材料より導電性に富むものであれば、下部ヒータ35の端子部35bから端子部35cに向かう右側の電流経路の一部は、落下物401により短絡される。すなわち、電流は落下物401を通って流れる。よって、落下物401がない場合に比べ、右側の電流経路は電流が流れやすく(抵抗が小さく)なる。これにより、下部ヒータ35も電流が流れやすく(抵抗が小さく)なる。
なお、図4では、下部ヒータ35上の3つの中間部D上と2つの間隙S上に落下物401があるとしたが、落下物401の大きさはこれ以上であってもよく、これ以下でもあってもよい。また、図4では1箇所に落下物401を記載しているが、複数の大きさの異なる落下物401があってもよい。すなわち、落下物401は、下部ヒータ35の電流経路の電流の流れやすさが変化するものであれば、判断部97の落下物の有無の判断において、「落下物有」として判断できる。
このような電流経路が短絡される状態は、金属製のるつぼ20の外表面が溶解した場合に生じやすい。
さて、るつぼ20の外表面が溶解する場合とは、るつぼ20の融点と原料の融点とが近い場合に生じやすい。原料を溶融しようとするとき、るつぼ20の外表面がるつぼ20の融点を超えて加熱されることがあるためである。特に、原料を急速に溶融しようとして、上部ヒータ30または/および下部ヒータ35に電流を流し過ぎると、るつぼ20の外表面がるつぼ20の融点を超えてしまう。すると、るつぼ20の外表面が溶融して、るつぼ20の構成材料が、下部ヒータ35上に落下する。
本実施の形態においては、るつぼ20がモリブデン(融点は2620℃)、原料が酸化アルミニウム(融点は2054℃)である。これらの融点の差は566℃である。しかし、原料を急速に溶融しようとする場合、るつぼ20の外表面の温度が、モリブデンの融点を超えることがありうる。すなわち、サファイアインゴット200の引き上げにおいて、るつぼ20がモリブデンであると、るつぼ20の融点と原料の融点とが近い(温度差が小さい)場合に相当する。
図5は、下部ヒータ35に落下物402が落下した状態の他の一例を示す図である。
落下物402は、下部ヒータ35上に落下すると、下部ヒータ35の構成材料を侵食して、下部ヒータ35より下方に落下する。この場合、図5に示すように、下部ヒータ35の中間部Dの一部が削り取られ細くなる。すると、落下物402がない場合に比べ、右側の電流経路は電流が流れにくく(抵抗が大きく)なる。これにより、下部ヒータ35も電流が流れにくく(抵抗が大きく)なる。
なお、図5では電流経路が2箇所において削り取られているとしたが、1箇所でもよく、3箇所以上の箇所で削り取られていてもよい。また、図5では中間部Dの一部が削り取られているとしたが、中間部Dが破断されてもよい。すなわち、落下物402は、下部ヒータ35の電流経路の電流の流れやすさが変化するものであれば、判断部97の落下物の有無の判断において、「落下物有」として判断できる。
このような中間部Dが削り取られる状態は、アルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出た場合において生じやすい。
以上説明したように、るつぼ20の外表面が溶解した場合(落下物401)およびアルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出た場合(落下物402)のいずれにおいても、下部ヒータ35の電流の流れやすさ(抵抗)が変化する。なお、落下物401および落下物402を区別しないときは、落下物と表記する。
なお、上記において、るつぼ20の外表面が溶解した場合に、下部ヒータ35は電流が流れやすくなるとして説明したが、るつぼ20の外表面が溶解した場合においても、下部ヒータ35の構成材料が侵食されて、電流が流れにくくなることがある。
さらに、中間部Dが境界L1および境界L2と交差するように設けられているので、間隙Sも境界L1および境界L2と交差するようになっている。この場合、るつぼ20の外表面が溶解した場合(落下物401)およびアルミナ融液300がるつぼ20からあふれ出た場合(落下物402)のいずれにおいても、前述したように、落下物は、境界L1の近傍または/および境界L2の近傍、さらには境界L1と境界L2との間の領域IIに落ちる。中間部Dと間隙Sとは境界L1および境界L2に対して交差するように構成されているので、落下物は間隙Sを塞ぎやすく、または、中間部Dを削り取りやすい。すなわち、中間部Dが境界L1および境界L2と交差するように設けられ、これにより間隙Sが境界L1および境界L2と交差していることが好ましい。
なお、間隙Sが大きすぎる場合には、落下物が素通りしやすくなる。よって、間隙Sの大きさは、落下物の大きさ等を考慮して設定すればよい。
上記においては、中間部Dが境界L1および境界L2と交差するように設けられ、間隙Sも境界L1および境界L2と交差するようになっている。しかし、図3(a)に示した矢印E1の落下の状態が主である場合では、中間部Dおよび間隙Sが境界L1を交差すればよい。
[サファイアインゴット200の製造方法]
図6は、単結晶引き上げ装置1を用いて、サファイアインゴット200を製造する方法(製造方法)を説明するためのフローチャートである。ここでは、判断部97は「落下物有」と判断せず、正常にサファイアインゴット200の引き上げが終了する場合を説明する。
サファイアインゴット200の製造にあたっては、まず、チャンバ14内のるつぼ20内に充填された固体の酸化アルミニウムを加熱によって溶解(融解)する溶融工程を実行する(ステップ101)。
次に、酸化アルミニウムの融液すなわちアルミナ融液300に種結晶210の下端部を接触させた状態で温度調整を行う種付け工程を実行する(ステップ102)。
次いで、アルミナ融液300に接触させた種結晶210を回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶210の下方に肩部220を形成する肩部形成工程を実行する(ステップ103)。
引き続いて、種結晶210を介して肩部220を回転させながら上方に引き上げることにより、肩部220の下方に胴部230を形成する胴部形成工程を実行する(ステップ104)。
さらに引き続いて、種結晶210および肩部220を介して胴部230を回転させながら上方に引き上げてアルミナ融液300から引き抜く引抜き工程を実行する(ステップ105)。
そして、るつぼ20内のアルミナ融液300の加熱を停止して冷却する冷却工程を実行し(ステップ106)、得られたサファイアインゴット200が冷却された後にチャンバ14の外部に取り出して、一連の製造工程を完了する。
なお、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程をまとめて引き上げ工程と表記する。そして、溶融工程、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程では、後述するように、上部ヒータ30および/または下部ヒータ35に電流が供給され、るつぼ20が加熱されている。よって、これらの工程を加熱工程と表記する。
なお、このようにして得られたサファイアインゴット200は、まず、肩部220と胴部230との境界および胴部230と尾部240との境界においてそれぞれ切断され、胴部230が切り出される。次に、切り出された胴部230は、さらに、長手方向に直交する方向に切断され、サファイア単結晶のウエハとなる。このとき、本実施の形態のサファイアインゴット200はc軸方向に結晶成長していることから、得られるウエハの主面はc面((0001)面)となる。そして、得られたウエハは、GaN系LEDや偏光子の製造等に用いられる。
では、上述した各工程について具体的に説明を行う。ただし、ここでは、ステップ101の溶融工程の前に実行される準備工程から順を追って説明を行う。
なお、準備工程を除く、溶融工程、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程、冷却工程をまとめてサファイアインゴット200を成長させる工程と表記する。
(準備工程)
準備工程では、まず、<0001>c軸の種結晶210を用意する。次に、引き上げ棒40の保持部材41に種結晶210を取り付け、予め定められた位置にセットする。続いて、チャンバ14内に下部ヒータ35を設置する。そして、支持棒16に支持台15を取り付ける。
また、るつぼ20内に酸化アルミニウムの原材料すなわちアルミナ原料を充填し、支持台15上に配置する。そして、るつぼ20の壁部22を取り巻くように上部ヒータ30を設置する。その後、チャンバ14内に断熱容器11を組み立てる。
次に、制御部100、引き上げ駆動部50、引き上げ棒回転駆動部60、ガス供給部70、排気部80、上部ヒータ電源90、下部ヒータ電源95、計測部96、判断部97、るつぼ回転駆動部110、重量検出部120に通電する。これにより、制御部100が、引き上げ駆動部50、引き上げ棒回転駆動部60、ガス供給部70、排気部80、上部ヒータ電源90、下部ヒータ電源95、計測部96、判断部97、るつぼ回転駆動部110、重量検出部120を制御する状態になる。以下で説明する操作は、すべて制御部100の制御に基づいて行われる。よって、「制御部100の制御に基づいて」と表記することを省略する。
そして、ガス供給部70からのガス供給を行わない状態で、排気部80は、チャンバ14内を減圧する。その後、ガス供給部70は、チャンバ14内に予め定められたガスを供給し、チャンバ14の内部を常圧にする。
(溶融工程)
溶融工程では、ガス供給部70は予め定められたガスをチャンバ14内に供給する。なお、溶融工程において供給するガスは、準備工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。このとき、引き上げ棒回転駆動部60は、引き上げ棒40を第1の回転速度で回転(図1の矢印B方向)させる。そして、るつぼ回転駆動部110は、支持棒16を回転(図1の矢印C方向)させて、るつぼ20を第2の回転速度で回転させる。
ここで、引き上げ棒40の回転方向(矢印B方向)とるつぼ20の回転方向(矢印C方向)とは、図1に示すように逆の方向であってもよく、同じ方向であってもよい。
また、上部ヒータ電源90は、上部ヒータ30に電流を供給して上部ヒータ30を発熱させ、るつぼ20の壁部22を加熱する。同様に、下部ヒータ電源95は、下部ヒータ35に電流を供給して下部ヒータ35を発熱させ、るつぼ20の底部21を加熱する。
このようにして、るつぼ20の底部21および壁部22が加熱され、これに伴ってるつぼ20内に収容される酸化アルミニウムがその融点(2054℃)を超えて加熱されると、るつぼ20内においてアルミナ原料すなわち酸化アルミニウムが溶融し、アルミナ融液300となる。
(種付け工程)
種付け工程では、ガス供給部70は、予め定められたガスをチャンバ14内に供給する。なお、種付け工程において供給するガスは、溶融工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
そして、引き上げ駆動部50は、保持部材41に取り付けられた種結晶210の下端が、るつぼ20内のアルミナ融液300と接触する位置まで引き上げ棒40を下降させて停止させる。その状態で、重量検出部120からの重量信号をもとに、上部ヒータ電源90は、上部ヒータ30に供給する電流値を調節する。同様に、下部ヒータ電源95は、下部ヒータ35に供給する電流値を調節する。
(肩部形成工程)
肩部形成工程では、上部ヒータ電源90は、上部ヒータ30に供給する電流値を、下部ヒータ電源95は、下部ヒータ35に供給する電流値を調節したのち、アルミナ融液300の温度が安定するまでしばらくの間保持し、その後、引き上げ棒40を第1の回転速度で回転させながら第1の引き上げ速度にて引き上げる(図1の矢印A方向)。
すると、種結晶210は、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で回転されつつ引き上げられることになり、種結晶210の下端には、鉛直下方に向かって拡開する肩部220が形成されていく。
なお、肩部220の直径が所望とするウエハの直径よりも数mm程度大きくなった時点で、肩部形成工程を完了する。
(胴部形成工程)
胴部形成工程では、ガス供給部70は、予め定められたガスをチャンバ14内に供給する。なお、胴部形成工程において供給するガスは、肩部形成工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、引き続き上部ヒータ電源90が上部ヒータ30に電流を供給し、下部ヒータ電源95が下部ヒータ35に電流を供給して、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第2の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第2の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
さらにまた、引き上げ棒回転駆動部60は、引き上げ棒40を第3の回転速度で回転させる。ここで、第3の回転速度は、肩部形成工程における第1の回転速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
そして、るつぼ回転駆動部110は、るつぼ20を第4の回転速度で回転させる。ここで、第4の回転速度は、肩部形成工程における第2の回転速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
種結晶210と一体化した肩部220は、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で回転されつつ引き上げられることになるため、肩部220の下端部には、好ましくは円柱状の胴部230が形成されていく。胴部230の直径は、所望とするウエハの直径以上であればよい。
(引抜き工程)
引抜き工程では、ガス供給部70は、予め定められたガスをチャンバ14内に供給する。なお、引抜き工程において供給するガスは、胴部形成工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、引き続き、上部ヒータ電源90が上部ヒータ30に電流の供給を行い、るつぼ20の壁部22を介してアルミナ融液300を加熱する。同様に、下部ヒータ電源95が下部ヒータ35に電流の供給を行い、るつぼ20の底部21を介してアルミナ融液300を加熱する。
そして、制御部100は、引き上げ駆動部50を制御して、引き上げ棒40の引き上げ速度を増速させて引き上げ棒40を上方に引き上げさせることにより、尾部240の下端をアルミナ融液300から引き抜く。これにより、図2に示すサファイアインゴット200が得られる。
さらに、引き上げ駆動部50は引き上げ棒40の引き上げを停止し、引き上げ棒回転駆動部60は引き上げ棒40の回転を停止する。そして、るつぼ回転駆動部110はるつぼ20の回転を停止する。
(冷却工程)
冷却工程では、ガス供給部70は、予め定められたガスをチャンバ14内に供給する。なお、冷却工程において供給するガスは、引抜き工程と同じものであってもよいし異なるものであってもよい。
また、上部ヒータ電源90は、上部ヒータ30への電流の供給を停止する。同様に、下部ヒータ電源95から下部ヒータ35への電流の供給を停止し、るつぼ20を介したアルミナ融液300の加熱を中止する。
このとき、るつぼ20内には、サファイアインゴット200を形成しなかった酸化アルミニウムがアルミナ融液300として少量残存している。このため、加熱の停止に伴ってるつぼ20中のアルミナ融液300は徐々に冷却され、酸化アルミニウムの融点を下回った後にるつぼ20中で固化し、酸化アルミニウムの固体となる。
そして、チャンバ14内が十分に冷却された状態で、チャンバ14内からサファイアインゴット200が取り出される。
[判断部97による落下物の有無の判断方法]
上記において説明したフローチャートでは、判断部97は、サファイアインゴット200の製造(溶融工程、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程)において、落下物の有を判断しなかったとした。よって、判断部97の判断する方法(判断方法)について触れなかった。以下では、判断部97による落下物の有無の判断方法について説明する。
なお、判断部97による落下物の有無の判断は、サファイアインゴット200の製造における溶融工程、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程において行い、冷却工程では行わない。
溶融工程において、上部ヒータ30および下部ヒータ35は、電流が供給され、るつぼ20を加熱する。このとき、上部ヒータ30および下部ヒータ35の発熱量は、例えばプログラム制御またはADC制御により、電力で制御(電力制御)される。すなわち、溶融工程においては、上部ヒータ30および下部ヒータ35に投入されるそれぞれの電力が予め定められた手順に基づいて徐々に増加され、るつぼ20内に収容される酸化アルミニウムを溶融して、アルミナ融液300とする。そして、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程、引抜き工程のそれぞれにおいて、予め定められた直径になるように上部ヒータ30および下部ヒータ35に供給されるそれぞれの電力が制御される。
次に、判断部97による落下物の有無の判断方法の概要を説明する。
計測部96は、常時下部ヒータ35の端子部35bと端子部35cとの間の電流および電圧を計測している。
そして、判断部97は、予め定められた時間間隔で、計測部96の計測した端子部35bと端子部35cとの間の電流および電圧から、端子部35bと端子部35cとの間の抵抗値(下部ヒータ35の抵抗値)を算出する。算出された抵抗値の変化を観察し、抵抗値の変化が予め定められたしきい値を超えた場合に、「落下物有」と判断する。抵抗値の変化が予め定められたしきい値以下であれば、「落下物無」と判断する。なお、しきい値を超える抵抗値の変化がノイズ等の擾乱によるものでないことを確認するため、しきい値を超える抵抗値の変化が複数回連続して生じた場合に、「落下物有」と判断してもよい。
なお、下部ヒータ35の抵抗値は、下部ヒータ35の温度によって変化する。よって、抵抗値は、予め定められた基準値と比較されるのではなく、温度を考慮することが必要となる。ここでは、予め定められた時間前に算出された抵抗値と比較している。予め定められた時間を下部ヒータ35の温度変化より短い時間とすれば、下部ヒータ35の温度による抵抗値の変化の影響を抑制できる。
図7は、判断部97による落下物の有無を判断する方法の一例を説明するフローチャートである。
ここでは、ここでは、実験例により、判断方法の一例を説明する。
下部ヒータ35は、例えばカーボンヒータであって、一例として抵抗値が0.04Ω〜0.08Ωである。また、図7に示すフローチャートおよび以下の説明において、ここで設定した数値を( )内に示す。
まず、下部ヒータ35に電力が供給される(ステップ201)。なお、下部ヒータ35に供給される電力が予め定められた判断開始電力P0(1kW)を越えるまでは、判断部97は落下物の有無の判断をしないとする(ステップ202)。これは、判断開始電力P0未満では下部ヒータ35が十分加熱されていないために抵抗値の変化が大きく、判断部97が誤って「落下物有」と判断する恐れがあるためである。図7では、判断部97が判断をしない期間(不感期間)を電力(判断開始電力P0)で設定したが、時間で設定してもよい。下部ヒータ35の抵抗値の変化が大きい期間(時間)は、電力供給を開始した直後の一定の期間である。この期間(時間)は、経験によって設定することができる。
次に、判断部97は、抵抗値の変化を判断するため、カウンタmおよびカウンタnをそれぞれ“0”に設定する(ステップ203)。
ここで、カウンタnは、抵抗値の算出毎にカウントアップされていく。よって、抵抗値の変化を算出するには、算出した抵抗値Rと例えばn0(10)回前に算出した抵抗値R(n−n0)との差を比較する。ここでは、抵抗値変化ΔR=|R(n−n0)−R|として、抵抗値Rとn0回前に算出した抵抗値R(n−n0)との差の絶対値を取っている。これは、前述したように、電流経路が短絡される場合には下部ヒータ35の抵抗値が減少し、電流経路が削られる場合には下部ヒータ35の抵抗値が増加するからである。すなわち、絶対値を用いることで、いずれの場合においても落下物の有無を判断できる。
一方、カウンタmは、しきい値ΔR0を超える抵抗値変化ΔRが複数回(m0回)連続して生じた場合に、「落下物有」と判断するためのカウンタで、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えて変化したときカウントアップする。後述するように、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えた後であっても、次に算出された抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えない場合には、カウンタmをリセットする(後述するステップ212)。
なお、m0=1とすれば、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えると「落下物有」と判断するようにできる。
次に、カウンタnをカウントアップする(ステップ204)。
そして、計測部96から、下部ヒータ35の端子部35bと端子部35cとの間の電流および電圧を取り込む(ステップ205)。なお、前述したように、計測部96は、下部ヒータ35の端子部35bと端子部35cとの間の電流および電圧を常時計測している(計測工程)。
次いで、電流および電圧から抵抗値Rを算出する(ステップ206)。抵抗値Rを算出する時間間隔は例えば1分である。
続いて、カウンタnの値が、予め定められた値n0(10)を超えているかをチェックする(ステップ207)。これは、上記したように、算出した抵抗値Rとn0(10)回前に算出した抵抗値R(n−n0)とを比較するために、抵抗値Rの算出が少なくとも(n0+1)(11)回行われていることが必要だからである。ステップ207に設定されるn0の値は、算出した抵抗値Rを何回前の抵抗値R(n−n0)と比較するかによって決まる。
カウンタnが予め定められた値n0(10)以下の場合は、ステップ204に戻る。そして、抵抗値Rの算出を行う(ステップ206)。
カウンタnがn0(10)を超える場合は、ステップ208に移る。
次に、抵抗値変化ΔR=|R(n−n0)−R|を算出する。そして、抵抗値変化ΔRと予め定められたしきい値ΔR0(0.0005)とを比較する(ステップ208)。そして、抵抗値変化ΔRが、しきい値ΔR0を超える場合(ΔR=|R(n−n0)−R|>ΔR0)は、カウンタmをカウントアップする(ステップ209)。続いて、カウンタmの値と予め定められた連続回数m0(3)とを比較する(ステップ210)。
この連続回数m0(3)は、しきい値ΔR0を超える抵抗値の変化が連続して生じているかを判断するための値である。
そして、カウンタmが連続回数m0(3)であると、m0(3)回連続してしきい値ΔR0を超える抵抗値の変化があったとして、「落下物有」と判断する(ステップ211)。
一方、カウンタmの値が連続回数m0(3)未満の場合は、ステップ204に戻る。
ここで、ステップ207〜ステップ211が判断工程の一例である。
なお、ステップ208において、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0以下の場合(ΔR=|R(n−10)−R|≦ΔR0)は、カウンタmを“0”にリセット(ステップ212)して、ステップ204に戻る。
カウンタmを“0”にリセットするのは、カウンタmがm0未満(m0が3の場合はカウンタmが1または2)の場合は、それ以前に抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えたことがあるが、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えることがm0回連続していないためである。カウンタmを“0”にリセットすることで、しきい値ΔR0を超える抵抗値の変化がm0回連続しない場合におけるカウンタmのカウントアップを抑制している。
なお、判断部97が「落下物有」と判断すると、制御部100は「落下物有」の信号を受けて、引き上げ駆動部50、引き上げ棒回転駆動部60を制御し、引き上げ中のサファイアインゴット200をアルミナ融液300から引き抜く(引き抜き工程)。これにより、引き上げ中のサファイアインゴット200が使用不能となることを抑制する。
また、制御部100は、上部ヒータ電源90および下部ヒータ電源95を制御して、上部ヒータ30および下部ヒータ35に流す電流を停止して、るつぼ20を冷却する(電流供給停止工程)。なお、必要に応じて、上部ヒータ30および下部ヒータ35に流す電流を徐々に減少させていってもよい。これにより、単結晶引き上げ装置1が損傷することを抑制する。なお、下部ヒータ35の電流経路が切断されて、下部ヒータ電源95から電力が供給し得ない場合には、下部ヒータ電源95の制御を行う必要がない。
以上説明したように、判断部97が「落下物有」と判断するには、下部ヒータ35に電力が供給されていること(電流が流れていること)が必要である。
よって、サファイアインゴット200を成長させる工程のうち、下部ヒータ35に電流の供給が停止された冷却工程においては、判断部97は落下物の有無の判断はしない。なお、冷却工程においては、引き上げ中のサファイアインゴット200はアルミナ融液300から引き抜かれており、るつぼ20が冷却されているので、落下物の有無を判断する必要がない。
図8は、サファイアインゴット200の製造において、判断部97が「落下物有」と判断しなかった場合の、下部ヒータ35の抵抗値R、下部ヒータ35の電力Pおよび抵抗値変化ΔRを時間に対して示す図である。図8(a)は、下部ヒータ35の抵抗値R(Ω)と下部ヒータ35の電力P(arb.)とを示し、図8(b)は、下部ヒータ35の抵抗値変化ΔR(|R(n−10)−R|)を示している。なお、下部ヒータの電力は任意単位(arb.)で示している。図8(a)および図8(b)の横軸は時間(分)である。
なお、るつぼ20はモリブデンである。
図8(a)に示すように、下部ヒータ35には、0分から500分までの間、下部ヒータ35の電力Pは徐々に増加する。この期間が溶融工程にあたる。この期間において、下部ヒータ35の抵抗値Rは、温度上昇により0.064Ωから0.068Ωに増加している。
その後1500分までの期間において、下部ヒータの電力Pはほぼ一定に保たれている。この期間が、種付け工程、肩部形成工程、胴部形成工程にあたる。この間、下部ヒータ35の抵抗値Rは約0.068Ωでほぼ一定になっている。
一方、図8(b)に示すように、抵抗値変化ΔR(|R(n−10)−R|)は、しきい値ΔR0(ここでは0.0005)を超えていない。判断部97は「落下物有」と判断することがなかった。
図9は、サファイアインゴット200の製造において、判断部97が「落下物有」と判断した場合の、下部ヒータ35の抵抗値R、下部ヒータ35の電力Pおよび抵抗値変化ΔRを時間に対して示した図である。図9(a)は、下部ヒータ35の抵抗値R(Ω)と下部ヒータ35の電力P(arb.)とを示し、図9(b)は、下部ヒータ35の抵抗値変化ΔR(|R(n−10)−R|)を示している。なお、下部ヒータの電力は任意単位(arb.)で示している。図9(a)および図9(b)の横軸は時間(分)である。
なお、図8に示した場合と同様に、るつぼ20はモリブデンである。
図9(a)に示すように、下部ヒータ35には、0分から200分までの間、電力が徐々に増加するように供給されている。この期間が溶融工程にあたる。この期間、下部ヒータ35の抵抗値Rは、温度の上昇により0.063Ωから0.067Ωに増加している。
その後、下部ヒータ35の電力はほぼ一定に保たれ、種付け工程からのサファイアインゴット200を成長させる工程が始まる。そして、下部ヒータ35の抵抗値Rも、200分から350分までは、0.067Ωでほぼ一定になっている。
ところが、350分から、抵抗値Rが急に低下している。
図9(b)に示すように、抵抗値変化ΔR(|R(n−10)−R|)は、350分の抵抗値Rが急激に低下した時間で、抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0(ここでは0.0005)を超えている。よって、判断部97は、350分の抵抗値変化ΔRがしきい値ΔR0を超えた時点で、図7に示したフローチャートにしたがって、「落下物有」と判断した。
判断部97より「落下物有」と判断した信号を受けて、制御部100は、予め定められた手順に基づいて、成長中のサファイアインゴット200をアルミナ融液300から引き抜き、るつぼ20を冷却する工程を自動的に実施した。
その後、るつぼ20および下部ヒータ35を観察すると、モリブデンのるつぼ20の壁部22の一部が溶解し、モリブデンが下部ヒータ35上に滴り落ちて、図4に示したと同様に、中間部D間の間隙Sを塞いで、電流経路を短絡させるように堆積していた。
これは、るつぼ20の壁部22の温度が融点を超えたため、壁部22が溶解し、下部ヒータ35上に落ちたことによる。
また、図示しないが、アルミナ融液300があふれ出て、下部ヒータ35上に落下し、下部ヒータ35の電流経路が削られる場合においても、下部ヒータ35の抵抗の変化により、「落下物有」と判断できた。
以上説明したように、本実施の形態によれば、るつぼの外表面の溶融や、るつぼからの原料融液のあふれを、発生から短い時間において検出することができる。
本実施の形態では、下部ヒータ35に供給される電力値で下部ヒータ35の発熱量を制御した。このため、電流値および電圧値がともに変化した。そこで、抵抗値Rの変化に基づいて、落下物の有無を判断した。しかし、電流値または電圧値の変化に基づいて落下物の有無を判断してもよい。
また、下部ヒータ35の電流値、電圧値または抵抗値の変化により、落下物の有無を判断すれば、図7に示したフローチャートに示した判断フローに限らず、他の判断フローを用いてもよい。
そして、上部ヒータ30および下部ヒータ35は、炭素(C)で構成されたカーボンヒータとしたが、炭素(C)を含む材料または他の材料から構成されていてもよい。
さらに、本実施の形態では、判断部97から「落下物有」と判断した信号を受けて、成長中のサファイアインゴット200をアルミナ融液300から引き抜く引抜き工程と、るつぼ20を冷却する冷却工程とを予め定められた手順に基づいて自動的に実施したが、判断部97から「落下物有」と判断した信号により警報を鳴動させてもよい。そして、操作者の判断により、その後の手順を実施してもよい。
1…単結晶引き上げ装置、10…加熱炉、11…断熱容器、12…ガス供給管、13…ガス排気管、14…チャンバ、15…支持台、16…支持棒、21…底部、22…側壁、30…上部ヒータ、35…下部ヒータ、40…引き上げ棒、50…引き上げ駆動部、60…引き上げ棒回転駆動部、70…ガス供給部、80…排気部、90…上部ヒータ電源、95…下部ヒータ電源、96…計測部、97…判断部、100…制御部、110…るつぼ回転駆動部、120…重量検出部、200…サファイアインゴット、210…種結晶、220…肩部、230…胴部、240…尾部、300…アルミナ融液、401、402…落下物

Claims (16)

  1. 上方に開口を有し、原料を熱により融解した融液を保持するるつぼの壁部を外から取り囲むように設けられ、電流により発熱して当該るつぼを当該壁部から加熱する第1の発熱体と、
    前記るつぼの底部の下方に設けられ、当該るつぼを鉛直方向に投影した像の内側にあって当該るつぼの当該底部に対向する対向部と、当該るつぼを鉛直方向に投影した像の外側にはみ出した周辺部とを備え、電流により発熱して当該るつぼを当該底部から加熱する第2の発熱体と、
    前記るつぼに保持された前記融液から単結晶を引き上げる引き上げ部と、
    前記第2の発熱体に流れる電流または当該電流を供給する端子間の電圧を計測する計測部と、
    前記計測部の計測した前記電流または前記電圧に基づいて、前記るつぼから前記第2の発熱体上への落下物の有無を判断する判断部と
    を備えた単結晶引き上げ装置。
  2. 前記第2の発熱体は、電流が流れる経路が前記周辺部と前記対向部との境界を横切るように当該周辺部と当該対向部とにおいて折れ曲げられて構成された部分を備えることを特徴とする請求項1に記載の単結晶引き上げ装置。
  3. 前記るつぼの前記底部の面積より小さい面積の表面を備え、当該表面で当該るつぼを支持する支持部材をさらに備え、
    前記第2の発熱体の前記対向部の少なくとも一部は、前記支持部材を鉛直方向に投影した像の内側に含まれることを特徴とする請求項1または2に記載の単結晶引き上げ装置。
  4. 前記第2の発熱体は、電流が流れる経路が前記支持部材を当該第2の発熱体上に鉛直方向に投影した像の輪郭を横切る部分を備えることを特徴とする請求項3に記載の単結晶引き上げ装置。
  5. 前記第2の発熱体は、炭素または炭素を含む材料で構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置。
  6. 前記るつぼは、高融点金属で構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置。
  7. 前記るつぼは、モリブデン、タングステン、イリジウム、白金、タンタルまたはこれらを含む合金で構成されていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置。
  8. 前記融液は、酸化アルミニウムを融解したアルミナ融液であって、前記単結晶がサファイア単結晶であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置。
  9. 上方に開口を有し、原料を融解した融液を保持するるつぼの壁部を外から取り囲む第1の発熱体と、当該るつぼの底部の下方に設けられた第2の発熱体とに電流を流して当該るつぼを加熱する加熱工程と、
    前記るつぼ内の前記融液から単結晶を引き上げる引き上げ工程と、
    前記第2の発熱体に流れる電流または当該電流を供給する端子間の電圧を計測する計測工程と、
    前記第2の発熱体に流れる電流または当該電流を供給する端子間の電圧に基づいて、前記るつぼから当該第2の発熱体上に落下物があったと判断する判断工程と
    を含む単結晶引き上げ装置の制御方法。
  10. 前記第2の発熱体は、前記るつぼを鉛直方向に投影した像の内側にあって当該るつぼの前記底部に対向する対向部と、当該るつぼを鉛直方向に投影した像の外側にはみ出した周辺部とを備えることを特徴とする請求項9に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  11. 前記第2の発熱体に流れる電流および当該電流を供給する端子間の電圧から当該第2の発熱体の抵抗値を算出し、当該抵抗値と予め定められた時間前に算出された抵抗値との差が、予め定められたしきい値を超える場合に、前記るつぼから当該第2の発熱体上に落下物があったと判断することを特徴とする請求項9または10に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  12. 前記第2の発熱体の抵抗値の算出を予め定められた時間間隔で繰り返し行い、予め定められた回数連続して予め定められた時間前に算出された抵抗値との差が予め定められたしきい値を超える場合に、前記るつぼから当該第2の発熱体上に落下物があったと判断することを特徴とする請求項11に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  13. 前記第2の発熱体に供給される電力が予め定められた電力を超えるまでは、前記るつぼからの落下物の有無を判断しないことを特徴とする請求項9ないし12のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  14. 前記第1の発熱体または前記第2の発熱体による前記るつぼの加熱の開始から予め定められた時間においては、当該るつぼからの落下物の有無を判断しないことを特徴とする請求項9または12に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  15. 前記るつぼから前記落下物があったと判断されたときに、前記単結晶を前記融液から引き抜く引き抜き工程をさらに備えることを特徴とする請求項9ないし14のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
  16. 前記るつぼから前記落下物があったと判断されたとき、前記第1の発熱体または前記第2の発熱体に電流の供給を停止する電流供給停止工程をさらに備えることを特徴とする請求項9ないし15のいずれか1項に記載の単結晶引き上げ装置の制御方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101530349B1 (ko) * 2013-11-29 2015-06-22 현빈테크 주식회사 사파이어 초고온 단결정 성장로 단열 구조
CN112458533A (zh) * 2020-10-30 2021-03-09 山东新升光电科技有限责任公司 一种蓝宝石单晶生长系统及方法

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