JP2011032104A - サファイア単結晶およびサファイア単結晶の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】酸化アルミニウムの融液からサファイア単結晶を成長させる際に、サファイア単結晶の尾部における凸状部の形成をより精密に抑制する。
【解決手段】肩部220は、種結晶210側から直胴部230側に向けて、徐々にその直径が拡大していく形状を有している。また、直胴部230は、上方から下方に向けてその直径Dがほぼ同じとなるような形状を有している。なお、直胴部230の直径Dは、所望とするサファイア単結晶のウエハの直径よりもわずかに大きな値に設定される。そして、尾部240は、上方から下方に向けて徐々にその直径が縮小していくことにより、上方から下方に向けて、尾部が凸状となる形状を有している。そして、尾部240の長さHと、直胴部230の直径Dとの比H/Dを、0.2≦H/D≦0.4とする。
【選択図】図2
【解決手段】肩部220は、種結晶210側から直胴部230側に向けて、徐々にその直径が拡大していく形状を有している。また、直胴部230は、上方から下方に向けてその直径Dがほぼ同じとなるような形状を有している。なお、直胴部230の直径Dは、所望とするサファイア単結晶のウエハの直径よりもわずかに大きな値に設定される。そして、尾部240は、上方から下方に向けて徐々にその直径が縮小していくことにより、上方から下方に向けて、尾部が凸状となる形状を有している。そして、尾部240の長さHと、直胴部230の直径Dとの比H/Dを、0.2≦H/D≦0.4とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、酸化アルミニウムの融液を用いたサファイア単結晶およびサファイア単結晶の製造方法に関する。
近年、サファイア単結晶は、例えば青色LEDを製造する際のIII族窒化物半導体(GaN等)のエピ膜成長用の基板材料として広く利用されている。また、サファイア単結晶は、例えば液晶プロジェクタに用いられる偏光子の保持部材等としても広く用いられている。
このようなサファイア単結晶の板材すなわちウエハは、一般に、サファイア単結晶のインゴット(単にサファイア単結晶とよぶこともある)を所定の厚さに切り出すことによって得られる。サファイア単結晶のインゴットを製造する方法については種々の提案がなされているが、その結晶特性がよいことや大きな結晶径のものが得やすいということから、溶融固化法で製造されることが多い。特に、溶融固化法の一つであるチョクラルスキー法(Cz法)は、サファイア単結晶のインゴットの製造に広く用いられている。
そして、チョクラルスキー法によってサファイア単結晶のインゴットを製造する際、インゴットの製造中に原料融液と接するインゴットの先端部(尾部という)の形状が凸状となる。
このようにインゴットの尾部が凸状になると、インゴットの成長に伴ってるつぼ中の融液量が低下した状態において、尾部の先端がるつぼの底面に当たってしまい、それ以上の結晶成長が行えなくなってしまう。このようにして形成された凸状部は、ウエハとしては使用できないので、ウエハの切り出しに使用することのできるインゴットの有効長が短くなってしまい、歩留まりの低下を招いてしまう。
このようにインゴットの尾部が凸状になると、インゴットの成長に伴ってるつぼ中の融液量が低下した状態において、尾部の先端がるつぼの底面に当たってしまい、それ以上の結晶成長が行えなくなってしまう。このようにして形成された凸状部は、ウエハとしては使用できないので、ウエハの切り出しに使用することのできるインゴットの有効長が短くなってしまい、歩留まりの低下を招いてしまう。
チョクラルスキー法によってサファイア単結晶のインゴットを製造するには、まずるつぼに酸化アルミニウムの原料を充填し、高周波誘導加熱法や抵抗加熱法によってるつぼを加熱し原料を溶融する。原料が溶融した後、所定の結晶方位に切り出した種結晶を原料融液表面に接触させ、種結晶を所定の回転数で回転させながら所定の速度で上方に引き上げて単結晶を成長させている(例えば、特許文献1参照)。
そして、特許文献2には、筒状ヒーターが誘導加熱されて発する熱により、イリジウム坩堝底部が加熱されて均一化され、育成した結晶の尾部の凸度(逆円錐状の部分の高さ)を結晶直径以下とすることが記載されている。
また、特許文献3には、引き上げ法によるサファイア単結晶育成において、サファイア単結晶固液界面を逆円錐状に突き出した尾部の長さC(凸度)は、種結晶部から直胴までの肩部の長さ、すなわち肩部が構成する面と種結晶中心を通り引き上げ方向に引いた直線との交点と、前記種結晶下部との間の距離Aと直胴部の平均直径Bとの比(B/A)に関連し、凸度を小さくするために、B/Aを2〜4.5になるように結晶の回転数と引き上げ速度と融液温度とを制御して結晶育成することが記載されている。
さらに、特許文献4には、単結晶育成時に融液側に凸形状となる固液界面の該凸形状の高さをHkとしたときに、予め求められたルツボ底の温度と育成時間と前記Hkとの関係を用いてHkが育成単結晶の直径に対して10%以下となるようにルツボ底の温度を調整することが記載されている。
そして、特許文献2には、筒状ヒーターが誘導加熱されて発する熱により、イリジウム坩堝底部が加熱されて均一化され、育成した結晶の尾部の凸度(逆円錐状の部分の高さ)を結晶直径以下とすることが記載されている。
また、特許文献3には、引き上げ法によるサファイア単結晶育成において、サファイア単結晶固液界面を逆円錐状に突き出した尾部の長さC(凸度)は、種結晶部から直胴までの肩部の長さ、すなわち肩部が構成する面と種結晶中心を通り引き上げ方向に引いた直線との交点と、前記種結晶下部との間の距離Aと直胴部の平均直径Bとの比(B/A)に関連し、凸度を小さくするために、B/Aを2〜4.5になるように結晶の回転数と引き上げ速度と融液温度とを制御して結晶育成することが記載されている。
さらに、特許文献4には、単結晶育成時に融液側に凸形状となる固液界面の該凸形状の高さをHkとしたときに、予め求められたルツボ底の温度と育成時間と前記Hkとの関係を用いてHkが育成単結晶の直径に対して10%以下となるようにルツボ底の温度を調整することが記載されている。
ところで、サファイア単結晶のインゴットにおいて、尾部の凸状部の鉛直方向の長さ、すなわち結晶成長方向に測った尾部の長さが大きい(長い)と、直胴部において結晶の歪が大きいとともに、前述したように、インゴットの有効長が短くなり歩留まりの低下を招き、逆に、尾部の長さを小さく(短く)すると、直胴部に気泡やるつぼからの遊離した貴金属などの含有物(インクルージョン)が、サファイア単結晶のインゴット中に含まれやすいことが知られている。そこで、結晶の歪やインクルージョンが少ない状態で、尾部の長さが短いサファイア単結晶のインゴットが求められている。
かかる問題に対し、上記特許文献2では、尾部の鉛直方向長さHと直胴部の直径Dとの比H/Dを0.723とした実施例が記載されている。さらに上記特許文献3には、この比H/D(特許文献3ではC/B)が、0.52〜0.71の実施例が記載されている。比H/Dをさらに小さくすることで、インゴットの有効長が長くなって、歩留まりの点で望ましい。
一方、上記特許文献4では、比H/Dを0.1以下にしているが、この場合には、直胴部にインクルージョンが発生しやすく、逆に歩留まりを低下させることになってしまう。
一方、上記特許文献4では、比H/Dを0.1以下にしているが、この場合には、直胴部にインクルージョンが発生しやすく、逆に歩留まりを低下させることになってしまう。
本発明は、酸化アルミニウムの融液からサファイア単結晶を成長させる際に、サファイア単結晶の尾部における凸状部の形成をより精密に抑制することを目的とする。
かかる目的のもと、本発明は以下の発明を提供する。すなわち、
[1] 種結晶から溶融固化法により育成されるサファイア単結晶であって、前記種結晶から直径が徐々に大きくなる肩部と、前記肩部に連なって、予め定められた直径を有する円柱状の胴部と、前記胴部に連なって、直径が徐々に小さくなる尾部とを備え、前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、円柱状の当該胴部の中心軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dが、
0.2≦H/D≦0.4である
ことを特徴とするサファイア単結晶。
[2] 前記サファイア単結晶は、前記肩部から前記尾部に向かう方向がc軸方向であることを特徴とする前項1に記載のサファイア単結晶。
[3] るつぼ中の酸化アルミニウムの融液に付着させた種結晶を回転させながら引き上げることにより、前記種結晶の下方に向かって直径が大きくなる肩部を形成する肩部形成工程と、前記融液に付着させた前記肩部を回転させながら引き上げることにより、当該肩部の下方に円柱状の胴部を形成する胴部形成工程と、前記肩部および当該肩部に連結して形成された前記胴部を、前記融液から引き上げることにより、当該胴部の下方に向かって直径が小さくなる尾部を形成する尾部形成工程とを含み、前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、回転の軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dを
0.2≦H/D≦0.4に制御する
ことを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
[4] 前記胴部形成工程は、回転数が22rpm以上且つ27rpm以下で行われることを特徴とする前項3に記載のサファイア単結晶の製造方法。
[5] 前記肩部形成工程は、回転の軸方向がc軸方向となるように前記種結晶が前記融液に付着していることを特徴とする前項3または4に記載のサファイア単結晶の製造方法。
[6] 前記胴部形成工程は、酸素を含む雰囲気下において行われることを特徴とする前項3ないし5のいずれか1項に記載のサファイア単結晶の製造方法。
[1] 種結晶から溶融固化法により育成されるサファイア単結晶であって、前記種結晶から直径が徐々に大きくなる肩部と、前記肩部に連なって、予め定められた直径を有する円柱状の胴部と、前記胴部に連なって、直径が徐々に小さくなる尾部とを備え、前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、円柱状の当該胴部の中心軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dが、
0.2≦H/D≦0.4である
ことを特徴とするサファイア単結晶。
[2] 前記サファイア単結晶は、前記肩部から前記尾部に向かう方向がc軸方向であることを特徴とする前項1に記載のサファイア単結晶。
[3] るつぼ中の酸化アルミニウムの融液に付着させた種結晶を回転させながら引き上げることにより、前記種結晶の下方に向かって直径が大きくなる肩部を形成する肩部形成工程と、前記融液に付着させた前記肩部を回転させながら引き上げることにより、当該肩部の下方に円柱状の胴部を形成する胴部形成工程と、前記肩部および当該肩部に連結して形成された前記胴部を、前記融液から引き上げることにより、当該胴部の下方に向かって直径が小さくなる尾部を形成する尾部形成工程とを含み、前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、回転の軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dを
0.2≦H/D≦0.4に制御する
ことを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。
[4] 前記胴部形成工程は、回転数が22rpm以上且つ27rpm以下で行われることを特徴とする前項3に記載のサファイア単結晶の製造方法。
[5] 前記肩部形成工程は、回転の軸方向がc軸方向となるように前記種結晶が前記融液に付着していることを特徴とする前項3または4に記載のサファイア単結晶の製造方法。
[6] 前記胴部形成工程は、酸素を含む雰囲気下において行われることを特徴とする前項3ないし5のいずれか1項に記載のサファイア単結晶の製造方法。
本発明によれば、酸化アルミニウムの融液からサファイア単結晶を成長させる際に、サファイア単結晶の尾部における凸状部の形成をより精密に抑制することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置1の構成の一例を説明するための図である。
この単結晶引き上げ装置1は、サファイアの単結晶からなるサファイアインゴット200を成長させるための加熱炉10を備えている。この加熱炉10は、内部を減圧できるチャンバ14を備えている。そして、加熱炉10は、チャンバ14の内部に、断熱容器11を備えている。ここで、断熱容器11は円柱状の外形を有しており、その内部には円柱状の空間が形成されている。そして、断熱容器11は、例えば、ジルコニア製の断熱材からなる部品を組み立てることで構成されている。また、加熱炉10は、断熱容器11およびチャンバ14の側面に貫通形成され、チャンバ14の外部から内部にガスを供給するガス供給管12と、同じく断熱容器11およびチャンバ14の側面に貫通形成され、断熱容器11の内部から外部にガスを排出するガス排出管13とをさらに備えている。
なお、ここでは、サファイア単結晶をサファイアインゴット200の意味で使用することがある。
図1は本実施の形態が適用される単結晶引き上げ装置1の構成の一例を説明するための図である。
この単結晶引き上げ装置1は、サファイアの単結晶からなるサファイアインゴット200を成長させるための加熱炉10を備えている。この加熱炉10は、内部を減圧できるチャンバ14を備えている。そして、加熱炉10は、チャンバ14の内部に、断熱容器11を備えている。ここで、断熱容器11は円柱状の外形を有しており、その内部には円柱状の空間が形成されている。そして、断熱容器11は、例えば、ジルコニア製の断熱材からなる部品を組み立てることで構成されている。また、加熱炉10は、断熱容器11およびチャンバ14の側面に貫通形成され、チャンバ14の外部から内部にガスを供給するガス供給管12と、同じく断熱容器11およびチャンバ14の側面に貫通形成され、断熱容器11の内部から外部にガスを排出するガス排出管13とをさらに備えている。
なお、ここでは、サファイア単結晶をサファイアインゴット200の意味で使用することがある。
また、断熱容器11の内側下方には、酸化アルミニウムを溶融してなるアルミナ融液300を収容するるつぼ20が、鉛直上方に向かって開口するように配置されている。るつぼ20は、例えば、イリジウムによって構成されており、その底面は円形状となっている。そして、るつぼ20は、例えば、直径が150mm、高さが200mm、厚さが2mmである。
さらに、加熱炉10は、断熱容器11の下部側の側面外側に巻き回された金属製の加熱コイル30を備えている。ここで、加熱コイル30は、断熱容器11を介して、るつぼ20の壁面と対向するように配置されている。そして、加熱コイル30の下側端部はるつぼ20の下端よりも下側に位置し、加熱コイル30の上側端部はるつぼ20の上端よりも上側に位置するようになっている。
さらにまた、加熱炉10は、断熱容器11およびチャンバ14のそれぞれの上面に設けられた貫通孔を介して上方から下方に伸びる引き上げ棒40を備えている。この引き上げ棒40は、例えばステンレス等の金属にて構成されており、鉛直方向への移動および軸を中心とする回転が可能となるように取り付けられている。なお、チャンバ14に設けられた貫通孔と引き上げ棒40との間には、図示しないシール材が設けられている。そして、引き上げ棒40の鉛直下方側の端部には、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210(後述する図2参照)を装着、保持させるための保持部材41が取り付けられている。
また、単結晶引き上げ装置1は、引き上げ棒40を鉛直上方に引き上げるための引き上げ駆動部50および引き上げ棒40を回転させるための回転駆動部60を備えている。ここで、引き上げ駆動部50はモータ等で構成されており、引き上げ棒40の引き上げ速度を調整できるようになっている。また、回転駆動部60もモータ等で構成されており、引き上げ棒40の回転数を調整できるようになっている。そして、引き上げ棒40には、サファイアインゴット200の成長の状況を重量によりモニタするための重量検出部110が設けられている。
さらに、単結晶引き上げ装置1は、ガス供給管12を介してチャンバ14の内部にガスを供給するガス供給部70を備えている。本実施の形態において、ガス供給部70は、O2源71から供給される酸素とN2源72から供給される窒素とを混合した混合ガスを供給するようになっている。そして、ガス供給部70は、酸素と窒素との混合比を可変することで混合ガス中の酸素の濃度の調整が可能となっており、また、チャンバ14の内部に供給する混合ガスの流量の調整も可能となっている。
一方、単結晶引き上げ装置1は、ガス排気管13を介してチャンバ14の内部からガスを排出する排気部80を備えている。排気部80は例えばポンプ等で構成されており、チャンバ14の内部から排出するガスの流量の調整も可能となっている。
これらにより、単結晶引き上げ装置1内の雰囲気が設定される。
これらにより、単結晶引き上げ装置1内の雰囲気が設定される。
さらにまた、単結晶引き上げ装置1は、加熱コイル30に電流を供給するコイル電源90を備えている。コイル電源90は、加熱コイル30への電流の供給の有無および供給する電流量を設定できるようになっている。
そして、単結晶引き上げ装置1は、上述した引き上げ駆動部50、回転駆動部60、ガス供給部70、排気部80およびコイル電源90の動作を制御する制御部100を備えている。
図2は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて製造されるサファイアインゴット200の構成の一例を示している。
このサファイアインゴット200は、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210と、種結晶210の下部に延在しこの種結晶210と一体化した肩部220と、肩部220の下部に延在し肩部220と一体化した胴部である直胴部230と、直胴部230の下部に延在し直胴部230と連結して形成されて一体化した尾部240とを備えている。そして、このサファイアインゴット200においては、上方すなわち種結晶210側から下方すなわち尾部240側に向けてサファイアのc軸方向に結晶が成長している。
なお、胴部である直胴部230は、円柱状に形成されているので、直胴部と呼ばれる。
このサファイアインゴット200は、サファイアインゴット200を成長させるための基となる種結晶210と、種結晶210の下部に延在しこの種結晶210と一体化した肩部220と、肩部220の下部に延在し肩部220と一体化した胴部である直胴部230と、直胴部230の下部に延在し直胴部230と連結して形成されて一体化した尾部240とを備えている。そして、このサファイアインゴット200においては、上方すなわち種結晶210側から下方すなわち尾部240側に向けてサファイアのc軸方向に結晶が成長している。
なお、胴部である直胴部230は、円柱状に形成されているので、直胴部と呼ばれる。
ここで、肩部220は、種結晶210側から直胴部230側に向けて、徐々にその直径が大きくなっていく(拡大していく)形状を有している。また、直胴部230は、上方から下方に向けてその直径Dがほぼ同じとなるような円柱状の形状を有している。なお、直胴部230の直径Dは、所望とするサファイア単結晶のウエハの直径よりもわずかに大きな値に設定される。そして、尾部240は、上方から下方に向けて徐々にその直径が小さくなっていく(縮小していく)ことにより、上方から下方に向けて、尾部240が凸状となる形状を有している。ここで、直胴部230から尾部240へ直径の変化が生じた部分(直胴部230と尾部240との境界)から、尾部240の先端まで、直胴部230の軸(円柱としたときの中心軸)方向すなわち結晶成長方向に計測された尾部240の長さを尾部240の長さHとする。なお、直胴部230の軸は、後述する直胴部形成工程における直胴部230の回転の軸にあたる。
図3は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて、図2に示すサファイアインゴット200を製造する手順の一例を説明するためのフローチャートである。
サファイアインゴット200の製造にあたっては、まず、加熱炉10内のるつぼ20内に充填された固体の酸化アルミニウムを加熱によって溶融する溶融工程を実行する(ステップ101)。
次に、酸化アルミニウムの融液すなわちアルミナ融液300に種結晶210の下端部を接触(付着)させる種付け工程を実行する(ステップ102)。
そして、種結晶210の下端部をアルミナ融液300に接触させた状態で、種結晶210を回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶210の下方に肩部220を形成する肩部形成工程を実行する(ステップ103)。
引き続いて、アルミナ融液300に肩部210の下端部を接触させた状態で、種結晶210を介して肩部220を回転させながら上方に引き上げることにより、肩部220の下方に直胴部230を形成する直胴部形成工程を実行する(ステップ104)。
さらに引き続いて、アルミナ融液300に直胴部230の下端部を接触させた状態で、種結晶210および肩部220を介して直胴部230を回転させながら上方に引き上げてアルミナ融液300から引き離すことにより、直胴部230の下方に尾部240を形成する尾部形成工程を実行する(ステップ105)。
その後、得られたサファイアインゴット200が冷却された後に加熱炉10の外部に取り出され、一連の製造工程を完了する。
サファイアインゴット200の製造にあたっては、まず、加熱炉10内のるつぼ20内に充填された固体の酸化アルミニウムを加熱によって溶融する溶融工程を実行する(ステップ101)。
次に、酸化アルミニウムの融液すなわちアルミナ融液300に種結晶210の下端部を接触(付着)させる種付け工程を実行する(ステップ102)。
そして、種結晶210の下端部をアルミナ融液300に接触させた状態で、種結晶210を回転させながら上方に引き上げることにより、種結晶210の下方に肩部220を形成する肩部形成工程を実行する(ステップ103)。
引き続いて、アルミナ融液300に肩部210の下端部を接触させた状態で、種結晶210を介して肩部220を回転させながら上方に引き上げることにより、肩部220の下方に直胴部230を形成する直胴部形成工程を実行する(ステップ104)。
さらに引き続いて、アルミナ融液300に直胴部230の下端部を接触させた状態で、種結晶210および肩部220を介して直胴部230を回転させながら上方に引き上げてアルミナ融液300から引き離すことにより、直胴部230の下方に尾部240を形成する尾部形成工程を実行する(ステップ105)。
その後、得られたサファイアインゴット200が冷却された後に加熱炉10の外部に取り出され、一連の製造工程を完了する。
なお、このようにして得られたサファイアインゴット200は、まず、肩部220と直胴部230との境界および直胴部230と尾部240との境界においてそれぞれ切断され、直胴部230が切り出される。次に、切り出された直胴部230は、さらに、結晶の成長方向に直交する方向に切断され、サファイア単結晶のウエハとなる。このとき、本実施の形態のサファイアインゴット200はc軸方向に結晶成長していることから、得られるウエハの主面はc面((0001)面)となる。そして、得られたウエハは、青色LEDや偏光子の製造等に用いられる。
では、上述した各工程について具体的に説明を行う。ただし、ここでは、ステップ101の溶融工程の前に実行される準備工程から順を追って説明を行う。
(準備工程)
準備工程では、まず、引き上げ棒40の保持部材41に種結晶210を取り付け、所定の位置にセットする。このとき、種結晶210としては、C軸(<0001>方位)のサファイア種結晶を使用する。次に、るつぼ20内に酸化アルミニウムの原材料を充填し、例えば、ジルコニア製の断熱材からなる部品を用いて断熱容器11を組み立てる。
そして、ガス供給部70からのガス供給を行わない状態で、排気部80を用いてチャンバ14内を減圧する。その後、ガス供給部70がN2源72を用いてチャンバ14内に窒素を供給し、チャンバ14の内部を常圧にする。したがって、準備工程が完了した状態において、チャンバ14の内部は、窒素濃度が非常に高く、且つ、酸素濃度が非常に低い状態に設定される。
準備工程では、まず、引き上げ棒40の保持部材41に種結晶210を取り付け、所定の位置にセットする。このとき、種結晶210としては、C軸(<0001>方位)のサファイア種結晶を使用する。次に、るつぼ20内に酸化アルミニウムの原材料を充填し、例えば、ジルコニア製の断熱材からなる部品を用いて断熱容器11を組み立てる。
そして、ガス供給部70からのガス供給を行わない状態で、排気部80を用いてチャンバ14内を減圧する。その後、ガス供給部70がN2源72を用いてチャンバ14内に窒素を供給し、チャンバ14の内部を常圧にする。したがって、準備工程が完了した状態において、チャンバ14の内部は、窒素濃度が非常に高く、且つ、酸素濃度が非常に低い状態に設定される。
(溶融工程)
溶融工程では、ガス供給部70が、引き続きN2源72を用いて断熱容器11内に窒素の供給を行う。
また、コイル電源90が加熱コイル30に高周波の交流電流(以下の説明では高周波電流と呼ぶ)を供給する。コイル電源90から加熱コイル30に高周波電流が供給されると、加熱コイル30の周囲において磁束が生成・消滅を繰り返す。そして、加熱コイル30で生じた磁束が、断熱容器11を介してるつぼ20を横切ると、るつぼ20の壁面にはその磁界の変化をさまたげるような磁界が発生し、それによってるつぼ20内に渦電流が発生する。そして、るつぼ20は、渦電流(I)によってるつぼ20の表皮抵抗(R)に比例したジュール熱(W=I2R)が発生し、るつぼ20が加熱されることになる。るつぼ20が加熱され、それに伴ってるつぼ20内に収容される酸化アルミニウムがその融点(2054℃)を超えて加熱されると、るつぼ20内において酸化アルミニウムが溶融し、アルミナ融液300となる。
溶融工程では、ガス供給部70が、引き続きN2源72を用いて断熱容器11内に窒素の供給を行う。
また、コイル電源90が加熱コイル30に高周波の交流電流(以下の説明では高周波電流と呼ぶ)を供給する。コイル電源90から加熱コイル30に高周波電流が供給されると、加熱コイル30の周囲において磁束が生成・消滅を繰り返す。そして、加熱コイル30で生じた磁束が、断熱容器11を介してるつぼ20を横切ると、るつぼ20の壁面にはその磁界の変化をさまたげるような磁界が発生し、それによってるつぼ20内に渦電流が発生する。そして、るつぼ20は、渦電流(I)によってるつぼ20の表皮抵抗(R)に比例したジュール熱(W=I2R)が発生し、るつぼ20が加熱されることになる。るつぼ20が加熱され、それに伴ってるつぼ20内に収容される酸化アルミニウムがその融点(2054℃)を超えて加熱されると、るつぼ20内において酸化アルミニウムが溶融し、アルミナ融液300となる。
(種付け工程)
種付け工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスをチャンバ14内に供給する。ただし、種付け工程においては、必ずしも酸素と窒素との混合ガスを供給する必要はなく、例えば窒素のみを供給するようにしても差し支えない。
さらに、引き上げ駆動部50は、保持部材41に取り付けられた種結晶210の下端がるつぼ20内のアルミナ融液300と接触する位置まで引き上げ棒40を下降させて停止させる。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
種付け工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスをチャンバ14内に供給する。ただし、種付け工程においては、必ずしも酸素と窒素との混合ガスを供給する必要はなく、例えば窒素のみを供給するようにしても差し支えない。
さらに、引き上げ駆動部50は、保持部材41に取り付けられた種結晶210の下端がるつぼ20内のアルミナ融液300と接触する位置まで引き上げ棒40を下降させて停止させる。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
(肩部形成工程)
肩部形成工程では、回転駆動部60は、種結晶210を、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で第1の回転数で回転させる。引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第1の引き上げ速度にて引き上げる。そして、種結晶210の下端には、鉛直下方に向かって拡開する肩部220が形成されていく。
なお、所謂4インチ(直径100mm)のウエハを得るためのサファイアインゴット200を製造する場合、肩部220の直径がほぼ120mm程度になった時点で、肩部形成工程を完了する。
肩部形成工程では、回転駆動部60は、種結晶210を、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で第1の回転数で回転させる。引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第1の引き上げ速度にて引き上げる。そして、種結晶210の下端には、鉛直下方に向かって拡開する肩部220が形成されていく。
なお、所謂4インチ(直径100mm)のウエハを得るためのサファイアインゴット200を製造する場合、肩部220の直径がほぼ120mm程度になった時点で、肩部形成工程を完了する。
(直胴部形成工程)
直胴部形成工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスを断熱容器11内に供給する。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第2の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第2の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第2の回転数で回転させる。ここで、第2の回転数は、肩部形成工程における第1の回転数と同じであってもよいし、異なってもよい。
直胴部形成工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスを断熱容器11内に供給する。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第2の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第2の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第2の回転数で回転させる。ここで、第2の回転数は、肩部形成工程における第1の回転数と同じであってもよいし、異なってもよい。
種結晶210と一体化した肩部220は、その下端部がアルミナ融液300に浸った状態で回転されつつ引き上げられることになるため、肩部220の下端部には、好ましくは円柱状の直胴部230が形成されていく。直胴部230は、所定の口径以上の円柱状であればよい。
なお、直胴部形成工程において、鉛直上方に引き上げられる直胴部230の下端は、アルミナ融液300と接触した状態を維持している。
なお、直胴部形成工程において、鉛直上方に引き上げられる直胴部230の下端は、アルミナ融液300と接触した状態を維持している。
(尾部形成工程)
尾部形成工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスを断熱容器11内に供給する。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第3の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第3の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度あるいは直胴部形成工程における第2の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、これらとは異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第3の回転数で回転させる。ここで、第3の回転数は、肩部形成工程における第1の回転数あるいは直胴部形成工程における第2の回転数と同じであってもよいし、これらとは異なってもよい。
なお、尾部形成工程の序盤において、尾部240の下端は、アルミナ融液300と接触した状態を維持する。
そして、所定の時間が経過した尾部形成工程の終盤において、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40の引き上げ速度を増速させて引き上げ棒40をさらに上方に引き上げさせることにより、尾部240の下端をアルミナ融液300から引き離す。これにより、図2に示すサファイアインゴット200が得られる。
尾部形成工程では、ガス供給部70がO2源71およびN2源72を用いて、例えば窒素98.5体積%および酸素1.5体積%の割合で混合させた混合ガスを断熱容器11内に供給する。
また、コイル電源90は、引き続き加熱コイル30に高周波電流の供給を行い、るつぼ20を介してアルミナ融液300を加熱する。
さらに、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40を第3の引き上げ速度にて引き上げる。ここで第3の引き上げ速度は、肩部形成工程における第1の引き上げ速度あるいは直胴部形成工程における第2の引き上げ速度と同じ速度であってもよいし、これらとは異なる速度であってもよい。
さらにまた、回転駆動部60は、引き上げ棒40を第3の回転数で回転させる。ここで、第3の回転数は、肩部形成工程における第1の回転数あるいは直胴部形成工程における第2の回転数と同じであってもよいし、これらとは異なってもよい。
なお、尾部形成工程の序盤において、尾部240の下端は、アルミナ融液300と接触した状態を維持する。
そして、所定の時間が経過した尾部形成工程の終盤において、引き上げ駆動部50は、引き上げ棒40の引き上げ速度を増速させて引き上げ棒40をさらに上方に引き上げさせることにより、尾部240の下端をアルミナ融液300から引き離す。これにより、図2に示すサファイアインゴット200が得られる。
なお、本実施の形態では、酸素と窒素とを混合した混合ガスを用いていたが、これに限られるものではなく、例えば酸素と不活性ガスの一例としてのアルゴンとを混合したものを用いてもかまわない。
また、本実施の形態では、所謂電磁誘導加熱方式を用いてるつぼ20の加熱を行っていたが、これに限られるものではなく、例えば抵抗加熱方式を採用するようにしても差し支えない。
また、本実施の形態では、所謂電磁誘導加熱方式を用いてるつぼ20の加熱を行っていたが、これに限られるものではなく、例えば抵抗加熱方式を採用するようにしても差し支えない。
では次に、本発明の実施例について説明を行うが、本発明は実施例に限定されない。
本発明者は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて、直径100mmφのサファイアウエハを得るため、直径が120mmのサファイア単結晶を成長させた。そこでは、成長工程における各種製造条件、特に直胴部形成工程における回転数(第2の回転数に対応)を異ならせた状態でサファイアインゴット200の製造を行った。そして、得られたサファイアインゴット200における尾部240の長さH(尾部長さH)、直胴部230に含まれる気泡やるつぼ20から遊離した貴金属などのインクルージョンの状態、および直胴部230に見られる歪の状態について検討を行った。
本発明者は、図1に示す単結晶引き上げ装置1を用いて、直径100mmφのサファイアウエハを得るため、直径が120mmのサファイア単結晶を成長させた。そこでは、成長工程における各種製造条件、特に直胴部形成工程における回転数(第2の回転数に対応)を異ならせた状態でサファイアインゴット200の製造を行った。そして、得られたサファイアインゴット200における尾部240の長さH(尾部長さH)、直胴部230に含まれる気泡やるつぼ20から遊離した貴金属などのインクルージョンの状態、および直胴部230に見られる歪の状態について検討を行った。
図4は、実施例1〜3および比較例1〜3における各種製造条件と、各々の評価結果との関係を示している。なお、図4では、尾部240の長さHと直胴部230の直径Dとの比H/Dの順に左から右へと並べたため、実施例1〜3は、比較例1と比較例2との間に記載されている。
なお、尾部240の長さHは、直胴部230から尾部240へと直径の変化が生じた部分(直胴部230と尾部240との境界)から、尾部240の先端までを、サファイアインゴット200の形成(育成)時の鉛直方向、すなわち結晶成長の方向に計測した距離である。
なお、尾部240の長さHは、直胴部230から尾部240へと直径の変化が生じた部分(直胴部230と尾部240との境界)から、尾部240の先端までを、サファイアインゴット200の形成(育成)時の鉛直方向、すなわち結晶成長の方向に計測した距離である。
ここで、図4には、製造条件として、肩部形成工程における引き上げ棒40の回転数(第1の回転数に対応)、引き上げ棒40の引き上げ速度(第1の引き上げ速度に対応)と、直胴部形成工程における引き上げ棒40の回転数(第2の回転数に対応)、引き上げ棒40の引き上げ速度(第2の引き上げ速度に対応)と、尾部形成工程における引き上げ棒40の回転数(第3の回転数に対応)、引き上げ棒40の引き上げ速度(第3の引き上げ速度に対応)とを記載している。
さらに、図4には、評価項目として、直胴部230におけるインクルージョンの状態をA〜Cの3ランクで示している。インクルージョンの状態における評価「A」は「良」、評価「B」は「やや良」、評価「C」は「不良」を意味している。そして、直胴部230における歪の状態をA〜Dの4ランクで示している。歪の状態における評価「A」は「良」、評価「B」は「やや良」、評価「C」は「やや不良」、評価「D」は「不良」を意味している。
インクルージョンについては、直胴部230を目視によって評価した。そして、評価「A」は『インクルージョンがほとんど見られない(透明)』、評価「B」は『インクルージョンが局部的に存在する』、評価「C」は『全域でインクルージョンが見られる』を、それぞれ意味している。
歪については、直胴部230の終わりの部分(尾部240に近い部分)から、切り出したサファイアウエハを偏光観察して評価した。評価「A」は『歪がほとんど見られない』、評価「B」は『歪が局所的に存在する』、評価「C」は『全域で歪が見られる』、評価Dは『傾角粒界が見られる』を、それぞれ意味している。なお、傾角粒界とは、結晶歪が大きくなると導入される欠陥であって、傾き角度の大きさによって、小傾角粒界、大傾角粒界などと区別される。そして、程度によっては、単結晶というよりも多結晶に近い状態となる。
歪については、直胴部230の終わりの部分(尾部240に近い部分)から、切り出したサファイアウエハを偏光観察して評価した。評価「A」は『歪がほとんど見られない』、評価「B」は『歪が局所的に存在する』、評価「C」は『全域で歪が見られる』、評価Dは『傾角粒界が見られる』を、それぞれ意味している。なお、傾角粒界とは、結晶歪が大きくなると導入される欠陥であって、傾き角度の大きさによって、小傾角粒界、大傾角粒界などと区別される。そして、程度によっては、単結晶というよりも多結晶に近い状態となる。
図4に示すように、肩部形成工程における回転数、引き上げ速度は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3を通して、それぞれ30rpm、2mm/hで同じである。
直胴部形成工程における回転数は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3の順に30rpmから12rpmへと減少させている。しかし、直胴部形成工程における引き上げ速度は3mm/hで同じである。
尾部形成工程における回転数は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3のいずれもが、それぞれの直胴部形成工程の回転数と同じである。しかし、尾部形成工程における引き上げ速度は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3のいずれも50mm/hで同じである。
すなわち、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3における違いは、直胴部形成工程および尾部形成工程での回転数が異なることにある。
直胴部形成工程における回転数は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3の順に30rpmから12rpmへと減少させている。しかし、直胴部形成工程における引き上げ速度は3mm/hで同じである。
尾部形成工程における回転数は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3のいずれもが、それぞれの直胴部形成工程の回転数と同じである。しかし、尾部形成工程における引き上げ速度は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3のいずれも50mm/hで同じである。
すなわち、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3における違いは、直胴部形成工程および尾部形成工程での回転数が異なることにある。
図4において、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3を通して見ると、直胴部形成工程における回転数(第2の回転数に対応)が大きいほど、尾部240の長さHが短く、回転数が小さいほど、尾部240の長さHが長くなることが分かる。
すなわち、尾部240の長さH(比H/D)は、直胴部形成工程における回転数(第2の回転数に対応)を変えることで制御できることが理解できる。
すなわち、尾部240の長さH(比H/D)は、直胴部形成工程における回転数(第2の回転数に対応)を変えることで制御できることが理解できる。
これは、尾部240が尾部形成工程で形成されるのではなく、直胴部形成工程において、既に尾部240となる部分が形成されているためである。つまり、直胴部形成工程において、アルミナ融液300とサファイアインゴット200との固液界面の形状は下に凸の円錐状、すなわち尾部240と同様の形状となっていると考えられる。そしてこの形状は、直胴部230の回転数によって制御できる。
これはアルミナ融液300の加熱により生じる自然対流に、直胴部230の回転によって生じる強制対流が加わることで、アルミナ融液300の対流が変化したためと考えられる。るつぼ20の壁面により加熱されたアルミナ融液300は、るつぼ20の壁面に沿って上昇し、アルミナ融液300の表面をるつぼ20の壁面から中心に向かって流れ、表面で冷やされたアルミナ融液300はるつぼ20の中心部を下降する。このようにして自然対流が発生し、るつぼ20の中心部の温度が低い状態が形成される。このため、尾部240の長いサファイアインゴット200が得られる。
一方、直胴部230の回転によって、直胴部230の周辺からるつぼ20の壁面へ向かう強制対流が発生する。つまり、強制対流の方向は自然対流とは逆になり、るつぼ20の壁面で加熱されたアルミナ融液300がるつぼ20の中心に集められる。このため、強制対流の強い状態では、るつぼ20の中心部の温度が高い状態が形成され、尾部240の短いサファイアインゴット200が得られる。
これはアルミナ融液300の加熱により生じる自然対流に、直胴部230の回転によって生じる強制対流が加わることで、アルミナ融液300の対流が変化したためと考えられる。るつぼ20の壁面により加熱されたアルミナ融液300は、るつぼ20の壁面に沿って上昇し、アルミナ融液300の表面をるつぼ20の壁面から中心に向かって流れ、表面で冷やされたアルミナ融液300はるつぼ20の中心部を下降する。このようにして自然対流が発生し、るつぼ20の中心部の温度が低い状態が形成される。このため、尾部240の長いサファイアインゴット200が得られる。
一方、直胴部230の回転によって、直胴部230の周辺からるつぼ20の壁面へ向かう強制対流が発生する。つまり、強制対流の方向は自然対流とは逆になり、るつぼ20の壁面で加熱されたアルミナ融液300がるつぼ20の中心に集められる。このため、強制対流の強い状態では、るつぼ20の中心部の温度が高い状態が形成され、尾部240の短いサファイアインゴット200が得られる。
そして、尾部形成工程では、急激な冷却による破損を防止しながら、下に凸の円錐状をした尾部240をアルミナ融液300から取り出すことになる。
したがって、尾部240の形状は、直胴部形成工程における回転数によって決められることになると考えられる。
したがって、尾部240の形状は、直胴部形成工程における回転数によって決められることになると考えられる。
次に、図4におけるインクルージョンおよび歪について評価結果を説明する。
実施例1〜3は、比H/Dが0.2、0.3、0.4の場合であるが、インクルージョンがほとんど見られず透明な評価「A」、またはインクルージョンが局部的に存在する評価「B」であった。
一方、実施例1〜3における歪は、ほとんど見られない評価「A」または歪が局所的に存在する評価「B」であった。
そして、実施例2の比H/Dが0.3の場合では、インクルージョンおよび歪とも評価「A」であった。
実施例1〜3は、比H/Dが0.2、0.3、0.4の場合であるが、インクルージョンがほとんど見られず透明な評価「A」、またはインクルージョンが局部的に存在する評価「B」であった。
一方、実施例1〜3における歪は、ほとんど見られない評価「A」または歪が局所的に存在する評価「B」であった。
そして、実施例2の比H/Dが0.3の場合では、インクルージョンおよび歪とも評価「A」であった。
さて、比H/Dが0.1である比較例1では、インクルージョンは評価「C」で、全域でインクルージョンが見られた。他方、比H/Dが0.6である比較例2ではインクルージョンは評価「B」で「やや良」であるが、比H/Dが1.0である比較例3ではインクルージョンは評価「C」となった。
すなわち、実施例1〜3の比H/Dが0.2〜0.4の範囲を挟んで、比H/Dが小さくともまた大きくとも、インクルージョンの評価が悪くなっている。
すなわち、実施例1〜3の比H/Dが0.2〜0.4の範囲を挟んで、比H/Dが小さくともまた大きくとも、インクルージョンの評価が悪くなっている。
一方、比H/Dが0.1である比較例1では、歪は評価「A」で歪がほとんど見られなかった。他方、比H/Dが0.6である比較例2では歪は評価「C」で、全域で歪が見られた。比H/Dが1.0である比較例3では歪は評価「D」で、傾角粒界が見られた。
すなわち、歪は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3を通して見ると、比H/Dが大きいほど悪くなる傾向にあることが分かる。
比H/Dが大きいとは、尾部240が長いことである。直胴部形成工程において、アルミナ融液300とサファイアインゴット200との固液界面形状の凸部も大きく(長く)、この凸部が直胴部230を歪ませるためと考えられる。
すなわち、歪は、比較例1、実施例1〜3、比較例2、3を通して見ると、比H/Dが大きいほど悪くなる傾向にあることが分かる。
比H/Dが大きいとは、尾部240が長いことである。直胴部形成工程において、アルミナ融液300とサファイアインゴット200との固液界面形状の凸部も大きく(長く)、この凸部が直胴部230を歪ませるためと考えられる。
以上説明したように、サファイアインゴット200の尾部240の長さHと直胴部230の直径Dとの比H/Dを0.2〜0.4に制御することにより、直胴部230におけるインクルージョンが少なく、歪が小さいサファイアインゴット200を製造することができることが理解できる。この結果、サファイアインゴット200の有効長が長くなり歩留まりを向上できる。
また、サファイアインゴット200の尾部240の長さHと直胴部230の直径Dとの比H/Dを0.2〜0.4に制御するには、直胴部形成工程の回転数を22rpm〜27rpmとするのが好ましい。
上述の実施例では、直径100mmφのサファイアウエハを得るため、直径が120mmのサファイア単結晶(インゴット)を成長させた例を示したが、本発明のサファイア単結晶の製造方法をさらに6インチや8インチサイズ等の大きな直胴部を有するインゴットの成長に適用することにより、インクルージョンがほとんど見られない、また直胴部230の終わりの部分(尾部240に近い部分)から切り出したサファイアウエハの歪がほとんど見られないサファイア単結晶(インゴット)を生産性よく製造することができる。
また、サファイアインゴット200の尾部240の長さHと直胴部230の直径Dとの比H/Dを0.2〜0.4に制御するには、直胴部形成工程の回転数を22rpm〜27rpmとするのが好ましい。
上述の実施例では、直径100mmφのサファイアウエハを得るため、直径が120mmのサファイア単結晶(インゴット)を成長させた例を示したが、本発明のサファイア単結晶の製造方法をさらに6インチや8インチサイズ等の大きな直胴部を有するインゴットの成長に適用することにより、インクルージョンがほとんど見られない、また直胴部230の終わりの部分(尾部240に近い部分)から切り出したサファイアウエハの歪がほとんど見られないサファイア単結晶(インゴット)を生産性よく製造することができる。
1…単結晶引き上げ装置、10…加熱炉、11…断熱容器、12…ガス供給管、13…ガス排出管、14…チャンバ、20…るつぼ、30…加熱コイル、40…引き上げ棒、41…保持部材、50…引き上げ駆動部、60…回転駆動部、70…ガス供給部、71…O2源、72…N2源、80…排気部、90…コイル電源、100…制御部、200…サファイアインゴット、210…種結晶、220…肩部、230…直胴部、240…尾部、300…アルミナ融液
Claims (6)
- 種結晶から溶融固化法により育成されるサファイア単結晶であって、
前記種結晶から直径が徐々に大きくなる肩部と、
前記肩部に連なって、予め定められた直径を有する円柱状の胴部と、
前記胴部に連なって、直径が徐々に小さくなる尾部と
を備え、
前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、円柱状の当該胴部の中心軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dが、
0.2≦H/D≦0.4である
ことを特徴とするサファイア単結晶。 - 前記サファイア単結晶は、前記肩部から前記尾部に向かう方向がc軸方向であることを特徴とする請求項1に記載のサファイア単結晶。
- るつぼ中の酸化アルミニウムの融液に付着させた種結晶を回転させながら引き上げることにより、前記種結晶の下方に向かって直径が大きくなる肩部を形成する肩部形成工程と、
前記融液に付着させた前記肩部を回転させながら引き上げることにより、当該肩部の下方に円柱状の胴部を形成する胴部形成工程と、
前記肩部および当該肩部に連結して形成された前記胴部を、前記融液から引き上げることにより、当該胴部の下方に向かって直径が小さくなる尾部を形成する尾部形成工程と
を含み、
前記胴部の直径Dと、当該胴部から前記尾部へと直径の変化が生じた部分から当該尾部の先端まで、回転の軸方向に計測された、当該尾部の長さHとの比H/Dを
0.2≦H/D≦0.4に制御する
ことを特徴とするサファイア単結晶の製造方法。 - 前記胴部形成工程は、回転数が22rpm以上且つ27rpm以下で行われることを特徴とする請求項3に記載のサファイア単結晶の製造方法。
- 前記肩部形成工程は、回転の軸方向がc軸方向となるように前記種結晶が前記融液に付着していることを特徴とする請求項3または4に記載のサファイア単結晶の製造方法。
- 前記胴部形成工程は、酸素を含む雰囲気下において行われることを特徴とする請求項3ないし5のいずれか1項に記載のサファイア単結晶の製造方法。
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JP2013209257A (ja) * | 2012-03-30 | 2013-10-10 | Sumco Corp | サファイア単結晶及びその製造方法 |
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2009
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