JP2012240625A - 車両用シート - Google Patents

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Abstract

【課題】シートカバーを着脱するための線ファスナのスライダや金具が覆われた状態とすることができる車両用シートの提供。
【解決手段】第一ベースカバー10には、スライダ113が取り付けられた第一エレメント11が設けられるとともに、第二ベースカバー20には標準状態において第一エレメント11に係合される第二エレメント21が設けられ、シートカバー30には、着替状態において第一エレメント11に係合される第三エレメント31が設けられ、第一ベースカバー10には、第一下止金具111およびそれに係合される第二下止金具または第三下止金具311を覆う始端側被覆部12と、第一上止金具およびそれに係合される第二上止金具または第三上止金具に接触するまで移動したスライダ113を覆う終端側被覆部とが設けられており、被覆部は、第二エレメント21または第三エレメント31側が開口している。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両用シートに関し、さらに詳しくは、着脱自在のシートカバーにより、シート外観が変更可能である車両用シートに関する。
特許文献1に記載されるように、シートパッドの一部を覆うシートカバー(着せ替えカバー)が線ファスナ(スライドファスナ等とも称される)によってベースカバーに対して着脱可能に設けられた構成が知られている。かかる構成によれば、任意に選択した別のデザインのシートカバーに取り替えることで、シート外観を容易に変更することができる。
特許文献1に記載される車両用シートでは、シートパッドがベースカバーのみに覆われた状態(ベースカバーのデザインがシート外観となる状態;標準状態)もデザインの一態様として選択可能である。シートクッション(シートの着座部)においてベースカバーの下側を構成する下ベースカバーには線ファスナの第一エレメント(スライダ付)が設けられ、上側を構成する上ベースカバーには第一エレメントに係合可能な第二エレメントが設けられている。シートパッドがベースカバーのみに覆われている標準状態を選択する場合、この第一エレメントと第二エレメントを係合させる(特許文献1の図7参照)。
一方、シートカバーには、上記第一エレメントに係合可能な第三エレメントが設けられている。シートクッションの上側がシートカバーによって覆われた状態(着替状態)を選択する場合、第一エレメントと第三エレメントを係合させる。つまり、下ベースカバーとシートカバーとが接続される。上ベースカバーおよびそれに設けられた第二エレメントは、カバーの内側に隠されたような状態となる(特許文献1の図8参照)。
特開2009−153560号公報
図8に示すように、従来の構成では、下ベースカバー91には被覆部94が設けられている。被覆部94は、線ファスナのエレメントの終端側に設けられており、エレメントの延びる側に向かって(すなわちエレメントの始端側に向かって)開口し、その他の側縁は縫合されている(開口していない)。
シートパッドがベースカバー(下ベースカバー91および上ベースカバー92)のみに覆われた標準状態を選択する場合、図8(a)に示すように、第一エレメント911と第二エレメント921を係合させつつ、スライダ95を終端側に移動させる。そして、図8(b)に示すように、上止金具97(エレメントの終端に位置する金具)に接触するまで移動したスライダ95は被覆部94に覆われる。
一方、シートカバー93を用いる着替状態を選択する場合、図9(a)に示すように、第一エレメント911に第三エレメント931を係合させることとなるが、第三エレメント931の上止金具97を被覆部94の内側に挿入することができないため、終端位置まで移動したスライダ95を被覆部94の内側に挿入することができない。つまり、図9(b)に示すように、スライダ95を第一エレメント911の上止金具97に接触するまで移動させることができず、スライダ95が露出した状態となってしまう。
耐久性などを考慮して金属製のものがほとんどであるスライダ95は、このように露出した状態にあると高温になるおそれがある。また、衣服等が線ファスナに引っ掛かってしまうおそれもあるし、衣服等の引っ掛かりによって線ファスナが破損したりするおそれもある。さらに、従来の構成では、図10に示すように下止金具96(エレメントの始端位置に位置する金具)も露出しているため、この露出した下止金具96によって同様の問題が発生するおそれがある。
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、線ファスナによってシートカバーが着脱可能である車両用シートであって、当該線ファスナのスライダや金具が常に覆われた状態とすることができる車両用シートを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明にかかる車両用シートは、第一ベースカバーおよび第二ベースカバーを有するベースカバーと、このベースカバーに線ファスナを介して着脱可能なシートカバーと、を備え、シートパッドが前記ベースカバーに覆われている前記シートカバーが用いられていない標準状態と、シートパッドが前記ベースカバーおよび前記シートカバーに覆われている着替状態と、が切替可能である車両用シートであって、前記第一ベースカバーには、線ファスナのスライダが取り付けられた第一エレメントが設けられるとともに、前記第二ベースカバーには、前記標準状態においてこの第一エレメントに係合される第二エレメントが設けられ、前記シートカバーには、前記着替状態において前記第一エレメントに係合される第三エレメントが設けられ、前記第一ベースカバーには、前記第一エレメントの下止金具およびそれに係合される前記第二エレメントまたは前記第三エレメントの下止金具を覆う始端側被覆部と、前記第一エレメントの上止金具およびそれに係合される前記第二エレメントまたは前記第三エレメントの上止金具に接触するまで移動した前記スライダを覆う終端側被覆部と、が設けられており、これら被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側が開口していることを要旨とする。
本発明にかかる車両用シートの第一ベースカバーに設けられる被覆部は、第二エレメントまたは第三エレメント側が開口している。そのため、第一エレメントに第三エレメントが係合される場合(すなわち着替状態)においても、線ファスナの下止金具を始端側被覆部によって覆うことができるし、スライダを終端側被覆部によって覆うことができる。なお、当然、第一エレメントに第二エレメントが係合されている状態(標準状態)においても、これら被覆部によって下止金具およびスライダを覆うことができる。このように、標準状態および着替状態のいずれの状態であっても、下止金具や終端位置にあるスライダ(上止金具を含む)が被覆部に覆われるから、これら線ファスナの金具が露出することによる問題の発生を防止することができる。
また、上記構成において、前記始端側被覆部および前記終端側被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側の反対の側縁、および、その側縁に略直交する線ファスナのエレメントが延びる側の反対の側縁が前記第一ベースカバーに縫合され、残りの一側縁が開口した略三角形状であるとよい。
上記構成を適用すれば、始端側被覆部および終端側被覆部は、第二エレメントまたは第三エレメント側およびエレメントが延びる方向に向かって斜めに開口した構成となるから、第二エレメントまたは第三エレメントを第一エレメントに係合させる作業が容易である。つまり、第二エレメントまたは第三エレメントの下止金具を始端側被覆部の内側に挿入した状態でスライダを終端側に向けて移動させる作業が容易になるし、第二エレメントまたは第三エレメントの上止金具を終端側被覆部の内側に挿入した状態でスライダを終端側被覆部の内側に押し込む作業が容易となる。
また、上記構成において、前記始端側被覆部および前記終端側被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側の反対の側縁、および、その側縁に略直交する線ファスナのエレメントが延びる側の反対の側縁が前記第一ベースカバーに縫合され、その縫合された部分の側縁の端部同士を結んだ仮想線よりも外側に突出した突出部を有し、その突出部の側縁が開口していればよい。
始端側被覆部および終端側被覆部を上記のような構成とすれば、突出部の側縁が開口しているから、始端側被覆部および終端側被覆部を上記略三角形状とした場合に得られる効果と同様の効果が得られる。加えて、始端側被覆部および終端側被覆部が突出部を有している分、被覆部による被覆面積が大きくなるから、線ファスナの下止金具や終端位置にあるスライダの露出を確実に防止することができる。また、終端側被覆部の突出部は、スライダを終端側被覆部の内側に押し込む際にガイドとなるため、このスライダを押し込む作業が容易になる。
本発明によれば、下止金具や終端位置にあるスライダ(上止金具を含む)が被覆部に覆われるから、乗員の衣服の引っ掛かりやそれによる線ファスナの損傷など、これら線ファスナの金具が露出していることを原因とする事象の発生を防止することができる。
本発明の一実施形態にかかる車両用シートの外観図であって、図1(a)は第一エレメントに第二エレメントおよび第三エレメントのいずれもが係合されていない状態を示し、図1(b)は第一エレメントに第二エレメントが係合された標準状態を示し、図1(c)は第一エレメントに第三エレメントが係合された着替状態を示す。 第一実施形態にかかる車両用シートにおいて標準状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの基端および終端を拡大して示した図であって、図2(a)は線ファスナのスライダが始端から終端側に向けて所定距離移動した状態、図2(b)は線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示した図である。 第一実施形態にかかる車両用シートにおいて着替状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの基端を拡大して示した図であって、図3(a)は線ファスナのスライダが始端に位置している状態、図3(b)は線ファスナのスライダが始端から終端側に向けて所定距離移動した状態を示す。 第一実施形態にかかる車両用シートにおいて着替状態を選択した際の線ファスナの終端を拡大して示した(線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示した)図である。 第二実施形態にかかる車両用シートにおいて標準状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの基端および終端を拡大して示した図であって、図5(a)は線ファスナのスライダが始端から終端側に向けて所定距離移動した状態、図5(b)は線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示した図である。 第二実施形態にかかる車両用シートにおいて着替状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの基端を拡大して示した図であって、図6(a)は線ファスナのスライダが始端に位置している状態、図6(b)は線ファスナのスライダが始端から終端側に向けて所定距離移動した状態を示す。 第二実施形態にかかる車両用シートにおいて着替状態を選択した際の線ファスナの終端を拡大して示した(線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示した)図である。 従来構造の車両用シートにおいて標準状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの終端を拡大して示した図であって、図8(a)はスライダが終端から所定距離手前側に位置する状態、図8(b)は線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示す。 従来構造の車両用シートにおいて着替状態を選択した際(選択しようとする際)の線ファスナの終端を拡大して示した図であって、図8(a)はスライダが終端から所定距離手前側に位置する状態、図8(b)は線ファスナのスライダが終端に位置している状態を示す。 従来構造の車両用シートにおける線ファスナの始端を拡大して示した図である。
以下、本発明の一実施形態にかかる車両用シートについて図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の説明において、単に上下(高低)方向とは、車両用シートの上下方向(図2〜図7における上下方向)をいう。
第一実施形態にかかる車両用シート1について説明する。本実施形態にかかる車両用シート1は、ベースカバー5と、このベースカバー5に対して着脱可能であるシートカバー30とを備える。なお、以下の説明では、車両用シート1のシートクッション(乗員の着座部)を用いてこれら各部材の詳細について説明する。ただし、以下で説明する構成は、シートバック(乗員の背もたれ部)など、車両用シート1の外観を決定するその他の部分に適用することも可能である。
ベースカバー5は、シートのクッション材であるシートパッドを覆うように設けられたカバー部材である。本実施形態では、ベースカバー5は、シートパッドにおけるシートクッションの下側を構成する部分を覆う下ベースカバー10(本発明における第一ベースカバーに相当する)と、シートクッションの上側を構成する部分を覆う上ベースカバー20(本発明における第二ベースカバーに相当する)と、を有する。下ベースカバー10および上ベースカバー20は、例えばシートパッド内部に配されたインサートワイヤなどと結束されることにより、シートパッドに固定されている。本実施形態にかかる車両用シート1は、シートパッドがこのベースカバー5に覆われた状態(詳細を後述するシートカバー30が用いられていない状態)を、一つのシート外観として選択することができる。以下、この状態を標準状態と称する。
下ベースカバー10の上側縁には、線ファスナのエレメント(務歯)である第一エレメント11が設けられている。この第一エレメント11には、線ファスナのスライダ113が取り付けられている。このスライダ113には、持ち手114(引き手)が取り付けられている。スライダ113は、耐久性などを考慮して金属製のものを用いている。また、持ち手114は樹脂製(金属材料が樹脂で覆われたものなど、外側が樹脂であるものを含む)である。さらに、第一エレメント11の始端側(線ファスナのエレメント同士を係合させる際、最初にスライダ113を位置させる側を始端側とする。以下同じ)には、第一下止金具111が取り付けられている。また、第一エレメント11の終端側(線ファスナのエレメント同士の係合が完了したときにスライダ113が位置する側を終端側とする。以下同じ)には、第一上止金具112が取り付けられている。
上ベースカバー20の下側縁には、上記第一エレメント11と係合可能である第二エレメント21が設けられている。第二エレメント21の始端側には、第二下止金具211が取り付けられている。この第二下止金具211は、上記第一下止金具111と係合可能である。また、第二エレメント21の終端側には、上記第一上止金具112と対になる第二上止金具212が取り付けられている。
下ベースカバー10に設けられた第一エレメント11と上ベースカバー20に設けられた第二エレメント21は、略同じ長さを有し、シートクッションの周面における上下方向の略中央位置で向かい合うように(寄り沿うように)位置する(図1(a)参照)。シートパッドがベースカバー5に覆われた状態であって後述するシートカバー30(着替カバー)が用いられていない標準状態をシート外観として設定する際には、下ベースカバー10の第一エレメント11と上ベースカバー20の第二エレメント21を係合させる。具体的には、第一下止金具111と第二下止金具211を係合させた状態でスライダ113を始端から終端(スライダ113が第一上止金具112と第二上止金具212に接触するまで)移動させる(図1(b)、図2参照)。
シートカバー30は、ベースカバー5に線ファスナを介して着脱可能であるカバーである。つまり、上記上ベースカバー20および下ベースカバー10が予めシートパッドに固定されたカバーであるのに対し、シートカバー30は使用しない際に取り外すことができるカバーである。本実施形態にかかる車両用シート1は、このシートカバー30をシートパッドにおけるシートクッションの上側を構成する部分(上ベースカバー20)を覆うように下ベースカバー10に取り付けることによってシート外観を変更すること(標準状態とは異なるシート外観にすること)ができる。以下、シートカバー30がベースカバー5に取り付けられた状態、すなわちシートパッドがベースカバー5およびシートカバー30に覆われている状態を着替状態と称する。
このシートカバー30の下側縁には、上記下ベースカバー10に設けられた第一エレメント11と係合可能である第三エレメント31が設けられている。第三エレメント31の始端側には、第三下止金具311が取り付けられている。この第三下止金具311は、上記第一下止金具111と係合可能である。また、第三エレメント31の終端側には、上記第一上止金具112と対になる第三上止金具312が取り付けられている。
シートカバー30に設けられた第三エレメント31は、下ベースカバー10に設けられた第一エレメント11と略同じ長さを有する。シートカバー30を所定位置(シートクッションの上側を構成する部分(上ベースカバー20)を覆う位置)に位置させると、第三エレメント31と第一エレメント11はシートクッションの周面における上下方向の略中央位置で向かい合う。シートパッドがシートパッドがベースカバー5およびシートカバー30に覆われている着替状態をシート外観として設定する際には、下ベースカバー10の第一エレメント11とシートカバー30の第三エレメント31を係合させる。具体的には、第一下止金具111と第三下止金具311を係合させた状態でスライダ113を始端から終端(スライダ113が第一上止金具112と第三上止金具312に接触するまで)移動させる(図1(c)、図4参照)。
このように、本実施形態にかかる車両用シート1は、シート外観として図1(b)に示した標準状態と図1(c)に示した着替状態が切り替え可能である。かかる本実施形態にかかる車両用シート1には、線ファスナのスライダ113や金具の露出を防止するための構成が下ベースカバー10に設けられている。以下、この点について詳細に説明する。
下ベースカバー10には、始端側被覆部12および終端側被覆部13が設けられている。始端側被覆部12は、図2(a)、図3に示されるような平面形状が略三角形状の布部材によって構成されている。この始端側被覆部12は、三角形の三つの側縁(辺)のうち、二つの側縁が下ベースカバー10に縫合され、残り一つの側縁が下ベースカバー10に縫合されておらず開口した状態である。具体的には、水平方向に延びる側縁およびこの側縁に直交する上下方向に延びる側縁が下ベースカバー10に縫合されている。換言すれば、水平方向に延びる側縁とは、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁であり、上下方向に延びる側縁とは、線ファスナのエレメントが延びる側(終端側)の反対の側縁である。また、下ベースカバー10に縫合されていない一つの側縁は、直角三角形の斜辺に相当する側縁である。かかる側縁が縫合されていないということは、始端側被覆部12は、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側が開口しているということである。別の見方をすれば、上方(具体的には上下方向に交差する部分(側縁))が開口しているということである。なお、線ファスナの性質を考えれば当然ではあるが、始端側被覆部12はエレメントが延びる方向(終端側)にも開口しているということがいえる。
この始端側被覆部12は、第一エレメント11の第一下止金具111を覆うように下ベースカバー10に設けられている。上述したように、シート外観を標準状態に設定する場合には、第一下止金具111には第二エレメント21の第二下止金具211が係合され、シート外観を着替状態に設定する場合には、第一下止金具111には第三エレメント31の第三下止金具311が係合される。図2(a)、図3(b)に示すように、始端側被覆部12は、この第一下止金具111に係合される第二下止金具211または第三下止金具311も覆う。
一方、終端側被覆部13も同様に、図2(b)、図4に示されるような平面形状が略三角形状の布部材によって構成されている。この終端側被覆部13は、三角形の三つの側縁(辺)のうち、二つの側縁が下ベースカバー10に縫合され、残り一つの側縁が下ベースカバー10に縫合されておらず開口した状態である。具体的には、水平方向に延びる側縁およびこの側縁に直交する上下方向に延びる側縁が下ベースカバー10に縫合されている。換言すれば、水平方向に延びる側縁とは、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁であり、上下方向に延びる側縁とは、線ファスナのエレメントが延びる側(始端側)の反対の側縁である。また、下ベースカバー10に縫合されていない一つの側縁は、直角三角形の斜辺に相当する側縁である。かかる側縁が縫合されていないということは、終端側被覆部13は、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側が開口しているということである。別の見方をすれば、上方(上下方向に交差する部分)が開口しているということである。なお、線ファスナの性質を考えれば当然ではあるが、終端側被覆部13はエレメントが延びる方向(始端側)にも開口しているということがいえる。
この終端側被覆部13は、第一エレメント11の第一上止金具112を覆うように下ベースカバー10に設けられている。上述したように、シート外観を標準状態に設定する場合には、第一エレメント11には第二エレメント21が係合され、シート外観を着替状態に設定する場合には、第一エレメント11には第三エレメント31が係合される。第一エレメント11に第二エレメント21または第三エレメント31が係合された状態ということは、第二エレメント21の上止金具または第三エレメント31の上止金具に接触するまで(終端位置まで)線ファスナのスライダ113が移動しているということである。図2(b)、図4に示すように、終端側被覆部13は、この終端位置まで移動したスライダ113を覆うことができる大きさである。
このような構成の始端側被覆部12および終端側被覆部13の作用(機能)ならびに効果について説明する。シート外観を標準状態に設定する場合、下ベースカバー10の第一エレメント11と上ベースカバー20の第二エレメント21を係合させる。まず、図2(a)に示すように、第一下止金具111と第二下止金具211を係合させてスライダ113を終端側に移動させる。上述したように、本実施形態では、始端側被覆部12は、第二エレメント21側(上方)が開口しているから、第一下止金具111と第二下止金具211とを係合させる作業が容易である。係合した第一下止金具111と第二下止金具211は始端側被覆部12に覆われる。
そのままスライドを終端側に移動させれば、スライダ113の移動とともに第一エレメント11と第二エレメント21が係合していく。そして図2(b)に示すように、スライダ113を終端位置まで移動させると、第一エレメント11と第二エレメント21の係合が完了し、スライダ113は終端側被覆部13に覆われる。具体的には、終端位置の直前まで移動したスライダ113を、持ち手114を手前側(始端側)に倒した状態で押し込むことにより、終端側被覆部13の内側にスライダ113を挿入することができる。
一方、シート外観を着替状態に設定する場合、下ベースカバー10の第一エレメント11とシートカバー30の第三エレメント31を係合させる。まず、図3(a)に示すように、第一下止金具111と第三下止金具311を係合させてスライダ113を終端側に移動させる。上述したように、始端側被覆部12は、第三エレメント31側(上方)が開口しているから、その開口から第三下止金具311を始端側被覆部12の内側に挿入することができる。つまり、本実施形態では、始端側被覆部12の第三エレメント31側が開口しているから、始端側被覆部12の内側に位置する第一下止金具111に第三下止金具311を係合させることができる。なお、始端側被覆部12の第三エレメント31側が開口していなければ、第三下止金具311を始端側被覆部12の内側に挿入させることができない。つまり、第三下止金具311は、第一下止金具111とともに露出してしまう構成となる。
図3(b)に示すように、そのままスライダ113を終端側に移動させれば、スライダ113の移動とともに第一エレメント11と第二エレメント21が係合していく。そして図4に示すように、スライダ113を終端位置まで移動させると、第一エレメント11と第三エレメント31の係合が完了し、スライダ113は終端側被覆部13に覆われる。上述したように、終端側被覆部13は、第三エレメント31側(上方)が開口しているから、その開口から第三上止金具312を終端側被覆部13の内側に挿入することができる。予め終端側被覆部13の内側に位置している第一上止金具112とともに第三上止金具312を終端側被覆部13の内側に位置させた状態で、終端位置の直前まで移動したスライダ113を、持ち手114を手前側(始端側)に倒した状態で押し込むことにより、終端側被覆部13の内側にスライダ113を挿入することができる。このように、本実施形態では、終端側被覆部13の第三エレメント31側が開口しているから、第三上止金具312を終端側被覆部13の内側に挿入することができるとともに、スライダ113を終端側被覆部13の内側に挿入することができる。なお、終端側被覆部13の第三エレメント31側が開口していなければ、第三上止金具312を終端側被覆部13の内側に挿入することができないから、上止金具に接触する位置までしか移動させることのできないスライダ113を終端側被覆部13の内側に挿入することもできない。つまり、スライダ113が露出した構成となってしまう。
以上のように、本実施形態では、始端側被覆部12および終端側被覆部13は、第三エレメント31側(上方)が開口しているから、第一下止金具111および第三下止金具311が始端側被覆部12に、第一上止金具112および第三上止金具312に接触する位置まで移動させるスライダ113が終端側被覆部13に覆われた状態とすることができる。このように、標準状態だけでなく着替状態であっても、下止金具や終端位置にあるスライダ113(上止金具を含む)が被覆部に覆われるから、線ファスナの金具が露出することによる問題を防止することができる。
また、本実施形態では、始端側被覆部12および終端側被覆部13は、三角形の斜辺に相当する側縁が開口している。つまり、第二エレメント21または第三エレメント31側およびエレメントが延びる方向に向かって斜めに開口しているから、第二エレメント21または第三エレメント31を第一エレメント11に係合させる作業が容易である。すなわち、第二下止金具211または第三下止金具311を始端側被覆部12の内側に挿入して第一下止金具111に係合させた状態で、スライダ113を終端側に向けて移動させる作業が容易になる。加えて、第二上止金具212または第三上止金具312を終端側被覆部13の内側に挿入した状態で、スライダ113を終端側被覆部13の内側に押し込む作業が容易となる。
なお、図3(a)に示すように、スライダ113が始端に位置するとき、スライダ113に取り付けられた持ち手114は、始端側被覆部12に覆われない。つまり、持ち手114は露出しているから、始端に位置するスライダ113を終端側に向けて移動させる作業が困難になることもない。また、図4に示すように、スライダ113が終端に位置するとき、スライダ113に取り付けられた持ち手114は、終端側被覆部13に覆われない。つまり、持ち手114は露出しているから、第一エレメント11と第二エレメント21または第三エレメント31の係合を解消しようとする際に、終端に位置するスライダ113を始端側に向けて移動させる作業が困難になることもない。このように持ち手114が露出していても、持ち手114は樹脂製(金属材料が樹脂で覆われたものを含む)であるから、持ち手114が高温になってしまうことはない。
次に、第二実施形態にかかる車両用シート2について説明する。本実施形態にかかる車両用シート2は、下ベースカバー10に設けられた始端側被覆部41および終端側被覆部42以外の構成は第一実施形態と同様であるから、これらの部材については説明を省略し、異なる点を中心に説明する。
始端側被覆部41は、図5(a)、図6に示されるような布部材によって構成されている。この始端側被覆部41は、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁、および、線ファスナのエレメントが延びる側(終端側)の反対の側縁が下ベースカバー10に縫合されている。また、始端側被覆部41は、その縫合された部分の側縁の端部同士を結んだ仮想線S1(第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁の右端と、線ファスナのエレメントが延びる側(終端側)の反対の側縁の上端を結んだ仮想線S1)よりも外側(縫合された部分から離れる方向)に突出した突出部411を有する。この突出部411の側縁は、下ベースカバー10に縫合されておらず、開口している。第一実施形態における始端側被覆部12と比較すると、突出部411が存在する分、本実施形態における始端側被覆部41の方が被覆面積が大きい。
本実施形態における始端側被覆部41は、図5(a)、図6に示されるような平面形状が略四角形状の布部材によって構成されており、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁、および、線ファスナのエレメントが延びる側(終端側)の反対の側縁が下ベースカバー10に縫合され、第二エレメント21または第三エレメント31側の側縁および線ファスナのエレメントが延びる側(終端側)の側縁が開口している。
一方、終端側被覆部42は、図5(b)、図7に示されるような布部材によって構成されている。この終端側被覆部42は、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁、および、線ファスナのエレメントが延びる側(始端側)の反対の側縁が下ベースカバー10に縫合されている。また、終端側被覆部42は、その縫合された部分の側縁の端部同士を結んだ仮想線S2(第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁の左端と、線ファスナのエレメントが延びる側(始端側)の反対の側縁の上端を結んだ仮想線S2)よりも外側(縫合された部分から離れる方向)に突出した突出部421を有する。この突出部421の側縁は、下ベースカバー10に縫合されておらず、開口している。第一実施形態における終端側被覆部13と比較すると、突出部421が存在する分、本実施形態における終端側被覆部42の方が被覆面積が大きい。
本実施形態における終端側被覆部42は、図5(b)、図7に示されるような平面形状が略四角形状の布部材によって構成されており、第一エレメント11に係合される第二エレメント21または第三エレメント31側の反対の側縁、および、線ファスナのエレメントが延びる側(始端側)の反対の側縁が下ベースカバー10に縫合され、第二エレメント21または第三エレメント31側の側縁および線ファスナのエレメントが延びる側(始端側)の側縁が開口している。
このような構成の始端側被覆部41および終端側被覆部42が設けられた本実施形態によれば、第一実施形態と同様の作用効果が奏される。つまり、始端側被覆部41および終端側被覆部42の第三エレメント31側(上方)が開口しているから、第一下止金具111および第三下止金具311が始端側被覆部41に、第一上止金具112および第三上止金具312に接触する位置まで移動させるスライダ113が終端側被覆部42に覆われた状態とすることができる。線ファスナの金具が露出することによる問題を防止することができる。また、第二エレメント21または第三エレメント31を第一エレメント11に係合させる作業が容易である。
加えて、始端側被覆部41および終端側被覆部42が突出部411,421を有している分(形状が略四角形状である分)被覆部による被覆面積が大きくなるから、線ファスナの下止金具や終端位置にあるスライダ113の露出を確実に防止することができる。さらには、突出部411,421が、第三下止金具311やスライダ113を被覆部内に挿入する際のガイドとなる。例えば、突出部411,421を持ち上げて被覆部の開口を拡げたりすることなどが可能であるから、シートカバー30を取り付ける際(着替状態とする際)に、第三下止金具311やスライダ113を被覆部内に挿入する作業が行いやすい。
なお、本実施形態において、始端側被覆部41および終端側被覆部42が有する突出部411,421の形状は、特に限定されるものではない(始端側被覆部41および終端側被覆部42を必ず略四角形状としなければならないわけではない)。例えば、突出部411,421の開口した側縁が弧状である始端側被覆部41および終端側被覆部42としてもよい。
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
例えば、上記実施形態(第一実施形態および第二実施形態)において、始端側被覆部12(41)および終端側被覆部13(42)は、伸縮性に富む布部材で構成するとよい。特に終端側被覆部13(42)を伸縮性に富む布部材で構成すれば、終端側被覆部13(42)に覆われたスライダ113は布部材のテンションによって締め付けられるから、終端側被覆部13(42)からスライダ113が抜け出てしまうことが防止される。また、第二エレメント21が用いられていない車両用シートにも、上記実施形態の技術的思想は適用可能である。
1(2) 車両用シート
5 ベースカバー
10 下ベースカバー(第一ベースカバー)
11 第一エレメント
111 第一下止金具
112 第一上止金具
113 スライダ
12(41) 始端側被覆部
411 突出部
13(42) 終端側被覆部
421 突出部
20 上ベースカバー(第二ベースカバー)
21 第二エレメント
211 第二下止金具
212 第二上止金具
30 シートカバー
31 第三エレメント
311 第三下止金具
312 第三上止金具

Claims (3)

  1. 第一ベースカバーおよび第二ベースカバーを有するベースカバーと、このベースカバーに線ファスナを介して着脱可能なシートカバーと、を備え、シートパッドが前記ベースカバーに覆われている前記シートカバーが用いられていない標準状態と、シートパッドが前記ベースカバーおよび前記シートカバーに覆われている着替状態と、が切替可能である車両用シートであって、
    前記第一ベースカバーには、線ファスナのスライダが取り付けられた第一エレメントが設けられるとともに、前記第二ベースカバーには、前記標準状態においてこの第一エレメントに係合される第二エレメントが設けられ、
    前記シートカバーには、前記着替状態において前記第一エレメントに係合される第三エレメントが設けられ、
    前記第一ベースカバーには、
    前記第一エレメントの下止金具およびそれに係合される前記第二エレメントまたは前記第三エレメントの下止金具を覆う始端側被覆部と、
    前記第一エレメントの上止金具およびそれに係合される前記第二エレメントまたは前記第三エレメントの上止金具に接触するまで移動した前記スライダを覆う終端側被覆部と、が設けられており、
    これら被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側が開口していることを特徴とする車両用シート。
  2. 前記始端側被覆部および前記終端側被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側の反対の側縁、および、その側縁に略直交する線ファスナのエレメントが延びる側の反対の側縁が前記第一ベースカバーに縫合され、残りの一側縁が開口した略三角形状であることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
  3. 前記始端側被覆部および前記終端側被覆部は、前記第二エレメントまたは前記第三エレメント側の反対の側縁、および、その側縁に略直交する線ファスナのエレメントが延びる側の反対の側縁が前記第一ベースカバーに縫合され、その縫合された部分の側縁の端部同士を結んだ仮想線よりも外側に突出した突出部を有し、その突出部の側縁が開口していることを特徴とする請求項1に記載の車両用シート。
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