JP2012235699A - 田植機 - Google Patents

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康司 三宅
Kunio Doi
邦夫 土井
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秀和 丹生
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Abstract

【課題】田植機において、ピッチング角等に基づく補正を適切に行い、良好な昇降制御性能を得ることができる構成を提供する。
【解決手段】制御部は、フロートの揺動角の検出値を、ピッチング角に基づいて補正して(ステップS106)、植付部を昇降制御するように構成されている。そして制御部は、ピッチング角の変化速度又は加速度が大きい場合には、前記補正を行わない。即ち、車体が急激なピッチング挙動を示すときには、ピッチング角による補正の影響を小さくすることにより、意図しない昇降制御が行われてしまうことを防止し、植付部の不必要な高さ変動を抑えることができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、主として、田植機が備える植付部を上下昇降する制御に関する。
特許文献1が開示するように、植付部が備えるフロートの揺動角(フロート角)に基づいて、当該植付部を上下に昇降制御する田植機が知られている。
このような田植機において、車体が水平状態であれば、地面に対するフロートの角度と、車体に対するフロートの角度は一致する。従って、この状態であれば、フロート角に基づいて植付部を上下昇降することにより、植付部を地面に対して適切な高さに保つことができる。
一方、植え終い時などにおいて圃場から脱出する際には、地面に対して車体が傾いた状態となる。このように車体がピッチング角(車体の前後傾斜角)を有している場合は、地面に対するフロートの角度と、車体に対するフロートの角度と、が一致しなくなる。この状態では、フロート角に基づいて植付部を上下昇降したとしても、植付部を地面に対して適切な高さに保つことができない。このため、圃場脱出時の植付を適切に行うことができないという問題がある。そこで、フロート角の目標値を、ピッチング角に応じて変更するように補正(ピッチング補正)が行われる場合がある。
特開2008−212059号公報
しかし、圃場の条件や、機体の前後重量バランス等によっては、通常作業時にも本機は激しくピッチング挙動を繰り返しているため、ピッチング補正が予期せぬ場合に作動する場合がある。このように予期せぬタイミングでピッチング補正が作動してしまうと、フロートの目標角度が不必要に変更されるため、植付部が不必要に昇降制御されてしまう。この結果、浮苗等の不具合が発生する場合がある。
また、上記ピッチング角を検出するための傾斜センサは、重力加速度方向の傾きを検出するように構成されている。従って、車体が加減速していると、前記傾斜センサに加速度がかかるため、重力加速度方向を正確に検出できなくなる。このため、車体の加減速中では、前記ピッチング補正を正確に行うことができないという問題がある。
また、ピッチング角度が急激に変化するような状況(例えば、暗渠に前輪が落ち込んだような状況)においては、植付部の昇降動作を急激に行う必要がある。このような場合に備えて制御ゲインを大きくとっておくことが考えられるが、その場合、ハンチングが発生し易くなるという問題がある。
また、植付部の昇降駆動は、油圧シリンダによって行うように構成される場合が多い。しかし当該油圧シリンダの作動油は、温度によって粘性が大きく変化する。このため、植付部の昇降制御特性が変化してしまい、適切な昇降制御を行えない場合があった。
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、田植機において、ピッチング角等に基づいて昇降制御に関する補正を適切に行い、良好な昇降制御性能を得ることができる構成を提供することにある。
課題を解決するための手段及び効果
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本発明の観点によれば、以下の構成の田植機が提供される。即ち、制御部は、フロートの揺動角の検出値又は目標値の何れか一方を、車体の前後傾斜に基づいて補正して、植付部の昇降制御を行うように構成されている。そして前記制御部は、車体の前後傾斜角、車体の前後傾斜角速度、車体の前後傾斜角加速度、の少なくとも何れか1つの大きさに基づいて、前記補正量を変更する。
即ち、車体のピッチング挙動に応じて、前後傾斜によるフロート揺動角の補正量を変更することにより、意図しない昇降制御が行われてしまうことを防止し、植付部の不必要な高さ変動を抑えることができる。
上記の田植機において、前記制御部は、前記昇降制御の制御ゲインを変更することが好ましい。
これにより、急激なピッチング変化や、ハンチングに対応することができる。
上記の田植機において、制御部は、前記車体の前後傾斜角を微分することにより、車体の前後傾斜角速度及び車体の前後傾斜角加速度の少なくとも何れか一方を取得することが好ましい。
これにより、追加のセンサ等を必要とせず、演算のみで車体の前後傾斜角速度又は前後傾斜角加速度を求めることができる。
前記の田植機においては、前記車体の前後傾斜角速度を測定する角速度センサを備える構成としても良い。
これにより、車体の前後傾斜角速度を直接的かつ正確に検出することができる。
上記の田植機は以下のように構成することが好ましい。即ち、この田植機は、前記車体の前後傾斜角を検出する傾斜角検出部と、車体の加速度を取得する加速度検出部と、を備える。前記制御部は、前記車体の加速度に基づいて前記傾斜角検出部にかかる加速度を算出し、当該傾斜角検出部が出力する車体の前後傾斜角を補正する。
即ち、傾斜センサの出力は加速度の影響を受けるので、車体の加減速中には前後傾斜角を正確に取得することができない。そこで上記のように車体の加速度に基づいて前後傾斜角を補正することにより、車体加速時などにおいても正確な前後傾斜角を取得することができる。
前記の田植機において、前記制御部は、車体の前後傾斜角の前記補正後の値に基づいて、前記フロートの揺動角の検出値又は目標値の何れか一方を補正することが好ましい。
即ち、補正された前後傾斜角に基づいてフロートの角度を補正することにより、車体の加速度にかかわらず、地面に対するフロートの真の角度を得ることができる。これにより、植付部の昇降制御を精度良く行うことができる。
上記の田植機は、以下のように構成されることが好ましい。即ち、前記フロートの揺動角が、目標角度に対して前下がりの場合、前記制御部は、前記植付部の下げ指令を出力、又は当該植付部の昇降制御の下げゲインを増加させる。前記フロートの揺動角が、目標角度に対して前上がりの場合、前記制御部は、前記植付部の上げ指令を出力、又は当該植付部の昇降制御の上げゲインを増加させる。
即ち、前後傾斜角によってフロート角を補正したうえで昇降制御を行うことにより、植付部の位置が高いか、低いか、を正確に判断することができるので、精度の良い昇降制御を行うことができる。
上記の田植機において、前記制御部は、前記フロートの揺動角が特定の振幅と周期を有している場合には、前記昇降制御における制御ゲインを変更することが好ましい。
即ち、外乱等によって発生する制御の発散(ハンチング)は、特定の振幅と周波数であることが多い。そこでそれらを事前に得ておき、フロート角が上記のような特性を示した場合、制御ゲインを変更することにより、ハンチングの発生を抑制することができる。
上記の田植機は、前記植付部を昇降駆動する油圧シリンダを備え、前記油圧シリンダは、ミッションケース内の作動油を用いて駆動されることが好ましい。
このように、ミッションケースの作動油と、昇降用の作動油を共用とすることで、昇降用の作動油タンクを別途設ける必要がなく、機体をコンパクトに構成することができる。
本発明の一実施形態に係る田植機の側面図。 フロート近傍の側面図。 車体の加速度と重力加速度との関係を説明する図。 本実施形態に係る昇降制御のフローチャート。
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る作業車両としての田植機1の側面図である。
田植機1は、車体2と、当該車体2の後方に配置された植付部(作業機)3と、から構成されている。
車体2は、左右一対の前輪4と、左右一対の後輪5を備えている。また、車体2は、その前後方向で前輪4と後輪5の間に運転座席6を備えている。運転座席6の近傍には、車体2の操向操作を行うためのステアリングハンドル7、車体2の走行速度を調節するための変速ペダル8、その他各種の操作具が配置されている。
また、車体2は、図略の制御部を備えている。制御部は例えばマイクロコントローラからなり、田植機1の各部に備えられたセンサ等の信号に基づいて、田植機1の各構成を制御するように構成されている。
また、車体2において、運転座席6の下方にはエンジン10が、当該エンジン10の前方にはミッションケース11が、それぞれ配置されている。一方、車体2の後方には、植付部3を取り付けるための昇降リンク機構12、エンジン10の駆動力を植付部3に出力するためのPTO軸13、植付部3を昇降駆動するための昇降シリンダ14等が配置される。
また運転座席6の下方近傍には、車体のピッチング角(前後傾斜角)を検出するための傾斜センサ(傾斜角検出部)31が配置されている。傾斜センサ31が検出したピッチング角は、制御部へと出力される。
前記植付部3は、植付センターケース15と、植付ベベルケース24と、苗載台17と、フロート16と、フロートセンサ34と、を備えている。
植付センターケース15内には図略の駆動軸が配設されており、当該駆動軸には前記PTO軸13からの駆動力が入力されている。なお、本実施形態の田植機は植付ベベルケース24を3つ有している。前記植付ベベルケース24は車体前後方向に沿って配置されており、かつ車体左右方向に並んで配置されている。各植付ベベルケース24内には、図略の駆動軸が配設されており、植付センターケース15からの駆動力が入力されている。
各植付ベベルケース24の左右には、それぞれ植付ユニット20が取り付けられている。従って、本実施形態の田植機1は、植付ユニット20を6つ有する6条植えの田植機として構成されている。各植付ユニット20は、回転ケース21に2つの植付爪22を備えるロータリ式植付装置として構成されている。植付ベベルケース24に入力された駆動力は、回転ケース21を回転駆動する。
ロータリ式植付装置の構成は公知であるので詳細な説明は省略するが、回転ケース21を回転駆動することにより、植付爪22の先端部が図2に示すようなループ状の軌跡を描きながら上下に駆動されるように構成されている。植付爪22の先端部は、上から下に向かって動くときに、後述の苗載台17に載せられた苗マット25の下端から1株分の苗26を掻き取り、当該苗26の根元を保持したまま下方に動いて地面に植え込むように構成されている。
苗載台17は、前記植付ベベルケース24の上方に配置されている。この苗載台17は、図略のガイドレール上を車体左右方向に往復摺動可能に支持されている。そして、植付部3は、苗マット25の左右幅の範囲内で苗載台17を左右に往復駆動する図略の横送り機構を備えている。これにより、苗載台17に載せた苗マット25を、植付ユニット20に対して左右に相対運動させることができる。また、苗載台17は、苗マット25を、下方に向かって(即ち、植付ユニット20側に向かって)間欠的に送る苗送りベルト(縦送り機構)を備えている。以上の構成で、横送り機構と縦送り機構とを適切に連動させることにより、各植付ユニット20に対して苗を順次供給し、連続的に植付けを行うことができる。
前記フロート16は、3本の植付ベベルケース24それぞれの下方に設けられる。このフロート16は、その下面が地面に接触することができるように配置されている。これにより、地面をならして、植え付けをきれいに行うことができる。
フロート16は、揺動支点32を中心に回動可能に構成されている。また、フロート16は、揺動支点32よりも前方の位置において、押圧バネ33によって下向きに付勢されている。即ち、フロート16の前端部分が、地面に対して押し付けられるように力が加えられている。
以上の構成で、地面と作業機との距離が離れていくに従って、フロート16が前下がり状態となる。従って、揺動支点32を中心としたフロート16の揺動角を検出することにより、地面と植付部3との距離(植付部3の対地高さ)を検出することができる。本実施形態の田植機1は、フロート16の揺動角(フロート角)を検出するフロートセンサ(フロート角検出部)34が、複数のフロート16のうち少なくとも何れか一つに設けられている。このフロートセンサ34は、例えばポテンショメータとして構成されている。フロートセンサ34の検出値は、制御部に出力される。制御部は、このフロートセンサ34の検出値に基づいて、フロート角を検知することができる。
制御部は、フロートセンサ34で検知したフロート角に基づいて、植付部3の対地高さを一定に保つように、植付部3を上下に昇降制御する。これにより、地面に凹凸がある場合であっても、苗の植付深さを一定に保ってきれいに植付を行うことができる。本実施形態に田植機1においては、制御部は、前記フロート角に基づいたPID制御を行って植付部3を昇降することにより、上記昇降制御を実現している。なお、PID制御による昇降制御は公知なので、詳細な説明は省略する。
植付センターケース15には、前記昇降リンク機構12が連結されている。この昇降リンク機構12は、トップリンク18、ロワーリンク19等からなる平行リンク構造から構成されており、ロワーリンク19に連結された昇降シリンダ14を駆動することにより、植付センターケース15を上下に昇降駆動可能に構成されている(これにより、植付部3全体を上下に昇降することができる)。
昇降シリンダ14には図略の流量比例弁が接続されており、この流量比例弁から圧油を供給されて駆動する。前記流量比例弁は、制御部によって制御される。制御部は、流量比例弁を制御して昇降シリンダ14を駆動することにより、植付部3を地面の凹凸に追従させて上下に昇降し、植付部の高さを一定に保つように制御を行う。
なお、昇降シリンダ14の作動油は、ミッションケース11内の作動油(ギヤオイル)と共用している。これにより、昇降シリンダ14用にオイルタンク等を別途設置する必要がないので、田植機の機体をコンパクトに構成することができる。また、ミッションケース11内には、前記作動油の温度を検出するための図略の油温センサ(油温検出部)を備えている。
次に、本実施形態の田植機1における、ピッチング角の補正について説明する。
前述のように、車体のピッチング角(前後傾斜角)は、傾斜センサ31によって検出することができる。この傾斜センサ31は、重力加速度方向を検出することにより、傾斜角を検出する構成である。ところが、車体が走行中に加減速を行うと、傾斜センサ31に加速度がかかるため、重力加速度方向を正確に検出できなくなる結果、傾斜センサ31が出力するピッチング角が不正確になるという問題がある。
そこで本実施形態の田植機1では、車体の加速度に応じてピッチング角を補正するように構成されている。このため、本実施形態の田植機1は、車体の加速度を検出するための図略の加速度センサ(加速度検出部)を備えている。
以下、図3を参照して説明する。車体の加速度をA[m/s2]、重力加速度をG[m/s2]とする。車体が加減速している場合、傾斜センサ31にかかる加速度の方向は、重力加速度Gの方向(鉛直下向き方向)に対して角度θaだけ傾いている。車体は水平方向に移動していると近似して考えることができるので、車体の加速度Aと重力加速度Gは直交しているとみなすことができる。この場合、前記角度θaは、
θa=tan-1(A/G)
で求めることができる。
上記のように、傾斜センサ31にかかる加速度が重力加速度Gの方向(鉛直下向き方向)に対して角度θaだけ傾いている場合、傾斜センサ31が出力するピッチング角も、真の値から角度θaだけズレていることになる。
そこで本実施形態の田植機1において、制御部は、傾斜センサ31が出力するピッチング角を角度θaによって補正し、車体の真のピッチング角(前後傾斜角)を算出するように構成されている。傾斜センサ31が出力するピッチング角をθpとすると、真のピッチング角θr
θr=θp−θa
で求めることができる。
次に、本実施形態の田植機におけるピッチング補正について説明する。
前述のように、フロート16の揺動角(フロート角)は、フロートセンサ34によって検出することができる。ところでこのフロートセンサ34で検出することができるフロート角は、車体に対するフロート16の角度である。一方、フロート角を用いた昇降制御は、地面に対する植付部3の高さを一定に保つことを目的として行うものである。従って、上記昇降制御において真に必要とされているのは、地面に対するフロート16の角度である。
図2には、車体のピッチング角がゼロの場合、即ち車体が水平状態の場合が示されている。この場合、車体に対するフロート16の揺動角と、地面に対するフロート16の揺動角と、は一致している。従って、このように車体が水平状態の場合は、フロートセンサ34が検出したフロート角をそのまま昇降制御に用いても、植付部3を精度良く上下昇降することができる。
一方、車体がピッチング角θを有している場合、即ち車体が前後で傾斜している場合は、車体に対するフロート16の揺動角と、地面に対するフロート16の揺動角と、が一致しないことになる。従って、この場合は、フロートセンサ34が検出したフロート角をそのまま昇降制御に用いただけでは、植付部3を精度良く上下昇降することができない。
そこで本実施形態の田植機1において、制御部は、フロートセンサ34が検出したフロート角(車体に対するフロート16の角度)を、車体のピッチング角で補正するように構成されている。即ち、車体のピッチング角をθ、フロートセンサ34が検出したフロート角をαとすると、地面に対するフロート16の角度(真のフロート角)αrは、
αr=α−θ
で求めることができる。
なお、車体のピッチング角θとしては、傾斜センサ31が検出したピッチング角θpをそのまま用いても良いが、本実施形態の田植機1においては、制御部は、車体の加速度で補正した真のピッチング角θrを用いている。即ち、本実施形態では、以下の式:
αr=α−θr
によって、地面に対するフロート16の角度(真のフロート角)を算出する。以上が本実施形態の田植機におけるピッチング補正である。
このように、車体の加速度で補正したピッチング角を利用して、フロート角を補正することにより、地面に対するフロート16の角度(真のフロート角)を正確に算出することもできる。しかも、このピッチング補正には、追加のセンサ等も必要なく、演算のみでフロート角算出の精度を向上させることができるのである。
続いて、本実施形態の田植機における昇降制御について、図4のフローチャートを参照して説明する。
まず制御部は、傾斜センサ31の検出値からピッチング角を取得する(ステップS101)。
続いて制御部は、前記加速度センサの検出値から車体の加速度を取得する(ステップS102)。
次に制御部は、傾斜センサ31で取得したピッチング角を、車体の加速度によって補正し、真のピッチング角θrを取得する(ステップS103)。
続いて制御部は、フロートセンサ34の検出値からフロート角(車体に対するフロート16の角度)を取得する(ステップS104)。
前述したように、昇降制御に必要なのは地面に対するフロート16の角度であるから、ステップS104で検出したフロート角を真のピッチング角θrで補正(ピッチング補正)する必要がある。
しかしながら、圃場の状態や、車体の前後バランスなどにおいては、機体が激しいピッチング挙動を示す場合がある。このような場合にピッチング補正が働いてしまうと、昇降制御が不安定になるとともに、植付部3が地面から浮き上がって、浮苗などの不具合が発生するおそれがある。また、車体の発進時など、機体が大きくヘッドアップする場合などは、ピッチング角が非常に大きくなるので、このような場合にピッチング補正を行ってしまうと植付部3が予期せぬ動作を示してしまう場合がある。
そこで本実施形態の田植機1においては、車体のピッチング挙動に応じて、ピッチング補正の補正量を変更するように構成されている。
具体的には以下の通りである。制御部は、傾斜センサ31によって検出したピッチング角を微分し、ピッチング角速度(車体の前後傾斜角速度)を算出する。また制御部は、前記ピッチング角速度を更に微分し、ピッチング角加速度(車体の前後傾斜角加速度)を算出する。ピッチング角、ピッチング角速度、或いはピッチング角加速度が大きな値を示している場合、車体が急激なピッチング挙動を示していると考えられる。このように車体が急激なピッチング挙動を示している場合、ピッチング補正を行うと、植付部3の昇降制御が不安定になり浮苗などの不具合が発生するおそれがある。
そこで制御部は、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度が所定の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS105)ように構成されている。ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度の何れも所定値未満の場合は、車体のピッチング挙動は激しくないと判断できる。このような場合は、ピッチング補正を行っても問題ない。そこで制御部は、ピッチング角速度及びピッチング角加速度の何れも所定値未満であった場合は、フロートセンサ34で検出したフロート角(車体に対するフロート16の角度)を、ピッチング角θrで補正して、地面に対するフロート16の角度(真のフロート角)を算出する(ピッチング補正、ステップS106)。
一方、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度の少なくとも何れか1つが所定値以上だった場合には、車体が急激なピッチング挙動を示していると考えられる。このような場合にピッチング補正を行うと、浮苗などの不具合が発生するおそれがある。そこで制御部は、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度の少なくとも何れか1つが所定値以上だった場合には、ピッチング補正を行わずに次の処理に進む。なおこのとき、ピッチング補正を全く行わない(補正量ゼロ)のではなく、補正量を小さく変更するという構成も可能である。何れにしろ、急激なピッチング挙動時には、ピッチング補正の影響力を小さくすることにより、浮苗などの不具合の発生を防止することができる。
なお、上記の説明では、傾斜センサ31が検出したピッチング角を微分してピッチング角速度を求めるとしたが、ピッチング角の速度を検出するために角速度センサを設置する構成であってもよい。この場合は、微分演算を行うことなく、ピッチング角速度を直接検出できるので、制御部の演算負荷を低減できるとともにピッチング角速度の検出精度も向上させることができる。
次に、制御部は、ステップS105で求めたピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度に基づいて、植付部3の昇降制御の制御ゲインを変更する(ステップS107)。
即ち前述のように、制御部は、PID制御によって植付部3を昇降制御している。この種の制御においては、制御ゲインを大きくすることにより応答性を向上させることができる。しかし一方で、制御ゲインを大きくするとハンチングが発生し易くなるという問題がある。
田植において、植付部3を急速に昇降制御する必要がある状況としては、例えば暗渠に前輪が落ち込んでしまった場合などが考えらえる。この場合は、車体が急激に前のめり姿勢となり、植付部3が地面から浮き上がってしまうので、当該植付部を急速に下降制御する必要があるのである。ところが、このような場合に備えて応答性を向上させるべく制御ゲインを大きくすると、上記のようにハンチングが発生し易くなる。
そこで本実施形態の田植機1において、制御部は、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度の大きさに応じて、制御ゲインを変更するように構成されている。即ち前述のように暗渠に前輪が落ち込んでしまった場合などは、車体が急激に前のめり姿勢になる結果、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度が大きくなる。このように、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度が大きい状況においては、それだけ植付部3を急速に昇降制御する必要がある。
そこで制御部は、ステップS107において、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度が大きいほど、制御ゲインを大きくするように変更を行う。これにより、急速なピッチング変化に対応することができる。また、ピッチング角、ピッチング角速度、及びピッチング角加速度が小さいとき(植付部3を急速に昇降する必要が無いとき)には、制御ゲインを小さくしておく。これにより、ハンチングの発生を未然に防ぐことができる。
次に制御部は、前述の油温センサで検出した作動油の温度に基づいて、当該作動油の粘性特性を推定し(ステップS108)、推定した粘性特性に基づいて制御ゲインを変更する(ステップS109)。
即ち、本実施形態の田植機1においては、昇降シリンダ14の作動油をミッションケース11と共用にしているので、ミッションの作動状態や昇降シリンダ14の作動状態の影響を受けて、作動油の温度が変化する。このため作動油の粘性が大きく変化して、昇降制御性能に影響を与える。
そこで本実施形態の田植機1においては、作動油の温度と粘性特性との関係を予め調べておき、この結果を制御部に記憶しておく構成としている。制御部は、油温センサで検出した作動油の温度に基づいて、前記記憶内容を参照することにより、作動油の粘性を推定(ステップS108)することができる。
作動油の粘性がわかれば、最適な昇降制御性能を発揮するために制御ゲインをどのように変更すべきかを決定することができる。例えば、当初想定されていた粘性よりも、現在の作動油の粘性の方が高い場合、昇降シリンダ14による昇降制御が遅れがちとなる。従って、ステップS108で推定した作動油の粘性が高い場合は、制御ゲインを大きくするように変更して、昇降制御が遅れないように調整する。
続いて、ステップS110及びS111の処理について説明する。
上記までの説明で、ピッチング角速度や、作動油温等によって制御ゲインを変更し、不具合の発生を防止する構成について説明した。しかしながら、作動油温度の変動、車体重量バランス、圃場の外乱など、様々な条件によっては、ハンチング(発散)などの不具合を防ぎきれない場合もある。
このようにして発生するハンチングは、植付部3を含めた車体全体の振動特性(減衰特性)に左右されるため、特定の振幅、特定の周期であることが多い。このため、ハンチング発生時において、フロートセンサ34が出力するフロート角は、特定の振幅、特定の周期を示す。そこで本実施形態の田植機においては、車体の減衰特性による振幅、周期を予め得ておき、これを制御部に記憶しておく構成としている。
制御部は、フロートセンサ34が出力するフロート角を監視し、当該フロート角の変動が特定の振幅、特定の周期を示しているか否かを判定する(ステップS110)。
フロート角が特定の振幅、周期(具体的には、車体の減衰特性による振幅、周期)を示している場合、ハンチングが発生していると判断することができる。この場合、制御部は、制御ゲインを小さくする(ステップS111)。これにより、ハンチングを抑制することができる。一方、フロート角が特定の振幅、周期を示していない場合は、特にハンチング等の不具合は発生していないと考えられるので、制御ゲイン等は変更せずにステップS112に進む。
そしてステップS112において、制御部は、ステップS106で補正された真のフロート角に基づき、ステップS107からS111で決定された制御ゲインを用いたPID制御により、昇降シリンダ14を駆動して植付部3を昇降する。
PID制御は公知なので詳細な説明は省略するが、簡単に説明すると、フロート角を目標角度に近付けるように植付部3を昇降制御するものである。例えば、真のフロート角αrが、目標角度αdに比べて前下がりとなっている場合、植付部3が地面に対して高過ぎていることを示す。この場合、制御部は、αr=αdとなるように、植付部3を下降させるように昇降シリンダ14に指令を出力する。逆に、真のフロート角αrが、目標角度αdに比べて前上がりとなっている場合、植付部3が地面に対して接近し過ぎていることを示す。この場合、制御部は、αr=αdとなるように、植付部3を上昇させるように昇降シリンダ14に指令を出力する。
以上のように、本実施形態の田植機1では、真のフロート角(地面に対するフロート16の角度)を制御量としてPID制御を行っているので、地面に対する植付部3の高さを精度良く制御することができる。そして、このPID制御においては、ピッチング角、フロート角、作動油温などに基づいて補正された制御ゲインを用いるので、ハンチングや浮苗などの不具合を防止することができる。
そして、制御部は、ステップS101の処理に戻り、昇降制御を継続する。
以上で説明したように、本実施形態の田植機1において、制御部は、フロート16の揺動角の検出値を、ピッチング角に基づいて補正して(ステップS106)、植付部3を昇降制御するように構成されている。そして制御部は、ピッチング角、ピッチング角速度、又はピッチング角加速度が大きい場合に、前記補正を行わない。
このように、車体が急激なピッチング挙動を示すときには、ピッチング補正の影響を小さくすることにより、意図しない昇降制御が行われてしまうことを防止し、植付部の不必要な高さ変動を抑えることができる。
また本実施形態の田植機1において、制御部は、ピッチング角の変化速度又は加速度に基づいて、前記昇降制御の制御ゲインを変更している(ステップS107)。
これにより、急激なピッチング変化や、ハンチングに対応することができる。
また本実施形態の田植機1において、制御部は、前記ピッチング角を微分することにより、ピッチング速度及びピッチング加速度を取得している。
これにより、追加のセンサ等を必要とせず、演算のみでピッチング速度又はピッチング加速度を求めることができる。
ただし、ピッチング角速度を測定する角速度センサを別途設ける構成としても良い。
これにより、ピッチング角速度を直接的かつ正確に検出することができる。
また本実施形態の田植機1は、ピッチング角を検出する傾斜センサ31と、車体の加速度を検出する加速度センサと、を備えている。制御部は、車体の加速度に基づいて傾斜センサ31にかかる加速度を算出し、傾斜センサ31が出力するピッチング角を補正する(ステップS103)。
即ち、傾斜センサ31の出力は加速度の影響を受けるので、車体の加減速中にはピッチング角を正確に検出することができない。そこで上記のように車体の加速度に基づいてピッチング角を補正することにより、車体加速時などにおいても正確なピッチング角を取得することができる。
また本実施形態の田植機1において、前記制御部は、補正されたピッチング角(真のピッチング角)に基づいて、フロート16の揺動角を補正している(ステップS106)。
即ち、真のピッチング角に基づいてフロートの角度を補正することにより、車体の加速度にかかわらず、地面に対するフロート16の真の角度を得ることができる。これにより、植付部3の昇降制御を精度良く行うことができる。
また実施形態の田植機1は、以下のように構成されている。即ち、真のフロート角が、目標角度に対して前下がりの場合、制御部は、植付部3の下げ指令を出力する。真のフロート角が、目標角度に対して前上がりの場合、制御部は、植付部3の上げ指令を出力する。
即ち、ピッチング角によって補正された真のフロート角を用いて昇降制御を行うことにより、植付部の位置が高いか、低いか、を正確に判断することができるので、精度の良い昇降制御を行うことができる。
また本実施形態の田植機1において、制御部は、フロート角が特定の振幅と周期を有している場合には、前記昇降制御における制御ゲインを小さくしている(ステップS111)。
即ち、外乱等によって発生する制御の発散(ハンチング)は、特定の振幅と周波数であることが多い。そこでそれらを事前に得ておき、フロート角が上記のような特性を示した場合、制御ゲインを小さくすることにより、ハンチングの発生を抑制することができる。
また本実施形態の田植機1は、植付部3を昇降駆動する昇降シリンダ14を備え、昇降シリンダ14は、ミッションケース11内の作動油を用いて駆動されている。
このように、ミッションケース11の作動油と、昇降用の作動油を共用とすることで、昇降用の作動油タンクを別途設ける必要がなく、機体をコンパクトに構成することができる。
また本実施形態の田植機1は、作動油の油温を検出する油温センサを備える。制御部は、前記作動油の温度に基づいて、昇降制御の制御ゲインを変更する(ステップS109)。
即ち、作動油の温度が変化すると、当該作動油の粘性が大きく変化し、昇降制御性能に影響する。そこで、作動油の温度に応じて制御ゲインを変更することにより、最適な昇降制御を行うことができる。
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
ステップS112の説明において、真のフロート角αrが、目標角度αdに比べて前下がりとなっている場合、植付部3を下降させるように指令を出力するとしたが、これに代えて、下げのゲインを増加させるように制御しても良い。また、真のフロート角αrが、目標角度αdに比べて前上がりとなっている場合、植付部3を上昇させるように指令を出力するとしたが、これに代えて、上げのゲインを増加させるように制御しても良い。
なお、ステップS112における昇降制御は、PID制御に限らず、例えばP制御、PI制御、PD制御など、適宜の手法で制御を行うことができる。
温度センサの配置箇所は、ミッションケース11内に限らず、油圧経路中であればどこも良い。
ステップS105の説明において、傾斜センサ31によって検出したピッチング角を微分してピッチング角速度を算出するとしたが、これに代えて、車体の加速度で補正されたピッチング角(真のピッチング角)を微分してピッチング角速度を算出しても良い。
ステップS110の説明において、フロートセンサ34が出力するフロート角の振幅及び周期を監視するとして説明したが、これに代えて、ピッチング補正された真のフロート角の振幅及び周期を監視する構成であっても良い。
ピッチング補正の説明においては、フロート角α(検出値)をピッチング角θrで補正するとして説明したが、これに代えて、フロートの目標角度αdをピッチング角で補正する構成であっても良い。即ち、ピッチング角で補正された目標角度(αd+θr)を用いて昇降制御を行うことにより、フロート角αを補正した場合と同様の効果を得ることができる。
1 田植機
2 植付部
16 フロート
34 フロートセンサ(フロート角検出部)

Claims (9)

  1. 制御部は、フロートの揺動角の検出値又は目標値の何れか一方を、車体の前後傾斜に基づいて補正して、植付部を昇降制御するように構成されており、
    車体の前後傾斜角、車体の前後傾斜角速度、車体の前後傾斜角加速度、の少なくとも何れか1つの大きさに基づいて前記補正量を変更することを特徴とする田植機。
  2. 請求項1に記載の田植機であって、
    前記制御部は、前記昇降制御の制御ゲインを変更することを特徴とする田植機。
  3. 請求項1又は2に記載の田植機であって、
    制御部は、前記車体の前後傾斜角を微分することにより、前記車体の前後傾斜角速度及び車体の前後傾斜角加速度の少なくとも何れか一方を取得することを特徴とする田植機。
  4. 請求項1又は2に記載の田植機であって、
    前記車体の前後傾斜角速度を測定する角速度センサを備えることを特徴とする田植機。
  5. 請求項1から4までの何れか一項に記載の田植機であって、
    前記車体の前後傾斜角を検出する傾斜角検出部と、
    前記車体の加速度を取得する加速度検出部と、
    を備え、
    前記制御部は、前記車体の加速度に基づいて前記傾斜角検出部にかかる加速度を算出し、当該傾斜角検出部が出力する車体の前後傾斜角を補正することを特徴とする田植機。
  6. 請求項5に記載の田植機であって、
    前記制御部は、車体の前後傾斜角の前記補正後の値に基づいて、前記フロートの揺動角の検出値又は目標値の何れか一方を補正することを特徴とする田植機。
  7. 請求項6に記載の田植機であって、
    前記フロートの揺動角が、目標角度に対して前下がりの場合、前記制御部は、前記植付部の下げ指令を出力、又は当該植付部の昇降制御の下げゲインを増加させ、
    前記フロートの揺動角が、目標角度に対して前上がりの場合、前記制御部は、前記植付部の上げ指令を出力、又は当該植付部の昇降制御の上げゲインを増加させることを特徴とする田植機。
  8. 請求項1から7までの何れか一項に記載の田植機であって、
    前記制御部は、前記フロートの揺動角が特定の振幅と周期を有している場合には、前記昇降制御における制御ゲインを変更することを特徴とする田植機。
  9. 請求項1から8までの何れか一項に記載の田植機であって、
    前記植付部を昇降駆動する油圧シリンダを備え、
    前記油圧シリンダは、ミッションケース内の作動油を用いて駆動されることを特徴とする田植機。
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