図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、ハイブリッド自動車20が備える電気系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、ガソリンや軽油などを燃料とするエンジン22と、エンジン22を駆動制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24と、エンジン22のクランクシャフト26にキャリアが接続されると共に駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸32にリングギヤが接続されたプラネタリギヤ30と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されたモータMG1と、例えば同期発電電動機として構成されて回転子が駆動軸32に接続されたモータMG2と、モータMG1,MG2を駆動するためのインバータ41,42と、インバータ41,42をスイッチング制御することによってモータMG1,MG2を駆動制御するモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40と、例えばリチウムイオン二次電池などの二次電池として構成されたバッテリ50と、バッテリ50を管理するバッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52と、インバータ41,42が接続された電力ライン(以下、高電圧系電力ラインという)54aとシステムメインリレー56を介してバッテリ50が接続された電力ライン(以下、電池電圧系電力ラインという)54bとに接続されて高電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VLから最大許容電圧VHmaxの範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン54aと電池電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55と、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに接続された平滑用のコンデンサ57と、電池電圧系電力ライン54bの正極母線と負極母線とに接続された平滑用のコンデンサ58と、車室内の空気調和を行なう空調装置60と、電池電圧系電力ライン54bに接続されて空調装置60の空調用コンプレッサ61を駆動するインバータ62と、バッテリ50の負極端子とシステムメインリレー56との間の接続点Cn(図2参照)に接続されて電気系のうち接続点Cnから見た現在の接続部位(以下、現在接続部位という)の絶縁抵抗に応じた電圧波形を出力する電圧波形出力回路90と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70と、を備える。
モータMG1およびモータMG2は、いずれも永久磁石が埋め込まれたロータと三相コイルが巻回されたステータとを備える周知の同期発電電動機として構成されている。インバータ41,42は、図2に示すように、6つのトランジスタT11〜T16,T21〜26と、トランジスタT11〜T16,T21〜T26に逆方向に並列接続された6つのダイオードD11〜D16,D21〜D26と、により構成されている。トランジスタT11〜T16,T21〜T26は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線とに対してソース側とシンク側になるよう2個ずつペアで配置されており、対となるトランジスタ同士の接続点の各々にモータMG1,MG2の三相コイル(U相,V相,W相)の各々が接続されている。したがって、高電圧系電力ライン54aの正極母線と負極母線との間に電圧が作用している状態で対をなすトランジスタT11〜T16,T21〜T26のオン時間の割合を制御することによって三相コイルに回転磁界を形成でき、モータMG1,MG2を回転駆動することができる。
モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する図示しない回転位置検出センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置や、図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流,インバータ41,42に取り付けられた図示しない温度センサからのインバータ温度などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42のトランジスタT11〜T16,T21〜26へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40
は、図示しない回転位置検出センサからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
昇圧コンバータ55は、図2に示すように、2つのトランジスタT31,T32とトランジスタT31,T32に逆方向に並列接続された2つのダイオードD31,D32とリアクトルLとからなる昇圧コンバータとして構成されている。2つのトランジスタT31,T32は、それぞれ高電圧系電力ライン54aの正極母線と高電圧系電力ライン54aおよび電池電圧系電力ライン54bの負極母線とに接続されており、その接続点にリアクトルLが接続されている。また、リアクトルLと電池電圧系電力ライン54bの負極母線とにはシステムメインリレー56を介してそれぞれバッテリ50の正極端子と負極端子とが接続されている。したがって、トランジスタT31,T32をオンオフ制御することにより、電池電圧系電力ライン54bの電力を昇圧して高電圧系電力ライン54aに供給したり、高電圧系電力ライン54aの電力を降圧して電池電圧系電力ライン54bに供給したりすることができる。
バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電池電圧系電力ライン54bに取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた図示しない温度センサからの電池温度などが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために、電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいてバッテリ50に蓄えられている蓄電量の全容量(蓄電容量)に対する割合である蓄電割合SOCを演算したり、演算した蓄電割合SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算したりしている。
インバータ62は、図2に示すように、6つのトランジスタT41〜T46と、トランジスタT41〜T46に逆方向に並列接続された6つのダイオードD41〜D46と、により構成されている。即ち、インバータ62は、高電圧系電力ライン54aではなく電池電圧系電力ライン54bに接続されている点を除いて、上述のインバータ41,42と同様に構成されている。
電圧波形出力回路90は、図2に示すように、一方が接地されて一定周波数のパルス(例えば、矩形波や正弦波,三角波など)を発生する発振器92と、発振器92に一方の端子が接続された検出抵抗94と、検出抵抗94の他方の端子と接続点Cnとに接続されたコンデンサ95と、検出抵抗94とコンデンサ95との接続点Coに接続されて高周波成分を除去して信号をハイブリッド用電子制御ユニット70に出力するローパスフィルタ96とを備え、検出抵抗94の抵抗値と前述した現在接続部位の抵抗値との関係に応じた信号(電圧波形)をハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。この電圧波形出力回路90からの電圧波形は、現在接続部位の絶縁抵抗が低下していないとき(漏電のおそれがないとき)には発振器92と略同一の振幅の電圧波形となり、現在接続部位の絶縁抵抗が低下しているとき(漏電のおそれがあるとき)には検出抵抗94での電圧降下によって発振器92よりも小さな振幅の電圧波形となる。したがって、実施例の電子制御ユニット70では、現在接続部位の絶縁抵抗が正常であるか否かを判定する絶縁判定として、電圧波形出力回路90からの電圧波形の振幅が発振器92の電圧波形の振幅より若干小さな値として定められた判定用閾値以上のときには現在接続部位の絶縁抵抗は正常であると判定し、電圧波形出力回路90からの電圧波形が判定用閾値より小さいときには現在接続部位の絶縁抵抗が低下している(異常である)と判定するものとした。
ここで、電気系のうち接続点Cnから見た現在接続部位は、実施例では、インバータ41,42やインバータ62,システムメインリレー56の各状態に応じてモータMG1,MG2や空調用コンプレッサ61,バッテリ50を含む複数の部位の一部または全部からなる。システムメインリレー56がオンの状態でインバータ41,42の駆動によりモータMG1,MG2が駆動されると共にインバータ62の駆動により空調用コンプレッサ61が駆動されているとき(以下、全駆動時という)には、現在接続部位は、モータMG1,MG2やインバータ41,42,空調用コンプレッサ61,インバータ62,システムメインリレー56,バッテリ50の全部を含むものとなる。例えば、全駆動時にインバータ41がゲート遮断されたときには、現在接続部位は、全駆動時の状態からインバータ41よりモータMG1側の部位(以下、第1モータエリアという)を除いたものとなり、全駆動時にインバータ42がゲート遮断されたときには、現在接続部位は、全駆動時の状態からインバータ42よりモータMG2側の部位(以下、第2モータエリアという)を除いたものとなり、全駆動時にインバータ62がゲート遮断されたときには、現在接続部位は、全駆動時の状態からインバータ62より空調用コンプレッサ61側の部位(以下、エアコンエリアという)を除いたものとなる。また、システムメインリレー56がオフされたときには、現在接続部位は、システムメインリレー56よりバッテリ50側の部位(以下、電池エリアという)となる。なお、第1モータエリアや第2モータエリア,エアコンエリア,電池エリアなどの各エリアは互いに独立に絶縁されている。
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、格納したデータを保持する不揮発性のフラッシュメモリ78と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、コンデンサ57の端子間に取り付けられた電圧センサ57aからのコンデンサ57の電圧(高電圧系電力ライン54aの電圧)VHやコンデンサ58の端子間に取り付けられた電圧センサ58aからのコンデンサ58の電圧(電池電圧系電力ライン54bの電圧)VL,イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバーの操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,電圧波形出力回路90からの信号(電圧波形)などが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70からは、昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32へのスイッチング制御信号,システムメインリレー56へのオンオフ信号,インバータ62のトランジスタT41〜T46へのスイッチング制御信号,警告灯89への点灯信号などが出力ポートを介して出力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、上述したように、現在接続部位の絶縁抵抗が正常であるか否かの判定も行なっている。また、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸32に出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力が駆動軸32に出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてがプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されて駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力を駆動軸32に出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。なお、トルク変換運転モードと充放電運転モードは、いずれもエンジン22の運転を伴って要求動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するモードであるから、両者を合わせてエンジン運転モードとして考えることができる。
また、実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン運転モードやモータ運転モードなどの通常走行用のモードに加え、車両の異常時などのために複数の退避走行用のモードが予め用意されている。退避走行用のモードとしては、モータMG2を駆動するためのインバータ42をゲート遮断した状態でエンジン22を所定回転数で運転すると共にエンジン22から出力される動力の一部がプラネタリギヤ30とモータMG1とによるトルク変換を伴って要求動力に基づく動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1とを制御する直行走行モードや、エンジン22の運転を停止すると共にモータMG1を駆動するためのインバータ41をゲート遮断した状態でモータMG2からの要求動力に基づく動力が駆動軸32に出力されるようモータMG2を制御する電動走行モード、バッテリ50の充放電を禁止した状態でエンジン22から出力される動力のモータMG1とモータMG2とによる動力から電力への変換と電力から動力への変換とを行なうと共にコンデンサ57の容量の範囲内でコンデンサ57の充放電を伴って要求動力に基づく動力が駆動軸32に出力されるようエンジン22とモータMG1,MG2とを制御するバッテリレス走行モードなどがある。
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、電気系における絶縁抵抗の低下を検出してから電気系のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定する際の動作について説明する。図3はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される絶縁抵抗低下検出処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図4はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンの一例を示すフローチャートであり、図5はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図3のルーチンおよび図4のルーチンは、イグニッションオンによりシステムメインリレー56がオンされて車両がシステム起動されたときに実行される。また、図5のルーチンは、図4のルーチンにより退避走行用のモードが設定されたときに実行される。以下、説明の都合上、まず絶縁抵抗低下部位特定用の駆動制御について説明し、続いて絶縁抵抗低下の検出処理について説明し、その次に絶縁抵抗低下部位の特定処理について説明する。
図5の絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,退避走行用のモードなど制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS400)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、図示しない回転位置検出センサにより検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度とバッテリ50の蓄電割合SOCとに基づいて設定されたものをバッテリECU52から通信により入力するものとした。さらに、退避走行用のモードは、後述する図4の絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンにより設定されたものを入力するものとした。
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪39a,39bに連結された駆動軸32に出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS410)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図6に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*に駆動軸32の回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、駆動軸32の回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を用いることができる。
続いて、入力した退避走行用のモードを調べ(ステップS420)、退避走行用のモードとして直行走行モードが設定されているときには、システムメインリレー56をオンとした状態を保持し(ステップS430)、エンジン22を運転すべき目標回転数Ne*にアイドル回転数より大きい回転数として予め定められた所定回転数Nesetを設定する(ステップS440)。
次に、要求トルクTr*にプラネタリギヤ30のギヤ比ρと値−1との積を乗じる次式(1)によりモータMG1から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm1tmpを計算すると共に(ステップS450)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutとモータMG1の回転数Nm1とに基づいてモータMG1から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm1min,Tm1maxを計算し(ステップS460)、計算した仮トルクTm1tmpを式(2)によりトルク制限Tm1min,Tm1maxで制限してモータMG1のトルク指令Tm1*を設定する(ステップS470)。トルク制限Tm1min,Tm1maxの計算は、モータMG1の回転数Nm1が正の値であるときにはバッテリ50の入力制限Winと出力制限WoutとをそれぞれモータMG1の回転数Nm1で割ったものをトルク制限Tm1minとトルク制限Tm1maxとすることにより行なわれ、モータMG1の回転数Nm1が負の値であるときにはバッテリ50の出力制限Woutと入力制限WinとをそれぞれモータMG1の回転数Nm1で割ったものをトルク制限Tm1minとトルク制限Tm1maxとすることにより行なわれる。直行走行モードで走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図7に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤの回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリアの回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2である駆動軸32の回転数Nrを示す。また、図中、R軸上の太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1が駆動軸32に作用するトルクを示す。なお、モータMG1の仮トルクTm1tmpを計算する式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。
Tm1tmp = -ρ・Tr* (1)
Tm1* = max(min(Tm1tmp,Tm1max),Tm1min) (2)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*とモータMG1のトルク指令Tm1*とを設定すると、設定したエンジン22の目標回転数Ne*をエンジンECU24に送信すると共に設定したモータMG1のトルク指令Tm1*とモータMG2を駆動するインバータ42のゲート遮断指令とをモータECU40に送信して(ステップS480)、絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*を受信したエンジンECU24は、エンジン22の回転数Neが目標回転数Ne*となるようにエンジン22のスロットル開度をフィードバック制御によって調整する吸入吸気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を行なう。インバータ42のゲート遮断指令とモータMG1のトルク指令Tm1*とを受信したモータECU40は、インバータ42をゲート遮断した状態としてトルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されるようインバータ41のトランジスタT11〜T16のスイッチング制御を行なう。なお、エンジン22の運転を停止しているときに目標回転数Ne*を受信したエンジンECU24は、予め定められたトルクマップを用いて設定されるモータMG1からのモータリングトルクによってエンジン22をクランキングすると共にエンジン22の回転数Neが予め定められた点火開始回転数に至ったときに燃料噴射や点火を開始することによりエンジン22を始動し、エンジン22の始動後に回転数Neが目標回転数Ne*となるように吸入空気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を開始する。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG1からのトルクをエンジン22で受け止めることにより駆動軸32に要求トルクTr*を出力して走行することができる。
ステップS420で電動走行モードが設定されていると判定されたときには、システムメインリレー56をオンとした状態を保持し(ステップS490)、要求トルクTr*をモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpに設定すると共に(ステップS500)、バッテリ50の入出力制限Win,WoutをモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tm2min,Tm2maxを計算し(ステップS510)、計算した仮トルクTm2tmpを次式(3)によりトルク制限Tm2min,Tm2maxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS520)。
Tm2* = max(min(Tm2tmp,Tm2max),Tm2min) (3)
こうしてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定すると、エンジン22の運転停止指令をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1を駆動するためのインバータ41のゲート遮断指令と設定したモータMG2のトルク指令Tm2*とをモータECU40に送信して(ステップS530)、絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンを終了する。エンジン22の運転停止指令を受信したエンジンECU24は、エンジン22を運転しているときにはエンジン22の吸入吸気量制御や燃料噴射制御,点火制御などの運転制御を停止する。インバータ41のゲート遮断指令とモータMG2のトルク指令Tm2*とを受信したモータECU40は、インバータ41をゲート遮断した状態としてトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ42のトランジスタT21〜T26のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2から駆動軸32に要求トルクTr*を出力して走行することができる。電動走行モードで走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図8に示す。図中、R軸上の太線矢印は、モータMG2から駆動軸32に出力されるトルクTm2を示す。
ステップS420でバッテリレス走行モードが設定されていると判定されたときには、システムメインリレー56をオンとした状態を保持し(ステップS440)、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS450)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行われる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図9に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
続いて、プラネタリギヤ30のギヤ比ρを用いてエンジン22からのトルクをモータMG1により受け止めるために出力すべきトルクを次式(4)によりモータMG1のトルク指令Tm1*として設定すると共に(ステップS460)、設定したトルク指令Tm1*にモータMG1の回転数Nm1を乗じてモータMG1により発電または消費される電力Pm1を計算し(ステップS470)、計算した電力Pm1をモータMG2の回転数Nm2で除したものに補正トルクTvcを加えたトルクをモータMG2のトルク指令Tm2*として設定する(ステップS480)。ここで、補正トルクTvcは、高電圧系電力ライン54aの電圧VH、即ちコンデンサ57の電圧がその耐圧以下となるように調整するトルクであり、例えば、コンデンサ57の電圧とその耐圧より小さい基準電圧との差に比例ゲインを乗じることにより求めることができる。
Tm1* = -ρ・Te*/(1+ρ) (4)
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、目標回転数Ne*や目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、トルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40に送信して(ステップS490)、絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*や目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによる運転ポイントで運転されるよう燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量制御などの運転制御を行ない、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、バッテリ50を充放電することなく、基本的にはエンジン22からの動力の電力への変換と再び動力への変換とを伴って要求トルクTr*を駆動軸32に出力して走行し、要求トルクTr*の変化に対してはコンデンサ57の容量の範囲内でコンデンサ57の充放電を伴って要求トルクTr*に応じたトルクを駆動軸32に出力して走行することができる。バッテリレス走行モードで走行しているときのプラネタリギヤ30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図10に示す。
なお、こうした絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンを実行している最中の昇圧コンバータ55の制御としては、後述する絶縁抵抗低下部位の特定処理により特に制御されない限り、ハイブリッド用電子制御ユニット70によって、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*と回転数Nm1,Nm2とに基づいて高電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagを設定し、電圧センサ57aからの高電圧系電力ライン54aの電圧VHが目標電圧VHtagとなるよう昇圧コンバータ55のトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。ここで、高電圧系電力ライン54aの目標電圧VHtagは、実施例では、モータMG1の目標動作点(トルク指令Tm1*,回転数Nm1)でモータMG1を駆動できる電圧とモータMG2の目標動作点(トルク指令Tm2*,回転数Nm2)でモータMG2を駆動できる電圧とのうち大きい方の電圧を最大許容電圧VHmaxの範囲内で設定するものとし、一方のモータのみが駆動されているときにはその一方のモータの目標動作点で駆動できる電圧を最大許容電圧VHmaxの範囲内で設定するものとした。高電圧系電力ライン54aの最大許容電圧VHmaxは、実施例では、昇圧コンバータ55により昇圧してもよい高電圧系電力ライン54aの最大電圧であり、コンデンサ57の耐圧やその耐圧よりも若干小さい値として予め定められたものを用いることができる。以上、絶縁抵抗低下部位特定用の駆動制御について説明した。次に、絶縁抵抗低下の検出処理について説明する。この絶縁抵抗低下の検出処理は、イグニッションオンにより車両がシステム起動されたときに実行されるから、この検出処理で実行する絶縁判定は、通常走行用のモード(エンジン運転モード,モータ運転モード)で走行している最中に行なわれる。
図3の絶縁抵抗低下検出処理ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、電圧波形出力回路90からの電圧波形を用いて電気系のうち接続点Cnから見た現在の接続部位である現在接続部位の絶縁判定を行なう(ステップS100)。ここで、現在接続部位の絶縁判定は、実施例では、電圧波形出力回路90からの電圧波形の振幅と判定用閾値とを比較することにより行なうものとした。
絶縁判定の結果として絶縁抵抗が正常であるときには(ステップS110)、ステップS100の処理に戻り、絶縁判定の結果として絶縁抵抗が異常であるときには(ステップS110)、警告灯89を点灯し(ステップS120)、フラッシュメモリ78に記憶され初期値として値0が設定された異常検出フラグFに値1を設定して(ステップS130)、絶縁抵抗低下検出処理ルーチンを終了する。以上、絶縁抵抗低下の検出処理について説明した。次に、絶縁抵抗低下部位の特定処理について説明する。
図4の絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、フラッシュメモリ78に記憶された異常検出フラグFを入力し(ステップS200)、入力した異常検出フラグFが値1か否かを判定する処理を実行する(ステップS210)。異常検出フラグFが値0のときには、絶縁抵抗の低下は検出されていないと判断し、そのまま絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンを終了する。この場合、通常走行用のモードでの走行が継続される。
異常検出フラグFが値1のときには、絶縁抵抗の低下が検出されたと判断し、空調用コンプレッサ61を駆動するためのインバータ62の作動とゲート遮断との切り換えを行なって電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいてインバータ62より空調用コンプレッサ61側のエアコンエリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かを判定する(ステップS220)。この判定では、具体的には、インバータ62を作動して空調用コンプレッサ61に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が異常と判定され、インバータ62をゲート遮断して空調用コンプレッサ61に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が正常と判定されたときに、エアコンエリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定するものとした。
続いて、高電圧系電力ライン54aの電圧VHが最大許容電圧VHmaxとなるように昇圧コンバータ55のスイッチング制御を行ない(ステップS230)、直行走行モードでの走行が開始されるように退避走行用のモードのうち直行走行モードを設定する(ステップS240)。高電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxまで昇圧する理由については後述する。直行走行モードが設定されると、図5の絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンによって直行走行モードでの走行が開始される。
こうして直行走行モードでの走行を開始すると、モータMG2を駆動するためのインバータ42の作動とゲート遮断との切り換えを行なって電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいてインバータ42よりモータMG2側の第2モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かを判定する(ステップS250)。この判定では、具体的には、モータMG2からトルクが出力されないように(モータMG2にd軸電流が流れるように)一時的にインバータ42をスイッチング制御してモータMG2に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が異常と判定され、インバータ42をゲート遮断してモータMG2に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が正常と判定されたときに、第2モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定するものとした。ここで、直行走行モードで走行している最中は、インバータ42はゲート遮断されているため、モータMG2に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形を入力することができる。したがって、モータMG2に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定は、モータMG2に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定の前に行なってもよいし、モータMG2に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定の後に行なってもよい。このように、第2モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かの判定は、直行走行モードでの走行状態を利用して行なうことができる。
続いて、電動走行モードでの走行が開始されるように退避走行用のモードのうち電動走行モードを設定する(ステップS260)。電動走行モードが設定されると、図5の絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンによって電動走行モードでの走行が開始される。
こうして電動走行モードでの走行を開始すると、モータMG1を駆動するためのインバータ41の作動とゲート遮断との切り換えを行なって電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいてインバータ41よりモータMG1側の第1モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かを判定する(ステップS270)。この判定では、具体的には、モータMG1からトルクが出力されないように(モータMG1にd軸電流が流れれるように)一時的にインバータ41をスイッチング制御してモータMG1に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が異常と判定され、インバータ41をゲート遮断してモータMG1に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なうと絶縁抵抗が正常と判定されたときに、第1モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定するものとした。ここで、電動走行モードで走行している最中は、インバータ41はゲート遮断されているため、モータMG1に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形を入力することができる。したがって、モータMG1に通電しないときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定は、モータMG1に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定の前に行なってもよいし、モータMG2に通電したときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定の後に行なってもよい。このように、第1モータエリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かの判定は、電動走行モードでの走行状態を利用して行なうことができる。
ここで、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxまで昇圧する理由について説明する。直行走行モードで走行するとモータMG2はその回転数Nm2に応じて逆起電圧を発生し、電動走行モードで走行するとモータMG1はその回転数Nm1に応じて逆起電圧を発生する。また、モータMG2の逆起電圧やモータMG1の逆起電圧は、高電圧系電力ライン54aの電圧VHよりも大きくなると、電圧波形出力回路90からの電圧波形に影響し、判定用閾値が絶縁判定に適したものではなくなるなどのために、電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を正常に行なうことができない場合が生じる。このため、実施例では、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxまで昇圧することにより、直行走行モードや電動走行モードでの走行中に、モータMG2の逆起電圧やモータMG1の逆起電圧が高電圧系電力ライン54aの電圧VH以上とならないようにするものとした。これにより、直行走行モードでの走行状態や電動走行モードでの走行状態を利用して、電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づく絶縁判定をより適正に行なうことができる。
次に、昇圧コンバータ55を駆動停止すると共にバッテリレス走行モードでの走行が開始されるように退避走行用のモードのうちバッテリレス走行モードを設定する(ステップS480)。バッテリレス走行モードが設定されると、図5の絶縁抵抗低下部位特定用駆動制御ルーチンによってバッテリレス走行モードでの走行が開始される。
こうしてバッテリレス走行モードでの走行を開始すると、システムメインリレー56をオンからオフとして電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいてシステムメインリレー56よりバッテリ50側の電池エリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かを判定する(ステップS290)。この判定では、具体的には、バッテリレス走行モードでの走行開始後でシステムメインリレー56がオンのときに電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なったときに絶縁抵抗が異常と判定され、その判定後にシステムメインリレー56をオフとした状態で電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁判定を行なったときに再び絶縁抵抗が異常と判定されたときには、電池エリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定するものとした。このように、電池エリアに絶縁抵抗の低下が生じているか否かの判定は、バッテリレス走行モードでの走行状態を利用して行なうことができる。なお、実施例では、バッテリレス走行モードでの走行開始の直後はシステムメインリレー56はオンとされているが、ステップS490による電池エリアの判定後にはシステムメインリレー56はオフとされている。
こうしてシステムメインリレー56をオフとしてバッテリレス走行モードが設定された状態でイグニッションスイッチ80によりイグニッションオフされるのを待ち(ステップS300)、イグニッションオフされたときには、エアコンエリアと第1モータエリアと第2モータエリアと電池エリアとの各エリアの判定結果に基づいて電気系のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定し(ステップS310)、車両をシステム停止するための処理を実行して(ステップS320)、絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンを終了する。絶縁抵抗の低下が生じた部位の特定は、実施例では、各エリアのうち1つのエリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定されているときに、その1つのエリアが絶縁抵抗の低下が生じた部位であると特定することにより行なうものとし、特定されたエリアを示す情報をフラッシュメモリ78に記憶するものとした。なお、各エリアのいずれにも絶縁抵抗の低下が生じているとは判定されていないときや、各エリアのうち2つ以上のエリアに絶縁抵抗の低下が生じていると判定されているときには、実施例では、次にイグニッションオンされて本ルーチンが実行されたときに絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものとした。また、実施例では、異常検出フラグFに値1が設定されてから直行走行モードでの走行と電動走行モードでの走行との後にバッテリレス走行モードでの走行を行なってイグニッションオフされるのを待つから、バッテリレス走行モードで走行中に電池エリアが絶縁抵抗低下が生じた部位であるか否かを判定するためにシステムメインリレー56をオンからオフとした後に、システムメインリレー56を再びオフからオンとしないようにすることができる。これにより、システムメインリレー56を再びオフからオンとすることによりシステムメインリレー56に大電流が流れるなどの不都合が生じるのを抑制することができる。
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、インバータ41,42やインバータ62,システムメインリレー56の各状態に応じてモータMG1,MG2や空調用コンプレッサ61,バッテリ50を含む複数の部位の一部又は全部からなる電気系(現在接続部位)の絶縁抵抗に応じた電圧波形に基づいて電気系(現在接続部位)の絶縁抵抗の低下が検出されてから、複数の部位のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定する際に、システムメインリレー56がオンとされインバータ42がゲート遮断された状態でエンジン22を運転し且つモータMG1を駆動してバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で走行に要求される要求トルクTr*により走行する直行走行モードでの走行と、システムメインリレー56がオンとされエンジン22の運転が停止されると共にインバータ41がゲート遮断された状態でモータMG2を駆動してバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内で要求トルクTr*により走行する電動走行モードでの走行と、エンジン22を運転し且つモータMG1とモータMG2とを駆動してバッテリ50を充放電せずにコンデンサ57の耐圧の範囲内で要求トルクTr*により走行するバッテリレス走行モードでの走行と、がそれぞれ行なわれるようエンジン22とインバータ41とインバータ42とシステムメインリレー56とを制御し、直行走行モードでの走行と電動走行モードでの走行とバッテリレス走行モードでの走行とがそれぞれ行なわれているときの電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて複数の部位のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するから、走行中に絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するための処理を行なうことができる。この結果、通常走行モードでの走行中に電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて電気系の絶縁抵抗の低下が検出された後により迅速に絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するための処理を行なうことができる。したがって、イグニッションオフされたときに絶縁抵抗低下部位の特定処理を行なうものに比して、絶縁抵抗低下の検出後に絶縁抵抗低下部位の特定処理を行なうまでの走行の間に電圧波形出力回路90からの電圧波形が一時的に正常に戻るのを抑制することができ、絶縁抵抗の低下が生じた部位の特定をより確実に行なうことができる。
実施例のハイブリッド自動車20では、異常検出フラグFに値1が設定されてから直行走行モードでの走行と電動走行モードでの走行とバッテリレス走行モードでの走行とをこの順に行ない、各走行モードでの走行中の電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものとしたが、異常検出フラグFに値1が設定されてからの直行走行モード,電動走行モード,バッテリレス走行モードの設定順は、如何なるものとしてもよい。例えば、バッテリレス走行モードを1番目や2番目に設定して走行する場合、バッテリレス走行モードでの走行中にシステムメインリレー56をオフからオンとしてから直行走行モードや電動走行モードを設定して走行を開始するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、異常検出フラグFに値1が設定されてから直行走行モード,電動走行モード,バッテリレス走行モードの各走行モードでの走行中の電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて第1モータエリア,第2モータエリア,電池エリアなどの各エリアが絶縁抵抗の低下が生じた部位であるか否かを判定し、イグニッションオフされたときに各エリアの判定結果に基づいて絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものとしたが、各エリアの判定結果が全て得られたときに、イグニッションオフされる前のタイミングで、各エリアの判定結果に基づいて絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、異常検出フラグFに値1が設定されてから直行走行モード,電動走行モード,バッテリレス走行モードの各走行モードで走行中の電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて第1モータエリア,第2モータエリア,電池エリアなどの各エリアが絶縁抵抗の低下が生じた部位であるか否かを判定し、バッテリレス走行モードでの走行中にイグニッションオフされたときに各エリアの判定結果に基づいて絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものとしたが、バッテリレス走行モードでの走行中に電池エリアの判定を行なった後に通常走行用のモードで走行を開始し、通常走行用のモードで走行しながらイグニッションオフを待つものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、異常検出フラグFに値1が設定されてから高電圧系電力ライン54aの電圧VHを最大許容電圧VHmaxに昇圧して直行走行モードでの走行と電動走行モードでの走行とを行なうものとしたが、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを、電動走行モードのときにモータMG1の回転により発生するモータMG1の回転数Nm1に応じた逆起電圧である第1逆起電圧と直行走行モードのときにモータMG2の回転により発生するモータMG2の回転数Nm2に応じた逆起電圧である第2逆起電圧とのうち大きい方以上の電圧として予め定められた所定電圧まで昇圧して、直行走行モードでの走行と電動走行モードでの走行とを行なうものとしてもよい。また、電動走行モードのときには高電圧系電力ライン54aの電圧VHを第1逆起電圧以上に昇圧し、直行走行モードのときには高電圧系電力ライン54aの電圧VHを第2逆起電圧以上に昇圧するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、通常走行用のモード(エンジン運転モード,モータ運転モード)で走行中に異常検出フラグFが値1に設定されてから直行走行モードでの走行を開始したときに、モータMG2を駆動するためのインバータ42の作動とゲート遮断との切り換えを行なって電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいてインバータ42よりモータMG2側の第2モータエリアが絶縁抵抗の低下が生じている部位であるか否かを判定するものとしたが、インバータ42が作動している通常走行用のモードからインバータ42がゲート遮断される直行走行モードに切り換えて走行を開始することにより電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて現在接続部位の絶縁抵抗が異常から正常に変化したと判定されたときに、第2モータエリアが絶縁抵抗の低下が生じている部位であると判定するものとしてもよい。同様に、インバータ41が作動している直行走行モードからインバータ41がゲート遮断される電動走行モードに切り換えて走行を開始することにより電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて現在接続部位の絶縁抵抗が異常から正常に変化したと判定されたときに、第1モータエリアが絶縁抵抗の低下が生じている部位であると判定するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、高電圧系電力ライン54aの電圧VHを電池電圧系電力ライン54bの電圧VLから最大許容電圧VHmaxの範囲内で調節すると共に高電圧系電力ライン54aと低電圧系電力ライン54bとの間で電力のやりとりを行なう昇圧コンバータ55を備えるものとしたが、昇圧コンバータ55は備えないものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2からの動力を駆動輪39a,39bに連結された駆動軸32に出力するものとしたが、図11の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2からの動力を駆動軸32が接続された車軸(駆動輪39a,39bに接続された車軸)とは異なる車軸(図11における車輪39c,39dに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力をモータMG1の駆動を伴ってプラネタリギヤ30を介して駆動輪39a,39bに連結された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力する構成としたが、この構成に加えて、図12の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22やモータMG2からの動力が出力される駆動軸32が接続された車軸(駆動輪39a,39bに接続された車軸)とは異なる車軸(図12における車輪39c,39dに接続された車軸)に動力を出力するモータMG3を備えるものとしてもよい。
実施例のハイブリッド自動車20,20Bでは、エンジン22からの動力をモータMG1の駆動を伴ってプラネタリギヤ30を介して駆動輪39a,39bに接続された駆動軸32に出力すると共にモータMG2からの動力を駆動軸32に出力するものとしたが、図13の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、駆動輪39a,39bに接続された第1駆動軸に変速機330を介してモータMG1を取り付けてモータMG1の回転軸にクラッチ329を介してエンジン22を接続する構成として、エンジン22からの動力をモータMG1の回転軸と変速機330とを介して第1駆動軸に出力すると共にモータMG1からの動力を変速機330を介して第1駆動軸に出力し、この構成に加えて駆動輪39a,39bに接続された第1駆動軸とは異なる第2駆動軸(図13における車輪39c,39dに接続された駆動軸)にモータMG2を接続してモータMG2からの動力を第2駆動軸に出力するものとしてもよい。
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG1が「第1電動機」に相当し、インバータ41が「第1インバータ」に相当し、モータMG2が「第2電動機」に相当し、インバータ42が「第2インバータ」に相当し、バッテリ50が「二次電池」に相当し、システムメインリレー56が「リレー」に相当し、電圧波形出力回路90が「絶縁抵抗信号検出手段」に相当し、システム起動されてからの通常走行モードでの走行中に電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて異常検出フラグFに値1を設定する図3の絶縁抵抗低下検出処理ルーチンを実行したり、異常検出フラグFに値1が設定されたときに直行走行モード,電動走行モード,バッテリレス走行モードの各モードでの走行中の電圧波形出力回路90からの電圧波形に基づいて第2モータエリア,第1モータエリア,電池エリアを含む複数の部位のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定する図4の絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンを実行したり、図4のルーチンで設定された退避走行用の各モードで走行するようエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,エンジン運転停止指令,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*,インバータ41,42のゲート遮断指令をエンジンECU24やモータECU40に送信したりシステムメインリレー56をオンに保持したりする図5の退避走行用駆動制御ルーチンを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*や目標トルクTe*,エンジン運転停止指令を受けてエンジン22を制御するエンジンECU24と、トルク指令Tm1*,Tm2*,インバータ41,42のゲート遮断指令を受けてインバータ41,42を制御するモータECU40とが「絶縁抵抗低下部位特定手段」に相当する。また、昇圧コンバータ55が「昇圧コンバータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「遊星歯車機構」に相当する。
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関としてのエンジン22に限定されるものではなく、走行用の動力を出力可能なものであれば、水素エンジンなど、如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「第1電動機」としては同期発電電動機としてのモータMG1に限定されるものではなく、内燃機関からの動力を用いて発電可能なものであれば、誘導電動機など、他のタイプの電動機であっても構わない。「第1インバータ」としては、インバータ41に限定されるものではなく、第1電動機を駆動するものであれば如何なるものとしても構わない。「第2電動機」としては同期発電電動機としてのモータMG2に限定されるものではなく、走行用の動力を出力可能なものであれば、誘導電動機など、他のタイプの電動機であっても構わない。「第2インバータ」としては、インバータ42に限定されるものではなく、第2電動機を駆動するものであれば如何なるものとしても構わない。「二次電池」としては、リチウムイオン二次電池として構成されたバッテリ50に限定されるものではなく、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池,鉛蓄電池など、第1インバータおよび第2インバータが接続された駆動系にリレーを介して接続されたものであれば如何なるタイプの二次電池であっても構わない。「リレー」としては、システムメインリレー56に限定されるものではなく、第1インバータおよび第2インバータを介して二次電池を第1電動機および第2電動機に接続するものであれば如何なるものとしても構わない。「絶縁抵抗信号検出手段」としては、電圧波形出力回路90に限定されるものではなく、第1インバータと第2インバータとリレーとの各状態に応じて第1電動機と第2電動機と二次電池とを含む複数の部位の一部又は全部からなる電気系の絶縁抵抗に応じた絶縁抵抗信号を検出するものであれば如何なるものとしても構わない。「絶縁抵抗低下部位特定手段」としては、図3の絶縁抵抗低下検出処理ルーチンを実行したり図45の絶縁抵抗低下部位特定処理ルーチンを実行したり図5の退避走行用駆動制御ルーチンを実行してエンジン22やモータMG1,MG2,システムメインリレー56などを制御して絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものに限定されるものではなく、検出された絶縁抵抗信号に基づいて電気系の絶縁抵抗の低下が検出されてから複数の部位のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定する際、リレーがオンとされ第2インバータがゲート遮断された状態で内燃機関を運転し且つ第1電動機を駆動して走行に要求される要求駆動力に基づく駆動力により走行する第1電動機走行と、リレーがオンとされ内燃機関の運転が停止されると共に第1インバータがゲート遮断された状態で第2電動機を駆動して要求駆動力に基づく駆動力により走行する電動機走行と、内燃機関を運転し且つ第1電動機と第2電動機とを駆動して二次電池を充放電せずに要求駆動力に基づく駆動力により走行する無充放電走行と、がそれぞれ行なわれるよう内燃機関と第1インバータと第2インバータとリレーとを制御し、第1電動機走行と第2電動機走行と無充放電走行とがそれぞれ行なわれているときに絶縁抵抗信号検出手段により検出される絶縁抵抗信号に基づいて複数の部位のうち絶縁抵抗の低下が生じた部位を特定するものであれば如何なるものとしても構わない。また、「昇圧コンバータ」としては、昇圧コンバータ55に限定されるものではなく、二次電池が接続された電池系からリレーを介して供給される電力を昇圧して駆動系に供給するものであれば如何なるものとしても構わない。「遊星歯車機構」としては、プラネタリギヤ30に限定されるものではなく、内燃機関の出力軸と第1電動機の回転軸と車軸に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が接続されたものであれば如何なるものとしても構わない。
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。